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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046807
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】人工芝の排水構造
(51)【国際特許分類】
   E01C 13/02 20060101AFI20240329BHJP
   E01C 13/08 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
E01C13/02
E01C13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152104
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】山下 英里
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA03
2D051AB04
2D051HA01
(57)【要約】
【課題】人工芝施設におけるマイクロプラスチックの流出を抑制すること
【解決手段】
人工芝の排水構造100は、人工芝敷設領域110の周囲に設けられた側溝120と、排水管130と、フィルタ層140と、仕切り部材150と、を備えている。排水管130は、側溝120内に配置され、側溝120に沿って延び、透水性である。フィルタ層140は、側溝120内において、排水管130を覆う。仕切り部材150は、透水性であり、側溝120内に配置され、側溝120を仕切るとともに、排水管130が取り付けられる貫通孔150hが設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工芝が敷設される人工芝敷設領域の周囲に設けられた側溝と、
前記側溝内に配置され、該側溝に沿って延びる透水性の排水管と、
前記側溝内において、前記排水管を覆うフィルタ層と、
前記側溝内に配置され、該側溝を仕切るとともに、前記排水管が取り付けられる貫通孔が設けられた透水性を有する仕切り部材と、
を備えている、人工芝の排水構造。
【請求項2】
前記仕切り部材が弾性変形可能なブロック体である、請求項1に記載された排水構造。
【請求項3】
前記仕切り部材が前記側溝内に圧入固定されている、請求項2に記載された排水構造。
【請求項4】
さらに、前記フィルタ層と前記仕切り部材との間に、前記仕切り部材を覆う透水性シートを有する、請求項1から3までの何れか一項に記載された排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人工芝の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2011-137354号公報には、グラウンドの周囲の一部又は全部に設けられた側溝の下流側終端部が主排水溝に接続されているグラウンドの排水装置が開示されている。同公報で開示された排水装置では、側溝の少なくともグラウンドの境界部より下流側位置を含めた単又は複数適所に、側溝内下部を塞ぐように堰部が設けられている。また、側溝内底部に堰部を水密状態で貫通するように透水性管が敷設されている。さらに、透水性管の上流側端部が閉塞され、グラウンド表層から側溝内に流れ込んだ粒状物を透水性管でろ過することで、グラウンド施設からの流出が防止され、雨水のみが透水性管を通じて主排水溝に排水されるように構成されている。
【0003】
また、特開2022-38426号公報には、人工芝の周囲に設けられた人工芝の排水構造が開示されている。この排水構造は、底部に透水機能を有する側溝と、側溝内の底部に設置された透水性排水管と、側溝内で透水性排水管の上方まで充填された細砂と、細砂の流出を防ぐ堰の機能を有し、透水性排水管を通過可能に側溝の延在方向を仕切る仕切り板と、を備えている。これによって、清掃等のメンテナンスにかかる作業を軽減することができ、しかも雨水を運動場に流出させることなく、運動場から流れ込む小片を容易にかつ確実に回収することができるとされている。なお、同公報では、仕切り板をコンクリート、ステンレス等の材料で形成することが提案されている。また、仕切り板同士で区画された領域内に流入した雨水が、仕切り板の外に漏れ出すのを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-137354号公報
【特許文献2】特開2022-38426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人工芝では、パイルに樹脂が用いられており、使用により摩耗屑(人工芝の破片)が生じうる。また、パイル間の充填物にもゴムチップが用いられている。これらが流出すると、いわゆるマイクロプラスチックとなりうる。かかる人工芝施設において、マイクロプラスチックの流出を抑制したい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される人工芝の排水構造は、人工芝敷設領域の周囲に設けられた側溝と、排水管と、フィルタ層と、仕切り部材と、を備える。排水管は、透水性であり、側溝内に配置され、該側溝に沿って延びる。フィルタ層は、側溝内において、排水管を覆う。仕切り部材は、透水性であり、側溝内に配置され、該側溝を仕切るとともに、排水管が取り付けられる貫通孔が設けられている。かかる人工芝の排水構造によれば、側溝の透水性が向上され、マイクロプラスチックの流出が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、排水構造100の模式的な平面図である。
図2図2は、排水構造100の模式的な拡大平面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、図2のIV-IV断面図である。
図5図5は、排水管130と仕切り部材150と透水性シート160との分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ここで開示される人工芝の排水構造を、図面に基づいて説明する。なお、ここで開示される技術は、以下の実施形態に限定されない。図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいてここで開示される技術を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面における「L」、「R」、「F」、「Rr」、「U」、および「D」の表記は、それぞれ、「左」、「右」、「前」、「後」、「上」、および「下」を表す。また、本明細書において数値範囲を示す「X~Y」の表記は、特に言及されない限りにおいて「X以上Y以下」を意味する。
【0009】
〈排水構造100〉
図1は、排水構造100の模式的な平面図である。図2は、排水構造100の模式的な拡大平面図である。図3は、図2のIII-III断面図である。図4は、図2のIV-IV断面図である。図1および図2に示されているように、人工芝の排水構造100は、人工芝敷設領域110の周囲に設けられた側溝120と、排水管130と、フィルタ層140と、仕切り部材150と、透水性シート160とを備えている。
【0010】
〈人工芝敷設領域110〉
人工芝敷設領域110は、例えば、人工芝111が敷設される領域である。人工芝敷設領域110は、例えば、野球場、サッカー場、テニスコート等として用いられる人工芝グラウンドである。図1では、平面矩形状の人工芝敷設領域110が示されている。図3に示された形態では、人工芝111は、舗装面112に敷設されている。ここでは、人工芝111は、基布111aと、パイル111bとを有する。図3に示されているように、基布111aは、シート状の基布である。基布111aの材質および形態は、特に限定されない。例えば、基布111aは、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる平織布として形成されうる。基布111aには、パイル111bが植設されている。基布111aの裏面には、バッキング層が形成されている。バッキング層は、バッキング剤が塗布された層であり、パイル111bが抜け落ちるのを防止している。バッキング層は、例えば、ポリエチレンとSBRラテラックスとの混合体によって構成されてもよい。なお、図面では、基布111aと舗装面112との間に隙間があるように図示されているが、実際には、人工芝111は舗装面112に設置されているため、隙間はない。
【0011】
パイル111bは、例えば、芝の葉を模した形状を有しており、基布111aから立ち上がっている。基布111aには、多数のパイル111bが植設されているとよい。パイル111bの材質および形態は、芝葉の外観を実現することができる限り、特に限定されない。パイル111bには、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる扁平なフィラメント糸(ヤーン)が用いられる。また、パイル111bは、タフティングマシンを用いて、パイル111bとなるプラスチック糸(ヤーン)が基布111aに縫い込まれることによって、基布111aに固定されてもよい。基布111aの表面からパイル111bの先端までの長さも、特に限定されない。基布111aの表面からパイル111bの先端までの長さは、20mm≦W1<50mm程度と比較的短くすることもできるし(一般にショートパイルと呼ばれる)、50mm≦W1≦70mm程度と比較的長くすることもできる(一般にロングパイルと呼ばれる)。パイル111bの長手方向の断面形状は、三角形、矩形、円形、星形等とすることができる。
【0012】
特に限定するものではないが、基布111aの表面上においてパイル111b間には、充填材111cが充填されてもよい。充填材111cは、例えば、プレーヤーがプレー中に怪我をしないようにするためのクッション材としての役割と、パイル111bを保護する役割と、を有している。また、充填材111cは、競技に使用されるボールの弾み具合を調整したり、走り易さを調整したりすることにも用いられており、人工芝敷設領域110での競技のプレーのしやすさを向上させることができる。また、充填材111cが充填されることによって、人工芝111が全体として重たくなり、人工芝111が安定して設置されうる。充填材111cは、例えば、パイル111bがロングパイルと呼ばれる比較的高さのあるパイルである場合、特に好ましく用いられうる。
【0013】
充填材111cには、弾性充填材および硬質充填材の少なくとも一方を用いることができる。弾性充填材としては、比較的柔らかい充填材、例えば、天然有機質充填材(例えば、ヤシ殻を粉砕した材料)、廃タイヤの破砕品等からなるゴムチップを用いることができる。硬質充填材としては、例えば、砂を用いることができる。硬質充填材と弾性充填材は、両方が充填されていてもよい。
【0014】
舗装面112は、例えば、人工芝111が敷かれるために舗装された平坦な面である。舗装面112は、例えば、人工芝111のレベルを合わせるために平坦かつ精確に施工される。舗装面112には、排水性を確保するために必要な勾配等、人工芝付設領域110の周囲に設けられた側溝120への排水を促す構造が設けられていることが望ましい。舗装面112は、例えば、ローラで転圧整備された路床と、砕石を敷き詰めた砕石層と、透水性のアスファルトで舗装したアスファルト層とで構成されている。なお、舗装面112の構成は、特に言及されない限りにおいて限定されない。例えば、舗装面112は、ローラで転圧整備された路床で構成されていてもよく、砕石層とアスファルト層とが設けられていなくてもよい。
【0015】
<側溝120>
側溝120は、例えば、人工芝敷設領域110からの排水のために設けられた溝である。側溝120としては、例えば、U字溝と呼ばれる連結式のコンクリート成形品が好ましく用いられうる。側溝120は、図1に示されているように、人工芝敷設領域110の周囲に設けられている。側溝120自体は透水性を有していなくてもよい。あるいは、側溝120は、透水性を有していてもよい。この場合において、側溝120内に集められた水は、例えば、地面に吸収されることによっても、側溝120の外部に排出される。なお、図1に示された形態では、側溝120は、人工芝敷設領域110の全周にわたって設けられているが、これに限定されず、人工芝敷設領域110の周囲の一部に設けられてもよい。
【0016】
図1では、人工芝敷設領域110の一対の長辺部に沿う第1側溝120Aおよび第2側溝120Bと、人工芝敷設領域110の一対の短辺部に沿う第3側溝120Cおよび第4側溝120Dと、が示されている。図1に示されているように、第1側溝120Aと第3側溝120Bとの間、第1側溝120Aと第4側溝120Dとの間、第4側溝120Dと第2側溝120Bとの間、および、第2側溝120Bと第3側溝120Cとの間には、それぞれ集水桝170が設けられている。集水桝170には、外部排水管180(例えば暗渠)が接続されている。外部排水管180を介して人工芝付設領域110の外に排水が排出される。例えば、第1側溝120Aを介した排水の外部への排出では、まず、人工芝付設領域110からの排水が、図1中の矢印Pで示されているように、第1側溝120Aに向かって流れ込む。次いで、第1側溝120Aに流れ込んだ排水は、同図中の矢印Q1と矢印Q2とに示されているように、集水桝170に流れ込む。そして、排水は、同図中の矢印R1と矢印R2とに示されているように、集水桝170から外部排水管180に流れ込み、合流して外部に排出される(矢印RT参照)。なお、図2には、第1側溝120Aと第4側溝120Dとの間に設けられた集水桝170近傍が拡大されている。図3および図4では、第1側溝120Aの構成が示されているが、第2側溝120B~第4側溝120Dも同様の構成を有している。このため、以下の説明において、図2図4を参照して説明する事柄であっても、特に第1側溝120Aに特有の事柄でない限り、「側溝120」の用語を使用する。
【0017】
側溝120は、図3に示されているように、舗装面112から下に掘り下げられた状態で設けられている。図3に示されているように、側溝120は、溝121と、蓋122とを有する。溝121は、ここでは、U字溝である。図3に示されているように、溝121は、底壁121aと一対の側壁121bとを有する。底壁121aは、例えば、溝121の底部を構成する部位である。底壁121aは、例えば、人工芝敷設領域110の外縁に沿って延びている。一対の側壁121bは、例えば、溝121の幅方向における底壁121aの両端部から上方に延びた部位である。また、一対の側壁121bは、人工芝敷設領域110の外縁に沿って延びている。図3に示されているように、一対の側壁121bの上端は、舗装面112のレベルと揃えられている。また、一対の側壁121bの上端は、開口している。一対の側壁121bの上端の開口に、例えば、蓋122が嵌め込まれる。溝121は、例えば、コンクリート等で構成されるとよい。なお、溝121はU字溝に限定されず、例えば、断面が円弧形状、底部に向かって幅が狭くなるテーパー形状の溝であってもよい。
【0018】
蓋122は、例えば、溝121の上端の開口(ここでは、一対の側壁121bの上端の開口)に取り付けられる部材である。蓋122には、溝121への通水が可能な孔が形成されているとよい。蓋122の上面122aは、舗装面112のレベルと揃えられているとよい。蓋122は、例えば、コンクリート、金属等で構成されるとよい。
【0019】
<排水管130>
排水管130は、例えば、人工芝敷設領域110から側溝120に流れ込んだ排水を側溝120の外部に排出する部材である。図2に示されているように、排水管130は、側溝120内に配置され、側溝120に沿って延びる透水性の部材である。この実施形態では、排水管130は、例えば、中空円筒状である。図3および図4に示された形態では、排水管130には、フィルタ層140を透過した水が排水管130の外壁131を透過して、内部空間132に流れ込む。ここでは、排水管130の一方の端部(第1端部130a)は開口している。第1端部130aは、例えば、接続パイプ190を介して集水桝170に接続されている(図2および図4参照)。内部空間132に流れ込んだ水は、排水管130の第1端部130aから、接続パイプ190を介して集水桝170内に排出される。また、排水管130の他方の端部(第2端部130b)は、キャップCPで閉塞されている。キャップCPは、例えば、樹脂製のキャップ、不織布等であってよい。
【0020】
排水管130としては、この種の用途で用いられる透水性のメッシュ状の側面を有するフレキシブルな暗渠排水管を使用することができる。かかる排水管130の外壁131は、メッシュ状である。外壁131のメッシュ径は、側溝120に入り込んだ粘土を管内に通過させることはできるが、フィルタ材を通過させない程度の大きさに調整されているとよい。かかる排水管130として、例えば、太陽工業株式会社、東拓工業株式会社等の市販の暗渠排水管を採用しうる。なお、この実施形態では、上述のとおり、排水管130から、接続パイプ190を介して集水桝170内に水が排出されるが、これに限定されない。他の実施形態において、排水管130は、仕切り部材150の貫通孔150hに取り付けられ、さらに集水桝170の内部に設けられた接続孔170hと接続されていてもよい(図4参照)。この場合、水は、排水管130から接続孔170hを介して外部排水管180内に排出される(図1および図4参照)。
【0021】
排水管130は、例えば、仕切り部材150に取り付けられている。本明細書において、排水管130が仕切り部材150に取り付けられた状態とは、直接的に、あるいは、他の部材を介して間接的に、排水管130が仕切り部材150と一体化された状態をいう。図2および図4に示されているように、排水管130は、接続パイプ190を介して仕切り部材150に取り付けられている。ここでは、排水管130の第1端部130aに接続パイプ190の一端が挿通され、さらに、接続パイプ190の他端が仕切り部材150の貫通孔150hに挿通されることによって、排水管130の仕切り部材150への取り付けが実現されている。なお、接続パイプ190は、例えば、アクリル樹脂製のパイプである。また、接続パイプ190の外径は、接続パイプ190が排水管130と貫通孔150hとに挿通されるように適宜設定されうる。
【0022】
この実施形態では、排水管130は、溝121の底壁121a上に配置されている。ここでは、2つの排水管130が長さ方向を揃えられた状態で、底壁121a上に配置されている。図4に示されているように、排水管130は、溝121の底壁121aと側壁121bとに対して略平行となるように配置されている。この実施形態では、排水管130は、人工芝敷設領域110の外縁に沿って延びている。排水構造100を清掃する際の容易性と、紫外線による排水管130の劣化抑制効果との観点から、図2図4に示されているように、排水管130は、フィルタ層140に埋め込まれている。図4に示された形態では、排水管130の全体がフィルタ層140に埋め込まれている。
【0023】
〈フィルタ層140〉
フィルタ層140は、例えば、人工芝敷設領域110から側溝120に流れ込んだ排水から、人工芝111の破片、ゴムチップ等のマイクロプラスチックを捕捉する部位である。図2図4に示されているように、フィルタ層140は、側溝120内において、排水管130を覆う部位である。図3に示されているように、フィルタ層140の高さH1は、排水管130の高さH2よりも大きい。例えば、大雨、強風等によってフィルタ材が側溝120の外部に出ることを抑制するため、フィルタ層140の上面141は、側溝120の上端よりも低い位置に設けられうる。ここでは、上面141と側溝120の上端との間は、空間となっている。フィルタ層140の高さH1は、例えば、側溝120の深さの2/3以下であるとよい。なお、高さH1と高さH2とは、ここでは、側溝120の底壁121aを起点とした高さである。
【0024】
図2および図4に示されているように、フィルタ層140は、仕切り部材150よりも上流側で、排水管130を覆うように設けられている。この実施形態では、フィルタ層140は、排水管130の全体を覆うように設けられている。フィルタ層140は、排水管130の第2端部130bを覆い、当該部位が露出しないように設けられているとよい。このため、フィルタ層140は、排水管130の長さと同じか、排水管130よりも長くなるように設けられるとよい。側溝120に沿うフィルタ層140の長さは、例えば、フィルタ層140の清掃頻度(例えば、フィルタ層140からマイクロプラスチックを除去する頻度)、人工芝の損耗状況(例えば、経過年数、使用頻度)等に応じて、適宜設定されうる。また、図4に示されているように、フィルタ層140は、上面141が仕切り部材150の上端(ここでは、上面150a)よりも低くなるように設けられている。このため、フィルタ層140の仕切り部材150の外部への流出が抑制されている。
【0025】
フィルタ層140は、例えば、フィルタ材で構成されている。フィルタ材は、例えば、砂、砕石等の粒状のフィルタ材である。この場合において、フィルタ材の粒径および粒度は、フィルタ層140を形成したときに、マイクロプラスチックを捕捉できるように、かつ、捕捉したマイクロプラスチックをフィルタ層140上から除去しやすくするように設定されるとよい。特に限定するものではないが、フィルタ材としての細粒粒状物の粒径は、例えば、0.1mm以上であるとよく、また、2mm以下であり得る。フィルタ層140のフィルタ機能と、マイクロプラスチックの除去性とを適切に実現する観点からは、フィルタ材の粒径を1mm以下とすることが好ましい。
【0026】
あるいは、フィルタ材は、透水性を有する不織布等のシート状のフィルタ材であってもよい。フィルタ材としての不織布の多孔度、厚み、積層枚数等は、フィルタ層140が好ましい透水性と濾過性能とを実現するように適宜設定されうる。フィルタ材として不織布を用いる場合には、例えば側溝120の幅の1.5~2倍程度の幅を有し、屋外耐候性のある不織布を使用し、底壁121a上に配置された排水管130を排水管130が露出しない様に上方から覆い被せて設置することができる。この際、不織布が浮き上がることを防止するために、前記細粒粒状物を不織布の上から散布してもよい。あるいは、不織布の幅方向の両端部を一対の側壁121bに対して接着固定してもよく、一対の側壁121b間に棒状体を突っ張らせ、その棒状体と各側壁121bとの間に挟持させて固定してもよい。或いは、これらの方法を併用してもよい。不織布の紫外線劣化を防止するという観点からは、細粒粒状物を不織布の上から散布している形態が好ましい。
【0027】
<仕切り部材150>
図5は、排水管130と仕切り部材150と透水性シート160との分解斜視図である。なお、図5では、接続パイプ190(図2および図4参照)の図示を省略している。仕切り部材150は、例えば、側溝120内に配置され、側溝120を仕切る部材である。図5に示されているように、仕切り部材150には、貫通孔150hが設けられている。貫通孔150hには、例えば、排水管130が取り付けられる(図2図5参照)。そして、仕切り部材150は、透水性を有している。
【0028】
図2および図4では、仕切り部材150は、側溝120の終端部(ここでは、側溝120と集水桝170との境界)に設けられている。また、仕切り部材150は、排水管130の第1端部130aに、透水性シート160を介して隣り合って設けられている。図2および図4に示されているように、仕切り部材150よりも上流側の領域に、フィルタ層140が設けられている。ここでは、仕切り部材150と透水性シート160とによって、フィルタ材が集水桝170に流出するのが抑制されている。
【0029】
この実施形態では、仕切り部材150は、ブロック体である。仕切り部材150は、図2および図4に示されているように、側溝120の内側に、側溝120を横断するように装着される。仕切り部材150は、例えば、側溝120の断面形状と近似した断面形状を有し、底壁121aと側壁121bと当接することが好ましい。かかる形状を有することで、フィルタ層140内、フィルタ層140の上部空間から流れてきた排水を面的に遮断することができるため、側溝120の底壁121aと側壁121bとから漏水しない構造を実現することができる。なお、仕切り部材150の形状は、側溝120の断面形状に合わせて適宜設定されうる。例えば、側溝120が底部にR形状を有さない角型側溝である場合、角型側溝の断面形状に合わせて仕切り部材150の形状を設定すればよい。
【0030】
仕切り部材150は、図5に示されているように、相互に対向する矩形状の上面150aと下面150bとを有している。仕切り部材150は、さらに、上面150aの対向する一対の長辺から延びた第1側面150cおよび第2側面150dと、上面150aの対向する一対の短辺から延びた第3側面150eおよび第4側面150fと、を有している。この実施形態では、下面150bと第3側面150eとの角部、および、下面150bと第4側面150fとの角部と、がR面取りされている。仕切り部材150が側溝120内に配置されると、上面150aが溝121の開口(あるいは蓋122)と対向し、下面150bが底壁121aと当接し、第3側面150eと第4側面150fとが一対の側壁121bのそれぞれに当接する。
【0031】
図5に示された形態では、仕切り部材150は、2つの平面真円状の貫通孔150hを有している。図5に示されているように、貫通孔150hは、第1側面150cと第2側面150dとの間を貫通するように設けられている。貫通孔150hは、側溝120の底壁121a上に配置された排水管130が取り付けられる部位に形成されるとよい。この実施形態では、貫通孔150hは、第1側面150cと第2側面150dとにおいて、下面150b側に寄せて設けられている。この実施形態では、貫通孔150hの内径は、接続パイプ190の外径とほぼ同じである。なお、貫通孔150hの形状および数は、排水管130および接続パイプ190の形状および数によって、適宜変更されうる。また、排水管130の仕切り部材150への取り付けに関しては、上述のとおりである。
【0032】
この実施形態では、仕切り部材150は、透水性を有している。仕切り部材150は、例えば、多孔質体であるとよい。この場合において、フィルタ層140からの排水を効率よく行う観点から、仕切り部材150の多孔率は、例えば10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上である。一方で、フィルタ材、人工芝111の破片、ゴムチップ等による仕切り部材150の目詰まりを抑制する観点から、多孔率は、例えば50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下である。なお、仕切り部材150の多孔率は、貫通孔150hを除いた、仕切り部材150の実質部分の多孔率をいう。
【0033】
仕切り部材150は、例えば、樹脂製であるとよい。仕切り部材150は、例えば、樹脂片と樹脂バインダとによって構成されたものであるとよい。あるいは、仕切り部材150は、連続気泡発泡体であってもよい。連続気泡発泡体は、例えば、内部に気泡を含み、この気泡どうしがつながったスポンジ構造を有する、樹脂材料の発泡体である。あるいは、複数枚の不織布を重ね合わせることによって構成されたものであってもよい。仕切り部材150を構成する樹脂材料(ここでは、樹脂片、樹脂バインダ、連続気泡発泡体、および、不織布の構成材料)としては、例えば、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、ラテックス、ゴム等が挙げられる。例えば、樹脂片が樹脂バインダで結着されて構成されたものであってもよい。
【0034】
仕切り部材150が側溝120内で安定的に保持される観点から、仕切り部材150は、弾性変形可能な材料で構成されることが好ましい。かかる観点から、仕切り部材150を構成する樹脂材料は、例えば、ウレタン樹脂、ゴム等であることが好ましい。仕切り部材150は、例えば、ゴム片(ゴムチップ)がウレタン樹脂バインダで固着されて構成されたものであるとよい。
【0035】
仕切り部材150のサイズは、側溝120内に仕切り部材150を安定的に配置し、上記形成領域からフィルタ材が仕切り部材150の外に流出するのを抑制することができる限り、特に限定されない。仕切り部材150は、例えば、側溝120内に圧入固定されるサイズを有しているとよい。例えば、第3側面150eと第4側面150fとの間の長さLX(図5参照)は、溝121の幅W(図3参照)よりも2%~10%大きいことが好ましい。また、圧入固定される仕切り部材150の厚みは、仕切り部材150の変形特性や剛性にもよるが、例えば4cm以上であり、好ましくは5cm以上であり、また、9cm以下とするとよく、好ましくは7cm以下に設定される。厚みが薄すぎると、圧入状態での固定が弱くなる虞があり、厚みが大きすぎると、現場での圧入作業が困難になる虞がある。
【0036】
あるいは、仕切り部材150は、弾性変形しないブロック体であってもよい。仕切り部材150は、例えば、透水性を有するコンクリートで構成されうる。この場合において、仕切り部材150は、側溝120内に接着固定されうる。あるいは、金物を用いて、仕切り部材150を側溝120内に固定してもよい。
【0037】
<透水性シート160>
透水性シート160は、例えば、仕切り部材150の目詰まりを抑制し、仕切り部材150の排水性を確保する部材である。この実施形態では、透水性シート160は、仕切り部材150を覆う部材である。図5に示されているように、透水性シート160は、仕切り部材150の第2側面150dの全体に重なるように配置されるとよい。このため、透水性シート160の形状は、第2側面150dの形状に合わせて設定されているとよい。図5に示された形態では、透水性シート160には、貫通孔160hが設けられている。貫通孔160hに、例えば、接続パイプ190が挿通される。
【0038】
透水性シート160は、例えば、透水性および濾過機能を有する不織布である。透水性シート160としての不織布は、例えば、フィルタ層140と同程度の透水性を有するとともに、マイクロプラスチックを捕捉しうる。透水性シート160としての不織布の目の大きさは、上述のような透水性と濾過機能とを実現できるように適宜設定されうる。特に限定するものではないが、透水性シート160としての不織布の材質および形態は、性能をより確保し易くする観点から、10年以内(例えば、3年~5年)で取り替えられるように設定されるとよい。
【0039】
上述した排水構造100は、例えば、側溝120と集水桝170との境界に設けられる。図1に示された形態では、排水構造100は、1箇所~8箇所に設けられうる。設置コストを低減させる観点、清掃をより容易とする観点等から、側溝120と集水桝170との境界すべて(図1では、枠Xで示された8箇所)にそれぞれ排水構造100を設けることが好ましい。また、排水構造100が設けられる部位では、相互に隣接する2つの集水桝170の間の長さを100%としたときに、5%~50%(例えば、10%以上、20%以上、あるいは、40%以下、30%以下)の長さを有する排水管130が配置されるとよい。
【0040】
あるいは、相互に隣接する2つの集水桝170の間の全長にわたって排水管130とフィルタ層140とが設けられてもよい。この場合、例えば、排水管130の第1端部130aと第2端部130bとのそれぞれに接続パイプ190が取り付けられる。そして、かかる接続パイプ190が透水性シート160の貫通孔160hと仕切り部材150の貫通孔150hとに挿通される。
【0041】
特に限定するものではないが、例えば、仕切り部材150の目詰まりをよりよく抑制するために、フィルタ層140の上面141に、透水性の遮断壁を設けてもよい(図示なし)。遮断壁は、例えば、樹脂製のブロック体と、該ブロック体を覆う不織布と、を有する。ブロック体の構成材料は、例えば、仕切り部材150の構成材料と同じであるとよい。不織布としては、例えば、透水性シート160としての不織布を用いるとよい。遮断壁の大きさは特に限定されず、適宜設定されうる。遮断壁を設ける効果は、例えば、フィルタ層140の長さが大きくなるほど高まりうる。
【0042】
上述のとおり、ここで開示される人工芝の排水構造100は、人工芝敷設領域110の周囲に設けられた側溝120と、排水管130と、フィルタ層140と、仕切り部材150と、を備えている。排水管130は、側溝120内に配置され、側溝120に沿って延び、透水性である。フィルタ層140は、側溝120内において、排水管130を覆う。仕切り部材150は、透水性であり、側溝120内に配置され、側溝120を仕切るとともに、排水管130が挿通される貫通孔150hが設けられている。
【0043】
排水構造100では、仕切り部材150によって、側溝120内にフィルタ層140が設けられている。そして、仕切り部材150が透水性を有することによって、フィルタ層140からの排水性を向上させることができる。フィルタ層140を設けることによって、人工芝付設施設110からの排水から人工芝111の破片、ゴムチップ等のマイクロプラスチックを捕捉することができる。フィルタ層140に流れ込んだ排水は、フィルタ層140によってマイクロプラスチックが取り除かれた後、排水管130を透過して内部空間132を通って外部排水管190に排出される。排水構造100では、仕切り部材150が透水性を有することによって、フィルタ層140によって排水に含まれるマイクロプラスチックが捕捉される。その後、排水は、透水性仕切り部材150を通過することによっても外部に排出されうる。このように、ここで開示される人工芝の排水構造100では、側溝120の透水性が向上する。このため、側溝120で排水が浮きにくく、側溝120を通じてマイクロプラスチックが捕捉されつつ、排水がスムーズに排出されやすい。このため、側溝120に流れ込んだ排水に含まれるマイクロプラスチックの流出が抑制される。
【0044】
また、仕切り部材150は、弾性変形可能なブロック体であるとよい。これによって、仕切り部材150は、側溝120の幅、深さ等に合わせて変形しうる。このため、仕切り部材150のサイズを改めて調整することを省略しつつ、既存の側溝120に対して仕切り部材150を容易に取り付けることができる。
【0045】
また、排水構造100では、仕切り部材150が側溝120内に圧入固定されているとよい。これによって、仕切り部材150を側溝120内により安定的に取り付けることができる。このため、例えば、フィルタ層140が仕切り部材150の外に流出するのをよりよく抑制することができる。
【0046】
また、排水構造100は、フィルタ層140と仕切り部材150との間に、仕切り部材150を覆う透水性シート160を有するとよい。フィルタ層140と仕切り部材150との間に透水性シート160を設けることによって、マイクロプラスチックの捕捉機能を向上させることができる。また、側溝120内に入り込んだマイクロプラスチックによって仕切り部材150が目詰まりするのを抑制することができ、仕切り部材150の透水性が低下するのを抑制することができる。例えば、フィルタ材が砂、砕石等である場合、透水性シート160は、フィルタ材とマイクロプラスチックとによる仕切り部材150の目詰まりを抑制しうる。あるいは、フィルタ材が不織布である場合、透水性シート160は、マイクロプラスチックによる仕切り部材150の目詰まりを抑制しうる。
【0047】
特に限定するものではないが、透水性シート160の、マイクロプラスチックとフィルタ材(例えば、細粒粒状物)とを捕捉することによる仕切り部材150の目詰まり抑制効果を向上させる観点から、透水性シート160は、所定の期間毎(例えば、10年毎、あるいは、3年~5年毎)に交換できる部分を有していることが好ましい。この場合において、例えば、透水性シート160は、上部と下部とに分割されうるように構成されているとよい。透水性シート160の上部は、例えば、フィルタ層の上面141(図3参照)よりも上側の部分である。透水性シート160の下部は、例えば、フィルタ層の上面141(図3参照)よりも下側の部分である。
【0048】
透水性シート160の上部が、上記交換できる部分であるとよい。透水性シート160の上部は、例えば、フィルタ層140の上面141に落ち込んだマイクロプラスチックが仕切り部材150の空隙に流入するのを抑制する部位である。この部分を交換して清掃できるように構成しておくことで、透水性シート160のマイクロプラスチック捕捉機能を高い状態で維持することができる。一方で、例えば、フィルタ層140が適切なフィルタ機能を有し、排水管130が適切な濾過機能を有している限り、透水性シート160の下部がマイクロプラスチックと接触することはないといえる。このため、上述の上部と比べて、下部を交換したり、清掃したりする必要性は低いといえる。
【0049】
以上、ここで開示される人工芝の排水構造について説明したが、ここで開示される人工芝の排水構造は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態や変形例に限定されない。また、上述した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。
【0050】
本発明(1)は、人工芝の排水構造に関する。ここで、本発明(1)における人工芝の排水構造は、
人工芝が敷設される人工芝敷設領域の周囲に設けられた側溝と、
前記側溝内に配置され、該側溝に沿って延びる透水性の排水管と、
前記側溝内において、前記排水管を覆うフィルタ層と、
前記側溝内に配置され、該側溝を仕切るとともに、前記排水管が取り付けられる貫通孔が設けられた仕切り部材と、
を備えている。
【0051】
本発明(2)は、前記仕切り部材が弾性変形可能なブロック体である、本発明(1)に記載された排水構造である。
【0052】
本発明(3)は、前記仕切り部材が前記側溝内に圧入固定されている、本発明(1)または(2)に記載された排水構造である。
【0053】
本発明(4)は、さらに、前記フィルタ層と前記仕切り部材との間に、前記仕切り部材を覆う透水性シートを有する、本発明(1)から(3)までの何れか一項に記載された排水構造である。
【符号の説明】
【0054】
100 排水構造
110 人工芝敷設領域
111 人工芝
112 舗装面
120 側溝
121 溝
122 蓋
130 排水管
140 フィルタ層
150 仕切り部材
160 透水性シート
170 集水桝
170h 接続孔
180 外部排水管
190 接続パイプ
図1
図2
図3
図4
図5