(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046823
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】電子時計、データ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G04G 21/04 20130101AFI20240329BHJP
G04G 21/00 20100101ALI20240329BHJP
G04R 20/02 20130101ALI20240329BHJP
G04G 21/02 20100101ALI20240329BHJP
G04G 19/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G04G21/04
G04G21/00 D
G04R20/02
G04G21/02
G04G19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152133
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾下 佑樹
【テーマコード(参考)】
2F002
【Fターム(参考)】
2F002AA07
2F002AD07
2F002GA04
2F002GA06
(57)【要約】
【課題】より効率よく機能動作を制御することのできる電子時計、データ処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】電子時計(1)は、計時動作を制御する第1マイコン(11)と、第1マイコン(11)よりも演算処理能力の高い第2マイコン(12)と、第2マイコン(12)により制御される情報取得部としての衛星電波受信処理部(18)及び計測部(20)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時動作を制御する第1の制御部と、
前記第1の制御部よりも演算処理能力の高い第2の制御部と、
前記第2の制御部により制御される情報取得部と、
を備える電子時計。
【請求項2】
前記第2の制御部は現在時刻の計数を行わない、請求項1記載の電子時計。
【請求項3】
前記第2の制御部は、低負荷処理時の電力効率が前記第1の制御部よりも低く、高負荷処理時の電力効率が前記第1の制御部よりも高い、請求項1記載の電子時計。
【請求項4】
前記情報取得部には、衛星からの電波を受信して測位に係る演算処理を行う衛星電波受信処理部と、物理量を計測する計測部と、のうち少なくとも一方が含まれる請求項1記載の電子時計。
【請求項5】
前記情報取得部は、測位衛星からの電波を受信して測位に係る演算処理を行う衛星電波受信処理部と、物理量を計測する計測部と、を含み、
前記第2の制御部は、前記衛星電波受信処理部の測位データと前記計測部の計測データとを統合処理する
請求項1記載の電子時計。
【請求項6】
前記第1の制御部により制御されて外部機器との通信を行う通信部を備え、
前記第1の制御部は、前記第2の制御部が前記情報取得部から取得したデータを前記通信部により外部機器へ送信させる
請求項1記載の電子時計。
【請求項7】
前記第1の制御部及び前記第2の制御部から共通に読み書き可能な記憶部を備え、
前記情報取得部が取得したデータは、前記記憶部に記憶され、
前記第1の制御部は、前記記憶部から前記データを読み出して前記通信部により外部機器へ送信させる
請求項6記載の電子時計。
【請求項8】
前記第1の制御部により制御される表示部を備え、
前記第1の制御部は、前記第2の制御部が前記情報取得部から取得したデータに基づく表示を前記表示部により行わせる
請求項1記載の電子時計。
【請求項9】
前記第2の制御部は、前記情報取得部の動作が停止されている状況で動作を中断することが可能である請求項1記載の電子時計。
【請求項10】
計時動作を制御する第1の制御部と、前記第1の制御部よりも演算処理能力の高い第2の制御部と、情報取得部と、を備え、前記情報取得部は、測位衛星からの電波を受信して測位に係る演算処理を行う衛星電波受信処理部と、物理量を計測する計測部と、を含む電子時計のデータ処理方法であって、
前記第2の制御部が、前記情報取得部の動作を制御し、前記衛星電波受信処理部から取得した測位データと前記計測部から取得した計測データと、を時系列的に統合処理する
データ処理方法。
【請求項11】
計時動作を制御する第1の制御部と、前記第1の制御部よりも演算処理能力の高い第2の制御部と、情報取得部と、を備え、前記情報取得部は、測位衛星からの電波を受信して測位に係る演算処理を行う衛星電波受信処理部と、物理量を計測する計測部と、を含む電子時計のコンピュータを、
前記第2の制御部が、前記情報取得部の動作を制御し、前記衛星電波受信処理部から取得した測位データと前記計測部から取得した計測データと、を時系列的に統合処理する統合手段
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子時計、データ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子時計、特に腕時計型などの携帯や身体装着の可能なものには、時計としての機能に加えて多様な機能を有するものがある。このような付加的な機能には、ユーザのアクティビティ計測やバイタルの計測、位置情報や周囲の環境情報の取得、通信機能などがある。
【0003】
一方で、このような電子時計にとって付加的な機能を主として、時計としても利用可能な端末装置として、スマートウォッチが知られている。特許文献1には、演算処理能力とそれに応じた消費電力の異なる2つのマイコンを有するスマートウォッチが開示されている。このスマートウォッチでは、通常処理を演算処理の力の高い方のメインマイコンに行わせる一方、他方のサブマイコンに最低限の計時動作及び時刻表示動作を行わせている。スマートウォッチの待機時などにはメインマイコンをオフすることで、低消費電力で最低限の計時動作を継続的に実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、衛星電波受信処理モジュールや計測部などを演算処理能力の低いサブマイコンに接続して動作させている。その結果、取得データを一度サブマイコンを介してメインマイコンへ送らねばならなかった。
【0006】
この発明の目的は、2つの制御部を備える電子時計において、より効率よく機能動作を制御することのできる電子時計、データ処理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
計時動作を制御する第1の制御部と、
前記第1の制御部よりも演算処理能力の高い第2の制御部と、
前記第2の制御部により制御される情報取得部と、
を備える電子時計である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、電子時計においてより効率よく機能動作を制御することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の電子時計の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】計測制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図3】(a)データ出力制御処理及び(b)データ表示制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の電子時計1の機能構成を示すブロック図である。
【0011】
電子時計1は、第1マイコン11(マイクロコントローラユニット、MCU)(第1の制御部)と、第2マイコン12(第2の制御部)と、記憶部13と、計時部14と、表示部15と、操作受付部16と、通信部17と、衛星電波受信処理部18と、計測部20などを備える。
【0012】
第1マイコン11は、CPU111(Central Processing Unit)と、RAM112(Random Access Memory)などを備える。CPU111は、演算処理を行いプログラムに従って制御動作を行うプロセッサである。RAM112は、CPU111に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。また、第1マイコン11は、図示略の入出力インターフェイスなどを有している。第1マイコン11は、計時部14、表示部15、操作受付部16及び通信部17を直接制御する。第1マイコン11は、継続的に動作する。第1マイコン11は、低負荷の演算処理、特に時刻の計数及びその表示に係る制御動作に好適に設計されており、低負荷時に低消費電力で効率よく動作する。一方で、第1マイコン11は、高負荷がかかると処理効率が低下して、消費電力が負荷の増大分に比して大きく上昇する。第1マイコン11は、電力供給が不足しているなどの場合を除き継続的に動作を行う。
【0013】
第2マイコン12は、CPU121と、RAM122などを備える。CPU121は、CPU111よりも演算処理能力が高い。これに伴い、第2マイコン12は、基本となる消費電力が第1マイコン11よりも大きい。一方で第2マイコン12は、第1マイコン11にとっては高負荷となる処理を効率よく速やかに行うことができる。したがって、第2マイコン12がこれらの処理を制御することで、第1マイコン11に制御させるよりも処理全体での消費電力が小さくなる。すなわち、第2マイコン12は、低負荷処理時の電力効率が第1マイコン11よりも低く、高負荷処理時の電力効率が第1マイコン11よりも高い。RAM122は、CPU121に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。また、第2マイコン12は、図示略の入出力インターフェイスなどを有している。第2マイコン12は、衛星電波受信処理部18と、計測部20とを直接的に制御し、これらから得られた計測データや算出データの処理を行う。第2マイコン12は、衛星電波受信処理部18が停止され、かつ計測部20からデータを取得しない場合には第1マイコン11の制御により又は自発的に動作が停止(中断)されてもよい。また、第2マイコン12は、第1マイコン11(計時部14)と別個に現在時刻(日時)の計数を行わない。
第1マイコン11及び第2マイコン12が本実施形態の電子時計1のコンピュータを構成する。
【0014】
記憶部13は、プログラム131や各種設定データなどを記憶する不揮発性メモリである。記憶部13は、例えば、フラッシュメモリであるがこれに限られない。記憶部13は、少なくとも一部が第1マイコン11及び第2マイコン12のいずれからも共通にアクセス(読み書き)が可能である。
【0015】
計時部14は、図示略の発振回路が出力するある周波数、例えば、約32.768kHzの周波数信号を分周し、適宜な頻度で間引いて1秒ごとに計時信号を出力する論理緩急部を有する。第1マイコン11は、この計時部14から出力された計時信号に基づいて現在日時(少なくとも時刻)を計数、特定する計時動作を制御する。これにより、第1マイコン11は、概ね通常の電子時計1の日時計数精度、例えば、一日当たり0.5秒以下のずれの範囲内で現在日時を特定することができる。
【0016】
表示部15は、例えば、デジタル表示画面を有し、第1マイコン11の制御に基づいて現在時刻やその他の機能動作に応じた内容の簡易な表示をこの表示画面に行わせる。デジタル表示画面は、特には限られないが、ドットマトリクス状の液晶表示画面(LCD)である。
【0017】
操作受付部16は、ユーザなどの外部からの入力操作を受け付けて、入力操作に応じた操作信号を第1マイコン11へ出力する。操作受付部16は、例えば、表示画面に重なって位置するタッチパネルを有する。これに加えて又は代えて、操作受付部16は、押しボタンスイッチや回転操作部(りゅうず)などを有していてもよい。
【0018】
通信部17は、外部機器との間でデータの送受信が可能な通信規格に従ってデータ通信を制御する。通信部17は、例えば、ブルートゥース(登録商標)に係る通信制御が可能なアンテナ及びモジュールを有する。この場合の通信規格は、大容量データを高速転送するようなものではなくてもよく、例えば、ブルートゥースローエナジー(BLE)であってもよい。特には限られないが、BLEによる通信接続は、ユーザ操作により切断要求がされたとき、電力供給が不足した場合、及び接続先との通信ができない場合(外部機器の電源がオフされているなど)以外は常時接続されていてもよい。
【0019】
衛星電波受信処理部18は、受信部181を有し、GNSS(Global Navigation Satellite System)に係る測位衛星からの電波を受信、復調する。受信対象の測位衛星には、例えば、GPS(Global Positioning System)に関連する衛星が含まれていてもよい。衛星電波受信処理部18は、復調された電波信号に基づいて現在日時を特定し(外部から現在時刻情報を取得し)、また、現在位置を算出(測位)する演算処理を行う。
【0020】
衛星電波受信処理部18は、第2マイコン12により動作制御され、必要に応じて電力供給(動作)の有無を切り替えられる。衛星電波受信処理部18は、動作時には測位結果などを含む測位データを第2マイコン12へ出力する。衛星電波受信処理部18は、これらデータ取得及び出力に係る切り替えなどを制御するCPUを有していてもよい。
【0021】
計測部20は、物理量を計測するセンサなどを有し、ある間隔(計測間隔)で当該センサの計測結果を第2マイコン12へ出力する。センサには、例えば、ユーザの運動状態や移動方向を計測するための加速度センサ21などや、ユーザのバイタルの状態を検出するための脈拍センサ22などが含まれる。脈拍センサ22は、周知の技術を利用したものであってもよい。例えば、脈拍センサ22は、装着されている腕に対してある波長の光を出射してその反射強度の変動周期により脈拍を特定するものであってもよい。各センサの計測値は、デジタルデータに変換され、日時と対応付けられてそれぞれ第2マイコン12へ出力される。あるいは、計測値のデジタルデータのみが第2マイコン12へ出力されてもよい。この場合、第2マイコン12は、デジタルデータの取得タイミングの日時を第1マイコン11から取得して、デジタルデータに対応付けてもよい。
衛星電波受信処理部18及び計測部20が本実施形態の情報取得部を構成する。すなわち情報取得部は、時計としての根幹動作である時刻の計数取得及びその表示に係る情報のやり取りとは異なる追加的であって限定的な時間範囲内で情報を取得する。
【0022】
電子時計1は、上記に加えて、ユーザが当該電子時計1(自機)を腕に装着しているか否かを検出するセンサを有していてもよい。あるいは、電子時計1は、計測部20の計測結果に基づいてユーザが自機を腕に装着しているか否かを判断してもよい。たとえば、電子時計1は、加速度センサ21の計測結果に基づいて自機が腕に装着されている可能性があるか否かを判断する。加速度センサ21の計測値に変化がない場合には、電子時計1が使用されずに静置されているものと考えられる。加速度センサ21の計測値に変化がある場合には、更に電子時計1は、適宜な間隔で脈拍センサ22により光を出射させ、得られた反射強度が想定される範囲内であるかによって腕に装着されている可能性があるかを判断する。
【0023】
あるいは、電子時計1は、傾斜センサ及び/又は照度センサなどを有してもよい。傾斜センサは、傾斜状況に係る検出データを第1マイコン11に出力する。照度センサは、電子時計1へ入射する光の照度の計測データを第1マイコン11に出力する。第1マイコン11は、これらの入力データに基づいてユーザによる電子時計1の利用状況を判別してもよい。
【0024】
上記の傾斜センサや照度センサは、計測部20の計測結果の出力に比して検出結果の出力頻度や出力データ量が小さくてもよく、第1マイコン11の処理負荷を大きく上昇させない。一方で、これらの検出動作は、第2マイコン12の動作状況にかかわらず継続的に行われてもよい。
【0025】
次に、本実施形態の電子時計1におけるデータ処理について説明する。
電子時計1では、第2マイコン12が衛星電波受信処理部18及び計測部20を制御して、それらの出力データを取得し、処理する。
【0026】
取得されたデジタルデータは、第2マイコン12により必要な処理が行われる。処理には、例えば、座標変換、初期的なオフセット値の除去や複数データの統合などのうち少なくとも一部が含まれていてもよい。
【0027】
複数データの統合に係る処理(統合処理)は、すなわち、衛星電波受信処理部18からの取得データと計測部20の各センサからの取得データとを対応付ける処理である。例えば、個々の計測値を毎秒の値に線形補間などで変換してタイミングを合わせた統合データが生成されてもよい。あるいは、特定のデータ、例えば、衛星電波受信処理部18による測位結果が得られたタイミングに対し、他の計測値のタイミングが合わされた統合データが生成されてもよい。これらの処理は、第1マイコン11にとって高負荷処理に当たる。
【0028】
このようにして取得、処理された計測データ(ここでは統合データ)は、統合データ132として記憶部13に記憶される。第1マイコン11は、第2マイコンの処理とは独立して、記憶部13に記憶されたデータを読み出すことができる。ただし、第2マイコン12による書き込み処理がなされているデータに対しての読出しは制限される。第1マイコン11は、アクティビティ管理アプリや健康管理アプリなどがインストールされている外部機器に対して記憶部13に記憶されたデータを送信する。また、第1マイコン11は、表示部15に表示させる内容に係るデータを記憶部13から読み出す。なお、電子時計1は、計測結果の一部又は全部を略リアルタイムで表示部15に表示可能であってもよい。この場合には、第1マイコン11は、第2マイコン12から直接処理済データ又は処理済データに基づいて生成された表示用画像データを取得すればよい。
【0029】
衛星電波受信処理部18及び計測部20による計測動作は、例えば、アクティビティ計測の開始に係るユーザからの入力操作が受け付けられることで開始される。また、計測動作は、例えば、当該アクティビティ計測を終了する命令がユーザの入力操作が受け付けられることで終了される。また、上記に加えて、計測部20は、ユーザの入力操作などにより予め設定されている場合には、第2マイコン12が動作している間、継続的に、例えば脈拍センサ22の計測動作が継続されてもよい。
【0030】
図2は、電子時計1で実行される計測制御処理の第2マイコン12のCPU121による制御手順を示すフローチャートである。この計測制御処理は、例えば、ユーザによる入力操作によりアクティビティ計測の開始要求が受け付けられた場合に開始される。
【0031】
CPU121は、衛星電波受信処理部18に対し、測位衛星からの電波受信を開始して測位動作を行うように要求し、測位結果の取得を開始する(ステップS201)。CPU121は、計測部20からの計測データの取得を開始する(ステップS202)。
【0032】
CPU121は、取得データの各々について前処理を行う(ステップS203)。前処理には、上記の座標変換やオフセット値の調整などが含まれ得る。CPU121は、調整済みの各取得データを統合する処理(統合処理)を行う(ステップS204;統合手段)。
【0033】
CPU121は、前処理及び統合のなされたデータを統合データ132として記憶部13に記憶させる(ステップS205)。なお、記憶部13への書き込み処理は、統合されたデータの各々について個別に行われるのではなくてもよい。CPU121は、予め定められた個数の統合されたデータをRAM122にバッファリングしてからまとめて記憶部13に書き込んでもよい。
【0034】
CPU121は、計測を終了する要求が受け付けられたか否かを判別する(ステップS206)。要求は、操作受付部16への入力操作などによりなされる。計測を終了する要求が受け付けられていないと判別された場合には(ステップS206で“NO”)、CPU121の処理は、ステップS203に戻る。
【0035】
計測を終了する要求が受け付けられたと判別された場合には(ステップS206で“YES”)、CPU121は、衛星電波受信処理部18に電波受信の終了を要求する(ステップS207)。CPU121は、計測部20からの計測データの取得を終了する(ステップS208)。そして、CPU121は、計測制御処理を終了する。
【0036】
図3は、電子時計1で実行される(a)データ出力制御処理及び(b)データ表示制御処理の第1マイコン11のCPU111による制御手順を示すフローチャートである。
【0037】
図3(a)に示すデータ出力制御処理は、例えば、アクティビティ計測が終了した場合にまとめて、又はアクティビティ計測中に適宜な間隔で実行される。
【0038】
CPU111は、通信部17を介して外部機器との通信接続がなされているか否かを判別する(ステップS101)。通信接続がなされていると判別された場合には(ステップS101で“YES”)、CPU111の処理は、ステップS103へ移行する。通信接続がなされていないと判別された場合には、CPU111は、外部機器との間で通信接続を確立する(ステップS102)。それから、CPU111の処理は、ステップS103へ移行する。
【0039】
ステップS103の処理へ移行すると、CPU111は、記憶部13の統合データ132が第2マイコン12のCPU121による書込み動作中であるか否かを判別する(ステップS103)。書き込み動作中であると判別された場合には(ステップS103で“YES”)、CPU111は、ステップS103の処理を繰り返す。なお、CPU111は、ステップS103の処理を繰り返す前にある時間待機してもよい。
【0040】
統合データ132の書き込み動作中ではないと判別された場合には(ステップS103で“NO”)、CPU111は、記憶部13から統合データ132を読み出す(ステップS104)。CPU111は、読み出した統合データ132を規定のフォーマットで順次外部機器へ通信部17により送信させる(ステップS105)。なお、ステップS104、S105の処理は、適宜なサイズのデータ部分ずつ並列に実行されてもよい。
【0041】
CPU111は、統合データ132の全データを送信したか否かを判別する(ステップS106)。全データが送信されていない(送信されていないデータがある)と判別された場合には(ステップS106で“NO”)、CPU111の処理は、ステップS103に戻る。全データが送信されたと判別された場合には(ステップS106で“YES”)、CPU111は、データ出力制御処理を終了する。
【0042】
図3(b)に示すデータ表示制御処理は、例えば、アクティビティ計測の実行中やアクティビティ計測の終了時に間欠的に実行されるものである。CPU111は、第2マイコン12から統合データを取得する(ステップS111)。第2マイコン12のCPU121は、上記のように生成したRAM122上の統合データを略リアルタイムで、CPU111からの要求に応じて第1マイコン11へ送信してもよい。あるいは、CPU121は、一度記憶部13に記憶させた統合データ132を再度読み出して送信してもよい。CPU121は、CPU111からの要求に応じて統合データ132の必要な部分を順次読み出してもよい。あるいは、CPU121は、表示動作の開始時など、CPU111から統合データが要求される前の任意なタイミングで統合データ132の一部又は全部を読み出しておいてもよい。CPU111は、取得した統合データに基づく表示内容を設定し、当該表示内容を表示部15により表示させる(ステップS112)。そして、CPU111は、データ表示制御処理を終了する。
【0043】
以上のように、本実施形態の電子時計1は、計時動作を制御する第1マイコン11と、第1マイコン11よりも演算処理能力の高い第2マイコン12と、第2マイコン12により制御される情報取得部としての衛星電波受信処理部18及び計測部20と、を備える。
この電子時計1では、演算処理能力の高い第2マイコン12に情報取得部の動作をまとめて制御させる。これにより、電子時計1は、第2マイコン12により快適に情報取得部を動作させることができる。一方で、電子時計1は、処理能力の低い第1マイコン11に過大な負荷がかかるのを避けることができる。したがって、電子時計1では、情報取得部の機能動作が効率よく行われ、これに応じて電力消費量もより好適に抑えることができる。特に、電子時計1は、時計としての計時、表示機能を最優先とする。このような電子時計1において、上記構成により、計時、表示機能を低負荷で長期間安定して動作させるのに特化した第1マイコン11に過大な負荷がかかりにくくなる。したがって、電子時計1は、第1マイコン11の動作が不安定になったり無駄に消費電力量が増大したりしにくいので、安定して時計としての機能を維持することができる。
【0044】
また、第2マイコン12は、現在時刻の計数を行わない。上記のように、第1マイコン11の過大な負荷が避けられることで、第1マイコン11による時刻の計数を安定して継続することができる。したがって、第2マイコン12では現在時刻の計数が必要ない。これにより、電子時計1は、第1マイコン11と第2マイコン12との間で計数する日時の同期を頻繁にとる必要がなくなる。また、電子時計1は、第2マイコン12が時刻を計数するための第2の計時部を備える必要がなくなる。
【0045】
また、第2マイコン12は、低負荷時の電力効率が第1マイコン11よりも低く、高負荷処理時の電力効率が第1マイコン11よりも高い。したがって、電子時計1は、情報取得部の動作の制御や統合処理などの第1マイコン11にとって高負荷な処理を効率よく第2マイコン12に実行させることができる。また、同等の処理を第1マイコン11により実行させる場合に比べて、電力消費量の増加が抑えられる。一方で、電子時計1は、第1マイコン11が効率よく日時の計数及び表示に係る機能を実行させることができる範囲に、当該第1マイコン11の負荷を留めやすくなる。
【0046】
また、情報取得部には、衛星からの電波を受信して測位に係る演算処理を行う衛星電波受信処理部18と、物理量を計測する計測部20と、のうち少なくとも一方が含まれる。このように計測により継続的にデータを生成する機能動作の当該データを容易に適切に処理し、記憶部に記憶させることができるので、電子時計1の動作が効率的になる。
【0047】
あるいは、情報取得部は、衛星電波受信処理部18と計測部20とを含む。第2マイコン12は、衛星電波受信処理部18の測位データと計測部20の計測データとを統合処理する。このように、電子時計1では、複数の取得データ(計測データ)が第1マイコン11を介さずに統合処理可能になる。したがって、電子時計1では、第1マイコン11に過大な負荷をかけず、すなわち第1マイコン11の非効率な処理動作により電力消費量を大きく増大させずに、第2マイコン12により効率よく処理を行うことができる。
【0048】
また、電子時計1は、第1マイコン11により制御されて外部機器との通信を行う通信部17を備える。第1マイコン11は、第2マイコン12が情報取得部から取得したデータを通信部17により外部機器へ送信させる。
外部機器との通信を第1マイコン11により制御させることで、特に第2マイコン12に接続された情報取得部の動作がないような場合に第2マイコン12の動作をオフさせても、外部からの受信動作などを安定して継続させることができる。特に、BLEのように低消費電力で継続的な通信が可能な通信規格については、第1マイコン11に高負荷をかけないので第1マイコン11に接御させる方が効率がよい。
【0049】
また、電子時計1は、第1マイコン11及び第2マイコン12から共通に読み書き可能な記憶部13を備える。情報取得部が取得したデータは、記憶部13に記憶される。第1マイコン11は、記憶部13からこのデータを読み出して通信部17により外部機器へ送信させる。このような記憶部13により、第2マイコン12による書き込み動作とは別個に第1マイコン11が取得データを外部に送信することができる。したがって、第2マイコン12による情報取得部の制御が終わった後に第2マイコン12の動作をオフしても第1マイコン11によりデータ送信が可能である。よって、電子時計1では、効率よくデータの取得と送信出力とがそれぞれ可能になる。
【0050】
また、電子時計1は、第1マイコン11により制御される表示部15を備える。第1マイコン11は、第2マイコン12が情報取得部から取得したデータに基づく表示を表示部15により行わせる。このように、電子時計1は、時計に係る機能として必須である時刻の表示を行う表示部15の制御を第1マイコン11により行わせるので、継続的に安定して時刻表示が可能となる。情報取得部により取得されたデータも第1マイコン11が制御して表示部15に表示させてもよい。この表示も第2マイコン12の動作から切り離されることで、効率的に行われ得る。
【0051】
また、第2マイコン12は、情報取得部の動作が停止されている状況で動作を中断することが可能である。すなわち、第2マイコン12が情報取得部を制御する必要がない場合には、第2マイコン12自身の動作も停止させてもよい。このように、一時的に動作する機能に係る部分を第2マイコン12が制御することで、不要な場合には、電子時計1では、第2マイコン12を容易にオフすることができる。したがって、夜間などユーザが電子時計1を不使用時には、効率的に電力消費量を抑えて(低減させて)低消費電力で時計に係る処理などの必要な処理のみを行うことができる。
【0052】
また、本実施形態のデータ処理方法は、計時動作を制御する第1マイコン11と、第1マイコン11よりも演算処理能力の高い第2マイコン12と、情報取得部と、を備え、情報取得部は、測位衛星からの電波を受信して測位に係る演算処理を行う衛星電波受信処理部18と、物理量を計測する計測部20と、を含む電子時計のデータ処理方法である。このデータ処理方法では、第2マイコン12が、情報取得部の動作を制御し、衛星電波受信処理部18から取得した測位データと計測部20から取得した計測データと、を時系列的に統合処理する。
このように、本実施形態のデータ処理方法では、電子時計1において、計時動作を制御する第1マイコン11から切り離して各種追加的な情報取得に係る処理を第2マイコン12に行わせる。したがって、処理能力の低い第1マイコン11の負荷を上げずに安定的に時刻の計数(計時)を行わせることができる。これと同時に、当該第1マイコン11の処理を要さずに、演算処理能力の高い第2マイコン12により効率よく必要な演算処理及び取得データの演算記憶処理を行わせることができる。よって、このデータ処理方法では、時計に係る機能と並行して、より効率よく時計以外の機能動作を電子時計1に行わせることができる。
【0053】
また、本実施形態のプログラム131は、上記のデータ処理方法に係る機能動作を電子時計1のコンピュータにより適切に行わせることができる。よって、従来よりも時計としての機能を安定して継続させながら、電子時計1に多機能動作を効率よく行わせることができる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、アクティビティ計測の実行時に衛星測位や計測部20による計測に係る動作を行わせたが、これに限られない。例えば、健康管理情報などが適宜な間隔で取得されるのであってもよいし、仕事上の勤務管理や入室管理などに用いられるのであってもよい。
【0055】
また、電子時計1は、衛星電波受信処理部18と計測部20の両方を備えていなくてもよい。すなわち、電子時計1は、これらのうちいずれか一方のみを備えていてもよい。また、電子時計1が計測部20を有しない場合や、衛星電波受信処理部18を有さず、かつ計測部20が単一のセンサのみを有する場合などには、複数の取得データ(計測データ)の統合処理を行う必要はない。また、そもそも統合する必要の無いデータ同士を統合する必要はない。
【0056】
また、電子時計1は、第2マイコン12により制御される機能構成として、衛星電波受信処理部18と計測部20以外のものを有していてもよい。例えば、電子時計1は、外部の計測機器からWiFi(無線LAN)などを用いて第2マイコン12の制御により計測データを取得してもよい。あるいは、電子時計1は、NFC(Near Field Communication)機能を用いて認証情報の要求を受信したり、アクティビティ時の通過点の通過確認を行ったりしてもよい。
【0057】
また、通信部17は、BLEのように継続的な通信を行うもの以外が第2マイコン12により間欠起動されて動作制御されてもよい。この場合には、記憶部13は、第1マイコン11が読み書きする部分と第2マイコン12が読み書きする部分とが異なっていてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、単一の第2マイコン12が衛星電波受信処理部18及び計測部20の両方の動作を制御するものとして説明したが、これに限られない。各機能動作を行う構成を別個の第2マイコン12が制御してもよい。この場合、記憶部13への読み書きやデータの統合処理は、更に別個の第2マイコン12により行われてもよいし、いずれかの機能動作に係る第2マイコンにより併せて実行されてもよい。
【0059】
また、第1マイコン11が制御する表示部15は、アクティビティ計測の途中経過をリアルタイム表示することができなくてもよい。あるいは、表示部15は、第2マイコン12を介さずに計測可能な経過時間のみ、アクティビティの計測実行を示す表示とともに表示可能であってもよい。
【0060】
また、第1マイコン11は、記憶部13から第2マイコン12により記憶された統合データ132を直接読み出して、読み出したデータの内容に基づく表示制御を行ってもよい。第1マイコン11は、第2マイコン12を介さずに表示制御動作が可能となる。この場合、第1マイコン11が第2マイコン12による書き込みアドレスを特定できる必要がある。例えば、第2マイコン12は、ある基準タイミングのデータの記憶アドレスを第1マイコン11に伝えておき、以降のデータを(データ欠損などにかかわらず)基準タイミングからの時間差に応じたアドレスに記憶させていく。
上記実施形態のように第1マイコン11の要求に従って第2マイコン12が統合データを記憶部13から読み出す場合には、第2マイコン12は、自身で把握している限り任意に統合データの記憶位置などを定め、変更することができる。また、第2マイコン12が記憶部13へのアクセス(読み書き)の処理順及びタイミングを適宜設定することができる。
【0061】
また、上記実施の形態では、第2マイコン12が統合データを第1マイコン11に送って、第1マイコン11が具体的な表示内容に応じた表示制御を行うものとして説明したが、これに限られない。表示部15に表示させる画像データを生成する処理が第1マイコン11にとって過大な負荷となる場合には、第2マイコン12が統合データに基づいた画像データや画像表示用の制御データなどを生成して第1マイコン11に送ってもよい。
【0062】
また、データの統合処理は、時系列的にタイミングを調整する処理に限られない。例えば、異なる空間座標系で計測されたデータを座標変換して統一する処理なども統合処理に含まれる。これに加えて又は代えて、一方の計測データに基づいて他方の計測データが補正されてもよい。また、計測データは、簡単な解析、換算処理がなされてもよい。例えば、加速度計測データに基づいてユーザの歩数が算出されてもよい。また、歩数が歩行によるものか走行によるものかなどの判別が行われて付加情報として出力データに追加されてもよい。また、気圧の計測データが高度(標高)に換算されてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、第1マイコン11が計時動作を制御し、第2マイコン12が日時の計数を行わないものとして説明したが、必ずしも第2マイコン12が一切の計時動作を行わないことを意味するものではない。必要に応じて第2マイコン12が一時的に第1マイコン11と並行して日時の計数を行ってもよい。
【0064】
また、以上の説明では、本発明の動作制御に係るプログラム131を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体としてフラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどからなる記憶部13を例に挙げて説明したが、これらに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、MRAMなどの他の不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)や、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0065】
1 電子時計
11 第1マイコン
111 CPU
112 RAM
12 第2マイコン
121 CPU
122 RAM
13 記憶部
131 プログラム
132 統合データ
14 計時部
15 表示部
16 操作受付部
17 通信部
18 衛星電波受信処理部
181 受信部
20 計測部
21 加速度センサ
22 脈拍センサ