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特開2024-46826身体装着型電子機器、判定基準設定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046826
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】身体装着型電子機器、判定基準設定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20240329BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A61B5/0245 B
A61B5/0245 100B
A61B5/107 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152140
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粕尾 智夫
(72)【発明者】
【氏名】三宅 毅
(72)【発明者】
【氏名】野村 敬一
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA10
4C017AB02
4C017AC26
4C017DD14
4C038VA04
4C038VA06
4C038VB11
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】より正確に着脱の判定が可能な身体装着型電子機器、判定基準設定方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】身体装着型電子機器は、ユーザの身体への装着面の側からある波長の光を出射する発光部と、ある波長の光の入射光量を計測する受光部と、自機の装着部位の姿勢を計測する姿勢計測部と、制御部と、を備える。制御部は、姿勢計測部の計測結果に基づいて装着部位の姿勢を判定する。制御部は、装着部位が基準姿勢である場合の入射光量に基づいて、着脱状態を判別するための第1の基準値を設定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの身体への装着面の側からある波長の光を出射する発光部と、
前記ある波長の光の入射光量を計測する受光部と、
自機の装着部位の姿勢を計測する姿勢計測部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記姿勢計測部の計測結果に基づいて前記装着部位の姿勢を判定し、
前記装着部位が基準姿勢である場合の前記入射光量に基づいて、着脱状態を判別するための第1の基準値を設定する
身体装着型電子機器。
【請求項2】
前記基準姿勢は、予め定められている請求項1記載の身体装着型電子機器。
【請求項3】
操作受付部を備え、
前記制御部は、前記操作受付部により前記第1の基準値を設定する要求を受け付けた場合に、前記第1の基準値の設定に係る処理を行う
請求項1記載の身体装着型電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1の基準値の設定後、着脱判定が行われている状態で前記装着部位が前記基準姿勢にあるか否かを判別し、自機が前記装着部位に装着された状態で前記装着部位が前記基準姿勢にあると判別された場合の前記入射光量を取得し、
取得した前記入射光量の時間変化に基づいて、前記第1の基準値を調整する
請求項1~3のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、前記装着部位の複数の姿勢での前記入射光量を取得し、取得した当該入射光量を比較することで前記基準姿勢を特定する請求項1記載の身体装着型電子機器。
【請求項6】
前記基準姿勢は、前記複数の姿勢のうち前記入射光量が最小となる姿勢である請求項5記載の身体装着型電子機器。
【請求項7】
ユーザに対する報知動作を行う報知動作部を備え、
前記複数の姿勢が予め定められており、
前記制御部は、前記報知動作部により前記複数の姿勢をユーザに取らせるように各々指定する報知動作を行わせて、前記複数の姿勢での前記入射光量をそれぞれ取得する
請求項5記載の身体装着型電子機器。
【請求項8】
前記制御部は、前記姿勢計測部による計測に基づいて前記複数の姿勢がそれぞれ維持されていると判別された場合に、前記入射光量を各々取得する請求項5~7のいずれか一項に記載の身体装着型電子機器。
【請求項9】
前記第1の基準値よりも大きい第2の基準値と前記入射光量とが比較されて、前記入射光量が前記第2の基準値よりも大きい場合に、前記制御部は、非装着状態であると判別する請求項1記載の身体装着型電子機器。
【請求項10】
ユーザの身体への装着面の側からある波長の光を出射する発光部と、前記ある波長の光の入射光量を計測する受光部と、自機の装着部位の姿勢を計測する姿勢計測部と、を備える身体装着型電子機器の着脱を判定するための判定基準設定方法であって、
前記姿勢計測部の計測結果に基づいて、前記装着部位の姿勢を判定し、
前記装着部位が基準姿勢である場合の前記入射光量に基づいて、着脱状態を判別するための第1の基準値を設定する
判定基準設定方法。
【請求項11】
ユーザの身体への装着面の側からある波長の光を出射する発光部と、前記ある波長の光の入射光量を計測する受光部と、自機の装着部位の姿勢を計測する姿勢計測部と、を備える身体装着型電子機器のコンピュータを、
前記姿勢計測部の計測結果に基づいて、前記装着部位の姿勢を判定する判定手段、
前記装着部位が基準姿勢である場合の前記入射光量に基づいて、着脱状態を判別するための第1の基準値を設定する設定手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、身体装着型電子機器、判定基準設定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
腕などの身体に装着されて利用される電子機器がある。装着された身体のバイタル情報などの計測を行う電子機器の場合には、非装着時の計測動作には意味がない。そこで、この電子機器では、身体に装着されているか否かを判断して計測動作の停止や計測結果の廃棄などを行う。
【0003】
特許文献1には、腕に装着されて脈拍の計測を行う電子機器において、脈拍の計測に行う光を利用して装着の有無を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-050743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、装着した状態での光の反射量は、装着時の姿勢などの条件によって異なる。したがって、一律に判定基準を定めると、必ずしも正確に着脱の判定ができない場合があるという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、より正確に着脱の判定が可能な身体装着型電子機器、判定基準設定方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
ユーザの身体への装着面の側からある波長の光を出射する発光部と、
前記ある波長の光の入射光量を計測する受光部と、
自機の装着部位の姿勢を計測する姿勢計測部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記姿勢計測部の計測結果に基づいて前記装着部位の姿勢を判定し、
前記装着部位が基準姿勢である場合の前記入射光量に基づいて、着脱状態を判別するための基準値を設定する
身体装着型電子機器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、身体装着型電子機器において、より正確に着脱の判定が可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本スマートウォッチの機能構成を示すブロック図である。
図2】スマートウォッチの裏面側を示す底面図である。
図3】入射光量の検出例について説明する図である。
図4】判定基準値設定制御処理を示すフローチャートである。
図5】判定基準値設定制御処理の他の例を示すフローチャートである。
図6】判定基準値調整制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の身体装着型電子機器であるスマートウォッチ1の機能構成を示すブロック図である。
【0011】
スマートウォッチ1は、CPU11(Central Processing Unit)(制御部)と、RAM12(Random Access Memory)と、記憶部13と、表示部14と、操作受付部15と、報知動作部16と、通信部17と、計測部18などを備える。
【0012】
CPU11は、演算処理を行い、スマートウォッチ1の動作を統括制御するプロセッサである。CPU11は、単一のプロセッサを有していてもよいし、複数のプロセッサが並列に又は用途などに応じて独立に演算処理を行うのであってもよい。また、CPU11は、汎用のものに限られない。特定の用途に特化して設計、製造されたものが含まれていてもよい。
【0013】
RAM12は、CPU11に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。
少なくともCPU11及びRAM12は、本実施形態のスマートウォッチ1のコンピュータに含まれる。
【0014】
記憶部13は、不揮発性のメモリであり、プログラム131や設定データを記憶する。不揮発性メモリは、例えば、フラッシュメモリであるが、これに限られない。設定データには、後述のようにスマートウォッチ1のユーザの腕への着脱を判定するための基準情報132が含まれる。
【0015】
表示部14は、例えば、デジタル表示画面を有し、CPU11の制御に基づいて各種文字や図形などを表示させることができる。デジタル表示画面は、例えば液晶表示画面(LCD)である。
【0016】
操作受付部15は、外部からの入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作に応じた操作信号をCPU11へ出力する。入力操作の受付は、操作受付部材、例えば、押しボタンスイッチやりゅうずなどによって行われる。あるいは、スマートウォッチ1は、デジタル表示画面に重なって位置するタッチパネルを操作受付部材として有していてもよい。
【0017】
報知動作部16は、ユーザに対する報知動作を行う。報知動作は、例えば、ビープ音の発生や、振動の発生などである。このために報知動作部16は、例えば、圧電素子と重ねられた振動板や、おもり付きモータなどを有していてもよい。
【0018】
通信部17は、外部機器との間でのデータの送受信を制御する。通信部17は、近距離無線通信、例えば、ブルートゥース(登録商標)や無線LANなどに係る通信規格に従ってデータの送受信を制御することができる。通信部17は、これらの通信規格に係る通信周波数の電波を送受信するアンテナを有する。
【0019】
計測部18は、物理量を計測して計測結果をCPU11へ出力する。計測部18は、計測結果をデジタル変換し、適宜なフォーマットのデータに成形してCPU11へ出力することができる。
【0020】
計測部18は、加速度センサ181(姿勢計測部)と、脈拍センサ182とを有する。脈拍センサ182は、着脱センサを兼ねている。
加速度センサ181は、3軸方向、例えば、表示画面に平行な平面内で直交する2軸方向と、当該平面に直交する1軸方向についての加速度を計測する。計測する加速度には、重力加速度が含まれる。したがって、この重力加速度方向を特定することで、スマートウォッチ1の体勢が推測可能となる。スマートウォッチ1がユーザの腕に装着されている状態では、更に当該ユーザの腕(自機の装着部位)の姿勢も計測(推測)可能となる。なお、スマートウォッチ1は、ユーザの左右の腕のどちらにも装着可能である。したがって、必要に応じてどちらの腕に装着されるかについての情報が、操作受付部15への入力操作などにより取得されてもよい。
【0021】
脈拍センサ182は、スマートウォッチ1が装着されているユーザの脈拍を計測して計測結果をCPU11へ出力する。脈拍センサ182は、発光部1821と、受光部1822とを備える。
【0022】
図2は、スマートウォッチ1の裏面側を示す底面図である。
これら発光部1821及び受光部1822は、スマートウォッチ1の筒状の筐体3の一方の端を封止する裏蓋2(ユーザの身体への装着面)の側に位置する。したがって、発光部1821及び受光部1822は、ユーザの腕に装着された状態で当該腕と対向する。発光部1821は、脈拍計測に好適なある波長の光、例えば緑色光を発光して出射させる。受光部1822は、前記発光部1821に対し、当該発光部1821から出射された緑色光が腕の内部(生体内)で反射されて入射される位置にあり、緑色光(ある波長の光)の入射光量を計測する。
【0023】
なお、脈拍センサ182は、動脈血中酸素飽和度(SpO2)を併せて計測可能であってもよい。この場合、脈拍センサ182は、緑色の光に加えて赤色光などを出射、検出可能であってもよい。
【0024】
一方、脈拍センサ182は、上記のように着脱センサとしても動作する。スマートウォッチ1が腕に装着されていない場合には、出射した緑色光が反射されてこないので、入射光量が大きく低減する。したがって、入射光量の絶対値は、スマートウォッチ1が腕に装着されているか否かの判定に利用可能である。
【0025】
着脱センサとしては、発光部1821は、赤外光(IR)を出射可能であってもよい。スマートウォッチ1の未装着時に可視光が出射されると周囲に照射されてまぶしかったり意図しない影響が出たりする場合があるので、未装着時の装着判定には、赤外光が用いられてもよい。
【0026】
次に装着判定動作について説明する。
図3は、入射光量の検出例について説明する図である。
図3(a)に模式的に示すように、当初低入射光量の状態は、スマートウォッチ1が腕に未装着の状態を示す。スマートウォッチ1が腕に装着されると、腕からの反射により、入射光量が大きくなる。また、この場合の入射光量は、血管内の血流に応じて経時的に脈動する。
【0027】
すなわち、ユーザの腕では、心拍に応じて血管内の血液量が増減するのに応じて血中のヘモグロビンによる緑色光の吸収量が周期的に増減する。脈拍センサ182は、この増減を計測してその周期を特定することで、脈拍を計測することができる。脈拍センサ182では、ある期間の平均的な脈拍数を算出して出力する。
【0028】
このようにして得られる入射光量は、実際には、ユーザの腕の状態に応じて異なり得る。ユーザの腕の状態には、腕の姿勢、すなわち、上げ下げや、机などに載置されているか否か、何かを掴んでいるかなど、筋肉の使用状態に応じた短期的に変化するものと、皮膚の日焼け具合などといった短期的には変化しないものとがある。
【0029】
これらの状態に応じて装着時に入射光量が大きく上がらないと、スマートウォッチ1の未装着時との間の入射光量の差が大きくならない。計測例M2のように入射光量の大きな変化を想定して基準値Lth1を着脱判定の基準値を設定すると、腕の状態に応じて計測例M1のように正確にスマートウォッチ1の装着が判定されない場合があり得る。したがって、着脱判定の基準としては、装着時の入射光量としては最小付近のもの(基準値Lth1)に定められることが好ましい。
【0030】
また、上記図3(a)では、スマートウォッチ1を未装着時の入射光量が一定であるとして示した。しかしながら、人によって未装着時におけるスマートウォッチ1の置き場などが異なるので、この未装着時の入射光量も基準値の設定に影響し得る。
【0031】
図3(b)に示すように、スマートウォッチ1を装着した状態で複数の姿勢で各々入射光量を計測することで、最小の入射光量が得られる姿勢が特定される。ここでは、姿勢Eの場合に入射光量が最低となっている。
【0032】
このような最小の入射光量が得られる腕の姿勢は、多くの人の間で概ね一致するが、絶対値としては、日焼けの度合などに応じて人によって異なる。また、腕以外に装着される電子機器では、装着部位ごとに最小の入射光量が得られる姿勢は各々異なる。したがって、スマートウォッチ1では、実使用前又は中途で上記のように実際に入射光量を計測することで、着脱判定に係る適切な判定基準値(第1の基準値)を各々設定する。
【0033】
図4は、本実施形態のスマートウォッチ1で実行される判定基準値設定制御処理のCPU11による制御手順を示すフローチャートである。
この判定基準値設定制御処理は、本実施形態の判定基準設定方法である。判定基準値設定制御処理は、例えば、操作受付部15が当該処理の実行要求に係る入力操作を受け付けたことがCPU11により検出された場合にプログラム131が読み込まれて開始される。
この判定基準値設定制御処理では、最小の入射光量が得られると想定される基準姿勢は、予め定められて、記憶部13の基準情報132に記憶されている。
【0034】
CPU11は、受光部1822による入射光量の計測を開始させる(ステップS101)。CPU11は、加速度センサ181による加速度の計測を開始させる(ステップS102)。
【0035】
CPU11は、適宜な間隔で加速度値を取得する(ステップS103)。CPU11は、加速度値(計測結果)に基づいて、スマートウォッチ1が静止状態であるか否かを判別する(ステップS104)。ここでいう静止状態は、瞬間的な静止ではなく、ある時間継続して重力加速度以外の加速度が十分に小さい状態をいう。スマートウォッチ1が静止状態にはないと判別された場合には(ステップS104で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS103に戻る。
【0036】
スマートウォッチ1が静止状態であると判別された場合には(ステップS104で“YES”)、CPU11は、受光部1822への入射光量を未装着時入射光量として取得する(ステップS105)。
【0037】
CPU11は、報知動作部16や表示部14に対し、スマートウォッチ1を装着するようにユーザに対して報知動作を行わせる(ステップS106)。このとき、CPU11は、上記のようにスマートウォッチ1を左右どちらの腕に装着するかを選択する入力操作を操作受付部15に対して行わせてもよい。
【0038】
CPU11は、加速度値を取得して(加速度センサ181の計測結果に基づいて)、重力加速度方向などに基づいて腕の姿勢を推定(判定)する(ステップS107;判定手段)。CPU11は、腕が予め定められた基準姿勢で静止している(維持されている)か否かを判別する(ステップS108)。ここでの基準姿勢の判別は、例えば、腕の角度について予め設定されたずれの許容量の範囲内に収まっていればよい。なお、静止状態の加速度だけでは姿勢が一意に定まらない場合には、腕の移動に係る加速度の変化を追ってもよい。あるいは、CPU11は、単純にユーザが報知動作に従って正しく移動させたと判断してもよい。基準姿勢で静止していないと判別された場合には(ステップS108で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS107へ戻る。
【0039】
基準姿勢で静止していると判別された場合には(ステップS108で“YES”)、CPU11は、受光部1822への入射光量を取得する(ステップS109)。CPU11は、ある時間の入射光量の変化傾向に基づいて、装着時入射光量を特定する(ステップS110)。上記のように、装着時の入射光量は、血流変化に応じて周期的に変化するので、装着時入射光量は、例えば、複数周期分の平均値であってもよいし最低値であってもよい。あるいは、上記ある時間の入射光量から低域通過フィルタによりノイズ除去したうえで、最低値や最低ラインの入射光量が取得されてもよい。
ステップS108~S110の処理が本実施形態の設定手段を構成する。
【0040】
CPU11は、未装着時の入射光量と装着時の入射光量に基づいて、着脱状態を判別するための判定基準値を算定して、記憶部13の基準情報132記憶させて設定する(ステップS111)。判定基準値は、例えば、未装着時と装着時の入射光量の平均値であってもよいし、どちらか側に多少寄るように重み付き平均とされてもよい。
【0041】
CPU11は、判定基準値の設定完了を示す報知動作を報知動作部16及び表示部14により行わせる(ステップS112)。そして、CPU11は、判定基準値設定制御処理を終了する。
【0042】
図5は、判定基準値設定制御処理の他の例を示すフローチャートである。
この判定基準値設定制御処理は、図4に示した処理におけるステップS106、S108~S110の処理がそれぞれステップS106a、S108a~S110aに置き換えられている。また、ステップS121~S123の処理が追加されている。その他の処理は両処理の間で同一であり、同一の処理内容には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
この判定基準値設定制御処理は、上記図4に示した処理とは、基準姿勢が予め定められていない点が異なる。
【0043】
ステップS105の後、CPU11は、報知動作部16及び表示部14により、スマートウォッチ1を装着して初期姿勢で静止させるように報知動作を行わせる(ステップS106a)。それから、CPU11の処理は、ステップS107へ移行する。
【0044】
ステップS107の処理の後、CPU11は、加速度計測値に基づいて、ユーザが腕を指定されている対象の姿勢で静止させているか否かを判別する(ステップS108a)。対象姿勢で静止させていないと判別された場合には(ステップS108aで“NO”)、CPU11の処理は、ステップS107に戻る。
【0045】
ユーザの腕が対象姿勢で静止していると判別された場合には(ステップS108aで“YES”)、CPU11は、入射光量の取得を開始する(ステップS109a)。CPU11は、取得した入射光量に基づいて、対象姿勢での入射光量を特定する(ステップS110a)。CPU11は、図4の例と同様に、装着中の入射光量の変動を考慮して変動の平均値、最低値や各周期の最低値に基づく最低ラインなどを特定、算出する。
【0046】
CPU11は、複数の全ての対象姿勢(複数の対象姿勢(複数の姿勢)は、予め定められて記憶部13に記憶されている)での入射光量が特定、取得されたか否かを判別する(ステップS122)。全ての対象姿勢での入射光量が取得されていない(取得されていない対象姿勢がある)と判別された場合には(ステップS122で“NO”)、CPU11は、未設定の対象姿勢への姿勢変更を指示する報知動作を報知動作部16及び表示部14により行わせる(ステップS121)。それから、CPU11の処理は、ステップS107へ移行する。
【0047】
ステップS122の判別処理で、全ての対象姿勢で入射光量が特定、取得されたと判別された場合には(ステップS122で“YES”)、CPU11は、各対象姿勢での入射光量を比較して最小の入射光量を選択する。CPU11は、当該最小の入射光量が得られた対象姿勢を基準姿勢として決定(特定)する(ステップS123)。それから、CPU11の処理は、ステップS111へ移行する。
【0048】
図6は、スマートウォッチ1で実行される判定基準値調整制御処理のCPU11による制御手順を示すフローチャートである。この判定基準値調整制御処理は、スマートウォッチ1において着脱の判定及び脈拍の計測が開始されるとともに開始される。なお、この処理の開始は、特定のアクティビティ計測の開始時に限定されてもよい。この場合、脈拍の計測の開始に応じて、他の処理で加速度センサ181の計測及び脈拍センサ182(着脱センサ)の計測が開始されている。
【0049】
CPU11は、基準値と入射光量の計測値とに基づいて、スマートウォッチ1(自機)がユーザの腕に装着されているか装着判定を行う(ステップS141)。なお、基準値と入射光量の計測値との比較は外部の専用回路で行われて、CPU11はその結果を取得するだけであってもよい。自機が腕に装着されていないと判別された場合には(ステップS141で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS146へ移行する。
【0050】
自機が腕に装着されていると判別された場合には(ステップS141で“YES”)、CPU11は、加速度センサ181から加速度値を取得して、腕の姿勢を推定する(ステップS142)。CPU11は、腕が基準姿勢で静止している状態にあるか否かを判別する(ステップS143)。腕が基準姿勢で静止している状態にないと判別された場合には(ステップS143で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS146へ移行する。
【0051】
腕が基準姿勢で静止している状態にあると判別された場合には(ステップS143で“YES”)、CPU11は、受光部1822への入射光量の取得を開始する(ステップS144)。CPU11は、基準姿勢での入射光量を特定して、履歴情報として記憶部13に記憶させる(ステップS145)。それから、CPU11の処理は、ステップS146へ移行する。
【0052】
ステップS146の処理へ移行すると、CPU11は、脈拍計測の終了操作があったか否かを判別する(ステップS146)。計測終了操作がなかったと判別された場合には(ステップS146で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS141へ戻る。なお、原則的に常に脈拍計測を継続するような場合には、終了操作の判定の代わりに、例えば、特定の時刻を過ぎたか否かなど、定期的な時間経過に係る判定が行われてもよい。
【0053】
計測終了操作があったと判別された場合には(ステップS146で“YES”)、CPU11は、前記判定基準値を調整してから閾値以上の変化を伴う変化傾向(時間変化)が生じているか否かを判別する(ステップS147)。このような無視できない変化は、例えば、日焼け具合の変化や筋肉の付き方の変化など、中長期的なものが主に想定されるが、これに限られるものではない。
【0054】
前回の調整から閾値以上の変化を伴う変化傾向が生じていないと判別された場合には(ステップS147で“NO”)、CPU11は、判定基準値調整制御処理を終了する。前回の調整から閾値以上の変化を伴う変化傾向が生じていると判別された場合には、当該変化傾向に基づいて判定基準値を変更(調整)設定する(ステップS148)。そして、CPU11は、判定基準値調整制御処理を終了する。
【0055】
上記とは反対に、出射光に応じて想定される最大の入射光よりも大きい光量の入射光が計測される場合も、スマートウォッチ1が腕に装着されていないと判定が可能である。このような光量の入射は、例えば、直射日光や、反射率の高い面、例えば、白い机や壁面などで反射された光などにより生じ得る。腕などの装着部位では、拡散反射や光の吸収がある。スマートウォッチ1は、これらを考慮した最大の想定入射光量よりも十分に高い入射光量を他の判定基準値(第2の基準値)として設定して着脱判定に利用してもよい。実際に考慮されるべき入射光量は、例えば、予め実験室などで白い机上にスマートウォッチ1を予め定めた向きで載置した場合の値を実測して求められてもよい。スマートウォッチ1は、単純に底面が机面に対向するように載置されてもよいし、筐体3の側面のある方向、例えば3時方向が机面に接するように載置されてもよい。第2の基準値は、得られた実測値未満かつ最大の想定入射光量より十分に大きい値に定められて、製品の出荷前に記憶部13に記憶されればよい。より大雑把に、第2の基準値が発光部1821の出射光量と等しい又は1より大きい係数倍などとされてもよい。あるいは、最大想定入射光量の代わりに最大入射光量が実験的に求められて利用されてもよい。また、最大入射光量が上記図5のステップS123の処理で第2の基準姿勢とともに選択されてもよい。第2の基準値は、この最大入射光量に1より大きい係数を乗じた値に調整されてもよいし、当該最大入射光量と上記実験室での実測値との間のある比率での重み付き平均などであってもよい。
【0056】
その他、通常の入射光量の範囲内であっても本来想定される上記脈拍に応じた変動が全く得られない場合(机などの光の反射面の反射率が高くない場合や、反射光が入りにくい向きで載置されているなど)などの例外があり得る。このような例外に関しては、他の適宜定められた判定基準に基づいて装着されていない判定がなされてもよい。
【0057】
以上のように、本実施形態の身体装着型電子機器であるスマートウォッチ1は、ユーザの身体への装着面(底面)の側からある波長の光を出射する発光部1821と、当該波長の光の入射光量を計測する受光部1822と、自機の装着部位の姿勢を計測する加速度センサ181と、CPU11と、を備える。CPU11は、加速度センサ181の計測結果に基づいて装着部位の姿勢を判定(推定)する。CPU11は、装着部位が基準姿勢であると判別された場合の入射光量に基づいて、着脱状態を判別するための判定基準値(第1の基準値)を設定する。
このように、着脱検出するための判定基準値をユーザごとに適切な基準姿勢で定めるので、着脱判定の誤り、特に装着したにもかかわらず未装着であると判定する可能性を低減させることができる。
【0058】
また、基準姿勢は、予め定められていてもよい。判定基準値を定めるのに適切な姿勢、特に入射光量が小さくなりやすい姿勢は概ね個人によらず定まっている。したがって、この姿勢での入射光量に基づいて判定基準値を定めることで、スマートウォッチ1では、発光部1821と受光部1822とを用いた着脱判定の精度を向上させることができる。
【0059】
また、スマートウォッチ1は、操作受付部15を備える。CPU11は、操作受付部15により判定基準値を設定する要求を受け付けた場合に、判定基準値の設定に係る処理を行う。すなわち、ユーザ所望のタイミングで当該ユーザが能動的に処理を開始させることで、スマートウォッチ1は、容易に適切な基準姿勢での入射光量を計測、取得することができる。
【0060】
また、CPU11は、判定基準値の設定後、着脱判定が行われている状態で装着部位が基準姿勢にあるか否かを判別する。そして、CPU11は、自機が装着部位に装着された状態で当該装着部位が基準姿勢にあると判別された場合の入射光量を取得する。CPU11は、取得した入射光量の時間変化に基づいて、判定基準値を調整する。
実際の着脱判定動作中は、ユーザが多様な姿勢を取り得るので、都合のよい姿勢の状態を検出してその際の入射光量を取得することができる。この入射光量は、上記のように同一姿勢であっても日焼け度合などに応じて変化し得る。したがって、中長期的な傾向を見ながら判定基準値を調整していくことで、スマートウォッチ1は、継続的に精度のよい着脱判定を継続して行うことができる。
【0061】
また、CPU11は、装着部位の複数の姿勢での入射光量を取得し、取得した当該入射光量を比較することで基準姿勢を特定してもよい。これにより、ユーザごとに最適な基準姿勢を定めることができるので、個人の差異を折り適切に反映して、より着脱判定を正確に行うための判定基準値を定めることができる。
【0062】
また、基準姿勢は、複数の姿勢のうち入射光量が最小となる姿勢であってもよい。個人ごとに定める場合には、単純に入射光量が最小の向きが基準姿勢として定められることで、スマートウォッチ1は、各個人についての着脱誤判定の可能性を効率的に低減させることができる。
【0063】
また、スマートウォッチ1は、ユーザに対する報知動作を行う報知動作部16を備える。上記複数の姿勢は、予め定められている。CPU11は、報知動作部16により複数の姿勢をユーザに取らせるように各々指定する報知動作を行わせて、複数の姿勢での入射光量をそれぞれ取得する。すなわち、各ユーザが判定基準値を設定する際には、報知動作部16により適切に姿勢変更などの案内をすることで、スマートウォッチ1は、スムーズに判定基準値を設定することができる。
【0064】
また、CPU11は、加速度センサ181による計測に基づいて複数の姿勢がそれぞれ維持されていると判別された場合に、入射光量を各々取得してもよい。活動状態での姿勢では筋肉の使い方などに差異が出るので、それぞれの姿勢を維持、静止させた状態で入射光量を取得することで、スマートウォッチ1では、より適切に判定基準値を定めることができる。
【0065】
また、スマートウォッチ1では、第1の基準値よりも大きい第2の基準値と入射光量とが比較されてもよい。CPU11は、入射光量が第2の基準値よりも大きい場合に、非装着状態(脱状態)であると判別する。このような第2の基準値を記憶部13などに記憶保持して利用可能とすることで、スマートウォッチ1は、より精度よくその着脱判定が行われる。
【0066】
また、本実施形態の判定基準設定方法は、ユーザの身体への装着面の側からある波長の光を出射する発光部1821と、当該ある波長の光の入射光量を計測する受光部1822と、自機の装着部位の姿勢を計測する加速度センサ181と、を備える身体装着型電子機器(スマートウォッチ1)の着脱を判定するためのものである。この判定基準設定方法では、加速度センサ181の計測結果に基づいて装着部位の姿勢を判定し、装着部位が基準姿勢であると判別された場合の入射光量に基づいて、着脱状態を判別するための判定基準値(第1の基準値)を設定する。このように装着部位が基準姿勢である場合の入射光量の実際の検出値により判定基準値を定めるので、この判定基準設定方法は、ユーザ間でのばらつきを反映してより誤判定しづらい着脱判定の判定基準値を定めることができる。
【0067】
また、上記判定基準設定方法に係るプログラム131をコンピュータにインストールして実行することで、より容易かつ精度よく、受光部1822への入射光量に基づくスマートウォッチ1の着脱判定を行うことができる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、未装着時の入射光量も測定するものとして説明したが、これについては省略されてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、脈拍センサ182の発光部1821と受光部1822が着脱センサ及び着脱センサの基準値設定と併用して用いられるものとして説明したが、これに限られない。脈拍センサの発光とは別のものであってもよい。また、脈拍センサを備えていなくてもよい。他の構成の発光部及び受光部が着脱センサとして併用されてもよいし、完全に独立した着脱センサが発光部及び受光部を有していてもよい。
【0070】
また、身体装着型電子機器(スマートウォッチ1)の装着箇所が一箇所に限られない場合には、装着箇所ごとにそれぞれ判定基準値が設定されてもよい。
【0071】
また、判定基準値の設定は、当該設定を目的としたユーザ操作により開始されるのではなくてもよい。例えば、判定基準値が設定されていない状況で脈拍計測が起動された場合には、自動的に判定基準値の設定動作に移行するのであってもよい。
【0072】
また、時間変化に応じた判定基準値の調整は、上記のように通常の利用中の計測値を用いずに行われてもよい。すなわち、所定の間隔でユーザに初期設定と同一手順での判定基準値の設定しなおしを要求してもよい。
【0073】
また、装着時の入射光量に現れる血流による周期変化の影響は、上記以外の方法で除去又は考慮されてもよい。
【0074】
また、複数の姿勢が予め基準姿勢が定められている場合には、この基準姿勢は、多くの場合に入射光量が最小となる姿勢ではなくてもよい。例えば、入射光量が大きくなる可能性が低いことを基準として基準姿勢が定められていてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態では、計測される複数の姿勢を予め定めて記憶していることとしたが、これに限られない。ある初期位置から入射光量が低下する方向へ漸減するように姿勢を変更する報知動作を報知動作部16や表示部14に行わせていってもよい。
【0076】
また、姿勢計測は、加速度センサ181によらなくてもよく、あるいは、加速度センサ181と他の構成とが併用されてもよい。例えば、地磁気センサ、ジャイロセンサ、傾斜センサなどが利用又は併用されてもよい。
【0077】
また、身体装着型電子機器は、腕に装着されるものではなくてもよい。上腕に装着されるもの、胴や脚部に装着されるものなどであってもよい。また、これらの身体装着型電子機器は、ユーザのバイタルやアクティビティなどを計測するためのものではなくてもよい。
【0078】
また、着脱センサは、発光部及び受光部の組単独で着脱判定をするのではなくてもよい。加速度センサ181による加速度変化や、裏蓋2などの接触面における電気抵抗(容量)の変化などを利用した着脱判定と併用されてもよい。この場合には、併用を前提として判定基準値が定められてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態では、報知動作部16及び表示部14により姿勢の案内などを行うものとして説明したが、他の方法であってもよい。例えば、具体的な姿勢は、別途説明書などに示されていてもよいし、スマートフォンなどの他の機器からオンライン説明書を閲覧可能とされてもよい。また、スマートウォッチ1が音声出力可能であり、音声ガイダンスを行うのであってもよい。
【0080】
また、図6の判定基準値調整制御処理では、実際の判定動作の終了時にまとめて変化傾向の判定を行うものとした。しかしながら、この判定基準値調整制御処理において、判定動作の途中であってもある程度の履歴が得られた場合に変化傾向の判定を行い、判定基準値を変更設定してもよい。
【0081】
また、以上の説明では、本発明の判定基準値設定制御に係るプログラム131を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体としてフラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどからなる記憶部13を例に挙げて説明したが、これらに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、MRAMなどの他の不揮発性メモリや、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0082】
1 スマートウォッチ
2 裏蓋
3 筐体
11 CPU
12 RAM
13 記憶部
131 プログラム
132 基準情報
14 表示部
15 操作受付部
16 報知動作部
17 通信部
18 計測部
181 加速度センサ
182 脈拍センサ
1821 発光部
1822 受光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6