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特開2024-46851鉄道レール、一体型レール間絶縁体及び接続継目部絶縁レール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046851
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】鉄道レール、一体型レール間絶縁体及び接続継目部絶縁レール
(51)【国際特許分類】
   E01B 11/24 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
E01B11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152179
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】501487863
【氏名又は名称】関東分岐器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117145
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 純
(72)【発明者】
【氏名】五月女 厚
(72)【発明者】
【氏名】土屋 清孝
(72)【発明者】
【氏名】松嵜 邦良
(72)【発明者】
【氏名】松本 直紀
(72)【発明者】
【氏名】杉野 満
(57)【要約】
【課題】 軌道短絡を抑止すると共に、フロー除去周期の延伸を図ることによって、フロー削正に掛かる保守費用を低減する。また列車が継目部を通過する際の車輪の落ち込みが抑制され、騒音や振動が低減される。
【解決手段】レールの継目部における当接面が、上方に配置された頭部と、下方に配置された底部と、前記頭部と底部を連接する中間部とから形成されており、前記突き合わせた2本のレールの頭部が一方は二等辺開先形状であり、当該二等辺開先形状に対向する他方は嵌合する二等辺尖先形状であって、前記突き合わせたレールの中間部及び底部は平面状に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の鉄道レールが突き合わされている接着絶縁レールの鉄道レールにおいて、上方に配置された頭部と、下方に配置された底部と、前記頭部と底部を連接する中間部とから形成されており、前記鉄道レールの頭部が、一方は二等辺開先形状であり、当該二等辺開先形状に対向する他方は嵌合する二等辺尖先形状であって、前記レールの中間部及び底部は平面状に形成されていることを特徴とする鉄道レール。
【請求項2】
前記鉄道レールの頭部において、二等辺開先の開先角度が平面視220~280°で形成され、二等辺尖先における尖先角度が平面視80~140°で形成されていることを特徴とする請求項1に記載された鉄道レール。
【請求項3】
前記鉄道レールの二等辺開先及び二等辺尖先の頭部における上端辺が、1.0~2.0mmで面取りされていることを特徴とする請求項1又は2に記載されている鉄道レール。
【請求項4】
2本の鉄道レールの突き合わせ部間に配置されたレール間絶縁体において、当該レール間絶縁体が上方に配置された頭部と、下方に配置された底部と、前記頭部と底部を連接するように配置された中間部とから一体型に形成されており、当該一体型レール間絶縁体の頭部、中間部、底部が2本の鉄道レール断面における頭部、中間部、底部と当接するように、前記頭部がV字形状に形成され、前記中間部及び底部は平面状に形成されていることを特徴とする一体型レール間絶縁体。
【請求項5】
前記一体型レール間絶縁体において、尖先角度が平面視80~140°で形成されていることを特徴とする請求項4に記載された一体型レール間絶縁体。
【請求項6】
2本の鉄道レールがレール間絶縁体を介して突き合わされた継目部の両側面に、絶縁部材、継目板の順に配置し、絶縁材で形成したチューブを挿入したボルトで、前記絶縁部材、継目板、レールを固定した接着絶縁レールにおいて、前記2本の鉄道レールが請求項2又は3に記載された鉄道レールであり、前記レール間絶縁体が請求項4又は5に記載された一体型レール間絶縁体である接続継目部絶縁レール。
【請求項7】
1本の鉄道レールをレール切断機で切断した後、2本の鉄道レールを突き合わせ絶縁して接着する接続継目部絶縁レールの製造方法において、切断された一の鉄道レールの当接面が上方に配置された頭部と、下方に配置された底部と、前記頭部と底部を連接する中間部とから形成されており、前記一の鉄道レールの頭部を二等辺開先形状に切削加工し、また前記他の鉄道レールの頭部を当該二等辺開先に嵌合する二等辺尖先形状に切削加工し、前記レールの中間部及び底部は平面状に切削加工したレールを、一体型に形成されたレール間絶縁体を介し突き合わせ、継目部の両側面に絶縁部材、継目板の順に配置し、絶縁材で形成されたチューブを挿入したボルトを貫通孔に差し込み、前記絶縁部材、継目板及びレールをナットで固定した後に継目部を均一に加熱接着して一体接合することを特徴とする接続継目部絶縁レールの製造方法。
【請求項8】
前記鉄道レール及びレール間絶縁体の頭部における二等辺開先の開先角度が、平面視220~280°で形成され、かつ二等辺尖先における尖先角度が平面視80~140°で形成され、前記鉄道レールの少なくとも二等辺尖先の頭部における上端辺を1.0~2.0mmで面取り加工することを特徴とする請求項7又は8に記載されている接続継目部絶縁レールの製造方法。
【請求項9】
前記レール間絶縁体が、ガラスペーパーに熱硬化性エポキシ系樹脂接着剤を含浸させた後、積層し、金型によりプレス成形することによって得られることを特徴とする請求項7又は8に記載された接続継目部絶縁レールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、50kgNレール、60kgレールの両方に使用可能であり、強度や絶縁抵抗といった要求特性を満たす新規な接着絶縁レール用の鉄道レール、レール間絶縁体及びそれらを組み合わせた接続継目部絶縁レールに関する。特にレールフローの発生及び騒音や振動を低減させ、かつ長期にわたって使用しても亀裂や損傷が発生しない接着絶縁レールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、レールを列車の車軸で電気的に短絡することを利用して列車の位置を検知する軌道回路が導入されている。そのため鉄道レールは、一定間隔で絶縁を確保する必要がある為、所定の長さの2本のレール間(継目部)に絶縁材を配置することが周知となっている。
かかるレールの継目部においては、列車が有する車輪が一旦落ち込み次のレールへ飛び乗るように乗り移るため、列車が継目部を通過する際に、騒音や振動が発生する点が問題となっていた。又、列車が通過する際に、車輪を介した荷重によってレールが損傷してしまう問題が報告されていた。
更に継目部における鉄道レールの上端部が、車輪を介した荷重によって潰され、上端部が経年伸張するレールフロー現象が見られ、軌道短絡を発生させる問題が指摘されていた。そのため常日頃に、作業員がレールの継目を目視によって確認する保守点検を行う必要がある。
【0003】
このような問題や煩雑な作業を解消するために、特許文献1~3に掲載されている技術が開発された。これらの文献には、2本の鉄道レールの突合面が、軌道方向に尖鋭角になるように斜め切りされ、又は緩やかなS字形曲線をもって斜め切りされた技術が共通して開示されている。すなわち継目部において鉄道レールの突き合わせ面を斜め切りすることによって、車輪の乗り移りを円滑に行うことができる。そのため、列車が継目部を通過する際における騒音や振動を低減すると共に、車輪を介した荷重をレールの斜め形状を利用して接点移動させて支持することができるため、レール頭部の損傷自体を減少させることに成功した。
特にS字形曲線をもって斜め切りされた特許文献1は、車輪を介した荷重をアール曲線によって分散させることによって、レールフローを低減させて、軌道短絡を抑えることに成功した。
【0004】
しかし、このような従来技術には致命的な問題が発生していた。例えば、S字形曲線をもって斜め切りされたレールには、経年的にレール中間部に水平亀裂が発生する事例が報告されていた。それはレールの尖鋭角の端部略中央より軌道方向に切れ目(亀裂)が発生するというものであった。このような問題は、S字形曲線をもったレールのみならず、斜め切りされたレールが共通して有している問題点といえる。
すなわち斜め切りされたレールは、尖鋭角に向かうほど厚みが薄くなっており、車輪を介した荷重を薄い先端で一箇所の点で受けることから、亀裂が生じやすいと考えられる。
【0005】
更に、従来の技術では、レールフローの問題は完全には解決することはできなかった。そのため斜め切りされたレールを使用した接着絶縁レールにおいては、レールフローの兆候が見られる鉄道レールの上端部を研削する等のフロー削正作業が必要とされていた。
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みて開発された新規な技術思想である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-64901号公報
【特許文献2】特開昭57-172001号公報
【特許文献3】米国特許第2051224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、接着絶縁レールの継目部で発生するレールフローの問題を従来技術以上の精度で解決し、軌道短絡を抑止すると共に、フロー除去周期の延伸を図ることによって、フロー削正に掛かる保守費用を低減することを目的とする。また、継目部のレール自体やレール間絶縁体の損傷を抑制することを目的とする。
更に本発明は、列車が継目部を通過する際の車輪の落ち込みを従来に比較して大幅に抑制し、騒音や振動の発生を低減させる接着絶縁レールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するために以下の構成を採用した。
(1)2本の鉄道レールが突き合わされている接着絶縁レールの鉄道レールにおいて、上方に配置された頭部と、下方に配置された底部と、前記頭部と底部を連接する中間部とから形成されており、前記鉄道レールの頭部が、一方は二等辺開先形状であり、当該二等辺開先形状に対向する他方は嵌合する二等辺尖先形状であって、前記鉄道レールの中間部及び底部は平面状に形成されていることを特徴とする鉄道レールである。
本発明は、突き合わせた2本の鉄道レールの頭部が、一方は二等辺尖先形状であり、もう一方は二等辺開先形状に形成されている点に特徴を有する。このような形状を有することによって、継目部を車輪が通過する際に車輪とレール面との接触面が常に前後のレールにまたがった状態で継目部を通過させることができる。そのため一般的な接着絶縁レールと比較して、継目部における車輪の落ち込みが少ないため、振動や騒音を低減させることができる。
【0009】
また、突き合わされるレールの頭部をV字形状にすることによって、V字の中央部以外は2箇所で車輪を介した列車の荷重を支持することができるため、一箇所で荷重を支持する斜め切りされた従来のレールに比較して、レールの中心軸より応力を均等に分散することができる。そのためレール自体の損傷を低減することができる。なお、V字の中央部は10~15mmのR加工が施されており、レールの損傷を抑制している。
また斜め接着絶縁レールと比較して、加工範囲が限定され、かつ特殊な形状加工が必要な箇所は、レールの当接面における頭部のみであり、底部や中間部については、平面であるため、加工時間が短縮され、製造上のコストを大幅に低廉化できる。
さらに、最も列車による負荷がかかる尖鋭角の端部略中央部を底部に連接する中間部と平面状に形成することによって、垂直方向の応力を平板で分散して支持することができるため、V字形状で頭部から底面を均一に構成するよりも、尖鋭角の中央部における亀裂の発生を抑止できる。
【0010】
(2)前記鉄道レールの頭部において、二等辺開先の開先角度が平面視220~280°で形成され、二等辺尖先における尖先角度が平面視80~140°で形成されていることを特徴とする上記(1)に記載された鉄道レールである。
二等辺開先の開先角度が平面視280°を超えると、レール加工の際に使用する工具の大きさが適用しない等の困難性が発生する。一方、二等辺尖先の尖先角度が80°未満で形成すると、V字先端の肉厚が薄くなり強度が低下する。また、二等辺開先の開先角度が220°未満、二等辺尖先の尖先角度が140°以上、で形成すると、騒音の抑制とフローの発生抑制といった効果が得られない。
(3)前記鉄道レールの二等辺開先及び二等辺尖先の頭部における上端辺が、1.0~2.0mmで面取りされていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載され鉄道レールである。
本発明は、二等辺開先・尖先の頭部における上端辺を面取りすることによって、継目部で発生するレールフローの問題を解決している。又、レールフローを抑制することによって、軌道短絡を防止し、フロー除去周期の延伸を図ることができる。そのためフロー削正に掛かる保守費用を大幅に削減できるようになる。
面取りが2.0mmを超えるとレールとレールの間隙が広くなるため、騒音や振動の発生につながる。対して、面取りを1.0mm未満とするとレールフローを抑制する効果が低くなり、フロー除去周期の延伸効果が得られない。
【0011】
(4)2本の鉄道レールの突き合わせ部間に配置されたレール間絶縁体において、当該レール間絶縁体が上方に配置された頭部と、下方に配置された底部と、前記頭部と底部を連接するように配置された中間部とから一体型に形成されており、当該一体型レール間絶縁体の頭部、中間部、底部が2本の鉄道レール断面における頭部、中間部、底部と当接するように、前記頭部がV字形状に形成され、前記中間部及び底部は平面状に形成されていることを特徴とする一体型レール間絶縁体である。
最も列車による負荷がかかる尖鋭角の端部略中央部を底部に連接する中間部と平面状に形成することによって、垂直方向の応力を平板で分散して支持することができるため、V字形状で頭部から底面を均一に構成するよりも、尖鋭角の中央部における亀裂の発生を抑止できる。
【0012】
さらに、V字の中央部以外は2箇所で車輪を介した列車の荷重を支持することができ、レールの中心軸より応力を分散できるため、一箇所で荷重を支持する斜め切りされた従来のレール間絶縁体に比較して、レール間絶縁体自体の損傷を低減することができる。
またV字形状を採用することによって、一体型レール間絶縁体をプレス加工によって製造することが可能になる。従来のS字形曲線を有するレール間絶縁体の場合、曲線形状等の精密な加工がプレス加工によっては難しいため、削出しによって製造されていた。そのため削り出されて廃棄される無駄な樹脂が相当量発生する。更に削り出した後に別に加工されたレールと合わせるために、手加工によってレール間絶縁体自体を削る作業が必須であった。V字形状は、曲率部を有さないため、プレス加工によって高精度のレール間絶縁体を得ることができるため、手加工での合わせ込み作業が不要になる。そのため、製造コストが低減化すると共に作業効率も向上する効果を有する。
さらに、レール間絶縁体自体の大きさもV字形状を採用することにより、S字曲線を有するレール間絶縁体よりコンパクトになり、材料費自体も低下するため、コストが下がる。
【0013】
(5)前記一体型レール間絶縁体において、V字の尖先角度が平面視80~140°で形成されていることを特徴とする上記(3)に記載された一体型レール間絶縁体である。
二等辺尖先の尖先角度が平面視80°未満の場合は、当接する二等辺開先レールの加工において、使用する工具の大きさが適用しない等の問題が発生するほか、二等辺尖先レールのV字先端の肉厚が薄くなり強度が低下する問題が発生する。より好ましくは120°以上である。一方、二等辺尖先の尖先角度が平面視140°を超えると、騒音とフローの発生抑制が十分に見込めない。
【0014】
(6)2本の鉄道レールがレール間絶縁体を介して突き合わされた継目部の両側面に、絶縁部材、継目板の順に配置し、絶縁材で形成したチューブを挿入したボルトで、前記絶縁部材、継目板、レールを固定した接着絶縁レールにおいて、前記2本の鉄道レールが(1)乃至(3)に記載された鉄道レールであり、前記レール間絶縁体が(4)又は(5)に記載された一体型レール間絶縁体である接続継目部絶縁レールである。
継目板は、隣接するレールをつなぐために必須の部材である。かかる継目板は、長方形状の金属部材であるため、絶縁性の材料で形成された絶縁部材を介してレール継目部の両側面に配置される。また絶縁部材と継目板とレールを固定する際にボルトが使用されるが、ボルトが通電することによって、絶縁性が保持できないため、絶縁材で筒状に形成されたチューブにボルトを挿入して固定する。
【0015】
(7)1本の鉄道レールをレール切断機で切断した後、2本の鉄道レールを突き合わせ絶縁して接着する接続継目部絶縁レールの製造方法において、切断された一の鉄道レールの当接面が上方に配置された頭部と、下方に配置された底部と、前記頭部と底部を連接する中間部とから形成されており、前記一の鉄道レールの頭部を二等辺開先形状に切削加工し、また前記他の鉄道レールの頭部を当該二等辺開先に嵌合する二等辺尖先形状に切削加工し、前記レールの中間部及び底部は平面状に切削加工したレールを、一体型に形成されたレール間絶縁体を介し突き合わせ、継目部の両側面に絶縁部材、継目板の順に配置し、絶縁材で形成されたチューブを挿入したボルトを貫通孔に差し込み、前記絶縁部材、継目板及びレールをナットで固定した後に継目部を均一に加熱接着して一体接合することを特徴とする接続継目部絶縁レールの製造方法である。
本発明に係る製造方法を採用することによって、斜め接着絶縁レールと比較して、加工範囲が限定され、かつ特殊な形状加工が必要な箇所は、レールの当接面における頭部のみであり、底部や中間部については平面であるため、鉄道レールの継目部の加工を従来に比較して短時間で終えることができる。また、開先・尖先加工については、曲線加工が不要であるため、レール間絶縁体と突き合わせる際、レール間絶縁体を手加工し合わせ込む作業が不要なので、作業効率が上がる。
またボルトを絶縁材で形成されたチューブに差し込むことによって、ボルトを介した短絡を防止することができる。更に継目部を均一に加熱することによって、レール間絶縁体や側面の絶縁部材に含浸された熱硬化性樹脂を硬化させ、レールと完全に接着させる
【0016】
(8)前記鉄道レール及びレール間絶縁体の頭部における二等辺開先の開先角度が、平面視220~280°で形成され、かつ二等辺尖先における尖先角度が平面視80~140°で形成され、前記鉄道レールの少なくとも二等辺尖先の頭部における上端辺を1.0~2.0mmで面取り加工することを特徴とする上記(7)又は(8)に記載されている接続継目部絶縁レールの製造方法である。(9)前記レール間絶縁体が、ガラスペーパーに熱硬化性エポキシ系樹脂接着剤を含浸させた後、積層し、金型によりプレス成形することによって得られることを特徴とする上記(7)又は(8)に記載された接続継目部絶縁レールの製造方法である。
従来のS字形の曲面を有したレール間絶縁体は、削出加工によって製造されていた。そのため、大量の廃棄される切削屑が発生し、樹脂材料に無駄が生じるとともに、環境に大きな負荷をかけることが問題になっていた。一方、本発明に係るレール間絶縁体は、基本形状が直線のみで形成されるため、プレス成形が可能である。そのため、製造時間を大幅に短縮できるとともに、レール間絶縁体を形成する樹脂材料のみで製造することができるため、樹脂ロスを0にすることが可能であり、環境に与える負荷をなくすことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る鉄道レールは、接着絶縁レールの継目部で発生するレールフローの問題を従来技術以上の精度で解決し、軌道短絡を抑止すると共に、フロー除去周期の延伸を図ることによって、フロー削正に掛かる保守費用を低減するという効果を奏する。
また本発明に係る絶縁接着レールを使用することによって、継目部のレール自体や一体型レール間絶縁体に亀裂や損傷が発生しないという効果を奏する。特にレールやレール間絶縁体における尖鋭角の中央部における水平亀裂の発生を防止する優れた効果を奏する。
更に本発明に係る絶縁接着レールは、列車が継目部を通過する際の車輪の落ち込みを従来に比較して大幅に抑制し、騒音や振動の発生を低減させるという優れた効果を奏する。
加えて、本発明に係る接着絶縁レールの製造方法を使用することによって、従来技術に比べて、レール間絶縁体の製造コストを低減化し、製造工程における作業効率が向上するとともに、樹脂の廃棄物を0にすることによって環境負荷を大幅に減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態1に係る二等辺開先形状を有する鉄道レールを示す部分斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る二等辺尖先形状を有する鉄道レールを示す部分斜視図である。
図3】本発明の実施形態1に係る接着絶縁レールの継目構造を示す部分平面図である。
図4】本発明の実施形態1に係る接着絶縁レールについての作用効果を説明するための概念図である。(a)実施形態1に係る接着絶縁レールの平面図である。(b)は側面からみた部分拡大図である。
図5】本発明の実施形態2に係る一体型レール間絶縁体を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態3に係る二等辺開先形状を有する鉄道レールの頭部を示す部分斜視図である。
図7】本発明の実施形態4に係る接続継目部絶縁レールを示す平面断面図である。
図8】従来技術における問題点を説明するための部分側面概念図である。
図9】他の従来技術における問題点を説明するための部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る実施の形態の一例を、図面に則して説明する。ただし、以下の説明は本発明の例示であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態1
図1は、本発明の実施形態1に係る二等辺開先形状を有する鉄道レールを示す部分斜視図である。また図2は、本発明の実施形態1に係る二等辺尖先形状を有する鉄道レールを示す部分斜視図である。
本発明の実施形態1に係る接着絶縁レールに用いられる鉄道レール10は、図1に示すように二等辺開先形状を有する。対となるもう一方の鉄道レール20は、図2に示すように二等辺尖先形状を有する。図1に示す如く鉄道レール10は、上方に配置された頭部1と、下方に配置された底部3と、前記頭部1と底部3を連接する中間部2とから形成されている。前記頭部1は二等辺開先形状に形成されている。二等辺開先形状は図1に示す如く、中央部を中心軸として扇状の2面から形成されている。さらに図2に示す如く他方の鉄道レール20も、上方に配置された頭部21と、下方に配置された底部23と、前記頭部21と底部23を連接する中間部22とから形成されている。前記頭部21は二等辺尖先形状に形成されている。二等辺尖先形状は図2に示す如く、中央部を頂辺として斜め後方へ三角形状に連接する2面によって形成されている。図1に示す鉄道レール10と図2に示す絶縁鉄道レール20とは、対面する形で当接した際に、前記二等辺開先形状と二等辺尖先形状とが嵌合するように形成されている点が特徴である。また、双方の中間部2,22と底部3,23は、共に平面形状に形成されている。
【0020】
本実施形態1に係る接着絶縁レールの継目部におけるV字形状は、図3に示す如く、二等辺開先形状を有する鉄道レール10の頭部1の中央部は240°に形成されている。一方、二等辺尖先形状を有する絶縁鉄道レール20の頭部21の中央部における三角形状は、頂点角120°に形成されている。また鉄道レール10の左右両端は60°に形成されている。
図4は、本発明の実施形態1に係る接着絶縁レールについての作用効果を説明するための概念図である。図4(a)は、鉄道レール10,20の上部を車輪40が通過する状態を説明した平面図である。本実施形態1においては、継目部分がV字形状に形成されているため、車輪が接着絶縁レールにおける継目部を通過する際に、常に車輪が前後のレールにまたがった状態を維持することができる。例えば、図8は従来の継目部の構造を示す側面であるが、一方の鉄道レール82から他方の鉄道レール81を車輪80が通過する際に、継目部Tにおいて、鉄道レール81と82との間で車輪が完全に落ち込む箇所が発生する。かかる継目部Tにおいては、鉄道レール81の頭部角部に落ち込んだ車輪80が当接し瞬間的に跳ね上がるため、騒音や揺れの原因を起こすことが知られていた。また車輪80が当接する衝撃によって鉄道レール82の頭部角部が経年的に伸張するレールフロー発生の原因になっていた。
一方、本実施形態1に係る接着絶縁レールは、図4(b)に示す如く、継目部がV字形状を有するため、継目部Tを車輪が通過する際に車輪40とレール面との接触面が常に前後のレール10,20にまたがる形になる。すなわちV字形状では常に車輪40がレールに乗った状態で継目部Tを通過させることができ、一般的な接着絶縁レールと比較して、継目部における車輪の落ち込みを減少させることができるため、レールフローの発生や騒音および振動を低減させることができる。
【0021】
継目部における車輪の落ち込みを減少させるために、図9に示す如く、継目部TにおいてS字形曲線をもって形成する接着絶縁レールも知られていた。このような構造によって騒音や振動を従来に比較して大幅に減少させることができた。しかし、車輪を介した荷重をアール曲線によって分散させているため、レール自体やレール間に設置された絶縁体(レール間絶縁体)の尖鋭角の端部略中央より軌道方向に切れ目(亀裂)が発生するという問題があった。このような問題は、S字形曲線をもった接着絶縁レールのみならず、斜め切りされた接着絶縁レールが共通して有している問題点といえる。S字形曲線の継目部は、常に一か所で列車の重量を支えていることから、レールやレール間絶縁体が列車の重量に耐えられず、特に最も脆弱なレールや一体型レール間絶縁体の尖鋭角の端部略中央部に亀裂が発生すると考えられる。一方、本実施形態1に係る接着絶縁レールは、V字の中央部以外は常に2か所で車輪を介した列車の荷重を分散支持し、レールの中心軸より列車による重量を均等に分散して支持することが可能となる。そのため、レール自体や一体型レール間絶縁体における亀裂や損傷を防止することが可能となる。
また本実施形態1に係る接着絶縁レールは、加工範囲が限定され、かつ特殊な形状加工が必要な箇所は、レールの当接面における頭部のみであり、底部や中間部については、平面であるため、S字形曲線を有する接着絶縁レールと比較して、加工時間が短縮され、製造上のコストを大幅に低廉化できる。
【0022】
実施形態2
図5は、本発明の実施形態2に係る一体型レール間絶縁体を示す斜視図である。本実施形態2に係る一体型レール間絶縁体50は、2本の鉄道レールの突き合わせ部の間に配置されるものである。本実施形態2に係る一体型レール間絶縁体50は、上方に配置された頭部51と、下方に配置された底部52と、前記頭部51と底部52を連接するように配置された中間部53とから一体型に形成されている。
本実施形態2に係る一体型レール間絶縁体50の頭部51、中間部53、底部52が2本の鉄道レール断面における頭部、中間部、底部と当接するように、前記頭部51がV字形状に形成されている。また前記中間部53及び底部52は平面状に形成されている。
このような形状を採用することによって、当接するレール自体や一体型レール間絶縁体に亀裂や損傷が発生しないという効果を奏する。すなわち、従来技術におけるS字形の鉄道レールやレール間絶縁体は、尖鋭角の中央部に亀裂の発生が見受けられた。
本実施形態2に係る一体型レール間絶縁体は、V字の中央部以外は2箇所で車輪を介した列車の荷重を支持することができるため、一箇所で荷重を支持するS字形のレールやレール間絶縁体と比較して、レールの中心軸より応力を均等に分散することができる。更に、亀裂が発生しやすい中間部53や底部52を平板に形成することによって、より亀裂の発生を抑制することができる。
【0023】
実施形態3
図6は、本発明の実施形態3に係る面取りされた二等辺開先形状を有する鉄道レールの頭部を示す部分斜視図である。
接着絶縁レールは、2本のレールが絶縁体を介して突き合わされている構成を有する。2本のレールのうち、図6は二等辺開先形状を有する鉄道レールの一部である。図6に示す鉄道レールの頭部61は、継目部における当接面の上方に配置される。当該鉄道レールは、下方に配置された図示しない底部と、前記頭部と底部を連接する中間部とから形成される。
図6に示す如く、前記頭部61は二等辺開先形状に形成されている。二等辺開先形状は図6に示す如く、中央部を中心軸として扇状の2面から形成されている。
また図6に示す如く、鉄道レールの二等辺開先の頭部61における上端辺67は、1.5mmで面取りされていることを特徴とする。
このように上端辺67を面取りすることによって、継目部で発生するレールフローの問題が解決される。又、レールフローを抑制することによって、軌道短絡を防止し、フロー除去周期の延伸を図ることもできる。そのためフロー削正に掛かる保守費用を大幅に削減できるという効果を奏する。
【0024】
実施形態4
図7は、本発明の実施形態4に係る接続継目部絶縁レール70を示す平面断面図である。
図7に示す如く、一方は二等辺尖先形状の頭部を有する鉄道レール71であり、当該二等辺尖先形状に対向する他方は嵌合する二等辺開先形状の頭部を有する鉄道レール72であって、2本のレールは一体型レール間絶縁体77を介して突き合わされて構成されている。
前記鉄道レール71,72における2本のレールの継目部を中心とする鉄道レール71,72の中間部両側面に2枚の長方形状の継目板73,74が梁渡されている。かかる長方形状の継目板73,74は、レールとの間に絶縁部材78,79が配置され夫々絶縁されている。さらに前記長方形状の継目板73,74と、前記鉄道レール71、72と絶縁部材78,79に共通の貫通穴が形成されている。
【0025】
前記貫通穴には、ボルト75,76と図示しない絶縁材からなる筒状部材が挿入されており、当該ボルト75,76は前記筒部材の内側に挿入されている。またボルトを挿入する際に、変成シリコーン系シーリング材を貫通穴と筒部材の隙間、継目板とボルト頭部の隙間、ナットと継目板の隙間、ボルトとナットの隙間に充填することによって、雨水の侵入を防止し、通電を確実に防止することが可能となる。
かかる実施形態4に係る接続継目部絶縁レール70は、以下の工程によって製造される。
1本の鉄道レールをレール切断機で切断した後、一方は二等辺開先形状に、他方は二等辺尖先形状に加工する。次いで、ボルトが入る貫通孔を開ける。その後、双方のレール頭部の上端面に1.5mmの面取り加工を行う。
加工された2本の鉄道レール71,72を絶縁して接続するため、一体型レール間絶縁体77を介して突き合わせて接続する。次に継目部の両側面に絶縁部材78,79と継目板73,74を順に配置する。この際、接着性を向上させるため、あらかじめレール、レール間絶縁体、継目板の接着する面にプライマーとしてエポキシフェノール樹脂を薄く均一に塗布する。また、絶縁部材78,79は、熱硬化性エポキシ系樹脂接着剤が含浸されている。
次いで、レール、レール間絶縁体、継目板に設けられた貫通孔に、絶縁材で形成されたチューブを挿入したボルト75,76を差し込み、前記絶縁部材78,79、継目板73,74及びレールをナットで固定した後に、両側面から加圧しながら継目部を均一に加熱接着して一体接合することによって本実施形態4に係る接続継目部絶縁レール70を製造することができる。
【符号の説明】
【0026】
1、21、61 頭部
2、22 中間部
3、23 底部
10、20、71、72 鉄道レール
70 接続継目部絶縁レール
50 一体型レール間絶縁体
51 頭部
52 底部
53 中間部
67 面取りされた上端辺
73、74 長方形状の継目板
75,76 ボルト
78,79 絶縁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9