(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046859
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】状態改善装置及び車両
(51)【国際特許分類】
B60N 2/02 20060101AFI20240329BHJP
B60P 3/04 20060101ALI20240329BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240329BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B60N2/02
B60P3/04
B60N2/90
A47C27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152188
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 拓弥
【テーマコード(参考)】
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B087BD14
3B087BD19
3B087CE10
3B087DE09
3B096AD01
(57)【要約】
【課題】人間以外の動物についても効果的に移動体上での状態を改善する。
【解決手段】移動体上に存在する、人間以外の動物の状態を改善する状態改善装置は、移動体内の支持面上にいる動物の存在範囲、及び動物のセンシング結果に基づいて判定された状態を取得する処理と、状態に応じて、動物の姿勢安定性が改善されるように、少なくとも動物の存在範囲で支持面に所定の変化を与える駆動装置を駆動する処理とを実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体上に存在する、人間以外の動物の状態を改善する状態改善装置であって、
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、
前記一つ又は複数のプロセッサは、
前記移動体内の支持面上にいる前記動物の存在範囲、及び前記動物のセンシング結果に基づいて判定された状態を取得する処理と、
前記状態に応じて、前記動物の姿勢安定性が改善されるように、少なくとも前記動物の存在範囲で前記支持面に所定の変化を与える駆動装置を駆動する処理と
を実行する、状態改善装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記動物の存在範囲で前記支持面を相対的に陥没させる、請求項1に記載の状態改善装置。
【請求項3】
前記駆動装置は、前記動物の存在範囲で前記支持面下に充填されたゲルを収縮させるためのスイッチング回路を含む、請求項2に記載の状態改善装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、少なくとも前記動物の存在範囲で前記支持面と前記動物との間に作用する摩擦力を増大させる、請求項1に記載の状態改善装置。
【請求項5】
車両内の支持面上にいる人間以外の動物の存在範囲を特定するためのセンサと、
前記動物の状態を判定可能なセンシング結果を取得するためのセンサと、
前記状態に応じて、前記動物の姿勢安定性が改善されるように、少なくとも前記動物の存在範囲で前記支持面に所定の変化を与えるように駆動される駆動装置と
を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、状態改善装置及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両などの移動体の運転支援や自動運転のための運転制御において、乗員の生体信号に基づいて乗員の状態を判定し、複数の乗員の中から選定された乗員の状態を改善するように運転制御の制御量を調整する技術が記載されている。乗員の生体信号には人間だけでなく犬や猫などのペットの生体信号も含まれ、生体信号からリラックスしているのか、満足しているのか、不快に思っているのか、緊張しているのか、興奮しているのか、恐れているのか、車酔いをしているのか、体調はどのような状態か、意識がどの程度はっきりしているのか等について判定を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ほとんどの場合において車両の座席は人間用に設計されているため、車両の走行中、人間については座席に着座した状態が仮定できるのに対して、人間以外の動物についてはそのような状態であるとは限らない。従って、特に人間以外の動物については、車両の運転制御の制御量を調整することが状態の改善に効果的であるとは限らない。
【0005】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、人間以外の動物についても効果的に移動体上での状態を改善することが可能な状態改善装置及び車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、移動体上に存在する、人間以外の動物の状態を改善する状態改善装置であって、一つ又は複数のプロセッサと、一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、一つ又は複数のプロセッサは、移動体内の支持面上にいる動物の存在範囲、及び動物のセンシング結果に基づいて判定された状態を取得する処理と、状態に応じて、動物の姿勢安定性が改善されるように、少なくとも動物の存在範囲で支持面に所定の変化を与える駆動装置を駆動する処理とを実行する状態改善装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、車両内の支持面上にいる人間以外の動物の存在範囲を特定するためのセンサと、動物の状態を判定可能なセンシング結果を取得するためのセンサと、状態に応じて、動物の姿勢安定性が改善されるように、少なくとも動物の存在範囲で支持面に所定の変化を与えるように駆動される駆動装置とを備える車両が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本開示によれば、人間以外の動物についても効果的に移動体上での状態を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る車両の構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図1に示された例における状態改善装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示された例における駆動装置の構成について説明するための図である。
【
図4】
図1に示された例における駆動装置の構成について説明するための図である。
【
図5】
図1に示された例における駆動装置の構成について説明するための図である。
【
図6】本開示の一実施形態における処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の一実施形態における駆動装置の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<1.状態改善装置を適用した車両の構成例>
本実施形態では、移動体の一態様としての車両に本開示の技術を適用した例を説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る車両の構成を概略的に示す図である。図示された例において、車両1は、車体2と、座席3A~3Eと、カメラ4と、湿度センサ5と、赤外線センサ6と、制御装置7と、駆動装置8とを含む。なお、駆動系のシステムを含む上記以外の車両1の構成要素については、公知の技術を適宜利用することが可能であるため図示及び説明を省略する。また、車両1、車体2、及び座席3A~3Eについても、本実施形態に関連して説明される以外の構成は公知の技術を適宜利用することが可能であるため、説明を省略する。
【0012】
カメラ4は、車体2内(車室内)の空間を撮像する。本実施形態において、カメラ4は、座席3A~3Eの座面上にいる人間以外の動物、具体的にはペットの存在範囲を特定するためのセンサの例である。例えばカメラ4が撮像した動画像を公知の画像認識技術を用いて解析することによって、ペットの存在範囲を連続的に追跡することができる。この目的のために、カメラ4は、座席3A~3Eのすべて、又はペットが乗る可能性がある一部の座席、具体的には例えば後部座席3C~3Eが撮像範囲に含まれるように配置される。例えばこれらの範囲で死角が生じないように、複数のカメラ4が配置されてもよい。
【0013】
また、カメラ4は、ペットの状態を判定可能なセンシング結果を取得するためのセンサとして用いられてもよい。例えば、特に犬に見られるパンティング(熱性多呼吸)の回数や、肉球の湿り具合などを、カメラ4が撮像した画像の解析によって検出することができる。パンティングの回数や肉球の湿り具合は、後述するようにペットの状態、具体的には乗り物酔いをしているか否かを判定するために用いられる。
【0014】
湿度センサ5は、座席3A~3Eのすべて、又はペットが乗る可能性がある一部の座席の座面に配置される。湿度センサ5は、本実施形態においてペットの状態を判定可能なセンシング結果を取得するためのセンサの例である。カメラ4が撮像した画像から特定されたペットの存在範囲と湿度センサ5の検出値とを組み合わせることによって、ペットの体表面の湿度を推定することができる。
【0015】
赤外線センサ6は、例えば熱赤外線を検出するセンサであり、対象物の温度を示すセンシング結果を取得することができる。赤外線センサ6も、本実施形態においてペットの状態を判定可能なセンシング結果を取得するためのセンサの例である。赤外線センサ6は、例えばカメラ4とともに座席3A~3Eのすべて、又はペットが乗る可能性がある一部の座席の座面(支持面)上で放射される赤外線を検出可能であるように配置される。例えばこれらの範囲で死角が生じないように、複数の赤外線センサ6が配置されてもよい。また、カメラ4に代えて、又はカメラ4とともに、赤外線センサ6を、座席3A~3Eの座面上にいるペットの存在範囲を特定するためのセンサとして用いてもよい。
【0016】
制御装置7は、カメラ4、湿度センサ5及び赤外線センサ6の検出結果、つまり座席3A~3Eの座面上にいるペットの存在範囲、及びペットの状態を判定可能なセンシング結果に基づいて、駆動装置8を駆動させる。より具体的には、制御装置7は、センシング結果に基づいて判定されたペットの状態に応じて、少なくともペットの存在範囲で座席3A~3Eの座面に所定の変化を与えるように駆動装置8を駆動する。ここで、所定の変化は、例えば以下で説明する例のように、座面上でのペットの姿勢安定性が改善されるような変化である。なお、制御装置7は、車両1において駆動系のシステムなどを制御する制御装置に組み込まれていてもよいし、他の制御装置とは独立していてもよい。
【0017】
<2.制御装置>
図2は、
図1に示された例における制御装置の機能構成の例を示すブロック図である。図示された例において、制御装置7は、存在範囲特定機能71と、状態判定機能72と、駆動制御機能73とを含む。以下、各機能についてさらに説明する。なお、存在範囲特定機能71及び状態判定機能72については、画像の解析やセンシング結果に基づく判定を自ら実行して結果を取得する機能として説明されているが、他の実施形態ではこのような機能に代えて、存在範囲や状態をネットワークで接続された外部装置から取得する機能が実装されてもよい。この場合、カメラ4が撮像した画像や湿度センサ5及び赤外線センサ6の検出結果は当該外部装置に送信される。
【0018】
存在範囲特定機能71は、カメラ4が撮像した画像を解析することによって、ペットの存在範囲を特定する。解析には例えば被写体検出のための画像認識技術を利用することができる。より具体的には、存在範囲特定機能71は、カメラ4が撮像した動画像を解析することによってペットの存在範囲を連続的に追跡する。他の実施形態では、カメラ4に代えて、又はカメラ4とともに、座席3A~3Eに設置された圧力センサを用いてペットの存在範囲が特定されてもよい。座席3A~3Eの座面上にいるペットの存在範囲は、後述するような駆動装置8の制御が可能になるように、例えば駆動装置8の座標系と共通であるか、又は駆動装置8の座標系に変換可能な座標系を用いて特定される。
【0019】
状態判定機能72は、ペットのセンシング結果に基づいて状態を判定する。上述のように、ペットの状態を判定可能なセンシング結果は、例えばカメラ4、湿度センサ5及び赤外線センサ6によって取得される。なお、これらのセンサのすべてが用いられなくてもよく、一部のみが用いられてもよい。湿度センサ5や赤外線センサ6の検出結果を用いた状態の判定では、存在範囲特定機能71が特定したペットの存在範囲の情報が用いられてもよい。
【0020】
例えば、カメラ4を用いる場合、状態判定機能72は、カメラ4が撮像した動画像の解析によってパンティングの回数や肉球の湿り具合などを推定する。より具体的には、例えば、状態判定機能72は、被写体検出によってペットの口や肉球を検出した上で、パンティングが生じているときの口の動きの特徴や、湿った肉球及び乾いた肉球のそれぞれの特徴を学習させた学習済みモデルを用いて、画像からパンティングの回数や肉球の湿り具合などを推定する。
【0021】
また、例えば、湿度センサ5を用いる場合、状態判定機能72は、座席3A~3Eの少なくとも一部の座面に配置された湿度センサ5の検出値からペットの体表面の湿度を推定する。より具体的には、状態判定機能72は、存在範囲特定機能71によって特定されたペットの存在範囲に近い1又は複数の湿度センサ5の検出値を、湿度センサ5からペットの存在範囲までの距離に応じて補正することによってペットの体表面の湿度を推定してもよい。このような処理のために、それぞれの湿度センサ5が配置されている位置は存在範囲特定機能71によって特定される存在範囲の座標系に関連付けられる。
【0022】
また、例えば、赤外線センサ6を用いる場合、状態判定機能72は、座席3A~3Eの少なくとも一部の座面上で検出された赤外線の強度からペットの体表面の温度を推定する。より具体的には、状態判定機能72は、赤外線センサ6によって検出された赤外線の強度を、存在範囲特定機能71によって特定されたペットの存在範囲に関連付けることによってペットの体表面の温度を推定してもよい。このような処理のために、赤外線センサ6が検出する赤外線の強度分布の座標系は、存在範囲特定機能71によって特定される存在範囲の座標系と共通であるか、又は存在範囲の座標系に変換可能である。
【0023】
状態判定機能72は、例えば上述したようなペットのセンシング結果に基づいてペットの状態を判定する。本実施形態において、ペットの状態は、例えばペットが乗り物酔いしているか否か、また乗り物酔いしている場合はその程度として判定される。具体的には、ペットが乗り物酔いしている場合、発汗によって体表面では温度低下及び湿度上昇が生じる。肉球でも同様に発汗によって温度低下及び湿度上昇が生じる。また、ペットが乗り物酔いしている場合、特に犬の場合はパンティングの回数が増加する。状態判定機能72は、例えば推定されたペットの体表面や肉球の温度や湿度、及びパンティングの回数を所定の閾値と比較することによってペットが乗り物酔いしているか否か、及びその程度を判定してもよい。あるいは、状態判定機能72は、ペットが乗り物酔いしているときの体表面や肉球の温度や湿度、及びパンティングの回数の特徴を学習させた学習済みモデルを用いてそれぞれの指標を統合したスコアを算出することによって、ペットが乗り物酔いしているか否か、及びその程度を判定してもよい。
【0024】
駆動制御機能73は、状態判定機能72によって判定されたペットの状態に応じて、少なくとも存在範囲特定機能71によって特定されたペットの存在範囲で座席3A~3Eの座面に所定の変化を与えるように駆動装置8を駆動する。既に述べたように、所定の変化は、ペットの姿勢安定性が改善されるような変化である。より具体的には、駆動制御機能73は、状態判定機能72によってペットが乗り物酔いしていることが判定された場合、又は乗り物酔いが所定の程度以上であることが判定された場合に、ペットの存在範囲で座席3A~3Eの座面を相対的に陥没させるように駆動装置8を駆動する。
【0025】
図3から
図5は、
図1に示された例における駆動装置の構成について説明するための図である。
図3に示されるように、駆動装置8は、ポリ塩化ビニル(PVC)ゲルアクチュエータを構成するPVCゲル81及び電極82を含む。
図4に示されるように、駆動装置8は、座席3A~3Eのすべて、又はペットが乗る可能性がある一部の座席、具体的には例えば後部座席3C~3Eで座席本体31上に配列され、駆動装置8上に座面32が形成される。これを
図4及び
図5では駆動装置8A,8B,・・・として図示する。駆動装置8A,8B,・・・は、例えば図示された例のようにグリッド状に配列されてもよいし、ハニカム状に配列されてもよい。駆動装置8A,8B,・・・はスイッチング回路83に接続され、駆動装置8A,8B,・・・のそれぞれで電極82への通電の有無を切り替えることができる。
【0026】
駆動装置8では、電極82に通電されると、ペットの存在範囲で座面(支持面)の下に充填されたPVCゲル81が収縮する。従って、例えば
図5に示された例のように駆動装置8B~8Eでは電極82に通電し、駆動装置8A,8Fでは電極82に通電しなかった場合、座面32は駆動装置8B~8Eの部分で相対的に陥没する。ペットの存在範囲で座面32を周囲に対して相対的に陥没させることによって、座面32上でのペットの姿勢安定性を改善することができる。ペットは通常は肉球などと座面32との間の摩擦によって姿勢を維持しているところ、例えば車両1の揺れが激しくなると姿勢の維持が難しくなり、大きく揺さぶられて乗り物酔いの状態になる場合がある。そのような場合に、ペットの存在範囲で座面32を周囲に対して相対的に陥没させれば、座面32がペットを包み込むような形状になるため、ペットは座面32にもたれかかったり足で踏ん張ったりすることによって姿勢を安定させやすくなる。ペットの姿勢が安定することによって、乗り物酔いを解消又は緩和することができる。
【0027】
ここで、制御装置7の駆動制御機能73は、カメラ4が撮像した画像の解析結果、又はユーザーによる入力情報からペットの種類又はサイズを取得し、ペットの種類又はサイズに基づいて座面32を相対的に陥没させる面積又は量を決定してもよい。より具体的には、例えば、駆動制御機能73は、取得されたペットの種類から特定された平均的なサイズ、又は直接的に取得されたペットのサイズに対して適切な陥没の面積又は量を決定する。カメラ4が撮像した画像の解析結果からペットの存在範囲の大きさは特定可能であるため、ペットのサイズは必ずしも特定されなくてもよいが、上記の例のようにペットのサイズを別途取得してサイズに対して適切な陥没の面積又は量を決定することによって、座面32上でのペットの姿勢安定性をより効果的に改善することができる。
【0028】
なお、上記の例では駆動装置8の電極82が通常の状態では通電されておらず、ペットの存在範囲で駆動装置8の電極82に通電することによってPVCゲル81を収縮させて座面32を相対的に陥没させたが、他の実施形態ではこれとは逆に、駆動装置8の電極82は通常の状態で通電されていてもよい。この場合、PVCゲル81は通常の状態で収縮させられている。スイッチング回路83がペットの存在範囲の周囲に配置された駆動装置8で電極82への通電を切ることによって、PVCゲル81が収縮しなくなって座面32が盛り上がる。他の実施形態では、このようにしてペットの存在範囲で座面32を周囲に対して相対的に陥没させてもよい。
【0029】
また、ペットの存在範囲で座面32を相対的に陥没させる駆動装置は上記の例のようなPVCゲルアクチュエータには限られず、空気圧アクチュエータやばね式のアクチュエータなども利用可能である。また、例えば、座面32の下に複数のローラーを配列し、アクチュエータを用いてこれらのローラーの間隔を変更することによって、ペットの存在範囲で座面32を相対的に陥没させてもよい。
【0030】
<3.処理動作>
図6は、本開示の一実施形態における処理の例を示すフローチャートである。本実施形態では、車両1の走行中に、カメラ4による車室内の空間の撮像、ならびに湿度センサ5による座席上の所定位置での湿度の検出、及び赤外線センサ6による車室内の赤外線の検出を含むセンシングが継続的に実行される(ステップS101)。
【0031】
制御装置7では、存在範囲特定機能71は、カメラ4の画像に基づいてペットの存在範囲を検出する。また、状態判定機能72は、湿度センサ5及び赤外線センサ6のセンシング結果に基づいてペットの状態を判定する(ステップS102)。既に述べたように、他の実施形態において、これらの情報はネットワークで接続された外部装置から取得されてもよい。
【0032】
次いで、状態判定機能72は、ステップS102の判定の結果により、ペットが乗り物酔いをしているか否かを判別する(ステップS103)。状態判定機能72が、ペットが乗り物酔いしていると判定した場合(S103/YES)、駆動制御機能73は駆動装置8を駆動する(ステップS104)。より具体的には、駆動制御機能73は、ペットの存在範囲で座席3A~3Eの座面を相対的に陥没させるように駆動装置8を駆動する。
【0033】
一方、状態判定機能72は、ペットが乗り物酔いしていると判定しない場合(S103/NO)、ペットの乗り物酔いが解消したか否かを判定する(ステップS105)。状態判定機能72は、それまでにペットが乗り物酔いしていると判定されていた場合は、今回の判定で乗り物酔いが解消したと判定する一方、それまでにペットが乗り物酔いしていると判定されていなかった場合は、ペットが乗り物酔いをしていない状態が継続していると判定する。
【0034】
状態判定機能72が、ペットの乗り物酔いが解消したと判定した場合(S105/YES)、駆動制御機能73は、駆動装置8の駆動を終了する(ステップS106)。より具体的には、駆動制御機能73は、ペットの存在範囲で座席3A~3Eの座面が相対的に陥没していた状態が元に戻るように駆動装置8を駆動する。一方、状態判定機能が、ペットの乗り物酔いが解消したと判定しない場合(S105/No)、そのままステップS107へ進む
【0035】
ステップS107では、状態判定機能72は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS107)。例えば状態判定機能72は、車両1の走行が終了した場合に、処理を終了すると判定する。この他、状態判定機能72は、処理のオンオフのスイッチがオフにされた場合に、処理を終了すると判定してもよく、処理を終了させるタイミングは特に限定されるものではない。状態判定機能72は、処理を終了すると判定しない場合(S107/No)、ステップS101に戻って、これまで説明した各ステップの処理を繰り返し実行する。
【0036】
以上で説明したような本開示の一実施形態によれば、ペットの乗り物酔いが検出されたときにペットの存在範囲で座席の座面を相対的に陥没させることによってペットの姿勢安定性を改善し、乗り物酔いを効果的に解消又は低減することができる。ほとんどの場合において車両の座席は人間用に設計されているため、ペットにとって姿勢を安定させやすいとは限らない。本実施形態では、ペットの存在範囲に合わせて座面を陥没させてもたれかかることを可能にし、乗り物酔いの解消又は低減のためにペットの姿勢安定性を効果的に改善することができる。
【0037】
<4.他の実施形態>
図7は、本開示の一実施形態における駆動装置の別の例を示す図である。
図7に示された例において、駆動装置8は、座席本体31に対して昇降可能な基板84と、基板84に植設される高摩擦繊維85と、基板84を昇降させるアクチュエータ86とを含む。アクチュエータ86が駆動させられ、基板84が座席本体31に対して上昇することによって、座面32下に収納された高摩擦繊維85が座席本体31に形成された細孔を貫通し、座面32から伸出する。ここで、高摩擦繊維85は、元々座面32に植設されている繊維33よりも表面の摩擦係数が高い繊維である。高摩擦繊維85が座面32から伸出することによって、座面32とペットとの間に作用する摩擦力が増大する。
【0038】
既に述べたように、ペットは通常は肉球などと座面32(及び繊維33)との間の摩擦によって姿勢を維持しているところ、例えば車両1の揺れが激しくなると姿勢の維持が難しくなり、大きく揺さぶられて乗り物酔いの状態になる場合がある。そのような場合に、ペットの存在範囲で座面32から高摩擦繊維85を伸出させれば、肉球などと座面32(及び繊維33)との間に作用する摩擦力が増大するため、ペットは足で踏ん張ることが可能になって姿勢を安定させやすくなる。ペットの姿勢が安定することによって、乗り物酔いを解消又は緩和することができる。
【0039】
なお、例えば人間が座席に着座する場合は、過剰な摩擦力が座り心地を損なう可能性があるため、高摩擦繊維85はない方が好ましい。それゆえ、上記の例では、アクチュエータ86によって高摩擦繊維85を伸出及び収納することができるようにし、ペットが乗り物酔いしていると判定された場合に限ってペットの存在範囲で高摩擦繊維85を伸出させることによって、それ以外の場合の座席の座り心地を損なわずにペットの乗り物酔いを解消又は緩和することを可能にしている。この観点から、高摩擦繊維85を貫通させるために座席本体31に形成される細孔は、着座する人間に感じられない程度の小径であることが好ましい。
【0040】
例えば上記で説明したような本開示の実施形態において、制御装置7は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがコンピュータプログラムを実行することで車両の機能を制御する装置として機能する。当該コンピュータプログラムは、制御装置が実行すべき後述する動作をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。プロセッサにより実行されるコンピュータプログラムは、制御装置に備えられた記憶部(メモリ)として機能する記録媒体に記録されていてもよく、制御装置に内蔵された記録媒体又は制御装置に外付け可能な任意の記録媒体に記録されていてもよい。コンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープなどの磁気媒体、CD-ROM、DVD、及びBlu-ray(登録商標)などの光記録媒体、フロプティカルディスクなどの磁気光媒体、RAM及びROMなどの記憶素子、並びにUSBメモリ及びSSDなどのフラッシュメモリ、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0041】
なお、制御装置は、車両に搭載された電子制御装置に限られるものではなく、スマートフォンやウェアラブル機器などの端末装置であってもよい。また、上記の実施形態では、制御装置の機能のすべてが車両に搭載されていたが、本開示の技術はかかる例に限定されない。制御装置の機能の一部又は全部が、車両と通信可能に接続された外部サーバにより構成されていてもよい。
【0042】
本開示の他の実施形態において、車両内にいる人間以外の動物はペットには限られず、例えば運搬されている家畜などであってもよい。このような場合において、車両内の支持面は座席の座面には限られず、例えば荷台の載置面などであってもよい。例えば、
図7に示された例のように、載置面から高摩擦繊維を伸出させて家畜の脚部との間に作用する摩擦力を増大させれば、家畜が荷台で姿勢を安定させることが容易になり、家畜の乗り物酔いを防ぎながら運搬することができる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0044】
なお、本開示の技術は、
移動体内の支持面上にいる人間以外の動物の存在範囲、及び前記動物のセンシング結果に基づいて判定された状態を取得する処理と、
前記状態に応じて、前記動物の姿勢安定性が改善されるように、少なくとも前記動物の存在範囲で前記支持面に所定の変化を与える駆動装置を駆動する処理と
を少なくとも1つのプロセッサに実現させるためのプログラム、及び当該プログラムが格納された、非一時的な有形の記録媒体としても実現可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:車両、2:車体、3A・3B・3C・3D・3E:座席、31:座席本体、32:座面、33:繊維、4:カメラ、5:湿度センサ、6:赤外線センサ、7:制御装置、71:存在範囲特定機能、72:状態判定機能、73:駆動制御機能、8・8A・8B・8C・8D・8E・8F:駆動装置、81:PVCゲル、82:電極、83:スイッチング回路、84:基板、85:高摩擦繊維、86:アクチュエータ