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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004686
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20240110BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B25J9/06 D
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104437
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】改野 重幸
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS03
3C707AS24
3C707BS15
3C707BS26
3C707BT11
3C707ES17
3C707HS27
3C707NS09
5F131DA05
5F131DA42
5F131DB52
5F131DB76
5F131DB82
5F131DD42
5F131DD73
(57)【要約】
【課題】搬送対象物を搬送する産業用ロボットにおいて、上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容部に収容される複数枚の搬送対象物の上下方向の間隔が狭くなっていても、収容部からの搬送対象物の搬出や収容部への搬送対象物の搬入を行うことが可能な産業用ロボットを提供する。
【解決手段】この産業用ロボットは、搬送対象物2の端部に係合する係合部23を有する第1ハンド5と、搬送対象物2が載置される載置部30を有する第2ハンド6と、第1ハンド5および第2ハンド6が先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備えている。第1ハンド5は、搬送対象物2が収容される収容部から載置部30に載置可能な位置まで収容部に収容される搬送対象物2を引き出す引出動作、および、載置部30に載置されていた搬送対象物2を収容部に収容される位置まで押し込む押込動作の少なくともいずれか一方を行っている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を搬送する産業用ロボットにおいて、
前記搬送対象物の端部に係合する係合部を有する第1ハンドと、前記搬送対象物が載置される載置部を有する第2ハンドと、前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備え、
前記アームは、互いに回動可能な複数のアーム部によって構成される多関節アームであり、
前記第1ハンドは、前記搬送対象物が収容される収容部から前記載置部に載置可能な位置まで前記収容部に収容される前記搬送対象物を引き出す引出動作、および、前記載置部に載置されていた前記搬送対象物を前記収容部に収容される位置まで押し込む押込動作の少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記アームを伸縮させるアーム駆動機構と、前記アームを昇降させるアーム昇降機構と、前記アームに対して前記第1ハンドを回動させる第1ハンド駆動機構と、前記アームに対して前記第2ハンドを回動させる第2ハンド駆動機構とを備え、
前記第2ハンドは、前記載置部が昇降可能に取り付けられるハンド本体部と、前記ハンド本体部に対して前記載置部を昇降させる載置部昇降機構とを備えることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記係合部は、前記搬送対象物の端部を把持する把持機構を備えることを特徴とする請求項2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記第1ハンドは、前記引出動作を行うとともに、前記引出動作時に前記収容部に対して水平方向に直線的に移動し、
前記収容部に対する前記第1ハンドの移動方向における一方側を手前側とし、手前側の反対側を奥側とし、前記載置部の、前記搬送対象物が載置される面を載置面とすると、
前記産業用ロボットは、前記収容部の手前側に配置され、
前記引出動作では、前記第1ハンドは、前記収容部に収容される前記搬送対象物の手前側の端部を前記把持機構によって把持可能な位置まで奥側に移動する第1移動動作と、前記第1移動動作後に前記把持機構によって前記搬送対象物の手前側の端部を把持する把持動作と、前記把持動作後に前記搬送対象物の奥側の端部が前記収容部の手前側の端部に載っている位置まで手前側に移動する第2移動動作とを行い、
前記第2ハンドは、前記第1ハンドが前記第1移動動作を行っているときに前記第2ハンドが前記収容部と干渉しない位置まで前記アームに対して回動する第1回動動作と、前記第2移動動作時または前記第2移動動作後に前記載置面が前記搬送対象物の下面よりも下側に下降している状態の前記載置部が前記搬送対象物の下側に配置される位置まで前記アームに対して回動する第2回動動作と、前記第2回動動作後に前記搬送対象物の下面に前記載置面が接触する位置まで前記載置部を上昇させる載置部上昇動作とを行い、
前記アームは、前記載置部上昇動作後に前記搬送対象物の奥側の端部の下面が前記収容部から浮く位置まで上昇するアーム上昇動作と、前記アーム上昇動作時または前記アーム上昇動作後に前記第1ハンドおよび前記第2ハンドを手前側に移動させる第1アーム伸縮動作とを行うことを特徴とする請求項3記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記第1ハンドは、前記押込動作を行うとともに、前記押込動作時に前記収容部に対して水平方向に直線的に移動し、
前記収容部に対する前記第1ハンドの移動方向における一方側を手前側とし、手前側の反対側を奥側とし、前記載置部の、前記搬送対象物が載置される面を載置面とすると、
前記産業用ロボットは、前記収容部の手前側に配置され、
前記アームは、前記押込動作前に、前記載置部に載置されているとともに前記把持機構によって手前側の端部が把持されている前記搬送対象物の奥側の端部が前記収容部の手前側の内部に入る位置まで前記第1ハンドおよび前記第2ハンドを奥側に移動させる第2アーム伸縮動作と、前記第2アーム伸縮動作時または前記第2アーム伸縮動作後に前記搬送対象物の奥側の端部が前記収容部の手前側の端部に載る位置まで下降するアーム下降動作とを行い、
前記第2ハンドは、前記アーム下降動作後に前記搬送対象物の下面から前記載置面が離れる位置まで前記載置部を下降させる載置部下降動作と、前記載置部下降動作後に前記第2ハンドが前記アームに対して所定量回動する第3回動動作とを行い、
前記押込動作では、前記第1ハンドは、前記第3回動動作時または前記第3回動動作後に前記搬送対象物の手前側の端部が前記収容部の手前側の端部に載る位置まで奥側に移動する第3移動動作を行い、
前記第3回動動作では、前記第2ハンドは、前記第1ハンドが前記第3移動動作を行っているときに前記第2ハンドが前記収容部と干渉しない位置まで回動することを特徴とする請求項3記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記アームは、前記アーム部として、基端側が前記本体部に回動可能に連結される第1アーム部と、前記第1アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結される第2アーム部と、前記第2アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結されるとともに先端側に前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが回動可能に連結される第3アーム部とを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の産業用ロボット。
【請求項7】
前記第1ハンドは、前記引出動作および前記押込動作を行うとともに、前記引出動作時および前記押込動作時に前記収容部に対して水平方向に直線的に移動し、
前記収容部に対する前記第1ハンドの移動方向と上下方向とに直交する方向を第1方向とすると、
前記載置部には、少なくとも前記引出動作直後および前記押込動作直前に前記第1方向において前記搬送対象物の移動を規制するガイド部が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を搬送するための産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハを搬送する産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、半導体製造システムに組み込まれて使用される。この産業用ロボットは、半導体ウエハが搭載される2個のハンドと、2個のハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備えている。ハンドは、上下方向の厚さが薄い平板状のウエハ載置部を備えており、半導体ウエハは、ウエハ載置部に載置される。
【0003】
特許文献1に記載の産業用ロボットは、複数枚の半導体ウエハが収容される収容カセット(FOUP)と半導体ウエハ処理装置との間で半導体ウエハを搬送する。すなわち、この産業用ロボットは、収容カセットから半導体ウエハを搬出したり、収容カセットに半導体ウエハを搬入したりする。収容カセットには、複数枚の半導体ウエハが上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容されている。収容カセットからの半導体ウエハの搬出時には、上下方向で重なるように収容カセットに収容されている半導体ウエハの間にハンドのウエハ載置部が入り込み(すなわち、収容カセットの奥側までウエハ載置部が入り込み)、半導体ウエハを持ち上げて搬出する。また、収容カセットへの半導体ウエハの搬入時には、半導体ウエハが載置されたウエハ載置部が収容カセットの奥側まで入り込んで、半導体ウエハを収容カセットの中に置く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-89739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の産業用ロボットの場合、収容カセットに収容される半導体ウエハの上下方向の間隔(ピッチ)が狭くなると、ハンドのウエハ載置部を収容カセットの奥側まで入れることができなくなって、収容カセットからの半導体ウエハの搬出や収容カセットへの半導体ウエハの搬入ができなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、搬送対象物を搬送する産業用ロボットにおいて、上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容部に収容される複数枚の搬送対象物の上下方向の間隔が狭くなっていても、収容部からの搬送対象物の搬出や収容部への搬送対象物の搬入を行うことが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、搬送対象物を搬送する産業用ロボットにおいて、搬送対象物の端部に係合する係合部を有する第1ハンドと、搬送対象物が載置される載置部を有する第2ハンドと、第1ハンドおよび第2ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備え、アームは、互いに回動可能な複数のアーム部によって構成される多関節アームであり、第1ハンドは、搬送対象物が収容される収容部から載置部に載置可能な位置まで収容部に収容される搬送対象物を引き出す引出動作、および、載置部に載置されていた搬送対象物を収容部に収容される位置まで押し込む押込動作の少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明の産業用ロボットでは、搬送対象物の端部に係合する係合部を有する第1ハンドは、収容部に収容される搬送対象物を第2ハンドの載置部に載置可能な位置まで収容部から引き出す引出動作、および、第2ハンドの載置部に載置されていた搬送対象物を収容部に収容される位置まで押し込む押込動作の少なくともいずれか一方を行っている。
【0009】
そのため、本発明では、第1ハンドおよび第2ハンドを収容部の奥側まで入れなくても、搬送対象物の端部に係合部が係合している第1ハンドの引出動作によって収容部から引き出された搬送対象物を第2ハンドの載置部に載置して収容部から搬送対象物を搬出したり、搬送対象物の端部に係合部が係合している第1ハンドの押込動作によって、載置部に載置されていた搬送対象物を収容部に搬入したりすることが可能になる。したがって、本発明では、上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容部に収容される搬送対象物の上下方向の間隔が狭くなっていて、第1ハンドおよび第2ハンドを収容部の奥側まで入れることができなくても、収容部からの搬送対象物の搬出や収容部への搬送対象物の搬入を行うことが可能になる。
【0010】
本発明において、産業用ロボットは、たとえば、アームを伸縮させるアーム駆動機構と、アームを昇降させるアーム昇降機構と、アームに対して第1ハンドを回動させる第1ハンド駆動機構と、アームに対して第2ハンドを回動させる第2ハンド駆動機構とを備え、第2ハンドは、載置部が昇降可能に取り付けられるハンド本体部と、ハンド本体部に対して載置部を昇降させる載置部昇降機構とを備えている。
【0011】
本発明において、係合部は、搬送対象物の端部を把持する把持機構を備えることが好ましい。このように構成すると、引出動作時や押込動作時に把持機構によって搬送対象物の端部を把持することが可能になるため、引出動作や押込動作を行うときの搬送対象物の状態を安定させることが可能になる。また、このように構成すると、載置部に載置された搬送対象物の搬送時に把持機構によって搬送対象物の端部を把持することが可能になるため、載置部に載置された搬送対象物を搬送するときの搬送対象物の状態を安定させることが可能になる。
【0012】
本発明において、たとえば、第1ハンドは、引出動作を行うとともに、引出動作時に収容部に対して水平方向に直線的に移動し、収容部に対する第1ハンドの移動方向における一方側を手前側とし、手前側の反対側を奥側とし、載置部の、搬送対象物が載置される面を載置面とすると、産業用ロボットは、収容部の手前側に配置され、引出動作では、第1ハンドは、収容部に収容される搬送対象物の手前側の端部を把持機構によって把持可能な位置まで奥側に移動する第1移動動作と、第1移動動作後に把持機構によって搬送対象物の手前側の端部を把持する把持動作と、把持動作後に搬送対象物の奥側の端部が収容部の手前側の端部に載っている位置まで手前側に移動する第2移動動作とを行い、第2ハンドは、第1ハンドが第1移動動作を行っているときに第2ハンドが収容部と干渉しない位置までアームに対して回動する第1回動動作と、第2移動動作時または第2移動動作後に載置面が搬送対象物の下面よりも下側に下降している状態の載置部が搬送対象物の下側に配置される位置までアームに対して回動する第2回動動作と、第2回動動作後に搬送対象物の下面に載置面が接触する位置まで載置部を上昇させる載置部上昇動作とを行い、アームは、載置部上昇動作後に搬送対象物の奥側の端部の下面が収容部から浮く位置まで上昇するアーム上昇動作と、アーム上昇動作時またはアーム上昇動作後に第1ハンドおよび第2ハンドを手前側に移動させる第1アーム伸縮動作とを行う。この場合には、円滑な引出動作を行うことが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、第1ハンドは、押込動作を行うとともに、押込動作時に収容部に対して水平方向に直線的に移動し、収容部に対する第1ハンドの移動方向における一方側を手前側とし、手前側の反対側を奥側とし、載置部の、搬送対象物が載置される面を載置面とすると、産業用ロボットは、収容部の手前側に配置され、アームは、押込動作前に、載置部に載置されているとともに把持機構によって手前側の端部が把持されている搬送対象物の奥側の端部が収容部の手前側の内部に入る位置まで第1ハンドおよび第2ハンドを奥側に移動させる第2アーム伸縮動作と、第2アーム伸縮動作時または第2アーム伸縮動作後に搬送対象物の奥側の端部が収容部の手前側の端部に載る位置まで下降するアーム下降動作とを行い、第2ハンドは、アーム下降動作後に搬送対象物の下面から載置面が離れる位置まで載置部を下降させる載置部下降動作と、載置部下降動作後に第2ハンドがアームに対して所定量回動する第3回動動作とを行い、押込動作では、第1ハンドは、第3回動動作時または第3回動動作後に搬送対象物の手前側の端部が収容部の手前側の端部に載る位置まで奥側に移動する第3移動動作を行い、第3回動動作では、第2ハンドは、第1ハンドが第3移動動作を行っているときに第2ハンドが収容部と干渉しない位置まで回動する。この場合には、円滑な押込動作を行うことが可能になる。
【0014】
本発明において、たとえば、アームは、アーム部として、基端側が本体部に回動可能に連結される第1アーム部と、第1アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結される第2アーム部と、第2アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結されるとともに先端側に第1ハンドおよび第2ハンドが回動可能に連結される第3アーム部とを備えている。
【0015】
本発明において、第1ハンドは、引出動作および押込動作を行うとともに、引出動作時および押込動作時に収容部に対して水平方向に直線的に移動し、収容部に対する第1ハンドの移動方向と上下方向とに直交する方向を第1方向とすると、載置部には、少なくとも引出動作直後および押込動作直前に第1方向において搬送対象物の移動を規制するガイド部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、載置部に載置された搬送対象物を搬送するときの搬送対象物の状態を安定させることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の産業用ロボットでは、上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容部に収容される複数枚の搬送対象物の上下方向の間隔が狭くなっていても、収容部からの搬送対象物の搬出や収容部への搬送対象物の搬入を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの斜視図である。
図2図1に示す産業用ロボットが使用される製造システムの概略平面図である。
図3図1に示す産業用ロボットの構成を説明するためのブロック図である。
図4図1に示す産業用ロボットの、収容部に対する搬送対象物の搬送時の動作を説明するための図である。
図5図1に示す産業用ロボットの、収容部に対する搬送対象物の搬送時の動作を説明するための図である。
図6図5(B)に示す第1ハンドの引出動作後および押込動作前の載置部の動作およびアームの動作を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(産業用ロボットの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の斜視図である。図2は、図1に示す産業用ロボット1が使用される製造システム4の概略平面図である。図3は、図1に示す産業用ロボット1の構成を説明するためのブロック図である。
【0020】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、所定の搬送対象物2(図4等参照)を搬送するための水平多関節型のロボットである。搬送対象物2は、たとえば、長方形の平板状に形成されている。また、搬送対象物2は、薄い平板状に形成されている。ロボット1は、複数枚の搬送対象物2が収容される収容部としての収容カセット3がセットされる所定の製造システム4で使用される。ロボット1は、収容カセット3からの搬送対象物2の搬出と、収容カセット3への搬送対象物2の搬入とを行う。
【0021】
収容カセット3に収容される搬送対象物2の厚さ方向は、上下方向(鉛直方向)と一致している。収容カセット3には、複数枚の搬送対象物2が上下方向に間隔をあけた状態で重なるように収容されている。収容カセット3の内部には、搬送対象物2が載置される複数のカセット側載置部3a(図6参照)が形成されている。収容カセット3に収容される搬送対象物2の上下方向の間隔(ピッチ)は狭くなっている。
【0022】
以下の説明では、上下方向に直交する図2等のY方向を「左右方向」とし、左右方向と上下方向とに直交する図2等のX方向を「前後方向」とする。また、前後方向の一方側である図2等のX1方向側を「前」側または「手前」側とし、その反対側である図2等のX2方向側を「後ろ」側または「奥」側とする。本形態では、たとえば、2個の収容カセット3が左右方向に間隔をあけた状態で配置されている。また、収容カセット3は、ロボット1の後ろ側に配置されている。すなわち、ロボット1は、収容カセット3の手前側に配置されている。長方形状の平板状に形成される搬送対象物2が収容カセット3に収容されているときには、搬送対象物2の長辺の方向が前後方向と略一致し、搬送対象物2の短辺の方向が左右方向と略一致している。
【0023】
ロボット1は、2個のハンド5、6と、ハンド5、6が先端側に回動可能に連結されるアーム7と、アーム7の基端側が回動可能に連結される本体部8とを備えている。本体部8は、アーム7の基端側が回動可能に連結される昇降体9と、昇降体9を昇降可能に保持するケース体10とを備えている。本形態のハンド5は、第1ハンドであり、ハンド6は、第2ハンドである。
【0024】
アーム7は、水平方向に伸縮する多関節アームである。アーム7は、第1アーム部11と第2アーム部12と第3アーム部13との3個のアーム部によって構成されている。第2アーム部12は、第1アーム部11に対して回動可能となっており、第3アーム部13は、第2アーム部12に対して回動可能となっている。すなわち、アーム7は、互いに回動可能な3個のアーム部によって構成されている。第1アーム部11の基端側は、本体部8に回動可能に連結されている。具体的には、第1アーム部11の基端側は、昇降体9の上端部に回動可能に連結されている。第1アーム部11の先端側には、第2アーム部12の基端側が回動可能に連結されている。第2アーム部12の先端側には、第3アーム部13の基端側が回動可能に連結されている。
【0025】
第1アーム部11は、本体部8よりも上側に配置されている。第2アーム部12は、第1アーム部11よりも上側に配置されている。第3アーム部13は、第2アーム部12よりも上側に配置されている。水平方向において、本体部8に対する第1アーム部11の回動中心と第1アーム部11に対する第2アーム部12の回動中心との距離と、第1アーム部11に対する第2アーム部12の回動中心と第2アーム部12に対する第3アーム部13の回動中心との距離とは等しくなっている。
【0026】
ハンド5、6は、第3アーム部13の先端側に回動可能に連結されている。具体的には、ハンド5、6の基端部が第3アーム部13の先端側に回動可能に連結されている。ハンド5、6は、第3アーム部13よりも上側に配置されている。また、ハンド5は、ハンド6の上側に配置されている。第3アーム部13に対するハンド5の回動中心と第3アーム部13に対するハンド6の回動中心とは一致している。ハンド5、6のそれぞれは、第3アーム部13に対して個別に回動可能となっている。
【0027】
また、ロボット1は、アーム7に対してハンド5を回動させる第1ハンド駆動機構としてのハンド駆動機構16と、アーム7に対してハンド6を回動させる第2ハンド駆動機構としてのハンド駆動機構17と、第1アーム部11および第2アーム部12を回動させて第1アーム部11と第2アーム部12とからなるアーム7の一部を伸縮させるアーム部駆動機構18と、第2アーム部12に対して第3アーム部13を回動させる第3アーム部駆動機構19とを備えている。本形態では、アーム部駆動機構18と第3アーム部駆動機構19とによってアーム7を伸縮させるアーム駆動機構20が構成されている。また、ロボット1は、ケース体10に対して昇降体9と一緒にアーム7を昇降させるアーム昇降機構21と、ロボット1を制御する制御部22とを備えている。
【0028】
ハンド駆動機構16は、駆動源となるモータと、モータの動力をハンド5に伝達する動力伝達機構とを備えている。ハンド駆動機構17は、ハンド駆動機構16と同様に、駆動源となるモータと、モータの動力をハンド6に伝達する動力伝達機構とを備えている。ハンド駆動機構16、17のモータは、第3アーム部13の内部に配置されている。ハンド駆動機構16、17は、制御部22に電気的に接続されている。具体的には、ハンド駆動機構16、17のモータ等が制御部22に電気的に接続されている。
【0029】
アーム部駆動機構18は、駆動源となるモータと、モータの動力を第1アーム部11および第2アーム部12に伝達する動力伝達機構とを備えている。アーム部駆動機構18は、第2アーム部12に対する第3アーム部13の回動中心が左右方向に直線的に移動するように第1アーム部11および第2アーム部12を回動させる。アーム部駆動機構18のモータは、昇降体9の内部に配置されている。アーム部駆動機構18は、制御部22に電気的に接続されている。具体的には、アーム部駆動機構18のモータ等が制御部22に電気的に接続されている。
【0030】
第3アーム部駆動機構19は、駆動源となるモータと、モータの動力を第3アーム部13に伝達する動力伝達機構とを備えている。第3アーム部駆動機構19のモータは、第2アーム部12の基端側に配置されている。第3アーム部駆動機構19は、制御部22に電気的に接続されている。具体的には、第3アーム部駆動機構19のモータ等が制御部22に電気的に接続されている。
【0031】
アーム昇降機構21は、駆動源となるモータと、モータの動力を昇降体9に伝達する動力伝達機構とを備えている。アーム昇降機構21は、ケース体10に収容されている。アーム昇降機構21は、制御部22に電気的に接続されている。具体的には、アーム昇降機構21のモータ等が制御部22に電気的に接続されている。
【0032】
アーム駆動機構20は、収容カセット3からの搬送対象物2の搬出時、および、収容カセット3への搬送対象物2の搬入時(以下、「収容カセット3に対する搬送対象物2の搬送時」とする。)に、本体部8に対してハンド5、6が水平方向に直線的に移動するようにアーム7を伸縮させる。すなわち、ハンド5、6は、収容カセット3に対する搬送対象物2の搬送時に、水平方向に直線的に移動する。
【0033】
具体的には、ハンド5、6は、収容カセット3に対する搬送対象物2の搬送時に、収容カセット3に対して前後方向に直線的に移動する。また、ハンド駆動機構16は、収容カセット3に対する搬送対象物2の搬送時に、本体部8に対してハンド5が一定方向を向いた状態で前後方向に直線的に移動するようにハンド5を回動させる。すなわち、収容カセット3に対する搬送対象物2の搬送時には、ハンド5は、一定方向を向いた状態で収容カセット3に対して前後方向に直線的に移動する。本形態の前後方向(X方向)は、収容カセット3に対するハンド5、6の移動方向となっている。
【0034】
上述のように、ハンド5は、収容カセット3に対する搬送対象物2の搬送時に、収容カセット3に対して前後方向に直線的に移動する。また、後述のように、ハンド5は、ロボット1が収容カセット3から搬送対象物2を搬出するときに引出動作を行い、ロボット1が収容カセット3に搬送対象物2を搬入するときに押込動作を行う。すなわち、ハンド5は、引出動作時および押込動作時に収容カセット3に対して前後方向に直線的に移動する。本形態の左右方向(Y方向)は、収容カセット3に対するハンド5の移動方向と上下方向とに直交する第1方向となっている。
【0035】
(ハンドの構成)
ハンド5は、搬送対象物2の端部に係合する係合部23を備えている。係合部23は、ハンド5の先端部を構成している。アーム7には、ハンド5の基端部が連結されている。係合部23は、搬送対象物2の端部を把持する把持機構24を備えている。把持機構24は、たとえば、搬送対象物2の端部を上下方向で挟んで把持する上側把持部材25および下側把持部材26と、上側把持部材25を昇降させる把持部材昇降機構27(図3参照)とを備えている。上側把持部材25は、把持機構24に把持される搬送対象物2の端部の上側に配置され、下側把持部材26は、把持機構24に把持される搬送対象物2の端部の下側に配置されている。搬送対象物2の端部は、下側把持部材26の上面に載置される。
【0036】
把持部材昇降機構27は、上側把持部材25が搬送対象物2の端部の上面に接触して把持機構24が搬送対象物2を把持する把持位置と、上側把持部材25が搬送対象物2の端部の上面から離れて退避する退避位置との間で上側把持部材25を昇降させる。把持部材昇降機構27は、モータ、ソレノイドまたはエアシリンダ等の駆動源と、駆動源の動力を上側把持部材25に伝達する動力伝達機構とを備えている。把持部材昇降機構27は、制御部22に電気的に接続されている。具体的には、把持部材昇降機構27の駆動源等が制御部22に電気的に接続されている。なお、把持部材昇降機構27は、上側把持部材25と下側把持部材26との2個の把持部材を昇降させても良い。
【0037】
上述のように、収容カセット3に対する搬送対象物2の搬送時には、ハンド5は、一定方向を向いた状態で収容カセット3に対して前後方向に直線的に移動する。収容カセット3に対する搬送対象物2の搬送時には、係合部23は、ハンド5の後端部を構成しており、搬送対象物2の前端部(手前側の端部)に係合する。すなわち、収容カセット3に対する搬送対象物2の搬送時には、把持機構24は、搬送対象物2の前端部を把持する。収容カセット3に対する搬送対象物2の搬送時における上側把持部材25および下側把持部材26の左右方向の幅は、搬送対象物2の短辺方向の幅よりも狭くなっている。収容カセット3に対する搬送対象物2の搬送時には、上側把持部材25および下側把持部材26は、搬送対象物2の前端部の左右方向の中心部分を把持する。
【0038】
ハンド6は、搬送対象物2が載置される載置部30と、載置部30が昇降可能に取り付付けられるハンド本体部31と、ハンド本体部31に対して載置部30を昇降させる載置部昇降機構32(図3参照)とを備えている。ハンド本体部31は、上下方向の厚さが薄い扁平な直方体状に形成されている。また、ハンド本体部31は、細長い直方体状に形成されており、上下方向から見たときのハンド本体部31の形状は、長方形状となっている。以下の説明では、上下方向から見たときの形状が長方形状をなすハンド本体部31の長辺の方向を「ハンド長辺方向」とし、ハンド本体部31の短辺の方向を「ハンド短辺方向」とする。
【0039】
アーム7には、ハンド長辺方向におけるハンド本体部31の一端部であるハンド本体部31の基端部が連結されている。載置部30は、ハンド長辺方向におけるハンド本体部31の他端部であるハンド本体部31の先端部の上面側に取り付けられている。載置部30は、ハンド本体部31の上側に配置されている。アーム7に対するハンド5、6の回動中心から載置部30までの水平方向の距離は、アーム7に対するハンド5、6の回動中心から上側把持部材25および下側把持部材26の先端までの水平方向の距離よりも長くなっている。
【0040】
後述の引出動作後に載置部30に搬送対象物2が載置されるとき、および、後述の押込動作前には、ハンド本体部31は、ハンド長辺方向と前後方向とが一致し、ハンド短辺方向と左右方向とが一致するように配置されている。このときには、左右方向における載置部30の中心と左右方向における係合部23の中心とは、左右方向において同じ位置に配置されている。また、このときには、載置部30は、ハンド6の後端部を構成している。
【0041】
載置部30には、搬送対象物2が載置される面である載置面30aが形成されている。載置面30aには、搬送対象物2の短辺の方向の端部が載置される。載置面30aは、ハンド短辺方向の両端側の2箇所に形成されている。すなわち、載置部30のハンド短辺方向の両端側には、搬送対象物2の短辺の方向の両端部が載置される載置面30aが形成されている。載置面30aは、上下方向に直交する平面となっている。載置面30aには、搬送対象物2の下面が接触する。
【0042】
載置面30aは、ハンド長辺方向に細長い長方形状に形成されている。載置面30aのハンド長辺方向の長さは、搬送対象物2の長辺の方向の長さよりも短くなっている。載置部30の上面の、ハンド短辺方向における2個の載置面30aの間の部分である載置部上面30bは、載置面30aよりも下側に配置される平面となっている。すなわち、ハンド6の上面の、ハンド短辺方向における2個の載置面30aの間の部分は、載置面30aよりも下側に配置されている。載置部上面30bは、上下方向に直交する平面となっている。
【0043】
また、載置部30には、ハンド短辺方向において搬送対象物2の移動を規制する(すなわち、搬送対象物2の短辺の方向において搬送対象物2の移動を規制する)ガイド部30cが形成されている。ガイド部30cは、ハンド短辺方向における載置部30の両端の2箇所に形成されている。また、ガイド部30cは、ハンド短辺方向における載置面30aの外側に形成されている。ガイド部30cは、上側に向かって突出している。ガイド部30cには、搬送対象物2の、長辺に平行な端面が接触可能となっている。ガイド部30cは、少なくとも後述の引出動作の直後および押込動作の直前に左右方向において搬送対象物2の移動を規制する機能を果たしている。
【0044】
載置部昇降機構32は、載置面30aが搬送対象物2の下面に接触して載置面30aに搬送対象物2が載置される載置位置(図6(B)参照)と、載置面30aが搬送対象物2の下面から離れるように下側に退避する退避位置(図6(A)参照)との間で載置部30を昇降させる。載置部昇降機構32は、モータ、ソレノイドまたはエアシリンダ等の駆動源と、駆動源の動力を載置部30に伝達する動力伝達機構とを備えている。載置部昇降機構32は、制御部22に電気的に接続されている。具体的には、載置部昇降機構32の駆動源等が制御部22に電気的に接続されている。
【0045】
(産業用ロボットの動作)
図4図5は、図1に示すロボット1の、収容カセット3に対する搬送対象物2の搬送時の動作を説明するための図である。図6は、図5(B)に示すハンド5の引出動作後および押込動作前の載置部30の動作およびアーム7の動作を説明するための概略図である。なお、図4図5では、収容カセット3の図示を省略しているが、図4では、搬送対象物2の全体が収容カセット3に収容されている状態を図示し、図5では、搬送対象物2の後端部のみが収容カセット3に収容されている状態を図示している。
【0046】
ロボット1が収容カセット3から搬送対象物2を搬出するときには、ハンド5は、収容カセット3に収容される搬送対象物2を、ハンド6の載置部30に載置可能な位置まで収容カセット3から引き出す引出動作を行う。引出動作では、ハンド5は、係合部23が前端部に係合している搬送対象物2を収容カセット3から引き出す。
【0047】
引出動作では、まず、ハンド5は、図4(A)に示す所定の待機位置から、収容カセット3に収容される搬送対象物2の前端部(手前側の端部)を把持機構24によって把持可能な位置まで後ろ側(奥側)に移動する第1移動動作を行う(図4(B)参照)。すなわち、搬送対象物2の前端部を把持機構24が把持可能な位置までアーム7が伸縮する。第1移動動作後に、ハンド5は、把持機構24によって搬送対象物2の前端部を把持する把持動作を行う(図4(B)参照)。すなわち、係合部23は、引出動作時に、搬送対象物2の手前側の端部に係合する。
【0048】
把持動作後に、ハンド5は、搬送対象物2の後端部(奥側の端部)が収容カセット3の前端部(手前側の端部)に載っている位置まで前側(手前側)に移動する第2移動動作を行う(図5(A)参照)。すなわち、搬送対象物2の後端部が収容カセット3の前端部に載っている位置までアーム7が伸縮する。第2移動動作が完了すると、図6(A)に示すように、搬送対象物2の後端部がカセット側載置部3aの前端部に載っている。また、第2移動動作が完了すると、ハンド5による引出動作が完了する。
【0049】
ハンド6は、ハンド5が第1移動動作を行っているときにハンド6が収容カセット3と干渉しない位置までアーム7に対して回動する第1回動動作を行う(図4(B)参照)。ハンド6は、第1移動動作前または第1移動動作時に第1回動動作を行う。また、ハンド6は、第2移動動作時または第2移動動作後に載置面30aが搬送対象物2の下面よりも下側に下降している状態の載置部30aが搬送対象物2の下側に配置される位置までアーム7に対して回動する第2回動動作を行う(図5(A)、(B)参照)。ハンド6が第2回動動作を行うときには、ガイド部30cの上端(すなわち、ハンド6の上端)が搬送対象物2の下面よりも下側に配置されている。
【0050】
図6(A)は、第2回動動作が完了したときの状態を示している。第2回動動作が完了したときには、載置部30は、後端部がカセット側載置部3aの前端部に載っている状態の搬送対象物2の下側に配置されている。また、第2回動動作が完了したときには、ハンド6は、収容カセット3の前側に配置されている。第2回動動作後、ハンド6は、搬送対象物2の下面に載置面30aが接触する位置まで載置部30を上昇させる載置部上昇動作を行う(図6(B)参照)。載置部上昇動作前には、第2移動動作が完了している。
【0051】
載置部上昇動作後に、アーム7は、搬送対象物2の後端部の下面が収容カセット3から浮く位置(具体的には、カセット側載置部3aの前端部の上面から浮く位置)まで上昇するアーム上昇動作を行う(図6(C)参照)。このときには、把持機構24は、搬送対象物2の前端部を把持している。また、アーム7は、アーム上昇動作時またはアーム上昇動作後にハンド5、6を前側に移動させる第1アーム伸縮動作を行う。また、その後、ロボット1は、昇降体9の昇降動作やアーム7の伸縮動作等を行って、収容カセット3から搬出した搬送対象物2を所定位置まで搬送する。このときには、把持機構24は、搬送対象物2の端部を把持している。
【0052】
また、ロボット1が収容カセット3に搬送対象物2を搬入するときには、ハンド5は、載置部30に載置されていた搬送対象物2を収容カセット3に収容される位置まで押し込む押込動作を行う。押込動作では、ハンド5は、把持機構24が前端部を把持している搬送対象物2を収容カセット3に押し込む。すなわち、係合部23は、押込動作時に、搬送対象物2の手前側の端部に係合している。
【0053】
アーム7は、押込動作前に、載置部30に載置されているとともに把持機構24によって前端部が把持されている搬送対象物2の後端部が収容カセット3の前側の内部に入る位置までハンド5、6を奥側に移動させる第2アーム伸縮動作を行う(図6(C)参照)。また、アーム7は、第2アーム伸縮動作時または第2アーム伸縮動作後に搬送対象物2の後端部が収容カセット3の前端部に載る位置(具体的には、カセット側載置部3aの前端部に載る位置)まで下降するアーム下降動作を行う(図6(B)参照)。
【0054】
ハンド6は、アーム下降動作後に、搬送対象物2の下面から載置面30aが離れる位置まで載置部30を下降させる載置部下降動作を行う(図6(A)参照)。また、ハンド6は、載置部下降動作後に、ハンド6がアーム7に対して所定量回動する第3回動動作を行う。第3回動動作では、ハンド6は、ハンド5が後述の第3移動動作を行っているときにハンド6が収容カセット3と干渉しない位置まで回動する(図5(A)、図4(B)参照)。
【0055】
押込動作では、ハンド5は、第3回動動作時または第3回動動作後に、搬送対象物2の前端部が収容カセット3の前端部に載る位置まで奥側に移動する第3移動動作を行う。図5(A)、図4(B)参照)。すなわち、ハンド5は、第3移動動作において、搬送対象物2が収容カセット3に収容される位置まで搬送対象物2を奥側に押し込む。第3移動動作後、ハンド5は、把持機構24による搬送対象物2の把持状態を解除する。搬送対象物2の把持状態が解除されると、ハンド5による押込動作が完了する。その後、ハンド5、6は、たとえば、前側に移動する。
【0056】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、搬送対象物2の前端部に係合する係合部23を有するハンド5は、収容カセット3に収容される搬送対象物2を、ハンド6の載置部30に載置可能な位置まで収容カセット3から引き出す引出動作と、載置部30に載置されていた搬送対象物2を収容カセット3に収容される位置まで押し込む押込動作とを行っている。
【0057】
そのため、本形態では、収容カセット3の奥側までハンド5、6を入れなくても、搬送対象物2の前端部に係合部23が係合しているハンド5の引出動作によって収容カセット3から引き出された搬送対象物2を載置部30に載置して収容カセット3から搬送対象物2を搬出することが可能になるとともに、搬送対象物2の前端部に係合部23が係合しているハンド5の押込動作によって、載置部30に載置されていた搬送対象物2を収容カセット3に搬入することが可能になる。したがって、本形態では、収容カセット3に収容される搬送対象物2の上下方向の間隔が狭くなっていて、収容カセット3の奥側までハンド5、6を入れることができなくても、収容カセット3からの搬送対象物2の搬出を行うことが可能になるとともに、収容カセット3への搬送対象物2の搬入を行うことが可能になる。
【0058】
本形態では、係合部23は、搬送対象物2の端部を把持する把持機構24を備えており、ハンド5による引出動作時およびハンド5による押込動作時に、搬送対象物2の端部は、把持機構24によって把持されている。そのため、本形態では、引出動作や押込動作を行うときの搬送対象物2の状態を安定させることが可能になる。また、本形態では、載置部30に載置された搬送対象物2の搬送時にも把持機構24によって搬送対象物2の端部が把持されているため、載置部30に載置された搬送対象物2を搬送するときの搬送対象物2の状態を安定させることが可能になる。
【0059】
本形態では、載置部30に、ハンド短辺方向において搬送対象物2の移動を規制するガイド部30cが形成されている。そのため、本形態では、載置部30に載置された搬送対象物2を搬送するときの搬送対象物2の状態を安定させることが可能になる。
【0060】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0061】
上述した形態において、載置部30に載置される搬送対象物2を把持機構24によってより安定した状態で把持することができるのであれば、載置部30にガイド部30cが形成されていなくても良い。また、上述した形態では、搬送対象物2の端部は、上側把持部材25と下側把持部材26との2個の把持部材によって上下方向で挟まれることで把持されているが、たとえば、搬送対象物2の短辺の方向の幅が狭い場合には、搬送対象物2の端部は、2個の把持部材によって搬送対象物2の短辺の方向で挟まれることで把持されても良い。
【0062】
上述した形態において、係合部23は、把持機構24を備えていなくても良い。この場合には、たとえば、搬送対象物2の端部に係合穴が形成されるとともに、係合部23は、この係合穴に挿入されて係合する係合爪を備えている。この場合には、ハンド5による引出動作時および押込動作時に、搬送対象物2の係合穴に係合部23の係合爪が係合している。また、上述した形態において、ハンド5は、引出動作のみを行っても良いし、押込動作のみを行っても良い。
【0063】
上述した形態において、アーム7は、第1アーム部11と第2アーム部12との2個のアーム部によって構成されていても良い。この場合には、第2アーム部12の先端側にハンド5、6が回動可能に連結されている。また、この場合には、ロボット1は、たとえば、本体部8を左右方向に移動させる水平移動機構を備えている。また、上述した形態において、搬送対象物2は、長方形以外の形状の平板状に形成されていても良い。たとえば、搬送対象物2は、正方形の平板状に形成されていても良いし、円板状に形成されていても良い。
【0064】
(本技術の構成)
なお、本技術は以下のような構成を取ることが可能である。
(1)搬送対象物を搬送する産業用ロボットにおいて、
前記搬送対象物の端部に係合する係合部を有する第1ハンドと、前記搬送対象物が載置される載置部を有する第2ハンドと、前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備え、
前記アームは、互いに回動可能な複数のアーム部によって構成される多関節アームであり、
前記第1ハンドは、前記搬送対象物が収容される収容部から前記載置部に載置可能な位置まで前記収容部に収容される前記搬送対象物を引き出す引出動作、および、前記載置部に載置されていた前記搬送対象物を前記収容部に収容される位置まで押し込む押込動作の少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする産業用ロボット。
(2)前記アームを伸縮させるアーム駆動機構と、前記アームを昇降させるアーム昇降機構と、前記アームに対して前記第1ハンドを回動させる第1ハンド駆動機構と、前記アームに対して前記第2ハンドを回動させる第2ハンド駆動機構とを備え、
前記第2ハンドは、前記載置部が昇降可能に取り付けられるハンド本体部と、前記ハンド本体部に対して前記載置部を昇降させる載置部昇降機構とを備えることを特徴とする(1)記載の産業用ロボット。
(3)前記係合部は、前記搬送対象物の端部を把持する把持機構を備えることを特徴とする(2)記載の産業用ロボット。
(4)前記第1ハンドは、前記引出動作を行うとともに、前記引出動作時に前記収容部に対して水平方向に直線的に移動し、
前記収容部に対する前記第1ハンドの移動方向における一方側を手前側とし、手前側の反対側を奥側とし、前記載置部の、前記搬送対象物が載置される面を載置面とすると、
前記産業用ロボットは、前記収容部の手前側に配置され、
前記引出動作では、前記第1ハンドは、前記収容部に収容される前記搬送対象物の手前側の端部を前記把持機構によって把持可能な位置まで奥側に移動する第1移動動作と、前記第1移動動作後に前記把持機構によって前記搬送対象物の手前側の端部を把持する把持動作と、前記把持動作後に前記搬送対象物の奥側の端部が前記収容部の手前側の端部に載っている位置まで手前側に移動する第2移動動作とを行い、
前記第2ハンドは、前記第1ハンドが前記第1移動動作を行っているときに前記第2ハンドが前記収容部と干渉しない位置まで前記アームに対して回動する第1回動動作と、前記第2移動動作時または前記第2移動動作後に前記載置面が前記搬送対象物の下面よりも下側に下降している状態の前記載置部が前記搬送対象物の下側に配置される位置まで前記アームに対して回動する第2回動動作と、前記第2回動動作後に前記搬送対象物の下面に前記載置面が接触する位置まで前記載置部を上昇させる載置部上昇動作とを行い、
前記アームは、前記載置部上昇動作後に前記搬送対象物の奥側の端部の下面が前記収容部から浮く位置まで上昇するアーム上昇動作と、前記アーム上昇動作時または前記アーム上昇動作後に前記第1ハンドおよび前記第2ハンドを手前側に移動させる第1アーム伸縮動作とを行うことを特徴とする(3)記載の産業用ロボット。
(5)前記第1ハンドは、前記押込動作を行うとともに、前記押込動作時に前記収容部に対して水平方向に直線的に移動し、
前記収容部に対する前記第1ハンドの移動方向における一方側を手前側とし、手前側の反対側を奥側とし、前記載置部の、前記搬送対象物が載置される面を載置面とすると、
前記産業用ロボットは、前記収容部の手前側に配置され、
前記アームは、前記押込動作前に、前記載置部に載置されているとともに前記把持機構によって手前側の端部が把持されている前記搬送対象物の奥側の端部が前記収容部の手前側の内部に入る位置まで前記第1ハンドおよび前記第2ハンドを奥側に移動させる第2アーム伸縮動作と、前記第2アーム伸縮動作時または前記第2アーム伸縮動作後に前記搬送対象物の奥側の端部が前記収容部の手前側の端部に載る位置まで下降するアーム下降動作とを行い、
前記第2ハンドは、前記アーム下降動作後に前記搬送対象物の下面から前記載置面が離れる位置まで前記載置部を下降させる載置部下降動作と、前記載置部下降動作後に前記第2ハンドが前記アームに対して所定量回動する第3回動動作とを行い、
前記押込動作では、前記第1ハンドは、前記第3回動動作時または前記第3回動動作後に前記搬送対象物の手前側の端部が前記収容部の手前側の端部に載る位置まで奥側に移動する第3移動動作を行い、
前記第3回動動作では、前記第2ハンドは、前記第1ハンドが前記第3移動動作を行っているときに前記第2ハンドが前記収容部と干渉しない位置まで回動することを特徴とする(3)または(4)記載の産業用ロボット。
(6)前記アームは、前記アーム部として、基端側が前記本体部に回動可能に連結される第1アーム部と、前記第1アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結される第2アーム部と、前記第2アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結されるとともに先端側に前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが回動可能に連結される第3アーム部とを備えることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の産業用ロボット。
(7)前記第1ハンドは、前記引出動作および前記押込動作を行うとともに、前記引出動作時および前記押込動作時に前記収容部に対して水平方向に直線的に移動し、
前記収容部に対する前記第1ハンドの移動方向と上下方向とに直交する方向を第1方向とすると、
前記載置部には、少なくとも前記引出動作直後および前記押込動作直前に前記第1方向において前記搬送対象物の移動を規制するガイド部が形成されていることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の産業用ロボット。
【符号の説明】
【0065】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 搬送対象物
3 収容カセット(収容部)
5 ハンド(第1ハンド)
6 ハンド(第2ハンド)
7 アーム
8 本体部
11 第1アーム部(アーム部)
12 第2アーム部(アーム部)
13 第3アーム部(アーム部)
16 ハンド駆動機構(第1ハンド駆動機構)
17 ハンド駆動機構(第2ハンド駆動機構)
20 アーム駆動機構
21 アーム昇降機構
23 係合部
24 把持機構
30 載置部
30a 載置面
30c ガイド部
31 ハンド本体部
32 載置部昇降機構
X 収容部に対する第1ハンドの移動方向
X1 手前側
X2 奥側
Y 第1方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6