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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046863
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】露光装置および露光方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152196
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】水端 稔
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA28
2H197CC05
2H197DA03
2H197DA09
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
(57)【要約】
【課題】一次元空間光変調素子が有する分解能より高い分解能で露光を行うことのできる技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る露光装置は、長手方向の位置分解能が互いに等しいN個(Nは2以上の整数)の一次元光変調素子が、長手方向と交わる方向に互いに位置を異ならせて、かつ互いの長手方向が平行となるよう配置され、しかも、長手方向における位置が位置分解能の(1/N)ずつ異なっている。データ処理部は、描画データに基づき、長手方向に対応する方向のグリッドサイズを位置分解能の(1/N)倍とするラスターデータを作成し、ラスターデータに基づき露光データを作成し、露光制御部は、露光データに基づき前記光変調素子の各々を制御する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次元の光変調素子を複数有する変調部と、
前記光変調素子の各々に光ビームを入射させる光照射部と、
描画すべきパターンを表す描画データに基づき、前記光変調素子を制御するための露光データを作成するデータ処理部と、
前記露光データに基づき前記光変調素子の各々を制御する露光制御部と
を備え、
前記変調部では、長手方向の位置分解能が互いに等しいN個(Nは2以上の整数)の前記光変調素子が、前記長手方向と交わる方向に互いに位置を異ならせて、かつ互いの前記長手方向が平行となるよう配置され、しかも、前記長手方向における位置が前記位置分解能の(1/N)ずつ異なっており、
前記データ処理部は、前記描画データに基づき、前記長手方向に対応する方向のグリッドサイズを前記位置分解能の(1/N)倍とするラスターデータを作成し、前記ラスターデータに基づき前記露光データを作成し、
前記露光制御部は、前記露光データに基づき前記光変調素子の各々を制御する、露光装置。
【請求項2】
前記光変調素子は前記長手方向に周期的な周期構造を有する回折格子型の空間光変調素子であり、前記位置分解能が前記周期構造のピッチにより規定される、請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記光照射部は、前記N個の光変調素子のそれぞれに対応するN本の前記光ビームを出射する、請求項1または2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記光照射部は、前記N本の光ビームを個別に出射するモードと、前記N本の光ビームを合成し1本の前記光ビームとして出射するモードとを切り替える、請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記光照射部は、光源から出射される前記光ビームの光路を変化させて前記N個の光変調素子に選択的に前記光ビームを入射させる、請求項1または2に記載の露光装置。
【請求項6】
前記変調部から出射される前記光ビームを前記被露光物の表面に収束させる投影光学系を備え、前記光変調素子の各々から出射される前記光ビームが単一の前記投影光学系に入射する、請求項1または2に記載の露光装置。
【請求項7】
前記投影光学系が縮小光学系である、請求項6に記載の露光装置。
【請求項8】
変調された光ビームを被露光物に入射させて露光する露光方法において、
光照射部から出射される光ビームが変調部に入射し、前記変調部で変調された前記光ビームが前記被露光物に入射するように、前記光照射部と前記変調部と前記被露光物とを配置する工程と、
描画すべきパターンを表す描画データに基づき、前記変調部を制御するための露光データを作成する工程と、
前記露光データに基づき前記変調部を制御して、変調された前記光ビームを前記被露光物に入射させる工程と
を備え、
前記変調部では、長手方向の位置分解能が互いに等しいN個(Nは2以上の整数)の一次元の光変調素子が、前記長手方向と交わる方向に互いに位置を異ならせて、かつ互いの前記長手方向が平行となるよう配置され、しかも、前記長手方向における位置が前記位置分解能の(1/N)ずつ異なっており、
前記描画データに基づき、前記長手方向に対応する方向のグリッドサイズを前記位置分解能の(1/N)倍とするラスターデータを作成し、前記ラスターデータに基づき前記露光データを作成し、前記露光データに基づき前記光変調素子の各々を制御する、露光方法。
【請求項9】
前記複数の光変調素子の各々に対して個別の前記露光データを作成する、請求項8に記載の露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体基板、半導体パッケージ基板、プリント配線基板、ガラス基板等の基板にパターンを描画するために基板を露光する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、半導体パッケージ基板、プリント配線基板、ガラス基板等の各種基板に配線パターン等のパターンを形成する技術として、表面に感光層が形成された基板を被露光物として、露光データに応じて変調された光ビームを入射し、感光層を露光させるものがある。例えば特許文献1には、描画すべきパターンに応じて変調した光ビームを基板に照射することで、基板に所定のパターンを描画する露光装置が記載されている。
【0003】
この露光装置では、光ビームの変調に、固定リボンと可動リボンとのペアを一方向に多数並べた一次元回折格子型の空間光変調器が用いられ、これにより変調された光ビームは縮小光学系である投影光学系を介して基板に入射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5813961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような露光装置では、回折格子の配列方向における分解能(位置分解能)は、当該回折格子の配列ピッチによって決まる。分解能を高めるためには、この配列ピッチを小さくするか、投影光学系の縮小倍率を大きくすることが必要である。しかしながら、既にμmオーダーの設計ルールで製造されている回折格子をより微細化することは容易でない。また、投影光学系の縮小倍率を大きくすると、被露光物に結像する像自体が小さくなるため、同じ面積を露光するのに要する時間が大幅に増大し、生産性が著しく低下してしまうという問題がある。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、一次元空間光変調素子を用いて変調した光ビームにより露光してパターンを描画する露光装置および露光方法において、一次元空間光変調素子が有する分解能より高い分解能で露光を行うことのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る露光装置の一の態様は、一次元の光変調素子を複数有する変調部と、前記光変調素子の各々に光ビームを入射させる光照射部と、描画すべきパターンを表す描画データに基づき、前記光変調素子を制御するための露光データを作成するデータ処理部と、前記露光データに基づき前記光変調素子の各々を制御する露光制御部とを備えている。ここで、前記変調部では、長手方向の位置分解能が互いに等しいN個(Nは2以上の整数)の前記光変調素子が、前記長手方向と交わる方向に互いに位置を異ならせて、かつ互いの前記長手方向が平行となるよう配置され、しかも、前記長手方向における位置が前記位置分解能の(1/N)ずつ異なっている。そして、前記データ処理部は、前記描画データに基づき、前記長手方向に対応する方向のグリッドサイズを前記位置分解能の(1/N)倍とするラスターデータを作成し、前記ラスターデータに基づき前記露光データを作成し、前記露光制御部は、前記露光データに基づき前記光変調素子の各々を制御する。
【0008】
また、この発明の他の一の態様は、変調された光ビームを被露光物に入射させて露光する露光方法において、光照射部から出射される光ビームが変調部に入射し、前記変調部で変調された前記光ビームが前記被露光物に入射するように、前記光照射部と前記変調部と前記被露光物とを配置する工程と、描画すべきパターンを表す描画データに基づき、前記変調部を制御するための露光データを作成する工程と、前記露光データに基づき前記変調部を制御して、変調された前記光ビームを前記被露光物に入射させる工程とを備えている。ここで、前記変調部では、長手方向の位置分解能が互いに等しいN個(Nは2以上の整数)の一次元の光変調素子が、前記長手方向と交わる方向に互いに位置を異ならせて、かつ互いの前記長手方向が平行となるよう配置され、しかも、前記長手方向における位置が前記位置分解能の(1/N)ずつ異なっている。そして、前記描画データに基づき、前記長手方向に対応する方向のグリッドサイズを前記位置分解能の(1/N)倍とするラスターデータを作成し、前記ラスターデータに基づき前記露光データを作成し、前記露光データに基づき前記光変調素子の各々を制御する。
【0009】
このように構成された発明では、パターンに応じて光ビームを変調する主体である変調部が、N個(Nは2以上の整数)の一次元光変調素子を有している。これらN個の光変調素子は、その長手方向において、位置分解能の(1/N)倍ずつずれて配列される。したがって、これらの光変調素子を個別に作動させて同じ像を形成した場合を考えると、それらの像位置は、光変調素子の長手方向に対応する方向において位置分解能に相当する距離の(1/N)ずつ互いに異なることとなる。つまり、露光時の光変調素子を使い分けることで、実質的な位置分解能をN倍に向上させることが可能である。
【0010】
これを可能とするために、描画データに基づき作成されるラスターデータは、位置分解能の(1/N)倍のグリッドサイズを有するものとされる。そして、ラスターデータから作成される露光データに基づき、N個の光変調素子がそれぞれ制御される。その結果、光ビームの入射位置は、光変調素子の長手方向に対応する方向において、同方向の位置分解能の(1/N)倍の距離を単位として調整可能である。したがって、これらの光変調素子を用いて描画されるパターンにおける実効的な位置分解能は、各光変調素子が有する位置分解能に比べてN倍となる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、本発明によれば、各素子の位置分解能の(1/N)だけ長手方向にずれて配列されたN個の一次元光変調素子を、位置分解能の(1/N)倍のグリッドサイズで生成されたラスターデータを用いて制御することにより、描画されるパターンの位置分解能を実効的にN倍に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明にかかる露光装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
図2図1の露光装置が備える電気的構成の一例を示すブロック図である。
図3】光照射部の構成を示す図である。
図4】露光ヘッドが備える詳細構成の一例を模式的に示す図である。
図5】回折光学素子が備える構成の一例を模式的に示す図である。
図6】変調部における回折光学素子の配置を示す図である。
図7】空間光変調器へのビーム光の入射態様を例示する図である。
図8】露光装置により実行される処理を示すフローチャートである。
図9】ラスタライズ処理におけるパターンとグリッドの関係を例示する図である。
図10】露光データ再作成および第2露光動作を示すフローチャートである。
図11】パターンとグリッドとの関係を模式的に示す図である。
図12】光ビームが分割される場合の第2露光動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明にかかる露光装置の概略構成を模式的に示す正面図であり、図2図1の露光装置が備える電気的構成の一例を示すブロック図である。図1および以下の図では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向、鉛直方向であるZ方向およびZ方向に平行な回転軸を中心とする回転方向θを適宜示す。
【0014】
露光装置1は、レジストなどの感光材料の層が形成された基板S(露光対象基板)に所定のパターンのレーザー光を照射することで、感光材料にパターンを描画する。基板Sとしては、例えば半導体基板、半導体パッケージ基板、プリント配線基板、各種表示装置用のガラス基板などの各種基板を適用可能である。
【0015】
露光装置1は本体11を備え、本体11は、本体フレーム111と、本体フレーム111に取り付けられたカバーパネル(図示省略)とで構成される。そして、本体11の内部と外部とのそれぞれに、露光装置1の各種の構成要素が配置されている。
【0016】
露光装置1の本体11の内部は、処理領域112と受け渡し領域113とに区分されている。処理領域112には、主として、ステージ2、ステージ駆動機構3、露光ユニット4およびアライメントユニット5が配置される。また、本体11の外部には、アライメントユニット5に照明光を供給する照明ユニット6が配置されている。受け渡し領域113には、処理領域112に対して基板Sの搬出入を行う搬送ロボット等の搬送装置7が配置される。さらに、本体11の内部には制御部9が配置されており、制御部9は、露光装置1の各部と電気的に接続されて、これら各部の動作を制御する。
【0017】
本体11の内部の受け渡し領域113に配置された搬送装置7は、図示しない外部の搬送装置または基板保管装置から未処理の基板Sを受け取って処理領域112に搬入(ローディング)するとともに、処理領域112から処理済みの基板Sを搬出(アンローディング)し外部へ払い出す。未処理基板Sのローディングおよび処理済基板Sのアンローディングは制御部9からの指示に応じて搬送装置7により実行される。
【0018】
ステージ2は、平板状の外形を有し、その上面に載置された基板Sを水平姿勢に保持する。ステージ2の上面には、複数の吸引孔(図示省略)が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を付与することによって、ステージ2上に載置された基板Sをステージ2の上面に固定する。このステージ2はステージ駆動機構3により駆動される。
【0019】
ステージ駆動機構3は、ステージ2をY方向(主走査方向)、X方向(副走査方向)、Z方向および回転方向θ(ヨー方向)に移動させるX-Y-Z-θ駆動機構である。ステージ駆動機構3は、Y方向に延設された単軸ロボットであるY軸ロボット31と、Y軸ロボット31によってY方向に駆動されるテーブル32と、テーブル32の上面においてX方向に延設された単軸ロボットであるX軸ロボット33と、X軸ロボット33によってX方向に駆動されるテーブル34と、テーブル34の上面に支持されたステージ2をテーブル34に対して回転方向θに駆動するθ軸ロボット35とを有する。
【0020】
したがって、ステージ駆動機構3は、Y軸ロボット31が有するY軸サーボモーターによってステージ2をY方向に駆動し、X軸ロボット33が有するX軸サーボモーターによってステージ2をX方向に駆動し、θ軸ロボット35が有するθ軸サーボモーターによってステージ2を回転方向θに駆動することができる。これらのサーボモーターについては図示を省略する。また、ステージ駆動機構3は、図1では図示を省略するZ軸ロボット37によってステージ2をZ方向に駆動することができる。かかるステージ駆動機構3は、制御部9からの指令に応じて、Y軸ロボット31、X軸ロボット33、θ軸ロボット35およびZ軸ロボット37を動作させることで、ステージ2に載置された基板Sを移動させる。
【0021】
露光ユニット4は、ステージ2上の基板Sより上方に配置された露光ヘッド41と、光源駆動部42、レーザー出射部43および照明光学系44を含み露光ヘッド41に対してレーザー光を照射する光照射部40とを有する。露光ユニット4は、X方向に位置を異ならせて複数設けられてもよい。
【0022】
光源駆動部42の作動によりレーザー出射部43から射出されたレーザー光が、照明光学系44を介して露光ヘッド41へと照射される。露光ヘッド41は、光照射部から照射されたレーザー光を空間光変調器(以下、単に「光変調器」ということがある)410によって変調して、その直下を移動する基板Sに対して落射する。こうして基板Sをレーザー光ビームによって露光することで、パターンが基板Sに描画される(露光動作)。
【0023】
アライメントユニット5は、ステージ2上の基板Sより上方に配置されたアライメントカメラ51を有する。このアライメントカメラ51は、鏡筒、対物レンズおよびCCDイメージセンサを有し、その直下を移動する基板Sの上面に設けられたアライメントマークを撮像する。アライメントカメラ51が備えるCCDイメージセンサは、例えばエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)により構成される。
【0024】
照明ユニット6は、アライメントカメラ51の鏡筒と光ファイバー61を介して接続され、アライメントカメラ51に対して照明光を供給する。照明ユニット6から延びる光ファイバー61によって導かれる照明光は、アライメントカメラ51の鏡筒を介して基板Sの上面に導かれ、基板Sでの反射光が、対物レンズを介してCCDイメージセンサに入射する。これによって、基板Sの上面が撮像されて撮像画像が取得されることになる。アライメントカメラ51は制御部9と電気的に接続されており、制御部9からの指示に応じて撮像画像を取得して、この撮像画像を制御部9に送信する。
【0025】
制御部9は、アライメントカメラ51により撮像された撮像画像が示すアライメントマークの位置を取得する。また制御部9は、アライメントマークの位置に基づき露光ユニット4を制御することで、露光動作において露光ヘッド41から基板Sに照射するレーザー光のパターンを調整する。そして、制御部9は、描画すべきパターンに応じて変調されたレーザー光を露光ヘッド41から基板Sに照射させることで、基板Sにパターンを描画する。
【0026】
制御部9は、上記した各ユニットの動作を制御することで各種の処理を実現する。この目的のために、制御部9は、CPU(Central Processing Unit)91、メモリー(RAM)92、ストレージ93、入力部94、表示部95およびインターフェース部96などを備えている。CPU91は、予めストレージ93に記憶されている制御プログラム931を読み出して実行し、後述する各種の動作を実行する。メモリー92はCPU91による演算処理に用いられ、あるいは演算処理の結果として生成されるデータを短期的に記憶する。ストレージ93は各種のデータや制御プログラムを長期的に記憶する。具体的には、ストレージ93は、フラッシュメモリー記憶装置、ハードディスクドライブ装置などの不揮発性記憶装置であり、CPU91が実行する制御プログラム931の他に例えば、描画すべきパターンの内容を表す設計データであるCAD(Computer Aided Design)データ932を記憶している。
【0027】
入力部94は、ユーザーからの操作入力を受け付け、この目的のために、キーボード、マウス、タッチパネル等の適宜の入力デバイス(図示省略)を有している。表示部95は、各種の情報を表示出力することでユーザーに報知し、この目的のために適宜の表示デバイス、例えば液晶表示パネルを有している。インターフェース部96は外部装置との間の通信を司る。例えば、この露光装置1が制御プログラム931およびCADデータ932を外部から受け取る際に、インターフェース部96が機能する。この目的のために、インターフェース部96は、外部記録媒体からデータを読み出すための機能を備えていてもよい。
【0028】
CPU91は、制御プログラム931を実行することにより、露光データ生成部911、露光制御部912、フォーカス制御部913、ステージ制御部914などの機能ブロックをソフトウェア的に実現する。なお、これらの機能ブロックのそれぞれは、少なくとも一部が専用ハードウェアにより実現されてもよい。
【0029】
露光データ生成部911は、ストレージ93から読み出されたCADデータ932に基づき、光ビームをパターンに応じて変調するための露光データを生成する。基板Sに歪み等の変形がある場合には、露光データ生成部911は、基板Sの歪み量に応じて露光データを修正することで、基板Sの形状に合わせた描画が可能となる。露光データは露光ヘッド41に送られ、該露光データに応じて露光ヘッド41が、光照射部40から出射されるレーザー光を変調する。こうしてパターンに応じて変調された変調光ビームが基板Sに照射され、基板S表面が部分的に露光されてパターンが描画される。
【0030】
露光制御部912は、光照射部40を制御して、所定のパワーおよびスポットサイズを有するレーザー光ビームを出射させる。フォーカス制御部913は、露光ヘッド41に設けられた投影光学系(後述)を制御してレーザー光ビームを基板Sの表面に収束させる。
【0031】
ステージ制御部914はステージ駆動機構3を制御して、アライメント調整のためのステージ2の移動および露光時の走査移動のためのステージ2の移動を実現する。アライメント調整においては、ステージ2に載置された基板Sと露光ヘッド41との間における露光開始時の相対的な位置関係が予め定められた関係となるように、ステージ2の位置がX方向、Y方向、Z方向およびθ方向に調整される。一方、走査移動においては、ステージ2を一定速度でY方向に移動させることで基板Sを露光ヘッド41の下方を通過させる主走査移動と、一定ピッチでのX方向へのステップ送り(副走査移動)とが組み合わせられる。
【0032】
図3は光照射部の構成を示す図である。図3(a)は光照射部40のうちレーザー出射部43および照明光学系44の主要構成を模式的に示す上面図である。図3(a)に示すように、レーザー出射部43は、複数の光源ユニット430を備えている。ここでは5組の光源ユニット430が用いられているが、光源ユニットの配設数はこれに限定されず任意である。
【0033】
各光源ユニット430は、レーザー光を出射するレーザー光源431と、コリメーターレンズ432と、集光レンズ433とを有している。レーザー光源431は所定波長のレーザー光を出力する、例えばレーザーダイオードである。コリメーターレンズ432はレーザー光源431から出射されるレーザー光をコリメート光に変換する。集光レンズ433は、コリメート化されたレーザー光を集光し収束光ビームとして出射する。
【0034】
各光源ユニット430は、二点鎖線で示される各光源ユニット430の光軸が同一の水平面(XY平面)に含まれるように、X方向に並べて配置される。各光源ユニット430の光軸は一点で交わっている。
【0035】
この交点に相当する位置に、照明光学系44の分割レンズ441が配置されている。分割レンズ441は、X方向のみにパワーを有する複数の要素レンズが配列された、いわゆるシリンドリカルレンズアレイ(またはシリンドリカルフライアイレンズ)である。公知技術であるため詳しい説明は省くが、分割レンズ部441は、その(-Y)側端面に各光源ユニット430から入射するレーザー光をX方向に広がりを有する光ビームとして(+Y)側端面から出力する。これにより、複数のレーザー光源431のそれぞれから出射されるレーザー光は合成され、単一のレーザー光ビームとして出力される。これにより、高強度の露光ビームを得ることができる。
【0036】
合成されたレーザー光ビームは2つのシリンドリカルレンズ、具体的には、X方向のみにパワーを有するシリンドリカルレンズ442と、Z方向のみにパワーを有するシリンドリカルレンズ443とをこの順番で通過する。これにより、レーザー光ビームLは、X方向に広くZ方向に狭い扁平なビームスポット形状を有する光ビーム、いわゆるラインビームに整形される。仮に、図3(a)に破線で示す位置に受光面を配置したとすると、右上図に示すように、該受光面にはX方向に長くZ方向に短いビームスポットが現れる。
【0037】
さらに、この実施形態の光照射部40は、ライン光ビームLの光路をZ方向に所定範囲でシフトさせる機能を有している。その具体的態様としては、例えば以下の2つの構成例が考えられる。
【0038】
図3(b)に示す事例では、分割レンズ部441から出射される合成された光ビームの光路上に光路シフト用の光学素子445が配置される。この光学素子445は、例えば平行平面板であり、アクチュエーター446により、X軸まわりに揺動可能となっている。光学素子445が光路に垂直に配置された状態では、光学素子445が設けられない状態と同様、光ビームLは直進する。
【0039】
一方、光路に対する光学素子445を光路に対し傾けることにより、出力光の光路は、Y方向へ向かうことに変わりはない一方、Z方向に所定の範囲で変位する。すなわち、破線で示される位置に受光面が配置された場合、右上図に示すように、該受光面に現れるX方向に長く延びるビームスポットは、光学素子445の傾きの大きさに応じてZ方向に変化する。このように、光学素子445は、ライン光ビームLをZ方向にシフトさせる機能を有する。アクチュエーター446は、露光制御部912により制御されて、光路に対する光学素子445の傾きを調整する。
【0040】
また、図3(c)に示す事例では、レーザー出射部43に光学素子435が配置される。具体的には、光源ユニット430の集光レンズ433の出力側で、分割レンズ部441よりも手前側に、光路シフト用の光学素子435が配置される。光学素子435は例えば平行平面板であり、アクチュエーター436により、X軸まわりに揺動可能となっている。図3(a)に点線で示すように、光学素子435は複数の光源ユニット430のそれぞれに設けられており、アクチュエーター436は、それら複数の光学素子435を互いに独立に駆動する。
【0041】
各光源ユニット430に設けられた光学素子435が互いに同一方向へ同一角度で傾いた状態では、図3(b)に示す例と同様に、破線で示される受光面では、合成されたライン光ビームLが作るビームスポットがZ方向に変位する。一方、各光学素子435の傾きが同一でない場合、各光源ユニット430からの出射光は単一光ビームに合成されず、光学素子435の傾きに応じた距離だけZ方向に離隔したまま受光面に到達する。したがって、右上図に示すように、受光面には複数のビームスポットが形成され得る。例えば、5組の光源ユニット430に設けられた光学素子435の傾きが全て異なる場合、5本に分かれた光ビームLが照明光学系44から出射されることになる。
【0042】
このように、光照射部40は、X方向に長く延びて強度が均一であり、Z方向には短い扁平のスポット形状を有する高強度のレーザー光ビーム(ラインビーム)Lを生成し出射する。図3(b)に示す構成例では、光ビームLの出射位置はZ方向にシフト可能である。また、図3(c)に示す構成例では、Z方向へのシフトに加えて、光ビームLをZ方向に分割して複数のビームを出射することが可能である。このときのレーザー光ビームLの進行方向はZ方向位置および本数に関わらず(+Y)方向である。光ビームLは、次に説明する露光ヘッド41に案内される。
【0043】
図4は露光ヘッドが備える詳細構成の一例を模式的に示す図である。図4に示すように、露光ヘッド41では、回折光学素子411を有する変調部410が設けられている。具体的には、露光ヘッド41に上下方向(Z方向)に延設された支柱400の上部に取り付けられた変調部410は、回折光学素子411の反射面を下方に向けた状態で、可動ステージ412を介して支柱400に支持されている。
【0044】
露光ヘッド41において、回折光学素子411は、その反射面の法線が入射光ビームLの進行方向に対して傾斜して配置されており、照明光学系53から射出された光は、支柱400の開口を通してミラー413に入射し、ミラー413によって反射された後に回折光学素子411に照射される。そして、回折光学素子411の各チャンネルの状態が露光データに応じて制御部9によって切り換えられて、回折光学素子411に入射したレーザー光ビームLが変調される。
【0045】
そして、回折光学素子411から0次回折光として反射されたレーザー光が投影光学系414のレンズへ入射する一方、回折光学素子411から1次以上の回折光として反射されたレーザー光は投影光学系414のレンズへ入射しない。つまり、基本的には回折光学素子411で反射された0次回折光のみが投影光学系414へ入射するように構成されている。0次回折光が(-Z)方向へ出射されるように、回折光学素子411は配置されている。回折光学素子411としては、例えばシリコン・ライト・マシーンズ社のGLV(Grating Light Valve;「GLV」は同社の登録商標)素子を好適に適用可能である。
【0046】
図5は回折光学素子が備える構成の一例を模式的に示す図である。より具体的には、図5(a)は回折光学素子411の概略構成を模式的に示す図である。また、図5(b)は回折光学素子411への光ビームLの入射状態を示す図である。また、図5(c)は回折光学素子410が取り得る第1の状態、図5(d)は回折光学素子410が取り得る第2の状態を示す図である。
【0047】
図5(a)に示すように、回折光学素子411は、基板4110上で、固定リボン4111および可動リボン4112を平板状のボトム電極4113の表面に対向させつつ、当該表面に平行な方向へ交互に並べた概略構成を備える。固定リボン4111および可動リボン4112では、その上面が光を反射する反射面となっている。固定リボン4111は、ボトム電極4113に対して一定間隔を空けて固定されている。
【0048】
ここで、回折光学素子411における位置関係を表すために、αβγ直交座標軸を導入する。すなわち、固定リボン4111および可動リボン4112の配列方向をα方向、各リボンの長手方向をβ方向とする。また、固定リボン4111の表面に垂直な方向をγ方向とする。
【0049】
露光ヘッド41では光ビームLの光路が折り曲げられているため、XYZ座標軸とαβγ座標軸とは必ずしも一致しない。ただし、後述するように、照射光学系44からX方向に延びるライン光ビームとして出射される光ビームLは、その長手方向がリボンの配列方向に沿うように入射するため、X方向とα方向とは互いに平行である。また、光ビームLは、(+γ)側から各リボンの上面に入射する。図5(b)に示すように、光ビームLは、リボン列の配列方向αに平行、したがって各リボン4111,4112の延設方向βに垂直に、かつ、各リボン4111,4112のβ方向における中央部に入射する。全てのリボン4111,4112に対する入射光量が均一となるように、ライン光ビームLのα方向における広がりは、リボン列の端部よりも外側まで延びていることが望ましい。
【0050】
可動リボン4112は、ボトム電極4113に対して変位可能に設けられており、印加される制御電圧に応じてボトム電極4113に対し接近・離間方向に変位する。可動電極4112の変位量は、制御電圧によりボトム電極4113との間に生じる電位差の大きさに依存する。露光ヘッド41には、制御部9の露光制御部912により制御される駆動回路(CMOSドライバー)419が設けられており、露光制御部912からの制御指令に応じて、駆動回路419から可動リボン4112に対し制御電圧が印加される。この実施形態の回折光学素子411では、可動リボン4112に印加される制御電圧の大きさにより、図5(c)に示す第1の状態と、図5(d)に示す第2の状態とを取る。
【0051】
図5(c)に示す第1の状態では、固定リボン4111の表面と可動リボン4112の表面高低差d1が入射光の波長λに対して次式:
2・d1=(2n+1)・λ/2
により表される(nは0以上の整数)。つまり、高低差d1の2倍が半波長の奇数倍である。上式の左辺(2d1)は、回折光学素子411の表面に対し垂直に、つまり固定リボン4111および可動リボン4112に対し反射面の法線方向から入射する光Liが、固定リボン4111の表面で反射された場合と可動リボン4112の表面で反射された場合との光路長の差に相当する。光路長差が半波長の奇数倍であるため、固定リボン4111の表面で反射された光と可動リボン4112の表面で反射された光とが互いに逆位相となって打ち消し合う。このため、垂直方向への反射光(正反射光)は出射されず、光路長差が異なる斜め方向への出射光、すなわち1次以上の回折光Lgが出射される。
【0052】
これに対して、図5(d)に示す第2の状態では、固定リボン4111の表面と可動リボン4112の表面との高低差d2が入射光の波長λに対して次式:
2・d2=2n・λ/2=n・λ
により表される(nは0以上の整数)。つまり、高低差d2は半波長の偶数倍、波長の整数倍である。この場合、固定リボン4111の表面で反射された光と可動リボン4112の表面で反射された光とが同位相であるため、これらの光が正反射光(0次回折光)Loとして回折光学素子411から出射される。
【0053】
この実施形態では、回折光学素子411から出射される0次回折光を基板Wに照射して描画を行う。したがって、基板Sに向けて出射される露光ビームに限ってみれば、回折光学素子411の状態が図5(c)に示す第1の状態であるときには露光ビームが出射されず、図5(d)に示す第2の状態であるときに露光ビームが出射される。そこで、以後の説明では、光出射の状態を理解しやすくするために、図5(c)に示す第1の状態を「露光オフ状態」、図5(d)に示す第2の状態を「露光オン状態」と称する。回折光学素子411のある位置において、露光オン状態は基板Sに向けて光が照射される状態、露光オフ状態は該光が照射されない状態である。これらは可動リボン4112に印加される制御電圧の大きさで区別される。
【0054】
制御電圧は個々の可動リボン4112に対し個別に設定可能であり、したがって1つの可動リボン4112とこれに隣接する固定リボン4111とからなるリボン対ごとに露光オン状態と露光オフ状態とを現出させることができる。一のリボン対により構成される露光オン・オフの最小単位を、以下では「チャンネル」と称し符号Cを付すこととする。チャンネルCが配列されるα方向においては、固定リボン4111と可動リボン4112との対で構成されるチャンネルCが、配列ピッチPで一列に配列されている。
【0055】
したがって、回折光学素子411は、α方向における各位置で個別に反射光の強度を変化させることが可能であり、各位置からの反射光の強度は露光制御部912からの制御指令によって設定することができる。つまり、回折光学素子411は、α方向を長手方向とする回折格子型かつ一次元の空間光変調器となっている。
【0056】
α方向においてはチャンネル単位で反射光の強度を変えることができるから、同方向における分解能はチャンネルCの配列ピッチPであると言える。なお、露光により形成される最小スポットサイズはビームスポットのサイズにも依存するから、ここでいう分解能とは、α方向における位置分解能である。そして、次に説明するように、この実施形態の変調部410は、複数の回折光学素子411を有している。
【0057】
図6は変調部における回折光学素子の配置を示す図である。図6(a)に示すように、この実施形態の変調部410は複数の(この例では5個の)回折光学素子411を備えている。より具体的には、互いに同一の構成を有する5個の回折光学素子411a~411eは、各々のチャンネルCの配列方向をα方向に平行に、かつ、互いにβ方向に位置を異ならせて近接配置されている。また、各回折光学素子411a~411eでは、α方向における位置が配列ピッチPの(1/5)ずつ異なっている。
【0058】
より一般化すれば、回折光学素子411の個数がN(Nは2以上の整数)であるとき、各回折光学素子411は、β方向に互いに位置を異ならせて、しかもα方向には(P/N)に相当する距離だけ位置を異ならせて配置される。
【0059】
図6(b)はこのような回折光学素子411の配置に対応して基板S上に形成される最終像を示す図である。より具体的には、図6(b)は、回折光学素子411a~411eの互いに対応する1つのチャンネルCを同時にそれぞれ露光オン状態としたときに基板S上に形成される像を模式的に示したものである。
【0060】
投影光学系414における縮小倍率を例えば(1/M)とするとき、各回折光学素子411a~411eがα方向に(P/5)ずつ位置を異ならせて配置されているため、基板S上ではX方向に(P/5M)だけずれた像が形成される。回折光学系411の配設数をNに一般化すると、像間のずれは(P/(N・M))である。一方、Y方向における像間のずれは、変調部410における回折光学素子411(411a~411e)のβ方向のピッチDを用いると、(D/M)で表される。
【0061】
これらの寸法の代表的な数値例を挙げておく。回折光学素子411におけるチャンネルCのα方向の配列ピッチPは、例えば5μmである。また、β方向における配列ピッチDは例えば75μmである。そして、投影光学系414の縮小倍率(1/M)は例えば(1/5)である。これらの数値およびN=5を適用すると、図6(b)に示される最終像におけるX方向の位置分解能は0.2μmとなる。回折光学素子411が単一である従来技術では位置分解能は1μmであり、5倍(一般的にはN倍)の位置分解能が得られる。
【0062】
以上のことからわかるように、単一の回折光学素子411では、X方向における位置分解能は(P/M)である。一方、上記のようにN個の回折光学素子411をα方向に(P/N)だけずらして配列した場合の位置分解能は(P/(N・M))となり、位置分解能がN倍に向上する。その具体的な活用方法については後述する。
【0063】
図7は空間光変調器へのビーム光の入射態様を例示する図である。光照射部40から出射されるライン光ビームLは、図7(a)および図7(b)に示すように、その長手方向がα方向と一致するように、かつ全てのチャンネルCに光が入射するように、各回折光学素子411a~411eに入射する。ここで、光照射部40が図3(b)に示す構成を有するものであれば、図7(a)に示すように、光ビームLは回折光学素子411a~411eのうちいずれか1つに選択的に入射し、かつ、入射先となる1つの回折光学素子を切り替え可能である。
【0064】
光照射部40が図3(b)に示す構成を有し、かつ各光源ユニット430から出射される光ビームが1本のライン光ビームLに合成されている場合も同様である。一方、各光源ユニット430から出射される光ビームが合成されずに出射される場合には、図7(b)に示すように、5本のライン光ビームLがそれぞれ5つの回折光学素子411a~411eの1つに入射する。
【0065】
このように、この実施形態の光照射部40は、空間光変調器410が備える複数の回折光学素子411に対する光ビームLの入射態様を異ならせることが可能である。また、後述するように、各回折光学素子411a~411eは、それぞれ個別の露光データに基づいて制御される。したがって、光ビームLを各回折光学素子411a~411eのいずれに入射させるかと、各回折光学素子411a~411eを制御する露光データとを組み合わせることで、従来技術よりも高い位置分解能でパターンの形成位置を制御することが可能である。
【0066】
図4に戻って、投影光学系414のレンズを通過した光は、フォーカシングレンズ415により収束され、(-Z)方向を進行方向とする、つまり下向きの露光ビームとして所定の倍率にて基板S上へ導かれる。投影光学系414は縮小光学系を構成している。このフォーカシングレンズ415はフォーカス駆動機構416に取り付けられている。そして、制御部9のフォーカス制御部913からの制御指令に応じてフォーカス駆動機構416がフォーカシングレンズ415を鉛直方向(Z軸方向)に沿って昇降させることで、フォーカシングレンズ415から射出された露光ビームの収束位置が基板Sの上面に調整される。
【0067】
図4に一点鎖線で示されるレーザー光ビームLの光路に沿って示すように、光照射部40から露光ヘッド41へ案内されるレーザー光ビームLは、X方向を長軸方向、Z方向を短軸方向としてX方向に均一に細長く延びるビームスポット形状を有している。一方、光変調器410により変調された後の変調レーザー光ビームLmは、X方向を長軸方向、Y方向を短軸方向としており、しかも、X方向の各位置における強度が露光データに応じて変調されている。さらに、投影光学系414から基板Sに向けて出射される露光ビームLeは、変調されたレーザー光ビームLmをX方向およびY方向に縮小したものとなっている。このようにスポットサイズが絞り込まれた露光ビームLeを基板Sの被露光面に入射させることで、基板Sの表面に微細なパターンを描画することができる。
【0068】
露光データに応じて変調された露光ビームLeを基板Sに入射させながら、露光ヘッド41と基板SとをY方向に相対移動させることで、基板Sのうち、露光ビームLeのX方向におけるスポットサイズと同等の幅を有しY方向に延びる帯状の領域を露光することができる。X方向における露光ヘッド41と基板Sとの相対位置を順次変更しながら露光を繰り返し行うことで、最終的には基板Sの全体を露光することができる。
【0069】
このように、露光ヘッド41と基板Sとの間で、Y方向への走査移動とX方向への走査移動とを組み合わせることで、基板Sの全体に描画を行うことができる。本明細書では、Y方向への走査移動を「主走査移動」と称し、Y方向を「主走査方向」と称する。一方、X方向への走査移動を「副走査移動」と称し、X方向を「副走査方向」と称する。この実施形態では、固定された露光ヘッド41に対し基板Sを支持するステージ2が移動することで、これらの走査移動が実現される。
【0070】
上記のような構成を有する露光ユニット4については、X方向に位置を異ならせて複数設けることが可能である。この実施形態では、互いに同一の構成を有する露光ユニット4が5組設けられており、これらが並列的に露光ビームLeを出射し描画を行うことで、描画処理のスループット向上が図られている。なお、これらの露光ユニット4は互いに独立して動作し得るが、構造上、基板Sに対する走査移動については画一的である。
【0071】
図8は上記のように構成された露光装置により実行される処理を示すフローチャートである。この動作は、制御部9のCPU91がストレージ93に予め記録された制御プログラム931を実行し、上記した装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0072】
露光対象となる基板Sがステージ2にセットされると(ステップS101)、ステージ2上における基板Sの姿勢と描画パターンとの位置を合わせるためのアライメント調整が行われる(ステップS102)。アライメント調整の方法については多くの公知技術があるため、ここでは説明を省略する。
【0073】
これと並行して、または前後して、露光データ生成部911は、ストレージ93に保存されているCADデータ932を読み出し(ステップS103)、これに基づきラスターデータを作成する(ステップS104)。描画すべきパターンの形状やサイズ等を表す設計データであるCADデータ932は、一般にベクターデータとして作成されている。一方、空間光変調器410、より具体的には回折光学素子411の制御に適しているのは、パターンを所定のグリッドサイズで分割した画素単位で表現したラスターデータ(ビットマップデータ)である。そこで、露光データ生成部911は、ベクターデータを変換してラスターデータを作成するためのデータ処理(ラスタライズ)を実行する(ステップS104)。ここで作成されるラスターデータは、従来技術と同様、回折光学素子411が単一である場合の位置分解能(例えば5μm)を想定したものである。
【0074】
こうしてアライメント調整およびラスターデータ作成により得られた結果に基づき、露光データ生成部911は、実際に空間光変調器410に与えられる露光データを作成する(ステップS105)。ステージ2への載置時の位置ずれや基板S自体の歪み等に起因して、作成されたラスターデータをそのまま空間光変調器410の制御に適用した場合、基板S上での描画位置が所期のものからずれてしまうことがあり得る。この問題を解消するため、ラスターデータに対し、アライメント調整の結果を反映させた補正を施すことにより、最終的に空間光変調器410に与えられる露光データが作成される。この目的のための補正方法については公知であるため、ここでは説明を省略する。
【0075】
次に、作成された露光データに基づき、標準グリッドでの露光を適用可能であるか否かが判断される(ステップS106)。このような判断を行いその結果で以下の動作を異ならせる理由について説明する。なお、以下では統一的な説明を行うために、空間光変調器410により変調された光ビームが縮小光学系を介することなく像面に到達するケースを考える。これは、投影光学系414の倍率Mが1である場合の基板S表面を像面と考えた場合と等価である。このように考えると、像面におけるX方向の位置分解能は、回折光学素子411の配列ピッチPと同等となる。
【0076】
図9はラスタライズ処理におけるパターンとグリッドとの関係を例示する図である。描画すべきパターンをベクターデータとして表したCADデータ932に基づき描画を行う場合、CADデータ932は描画可能な画素サイズを考慮して設定されるグリッド単位のラスターデータに変換(ラスタライズ)される。また、基板Sのアライメント調整の結果に応じて、ラスターデータには適宜の補正がなされて露光データが作成される。
【0077】
図9(a)は、CADデータ932により表される、あるパターン領域Rpに描画されるべきパターンPvの一例を表している。また、図9(b)および図9(c)はパターンPvにラスタライズ用のグリッドを重ねた例を示す図である。ここでは、仮想的な画像平面における方向を実空間と区別して表すため、xy座標軸を導入する。この実施形態では、x座標軸はX座標軸と平行であり、したがって回折光学素子411におけるチャンネルCの配列方向に平行である。このため、x方向のグリッドサイズGxはチャンネルCの配列ピッチPに相当する大きさ(例えば5μm)である。なお、y方向のグリッドサイズGyは、回折光学素子411のオン・オフの切り替え速度および基板Sの主走査移動速度に依存する。以下では、このときのグリッドを「標準グリッドSG」と称する。
【0078】
図9(b)に示すように、パターンPvのエッジとグリッド線とがよく一致している場合には、現在のグリッド設定(標準グリッドSG)で作成された露光データを用いて露光を行えばよい。一方、図9(c)に示すように、パターンPvのエッジとグリッド線との乖離が大きい場合には、現在のグリッド設定で作成された露光データにより露光を行うと、像面におけるパターンは、x方向(基板S上ではX方向)の位置に大きなずれを生じることとなる。
【0079】
この問題に対応するため、この実施形態では、標準グリッドSGで作成された露光データに基づく露光の適否を判断し(ステップS106)、その結果により以下の動作を異ならせる。適否の判断は、作成された露光データで表されるパターンとCADデータ932により表されるパターンとの間のx方向の位置ずれの程度に基づいて行うことができる。より具体的には、所定の描画単位(例えば基板1枚分、1主走査移動分等)で規定される領域内に、上記の位置ずれ量が予め定められた許容量を超える領域がなければ標準グリッドを適用可能と判断する一方、許容量を超える位置ずれを有する領域がある場合には標準グリッドの適用を不可と判断することができる。
【0080】
標準グリッドの適用が可能と判断された場合には(ステップS106においてYES)、従来技術と同様に、標準グリッドで作成済みの露光データに基づき露光を行う(第1露光動作;ステップS107)。このとき、光照射部40は、複数の光源ユニット430から出射される光ビームを1本の光ビームLとして合成し、複数の回折光学素子411のうち適宜に選択されたいずれか1つに光ビームLを入射させる。
【0081】
このとき回折光学素子411a~411eのうちどれが用いられるかについては、予め固定的に決められていてもよい。また、光ビームLの入射先を定期的に変更して、各回折光学素子411a~411eが満遍なく使用されるようにしてもよい。このようにすると、特定の回折光学素子だけが高い頻度で使用されて劣化するのを防止することができる。ただし、図6(b)に示したように、どの回折光学素子411が使用されるかにより像形成位置はY方向に変化するから、これによる位置ずれを回避するため、選択された回折光学素子411に応じて露光タイミングが調整される。
【0082】
1枚の基板Sについて露光が終了すれば、当該処理済みの基板Sは外部へ搬出される(ステップS108)。こうして1枚の基板Sを被露光物とする露光処理が終了する。さらに未処理基板Sがある場合には、ステップS101からの処理を繰り返すことで、それらの基板Sについても順次露光処理することができる。
【0083】
一方、標準グリッドの適用が不可能と判断された場合には(ステップS106においてNO)、露光データの再作成(ステップS111)およびそれに基づく第2露光動作(ステップS112)が実行される。なお、これらの処理を実行するか否かについて、オペレーターからの指示入力を待つ態様としてもよい。
【0084】
図10は露光データ再作成および第2露光動作を示すフローチャートである。また、図11はパターンとグリッドとの関係を模式的に示す図である。まず、ライン光ビームが1本に合成される場合について説明する。図11(a)に示すように、CADデータ932により表されるパターンが、標準グリッドSGに概ね合致するパターンPv1と、標準グリッドSGからのずれが大きいパターンPv2,Pv3とをともに含むものであったとする。この場合、位置ずれの大きいパターンPv2,Pv3を含むことが、標準グリッドSGの適用が不可能と判断される根拠となる。また、パターンPv2,Pv3との間でグリッドに対するずれ量が異なることもあり得る。
【0085】
このような場合には、標準グリッドSGのx方向グリッドサイズPを(1/5)に微細化した微細化グリッドFGを用いて、再度ラスターデータが作成され(ステップS201)、さらにアライメント調整等の結果に基づく補正を行って露光データが作成される(ステップS202)。
【0086】
ここでは5つの回折光学素子411a~411eに対応してグリッドサイズを(P/5)としているが、より一般的に回折光学素子411の配設数Nに対して、微細化グリッドFGではグリッドサイズを(P/N)とすることができる。図11(b)は微細化グリッドFGを用いて求められた露光データを模式的に示している。このようにすることで、ラスターデータが表すパターンPr1~Pr3とCADデータ932により規定されるパターンPv1~Pv3との間の位置ずれを解消することができる。
【0087】
なお、回折光学素子の配設数によって微細化された微細化グリッドFGによっても、CADデータ932で表されるパターンを完全に再現できないことがあり得る。具体的には、微細化グリッドFGの格子線が、CADデータ932が表すパターンのエッジと一致しないケースがある。そのような場合には、エッジ位置をx方向のいずれかにシフトさせて格子線と一致させることができる。いずれの方向にシフトさせるかについては、予め定められていてもよく、ユーザー指定ができるようにしてもよい。また、適宜の画像処理技術、例えばディザ処理によってシフト方向を分散させることもできる。
【0088】
各回折光学素子411a~411eの個々の位置分解能は依然としてチャンネルCの配列ピッチPである。しかしながら、各回折光学素子411a~411eがα方向に(P/N)ずつ位置を異ならせて配置されているため、これらを使い分けることで、像面を露光して得られる最終像については、実効的な位置分解能を(P/N)まで向上させることができる。すなわち、図11(c)に示すように、各パターンPr1~Pr3を形成するための露光を、各パターンの位置に応じた配置の回折光学素子411を用いて行うことで、標準グリッドSGに合致しないパターンについても適切な位置に形成することが可能となる。この例では、パターンPr1を回折光学素子411aにより、パターンPr2を回折光学素子411cにより、パターンPr3を回折光学素子411aにより、それぞれ露光することになる。
【0089】
このような使い分けを実現するための処理は以下の通りである。露光データの再作成処理(図10(a))では、微細化グリッドFGを適用して作成された露光データに基づき、各パターンがどの回折光学素子411での露光に適しているかに応じて、パターンの領域分割を行う(ステップS203)。具体的には、標準グリッドSGで作成された露光データが表すパターンとCADデータ932が表すパターンとの位置ずれ量に応じて、領域分割を行うことができる。
【0090】
こうして分割された領域の各々は、各回折光学素子411a~411eのそれぞれに対応する露光データのいずれかに割り当てられる(ステップS204)。具体的には、この実施形態では、各回折光学素子411a~411eに対し、それぞれ個別の露光データが作成され、各回折光学素子411a~411eは対応する露光データに基づき制御される。各回折光学素子411a~411eに対応する露光データのそれぞれは、当該回折光学素子が露光すべき領域をカバーするように作成される。これにより、各領域がいずれかの露光データに割り当てられる。
【0091】
例えば図11(a)に示すパターンでは、パターンPv1に対応するデータは1つの回折光学素子411aに対応する露光データに割り当てられる。同様に、パターンPv2に対応するデータは回折光学素子411cに対応する露光データに、パターンPv3に対応するデータは回折光学素子411eに対応する露光データに、それぞれ割り当てられる。このようにして、各パターンは回折光学素子411a~411eそれぞれに対応する露光データのいずれかに割り当てられる。
【0092】
こうして再作成された露光データに基づいて行われる第2露光動作(図8のステップS112、図10(b))では、光変調器410への光ビームLの入射位置を切り替えながらその都度露光を実行することで、分割された領域ごとに、それぞれの形成位置に応じた回折光学素子411を用いて露光される。具体的には、例えば次のようにすることができる。なお、回折光学素子411a~411eのβ方向における位置の違いに起因するY方向の位置ずれはこの場合にも生じるから、各回折光学素子411の動作タイミングは適宜調整される。
【0093】
まず、回折光学素子411a~411eのうち一が選択される(ステップS301)。そして、光変調器410に対する光ビームLの入射位置が、選択された一の回折光学素子411に設定される(ステップS302)。すなわち、光ビームLが回折光学素子411a~411eのうち選択された1つに入射するように、光照射部40(光学素子435または光学素子436)が調整される。これにより、光ビームLは回折光学素子411a~411eのうち選択されたいずれか1つに選択的に入射することになる。
【0094】
そして、選択された回折光学素子411に対応する露光データを用いて、露光が行われる(ステップS303)。すなわち、回折光学素子411a~411eのうち、光ビームLの入射位置として選択された1つに対して光ビームLが照射されるとともに、当該回折光学素子が対応する露光データに基づき駆動されることで、像面が露光され露光データに対応する像が形成される。なお、選択されていない回折光学素子411については、光ビームLが入射しないため、可動リボン4112の動きは露光動作に影響しない。したがって、全ての回折光学素子411a~411eが並列駆動されてもよい。
【0095】
露光に必要な全ての回折光学素子411a~411eを用いた露光が終了するまで(ステップS304)、回折光学素子411の選択を切り替えながら、ステップS301~S303の処理が繰り返される。これにより、形成すべきパターンの全てが露光により形成されることになる。各パターンの位置に応じてそれを形成する回折光学素子411が選択されるため、標準グリッドSGに合致するパターンだけでなく、それ以外のパターンについても適正な位置に形成することが可能である。
【0096】
図12はライン光ビームが分割されている場合の第2露光動作を示すフローチャートである。この場合も、露光データを再作成する処理は同じとすることができる。この第2露光動作は、光照射部40が図3(c)に示す構成を有している場合に実行可能である。まず、各光源ユニット430に設けられた光路シフト用の光学素子435がそれぞれ駆動されて、5つの光源ユニット430から出射される光ビームのZ方向位置が互いに異なるモード(ビーム分割モード)に設定される(ステップS401)。これにより、図7(b)に示すように、各回折光学素子411a~411eのそれぞれに光ビームLが照射される。
【0097】
そして、各回折光学素子411a~411eに対して、それぞれ独立した露光データに基づく駆動が併行して行われる(ステップS402)。これにより露光が実行される。ただし、合成された光ビームLに比べて各回折光学素子411a~411eに入射する光量が小さいから、露光量が不足している場合には(ステップS403においてNO)、ステップS402に戻って、露光量が必要量を充足するまで(ステップS403においてYES)露光が繰り返される。変調された5本の光ビームは、縮小光学系である投影光学系414に入射し、ビーム間の距離はさらに小さくなる。
【0098】
このような露光動作を実行することにより、この実施形態では、微細化グリッドFGを用いて作成される露光データとN個の回折光学素子411の使い分けとを行うことで、単一の回折光学素子411が用いられる従来技術に比べて、X方向の位置分解能がN倍に向上している。このため、標準グリッドSGでの露光ではパターンの形成位置がずれてしまうような場合でも、露光によるパターンを適切な位置に形成することができる。
【0099】
以上説明したように、本実施形態の露光装置1においては、光照射部40が本発明の「光照射部」として機能しており、そのうち空間光変調器410が本発明の「変調部」として機能している。また、回折光学素子411(411a~411e)が本発明の「光変調素子」として機能している。また、レーザー光源431が本発明の「光源」として機能している。また、制御部9では、露光データ生成部911および露光制御部912が、それぞれ本発明の「データ処理部」および「露光制御部」として機能している。そして、上記実施形態では、α方向が本発明の「長手方向」に相当する。
【0100】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、図6(a)に示すように、上記実施形態では5つの回折光学素子411a~411eが、隣り合う素子間でα方向に(P/5)ずつ位置がずれるように配列されている。しかしながら、回折光学素子の並びはこれに限定されない。すなわち、回折光学素子411a~411eのβ方向における並び順を入れ替えた構成でもよい。要は、N個の回折光学素子のα方向の位置が互いに異なっており、かつそのうち1つをα方向に(P/N)だけ移動させたときに、他の1つの回折光学素子とα方向において重なるような位置関係となっていればよい。
【0101】
また例えば、上記実施形態では、回折光学素子411と光源ユニット430との配設数がいずれも「5」であるが、これらの配設数は上記に限定されるものではなく任意である。また、回折光学素子411と光源ユニット430とが同数でなくてもよい。特に、光照射部40が図3(b)に示す構成であるとき、各光源ユニット430からの光ビームは常に1本に集約されるため、必要な光量が得られる限りにおいて、光源ユニット430の数は回折光学素子411の数による制約を受けない。
【0102】
また、単独で十分な露光量を与えられるだけの光量を有する光ビームを光照射部で複数生成し、それらが複数の回折光学素子のそれぞれに入射されるようにしてもよい。このような構成によれば、1回の露光で必要な露光量を確保することができるので、繰り返し露光を行う必要がなく、露光処理に要する時間を短縮することができる。
【0103】
また、上記実施形態では、それぞれが独立したデバイスである回折光学素子411a~411eをβ方向に並べているが、このようにα方向を長手方向とする複数のリボン列がβ方向に複数並ぶ構造が、1つのデバイスとして実現されてもよい。
【0104】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る露光装置および露光方法において、光変調素子は長手方向に周期的な周期構造を有する回折格子型の空間光変調素子であり、位置分解能が周期構造のピッチにより規定されるものであってもよい。このような構成によれば、微細加工で製造される回折格子のピッチよりもさらに小さい位置分解能で露光を行うことが可能となる。
【0105】
また例えば、光照射部は、N個の光変調素子のそれぞれに対応するN本の光ビームを出射するものであってもよく、この場合さらに、N本の光ビームを個別に出射するモードと、N本の光ビームを合成し1本の光ビームとして出射するモードとを切り替えるように構成されてもよい。N本の光ビームをN個の光変調素子のそれぞれに入射させることで、それらを並列的に作動させることが可能である。また、それらの光ビームを合成した場合には、より大きな光量で被露光物を露光することが可能となる。そして、これら2つのモードを切り替えるようにすれば、目的に応じてそれらを使い分けることが可能になる。
【0106】
あるいは例えば、光照射部は、光源から出射される光ビームの光路を変化させてN個の光変調素子に選択的に光ビームを入射させる構成でもよい。このような構成によれば、光ビームの光量を低下させることなく、光ビームが入射する光変調素子を切り替えることができる。
【0107】
また例えば、変調部から出射される光ビームを被露光物の表面に収束させる投影光学系を備え、光変調素子の各々から出射される光ビームが単一の投影光学系に入射するように構成されてもよい。この場合、投影光学系としては例えば縮小光学系を用いることができる。このような構成によれば、複数の光変調素子からの出射光を1つの光学像として被露光物に結像させることができる。縮小光学系を採用した場合には、光変調素子の構造で制約される分解能よりも高い分解能を得ることができる。
【0108】
また、この発明に係る露光方法においては、例えば、複数の光変調素子の各々に対して個別の露光データを作成することができる。このような構成によれば、長手方向において位置の異なる複数の光変調素子に異なる動作をさせることができ、これらの光変調素子を使い分けて高い位置分解能を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
この発明は、例えば半導体基板、半導体パッケージ基板、プリント配線基板、ガラス基板等の各種基板にパターンを形成するために基板を露光する技術分野に好適である。
【符号の説明】
【0110】
1 露光装置
2 ステージ
3 ステージ移動機構
4 露光ユニット
9 制御部
40 光照射部
410 空間光変調器(変調部)
411,411a~411e 回折光学素子(光変調素子)
414 投影光学系
430 光源ユニット
431 レーザー光源(光源)
911 露光データ生成部(データ処理部)
912 露光制御部
L レーザー光ビーム
Le 露光ビーム
S 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12