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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046869
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】台木切断装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 2/35 20180101AFI20240329BHJP
   A01G 2/32 20180101ALI20240329BHJP
【FI】
A01G2/35
A01G2/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152203
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
(57)【要約】
【課題】製造コストを抑えつつ、台木を短時間で大量に切断することができる台木切断装置を提供する。
【解決手段】台木切断装置は、台木が載置される左載置台及び右載置台と、載置された台木を把持する左ハンド部及び右ハンド部と、左右のハンド部を把持する把持位置、切断刃により台木を切断する切断位置、及び切断後の台木を解放する解放位置との間でスライド往復移動させるスライド部を備え、切断刃は、左載置台と右載置台の左右方向における略中間が切断位置となるように配設された一枚刃である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者により台木が載置される載置台と、前記載置台に載置された台木を把持する把持動作及び把持した台木を解放する解放動作を行うハンド部と、
前記ハンド部を、前記載置台に載置された台木を把持する把持位置、切断刃によって台木の茎部を切断する切断位置、及び切断後の台木を解放する解放位置との間においてスライド往復移動させるスライド部と、
前記切断刃により切断された、切断後の台木を収容する受け箱と、
前記ハンド部の解放動作により、落下供給された切断後の台木を、前記受け箱へ案内するシュートとを備え、
前記載置台は、前記切断位置の左方に配された左載置台と、右方に配された右載置台とを備え、
前記ハンド部は、前記左載置台の台木を把持する左ハンド部と、前記右載置台の台木を把持する右ハンド部とを備え、
前記切断刃は、前記左載置台と前記右載置台の左右方向における略中間が前記切断位置となるように配設された一枚刃であることを特徴とする台木切断装置。
【請求項2】
前記ハンド部の把持動作及び解放動作を制御し、前記スライド部の駆動を制御する制御手段と、
前記左載置台に載置された台木を切断させる第1指示信号を作業者が前記制御手段に入力するための第1入力操作手段と、
前記右載置台に載置された台木を切断させる第2指示信号を作業者が前記制御手段に入力するための第2入力操作手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1指示信号を受信すると、前記左載置台に載置された台木を前記左ハンド部に把持させ、前記スライド部を駆動して前記左ハンド部を前記切断位置までスライドさせる切断処理を実行し、また、
前記第2指示信号を受信すると、前記右載置台に載置された台木を前記右ハンド部に把持させ、前記スライド部を駆動して前記右ハンド部を前記切断位置までスライドさせる切断処理を実行するよう構成され、また、
前記左ハンド部または前記右ハンド部による切断処理の実行中に、1または複数の、前記第1指示信号または前記第2指示信号を新たに受信すると、これを到着順に一時記憶しておき、実行中の切断処理が完了すると、一時記憶された前記第1指示信号または前記第2指示信号を先入れ先出し方式で読み込んで、新たに切断処理を到着順で逐次実行するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の台木切断装置。
【請求項3】
前記スライド部は、前記ハンド部の左右方向へのスライドをガイドするガイドレーンと、
前記ガイドレーンに沿って左右方向に延び、前記ハンド部が連結される無端状部材と、
前記無端状部材を回転駆動する電動モータとを備え、
前記ガイドレーンは、左方から、左側サブレーン、中央サブレーン、右側サブレーンの順に、3本のサブレーンがそれぞれ着脱自在に連結されて構成されており、
前記電動モータが前記中央サブレーンに装着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の台木切断装置。
【請求項4】
前記ハンド部は、回動用シリンダの伸縮によって、左右方向に延びる回動軸を中心に回動可能に構成されており、
前記制御手段は、前記切断刃による台木の切断後に、前記スライド部の駆動によって、前記ハンド部を、切断後の台木を解放する解放位置までスライドさせた後、下方へ回動させてから切断後の台木を解放させるよう構成されたことを特徴とする請求項2に記載の台木切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の接ぎ木に用いる台木を切断する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、互いに異なる種類の植物の苗を接ぎ木することで、病気への抵抗性などの長所を持たせた苗が広く販売されている。このような苗は、台木となる苗と穂木となる苗をそれぞれ切断し、それらの切断面同士を合わせることで、接ぎ木することができる。
【0003】
このように苗を切断するにあたり、例えば、特許文献1には、切断刃を用いて、台木苗の茎部(胚軸)をスムーズ且つ確実に切断することができる台木切断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-119653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された台木切断装置は、切断刃を1本のみ備えているため、接ぎ木用に、茎部を切断した台木を大量に用意する必要がある場合、切断作業に時間がかかり過ぎてしまうという問題がある。また、同様の切断刃を複数設ける手も考えられるが、この場合には製造コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0006】
このような状況に鑑みて、本発明は、製造コストを抑えつつ、台木を短時間で大量に切断することができる台木切断装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のかかる目的は、
作業者により台木が載置される載置台と、前記載置台に載置された台木を把持する把持動作及び把持した台木を解放する解放動作を行うハンド部と、
前記ハンド部を、前記載置台に載置された台木を把持する把持位置、切断刃によって台木の茎部を切断する切断位置、及び切断後の台木を解放する解放位置との間においてスライド往復移動させるスライド部と、
前記切断刃により切断された、切断後の台木を収容する受け箱と、
前記ハンド部の解放動作により、落下供給された切断後の台木を、前記受け箱へ案内するシュートとを備え、
前記載置台は、前記切断位置の左方に配された左載置台と、右方に配された右載置台とを備え、
前記ハンド部は、前記左載置台の台木を把持する左ハンド部と、前記右載置台の台木を把持する右ハンド部とを備え、
前記切断刃は、前記左載置台と前記右載置台の左右方向における略中間が前記切断位置となるように配設された一枚刃であることを特徴とする台木切断装置によって達成される。
【0008】
本発明によれば、左右の載置台に載置された台木を、左右のハンド部で把持して左右にスライドさせて単一の切断刃で切断できる。これにより、各載置台の近傍にそれぞれ作業者を配置して、一方の載置台に載置された台木が切断される間に1人の作業者が他方の載置台に台木を載置し、他方の載置台に載置された台木が切断される間にもう一人の作業者が一方の載置台に台木を載置することができる。その結果、台木切断装置の製造コストを抑えつつ、台木を短時間で大量に切断することができる。
【0009】
さらに、本発明によれば、切断刃により切断され、前記左右のハンド部から落下供給された台木を、受け箱へ案内するシュートを備えるから、左右の載置台に載置された台木がいずれも、切断後に、シュートを通じて一つの受け箱に収容される。これにより、台木切断装置の製造コストを抑えられるとともに、2人の作業者により左右の載置台に載置され、切断された台木を1箇所にまとめることができ、台木の切断作業終了後にまとめる手間を省くことができる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態においては、
前記ハンド部の把持動作及び解放動作を制御し、前記スライド部の駆動を制御する制御手段と、
前記左載置台に載置された台木を切断させる第1指示信号を作業者が前記制御手段に入力するための第1入力操作手段と、
前記右載置台に載置された台木を切断させる第2指示信号を作業者が前記制御手段に入力するための第2入力操作手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1指示信号を受信すると、前記左載置台に載置された台木を前記左ハンド部に把持させ、前記スライド部を駆動して前記左ハンド部を前記切断位置までスライドさせる切断処理を実行し、また、
前記第2指示信号を受信すると、前記右載置台に載置された台木を前記右ハンド部に把持させ、前記スライド部を駆動して前記右ハンド部を前記切断位置までスライドさせる切断処理を実行するよう構成され、また、
前記左ハンド部または前記右ハンド部による切断処理の実行中に、1または複数の、前記第1指示信号または前記第2指示信号を新たに受信すると、これを到着順に一時記憶しておき、実行中の切断処理が完了すると、一時記憶された前記第1指示信号または前記第2指示信号を先入れ先出し方式で読み込んで、新たに切断処理を到着順で逐次実行するよう構成されている。
【0011】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、各載置台に載置された台木を切断する指示信号を制御手段に入力するための入力操作手段を備えているから、作業者が意図しないタイミングで台木の把持動作や切断が行われることを防止できるとともに、左右一方のみの載置台及びハンド部を用いた切断も可能となる。
【0012】
さらに、台木切断装置が入力操作手段を備えているから、載置台に台木が載置されたことを検知するセンサやカメラ等を設けた場合に比して、台木切断装置の製造コストを抑えることができる。
【0013】
加えて、第1入力操作手段及び第2入力操作手段が略同時に操作された場合に、早く受信した方の指示信号に従って左右一方の載置台に載置された台木の切断が行われた後、遅く受信した方の指示信号に従って左右他方の載置台に載置された台木の切断が行われるから、例えば第1入力操作手段の操作に基づく左右一方の切断が終了するタイミングを見計らって、作業者が第2入力操作手段を操作する必要がなく、切断及び載置台への台木の載置作業を効率的に進めることができる。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記スライド部は、前記ハンド部の左右方向へのスライドをガイドするガイドレーンと、
前記ガイドレーンに沿って左右方向に延び、前記ハンド部が連結される無端状部材と、
前記無端状部材を回転駆動する電動モータとを備え、
前記ガイドレーンは、左方から、左側サブレーン、中央サブレーン、右側サブレーンの順に、3本のサブレーンがそれぞれ着脱自在に連結されて構成されており、
前記電動モータが前記中央サブレーンに装着されている。
【0015】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、直線的にスライドできるように左右のハンド部をガイドするガイドレーンが、着脱可能な3つのサブレーンを備えており、無端状部材を回転駆動する電動モータが、左右方向に延びるガイドレーンのうち、左右方向中央部に位置する中央サブレーンに装着されているから、1人の作業者による作業で、左右一方の載置台のみを使用する場合に、ガイドレーンから左側サブレーン又は右側サブレーンを取り外すことで、ガイドレーンの左右方向の幅を短くすることができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態においては、
前記ハンド部は、回動用シリンダの伸縮によって、左右方向に延びる回動軸を中心に回動可能に構成されており、
前記制御手段は、前記切断刃による台木の切断後に、前記スライド部の駆動によって、前記ハンド部を、切断後の台木を解放する解放位置まで前記ハンド部をスライドさせた後、下方へ回動させてから切断後の台木を解放させるよう構成されている。
【0017】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、ハンド部を下方に回動させてから台木を解放させることで、台木をより確実にハンド部から落下させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、製造コストを抑えつつ、台木を短時間で大量に切断することができる台木切断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態にかかる台木切断装置の要部斜視図である。
図2図2は、ハンド部の各停止位置を示す台木切断装置の要部斜視図である。
図3図3は、作業者及び台木切断装置による台木の切断箇所を示す模式的正面図である。
図4図4は、ハンド部の近傍の拡大斜視図である。
図5図5は、スライド部及びハンド部の近傍の部分縦断側面図である。
図6図6は、台木の切断にかかるフローチャートである。
図7図7は、左側のハンド部を切断位置まで右側にスライドさせた状態を示す要部斜視図である。
図8図8は、ガイドレーンの分解斜視図である。
図9図9は、図1に示された台木切断装置の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える。
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施形態にかかる台木切断装置1の要部斜視図であり、図2は、ハンド部3の各停止位置を示す台木切断装置1の要部斜視図である。図2には、図1に示された台木切断装置1を後ろ上方から見た状態が示されている。また、図3は、作業者及び台木切断装置1による台木8の切断箇所を示す模式的正面図である。なお、図2には各停止位置P1~P5(把持位置P1,P2,切断位置P3,解放位置P4,P5)にハンド部3が停止した状態が示されているが、実際にはハンド部3は2つのみである。
【0022】
台木切断装置1は、作業者により台木8が載置される載置台2と、載置台に載置された台木8を把持するハンド部と、ハンド部をスライドさせるスライド部4と、台木8の茎部及び片葉を切断する単一の切断刃5aを有する切断部5と、切断部5により切断された台木8を収容する単一の第1受け箱6と、台木8から切断され取り除かれた茎部の上端部及び片葉を収容する第2受け箱7と、ハンド部から落下供給された切断済みの台木8を第1受け箱6へ案内する第1シュート11と、台木8から取り除かれた茎部及び片葉を第2受け箱7へ案内する第2シュート12と、台木切断装置1全体を制御する制御装置10(図9参照)を備えている。これらの部材は図示しない透明なケース内に配置されている。以下の説明において、特に断りがない限り、第1受け箱6を基準とした場合の第2受け箱7側を「前」、その反対側を「後」といい、前方を向いたときの左側を「左」、その反対側を「右」という。また、以下において、台木切断装置1を単に「切断装置」ともいう。
【0023】
上記載置台は、互いに左右対称に構成された左右一対の載置台2を備え、各載置台2は図示しないロッドを介してケース上面に装着されており、図1の吹き出し内に平面図として示されるように、平板状のプレートに切欠き2aが形成された形状をなしている。作業者により台木8の茎部(=胚軸)が各載置台2の切欠き2aに挿し込まれるように載置されることで、台木8の葉部が載置台2により支持される。載置台2に載置される台木8は、根の部分が図3に示されるαの位置で作業者の手作業で予め切断されたものが用いられ、切断部5によって、図3に示されるβの位置で切断される。左右一対の載置台2のうちの左側の載置台2は本発明の「左載置台」に相当し、右側の載置台2は本発明の「右載置台」に相当する。
【0024】
上記ハンド部は、左右一対のハンド部3を備えている。左側のハンド部3は、左側の載置台2に載置された台木8を把持する把持位置P1と、切断刃5aによって台木8の茎部を切断する切断位置P3と、切断後の台木8を解放する解放位置P4との間においてスライド部4によりスライド往復移動される。右側のハンド部3は、右側の載置台2に載置された台木8を把持する把持位置P2と、切断刃5aによって台木8の茎部を切断する切断位置P3と、切断後の台木8を解放する解放位置P5との間においてスライド部4によりスライド往復移動される。以下において、載置台2に載置された台木8をハンド部3に把持させ、スライド部4を駆動してハンド部3を切断位置P3までスライドさせる制御装置10の処理を「切断処理」という。
【0025】
本実施形態にかかる台木切断装置1は、1人又は2人の作業者が、切断装置1の後方において左右に並んで前方、すなわち切断装置1側を向いた状態で、載置台2に台木8を載置する下準備作業(以下、「載置作業」という。)を要するものである。作業者が2人で作業を行う場合には、一方の作業者が左側の載置台2に、他方の作業者が右側の載置台2にそれぞれ、根が切断された状態の台木8を載置(=セット)する。切断装置1のケースの前面及び後面には各々、開口部が形成されており、作業者は前面側の開口部を通じて載置台2に手を伸ばすことができる。台木切断装置1は多様な植物の台木苗を切断できるが、切断する植物の種類としては、例えばカボチャが挙げられる。
【0026】
左側の載置台2に載置された台木8は左側のハンド部3により、右側の載置台2に載置された台木8は右側のハンド部3によりそれぞれ把持された状態で、スライド部4により切断刃5aの近傍へスライドされて切断される。切断刃5aは、左右一対の載置台2の左右方向における略中間部に設けられた一枚刃であり、切断位置P3は、左側の載置台2と右側の載置台2の左右方向における略中間の位置である。左側の載置台2は切断位置P3の左方に配され、右側の載置台2は切断位置P3の右方に配されている。また、左側のハンド部3は本発明の「左ハンド部」に相当し、右側のハンド部3は本発明の「右ハンド部」に相当する。
【0027】
切断部5により切断されて台木8から取り除かれた片葉及び茎部の上端部は下方へ落下し、切断刃5aの下方に配置された第2シュート12を通じて第2受け箱7に収容される。図1及び図2に示されるように、第2シュート12を第1シュート11の上方に設けるとともに、第2受け箱7を第1受け箱6と反対側(=前側)に配置することで、これらの部材をコンパクトにまとめることができる。ケースの前部には、第2受け箱7の上方に配置されたミラー31(図1参照)が取り付けられており、作業者は、ケースの前側に回り込まなくても、着座したままミラー31を覗くことで、前方の第2受け箱7の中身を確認することができる。
【0028】
切断部5により切断された台木8は、その後、ハンド部3により把持された状態で、左右方向における外側に移動され、解放位置P4又はP5(図2参照)に停止したハンド部3から解放されて落下し、第1シュート11を通じて第1受け箱6に収容される。
【0029】
ここで、第1シュート11は、第2シュート12よりも左右方向に幅広に構成されており、第1シュート11の左右の端部は、左右方向において、第2シュート12の左右の端部よりも外側に位置している。左側のハンド部3は、切断部5による切断後、第1シュート11の上方で、且つ第2シュート12の左側の端部よりも左方の解放位置P4(図2参照)へスライドして停止し、台木8を解放し落下させる。一方、右側のハンド部3は、第1シュート11の上方で、且つ、第2シュート12の右側の端部よりも右方の解放位置P5(図2参照)へスライドして停止し、台木8を解放し落下させる。
【0030】
このように、第1シュート11を第2シュート12よりも幅広に構成するとともに、第1シュート11における第2シュート12よりも左右外側の位置に切断済みの台木8を落下させることで、左右の載置台2からスライドされて切断された台木8を、単一の第1シュート11を通じて単一の第1受け箱6に収容でき、切断後に左右の載置台2からの台木8をまとめる手間を省くことができる。
【0031】
図4は、ハンド部3の近傍の拡大斜視図であり、図5は、スライド部4及びハンド部3の近傍の部分縦断側面図である。図5(a)には、ハンド部3が下方に回動される前の状態が示されており、図5(b)には、ハンド部3が下方に回動された状態が示されている。
【0032】
左右一対のハンド部3は、各々、左右一対の把持体3aと、図9に示される把持モータ3bを備え、連結部35を介してスライド部4に連結されている。そして、把持モータ3bの駆動により一対の把持体3aの後部同士の間隔を縮めることで台木8を把持し、反対に間隔を広げることで台木8を解放できるようになっている。なお、本明細書においては、左右の各ハンド部3が台木8を把持する動作を「把持動作」といい、台木8を解放する動作を「解放動作」という。
【0033】
左右の各連結部35は、各ハンド部3を回動させる回動機構を備えている。具体的には、各ハンド部3の後面に回動ロッド35cが装着されており、回動ロッド35cは、左右方向に延びる回動軸35c1を中心に回動可能となっている。回動軸35c1は、ボックス35bに左右に貫通するように装着されている。ボックス35bの前面及び後面には各々、上下方向に延びる長孔(不図示)が形成されており、回動ロッド35cは当該2つの長穴に挿通されている。これにより回動ロッド35cの上下回動が許容されている。回動ロッド35cには側面視で略くの字状に屈曲したプレート35eが装着されている。ボックス35bは、スライド部4のワイヤー4a1、4b1に装着された支柱35aの下面に固定されており、支柱35aとプレート35eの上部とが回動用シリンダ35dにより連結されている。このため、ハンド部3は、回動用シリンダ35dが伸長することで回動軸35c1を中心に回動ロッド35cと一体的に下方に(=後ろ下がりに)回動し(図5(b)参照)、回動用シリンダ35dが収縮することで、上方に(=後ろ上がりに)回動する(図5(a)参照)。
【0034】
一方、スライド部4は、左側のハンド部3をスライドさせる左側スライド部4aと、右側のハンド部3をスライドさせる右側スライド部4bと、左右のハンド部3が左右方向に直線的にスライドできるようガイドするガイドレーン4cを備えている。
【0035】
左側スライド部4a、右側スライド部4bは各々、前側及び後ろ側から見て輪状に見える向きでガイドレーン4cに沿って左右方向に延びる無端状(=閉ループ状)のワイヤー4a1又は4b1と、各ワイヤー4a1、4b1の延びる方向を左右で(=180°)変更する左プーリ4a3又は4b3及び右プーリ4a4又は4b4と、ワイヤー4a1又は4b1を回転駆動する電動モータ4a2又は4b2を備えている。左プーリ4a3及び4b3並びに右プーリ4a4及び4b4は、各々、回転可能且つ取外し可能にケースに取り付けられており、後に詳述するように、ガイドレーン4cが短く分離される際にはケースから一時的に取り外される。
【0036】
左側のハンド部3の前上方に位置する支柱35aは、挟持部35fを介して左側スライド部4aのワイヤー4a1に装着されており、右側のハンド部3の前上方に位置する支柱35aは、図5に示されるように、挟持部35fを介して右側スライド部4bのワイヤー4b1に装着されている。
【0037】
各電動モータ4a2、4b2は正逆に回転可能に構成されており、左側スライド部4aの電動モータ4a2はワイヤー4a1を回転駆動することで左側のハンド部3を左右にスライドさせる。右側スライド部4bの電動モータ4b2はワイヤー4b1を回転駆動することで右側のハンド部3を左右にスライドさせる。左側スライド部4aは基本的には右側スライド部4bの前方に配置されているが、電動モータ4a2は電動モータ4b2の左前方に配置されている。2つのワイヤー4a1、4b1は本発明の「無端状部材」の一例であり、無端状部材としてはワイヤーの他、チェーンやベルト等を用いることができる。
【0038】
ガイドレーン4cは、図5に示されるように、縦断側面視で略逆U字状の形状をなしており、その上部が、無端状をなすワイヤー4a1,4b1の内側を左右に延びている。左右の各ハンド部3の前上方に位置する各支柱35aには、前後一対の車輪23が遊転可能に装着されている。一対の車輪23がガイドレーン4cの前側の内側面と後ろ側の内側面を転がることで、ガイドレーン4cとハンド部3との間の摩擦抵抗を低く抑えている。
【0039】
以上、左右のハンド部3とスライド部4の構成について詳述したが、以下に、台木8の切断にかかるハンド部3の動作や制御装置10の制御等について詳細に説明を加える。
図6は、台木8の切断にかかるフローチャートであり、図7は、左側のハンド部3を切断位置P3まで右側にスライドさせた状態を示す要部斜視図である。
【0040】
左右一方又は両方の載置台2に台木8を載置する載置作業が行われると、まず、作業者によって、図9に示される第1足踏みスイッチ25a又は/及び第2足踏みスイッチ25bが踏み操作される(ステップs1)。
【0041】
第1足踏みスイッチ25aは、踏み操作によって、左側の載置台2に載置された台木8を切断させる第1指示信号を制御装置10に発信する機能を果たし、これにより、作業者が、制御装置10に第1指示信号を入力することを可能とした操作スイッチであり、左側の載置台2の下方に配置されている。第2足踏みスイッチ25bは、踏み操作によって、右側の載置台2に載置された台木8を切断させる第2指示信号を制御装置10に発信する機能を果たし、これにより、作業者が、制御装置10に入力することを可能とした操作スイッチであり、右側の載置台2の下方に配置されている。第1足踏みスイッチ25aは本発明の「第1入力操作手段」の一例であり、第2足踏みスイッチ25bは本発明の「第2入力操作手段」の一例である。
【0042】
次いで、制御装置10は、入力された指示信号に従って、ハンド部3を把持動作させる(ステップs2)。このとき、制御装置10は、以下の3つの受信パターンに応じて左右いずれか又は両方のハンド部3を制御する。
<パターン1>
【0043】
第1足踏みスイッチ25aの踏み操作により第1指示信号を受信した場合。この場合、制御装置10は、第1指示信号を受信した旨を記録部10bに一時記憶するとともに、把持モータ3bを駆動し、左側の載置台2の直ぐ前の把持位置P1に位置する左側のハンド部3を把持動作させる。図1図2図7等に示される把持位置P1は、左側の載置台2に載置された台木8を把持するための左側のハンド部3の位置である。
<パターン2>
【0044】
第2足踏みスイッチ25bの踏み操作により第2指示信号を受信した場合。この場合、制御装置10は、第2指示信号を受信した旨を記録部10bに一時記憶するとともに、把持モータ3bを駆動し、右側の載置台2の直ぐ前の把持位置P2に位置する右側のハンド部3を把持動作させる。図1図2図7等に示される把持位置P2は、右側の載置台2に載置された台木8を把持するための右側のハンド部3の位置である。
<パターン3>
【0045】
2人の作業者により載置作業が行われる間に、第1足踏みスイッチ25a及び第2足踏みスイッチ25bの両方が踏み操作された場合。この場合、制御装置10は、第1、第2指示信号を受信した旨を記録部10bに一時記憶するとともに、第1、第2指示信号のうちの早く受信した方の指示信号に従って、左右一方のハンド部3を把持動作させる。そして以下に示すステップs3以降の処理を図6に示すフロー通りに進め、リターン後に再びステップs1へ戻った後に、今度は一時記憶した、遅く受信した方の第2指示信号に従って、左右他方のハンド部3を把持動作させ、ステップs3以降の処理をフローの通りに進める。
【0046】
なお、上記「第1足踏みスイッチ25a及び第2足踏みスイッチ25bの両方が踏み操作された場合」とは、換言すれば、制御装置10が第1指示信号及び第2指示信号を受信した場合であり、第1足踏みスイッチ25a及び第2足踏みスイッチ25bが略同時に操作され、第1指示信号及び第2指示信号が略同時に制御装置10に入力された場合の他、第1指示信号又は第2指示信号が入力された後、当該指示信号に従って把持動作(ステップs2)や切断位置P3までのスライドを経て、再びハンド部3が把持位置P1又はP2へ移動されるまでの間に、他方の指示信号が制御装置10に入力された場合を含むものとする。
【0047】
すなわち、制御装置10は、左側のハンド部3または右側のハンド部3による切断処理の実行中に、1または複数の第1指示信号又は第2指示信号を新たに受信すると、これを記憶部10bに到着順に一時記憶しておき、実行中の切断処理が完了すると、一時記憶された第1指示信号又は第2指示信号を先入れ先出し方式で読み込んで、新たに切断処理を到着順で逐次実行するよう構成されている。
【0048】
上述の何れのパターンであるかに拘わらず、第1又は第2指示信号に従って左右いずれかのハンド部3を把持動作させると、制御装置10は、電動モータ4a2又は4b2を駆動し、把持動作させた方のハンド部3を図2図7等に示される切断位置P3まで左右いずれかの方向にスライドさせる(ステップs3)。このとき、ハンド部3は台木8を把持したままスライドされる。例えば、第1足踏みスイッチ25aが踏み操作された場合、制御装置10は、電動モータ4a2を駆動し、図7に示されるように、左側のハンド部3を切断位置P3まで右側へスライドさせる。反対に、第2足踏みスイッチ25bが踏み操作された場合、制御装置10は、電動モータ4a2を駆動し、台木8を把持した右側のハンド部3を切断位置P3まで左側へスライドさせる。
【0049】
次いで、制御装置10が切断部5を稼働し、切断位置にあるハンド部3に把持された台木8を切断する(ステップs4)。
【0050】
切断部5は、切断刃5aを前後方向に移動させる前後移動用シリンダ26と、切断刃5aの向きと略平行に切断刃5aを前上方へスライドさせる切断用シリンダ27を備えている。制御装置10は、前後移動用シリンダ26を収縮制御して切断刃5aを前方へ移動させ、台木8へ接近させた後に、切断用シリンダ27を伸長制御して切断刃5aを前上方へスライドさせることで、台木8を切断する。なお、このような可動式の切断刃5aに代えて、位置が変わらない固定式の切断刃を用いてもよい。この場合には、ハンド部3が切断位置にスライドされることで台木8を切断できるように切断刃を配置することが好ましい。また、切断刃は回転刃であってもよい。
【0051】
台木8を切断後、制御装置10は、ステップs3にて切断位置P3へスライドさせたハンド部3を、切断後の台木8を解放する解放位置P4又はP5(図2参照)まで左右方向における外側へスライドさせる(ステップs5)。同時に、制御装置10は、前後移動用シリンダ26を伸長制御するとともに切断用シリンダ27を収縮制御して、切断刃5aを切断前の位置へ戻す。
【0052】
その後、制御装置10は、回動用シリンダ35dを伸長制御して、解放位置P4に位置する左側のハンド部3又は解放位置P5に位置する右側のハンド部3を下方へ(後ろ下がりに)回動させる(図5(b)参照、ステップs6)。そして回動後に、制御装置10は把持モータ3bを駆動し、当該ハンド部3を解放動作させる(ステップs7)。さらに、制御装置10は、回動用シリンダ35dを伸縮制御し、当該ハンド部3を上方へ回動させる(図5(a)参照)動作と下方へ回動させる動作とを所定の回数にわたって行わせる(ステップs8)。ただ単にハンド部3が解放動作を行っても台木8がハンド部3の一対の把持体3aに台木8が付着したまま落下しない恐れがあるため、このようにハンド部3を上下に何度も回動させることで、切断済みの台木8を確実に第1シュート11に落下させることができる。
【0053】
こうして台木8を第1シュート11に落下させると、制御装置10は、第1シュート11の下面に取付けられた振動装置28を駆動し、第1シュート11を振動させる(ステップs9)。これにより、第1シュート11に落下した台木8を、確実に第1受け箱6まで滑らせることができ、第1シュート11上に台木8が蓄積してしまう事態を防止できる。振動装置28としては、振動モータや圧電振動板等を用いることができる。
【0054】
次いで、制御装置10は、記録部10bに記録されている切断刃5aによる切断回数Sを、値1だけカウントアップし更新する(ステップs10)。そして、制御装置10は、更新された切断回数Sが所定の基準回数Srefを上回っているか否かを判定する(ステップs11)。
【0055】
判定の結果、切断回数Sが基準回数Srefを上回る場合、制御装置10はアルコール噴霧装置29のポンプ29aを駆動し、貯留タンク29b内に貯留された洗浄用アルコールを、ノズル29cを通じて切断刃5aに噴射する(ステップs12)。本実施形態においては基準回数Srefの値が999に設定されており、台木8の切断回数Sが基準回数Srefを上回る1000回に達すると、アルコール噴霧装置29により切断刃5aが自動的に洗浄される。このため、切断する際に切断刃5aに付着した台木8の樹液を洗い落とすことができ、切断刃5aの切断能力を高く保つことができるとともに、切断刃5aの交換頻度を少なくすることができる。なお、基準回数Srefの値はこれに限定されるものではない。
切断刃5aの洗浄後、制御装置10は、切断回数Sを値0(ゼロ)に更新する(ステップs13)。
【0056】
最後に、制御装置10は、ステップs8にて上下に回動させたハンド部3を把持位置P1又はP2にスライドさせる(ステップs14)。ステップs2ないしs8にかかるハンド部3が左側のハンド部3である場合、制御装置10は電動モータ4a2を駆動して当該ハンド部3を把持位置P1まで左側へスライドさせる。これに対し、右側のハンド部3である場合、制御装置10は電動モータ4b2を駆動して当該ハンド部3を把持位置P2まで右側へスライドさせる。
【0057】
一方、ステップs11の判定の結果、切断回数Sが基準回数Sref以下である場合、制御装置10は、切断刃5aのアルコール洗浄を行わずに上記ステップs10へ進み、ハンド部3を把持位置P1又はP2にスライドさせるとともに、終了した当該切断にかかる指示信号の受信記録を記録部10bから消去する。
【0058】
こうして、左右一方の載置台2に載置された台木8が切断され、ハンド部3が把持位置P1又はP2へ戻されると、ステップs1へリターンする。このとき、上述のパターン3の場合には、制御装置10は、リターン後に、遅く受信し一時記憶した方の指示信号に従ってステップs2以降の処理をフローの通りに行う。
【0059】
例えば、はじめに第1足踏みスイッチ25a及び第2足踏みスイッチ25bが略同時に操作され、第1指示信号を受信した直後に第2指示信号を受信した場合、制御装置10は、まず、第1指示信号に従って、左側のハンド部3を把持動作させ、電動モータ4a2を駆動し左側のハンド部3を切断位置P3まで移動させて切断し、解放位置P4までスライドさせる。そして、ステップs10ないしs13、又はステップs10及び11の処理を行い、左側のハンド部3を把持位置P1へスライドさせて戻す。
【0060】
その後に、制御装置10は、先ほど第1指示信号に遅れて受信した第2指示信号に従って、右側のハンド部3を把持動作させた後、電動モータ4b2を駆動し切断位置P3まで移動させて切断し、解放位置P5までスライドさせる。そして、ステップs10ないしs13、又はステップs10及び11の処理を行い、右側のハンド部3を把持位置P2へスライドさせて戻す。
【0061】
すなわち、制御装置10は、早く受信した指示信号に従って図6に示されたフローを進める間、その後に遅れて受信した方の指示信号に従った処理を保留し、リターン後に、遅く受信した方の指示信号に従ってフローの通りに処理を進めるよう構成されている。
【0062】
以上のように、本実施形態においては、第1足踏みスイッチ25aが踏み操作されると、左側のハンド部3が稼働され、第2足踏みスイッチ25bが踏み操作されると、右側のハンド部3が稼働される。このため、作業者2人での載置作業中に、1人の作業者が作業を中断した場合でも、左右両方のハンド部3が交互に稼働してしまうことなく、もう1人の作業者による第1足踏みスイッチ25a又は第2足踏みスイッチ25bの踏み操作に基づき、左右一方のみの載置台2及びハンド部3を用いて台木8の把持と切断を進めることができ、効率がよい。
【0063】
図8は、ガイドレーン4cの分解斜視図である。
ガイドレーン4cは、その長手方向である左右方向に、左側サブレーン4c1、中央サブレーン4c2、及び右側サブレーン4c3を左側から順に備え、これら3つのサブレーンがそれぞれ着脱自在に連結されて構成されている。
【0064】
中央サブレーン4c2は、左側サブレーン4c1及び右側サブレーン4c3よりも前後方向の幅及び高さが短くなっている。このため、中央サブレーン4c2の左右両端部が、左側サブレーン4c1及び右側サブレーン4c3の内側に挿し込まれることで、これら3つのサブレーン4c1~4c3を連結可能となっている。また、ガイドレーン4cの左側サブレーン4c1が左方へ、右側サブレーン4c3が右方へそれぞれ引っ張られることで、3つのサブレーン4c1~4c3に分離可能となっている。
【0065】
ここで、中央サブレーン4c2にはワイヤー4a1を駆動する電動モータ4a2と、ワイヤー4b1を駆動する電動モータ4b2が装着されている。作業者が1人のみで、右側の載置台2のみに載置作業を行う場合には、ガイドレーン4cから左側サブレーン4c1を取り外し、中央サブレーン4c2と左側サブレーン4c1のみの状態とすることで、左右方向の幅をコンパクトにできる。反対に、左側の載置台2のみに載置作業を行う場合には、ガイドレーン4cから右側サブレーン4c3を取り外し、中央サブレーン4c2と左側サブレーン4c1のみの状態とすることで、左右方向の幅をコンパクトにできる。
【0066】
なお、ガイドレーン4cを短くする際には、作業者の手により、各ハンド部3の前上方に位置する挟持部35fがワイヤー4a1又は4b1から取外され、左プーリ4a3及び4b3並びに右プーリ4a4及び4b4がケースから取り外される。そして、使用する左右一方のハンド部3をスライドさせるワイヤー4a1又は4b1が、中央サブレーン4c2及び左右一方のサブレーン4c1又は4c3の長さに対応した短い左右幅のものに取換えられ、電動モータ4a2又は4b2のプーリに取付られる。その後に、左プーリ4a3又は4b3及び右プーリ4a4又は4b4が再びケースに装着される。このときの左プーリ4a3又は4b3と右プーリ4a4又は4b4との間の左右方向における間隔は、取り換え後のワイヤーの長さに合わせ、一方のサブレーン4c1又は4c3が取り外される前よりも狭い状態となる。
【0067】
図9は、図1に示された台木切断装置1の制御ブロック図である。
制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)を有する処理部10aと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を有する記録部10bを備えた周知の情報処理装置として構成されている。記録部10bには、切断装置1全体を制御する種々のプログラム及びデータが格納されている。
【0068】
制御装置10の入力側には、ケースに設けられたポンプスイッチ30と、左側の載置台2に載置された台木8を切断させる第1指示信号を作業者が制御装置10に入力するための第1足踏みスイッチ25aと、右側の載置台2に載置された台木8を切断させる第2指示信号を作業者が制御装置10に入力するための第2足踏みスイッチ25bと、第1受け箱6の重量を計測する重量計32が接続されている。
【0069】
作業者2人での作業時には、第1足踏みスイッチ25aは、切断装置1の後方左側に位置する作業者により足踏み操作され、第2足踏みスイッチ25bは、切断装置1の後方右側に位置する作業者により足踏み操作される。
【0070】
制御装置10の出力側には、一対の把持体3aの間隔を調節する把持モータ3bと、ハンド部3を回動させる回動用シリンダ35dと、ワイヤー4a1を回転駆動する電動モータ4a2と、ワイヤー4b1を回転駆動する電動モータ4b2と、第1シュート11を振動させる振動装置28と、第1受け箱6の満量を報知するブザー33と、第1受け箱6が満量となった旨を表示する表示装置34と、アルコール噴霧装置29のポンプ29aが接続されている。制御装置10は、左右のハンド部3の把持動作及び解放動作並びにスライド部4の駆動を制御する本発明の「制御手段」に相当する。
【0071】
ポンプスイッチ30は、ケースの左側の側面に配置されており、作業者によりポンプスイッチ30が押圧操作されている間、制御装置10はポンプ29aを駆動し続け、ノズル29cを通じて切断刃5aにアルコールを噴射させる。このため、1000回目の切断後のタイミングに加え、作業者の任意のタイミングで、任意の時間に亘って切断刃5aを洗浄することができる。切断後に長時間にわたって切断が行われないと、切断刃5aに付着した樹液が固まり、切断刃5aの切れ味が落ちてしまうため、アルコールを噴射させるタイミングとしては、例えば載置作業を終えて休憩に入る時や終業時が望ましい。
【0072】
以上のように構成された切断装置1において、制御装置10は、図6に示された制御及び上記アルコールの噴射制御に加え、満量制御を行う。
【0073】
満量制御において、制御装置10は、重量計32により計測された第1受け箱6の重量の計測値を取得し、当該計測値が所定の基準重量値以上である場合、第1受け箱6が満量(=満杯)であることが認められるので、その旨を表示装置34に表示するとともに、ブザー33を鳴らして作業者に報知する。加えて制御装置10は、ブザー33を鳴らしてから所定の時間に亘ってハンド部3のスライド速度、すなわち電動モータ4a2又は4b2の回転速度を所定の速度まで遅くする。これにより、作業者が第1受け箱6を入れ換えたり、第1受け箱6内に収容された切断済みの台木8を他の容器に移したりする時間を稼ぐことができる。なお、ハンド部3のスライド速度を遅くするのに代えて、ハンド部3の稼働(把持動作、解放動作、及びスライド)を停止させるよう構成してもよい。また、重量計32に代えて、近接センサを用いて第1受け箱6の満量を検知してもよい。この場合には、台木8が所定の高さ位置まで堆積したときに、近接センサにより台木8を検出することで、第1受け箱6の満量を検知することができる。
【0074】
<本実施形態の技術的意義>
図1ないし図9に示された本実施形態によれば、左右の載置台2に載置された台木8を、左右のハンド部3で把持して左右にスライドさせて単一の切断刃5aで切断できるから、各載置台2の近傍(具体的にはすぐ後方)にそれぞれ作業者を配置して、一方の載置台2に載置された台木8が切断される間に1人の作業者が他方の載置台2に台木8を載置し、他方の載置台2に載置された台木8が切断される間にもう一人の作業者が一方の載置台2に台木8を載置することができ、切断装置1の製造コストを抑えつつ、台木8を短時間で大量に切断することができる。
【0075】
さらに、本実施形態によれば、左右の載置台2に載置された台木8がいずれも、切断後に、単一の第1シュート11を通じて単一の第1受け箱6に収容されるから、台木切断装置の製造コストを抑えられるとともに、2人の作業者により左右の載置台2に載置され、切断された台木8を1箇所にまとめることができ、台木8の切断作業終了後にまとめる手間を省くことができる。
【0076】
加えて、本実施形態によれば、各載置台2に載置された台木8を切断する指示信号を制御装置10に入力するための入力操作手段として、第1足踏みスイッチ25a及び第2足踏みスイッチ25bを備えているから、作業者が意図しないタイミングで台木8の把持動作や切断が行われることを防止できるとともに、左右一方のみの載置台2及びハンド部3を用いた切断も可能となる。
【0077】
また、本実施形態によれば、切断装置1が第1足踏みスイッチ25a及び第2足踏みスイッチ25bを備えているから、載置台2に台木が載置されたことを検知するセンサやカメラ等を設けた場合に比して、切断装置1の製造コストを抑えることができる。
【0078】
さらに、本実施形態によれば、一方の作業者による第1足踏みスイッチ25aの踏み操作と、他方の作業者による第2足踏みスイッチ25bの踏み操作とが略同時に行われた場合に、早く受信した方の指示信号に従って左右一方の載置台2に載置された台木8の切断が行われた後、遅く受信した方の指示信号に従って左右他方の載置台2に載置された台木8の切断が行われるから、例えば一方の作業者による第1足踏みスイッチ25aの踏み操作に基づく左側の切断が終了するタイミングを見計らって、他方の作業者が第2入力操作手段を踏み操作する必要がなく、切断及び載置台2への台木8の載置作業を効率的に進めることができる。
【0079】
加えて、本実施形態によれば、直線的にスライドできるように左右のハンド部3をガイドするガイドレーン4cが、着脱可能な3つのサブレーン4c1~4c3を備えており、ワイヤー4a1又は4b1を回転駆動する電動モータ4a2及び4b2が、左右方向に延びるガイドレーン4cのうち、左右方向中央部に位置する中央サブレーン4c2に装着されているから、1人の作業者による作業で、左右一方の載置台2のみを使用する場合に、ガイドレーン4cから左側サブレーン4c1又は右側サブレーン4c3を取り外すことで、ガイドレーン4cの左右方向の幅を短くすることができる。
【0080】
さらに、本実施形態によれば、回動用シリンダ35dの伸長によりハンド部3を下方に回動させてから台木8を解放させることで、台木8をより確実にハンド部から落下させることができる。
【0081】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0082】
例えば、図1ないし図9に示された前記実施形態においては、第1シュート11に振動装置28が設けられているが、第1シュート11に代えて、又は第1シュート11とともに、第1受け箱6の下にも振動装置を設けてもよい。振動装置を定期的に駆動することで、第1受け箱6内で山盛りになった台木8を均すことができるため、頻繁に第1受け箱6を入れ換える必要がない。また、第1シュート11の傾斜角度がモータの駆動により、都度自動的に変更されるよう構成してもよい。これにより第1シュート11から第1受け箱6内への台木8の供給位置が変更されるため、第1受け箱6内の特定の箇所に台木8が積み上がってしまうことを防止できる。
【0083】
さらに、前記実施形態においては、第1足踏みスイッチ25a又は第2足踏みスイッチ25bが踏み操作されたことを条件として、制御装置10がハンド部3を稼働するよう構成されているが、左右の載置台2に、台木8の載置を検出する重量センサや近接センサ等の検出手段を設け、台木8の載置が検出されたことを条件としてハンド部3を稼働するよう構成してもよい。
【0084】
加えて、前記実施形態においては、ハンド部3を解放動作させた後に、回動用シリンダ35dを所定の回数にわたって伸縮させることで、ハンド部3を上下に回動させ、台木8を落下させるよう構成されているが、ハンド部3の上方の連結部35に振動モータを設け、制御装置10が、ハンド部3を解放動作させた後に、振動モータを駆動してハンド部3を振動させるよう構成してもよい。これにより、台木8をより確実にハンド部3から落下させることができる。
【0085】
また、前記実施形態においては、切断済みの台木8を収容する単一の第1受け箱6が設けられているが、左側の載置台2に載置され切断された台木8を受ける受け箱と、右側の載置台2に載置され、切断された台木8を受ける受け箱を別々に設けてもよい。この場合には、重量計等の満量検出手段により一方の受け箱の満量が検出され、当該受け箱が交換される間に、他方の受け箱へ切断済みの台木8を供給する方のハンド部3のスライド速度、すなわち、電動モータ4a2又は4b2の回転速度を、満量検出前に比して高めることで、作業効率を上げることができる。
【0086】
さらに、前記実施形態においては、第1受け箱の満量を検知する重量計32が設けられているが、第2受け箱7の満量を検知する重量計又は近接センサ等の検知手段を別途設けてもよい。この場合には、検知手段により第2受け箱7の満量が検出されたときに、表示装置34にその旨を表示しブザー33を鳴らすとともに、作業者が第2受け箱7の入れ換えできるよう、ハンド部3のスライド速度を遅くし、又はその稼働を停止させることが望ましい。
【0087】
また、前記実施形態においては、左右一方のハンド部3を駆動して台木8の切断を行う間に(ステップs1~s14)、左右他方の載置台2に載置された台木8を切断させる指示信号を受信すると、制御装置10がこの指示信号を一時記憶し、左右一方の台木8の切断終了後に、左右他方の台木8を切断する(ステップs1~s14)よう構成されているが、さらに、左右一方のハンド部3を駆動して台木8の切断を行う間に、左右一方の載置台2に載置された台木8を切断させる指示信号を受信すると、制御装置10がこの指示信号を一時記憶し、左右一方の台木8の切断終了後に、左右一方の台木8を切断するよう構成してもよい。例えば、左側の載置台2に載置された台木8の切断を行う間に、左側の載置台2に載置された台木8を切断させる指示信号を受信すると、制御装置10がこの指示信号を一時記憶し、左側の台木8の切断終了後に、直ちに再び左側の載置台2に載置された台木8をハンド部3に把持させ、させるよう構成することで、より効率的に切断作業を進めることができる。
【0088】
加えて、前記実施形態においては、制御装置10が、入力された第1指示信号又は第2指示信号に従って、ハンド部3やスライド部4、切断部5等を制御し、左側又は右側の載置台2に載置された台木8を切断するよう構成されているが、台木8が載置台2に載置され、第1又は第2足踏みスイッチ25が踏み操作された後に、当該踏み操作による指示信号をキャンセルするキャンセル手段を設けてもよい。例えば、作業者が左側の載置台2に台木8を載置し、第1足踏みスイッチ25aを踏み操作して第1指示信号を制御装置10に入力した後に、キャンセル手段を用いて第1指示信号をキャンセルするキャンセル信号を制御装置10に入力し、指示信号を受信した記録を消去可能とすることで、意図しない台木8の切断をより一層防止できるとともに、安全性を高めることができる。なお、キャンセル手段としては、手で押圧するタイプのスイッチを設けてもよいが、一度踏み操作した第1又は第2足踏みスイッチ25を再び踏み操作することで、キャンセル信号を制御装置10に入力可能に構成してもよい。また、台木8が載置台2から取り外されたことを近接センサや重量センサ等により検知することで、キャンセル信号が制御装置10に入力される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 台木切断装置
2 載置台
3 ハンド部
4 スライド部
5 切断刃
6 第1受け箱
7 第2受け箱
8 台木
10 制御装置
11 第1シュート
12 第2シュート
23 車輪
24 挟持部
25 足踏みスイッチ
26 前後移動用シリンダ
27 切断用シリンダ
28 振動装置
29 アルコール噴霧装置
30 ポンプスイッチ
31 ミラー
32 重量計
33 ブザー
34 表示装置
35 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9