(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046877
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂組成物被膜、樹脂組成物フィルム、硬化膜、およびこれらを用いた半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 71/00 20060101AFI20240329BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20240329BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20240329BHJP
C08L 79/04 20060101ALI20240329BHJP
C08K 5/541 20060101ALI20240329BHJP
C08K 5/36 20060101ALI20240329BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C08L71/00
C08L79/08
C08L77/00
C08L79/04 B
C08K5/541
C08K5/36
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152222
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】松村 和行
(72)【発明者】
【氏名】楯岡 佳子
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4J002CH01W
4J002CL00X
4J002CM02X
4J002CM04X
4J002EV297
4J002EX036
4J002EX076
4J002FD140
4J002FD147
4J002FD157
4J002FD206
4J002FD207
4J002FD310
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002GQ05
4J043PC015
4J043PC145
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA05
4J043RA34
4J043SA06
4J043SB01
4J043SB03
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA151
4J043UA622
4J043UA662
4J043UA672
4J043UB061
4J043VA012
4J043VA052
4J043VA071
4J043XA03
4J043XA19
4J043XB27
4J043YA23
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】 十分な熱衝撃試験耐性と保存安定性を有する光カチオン重合系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)成分としてポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つの高分子化合物、(B)成分としてカチオン重合性化合物、(C)成分として光カチオン重合開始剤を含有する樹脂組成物であって、
前記(B)成分が、(B1)成分としてオキセタン化合物を含有し、
前記(B1)成分が、1分子中に2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含有することを特徴とする、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つの高分子化合物、(B)成分としてカチオン重合性化合物、(C)成分として光カチオン重合開始剤を含有する樹脂組成物であって、
前記(B)成分が、(B1)成分としてオキセタン化合物を含有し、
前記(B1)成分が、1分子中に2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含有することを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分の合計を100質量%とした場合、前記(B1)成分の合計が99質量%以上100質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B1)成分の合計を100質量%とした場合、1分子中に2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物の合計が、50質量%以上100質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B1)成分が、一般式(3)または一般式(4)で表されるオキセタン化合物のいずれかを含有することを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
一般式(3)中、mは1以上の整数であり、R
1、R
2は1価の有機基である。
【化2】
一般式(4)中、nは1以上の整数であり、R
3、R
4は1価の有機基である。
【請求項5】
さらに、(D)成分としてシラン化合物を含有することを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(D)成分が、酸無水物基を有することを特徴とする、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)成分がスルホニウム塩を含有し、
前記スルホニウム塩を形成するカウンターアニオンとして、ガレートイオンを含有することを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記(A)成分の合計を100質量部とした場合、前記(B)成分の合計が50~200質量部であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
ネガ型の感光性樹脂組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の樹脂組成物からなる樹脂組成物被膜。
【請求項11】
厚みが30μm以上であることを特徴とする、請求項10に記載の樹脂組成物被膜。
【請求項12】
請求項10に記載の樹脂組成物被膜、及び、支持体を有する、樹脂組成物フィルム。
【請求項13】
請求項1に記載の樹脂組成物、又は、請求項10に記載の樹脂組成物被膜を硬化した硬化膜。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化膜を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂組成物被膜、樹脂組成物フィルム、硬化膜、およびこれらを用いた半導体装置に関する。より詳しくは、半導体素子やインダクタ装置の表面保護膜、層間絶縁膜、MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステムズ)の構造体などに好適に用いられる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜には、耐熱性や電気絶縁性及び機械特性に優れたポリイミド系材料やポリベンゾオキサゾール系材料が広く使用されている。近年の半導体素子の高密度化や高性能化要求に伴い、生産効率の観点から、表面保護膜や層間絶縁膜には、感光性を有する材料が求められている。
【0003】
一方、感光性材料には、近年の半導体素子の様々なパッケージング構造や、MEMS向けに高アスペクト比の加工が要求されている。そのような要求に応えるために、化学増幅型の光カチオン重合系の感光性材料が開示されている(例えば、特許文献1)。また、化学増幅型の光カチオン重合系において、特定の構造のエポキシ樹脂を含有させることで、機械特性や熱特性の向上を意図した光カチオン重合系材料が開示されている(例えば、特許文献2)。さらに、化学増幅型の光カチオン重合系において、ポリイミド等の高分子化合物を含有させることで、硬化膜のガラス転移温度や引張強度・引張伸度等に優れた光カチオン重合系材料が開示されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/007764号パンフレット
【特許文献2】特開2019-38964号公報
【特許文献3】特開2021-055055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような光カチオン重合系材料は、十分な熱衝撃試験耐性、及び保存安定性を有していなかった。上記特許文献1や特許文献2のような光カチオン重合性材料においては、熱衝撃試験時に基板との剥離や樹脂にクラックが生じる課題があった。上記特許文献3のような、ポリイミド等の高分子化合物を含有した光カチオン重合性材料においても、カチオン重合性化合物としてエポキシ化合物を用いると、該光カチオン重合系材料の引張伸度が不十分であることや、内部応力が大きいこと等が原因で、熱衝撃試験時に基板との剥離や樹脂にクラックが生じる課題があった。
【0006】
かかる状況に鑑み、筆者らは、鋭意検討した結果、ポリイミド等の高分子化合物と、カチオン重合性化合物として特定のオキセタン化合物を含有した光カチオン重合性材料とすることによって、十分な熱衝撃試験耐性を有することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、以下である。
(1)
(A)成分としてポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つの高分子化合物、(B)成分としてカチオン重合性化合物、(C)成分として光カチオン重合開始剤を含有する樹脂組成物であって、
前記(B)成分が、(B1)成分としてオキセタン化合物を含有し、
前記(B1)成分が、1分子中に2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含有することを特徴とする、樹脂組成物。
(2)
前記(B)成分の合計を100質量%とした場合、前記(B1)成分の合計が99質量%以上100質量%以下であることを特徴とする、前記(1)に記載の樹脂組成物。
(3)
前記(B1)成分の合計を100質量%とした場合、1分子中に2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物の合計が、50質量%以上100質量%以下であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
(4)
前記(B1)成分が、一般式(3)または一般式(4)で表されるオキセタン化合物のいずれかを含有することを特徴とする、前記(1)~(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0008】
【0009】
一般式(3)中、mは1以上の整数であり、R1、R2は1価の有機基である。
【0010】
【0011】
一般式(4)中、nは1以上の整数であり、R3、R4は1価の有機基である。
(5)
さらに、(D)成分としてシラン化合物を含有することを特徴とする、前記(1)~(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(6)
前記(D)成分が、酸無水物基を有することを特徴とする、前記(5)に記載の樹脂組成物。
(7)
前記(C)成分がスルホニウム塩を含有し、
前記スルホニウム塩を形成するカウンターアニオンとして、ガレートイオンを含有することを特徴とする、前記(1)~(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(8)
前記(A)成分の合計を100質量部とした場合、前記(B)成分の合計が50~200質量部であることを特徴とする、前記(1)~(7)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(9)
ネガ型の感光性樹脂組成物であることを特徴とする、前記(1)~(8)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(10)
前記(1)~(9)のいずれかに記載の樹脂組成物からなる樹脂組成物被膜。
(11)
厚みが30μm以上であることを特徴とする、前記(10)に記載の樹脂組成物被膜。
(12)
前記(10)または(11)に記載の樹脂組成物被膜、及び、支持体を有する、樹脂組成物フィルム。
(13)
前記(1)~(9)のいずれかに記載の樹脂組成物、又は、前記(10)~(11)のいずれかに記載の樹脂組成物被膜を硬化した硬化膜。
(14)
前記(13)に記載の硬化膜を有する、半導体装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂脂組成物は、十分な熱衝撃試験耐性を有する樹脂組成物、樹脂組成物被膜、樹脂組成物フィルム、硬化膜、およびこれらを用いた半導体装置を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、(A)成分としてポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つの高分子化合物、(B)成分としてカチオン重合性化合物、(C)成分として光カチオン重合開始剤を含有する樹脂組成物であって、
前記(B)成分が、(B1)成分としてオキセタン化合物を含有し、
前記(B1)成分が、1分子中に2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含有することを特徴とする、樹脂組成物である。
【0014】
また、本発明の樹脂組成物は、光の照射により、(C)成分が酸を発生し、それにより(B)成分が重合反応を起こし、結果として現像液に不溶となるネガ型の感光性を示す樹脂組成物、つまりネガ型感光性樹脂組成物であることが好ましい。
【0015】
<(A)成分>
本発明の樹脂組成物は、(A)成分としてポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つの高分子化合物を含有する。前記(A)成分を含有することにより、本発明の樹脂組成物をフィルム状の樹脂組成物被膜などにする際の製膜性に優れる。
【0016】
前記(A)成分は、その重量平均分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が1,000以上200,000以下であることが好ましい。また(A)成分中の高分子化合物は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なお、本発明における(A)成分中の高分子化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)によって測定し、ポリスチレン換算で算出する。
【0017】
また、本発明の樹脂組成物は、ポリアミド、ポリイミド、およびポリアミドイミド、及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる少なくとも一つの高分子化合物を含むことが重要であり、ポリアミド、ポリイミド、およびポリアミドイミド、及びポリベンゾオキサゾールからなる群より選ばれる少なくとも一つの高分子化合物を含みさえすれば、ポリアミド、ポリイミド、およびポリアミドイミド、及びポリベンゾオキサゾール以外の高分子化合物を含むことも可能である。なお、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体は、それぞれ、上記のポリアミドに相当する。
【0018】
さらに、前記(A)成分は、その分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造であることが好ましい。前記(A)成分の分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造であることによって、その分子鎖末端が、カチオン重合の阻害官能基となり得る、アミン末端構造を保有しない分子構造とすることができ、結果として、十分なカチオン重合性を発現することができる。ここで、前記(A)成分の分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造とは、ポリアミドやポリイミドまたはポリアミドイミドを構成し得る、カルボン酸残基に由来する有機基が分子鎖の末端に位置することを意味し、モノカルボン酸やジカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、ジ酸クロリド化合物、テトラカルボン酸または酸無水物、酸二無水物等を言う。
【0019】
前記(A)成分の分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造(有機基)としては、芳香族ジカルボン酸、芳香族酸二無水物、脂環式ジカルボン酸、脂環式酸二無水物、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族酸二無水物などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0020】
本発明において、前記(A)成分は、一般式(1)および一般式(2)で表される構造から選ばれる少なくとも1種類以上の構造を有する化合物であることが好ましい。
【0021】
【0022】
(一般式(1)および(2)中、X1およびX2はそれぞれ独立に2~10価の有機基を示し、Y1およびY2はそれぞれ独立に2~4価の有機基を示し、Rは水素原子または炭素数1~20の有機基を示す。qは0~2の整数であり、r、s、t、uはそれぞれ独立に0~4の整数である。)
一般式(1)および(2)中のX1およびX2は、それぞれ独立に2~10価の有機基を示し、カルボン酸残基を表している。また、Y1およびY2は、2価~4価の有機基を示し、ジアミン残基を表している。
【0023】
また、前記(A)成分は、脂環式構造を有することが好ましい。前記(A)成分が脂環式構造を有することで、樹脂組成物の透明性が向上し、パターン加工性が向上する。また、前記(A)成分は、樹脂組成物の溶解性が向上する点から、脂環式構造を有するカルボン酸残基を含有することがより好ましい。さらに、前記(A)成分は、硬化物とした際の耐薬品性が向上し、イオンマイグレーション耐性が向上する点から、多環構造を有する脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する有機基を有することが特に好ましい。
【0024】
多環構造を有する脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する有機基の具体的な例としては、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-4メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-7メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロペンタノン-5’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロヘキサノン-6’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0025】
また、前記カルボン酸残基としては、前記多環構造を有する脂環式テトラカルボン酸二無水物以外の酸二無水物を含んでもよい。具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシ-2-シクロペンタン酢酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0026】
また、前記(A)成分は、フェノール性水酸基を有することが好ましく、前記(A)成分において、一般式(1)および(2)中のY1およびY2は、フェノール性水酸基を有するジアミン残基を含有することが特に好ましい。フェノール性水酸基を有するジアミン残基を含有させることで、樹脂のアルカリ現像液への適度な溶解性が得られるため、露光部と未露光部の高いコントラストが得られ、所望のパターンが形成できる。
【0027】
フェノール性水酸基を有するジアミンの具体的な例としては、例えば、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、2,2’-ジトリフルオロメチル-5,5’-ジヒドロキシル-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-5,5’-ジヒドロキシベンジジンなどの芳香族ジアミンや、これらの芳香族環や炭化水素の水素原子の一部を、炭素数1~10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物、また、下記に示す構造を有するジアミンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。共重合させる他のジアミンは、そのまま、あるいは対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして用いることができる。また、これら2種以上のジアミン成分を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
【0029】
【0030】
一般式(1)および(2)中のY1およびY2は、前記以外の芳香族を有するジアミン残基を含んでもよい。これらを共重合することで、耐熱性が向上できる。芳香族を有するジアミン残基の具体的な例としては、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミンや、これらの芳香族環や炭化水素の水素原子の一部を、炭素数1~10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物などを挙げることができるが、これらに限定されない。共重合させる他のジアミンは、そのまま、あるいは対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして用いることができる。また、これら2種以上のジアミン成分を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
一般式(1)および(2)で表される構造のモル比は、重合する際に用いるモノマーのモル比から算出する方法や、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、得られた樹脂、樹脂組成物、硬化膜におけるポリアミド構造やイミド前駆体構造、イミド構造のピークを検出する方法において確認できる。
【0032】
分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造である前記(A)成分は、例えば分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造であるポリイミドの場合、重合の際に用いるジアミンに対して酸無水物の含有量を多くすることで得ることができるが、分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造である前記(A)成分を得る別の方法として、一般に末端封止剤として用いられる化合物の中から特定の化合物、具体的には、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物を用いることによっても得る事ができる。
【0033】
また、前記(A)成分の分子鎖末端を水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、チオール基、ビニル基、エチニル基、またはアリル基を有するカルボン酸または酸無水物の末端封止剤により封止することで、前記(A)成分のアルカリ水溶液に対する溶解速度や得られる硬化膜の機械特性を好ましい範囲に容易に調整することができる。また、複数の末端封止剤を反応させ、複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0034】
末端封止剤として好適な酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物などの酸無水物、3-カルボキシフェノール、4-カルボキシフェノール、3-カルボキシチオフェノール、4-カルボキシチオフェノール、1-ヒドロキシ-7-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-6-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-5-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-7-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-6-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-5-カルボキシナフタレン、3-カルボキシベンゼンスルホン酸、4-カルボキシベンゼンスルホン酸などのモノカルボン酸類およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5-ジカルボキシナフタレン、1,6-ジカルボキシナフタレン、1,7-ジカルボキシナフタレン、2,6-ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類の一方のカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN-ヒドロキシベンゾトリアゾールやイミダゾール、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物などが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0035】
これらの末端封止剤を導入した高分子化合物は、分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造の前記(A)成分となる。そして分子鎖末端がカルボン酸残基に由来する構造である前記(A)成分を得るために用いることのできる末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入された前記(A)成分を、酸性溶液に溶解し、構成単位であるアミン成分と酸無水物成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMRにより、本発明に使用された末端封止剤を容易に検出できる。これとは別に、末端封止剤が導入された樹脂成分を直接、熱分解ガスクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13C-NMRスペクトルで測定することによっても、容易に検出できる。
【0036】
本発明において、前記(A)成分は、たとえば、次の方法により合成されるが、これに限定はされない。ポリイミド構造は、ジアミンの一部を末端封止剤である1級モノアミンに置き換えて、または、テトラカルボン酸二無水物を、末端封止剤であるジカルボン酸無水物に置き換えて、公知の方法で合成される。例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とモノアミンを反応させる方法、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジカルボン酸無水物とジアミン化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミンとモノアミンと縮合剤の存在下で反応させる方法などの方法を利用して、ポリイミド前駆体を得る。その後、公知のイミド化反応法を利用してポリイミドを合成することができる。
【0037】
本発明において、前記(A)成分は、上記の方法で重合させた後、多量の水またはメタノールおよび水の混合液などに投入し、沈殿させて濾別乾燥し、単離することが好ましい。乾燥温度は40~100℃が好ましく、より好ましくは50~80℃である。この操作によって未反応のモノマーや、2量体や3量体などのオリゴマー成分が除去され、熱硬化後の膜特性を向上させることができる。
【0038】
本発明における、イミド化率は、例えば以下の方法で容易に求めることができる。まず、ポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1780cm-1付近、1377cm-1付近)の存在を確認する。次に、そのポリマーを350℃で1時間熱処理したもののイミド化率を100%のサンプルとして赤外吸収スペクトルを測定し、熱処理前後の樹脂の1377cm-1付近のピーク強度を比較することによって、熱処理前樹脂中のイミド基の含量を算出し、イミド化率を求める。熱硬化時の閉環率の変化を抑制し、低応力化の効果が得られるため、イミド化率は50%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましい。
【0039】
前記(A)成分は、本発明の樹脂組成物全体を100質量%とした場合、(A)成分の合計が15~70質量%であることが好ましく、25~60質量%であることがより好ましい。前記(A)成分を樹脂組成物全体100質量%中に15質量%以上含むことで、機械特性と熱特性を向上できる点で好ましく、70質量%以下含むことで、現像残渣を低減できる点で好ましい。
【0040】
<(B)成分>
本発明の樹脂組成物は、(B)成分としてカチオン重合性化合物を含有し、前記(B)成分が、(B1)成分としてオキセタン化合物を含有し、前記(B1)成分が、1分子中に2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含有することが重要である。前記(B1)成分が、1分子中に2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含有することで、樹脂組成物の硬化膜の引張伸度が向上し、熱衝撃試験時の基板界面との剥離やクラックを抑制できる。また、前記(B1)成分の1分子中に含まれるオキセタニル基の数は2つ以上4つ以下であることが好ましい。前記(B1)成分が1分子中に2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含有することで、樹脂組成物の硬化膜の耐熱性が向上し、またオキセタン化合物中のオキセタニル基の数が4つ以下であることで、樹脂組成物の引張伸度が向上し、熱衝撃試験時の基板界面との剥離やクラックを抑制できる点で好ましい。このようなオキセタン化合物の例として、例えばOXT-121、221(いずれも商品名、東亞合成(株)製)、OXIPA、OXBP(いずれも商品名、UBE(株)製)等が挙げられる。
【0041】
さらに、前記(B1)成分は、一般式(3)または(4)で表されるオキセタン化合物を含有することが好ましい。
【0042】
【0043】
一般式(3)中、mは1以上の整数であり、R1、R2は1価の有機基である。
【0044】
【0045】
一般式(4)中、nは1以上の整数であり、R3、R4は1価の有機基である。
【0046】
(B1)成分が、一般式(3)または(4)で表されるオキセタン化合物を含有することで、基板との密着性が向上し、現像時の剥離や熱衝撃試験時の剥離を抑制できる点で好ましい。このようなオキセタン化合物の例として、例えばOXT-121(商品名、東亞合成(株)製)やOXBP(商品名、UBE(株)製)等が挙げられる。
【0047】
(B1)成分は、1分子中にオキセタニル基を1つ有するオキセタン化合物を含有することが可能である。このようなオキセタン化合物の例として、例えばOXT-101、OXT-212(いずれも商品名、東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0048】
また(B)成分の合計を100質量%とした場合、前記(B1)成分の合計が99質量%以上100質量%以下であることが好ましい。(B1)成分の合計が99質量%以上100質量%以下であることで、樹脂組成物の保存安定性が向上する点で好ましい。
【0049】
また、(B1)成分の合計を100質量%とした場合、1分子中に2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物の合計量は、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。上記を満たすことで、熱衝撃試験耐性が向上する点で好ましい。
【0050】
また、本発明の樹脂組成物は、前記(B1)成分以外のカチオン重合性化合物、つまりオキセタン化合物以外のカチオン重合性化合物を含有してもよい。しかし、先に述べたように保存安定性の観点から、前記(B1)成分以外の(B)成分は1質量%以下であることが好ましい。
【0051】
(B1)成分以外のカチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、エチレン性不飽和化合物(ビニルエーテル及びスチレン類等)、ビシクロオルトエステル、スピロオルトカーボネート及びスピロオルトエステル等が挙げられる。
【0052】
エポキシ化合物としては公知のエポキシ化合物が使用でき、例えば芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、及び脂肪族エポキシ化合物などを用いることができる。
【0053】
芳香族エポキシ化合物としては、少なくとも1個の芳香環を有する1価又は多価のフェノール(フェノール、ビスフェノールA、フェノールノボラック及びこれらのアルキレンオキシド付加体した化合物)のグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0054】
脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個のシクロヘキセンやシクロペンテン環を有する化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、等)が挙げられる。
【0055】
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコール又はこのアルキレンオキシド付加体のポリグリシジルエーテル(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等)、脂肪族多塩基酸のポリグリシジルエステル(ジグリシジルテトラヒドロフタレート等)、長鎖不飽和化合物のエポキシ化物(エポキシ化大豆油及びエポキシ化ポリブタジエン等)が挙げられる。
その中でも、常温(20度)で液状である多官能エポキシ化合物が好ましく、当該多官能エポキシ化合物はエポキシ当量が80g/eq.以上、160g/eq.以下であることが好ましい。多官能エポキシ化合物が常温で液状であることにより、前記(A)成分との相溶性が向上し、微細なパターン加工性が得られる点で好ましい。一方、多官能エポキシ化合物のエポキシ当量が、80g/eq.以上、160g/eq.以下であることにより、硬化膜の耐熱性や耐薬品性が向上する点から好ましい。
【0056】
常温で液状である多官能エポキシ化合物であって、エポキシ当量が80g/eq.以上、160g/eq.以下であるエポキシ化合物としては、例えばTEPIC-VL、(商品名、日産化学(株)製)、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ショウフリーBATG、ショウフリーPETG(商品名、いずれも昭和電工(株)製)等があげられる。
【0057】
エチレン性不飽和化合物としては、公知のカチオン重合性単量体等が使用でき、脂肪族モノビニルエーテル、芳香族モノビニルエーテル、多官能ビニルエーテル、スチレン及びカチオン重合性窒素含有モノマーが含まれる。
【0058】
脂肪族モノビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル及びシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0059】
芳香族モノビニルエーテルとしては、2-フェノキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル及びp-メトキシフェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0060】
多官能ビニルエーテルとしては、ブタンジオール-1,4-ジビニルエーテル及びトリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0061】
スチレン類としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン及びptert-ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0062】
カチオン重合性窒素含有モノマーとしては、N-ビニルカルバゾール及びN-ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0063】
ビシクロオルトエステルとしては、1-フェニル-4-エチル-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン及び1-エチル-4-ヒドロキシメチル-2,6,7-トリオキサビシクロ-[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0064】
スピロオルトカーボネートとしては、1,5,7,11-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン及び3,9-ジベンジル-1,5,7,11-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0065】
スピロオルトエステルとしては、1,4,6-トリオキサスピロ[4.4]ノナン、2-メチル-1,4,6-トリオキサスピロ[4.4]ノナン及び1,4,6-トリオキサスピロ[4.5]デカン等が挙げられる。
【0066】
(B)成分の含有量は、(A)成分の合計を100質量部とした場合、(B)成分の合計が、50~200質量部であることが好ましく、70~150質量部であることがより好ましい。(B)成分の合計が50質量部以上であることで、カチオン重合性が向上し、現像時のヨレや剥離を抑制できる点で好ましく、200質量部以下であることで、パターン加工時の解像度が向上する点で好ましい。
【0067】
<(C)成分>
本発明の樹脂組成物は、(C)成分として光カチオン重合開始剤を含有する。前記(C)成分は、光により酸を発生しカチオン重合を生じさせるものである。
【0068】
(C)成分としては、公知の化合物を使用することができるが、樹脂組成物の保存安定性の観点から、前記(C)成分がスルホニウム塩を含有し、前記スルホニウム塩を形成するカウンターアニオンとして、ガレートイオンを含有することが好ましい。
【0069】
前記スルホニウム塩を形成するカチオンとしては、例えば、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、1-ナフチルジフェニルスルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、トリ-1-ナフチルスルホニウム、トリ-2-ナフチルスルホニウム、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(p-トリルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イル)チオフェニル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルフェニルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、5-トリルチアアンスレニウム、5-(4-エトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-(2,4,6-トリメチルフェニル)チアアンスレニウムなどのトリアリールスルホニウム;ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4-ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウムなどのジアリールスルホニウム;フェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニル(2-ナフチルメチル)メチルスルホニウム、2-ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、9-アントラセニルメチルフェナシルスルホニウムなどのモノアリールスルホニウム;ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
(C)成分であるカチオン重合性化合物がスルホニウム塩を含有する場合、そのスルホニウム塩を形成するカウンターアニオンとしては、ボレートイオン、ホスフェートイオン、ガレートイオン等が挙げられるが、上述の通り、樹脂組成物の保存安定性の観点から、スルホニウム塩を形成するカウンターアニオンとしてはガレートイオンを含有することが好ましい。ここで、ボレートイオンはホウ素を中心原子として有する錯イオンであり、ホスフェートイオンはリンを中心原子として有する錯イオンであり、ガレートイオンはガリウムを中心原子として有する錯イオンである。
【0071】
ボレートイオンとしては、例えば、ペンタフルオロフェニルボレート、トリフルオロフェニルボレート、テトラフルオロフェニルボレート、トリフルオロメチルフェニルボレート、ビス(トリフルオロメチル)フェニルボレート、ペンタフルオロエチルフェニルボレート、ビス(ペンタフルオロエチル)フェニルボレート、フルオロ-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボレート、フルオロ-ペンタフルオロエチルフェニルボレート、フルオロ-ビス(ペンタフルオロエチル)フェニルボレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
ホスフェートイオンとしては、例えば、ヘキサフルオロホスフェート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
ガレートイオンとしては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ガレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
前記(C)成分の含有量は、樹脂組成物の合計を100質量%とした場合、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。これにより、カチオン重合性化合物が十分な硬化性を示し、パターン加工性を向上させることができる。一方、樹脂組成物の保存安定性が向上する点から、(C)成分の含有量は10質量%以下が好ましく、より好ましくは8質量%以下である。
【0075】
また、(C)成分の合計100質量%において、スルホニウム塩を含有してそのスルホニウム塩を形成するカウンターアニオンとしてガレートイオンを含有する(C)成分の割合は、保存安定性の観点から、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0076】
<(D)成分>
本発明の樹脂組成物は、(D)成分としてシラン化合物を含有してもよい。シラン化合物を含有することにより、耐熱性樹脂被膜の密着性が向上する。
【0077】
前記(D)成分としては、熱衝撃試験時の基板との密着性や保存安定性の観点から、酸無水物基を有するシラン化合物であることが好ましい。酸無水物基を含有するシラン化合物として、具体的には、X-12-967C(製品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0078】
その他のシラン化合物の具体例としては、N-フェニルアミノエチルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノエチルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノブチルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどを挙げることができる。
【0079】
ここで、カチオン重合性の官能基を有するシラン化合物は、(D)成分ではなく(B)成分に該当する。カチオン重合性基としてはエポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。これらのうちエポキシ基を含有するシラン化合物として、具体的にはKBM-303、KBM-403(いずれも製品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。一般に、光カチオン重合系材料において、上記のエポキシ基を含有するシラン化合物を用いることで密着性が向上するためよく用いられる。しかし、上述したように、保存安定性の観点から(B1)成分以外の(B)成分の含有量は1質量%以下であることが好ましい。そのため、本発明の樹脂組成物において、密着性と保存安定性の両方の観点から、(D)成分として酸無水物基を有するシラン化合物を含有することが好ましい。
【0080】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、増感剤を含有してもよい。増感剤は、光を吸収し、吸収した光エネルギーを前記(C)成分に供与し、酸を発生しカチオン重合を生じさせることができる化合物である。また増感剤は、パターン加工する際の照射波長に対して吸光するため、樹脂組成物から形成された樹脂組成物被膜の透過率を下げることができる。そのため、樹脂組成物における増感剤の含有量により、任意に樹脂組成物被膜の透過率を制御することが可能となる。
【0081】
増感剤としては特に限定されないものの、アントラセン化合物が好ましく、例えば9位と10位にアルコキシ基を有するアントラセン化合物(9,10-ジアルコキシ-アントラセン誘導体)がより好ましい。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のC1~C4のアルコキシ基が挙げられる。9,10-ジアルコキシ-アントラセン誘導体は、さらに置換基を有していても良い。置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基等のC1~C4のアルキル基やスルホン酸アルキルエステル基、カルボン酸アルキルエステル基等が挙げられる。スルホン酸アルキルエステル基やカルボン酸アルキルエステルにおけるアルキルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル等のC1~C4のアルキルが挙げられる。これらの置換基の置換位置は2位が好ましい。
【0082】
増感剤の含有量は、特に制限はないが、樹脂組成物全体の質量を100質量%とした場合、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。これにより、樹脂組成物被膜の透過率を下げることが出来、セラミックス等の表面が粗い基板上においても、基板面から反射光を抑制し、微細パターンの加工を容易にする。一方、樹脂組成物から形成された樹脂組成物被膜の硬化膜の機械特性や熱特性の低下を抑制する点から、樹脂組成物全体の質量を100質量%とした場合、増感剤の含有量は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0083】
本発明の樹脂組成物は、熱架橋剤を含有してもよく、熱架橋剤としてはアルコキシメチル基、メチロール基を有する化合物が好ましい。
【0084】
アルコキシメチル基またはメチロール基を有する例としては、例えば、DML-PC、DML-PEP、DML-OC、DML-OEP、DML-34X、DML-PTBP、DML-PCHP、DML-OCHP、DML-PFP、DML-PSBP、DML-POP、DML-MBOC、DML-MBPC、DML-MTrisPC、DML-BisOC-Z、DML-BisOCHP-Z、DML-BPC、DML-BisOC-P、DMOM-PC、DMOM-PTBP、DMOM-MBPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPE、TML-BPA、TML-BPAF、TML-BPAP、TMOM-BP、TMOM-BPE、TMOM-BPA、TMOM-BPAF、TMOM-BPAP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、NIKALAC(登録商標)MX-290、NIKALAC MX-280、NIKALAC MW-100LM、NIKALAC MX-750LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。
【0085】
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、支持体との塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を含有してもよい。また、熱膨張係数の抑制や高誘電率化、低誘電率化のなどの目的で、二酸化ケイ素、二酸化チタンなどの無機粒子、あるいはポリイミドの粉末などを含有してもよい。
【0086】
<樹脂組成物被膜、樹脂組成物フィルム>
本発明の樹脂組成物は、硬化前の形状は限定されず、例えば、ワニス状やフィルム状などが挙げられる。ここでフィルム状とした本発明の樹脂組成物は、本発明においては樹脂組成物被膜ともよぶ。
【0087】
そして本発明の樹脂組成物フィルムは、本発明の樹脂組成物の形態をフィルム状として支持体と積層したもの、つまり、本発明の樹脂組成物から形成された樹脂組成物被膜及び支持体を有する樹脂組成物フィルムである。そのため本発明の樹脂組成物フィルムは、支持体上に形成されたフィルム状、つまり支持体上に本発明の樹脂組成物から形成された樹脂組成物被膜を有する樹脂組成物フィルムである。ワニス状で用いる場合は、前記(A)~(C)成分および必要に応じ加えられる成分を有機溶媒に溶解させたものを用いることができる。また、樹脂組成物フィルムは、例えば本発明の樹脂組成物を支持体上に塗布し、次いでこれを必要により乾燥することにより得られる。
【0088】
本発明の樹脂組成物被膜は、後述する本発明の硬化膜を有する半導体装置を作製する際に、容易に厚膜の層を形成できる点で、厚みが30μm以上であることが好ましい。また、膜厚のばらつきを抑制できる点で、樹脂組成物被膜の厚みは70μm以下であることが好ましい。
【0089】
次に、本発明の樹脂組成物組成物を用いて樹脂組成物フィルムを作製する方法について説明する。本発明の樹脂組成物フィルムは樹脂組成物の溶液(ワニス)を支持体上に塗布し、次いでこれを必要により乾燥することにより得られる。樹脂組成物ワニス(樹脂組成物ワニスとは、ワニス状の本発明の樹脂組成物を意味する。)は、樹脂組成物に有機溶剤を添加することで得られる。ここで使用される有機溶剤としては、樹脂組成物を溶解するものであればよい。
【0090】
有機溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2-ヘプタノンなどのケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノ-ル、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、その他、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0091】
また、樹脂組成物ワニスを濾紙やフィルターを用いて濾過しても良い。濾過方法は特に限定されないが、保留粒子径0.4μm~10μmのフィルターを用いて加圧濾過により濾過する方法が好ましい。
【0092】
本発明の樹脂組成物フィルムは、支持体上に形成されて用いられる。支持体は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルムなど、通常市販されている各種のフィルムが使用可能である。支持体と樹脂組成物フィルムとの接合面には、密着性と剥離性を向上させるために、シリコーン、シランカップリング剤、アルミキレート剤、ポリ尿素などの表面処理を施してもよい。また、支持体の厚みは特に限定されないが、作業性の観点から、10~100μmの範囲であることが好ましい。
【0093】
また、本発明の樹脂組成物フィルムは、表面を保護するために、膜上に保護フィルムを有してもよい。これにより、大気中のゴミやチリ等の汚染物質から感光性樹脂組成物フィルム表面を保護することができる。保護フィルムとしては、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。保護フィルムは、樹脂組成物フィルムとの接着力が小さいものが好ましい。
【0094】
樹脂組成物ワニスを支持体に塗布する方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコー/ター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スリットダイコーターなどの方法が挙げられる。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が、0.5μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0095】
乾燥には、オーブン、ホットプレート、赤外線などを使用することができる。乾燥温度および乾燥時間は、有機溶媒を揮発させることが可能な範囲であればよく、感光性樹脂組成物フィルムが未硬化または半硬化状態となるような範囲を適宜設定することが好ましい。具体的には、40℃から120℃の範囲で1分から数十分行うことが好ましい。また、これらの温度を組み合わせて段階的に昇温してもよく、例えば、70℃、80℃、90℃で各1分ずつ熱処理してもよい。
【0096】
<硬化膜、半導体装置>
次に、本発明の樹脂組成物ワニス、またはそれを用いた樹脂組成物フィルムをパターン加工する方法、および他の部材に熱圧着する方法について、例を挙げて説明する。
【0097】
まず、本発明の樹脂組成物、またはそれを用いた樹脂組成物フィルムを用いて、基板上に樹脂組成物被膜を形成する方法について説明する。樹脂組成物ワニスを用いる場合は、まずワニスを基板上に塗布する。塗布方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷などの方法が挙げられる。また、塗布膜厚は、塗布手法、樹脂組成物の固形分濃度および粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.5μm以上100μm以下になるように塗布することが好ましい。次に、樹脂組成物ワニスを塗布した基板を乾燥して、樹脂組成物被膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用することができる。乾燥温度および乾燥時間は、有機溶媒を揮発させることが可能な範囲であればよく、樹脂組成物被膜が未硬化または半硬化状態となるような範囲を適宜設定することが好ましい。具体的には、50~150℃の範囲で1分から数時間行うのが好ましい。
【0098】
一方、樹脂組成物フィルムを用いる場合は、保護フィルムを有する場合にはこれを剥離し、樹脂組成物フィルムと基板を対向させ、熱圧着により貼り合わせて、樹脂組成物被膜を得る。熱圧着は、熱プレス処理、熱ラミネート処理、熱真空ラミネート処理等によって行うことができる。貼り合わせ温度は、基板への密着性、埋め込み性の点から40℃以上が好ましい。また、貼り合わせ時に樹脂組成物フィルムが硬化し、露光・現像工程におけるパターン形成の解像度が悪くなることを防ぐために、貼り合わせ温度は150℃以下が好ましい。
【0099】
いずれの場合にも、用いられる基板は、シリコンウェハ、セラミックス類、ガリウムヒ素、有機系回路基板、無機系回路基板、およびこれらの基板に回路の構成材料が配置されたものなどが挙げられるが、これらに限定されない。有機系回路基板の例としては、ガラス布・エポキシ銅張積層板などのガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板などのコンポジット銅張積層板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板などの耐熱・熱可塑性基板、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板などのフレキシブル基板が挙げられる。また、無機系回路基板の例は、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板などのセラミックス基板、アルミニウムベース基板、鉄ベース基板などの金属系基板が挙げられる。回路の構成材料の例は、銀、金、銅などの金属を含有する導体、無機系酸化物などを含有する抵抗体、ガラス系材料および/または樹脂などを含有する低誘電体、樹脂や高誘電率無機粒子などを含有する高誘電体、ガラス系材料などを含有する絶縁体などが挙げられる。
【0100】
次に、上記方法によって形成された樹脂組成物被膜上に、所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いるのが好ましい。樹脂組成物フィルムにおいて、支持体がこれらの光線に対して透明な材質である場合は、樹脂組成物フィルムから支持体を剥離せずに露光を行ってもよい。
【0101】
パターンを形成するには、露光後、現像液にて露光部を除去する。現像液としては、水酸化テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを含有してもよい。
【0102】
現像は、上記の現像液を被膜面にスプレーする、被膜面に現像液を液盛りする、現像液中に浸漬する、あるいは浸漬して超音波をかけるなどの方法によって行うことができる。現像時間や現像ステップ現像液の温度などの現像条件は、露光部が除去されパターン形成が可能な条件であればよい。
【0103】
現像後は水にてリンス処理を行うことが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしても良い。
【0104】
また、必要に応じて現像前にベーク処理を行ってもよい。これにより、現像後のパターンの解像度が向上し、現像条件の許容幅が増大する場合がある。このベーク処理温度は50~180℃の範囲が好ましく、特に60~120℃の範囲がより好ましい。時間は5秒~数時間が好ましい。
【0105】
パターン形成後、樹脂組成物被膜中には未反応のカチオン重合性化合物や光カチオン重合開始剤が残存している。このため、熱圧着あるいは硬化の際にこれらが熱分解しガスが発生することがある。これを避けるため、パターン形成後の樹脂組成物被膜の全面に上述の露光光を照射し、光カチオン重合開始剤から酸を発生させておくことが好ましい。こうすることによって、熱圧着あるいは硬化の際に、未反応のカチオン重合性化合物の反応が進行し、熱分解由来のガスの発生を抑制することができる。
【0106】
現像後、150℃~500℃の温度を加えて熱架橋反応を進行させる。架橋により、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。この加熱処理の方法は、温度を選び、段階的に昇温する方法や、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間~5時間実施する方法を選択できる。前者の一例として、130℃、200℃で各30分ずつ熱処理する方法が挙げられる。後者の一例として室温より400℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。
【0107】
本発明の硬化膜は、本発明の樹脂組成物または本発明の樹脂組成物被膜を硬化した硬化膜である。本発明の樹脂組成物や樹脂組成物フィルム中の樹脂組成物被膜を硬化した本発明の硬化膜は、半導体装置等の電子部品に使用することができる。
【0108】
本発明の半導体装置とは、本発明の硬化膜を有する半導体装置である。ここで半導体装置とは、半導体素子の特性を利用することで機能し得る装置全般を指す。半導体素子を基板に接続した電気光学装置や半導体回路基板、複数の半導体素子を積層したもの、並びにこれらを含む電子装置は、全て半導体装置に含まれる。また、半導体素子を接続するための多層配線板等の電子部品も半導体装置に含める。具体的には、インダクタの層間絶縁膜、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の表面保護膜、半導体素子と配線の間の層間絶縁膜、複数の半導体素子の間の層間絶縁膜、高密度実装用多層配線の配線層間の層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層、プローブカードの層間絶縁膜、磁気センサの層間絶縁膜などの用途に好適に用いられるが、これに制限されず、様々な用途に用いることができる。
【実施例0109】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0110】
<熱衝撃試験前後のクロスカット試験>
各実施例および比較例で作製した樹脂組成物フィルムの保護フィルムを剥離し、該剥離面を、5cm角のシリコン基板上に、真空ダイアフラム式ラミネータ((株)名機製作所製、MVLP-500/600)を用いて、上下の熱盤温度80℃、真空引き時間20秒、真空プレス時間30秒、貼付圧力0.5MPaの条件でラミネートし、シリコン基板上に膜厚45μmの樹脂組成物被膜を形成した。
【0111】
続いて、露光装置にi線バンドパスフィルターを備え付けた超高圧水銀灯を用いて、露光量1500mJ/cm2(i線換算)で露光を行った。露光後、ホットプレートで90℃、10分間、露光後加熱を行った。その後、イナートオーブン(光洋サーモシステム(株)製、INL-60)を用いて、N2雰囲気下(酸素濃度20ppm以下)、室温から200℃まで60分かけて昇温したのち、200℃で60分間熱処理し、シリコンウェハ上に形成された樹脂組成物被膜の硬化膜を得た。得られた硬化膜にカッターで1mm間隔の格子状に切れ込みを入れ、テープで剥離するクロスカット試験を行った。その後、冷熱衝撃試験機(エスペック(株)製、TSE-11)を用いて、-65~150℃の温度範囲で熱衝撃を与え、これを50サイクル、100サイクル、200サイクル繰り返したサンプルにおいても、テープで剥離する試験を行った。剥離試験の結果は下記のように4段階で評価した。
A+:いずれの格子も剥がれが見られなかった。
A:BやCに該当しない場合であって、格子の交差点付近にわずかな剥がれが見られた。
B:Cに該当しない場合であって、格子の線に沿った部分的な剥がれが見られた。
C:全面的に剥がれていた。
【0112】
<保存安定性の評価>
各実施例および比較例で作製した樹脂組成物フィルムにおいて、レオメーター((株)アントンパール製、MCR-302)を用いて、周波数0.2Hz、ひずみ量1%の条件で溶融粘度を測定した。このとき80℃での溶融粘度をη0とした。続いて、樹脂組成物フィルムを25℃で1週間保管し、前記と同様にして溶融粘度を測定した。このときの80℃での溶融粘度をη1とした。溶融粘度η0とη1を用いて、次式より溶融粘度の変化率を計算した。
【0113】
式(1): (溶融粘度の変化率)=100*η1/η0 (%)
溶融粘度の変化率は下記の4段階で評価した。
A+:120%以下
A:121%~150%
B:151%~200%
C:201%以上
各実施例および比較例で用いた化合物は以下の方法により合成した。
【0114】
合成例1 フェノール性水酸基含有ジアミン化合物(a)の合成
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以降BAHFと呼ぶ)(18.3g、0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド(17.4g、0.3モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド(20.4g、0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色個体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0115】
得られた白色個体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセロソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるフェノール性水酸基含有ジアミン化合物(a)を得た。得られた個体はそのまま反応に使用した。
【0116】
【0117】
合成例2 ポリイミド(A-1)の合成
乾燥窒素気流下、BAHF(29.30g、0.08モル)をGBL80gに添加し、120℃で攪拌溶解した。次に、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物(以下、TDA-100とする)(30.03g、0.1モル)をGBL20gとともに加えて、120℃で1時間攪拌し、次いで200℃で4時間攪拌して反応溶液を得た。次に、反応溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で5時間乾燥した。
【0118】
合成例3 ポリアミドイミド(A-2)の合成
乾燥窒素気流下、ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(a)(15.72g、0.04モル)およびBAHF(14.65g、0.04モル)をGBL100gに添加し、120℃で攪拌した。次に、TDA-100(30.03g、0.1モル)をGBL20gとともに加えて、120℃で1時間攪拌し、次いで200℃で4時間攪拌して反応溶液を得た。次に、反応溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で5時間乾燥した。
【0119】
実施例1
(A)成分としてポリイミド(A-1)10g、(B1)成分としてOXT-221(商品名、東亞合成(株)製)10g、(C)成分としてCPI-310FG(商品名、サンアプロ(株)製)0.2g、(D)成分としてX-12-967C(商品名、信越化学工業(株)製)0.4gをGBLに溶解した。溶媒の添加量は、溶媒以外の添加物を固形分とし、固形分濃度が60重量%となるように調整した。その後、保留粒子径1μmのフィルターを用いて加圧ろ過し、樹脂組成物ワニスを得た。
【0120】
得られた樹脂組成物ワニスを、コンマロールコーターを用いて、厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、120℃で8分間乾燥を行った後、保護フィルムとして、厚さ30μmのPPフィルムをラミネートし、樹脂組成物フィルムを得た。樹脂組成物フィルムの膜厚は45μmとなるように調整した。得られた樹脂組成物フィルムを用いて、前記のように、熱衝撃試験、保存安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0121】
実施例2~11
(A)~(C)成分および、その他成分を下記の構造の化合物に変更し、それらの混合比を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物フィルムを作製し、前記のように、熱衝撃試験、保存安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0122】
比較例1~4
(A)~(C)成分および、その他成分を下記の構造の化合物に変更し、それらの混合比を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物フィルムを作製し、前記のように、熱衝撃試験、保存安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
表1中に記載の「(B1)成分の合計の含有量(質量%)」とは、(B)成分の合計を100質量%とした場合の(B1)成分の合計の質量%を表す。また、「(B)成分の合計の含有量(質量部)」は、(A)成分の合計を100質量部とした場合の(B)成分の合計の質量部を表す。
【0130】
表1、表2から明らかであるように、2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含有しない比較例1、2は、熱衝撃試験後の基板との密着性が悪く、熱衝撃試験耐性が劣っており、さらに25℃で一週間保管した際の溶融粘度の変化率が大きく、保存安定性が劣っていた。
【0131】
これに対し、本実施例の樹脂組成物は、十分な熱衝撃試験耐性と保存安定性を有していることが示された。
【0132】
なお、各合成例、実施例および比較例で用いた化合物の構造を下記に示した。
【0133】
(A)高分子化合物
A-1:ポリイミド
A-2:ポリアミドイミド
(B1)オキセタン化合物
B1-1:OXT-221(東亞合成(株)製)、オキセタニル基を2つ有する化合物
B1-2:OXT-121(東亞合成(株)製)、オキセタニル基を2つ有し、一般式(3)で表される化合物)
B1-3:OXBP(UBE(株)製)、オキセタニル基を2つ有し、一般式(4)で表される化合物)
B1-4:EHO(UBE(株)製)、オキセタニル基を1つ有する化合物)
(B)オキセタン化合物以外のカチオン重合性化合物
B-1:BATG(昭和電工(株)製、エポキシ化合物)
B-2:KBM-403(信越化学工業(株)製、エポキシ基を含有するシラン化合物)
(C)カチオン重合開始剤
C-1:CPI-310FG(サンアプロ(株)製、ガレートイオンを含有するスルホニウム塩)
C-2:CPI-310B(サンアプロ(株)製、ボレートイオンを含有するスルホニウム塩)
(D)シラン化合物
D-1:X-12-967C(信越化学工業(株)製、酸無水物基を含有するシラン化合物)
D-2:KBM-103(信越化学工業(株)製)