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特開2024-46878エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046878
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240329BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20240329BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240329BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20240329BHJP
   C08K 5/5397 20060101ALI20240329BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/32
C08K3/22
C08G59/32
C08K5/5397
C08J5/24 CFC
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152223
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 明彦
(72)【発明者】
【氏名】坂田 宏明
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB10
4F072AB28
4F072AB29
4F072AD31
4F072AD46
4F072AE01
4F072AE07
4F072AF03
4F072AF06
4F072AF28
4F072AG03
4F072AH04
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL05
4F072AL11
4F072AL17
4J002CD041
4J002CD131
4J002CD132
4J002DE070
4J002DE100
4J002DE130
4J002DE146
4J002EW117
4J002EW147
4J002FD016
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD147
4J002GC00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J036AA01
4J036AA05
4J036AF06
4J036AH01
4J036AH07
4J036DC02
4J036DC41
4J036DD05
4J036DD07
4J036HA12
4J036JA11
(57)【要約】
【課題】
本発明は、硬化させることにより、難燃性、力学特性および耐熱性に優れた樹脂硬化物を得ることができるエポキシ樹脂組成物、並びに、それを用いたプリプレグおよび耐火性に優れた繊維強化複合材料を提供することを目的とする。
【解決手段】
上記目的を達成するエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物は、[A]4員環以上の環構造を一つ以上有する2官能以下のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、[B]3官能以上のエポキシ樹脂、[C]特定の構造を有するリン系化合物または赤リンからなる群から選ばれるリン系難燃剤、[D]金属水酸化物からなるフィラーを含むものであり、エポキシ樹脂の総量100質量部に対して、成分[A]および成分[B]のそれぞれが所定の配合量含まれ、樹脂組成物中において、成分[D]の含有率のリン原子含有率に対する比が特定範囲のものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分[A]~[D]を含むエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂の総量100質量部に対して、成分[A]を10~50質量部含み、成分[B]を50~90質量部含み、樹脂組成物中の成分[D]の質量含有率(%)のリン原子含有率(%)に対する比が1以上である。
[A]4員環以上の環構造を一つ以上有する2官能以下のグリシジルアミン型エポキシ樹脂
[B]3官能以上のエポキシ樹脂
[C]下記一般式(1)もしくは(2)で表されるリン系化合物または赤リンから選ばれるリン系難燃剤
[D]金属水酸化物からなるフィラー
【化1】
【化2】
(一般式(1)中、Rは、炭素数1~4の炭化水素基を表す。一般式(2)中、Rは、水素原子、またはアミノ基を表す。)
【請求項2】
180℃の温度で2時間硬化させて得られる樹脂硬化物について、
空気下の600℃におけるチャー生成率が20%以上50%未満、曲げ弾性率が5GPa以上7GPa未満、かつ、ガラス転移温度が180℃以上210℃未満である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
成分[D]が水酸化アルミニウムからなるフィラーである、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
成分[C]が一般式(1)または(2)で表されるリン系難燃剤である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
成分[A]が下記一般式(3)または(4)で表される構造を有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化3】
(一般式(3)中、R3は、水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、炭素数3~6の脂環式炭化水素基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、アシル基、トリフルオロメチル基およびニトロ基から選ばれる一つを表す。mは1~4の整数を表す。Xは,水素原子、または4員環以上の環構造を有する置換基を表す。)
【化4】
(一般式(4)中、Rは、水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、炭素数3~6の脂環式炭化水素基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、アシル基、トリフルオロメチル基およびニトロ基から選ばれる一つを表す。nは1~4の整数を表す。Yは,水素原子、または4員環以上の環構造を有する置換基を表す。)
【請求項6】
さらに成分[E]熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
さらに成分[F]熱可塑性樹脂を主成分とした粒子を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるプリプレグ。
【請求項9】
請求項8に記載のプリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料。
【請求項10】
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物および強化繊維を含む、繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび耐火性に優れた繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維、ガラス繊維などを強化繊維とし、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とした複合材料において、強化繊維を樹脂に含浸させた中間基材、いわゆるプリプレグが、釣竿、テニスやバドミントンのラケットなどスポーツ・レジャー用品から、各種工業機器、土木建築、航空宇宙分野まで、幅広い用途に使用されている。しかし、大抵の複合材料に用いられる熱硬化性樹脂は燃えやすく、火災の原因となるため、特に航空機や車両などの構造材料においては、着火燃焼による事故を防ぐために、難燃性の複合材料が求められている。また、電子・電気機器においても内部からの発熱により、筐体や部品が発火燃焼して、事故に繋がるのを防ぐために、材料の難燃化が求められている。
【0003】
複合材料を難燃化する手段として、マトリックス樹脂のチャー形成を促進して、樹脂が熱分解した際の分解ガスの拡散を抑制する方法、樹脂の燃焼時の発熱を抑制する方法、もしくは厚み方向の放熱を促進させて、燃焼部表面の蓄熱を抑制する方法が挙げられる。
【0004】
マトリックス樹脂のチャー形成を促進する手段として、多くの場合、材料を燃えにくくする添加剤、いわゆる難燃剤を添加する。難燃剤として、リン化合物が一般的に用いられ、いくつかのリン化合物が工業的に利用されている。リン化合物は、燃焼中に脱水炭化作用のあるポリリン酸に変化し、これにより、チャー形成が促進されると考えられている。その様なリン化合物を用いた難燃化技術として、赤リンやリン酸エステルなどの添加型難燃剤をエポキシ樹脂組成物に添加する技術、あるいは分子内にリン原子を含み、樹脂と反応する反応型難燃剤を用いることにより、樹脂の架橋構造にリン原子を導入する技術がある。
【0005】
また,マトリックス樹脂の燃焼時の発熱を抑制する手段として、多くの場合、吸熱剤を添加する。吸熱剤として、金属水酸化物が一般的に用いられ、工業的に利用されている。
【0006】
特許文献1では、特定の構造を有する反応性希釈剤と特定の構造を有するリン原子を含むアミン系硬化剤を含む樹脂組成物を用いた難燃化技術により、優れた粘度安定性とチャー形成促進効果を有すると共に、力学特性にも優れる材料を得る技術が報告されている。
【0007】
特許文献2には、特定のエポキシ樹脂と難燃剤として赤リンと水酸化アルミニウムを含む耐火性樹脂を得る技術が報告されている。
【0008】
特許文献3には、積層体の片方の最表層付近に無機フィラーを添加することにより、難燃性と力学特性に優れた積層体を得る技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2019/082595号
【特許文献2】国際公開第2021/153644号
【特許文献3】国際公開第2022/154041号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの特許文献に記載されるエポキシ樹脂とリン系難燃剤や無機フィラーを用いる場合には、難燃性、力学特性、耐熱性を全て満足する樹脂硬化物を得ることは困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決すること、すなわち、難燃性、力学特性および耐熱性に優れた樹脂硬化物を得ることができるエポキシ樹脂組成物、並びに、それを用いたプリプレグおよび耐火性に優れた繊維強化複合材料を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記目的を達成するために次の1~7の構成を有する。
1. 下記の成分[A]~[D]を含むエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂の総量100質量部に対して、成分[A]を10~50質量部含み、成分[B]を50~90質量部含み、樹脂組成物中の成分[D]の質量含有率(%)のリン原子含有率(%)に対する比が1以上である。
[A]4員環以上の環構造を一つ以上有する2官能以下のグリシジルアミン型エポキシ樹脂
[B]3官能以上のエポキシ樹脂
[C]下記一般式(1)もしくは(2)で表されるリン系化合物または赤リンから選ばれるリン系難燃剤
[D]金属水酸化物からなるフィラー
【0013】
【化1】
【0014】
【化2】
【0015】
(一般式(1)中、Rは、炭素数1~4の炭化水素基を表す。一般式(2)中、Rは、水素原子、またはアミノ基を表す。)
2. 180℃の温度で2時間硬化させて得られる樹脂硬化物について、
空気下の600℃におけるチャー生成率が20%以上50%未満、曲げ弾性率が5GPa以上7GPa未満、かつ、ガラス転移温度が180℃以上210℃未満である、上記1に記載のエポキシ樹脂組成物。
3. 成分[D]が水酸化アルミニウムからなるフィラーである、上記1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
4. 成分[C]が一般式(1)または(2)で表されるリン系難燃剤である、上記1~3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
5.成分[A]が下記一般式(3)または(4)で表される構造を有する、上記1~4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0016】
【化3】
【0017】
(一般式(3)中、R3は、水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、炭素数3~6の脂環式炭化水素基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、アシル基、トリフルオロメチル基およびニトロ基から選ばれる一つを表す。mは1~4の整数を表す。Xは,水素原子、または4員環以上の環構造を有する置換基を表す。)
【0018】
【化4】
【0019】
(一般式(4)中、Rは、水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、炭素数3~6の脂環式炭化水素基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、アシル基、トリフルオロメチル基およびニトロ基から選ばれる一つを表す。nは1~4の整数を表す。Yは,水素原子、または4員環以上の環構造を有する置換基を表す。)
6.さらに成分[E]熱可塑性樹脂を含む、上記1~5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
7.さらに成分[F]熱可塑性樹脂を主成分とした粒子を含む、上記1~6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0020】
また、本発明のプリプレグ、または繊維強化複合材料は、それぞれ次の8、または9~10の構成を有する。
8.上記1~7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるプリプレグ。
9.上記8に記載のプリプレグを硬化してなる繊維強化複合材料。
10.上記1~7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物と、強化繊維とを含む繊維強化複合材料。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、硬化させることにより、難燃性、力学特性および耐熱性に優れた樹脂硬化物を得ることができるエポキシ樹脂組成物、並びに、それを用いたプリプレグおよび耐火性に優れた繊維強化複合材料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、[A]4員環以上の環構造を一つ以上有する2官能以下のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、[B]3官能以上のエポキシ樹脂、[C]上記一般式(1)もしくは(2)で表されるリン系化合物または赤リンから選ばれるリン系難燃剤、[D]金属水酸化物からなるフィラーを含む。
【0023】
成分[A]は、4員環以上の環構造を一つ以上有する2官能以下のグリシジルアミン型エポキシ樹脂である。なかでも、成分[A]が上記一般式(3)または(4)で表されることが、優れた難燃性と力学特性を得られることから、好ましい。
【0024】
成分[A]の具体例として、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-4-フェノキシアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジン、N,N-ジグリシジル-m-トルイジン、N,N-ジグリシジル-p-トルイジン、N,N-ジグリシジル-2,3-キシリジン、N,N-ジグリシジル-2,4-キシリジン、N,N-ジグリシジル-3,4-キシリジン、などのモノアミン型エポキシ樹脂、N-グリシジルフタルイミド、N-グリシジル-4-メチルフタルイミド、などのイミド型エポキシ樹脂が挙げられる。なかでもモノアミン型エポキシ樹脂は、耐熱性に優れており、また、多くが液状であることから、反応性希釈剤として用いることもでき、無機フィラーを添加したときに樹脂組成物の粘度を適正な範囲に制御することが比較的容易で、優れた樹脂含浸性が得られやすいため、特に好ましい。これらの成分[A]のエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、また2種類以上を混合して用いることも可能である。
【0025】
本発明における成分[A]の含有量は、エポキシ樹脂総量100質量部に対して、10~50質量部である。20~40質量部であると、高い力学特性および耐熱性が得られることから、好ましい。
【0026】
本発明において用いられる成分[B]は3官能以上のエポキシ樹脂である。3官能または4官能であることが好ましい。
成分[B]の具体例として、以下のエポキシ樹脂が挙げられる。すなわち、3官能エポキシ樹脂として、N,N,O-トリグリシジル-m-アミノフェノール、N,N,O-トリグリシジル-p-アミノフェノール、N,N,O-トリグリシジル-4-アミノ-3-メチルフェノール、などのアミノフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。4官能エポキシ樹脂として、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-2,2’-ジエチル-4,4’-メチレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、などのジアミン型エポキシ樹脂を挙げることができる。なかでも、4官能のジアミン型エポキシ樹脂は、1分子中に4個のグリシジル基を有するため、高い耐熱性と弾性率を有する硬化物が得られる。そのため、航空宇宙用途に好適に用いられる。
本発明における成分[B]の含有量は、エポキシ樹脂総量100質量部に対して、50~90質量部である。60~80質量部であることが、優れた耐熱性と力学特性を確保する点から好ましい。
【0027】
本発明の成分[C]は、リン系の難燃剤である。上記一般式(1)もしくは一般式(2)で表される構造を有するリン系化合物が挙げられ、これらはアミン系硬化剤としても作用する。または、赤リンであってもよい。かかるリン系難燃剤をエポキシ樹脂組成物に添加することにより、チャー形成が促進される。
【0028】
一般式(1)または(2)で表されるリン系化合物について、これらの1つを用いた場合、曲げ強度などにおいて、優れた力学特性を有する硬化物が得られる点から好ましい。
炭素数1~4の炭化水素基を表す。
【0029】
一般式(1)において、Rは炭素数1~4の炭化水素基を表すが、Rの炭素数が減少すると、一般式(1)で表される構造を有するアミン系硬化剤の疎水性が低下するため、得られる樹脂硬化物の耐吸湿性が低下することがある。そのため、Rの炭素数は4であることが好ましい。
【0030】
本発明における成分[C]の赤リンについて、未処理の赤リンのみでなく、赤リンの表面を金属水和物および樹脂を用いて被覆し安定性を高めたものも用いられる。金属水和物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンなどが挙げられる。樹脂の種類、被覆量について特に限定はないが、樹脂としては、本発明で用いられるエポキシ樹脂との親和性が高いフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレートなどが好ましい。また、高温での混練時などにホスフィンガスが発生することを抑制するために、被覆量は赤リンに対して1質量%以上が好ましい。かかる被覆量は安定性という意味では多ければ多いほど好ましいが、難燃性の観点から30質量%を超えないことが好ましい。
【0031】
一般式(1)で表される構造を有するアミン系硬化剤の例として、ビス(4-アミノフェニル)メチルホスフィンオキサイド、ビス(3-アミノフェニル)メチルホスフィンオキサイド、ビス(2-アミノフェニル)メチルホスフィンオキサイド、ビス(4-アミノフェニル)エチルホスフィンオキサイド、ビス(3-アミノフェニル)エチルホスフィンオキサイド、ビス(2-アミノフェニル)エチルホスフィンオキサイド、ビス(4-アミノフェニル)n-プロピルホスフィンオキサイド、ビス(3-アミノフェニル)n-プロピルホスフィンオキサイド、ビス(4-アミノフェニル)イソプロピルホスフィンオキサイド、ビス(3-アミノフェニル)イソプロピルホスフィンオキサイド、ビス(4-アミノフェニル)n-ブチルホスフィンオキサイド、ビス(3-アミノフェニル)n-ブチルホスフィンオキサイド、ビス(4-アミノフェニル)イソブチルホスフィンオキサイド、ビス(3-アミノフェニル)イソブチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。なかでも、力学特性、難燃性および耐湿熱性に優れる点から、ビス(3-アミノフェニル)n-ブチルホスフィンオキサイドが好ましく用いられる。一般式(2)で表される構造を有するアミン系硬化剤の例として、トリス(4-アミノフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(3-アミノフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(2-アミノフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(4-アミノフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(3-アミノフェニル)フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。なかでも、力学特性および耐熱性に優れる点から、トリス(3-アミノフェニル)ホスフィンオキサイド、あるいはビス(3-アミノフェニル)フェニルホスフィンオキサイドが好ましく用いられ、この両化合物のうち後者がさらに好ましく用いられる。
【0032】
本発明における成分[C]の含有量は、赤リンであれば、エポキシ樹脂総量100質量部に対して、1~10質量部であることが、樹脂組成物の粘度安定性、得られる硬化物や繊維強化複合材料の難燃性と力学特性を確保する点から好ましく、さらに好ましくは3~6質量部である。また、一般式(1)または(2)で表される構造を有するアミン系硬化剤から選ばれるリン系難燃剤であれば、エポキシ樹脂総量100質量部に対して、10~100質量部であることが、樹脂組成物の粘度安定性、得られる硬化物や繊維強化複合材料の難燃性と力学特性を確保する点から好ましく、さらに好ましくは25~100質量部である。
【0033】
本発明において、エポキシ樹脂組成物中のリン原子含有率が0.1~5.0質量%であると好ましく、得られる硬化物や繊維強化複合材料の難燃性と力学特性を両立できる。前記リン原子含有率は、好ましくは、0.5~4.0質量%である。ここでいうリン原子含有率(質量%)は、全エポキシ樹脂組成物中のリン原子の質量(g)/全エポキシ樹脂組成物の質量(g)×100で求められる。リン原子の質量は、成分[C]が赤リンの場合、赤リン中のリン原子の質量%である。成分[C]が上記式(1)または(2)の構造のアミン系硬化剤の場合、その1分子あたりのリン原子の質量を、リン原子の原子量から求め、これに、全エポキシ樹脂組成物中に含まれる、成分[C]の化合物の分子数をモル数から求めて掛け算することにより得られる。
【0034】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、上記のとおり、成分[C]の一般式(1)または(2)で表される構造のリン系化合物は、アミン系硬化剤として作用するが、これら以外の硬化剤を含有することも出来る。赤リンは、硬化剤としての作用を有し得ないことから、成分[C]として赤リンを用いる場合は、一般式(1)または(2)のリン化合物以外の硬化剤を用いることが特に好ましい。ここでいう硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤であり、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物である。そのような硬化剤の例として、ジシアンジアミド、芳香族ポリアミン、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。このなかでも、芳香族ポリアミンを硬化剤として用いると、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物が得られやすくなる。特に、芳香族ポリアミンのなかでも、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホンなど、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体を用いることにより、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物が得られやすくなる。
【0035】
上記成分[C]以外の硬化剤の含有量は、成分[C]の硬化剤と成分[C]以外の硬化剤を含む硬化剤総量100質量部に対して、90質量部以下であることが、得られる硬化物や繊維強化複合材料の難燃性を確保しやすくなる点から好ましい。
【0036】
本発明の成分[D]は、金属水酸化物からなるフィラーであり、燃焼時に分解して、吸熱効果を発現することにより、燃焼による発熱を抑制すると考えられる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、水酸化スズなどが挙げられる。吸熱効果の点から、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0037】
成分[D]としては、通常、粒子状のものを使用することができ、粒径は特に限定されないが、難燃性と分散性の観点から、算術平均からもとめた平均径が0.8~10.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.8~3.0μmである。かかる粒径は、レーザー散乱式粒子径分布測定により測定する。エポキシ樹脂組成物の組成にもよるが、難燃性とタック性のバランスから、成分[D]の含有量は、エポキシ樹脂の総量100質量部に対し、5~60質量部であることが好ましく、より好ましくは10~55質量部であり、さらに好ましくは15~50質量部である。
【0038】
上記によって求められるリン原子含有率(%)に対する成分[D]の樹脂組成物総量中の質量%の比(以下、[D]/Pで表される質量比。以下同様)は1以上である。なお、この場合のリン原子含有率は、上記した好ましい範囲に特に限定されない。これにより、成分[D]の熱分解時の吸熱により燃焼初期の炭化物の分解を抑えることができるため、リンによる炭化物(チャー)形成をより効果的に促進させることができる。また、[D]/Pはリンによる炭化物形成と金属水酸化物による吸熱効果のバランスから25未満であることが好ましい。
【0039】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、180℃の温度で2時間硬化させて得られる樹脂硬化物について、空気下の600℃におけるチャー生成率が20%以上50%未満であることが好ましい。さらに好ましくは、上記チャー生成率が30%以上50%未満である。この範囲であると、分解ガスの熱拡散が十分に抑制されて耐火性に優れた繊維強化複合材料を得ることができる。ここで、空気下の600℃におけるチャー生成率とは、熱重量測定装置を用いて、空気雰囲気下で室温から10℃/minの昇温速度で加熱した場合の600℃到達時における熱分解残渣の残存率である。
【0040】
また、本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、上記の条件で硬化させて得られる樹脂硬化物について、曲げ弾性率が5GPa以上7GPa未満であることが好ましい。さらに好ましくは、5.5GPa以上7GPa未満である。この範囲であると、圧縮特性に優れた繊維強化複合材料を得ることができる。
【0041】
さらに、本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、上記の条件で硬化させて得られる樹脂硬化物について、ガラス転移温度が180℃以上210℃未満であることが好ましい。さらに好ましくは、190℃以上210℃未満である。この範囲であると、耐熱性に優れた繊維強化複合材料を得ることができる。
【0042】
本発明においては、得られるプリプレグのタック性の制御、エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸する際の樹脂の流動性の制御、および得られる繊維強化複合材料に靱性を付与するために、さらに成分[E]熱可塑性樹脂をエポキシ樹脂組成物に溶解して用いることができる。かかる成分[E]の熱可塑性樹脂としては、使用するエポキシ樹脂に常温で可溶な化合物であればよいが、ポリアリールエーテル骨格で構成される熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、例えば、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルスルホンなどを挙げることができる。これらのポリアリールエーテル骨格で構成される熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、適宜併用して用いてもよい。なかでも、ポリエーテルスルホンおよびポリエーテルイミドは、得られる繊維強化複合材料の耐熱性や力学物性を低下することなく靭性を付与することができるため好ましく用いることができる。
【0043】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、得られる繊維強化複合材料の耐衝撃性を向上させるために、成分[F]として、熱可塑性樹脂を主成分とする粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含有することが好ましい。かかる熱可塑性樹脂粒子は、成分[E]と異なり、エポキシ樹脂組成物の他の構成要素に不溶であり、エポキシ樹脂組成物をプリプレグ化して、さらに繊維強化複合材料としても、粒子として存在するものである。
【0044】
熱可塑性樹脂粒子としては、ポリアミドが最も好ましく、ポリアミドのなかでも、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド66、ポリアミド6/12共重合体、特開平1-104624号公報の実施例1記載のエポキシ化合物にてセミIPN化されたポリアミド(セミIPNポリアミド)は、特に良好なエポキシ樹脂との接着強度を与える。ここで、IPNとは相互侵入高分子網目構造体(Interpenetrating Polymer Network)の略称で、ポリマーブレンドの一種である。ブレンド成分ポリマーが橋架けポリマーであって、それぞれの異種橋架けポリマーが部分的あるいは全体的に相互に絡み合って多重網目構造を形成しているものをいう。セミIPNとは、橋架けポリマーと直鎖状ポリマーによる重網目構造が形成されたものである。セミIPN化した熱可塑性樹脂粒子は、例えば熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を共通溶媒に溶解させ、均一に混合した後、再沈等により得ることができる。エポキシ樹脂とセミIPN化したポリアミドからなる粒子を用いることにより、優れた耐熱性と耐衝撃性をプリプレグに付与することができる。これら熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。ポリアミド粒子の市販品としては、SP-500、SP-10、TR-1、TR-2、842P-48、842P-80(以上、東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”1002D、2001UD、2001EXD、2002D、3202D、3501D,3502D、(以上、アルケマ社製)等を使用することができる。これらのポリアミド粒子は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、カップリング剤や、熱硬化性樹脂粒子、または、シリカゲル、カーボンブラック、クレー、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボン粒子あるいは金属粉体といった無機フィラー等を配合することができる。
【0046】
本発明のプリプレグは、本発明のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなる。すなわち、上述したエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂とし、このエポキシ樹脂組成物を強化繊維と複合させたものである。強化繊維の例としては、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等を好ましく挙げることができる。なかでも力学特性の点から炭素繊維が特に好ましい。
【0047】
本発明のプリプレグは、様々な公知の方法、例えばウエット法やホットメルト法などにより製造することができる。中でも、ホットメルト法が本発明の効果を発揮しやすい点において好ましい。
【0048】
本発明のプリプレグにおいては、強化繊維の目付が100~1000g/mであることが好ましい。強化繊維目付が100g/m未満では、繊維強化複合材料成形の際に所定の厚みを得るために積層枚数を多くする必要があり、積層作業が煩雑になることがある。一方、1000g/mを超える場合は、プリプレグのドレープ性が悪くなる傾向がある。また、繊維質量含有率は、好ましくは40~90質量%であり、より好ましくは50~80質量%である。繊維質量含有率が40質量%未満では樹脂の比率が多すぎるため、強化繊維の優れた機械特性の利点を活かすことができないことや、繊維強化複合材料の硬化時の発熱量が高くなりすぎる可能性がある。また、繊維質量含有率が90質量%を超える場合、樹脂の含浸不良を生じるため、得られる繊維強化複合材料はボイドが多いものとなる恐れがある。
【0049】
本発明のプリプレグの形態は、UniDirection(UD)プリプレグでも、織物プリプレグ、またシートモールディングコンパウンド等の不織布等いずれでもよい。
【0050】
本発明の繊維強化複合材料の第一の態様は、本発明のプリプレグを硬化させてなる。かかる繊維強化複合材料は、例えば、前記本発明のプリプレグを所定の形態で積層した後、加熱加圧して樹脂を硬化させることにより得ることができる。ここで、熱および圧力を付与する方法としては、オートクレーブ成形法、プレス成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法など公知の方法を用いることができる。
【0051】
本発明の繊維強化複合材料の第二の態様は、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物と、強化繊維とを含む。かかる繊維強化複合材料は、プリプレグを用いずに、強化繊維基材に液状のエポキシ樹脂を直接に含浸させ、硬化させる方法により得ることができる。具体的には、例えば、レジントランスファーモールディング法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法、ハンド・レイアップ法などにより、かかる繊維強化複合材料を得ることができる。
【0052】
以上に記した数値範囲の上限及び下限は、任意に組み合わせることができる。
【実施例0053】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
本発明の実施例および比較例において用いられた材料を次に示す。
【0054】
<成分[A]:4員環以上の環構造を一つ以上有する2官能以下のグリシジルアミン型エポキシ樹脂>
・N,N-ジグリシジルアニリン(GAN、日本化薬(株)製)
・N-グリシジルフタルイミド(“デナコール(登録商標)”EX-731、ナガセケムテックス(株)製)
・N,N-ジグリシジル-o-トルイジン(GOT、日本化薬(株)製)
<成分[A]以外の2官能以下のエポキシ樹脂>
・液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“jER(登録商標)”828、三菱ケミカル(株)製)
・液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“Epc(登録商標)”830、DIC(株)製)
・固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“jER(登録商標)”1001、三菱ケミカル(株)製)
・1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(“デナコール(登録商標)”EX-214L、ナガセケムテックス(株)製)
<成分[B]:3官能以上のエポキシ樹脂>
・テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(“アラルダイト(登録商標)”MY721、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂(“jER(登録商標)”154、三菱ケミカル(株)製)
<成分[C]:赤リン>
・赤リン(“ノーバレッド(登録商標)”120UF、燐化学工業(株)製)。
【0055】
<成分[C]:一般式(2)で表される構造を有するリン系化合物(アミン系硬化剤)>
・ビス(3-アミノフェニル)フェニルホスフィンオキサイド(BAPPO、片山化学工業(株)製)。
<成分[C]以外の硬化剤>
・4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(セイカキュアS、和歌山精化工業(株)製)
・ジシアンジアミド(Dicy7T、三菱ケミカル(株)製)。
【0056】
<成分[D]:金属水酸化物からなるフィラー>
・水酸化アルミニウム(C-301N、住友化学(株)製)
<成分[E]:熱可塑性樹脂>
・ポリエーテルスルホン(“VIRANTAGE(登録商標)”VW-10700RFP、Solvay Advanced Polymers社製)
・ポリビニルホルマール(“ビニレック(登録商標)K、JNC(株)製)。
<その他の添加剤>
・2,4’-トルエンビス(3,3-ジメチルウレア)(“オミキュア(登録商標)”24)
(1)エポキシ樹脂組成物の調製方法
混練装置中に、表1および2に記載の硬化剤以外の成分を投入後、140℃以上の温度まで昇温させ、加熱混練を行った。次いで、80℃以下の温度まで降温させ、表1および2に記載の成分[C]の硬化剤および成分[C]以外の硬化剤を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0057】
(2)樹脂硬化物のチャー生成率測定
熱重量測定TGAによるチャー生成率の測定は以下の様にして行った。
【0058】
(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mmまたは3mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーを挿入して、生成される硬化物の厚みが2mmまたは3mmに制限されるように設定したモールド中で、所定の硬化条件で硬化させて、厚さ2mmまたは3mmのエポキシ樹脂硬化物を得た。難燃性の評価は熱重量測定装置TG-DSC(パーキンエルマー社STA6000システム)を用いて行った。エポキシ樹脂硬化物から約10mgの試験片を切り出し、空気下で、昇温速度10℃/minで単純昇温し、600℃におけるチャー生成率(%)を難燃性の指標とした。ここでいうチャー生成率とは、(600℃における熱分解残渣の質量(g))/(昇温前のエポキシ樹脂硬化物の質量(g))×100で表される値である。
(3)樹脂硬化物の発熱特性評価
発熱特性の評価はコーンカロリーメータ試験装置Cone Calorimeter C3((株)東洋精機製作所製)を用いて行った。(2)で作製した3mm厚のエポキシ樹脂硬化物から100mm×100mm角の試験片を切り出し、ヒーター輻射量を50kW/mとして試験を行い、5分間のうちの最大発熱速度(kW/m)を難燃性の指標とした。
(4)樹脂硬化物の力学特性評価
樹脂硬化物の力学特性の評価は以下の様にして行った。
(2)で作製した2mm厚のエポキシ樹脂硬化物を10mm×60mm角のサイズにカットした試験片について、3点曲げ試験をJIS K7171(2006)に基づいて行い、力学特性を評価した。インストロン5565万能試験機(インストロン社製)を用いて、クロスヘッドスピード2.5mm/min、スパン長40mm、圧子径10mm、支点径4mmの条件で曲げ試験を行い、曲げ弾性率を測定した。
(5)樹脂硬化物の耐熱性評価
(2)で作製した2mm厚のエポキシ樹脂硬化物を12.7mm×45mm角のサイズにカットした試験片について、動的機械分析(DMA)によるガラス転移温度の測定をASTM 7028-07に基づいて行った。
【0059】
(実施例1~9、比較例1~3)
各成分を表1および2に示すとおりの比率(質量部)で用いて、上記(1)エポキシ樹脂組成物の調製方法により、エポキシ樹脂組成物の調製を行った。比較例4のみ130℃の温度で90分硬化させ、それ以外は180℃の温度で2時間硬化させて得られた樹脂硬化物について、上記(2)、(4)または(5)にしたがって、チャー生成率、力学特性および耐熱性の評価を行った。また、実施例1および2と比較例1および2については、上記(3)にしたがって発熱特性の評価も行った。評価結果は表1および2のとおりであった。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】