IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シー・アイ・シーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046895
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】監視機器及び調査システム
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/00 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
A01M23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152251
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】591262827
【氏名又は名称】株式会社シー・アイ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 英武
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA03
2B121BA03
2B121BA36
2B121BA58
2B121BA60
2B121DA62
2B121DA63
2B121DA70
2B121EA01
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】害獣調査を効率化する監視機器を提供する。
【解決手段】監視機器30は、本体31と焦電型赤外線センサ32とを備えている。焦電型赤外線センサ32は、センサ接続用ケーブル320を介して本体31のポート列306にいずれかのモジュラージャック341に接続されている。本体31は、調査システム10においてユニークな主識別子が割り当てられ、各モジュラージャック341は、監視機器30においてユニークな副識別子を割り当てられている。監視機器30は、焦電型赤外線センサ32からネズミ55の検知信号を受信すると、検知信号に組合せ識別子を付けたイベント情報をゲートウェイ20に無線送信する。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵電源と、
少なくとも1つのセンサ接続用ケーブルと、
前記センサ接続用ケーブルの先端側に接続されているセンサと、
各々において前記センサ接続用ケーブルの基端側プラグが着脱自在に装着可能になっている複数のポートと、
自己に設定されている主識別子と前記複数のポートを相互に識別する副識別子との情報を保持する識別子保持部と、
各ポートに検知信号を受信すると、該検知信号の情報に、該ポートの副識別子と前記主識別子とを組み合わせた組合せ識別子を対応付けたイベント情報をネット経由で外部のサーバーに無線送信する送信部と、
を備え、
前記複数のポートのうちの少なくとも1つは、前記基端側プラグが装着状態である前記センサ接続用ケーブルを介して該センサ接続用ケーブルの先端側のセンサに前記電源により通電可能としていることを特徴とする監視機器。
【請求項2】
前記送信部は、ゲートウェイを介して前記ネットに接続されていることを特徴とする請求項1記載の監視機器。
【請求項3】
さらに、
テストモードと監視モードとを切り替えるモード切替スイッチと、
前記モード切替スイッチにおいてテストモードから監視モードに切り替えられると、切替直前に前記センサ接続用ケーブルの前記基端側プラグが装着されていたポートを監視ポートとして記憶するポート記憶部と、
前記テストモードの期間において監視モードに切替えて、該監視モードにおいて各監視ポートに前記センサ接続用ケーブルを介して接続されているセンサの異常の有無を判断する制御部と、
を備え、
前記制御部は、異常であると判断した前記センサに対応する監視ポートの前記組合せ識別子を前記送信部から前記サーバーに無線送信することを特徴とする請求項1記載の監視機器。
【請求項4】
前記センサは、前記センサ接続用ケーブルの先端側のプラグが着脱自在であるポートを有していることを特徴とする請求項1記載の監視機器。
【請求項5】
各センサ接続用ケーブルの先端側に装着されているセンサは、該センサ接続用ケーブルとは別のセンサ接続用ケーブルの先端側に装着されているセンサとは、種類が同一又は相違していることを特徴とする請求項1記載の監視機器。
【請求項6】
各センサ接続用ケーブルの長さは、相互に同一又は相違していることを特徴とする請求項1記載の監視機器。
【請求項7】
異なる場所に配備されている請求項1~6のいずれか1項に記載の複数の前記監視機器と、
前記ネットを介して前記イベント情報を受信するサーバーと、
前記ネットを介して前記サーバーとの間でデータを送受自在である少なくとも1つの情報処理端末と、
を備え、
前記サーバーは、
前記イベント情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記イベント情報を受信時刻に対応付けて生成した監視情報をデータベースに記録する記録部と、
前記情報処理端末からの送信要求に対して前記データベース内の前記送信要求の対象になっている監視情報を選択して、前記インターネット経由で前記送信要求元に送信する送信部と、
を備えていることを特徴とする調査システム。
【請求項8】
所定の配備場所に配備された監視機器は、害獣の出現を検知する検知信号を出力するセンサを複数、備え、
前記情報処理端末又は前記サーバーは、
前記所定の配備場所に配備された監視機器に係る前記監視情報に基づいて該主識別子の前記監視機器の配備場所における害獣の侵入箇所、移動方向、生息規模、又は種類の違う餌を使った前記害獣の嗜好を分析する分析部を備えていることを特徴とする請求項7記載の調査システム。
【請求項9】
所定の配備場所に配備された監視機器は、害獣の出現を検知する検知信号を出力する複数の第1センサと、照度、温湿度、騒音、又はドア開閉の環境に係る検知信号を出力する少なくとも1つの第2センサとを備え、
前記情報処理端末又は前記サーバーは、
前記所定の配備場所に配備された監視機器に係る前記監視情報に基づいて該配備場所における害獣の出現を前記環境の観点で分析する分析部を備えていることを特徴とする請求項7記載の調査システム。
【請求項10】
所定の配備場所に配備された監視機器は、視野範囲が少なくとも部分的に重複する2つの焦電型赤外線センサを備え、
前記情報処理端末又は前記サーバーは、
前記所定の配備場所に配備された監視機器に係る前記監視情報に基づいて前記2つの焦電型赤外線センサが同時に検知信号を出力したと判断したときに前記害獣が出現したと分析する分析部を備えていることを特徴とする請求項7記載の調査システム。
【請求項11】
所定の配備場所に配備された監視機器は、視野範囲が少なくとも部分的に重複しかつ検出感度の異なる2つの焦電型赤外線センサを含み、
前記情報処理端末は、
前記所定の配備場所に配備された監視機器に係る前記監視情報に基づいて前記2つの焦電型赤外線センサのうち高感度の焦電型赤外線センサのみが検知信号を出力したと判断したときのみに前記害獣が出現したと分析する分析部を備えていることを特徴とする請求項7記載の調査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネズミ等の害獣調査に使用する監視機器及び調査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2は、ネズミの捕獲装置を開示する。この捕獲装置は、ネズミを捕獲する捕獲空間を有する捕獲箱と、ネズミが捕獲空間に進入したことを検出する検出部と、検出部の出力に応じて捕獲空間を閉鎖する閉鎖機構とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-100696号公報
【特許文献2】特許第6779399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、害獣の駆除を行うのに先立ち、あらかじめネズミの出現の有無等の実態調査を行うことが望ましい。特許文献1,2は、ネズミの捕獲又は誘因について開示するものの、捕獲に先立って又は捕獲と並行してネズミの実態把握についての情報を収集する開示を欠落している。
【0005】
本発明の目的は、害獣調査等に必要なセンサ検知情報の発信を効率化する監視機器及び調査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の監視機器は、
内蔵電源と、
少なくとも1つのセンサ接続用ケーブルと、
前記センサ接続用ケーブルの先端側に接続されているセンサと、
各々において前記センサ接続用ケーブルの基端側プラグが着脱自在に装着可能になっている複数のポートと、
自己に設定されている主識別子と前記複数のポートを相互に識別する副識別子との情報を保持する識別子保持部と、
各ポートに検知信号を受信すると、該検知信号の情報に、該ポートの副識別子と前記主識別子とを組み合わせた組合せ識別子を対応付けたイベント情報をネット経由で外部のサーバーに無線送信する送信部と、
を備え、
前記複数のポートのうちの少なくとも1つは、前記基端側プラグが装着状態である前記センサ接続用ケーブルを介して該センサ接続用ケーブルの先端側のセンサに前記電源により通電可能としている。
【0007】
本発明によれば、監視機器は、電源を備え、作動に電力を必要とするセンサは、センサセンサ接続用ケーブルを介して電源からの電力を受けることができる。そして、センサの検知信号は、組合せ識別子に対応付けたイベント情報として監視機器から発信される。こうして、監視機器の設置場所の高い自由度を確保しつつ、設置場所を特定できるイベント情報を監視機器に発信させることができるので、害獣調査等に必要なセンサ検知情報の発信を効率化する監視機器が提供される。
【0008】
好ましくは、監視機器において、前記送信部は、ゲートウェイを介して前記ネットに接続されている。
【0009】
この構成によれば、ゲートウェイが監視機器とネットとの間に介在するので、監視機器の送信部の構成を簡単化することができる。
【0010】
好ましくは、監視機器は、さらに、
テストモードと監視モードとを切り替えるモード切替スイッチと、
前記モード切替スイッチにおいてテストモードから監視モードに切り替えられると、切替直前に前記センサ接続用ケーブルの前記基端側プラグが装着されていたポートを監視ポートとして記憶するポート記憶部と、
前記テストモードの期間において監視モードに切替えて、該監視モードにおいて各監視ポートに前記センサ接続用ケーブルを介して接続されているセンサの異常の有無を判断する制御部と、
を備え、
前記制御部は、異常であると判断した前記センサに対応する監視ポートの前記組合せ識別子を前記送信部から前記サーバーに無線送信する。
【0011】
この構成によれば、監視モードでセンサが接続されているポートが監視ポートとして認識される。そして、監視ポートの異常が判断されると、該監視ポートの組合せ識別子が発信される。センサやセンサ接続用ケーブルは、ネズミ等の害獣にかじられたりして、故障や断線が生じ、この場合には、監視ポートの異常が判断される。この構成によれば、センサによる検知が支障が生じたことが速やかに発信され、異常に対して速やかに対応することができる。
【0012】
好ましくは、監視機器において、前記センサは、前記センサ接続用ケーブルの先端側のプラグが着脱自在であるポートを有している。
【0013】
この構成によれば、センサ接続用ケーブルに対してセンサの付替えが可能になる。
【0014】
好ましくは、監視機器において、各センサ接続用ケーブルの先端側に装着されているセンサは、該センサ接続用ケーブルとは別のセンサ接続用ケーブルの先端側に装着されているセンサとは、種類が同一又は相違している。
【0015】
この構成によれば、1つの監視機器に複数種のセンサを取り付けて、多様な情報を入手することができる。なお、センサの種類とは、検知する対象についての種類、及び同一の検知対象を検知するときの検知方式についての種類の両方が含む。
【0016】
好ましくは、監視機器において、各センサ接続用ケーブルの長さは、相互に同一又は相違している。
【0017】
この構成によれば、ポートからセンサまでの距離を調節することができる。
【0018】
本発明の調査システムは、
異なる場所に配備されている複数の前記監視機器と、
前記ネットを介して前記イベント情報を受信するサーバーと、
前記ネットを介して前記サーバーとの間でデータを送受自在である少なくとも1つの情報処理端末と、
を備え、
前記サーバーは、
前記イベント情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記イベント情報を受信時刻に対応付けて生成した監視情報をデータベースに記録する記録部と、
前記情報処理端末からの送信要求に対して前記データベース内の前記送信要求の対象になっている監視情報を選択して、前記インターネット経由で前記送信要求元に送信する送信部と、
を備えている。
【0019】
本発明によれば、サーバーが複数の監視機器からのイベント情報を受信して、監視情報としてデータベースに記録する。監視情報には、イベントの検知時刻としての受信時刻、及び検知場所としての組合せ識別子が含まれている。こうして、情報端末は、多数の監視機器がサーバーに発信して来るイベント情報に基づき、各イベントがどこでいつ生じたかを認識可能とする監視情報をサーバーから入手可能になる。
【0020】
好ましくは、調査システムにおいて、
所定の配備場所に配備された監視機器は、害獣の出現を検知する検知信号を出力するセンサを複数、備え、
前記情報処理端末又は前記サーバーは、前記所定の配備場所に配備された監視機器に係る前記監視情報に基づいて該主識別子の前記監視機器の配備場所における害獣の侵入箇所、移動方向、生息規模、又は種類の違う餌を使った前記害獣の嗜好を分析する分析部を備えている。
【0021】
この構成によれば、監視情報に含まれる組合せ識別子と受信時刻とを利用して、害獣が、害獣が検知されたセンサ設置場所を時間順で把握して、害獣の侵入箇所、移動方向、生息規模、又は種類の違う餌を使った前記害獣の嗜好を有効に分析することができる。
【0022】
好ましくは、調査システムにおいて、
所定の配備場所に配備された監視機器は、害獣の出現を検知する検知信号を出力する複数の第1センサと、照度、温湿度、騒音、又はドア開閉の環境に係る検知信号を出力する少なくとも1つの第2センサとを備え、
前記情報処理端末又は前記サーバーは、前記所定の配備場所に配備された監視機器に係る前記監視情報に基づいて該配備場所における害獣の出現を前記環境の観点で分析する分析部を備えている。
【0023】
この構成によれば、害獣の出現傾向又は非出現傾向を環境との関係で分析することができる。
【0024】
好ましくは、調査システムにおいて、
所定の配備場所に配備された監視機器は、視野範囲が少なくとも部分的に重複する2つの焦電型赤外線センサを備え、
前記情報処理端末又は前記サーバーは、前記所定の配備場所に配備された監視機器に係る前記監視情報に基づいて前記2つの焦電型赤外線センサが同時に検知信号を出力したと判断したときに前記害獣が出現したと分析する分析部を備えている。
【0025】
この構成によれば、害獣の出現検知精度を高めることができる。
【0026】
好ましくは、調査システムにおいて、
所定の配備場所に配備された監視機器は、視野範囲が少なくとも部分的に重複しかつ検出感度の異なる2つの焦電型赤外線センサを含み、
前記情報処理端末は、前記所定の配備場所に配備された監視機器に係る前記監視情報に基づいて前記2つの焦電型赤外線センサのうち高感度の焦電型赤外線センサのみが検知信号を出力したと判断したときのみに前記害獣が出現したと分析する分析部を備えている。
【0027】
この構成によれば、害獣の出現検知精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】調査システムの全体構成についての模式図である。
図2】監視機器の本体の斜視図である。
図3A】焦電型赤外線センサが本体に設置されている状態で監視機器を所定の角度から見た斜視図である。
図3B】焦電型赤外線センサが本体に設置されている状態で監視機器を図3Aとは別の角度から見た斜視図である。
図4】1つの本体に複数の焦電型赤外線センサが接続されている監視機器の説明図である。
図5】センサ接続用ケーブルの接続についての説明図である。
図6A】餌箱と組み合わせた焦電型赤外線センサの使用例を示す図である。
図6B】捕獲マットと組み合わせた焦電型赤外線センサの使用態様を示している図である。
図7A】監視機器の本体のブロック図である。
図7B】監視機器の本体がファームウェアに基づき実行する監視ルーチンのフローチャートである。
図7C】監視機器によるモードチェックルーチンのフローチャートである。
図8A】サーバーのブロック図である。
図8B】サーバーによるイベント情報受信ルーチンのフローチャートである。
図8C】サーバーによる監視情報送信要求ルーチンのフローチャートである。
図9A】監視機器の配備場所においてネズミの侵入箇所、移動方向、生息規模、又は種類の違う餌を使った害獣の嗜好を分析する有利なセンサの配置パターンを示す図である。
図9B】焦電型赤外線センサと共に環境センサを配備したセンサの配備例を示す図である。
図9C】ネズミの検出精度を向上させる焦電型赤外線センサの配備例を示す図である。
図9D】ネズミの検出精度を向上させる焦電型赤外線センサの別の配備例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、当業者が本明細書に開示されている構成に基づいて通常の知識の範囲で変形可能である構成を包含する。
【0030】
(システム)
図1は、調査システム10の全体構成についての模式図である。調査システム10は、複数の調査対象サイト12、クラウドサイト14、及び調査分析サイト16を連携させて、各調査対象サイト12におけるネズミ55(害獣の一例)に関する調査を行う。複数の調査対象サイト12、クラウドサイト14及び調査分析サイト16は、配備された情報処理装置がインターネット18を介して相互の情報交換可能となっているサイトである。
【0031】
調査対象サイト12は、ネズミ55の出現が予想されるサイトとして、例えば、小売店、料理店、商業施設ビル、オフィスビル、工場、倉庫、公共施設鉄道駅、及び地下街内に存在する。調査対象サイト12には、ゲートウェイ20及び少なくとも1つの監視機器30が配備されている。ゲートウェイ20は、インターネット18と各監視機器30との間に介在し、各監視機器30からのデータをインターネット18へ送出する中継器としての役割を果たす。
【0032】
図示の例では、各調査対象サイト12には、1つのゲートウェイ20しか記載していないが、規模の大きい調査対象サイト12では、複数の調査地点が広範囲に分布することがあり、各ゲートウェイ20に対して、サイト内の全部の監視機器30でなく、近辺の一部の複数の監視機器30のみが割り当てられることもある。監視機器30は、ゲートウェイ20を経由することなく、直接、インターネット18に無線で接続されていてもよい。
【0033】
クラウドサイト14には、サーバー40及びデータベース42が配備されている。サーバー40は、インターネット18に接続されている。データベース42は、サーバー40に内蔵されていてもよいし、外付けされていてもよい。外付けの場合には、サーバー40とデータベース42とは、インターネット18により相互に接続された状態で別々の場所(サイト)に配備されていてもよい。
【0034】
調査分析サイト16には、情報端末(例:PC)50が配備されている。情報端末50は、インターネット18を介してサーバー40にアクセスし、データベース42に蓄積されているデータを入手することができる。害獣についての調査会社又は駆除会社のオペレータ(分析者)は、情報端末50を操作して、害獣の実態を分析する。
【0035】
(監視機器)
図2は、監視機器30の本体31の斜視図である。本体31は、直方体形状のボックス301を有している。ボックス301の縦(図2の紙面では右肩上がりの辺)×横(図2の紙面では右肩下がりの辺)×高さ(図2の紙面では上下方向の辺)の具体的寸法は、例えば、122mm×83mm×40mm程度の大きさとなっている。これに対して、ネズミ55は、頭の先端から尻の終端までの体長が10cm~20cm程度であり、高さは5cm程度が想定されている。
【0036】
ボックス301は、電子部品(図示せず)が実装されている電子回路ボード等を収容している。ボックス301の下面には、監視機器30の内蔵電源として使用する乾電池を交換するための開閉自在の蓋が設けられている。乾電池は、通常1年位、交換が不要である。なお、ボックス301は、電力を外部から供給を受けることなく確保できればよく、内蔵電源として乾電池の代わりに充電式電池を備えることができる。
【0037】
電源スイッチ302、モードスイッチ303及びファームウェア更新用のポート304は、ボックス301の所定の側面に配備されている。電源スイッチ302は、作業員又は調査員が指で電源のオン、オフを切り替える形式である。モードスイッチ303も、作業員又は調査員が指でテストモードと監視モードとの2つのモードを切り替える形式である。
【0038】
ポート304は、本体31のファームウェアを更新するときにケーブルのプラグが差し込まれる。
【0039】
図3A及び図3Bは、焦電型赤外線センサ32が本体31に設置されている状態で監視機器30をそれぞれ別の角度から見た斜視図である。
【0040】
ポート列306は、ボックス301において電源スイッチ302等が設けられている側面の隣りの側面に設けられている。ポート列306は、水平方向に一列に並んだ複数(図示の例では4つ)のモジュラージャック341を有している。
【0041】
複数のランプ305は、ボックス301の上面に一列に並べられて配備されている。各ランプ305は、列方向に同一順番にあるモジュラージャック341に対応している。各モジュラージャック341には、各監視機器30においてユニークな識別子として副識別子が割り当てられている。さらに、監視機器30には、調査システム10全体においてユニークな識別子として主識別子が割り当てられている。主識別子と副識別子との組合せを組合せ識別子と定義する。
【0042】
組合せ識別子の一例は、主識別子の後ろに副識別子を付け足したものである。具体的には、主識別子及び副識別子がそれぞれ例えば2進で62桁”10...01”及び2桁”01”である場合、組合せ識別子は64桁”10...0101”となる。組合せ識別子は、調査システム10の全部のセンサについてユニークとなる。したがって、調査システム10全体の中の各モジュラージャック341には、ユニークな組合せ識別子が付与されていることになる。
【0043】
焦電型赤外線センサ32は、側面視がL形のL型ブラケット311と、L型ブラケット311の起立部に取り付けられているセンサ本体310とを有している。図3A及び図3Bでは、L型ブラケット311の水平部は下面において両面テープでボックス301の上面に取り付けられている。
【0044】
センサ接続用ケーブル320は、基端側のプラグ322を複数のポート列306のいずれかに着脱自在に装着している。センサ本体310は、L型ブラケット311側とは反対側を赤外線の受光部とし、受光側に入射した赤外線を検出する。ネズミ等の温血動物は、身体から赤外線を放射し、この赤外線がセンサ本体310の受光部に入射する。
【0045】
焦電型赤外線センサ32は、所定速度以上で移動する赤外線を受光すると、害獣の出現を示す検知信号を出力する。なお、焦電型赤外線センサ32によるネズミ55の検知距離は、約50cmであり、視野角は120°である。また、センサ接続用ケーブル320は、最長が約10mまで、使用が保証されたものとなっている。
【0046】
焦電型赤外線センサ32は、ネズミ55が視野範囲に存在する期間では、移動するたびに検知信号を出力する。この場合、乾電池の電力の消耗が大きくなる。これに対処するため、本体31は、最初の移動のみ検知信号のみ受信し、受信後の一定時間はマスクにより、検知信号の受信を中止することもできる。
【0047】
この場合、監視機器30は、ネズミ55の出現を最初の出現しか検出できないことになる。しかしながら、顧客に監視機器30を設置を薦めるとき、顧客先にネズミ55が来ていることを知ってもらえれば、十分であるケースがある。また、調査側も、監視機器30を最初に設置したとき、果たしてネズミ55が来る場所なのか確信できないときがある。そのような場合、監視機器30によるネズミ55の出現の検出は、最初の1回だけとして、ネズミ55が出現することが確認できてから、監視機器30がネズミ55の出現を繰り返し検出できるように、監視機器30を再設定するようにすることもある。
【0048】
各モジュラージャック341は、複数の端子を有している。複数の端子には、本体31の内蔵電源の+(給電)側及び-(アース)側に接続されている2つの端子と、センサ接続用ケーブル320を介する焦電型赤外線センサ32からの検知信号が入力される検知端子とが含まれている。センサ接続用ケーブル320は、モジュラージャック341の端子に対応する電線を束ねたハーネスである。なお、センサの種類によっては、給電が不要であるセンサ(例:圧電センサ)もある。したがって、給電端子を有しないモジュラージャック341を設けることもできる。
【0049】
図4は、1つの本体31に複数の焦電型赤外線センサ32が接続されている監視機器30の説明図である。図3A及び図3Bでは、1つの本体31に接続されている焦電型赤外線センサ32は、1つであるが、図4の実施例では、1つの本体31に2つの焦電型赤外線センサ32が接続されている。すなわち、各焦電型赤外線センサ32から延び出しているセンサ接続用ケーブル320の基端側のプラグは、ポート列306(図3B)の別々のモジュラージャック341に装着される。図4の実施例では、また、焦電型赤外線センサ32は、本体31のボックス301の上面に固着されず、センサ接続用ケーブル320の長さを長くして、本体31から適当に離れた場所の設置面に両面テープ等により固着される。
【0050】
図5は、センサ接続用ケーブル320の接続についての説明図である。センサ接続用ケーブル320は、ケーブル線321と、ケーブル線321の両端に取り付けられているプラグ322とを備えている。センサ本体310は、背面にポート331を有している。センサ接続用ケーブル320の基端側のプラグ322は、任意のモジュラージャック341に着脱自在に装着されるとともに、先端側のプラグ322は、着脱自在にポート331に装着される。
【0051】
このように、センサ接続用ケーブル320を本体31側のポート列306だけでなく、焦電型赤外線センサ32のセンサ本体310も、着脱式の接続とした理由は、長さの異なるセンサ接続用ケーブル320に対して同一のセンサを取付け可能にするとともに、同一のセンサ接続用ケーブル320に異なる種類のセンサを取付け可能にするためである。
【0052】
図6Aは、餌箱352と組み合わせた焦電型赤外線センサ32bの使用例を示している。焦電型赤外線センサ32bは、焦電型赤外線センサ32のL型ブラケット311に代えて門型ブラケット351を有している。門型ブラケット351は、前側の門部と、門部の桁の中心から後方へ張出してから垂下する後ろ脚部とを有している。センサ本体310は、門型ブラケット351の門の横梁部の下面に下向きに取り付けられている。
【0053】
餌箱352は、ネズミ等の害獣が通ると予測される経路上に、適当な餌を入れて載置される。センサ本体310は、餌箱352の真上となるように、焦電型赤外線センサ32bが設置される。害獣が、餌箱352の餌を取ったり、餌箱352を通過すると、センサ本体310が反応して、その検知信号が本体31へ伝送される。
【0054】
図6Bは、捕獲マット360と組み合わせた焦電型赤外線センサ32bの使用態様を示している。センサ本体310の下方には、餌箱352(図6A)に代えて捕獲マット360が載置されている。詳細には、捕獲マット360は、載置場所としての所定の載置面に広げられて、特別の固定措置を施すことなく、そのまま載置される。捕獲マット360の上面は、粘着面となっており、2個所にプラスチック製でリング型のスペーサ361が貼り付けられている。捕獲マット360は、設置前は、2つのスペーサ361が合わさるように、二つ折りにされて、捕獲マット360の粘着面の半面同士の相互の粘着が防止されている。
【0055】
ネズミ55が、広げられている捕獲マット360の上面の粘着面に接触すると、捕獲マット360に固着して、捕獲される。センサ本体310は、ネズミ55が粘着シー捕獲マットト360に固着して身動き取れなくなった時や、捕獲されないものの、センサ本体310の下方を通過した時、検知信号を出力する。
【0056】
(監視機器の本体の作用)
図7Aは、本体31のブロック図である。本体31は、内蔵電源101、ポート列102、識別子保持部103、ポート記憶部104、制御部105及び送信部106を備えている。本体31は、周知のマイクロプロセッサを備えている。マイクロプロセッサは、制御ユニット、演算ユニット、レジスタ及びインターフェース回路などで構成されている。図7Aで図示しているブロックのうち、制御部105は、マイクロプロセッサがファームウェアを実行することにより生成されるソフトウェア要素である。
【0057】
ポート列102は、例えば図2のポート列306である。ポート列306は、4つのモジュラージャック341を有する4ポート型であるが、ポート列102は、4つに限定されない複数のポートを有している。
り、ポート列306のモジュラージャック341に対応する複数のポートを有している。ポート記憶部104は、本体31が装備する読み書き自在の不揮発性メモリから構成される。送信部106は、ゲートウェイ20へデータを送信する近距離用送信機である。
【0058】
図7Bは、監視機器30の本体31がファームウェアに基づき実行する監視ルーチンのフローチャートである。詳細には、図7Bの各処理は、制御部105が実行する。ステップS10aでは、制御部105は、ポート列102のいずれかのポートに検知信号を受信したか否かを判定する。制御部105は、判定結果が肯定的であるときは、処理をステップS11に進ませ、否定的であるときは、処理をステップS10bに進める。
【0059】
ステップS10bでは、制御部105は、監視機器30における種々の異常を検知したか否かを判定する。検知する異常には、例えば、センサ接続用ケーブル320の断線(ネズミ55がかじって断線することがある。)や内蔵電源の電池の電圧低下が含まれる。
【0060】
センサ接続用ケーブル320の断線のように、複数のモジュラージャック341において個別に生じるときは、制御部105は、ステップ10bにおいて、断線の起きたセンサ接続用ケーブル320に対応する副識別子を使用ポートの中から特定する。使用ポートについては、後述のステップS21で説明する。
【0061】
制御部105は、ステップ10bにおける判定結果が肯定的であるときは、処理をステップS11に進ませ、否定的であるときは、処理をステップ10aに戻す。
【0062】
ステップS11では、制御部105は、組合せ識別子を生成する。組合せ識別子は、例えば、ステップS10で検知信号を受信したポートに割り当てられた副識別子を判別し、次に、本体31に割り当てられている主識別子を識別子保持部103から取得し、取得した主識別子の後ろに副識別子を付け足して生成される。
【0063】
ステップS12では、制御部105は、イベント情報を生成する。イベント情報とは、例えば、ネズミ55の出現を検知したことを示す検知信号に係る情報に、組合せ識別子に係る情報を付け足した情報である。
【0064】
ステップS13では、制御部105は、イベント情報をゲートウェイ20に送信する。こうして、ゲートウェイ20は、中継器としての監視機器30からのイベント情報を、インターネット18を介してサーバー40に送信する。
【0065】
図7Cは、監視機器30によるモードチェックルーチンのフローチャートである。モードチェックルーチンの各処理は、制御部105がファームウェアを実施することにより実施される。モードチェックルーチンは、監視機器30を設置して、使用開始する際に実施される。
【0066】
ステップS20では、制御部105は、テストモードから監視モードへの切替の有無を判定し、判定結果が肯定的であるときは、処理をステップS21に進ませ、否定的であるときは、肯定的となるまで、一定時間間隔でステップS21を繰り返す。テストモードから監視モードへの切替の有無は、モードスイッチ303の位置の変化により判定することができる。モードスイッチ303のテストモードから監視モードへの切替は、監視機器30を設置場所に設置した作業員がテストモード期間の監視機器30の試験を終了した時に行われる。
【0067】
テストモードとは、作業員が監視機器30を現場に設置するときに使用するモードである。テストモードでは、1つ又は複数の焦電型赤外線センサ32をセンサ接続用ケーブル320でポート列306のいずれかのモジュラージャック341に接続した後、各焦電型赤外線センサ32が正しく動作するかを確認する。確認対象の焦電型赤外線センサ32に対応するランプ305は、動作確認中、点滅を繰り返す。
【0068】
ステップS21では、制御部105は、テストモードから監視モードに切替わり直前の使用ポートを記憶する。使用ポートとは、センサ接続用ケーブル320の基端側のプラグ322が装着されているモジュラージャック341に相当する。使用ポートの記憶は、モジュラージャック341に割り当てられている副識別子を記憶するようにしてもよい。
【0069】
ステップS22では、制御部105は、定時通知をサーバー40に対して行う。定時通知は、(a)電池電圧の監視とその結果内容や、(b)通信異常時の再送信回数や間隔等の情報が含まれる。ステップS22の定時通知は、監視機器30の設置後の初回の定時通知であり、2回目以降の定時通知は、所定時刻になると、図7Bの監視ルーチンに割り込んで定期的に実施される。
【0070】
監視ルーチンにおける提示通知の処理は、監視ルーチンの中に提示通知の割込み処理を追加してもよいが、例えばステップS10bの異常検知と併せて実行することもできる。すなわち、制御部105は、ステップS10bを実行時に現在時刻を調べ、現在時刻が定期的な提示通知の実行時刻であれば、処理をステップS11に進ませる。現在時刻が定期的な提示通知の実行時刻でなければ、処理をステップS10aに戻す。
【0071】
制御部105は、ステップS22を終了後、監視ルーチン(図7B)を開始する。
【0072】
(サーバーの作用)
図8Aは、サーバー40のブロック図である。サーバー40は、受信部110、記憶部111、送信部112及び制御部113を備えている。サーバー40は、データベース42とデータを送受自在になっている。サーバー40は、コンピュータとしてのサーバー40内の要素の制御し、かつ演算を実行するCPU(Central Processing Unit)を備えている。制御部113は、サーバー40のCPUがプログラムを実行することにより生成されるソフトウェア要素である。
【0073】
図8Bは、サーバー40によるイベント情報受信ルーチンのフローチャートである。イベント情報受信ルーチンの各処理は、制御部113が実行する。
【0074】
ステップS40では、制御部113は、受信部110におけるイベント情報の受信の有無を判定する。そして、判定結果が有であれば、処理をステップS41に進ませ、無であれば、処理をステップS40に戻す。なお、イベント情報には、図7BのステップS10a,S10bで説明したように、検知情報に係るイベント情報と、異常発生に係るイベント情報と、補足的に説明した定時通知に係るイベント情報が含まれている。
【0075】
ステップS41では、記憶部111は、監視情報をデータベース42に記録する。監視情報とは、例えば、受信部110が受信したイベント情報の後ろに受信時刻に係る情報を付け足した情報である。
【0076】
記憶部111は、ステップS41の処理終了後、処理をステップS40に戻す。
【0077】
図8Cは、サーバー40による監視情報送信要求ルーチンのフローチャートである。監視情報送信要求ルーチンの各処理は、制御部113が実行する。
【0078】
ステップS45では、制御部113は、受信部110における監視情報送信要求の受信の有無を判定する。そして、判定結果が有であれば、処理をステップS46に進ませ、無であれば、ステップS45を再実行する。
【0079】
ステップS46では、制御部113は、ステップS45で送信要求対象の監視情報をデータベース42から読み出す。
【0080】
ステップS47では、制御部113は、ステップS46で読み出した監視情報を送信部112から送信要求元の情報端末50に送信する。制御部113は、ステップS47の処理終了後、処理をステップS40に戻す。
【0081】
(分析)
分析者は、調査分析サイト16(図1)において情報端末50を操作して、各調査対象サイト12におけるネズミ55の実態について分析する。詳細には、分析者は、情報端末50からサーバー40にアクセスし、データベース42内の各監視機器30に係る監視情報を自己の情報端末50において閲覧する。
【0082】
その際、所望の分析ソフトを使用する。分析ソフトは、情報端末50又はサーバー40に実装される。分析ソフトがサーバー40に実装されているときは、オペレータ(分析者)は、情報端末50からサーバー40の分析ソフトを呼び出してから、又はサーバー40に実装されている調査関連のアプリのメニューをサーバー40の画面に表示させてから分析ソフトを選択して、実行開始する。
【0083】
図9A図9Dは、分析者が所定の観点で各監視機器30の配備場所に係る監視情報を分析する際に有利な該監視機器30におけるセンサの配置例を示している。なお。図示のセンサは、焦電型赤外線センサ32であるが、焦電型赤外線センサ32以外のセンサ(例:圧電センサ、圧電スイッチ又は機械式スイッチ)を適宜、採用することもできる。
【0084】
図9Aは、監視機器30aの配備場所においてネズミ55の侵入箇所、移動方向、生息規模、又は種類の違う餌を使った害獣の嗜好を分析する有利なセンサの配置パターンを示す図である。焦電型赤外線センサ32a~32dは、監視機器30aの配備場所においてネズミ55の出現又は通過の予想される複数の箇所を選定して配置される。焦電型赤外線センサ32a~32dは、ネズミ55の存在(出現)について相互に異なる検知領域を有している。
【0085】
なお、図9Aの監視機器30aにおける複数の焦電型赤外線センサ32a~32d間の相対的な位置関係としての配置パターンは、監視機器30aのものに限定されず、各監視機器30において、作業員が監視機器30を調査対象サイト12に設置した際の複数のセンサ(焦電型赤外線センサ32はセンサの一例)の配置パターンを手帳等に記載しておき、その後、遅滞なく、配置パターンは、データベース42に登録されるようになっている。したがって、オペレータは、各監視機器30におけるネズミ55の出現状況を分析する際、情報端末50の画面に対象の監視機器30における複数のセンサの配置パターンを適宜表示させて、ネズミ55が画面の配置パターン上をどのように動いていったかを動画や画面上の矢印付き図面等で追跡可能(認知可能)になっている。
【0086】
分析者は、監視情報から当該配備場所において今回の出現に係る一連の監視情報において、出現時刻順(受信部110における受信時刻順)で最初に検知情報を出力した焦電型赤外線センサ32を調べ、当該焦電型赤外線センサ32の設置の位置が侵入箇所であると把握する。各出現回のネズミ55の出現は、時間的に十分に相違しているので、一連の監視情報であるか、別の出現回の一連の監視情報であるかは、一連の監視情報間の時間間隔で判断することができる。すなわち、同一の出現回の一連の監視情報間の時間間隔は十分に密接している。
【0087】
また、一連の監視情報において複数の焦電型赤外線センサ32間の検知順及び滞留時間を辿ることにより当該ネズミ55の移動方向や挙動を分析することができる。さらに、各本体31の検出範囲に種類の違う餌を置き、当該配備場所に出現するネズミ55の嗜好を分析することができる。複数の本体31が同時にネズミ55の出現を検知したときは、ネズミ55が仲間と一緒に侵入したことを知ることができる。さらに、出現頻度からネズミ55の生息規模が判明する。
【0088】
図9Bは、焦電型赤外線センサ32と共に環境センサ32uを配備したセンサの配備例を示す図である。環境センサ32uは、例えば、照度、温湿度、騒音、又はドア開閉を検出するセンサである。ドア開閉の検知センサは、例えば機械式スイッチである。照度、温湿度及び騒音のセンサは、各センサに設定されている閾値をクロスする時点で検知の検知信号を出力するように設定しておく。これにより、検知信号の出力時に、環境の反転があったと認識される。
【0089】
分析ソフトは、環境センサ32uからの検知信号に由来する監視情報と焦電型赤外線センサ32a~32cの検知信号に由来する監視情報とに基づいてネズミ55の出現の有無を分析する。その際、誤検知と判断される検知信号は排除する。例えば、ネズミ55は、明るい期間は出現の可能性が低いので、暗い期間の焦電型赤外線センサ32a~32cの監視情報のみが実際に出現したと分析される。騒音についても、ネズミ55は、人が周囲にいない静かな期間に出現するので、静かな期間に焦電型赤外線センサ32a~32cの監視情報のみが実際に出現したと分析される。ネズミ55は、ドアが開閉すると驚いて逃げるので、ドアの開閉時からしばらく時間の経過した期間の焦電型赤外線センサ32a~32cの監視情報のみが実際に出現したと分析される。
【0090】
ネズミ55が出現したことを示すイベント情報を生成する際、検知情報の他に、検知時の環境(照度、温湿度、騒音)をイベント情報に含めることができる。なお、サーバー40は、受信部110が受信したイベント情報が、照度、温湿度、騒音又はドア開閉の環境センサの検知信号に由来するものか、焦電型赤外線センサ32a~32cの検知信号に由来するものかを、イベント情報に含まれる組合せ識別子に基づいて判断する。環境センサ32uの併用により、焦電型赤外線センサ32a~32cによる検知精度を高めたり、出現と環境との関係を把握することができる。
【0091】
図9Cは、ネズミ55の検出精度を向上させる焦電型赤外線センサ32の配備例を示す図である。焦電型赤外線センサ32a,32bは、検知範囲Ra,Rbが重複するように、設置位置及び向きが設定されている。焦電型赤外線センサ32a,32bの検知範囲Ra,Rbの重複は、少なくとも一部であればよい。
【0092】
情報端末50の分析者又は分析ソフトは、焦電型赤外線センサ32a,32bが同時にネズミ55の出現を検知したときのみ、ネズミ55が実際に出現したと判断する。各焦電型赤外線センサ32は、遠方に存在する物体をネズミ55として誤検出することがある。焦電型赤外線センサ32a,32bが同時にネズミ55の出現の検知信号を出力した時をネズミ55が実際に出現したと分析することにより、背景の影響を排除することができる。
【0093】
図9Dは、ネズミ55の検出精度を向上させる焦電型赤外線センサ32の別の配備例を示す図である。焦電型赤外線センサ32a,32bは、焦電型赤外線センサ32bの検知範囲Rbが焦電型赤外線センサ32aの検知範囲Raを内側に完全に含むように、設置位置及び向きが設定されている。焦電型赤外線センサ32aの検出感度は、焦電型赤外線センサ32bの検出感度より大とされる。
【0094】
図9Dにおける焦電型赤外線センサ32a,32bは、図4の2つの焦電型赤外線センサ32の存在であると、設置上、支障が起こることがある。この対処策としては、L型ブラケット311の起立部の高さを図4に図示の高さの2倍以上の寸法とし、起立部の上下に焦電型赤外線センサ32a,32bを取り付けるようにすることができる。この場合、焦電型赤外線センサ32a,32bを共通のL型ブラケット311に取り付けつつ、別々のセンサ接続用ケーブル320は、焦電型赤外線センサ32a,32bに接続する構成となる。
【0095】
情報端末50の分析者は、焦電型赤外線センサ32aがネズミ55の出現を検知した時刻に、焦電型赤外線センサ32bがネズミ55の出現を検知しなかった場合に、ネズミ55が同時刻に実際に出現したと判断する。理由は、焦電型赤外線センサ32a,32bが同時に焦電型赤外線センサ32bの出現したときは、ネズミ55とは別の物体を検知した可能性があり、このような誤った認識を排除するためである。
【0096】
(情報端末のその他の機能)
情報端末50は、ネズミ55の実態分析やセンサの異常通知(具体的には該当のセンサを情報端末50の画面に表示)の他に、(a)調査システム10における監視機器30の新規登録及び削除、(b)各監視機器30の設置情報や設置図面(調査対象サイト12における各焦電型赤外線センサ32の設置場所を示す図面)の登録と更新、(c)保守の履歴(乾電池交換日、訪問日)の閲覧等を実施することができる。
【符号の説明】
【0097】
12・・・調査対象サイト、14・・・クラウドサイト、16・・・調査分析サイト、18・・・インターネット、20・・・ゲートウェイ、30・・・監視機器、31・・・本体、30u・・・環境センサ、32・・・焦電型赤外線センサ、40・・・サーバー、42・・・データベース、50・・・情報端末、55・・・ネズミ、101・・・内蔵電源、102,331,341・・・ポート、103・・・識別子保持部、104・・・ポート記憶部、105・・・制御部、106・・・送信部、110・・・受信部、111・・・記憶部、112・・・送信部、303・・・モードスイッチ、304・・・ポート、306・・・ポート列、310・・・センサ本体、320・・・センサ接続用ケーブル。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D