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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004690
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20240110BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B25J9/22 Z
G05B19/42 L
G05B19/42 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104446
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浪越 孝宏
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
【Fターム(参考)】
3C269AB33
3C269BB14
3C269CC09
3C269GG01
3C269MN07
3C269MN16
3C269MN27
3C269PP01
3C269SA02
3C269SA04
3C269SA07
3C269SA11
3C707BS10
3C707DS01
3C707JS02
3C707KS36
3C707KV18
3C707LS02
3C707LV02
3C707MS09
3C707MS10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロボットアームが所定の進入禁止領域に進入することを防止できるロボットシステムを提供する。
【解決手段】ロボットシステムは、一対のロボットアームと、位置検出部と、制御部と、を備える。一対のロボットアームは、所定の範囲内をそれぞれ移動可能である。位置検出部は、一対のロボットアームの位置をそれぞれ検出する。制御部は、一対のロボットアームの動作を制御する。制御部は、ダイレクトティーチングモードを実行可能である。ダイレクトティーチングモードは、作業者が一方のロボットアームを直接動かしたときに、他方のロボットアームが一方のロボットアームに連動して動作する。制御部は、ダイレクトティーチングモードの実行時に、所定の進入禁止領域に他方のロボットアームが進入したことを位置検出部により検出したときに、一方のロボットアームの移動負荷を変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の範囲内をそれぞれ移動可能な一対のロボットアームと、
一対の前記ロボットアームの位置をそれぞれ検出する位置検出部と、
一対の前記ロボットアームの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、作業者が一方の前記ロボットアームを直接動かしたときに、他方の前記ロボットアームが一方の前記ロボットアームに連動して動作するダイレクトティーチングモードを実行可能であり、
前記制御部は、前記ダイレクトティーチングモードの実行時に、所定の進入禁止領域に他方の前記ロボットアームが進入したことを前記位置検出部により検出したときに、一方の前記ロボットアームの移動負荷を変化させる、ロボットシステム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記進入禁止領域に他方の前記ロボットアームが進入したことを前記位置検出部により検出したときに、他方の前記ロボットアームの一方の前記ロボットアームに対する連動動作を解除する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記進入禁止領域に他方の前記ロボットアームが進入したことを前記位置検出部により検出したときに、一方の前記ロボットアームの移動動作を停止する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記進入禁止領域に他方の前記ロボットアームが進入したことを前記位置検出部により検出したときに、所定時間経過後に一対の前記ロボットアームを所定の復帰位置にそれぞれ移動させる、請求項1~請求項3のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記制御部は、
一方の前記ロボットアームの移動範囲内における前記進入禁止領域に対応する対応領域において、一方の前記ロボットアームが、所定距離以上進入していることを前記位置検出部により検出したときに、一対の前記ロボットアームを前記復帰位置にそれぞれ移動させない、請求項4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記制御部は、
一方の前記ロボットアームの移動範囲内における前記進入禁止領域に対応する対応領域において、一方の前記ロボットアームが、前記対応領域内で前記対応領域の外側から内側に進入する方向に移動していることを前記位置検出部により検出したときに、一方の前記ロボットアームの移動負荷を段階的に大きく変化させる、請求項1又は請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記制御部は、
一方の前記ロボットアームの移動範囲内における前記進入禁止領域に対応する対応領域において、一方の前記ロボットアームが、前記対応領域内から抜け出す方向に移動していること前記位置検出部により検出したときに、一方の前記ロボットアームの移動負荷を段階的に小さく変化させる、請求項1又は請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項8】
一方の前記ロボットアームの加速度を検出する加速度検出部をさらに備え、
前記制御部は、
前記加速度検出部が、所定値以上の加速度を検出した場合に、他方の前記ロボットアームの一方の前記ロボットアームに対する連動動作を解除する、請求項1~請求項3のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項9】
他方の前記ロボットアームの周囲の障害物を検出するエリア検出部をさらに備え、
前記制御部は、
前記エリア検出部が、障害物を検出したときに、障害物の周囲の領域を前記進入禁止領域に設定する、請求項1~請求項3のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記ロボットアームはモータにより駆動され、
前記制御部は、前記モータのロック状態とフリー状態を短周期で交互に切り替えて前記ロボットアームの移動負荷を制御する、請求項1~請求項3のいずれかに記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のロボットアームを備えるロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロボットシステムは特許文献1に開示されている。このロボットシステムは、ロボットアームと、制御部と、を備える。ロボットアームは、所定の範囲内で移動可能である。制御部は、ロボットアームの動作を制御する。制御部は、ダイレクトティーチングモードを実行可能である。ダイレクトティーチングモードは、作業者がロボットアームを直接動かしてロボットアームの動作を記憶させる。
【0003】
ダイレクトティーチングモード実行中において、所定の動作制限領域(進入禁止領域)内にロボットアームを移動しようとした場合に、制御部は、ロボットアームが動作制限領域内に進入しない関節軸の角度パターンを算出してロボットアームを動作させる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-1137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に開示されたロボットシステムによると、構成が複雑で製造コストが高くなる可能性があった。また、一対のロボットアームを備えるロボットシステムにおいて、一方のロボットアームを作業者が直接動かし、他方のロボットアームを一方のロボットアームに連動して動かす場合に、作業者は、他方のロボットアームが進入禁止領域に進入していることに気づかない可能性があった。
【0006】
本発明は、製造コストを削減しながら、ロボットアームが所定の進入禁止領域に進入することを防止できるロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的なロボットシステムは、一対のロボットアームと、位置検出部と、制御部と、を備える。一対のロボットアームは、所定の範囲内をそれぞれ移動可能である。位置検出部は、一対のロボットアームの位置をそれぞれ検出する。制御部は、一対のロボットアームの動作を制御する。制御部は、ダイレクトティーチングモードを実行可能である。ダイレクトティーチングモードは、作業者が一方のロボットアームを直接動かしたときに、他方のロボットアームが一方のロボットアームに連動して動作する。制御部は、ダイレクトティーチングモードの実行時に、所定の進入禁止領域に他方のロボットアームが進入したことを位置検出部により検出したときに、一方のロボットアームの移動負荷を変化させる。
【発明の効果】
【0008】
例示的な本発明によれば、製造コストを削減しながら、ロボットアームが所定の進入禁止領域に進入することを防止できるロボットシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るロボットシステムの全体構成図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係るロボットシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係るロボットシステムの動作の一例を示すチャート図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係るロボットシステムの変形例に係るハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係るロボットシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図6図6は、本発明の第3実施形態に係るロボットシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書では、回転体116の回転軸Jと平行な方向をそれぞれ「軸方向」、回転体116の回転軸Jに直交する方向を「径方向」、回転体116の回転軸Jを中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とそれぞれ称する。なお、上下方向は単に説明のための用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。
【0011】
<第1実施形態>
(1.ロボットシステムの構成)
本発明の例示的な一実施形態のロボットシステム1について説明する。図1は第1実施形態に係るロボットシステム1の全体構成図であり、図2はロボットシステム1のブロック図である。
【0012】
ロボットシステム1は、一対のロボットアーム10、20と、位置検出部11、21と、制御部15と、記憶部13と、を備える。一対のロボットアーム10、20は、離れて配置され、サーボモータ(モータ)10a、20aをそれぞれ有する。一対のロボットアーム10、20は、サーボモータ10a、20aの駆動により所定の範囲(移動範囲S1、S2)内をそれぞれ移動可能である。
【0013】
位置検出部11、21は、一対のロボットアーム10、20の位置をそれぞれ検出する。具体的には、位置検出部11は、ロボットアーム10に配置され、ロボットアーム10の後述する保持部119の位置を検出する。また、位置検出部21は、ロボットアーム20に配置され、ロボットアーム20の後述する保持部119の位置を検出する。
【0014】
記憶部13は、ROM、RAM、フラッシュROMおよびHDDなどの不揮発性と揮発性の記憶装置の組み合わせからなる。記憶部13は、ロボットシステム1の制御プログラムおよび制御データなどを記憶する。
【0015】
制御部15は、中央演算処理装置であるCPU15aを含み、サーボモータ10a、20aと、位置検出部11、21と、記憶部13と、に接続される。また、制御部15にはタイマー(不図示)が設けられている。制御部15は、記憶部13に格納される制御プログラム、制御データ及び位置検出部11、21の検知結果に基づき、ロボットアーム10、20の制御や演算を行う。すなわち、制御部15は、一対のロボットアーム10、20の動作を制御する。
【0016】
制御部15は、ダイレクトティーチングモードを実行可能である。ダイレクトティーチングモードは、作業者が一方のロボットアーム10を直接動かしたときに、他方のロボットアーム20が一方のロボットアーム10に連動して動作する。
【0017】
作業者は、ロボットアーム10を直接動かしてロボットアーム20にタスク実行のための動作を覚えさせることができる。例えば、所定の物体を所定の場所から別の場所に自動的に運搬するようにロボットアームを動作させるタスクを行う場合、作業者はロボットアーム10を所望の軌道に沿って手動で移動させる。このとき、ロボットアーム20は、ロボットアーム10に連動してロボットアーム10と同じ所望の軌道に沿って移動する。
【0018】
(2.ロボットアームの構成)
ロボットアーム10及びロボットアーム20は、例えば、同一構成であり、ロボットアーム10の移動範囲S1の大きさとロボットアーム20の移動範囲S2の大きさとは同じである。
【0019】
ロボットアーム10、20は、例えば、作業台に固定されるベース部111と、変位や力を伝達する複数の回転体112、113、114、115、116と、腕部117と、ジョイント部118と、保持部119と、を備える。回転体112、113、114、115、116は、360°以上回転する。
【0020】
回転体112は、ベース部111に対してそれぞれ相対的に回転可能に連結され、鉛直な回転軸を中心として回転する。回転体113は、回転体112に対してそれぞれ相対的に回転可能に連結される。回転体113は、円柱状の腕部117の一端にそれぞれ固定され、腕部117の他端には回転体114がそれぞれ連結される。
【0021】
回転体114は、腕部117に対してそれぞれ相対的に回転可能に連結される。回転体115は、回転体114に対してそれぞれ相対的に回転可能に連結される。回転体116は、回転体115に対してそれぞれ相対的に回転可能に連結される。回転体116は、回転軸Jを中心として回転する。
【0022】
保持部119は、ジョイント部118を介して回転体116に連結される。保持部119は、例えば、ワークピース(不図示)を保持する。
【0023】
ロボットアーム10は、回転体112、113、114、115、116を回転させることにより、移動範囲S1内で保持部119の位置及び向きを変更することができる。また、ロボットアーム20は、回転体112、113、114、115、116を回転させることにより、移動範囲S2内で保持部119の位置及び向きを変更することができる。なお、本実施形態では、ロボットアーム10、20は、5個の回転体及び1個の腕部で構成されているが、本発明は、これらの数に限定されない。
【0024】
ロボットアーム10の回転体112、113、114、115、116は、それぞれサーボモータ10aにより回転駆動させられる。ロボットアーム20の回転体112、113、114、115、116は、それぞれサーボモータ20aにより回転駆動させられる。
【0025】
制御部15は、サーボモータ10aをロック状態とフリー状態に切り替えることができる。サーボモータ10aが、ロック状態で保持された場合に、ロボットアーム10の移動負荷が大きい。このとき、作業者は、ロボットアーム10を直接動かすことが難しい。一方、サーボモータ10aが、フリー状態で保持された場合に、ロボットアーム10の移動負荷が小さい。このとき、作業者は、ロボットアーム10を容易に直接動かすことができる。なお、サーボモータ10aがフリー状態で保持された場合でも、ロボットアーム10に設けられたブレーキ(不図示)をオンにすることで、ロボットアーム10の移動負荷が大きくなる。このとき、作業者は、ロボットアーム10を直接動かすことが難しい。
【0026】
また、制御部15は、サーボモータ10aのロック状態とフリー状態とを短周期で交互に切り替えてロボットアーム10の移動負荷を制御できる。サーボモータ10aのロック状態とフリー状態とを短周期で交互に切り替えた場合のロボットアーム10の移動負荷は、サーボモータ10aがフリー状態のときよりも大きく、サーボモータ10aがロック状態のときよりも小さい。これにより、サーボモータ10aのロック状態とフリー状態とを短周期で交互に切り替えることで、ロボットアーム10の手動操作感を容易に変更できる。
【0027】
また、ロック状態の周期を長くすることにより、ロボットアーム10の移動負荷が大きくなる。ロック状態の周期を短くすることにより、ロボットアーム10の移動負荷が小さくなる。
【0028】
また、ロック状態の周期を段階的に長くすることにより、ロボットアーム10の移動負荷が段階的に大きくなる。このとき、ロボットアーム10の手動操作感が段階的に重くなる。一方、ロック状態の周期を段階的に短くすることにより、ロボットアーム10の移動負荷が段階的に小さくなる。このとき、ロボットアーム10の手動操作感が段階的に軽くなる。
【0029】
(3.ロボットシステムの動作)
【0030】
図3は、ロボットシステム1のダイレクトティーチングモード実行中の動作の一例を示すチャート図である。ロボットシステム1は、記憶部13に記憶されたプログラムに従って制御部15が、演算処理を実行することにより動作する。
【0031】
また、記憶部13は、ロボットアーム20の移動範囲S2内において、所定の進入禁止領域W2が予め記憶されている。進入禁止領域W2は、例えば、移動範囲S2内に配置された障害物の周囲に設定される。また、記憶部13は、対応領域W1が予め記憶されている。対応領域W1は、ロボットアーム10の移動範囲S1内において、進入禁止領域W2に対応する領域である。ロボットアーム10が対応領域W1に進入した場合に連動するロボットアーム20も進入禁止領域W2に進入する。
【0032】
ステップS1では、ダイレクトティーチングモードの実行が開始され、制御部15が、サーボモータ10aをフリー状態に切り替える。作業者が、ロボットアーム10を直接動かしたときに、ロボットアーム20が、ロボットアーム10に連動して動作する。このとき、ロボットアーム20の連動動作における軌道は、記憶部13に記憶される。
【0033】
ステップS2では、制御部15が、ロボットアーム10及びロボットアーム20の連動動作中に、ロボットアーム20が進入禁止領域W2に進入しているか否かを判断する。ロボットアーム20が、進入禁止領域W2に進入していない場合は、ステップS9に移行する。ロボットアーム20が、進入禁止領域W2に進入した場合は、ステップS3に移行する。
【0034】
ステップS3では、制御部15は、ロボットアーム10の移動負荷を大きくする。作業者は、ロボットアーム10の移動負荷が大きくなったことに気づき、連動するロボットアーム20が進入禁止領域W2に移動したことを直感的に感知できる。このとき、作業者は、ロボットアーム10を直接動かして対応領域W1から抜け出そうとする。これにより、ロボットアーム20を進入禁止領域W2から抜け出させることができる。
【0035】
従って、ロボットアーム20が、進入禁止領域W2をオーバーランし、例えば、ロボットアーム20の保持部119が、障害物などに衝突することを防止できる。
【0036】
ステップS4では、制御部15が、ロボットアーム10が対応領域W1に進入した状態にあるか否かを位置検出部11により判断する。また、制御部15が、ロボットアーム10が対応領域W1に進入した状態にあると判断した場合に、ステップS4では、制御部15が、ロボットアーム10の動作が対応領域W1から抜け出す方向か否かを位置検出部11により判断する。ここで、対応領域W1から抜け出さない方向とは、対応領域W1内で対応領域W1の外側から内側に進入する方向のことである。また、制御部15は、対応領域W1にロボットアーム10が進入したことを検出したときに時間の測定を開始する。
【0037】
ロボットアーム10が、対応領域W1に進入した状態にある場合は、ステップS5に移行する。ロボットアーム10が、対応領域W1に進入した状態にない場合は、ステップS8に移行する。
【0038】
ステップS5では、ステップS4において、ロボットアーム10の動作が対応領域W1から抜け出す方向にあることが検出された場合に、ロボットアーム10の移動負荷を段階的に小さく変化させる。一方、ロボットアーム10の動作が対応領域W1から抜け出さない方向にあることが検出された場合に、ロボットアーム10の移動負荷を段階的に大きく変化させる。
【0039】
作業者は、直接動かすロボットアーム10の移動負荷が段階的に小さくなっていることに気づいた場合に、ロボットアーム10が対応領域W1から抜け出す方向に移動していることを直感的に感知できる。一方、作業者は、直接動かすロボットアーム10の移動負荷が段階的に大きくなっていることに気づいた場合に、ロボットアーム10が対応領域W1から抜け出す方向に移動していないことを直感的に感知できる。これにより、作業者は、対応領域W1から抜け出す方向にロボットアーム10を直接動かし、連動するロボットアーム20を進入禁止領域W2から抜け出させることができる。
【0040】
ステップS6では、ロボットアーム10が、対応領域W1に進入してから所定時間が経過しているか否かを判断する。所定時間を経過していない場合は、ステップS4に戻ってステップS4と、ステップS5と、ステップS6と、を繰り替えす。所定時間を経過している場合は、作業者が自力でロボットアーム10を対応領域W1から抜け出させることは難しいと判断してステップS7に移行する。
【0041】
ステップS7では、制御部15が、サーボモータ10a及び20aを駆動してロボットアーム10、20を所定の復帰位置にそれぞれ移動させる。復帰位置は、対応領域W1及び進入禁止領域W2の領域外に位置し、記憶部13に予め記憶されている。
【0042】
このとき、サーボモータ10aの駆動によりロボットアーム10が動くので、ロボットアーム10の移動負荷が大きい。従って、作業者は、ロボットアーム10を直接動かすことができない。このため、作業者は、ロボットアーム10が復帰位置に自動で移動していることを直感的に感知できる。一対のロボットアーム10、20をそれぞれ所定の復帰位置に移動させることにより、ロボットアーム10、20の連動動作を迅速に再開できる。
【0043】
ステップS8では、制御部15が、サーボモータ10aをフリー状態に切り替える。作業者は、直接動かすロボットアーム10の移動負荷がフリー状態に戻っていることに気づいた場合に、ロボットアーム10が、対応領域W1から抜け出してロボットアーム20と連動していることを直感的に感知できる。
【0044】
ステップS9では、ダイレクトティーチングモードを終了するか否かを判断する。ダイレクトティーチングモードの終了は、例えば、作業者が、ロボットアーム20に記憶させる一連の動作を実行した後に行われる。ダイレクトティーチングモードの終了が実行されない場合は、ステップS1に戻り、ステップS1~ステップS9を繰り返す。
【0045】
以上より、制御部15は、ダイレクトティーチングモードの実行時に、進入禁止領域W2にロボットアーム20が進入したことを位置検出部21により検出したときに、ロボットアーム10の移動負荷を変化させる(ステップS3)。作業者は、ロボットアーム10の移動負荷が大きくなったことに気づき、連動するロボットアーム20が進入禁止領域W2に移動したことを直感的に感知できる。このとき、作業者は、ロボットアーム10を直接動かして対応領域W1から抜け出そうとする。これにより、ロボットアーム20を進入禁止領域W2から抜け出させることができる。従って、製造コストを削減しながら、ロボットアーム20が所定の進入禁止領域W2に進入することを防止できるロボットシステム1を提供できる。
【0046】
また、制御部15は、ロボットアーム10が、対応領域W1から抜け出す方向に移動していることを位置検出部21により検出したときに(ステップS4)、ロボットアーム10の移動負荷を段階的に小さく変化させる(ステップS5)。
【0047】
このとき、制御部15は、サーボモータ10aのロック状態とフリー状態とを短周期で交互に切り替え、ロック状態の周期を段階的に短くしてロボットアーム10の移動負荷を段階的に小さく変化させる。
【0048】
作業者は、直接動かすロボットアーム10の移動負荷が段階的に小さくなっていることに気づき、連動するロボットアーム20が、進入禁止領域W2内から抜け出す方向に移動していることを直感的に感知できる。
【0049】
また、制御部15は、ロボットアーム10が、対応領域W1内で対応領域W1の外側から内側に進入する方向に移動していることを位置検出部21により検出したときに(ステップS4)、ロボットアーム10の移動負荷を段階的に大きく変化させる(ステップS5)。
【0050】
このとき、制御部15は、サーボモータ10aのロック状態とフリー状態とを短周期で交互に切り替え、ロック状態の周期を段階的に長くしてロボットアーム10の移動負荷を段階的に大きく変化させる。
【0051】
作業者は、直接動かすロボットアーム10の移動負荷が段階的に大きくなっていることに気づき、連動するロボットアーム20が、進入禁止領域W2内を進入する方向に移動していることを直感的に感知できる。これにより、作業者は、対応領域W1から抜け出す方向にロボットアーム10を直接動かし、連動するロボットアーム20を進入禁止領域W2から抜け出させることができる。
【0052】
なお、ステップS2において、制御部15は、進入禁止領域W2にロボットアーム20が進入したことを位置検出部21により検出したときに、ロボットアーム10の移動動作を停止させてもよい。ロボットアーム10の移動動作の停止は、サーボモータ10aをロック状態に切り替えることにより実行できる。なお、サーボモータ20aがフリー状態であっても、ブレーキ(不図示)をかけてロボットアーム10の移動動作を停止してもよい。
【0053】
作業者は、ロボットアーム10の移動動作が停止されるとロボットアーム10を動かせなくなる。これにより、連動するロボットアーム20が進入禁止領域W2に移動したことを直感的に感知できる。また、ロボットアーム10の移動動作が停止されれば、ロボットアーム10に連動して動作するロボットアーム20も移動動作が停止する。これにより、ロボットアーム20が進入禁止領域W2をオーバーランすることを確実に防止できる。
【0054】
なお、ロボットアーム10の移動動作を停止した場合、所定時間経過後に、制御部15が、サーボモータ10a及び20aを駆動してロボットアーム10、20を所定の復帰位置にそれぞれ移動させることにより、ロボットアーム10、20の連動動作を迅速に再開できる(ステップS6、ステップS7参照)。
【0055】
また、ステップS2において、制御部15は、進入禁止領域W2にロボットアーム20が進入したことを位置検出部21により検出したときに、ロボットアーム20のロボットアーム10に対する連動動作を解除してもよい。これにより、ロボットアーム20が進入禁止領域W2をオーバーランすることを確実に防止できる。
【0056】
また、制御部15は、進入禁止領域W2にロボットアーム20が進入したことを位置検出部21により検出したときに、所定時間経過後に一対のロボットアーム10、20を所定の復帰位置にそれぞれ移動させる(ステップS7)。一対のロボットアーム10、20をそれぞれ所定の復帰位置に移動させることにより、一対のロボットアーム10、20の連動動作を迅速に再開できる。
【0057】
なお、ステップS4において、制御部15は、ロボットアーム10の移動範囲S1内において、対応領域W1にロボットアーム10が所定距離以上進入していること位置検出部21により検出したときに、ステップS8において、一対のロボットアーム10、20を復帰位置にそれぞれ移動させなくてもよい。制御部15は、ロボットアーム10が復帰位置から大きく離れた位置に移動しており、ロボットアーム20に何らかのエラーが発生している可能性が高く、連動動作を再開させることが難しいと判断する。
【0058】
なお、本実施形態では、ダイレクトティーチングモードの実行時に、作業者がロボットアーム10を直接動かしたときに、ロボットアーム20をロボットアーム10に連動して動作させたが、作業者は、ロボットアーム20を直接動かしてもよい。これにより、作業者がロボットアーム20を直接動かしてロボットアーム10にタスク実行のための動作を覚えさせることができる。従って、作業者は、ロボットアーム10、20のいずれを直接動かしてもよく、ロボットシステム1の使用効率が向上する。
【0059】
また、図4は、変形例に係るロボットシステム1のハードウェア構成を示すブロック図である。本実施形態では、一つの制御部15で一対のロボットアーム10、20を制御したが、ネットワークで双方向に接続された制御部115、215で一対のロボットアーム10、20をそれぞれ制御してもよい。
【0060】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図5はロボットシステム1のハードウェア構成を示すブロック図である。説明の便宜上、前述の図1図4に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付す。第2実施形態ではロボットシステム1が、加速度検出部12をさらに備える点が第1実施形態とは異なる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0061】
加速度検出部12は、制御部15に接続される。加速度検出部12は、ロボットアーム10に配置され、ロボットアーム10の加速度を検出する。具体的には、加速度検出部12は、ロボットアーム10の保持部119の加速度を検出する。
【0062】
制御部15は、ダイレクトティーチングモードの実行中に、加速度検出部12が所定値以上の加速度を検出した場合に、ロボットアーム20のロボットアーム10に対する連動動作を解除する。これにより、ロボットアーム10に連動するロボットアーム20が所定値以上の加速度で移動することが防止される。従って、例えば、ロボットアーム20の周囲に他の作業者がいる場合に、他の作業者にロボットアーム20が接触する可能性を低減できる。
【0063】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図6はロボットシステム1のハードウェア構成を示すブロック図である。説明の便宜上、前述の図1図4に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付す。第3実施形態ではロボットシステム1が、エリア検出部25をさらに備える点が第1実施形態とは異なる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0064】
エリア検出部25は、制御部15に接続される。エリア検出部25は、ロボットアーム20に配置され、ロボットアーム20の周囲の障害物を検出する。具体的には、エリア検出部25は、ロボットアーム20の保持部119の周囲の障害物を検出する。エリア検出部25として、例えば、超音波センサ等が用いられる。
【0065】
制御部15は、進入禁止領域W2が予め記憶されていない場合でも、エリア検出部25が検出したエリアを進入禁止領域W2と判定する。これにより、ダイレクトティーチングモードの実行中に障害物が現れた場合でも、ロボットアーム20が障害物に接触することを防止できる。
【0066】
<5.その他>
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、上記実施形態は適宜任意に組み合わせることができる。例えば、エリア検出部25及び加速度検出部12を制御部15に接続してもよい。このとき、制御部15は、加速度検出部12が、所定値以上の加速度を検出した場合に、ロボットアーム20のロボットアーム20に対する連動動作を解除し、エリア検出部25が、障害物を検出したときに、障害物の周囲の領域を進入禁止領域W2に設定する。
【0067】
また、制御部15は、進入禁止領域W2にロボットアーム20が進入したことを位置検出部21により検出したときに、ロボットアーム20のロボットアーム10に対する連動動作を解除し、ロボットアーム10の移動動作を停止してもよい。これにより、ロボットアーム20が進入禁止領域W2をオーバーランすることをより確実に防止できる。
【0068】
このとき、制御部15は、所定時間経過後に一対のロボットアーム10、20を所定の復帰位置にそれぞれ移動させてもよい。一対のロボットアーム10、20をそれぞれ所定の復帰位置に移動させることにより、一対のロボットアーム10、20の連動動作を迅速に再開できる。
【0069】
<6.付記>
以上のように、本開示の一態様に係るロボットシステム(1)は、所定の範囲内をそれぞれ移動可能な一対のロボットアーム(10、20)と、一対の前記ロボットアームの位置をそれぞれ検出する位置検出部(11、21)と、一対の前記ロボットアームの動作を制御する制御部(15)と、を備える。前記制御部は、作業者が一方の前記ロボットアームを直接動かしたときに、他方の前記ロボットアームが一方の前記ロボットアームに連動して動作するダイレクトティーチングモードを実行可能である。前記制御部は、前記ダイレクトティーチングモードの実行時に、所定の進入禁止領域(W2)に他方の前記ロボットアームが進入したことを前記位置検出部により検出したときに、一方の前記ロボットアームの移動負荷を変化させる(第1の構成)。
【0070】
また、上記第1の構成において、前記制御部は、前記進入禁止領域に他方の前記ロボットアームが進入したことを前記位置検出部により検出したときに、他方の前記ロボットアームの一方の前記ロボットアームに対する連動動作を解除する構成としてもよい(第2の構成)。
【0071】
また、上記第1または第2の構成において、前記制御部は、前記進入禁止領域に他方の前記ロボットアームが進入したことを前記位置検出部により検出したときに、一方の前記ロボットアームの移動動作を停止する構成としてもよい(第3の構成)。
【0072】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記制御部は、前記進入禁止領域に他方の前記ロボットアームが進入したことを前記位置検出部により検出したときに、所定時間経過後に一対の前記ロボットアームを所定の復帰位置にそれぞれ移動させる構成としてもよい(第4の構成)。
【0073】
また、上記第4の構成において、前記制御部は、一方の前記ロボットアームの移動範囲内における前記進入禁止領域に対応する対応領域において、一方の前記ロボットアームが、所定距離以上進入していることを前記位置検出部により検出したときに、一対の前記ロボットアームを前記復帰位置にそれぞれ移動させない構成としてもよい(第5の構成)。
【0074】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記制御部は、一方の前記ロボットアームの移動範囲内における前記進入禁止領域に対応する対応領域において、一方の前記ロボットアームが、前記対応領域内で前記対応領域の外側から内側に進入する方向に移動していることを前記位置検出部により検出したときに、一方の前記ロボットアームの移動負荷を段階的に大きく変化させる構成としてもよい(第6の構成)。
【0075】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記制御部は、一方の前記ロボットアームの移動範囲内における前記進入禁止領域に対応する対応領域において、一方の前記ロボットアームが、前記対応領域内から抜け出す方向に移動していること前記位置検出部により検出したときに、一方の前記ロボットアームの移動負荷を段階的に小さく変化させる構成としてもよい(第7の構成)。
【0076】
また、上記第1から第7のいずれかの構成において、一方の前記ロボットアームの加速度を検出する加速度検出部(12)をさらに備え、前記制御部は、前記加速度検出部が、所定値以上の加速度を検出した場合に、他方の前記ロボットアームの一方の前記ロボットアームに対する連動動作を解除する構成としてもよい(第8の構成)。
【0077】
また、上記第1から第8のいずれかの構成において、他方の前記ロボットアームの周囲の障害物を検出するエリア検出部(25)をさらに備え、前記制御部は、前記エリア検出部が、障害物を検出したときに、障害物の周囲の領域を前記進入禁止領域に設定する構成としてもよい(第9の構成)。
【0078】
また、上記第1から第9のいずれかの構成において、前記ロボットアームはモータにより駆動され、前記制御部は、前記モータのロック状態とフリー状態を短周期で交互に切り替えて前記ロボットアームの移動負荷を制御する構成としてもよい(第10の構成)。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によると、ダイレクトティーチングモードを実行可能なロボットシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ロボットシステム
10、20 ロボットアーム
10a、20a サーボモータ(モータ)
11、21 位置検出部
12 加速度検出部
13 記憶部
15、115、215 制御部
15a、115a、215a CPU
25 エリア検出部
112、113、114、115、116 回転体
117 腕部
118 ジョイント部
119 保持部
J 回転軸
S1、S2 移動範囲
W1 対応領域
W2 進入禁止領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6