(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046901
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20240329BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240329BHJP
B60K 35/00 20240101ALI20240329BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20240329BHJP
G09G 5/377 20060101ALI20240329BHJP
G06F 3/14 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G09G5/00 X
B60R11/02 C
B60K35/00 Z
G09G5/00 510Z
G09G5/00 530T
G09G5/36 510A
G09G5/36 520M
G09G5/00 550D
G06F3/14 320A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152259
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
【テーマコード(参考)】
3D020
3D344
5B069
5C182
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BB01
3D020BC03
3D020BD05
3D020BE03
3D344AA19
3D344AB01
3D344AD01
5B069AA12
5B069BA04
5B069BB15
5B069NA01
5B069NA04
5C182AA02
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5C182AC02
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5C182BA14
5C182BA75
5C182CB54
5C182CC21
5C182DA62
5C182DA70
(57)【要約】
【課題】 機能安全の観点から信頼性の高い車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 本開示の車両用表示装置Mは、画像を表示するディスプレイ2と、ディスプレイ2に車両情報を表す画像を表示させるマルチコアのSOC1と、を備える。SOC1は、通常時にディスプレイ2に車両情報を表示させる通常表示制御をする第1プロセッサコア11Aと、通常表示制御においてディスプレイ2に車両情報が正しく表示されない不正表示状態であるときに、ディスプレイ2に車両情報を表示させる代替表示制御をする第2プロセッサコア11Bと、を内蔵する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示するディスプレイと、前記ディスプレイに車両情報を表す画像を表示させるマルチコアのSOCと、を備えた車両用表示装置において、
前記SOCは、通常時に前記ディスプレイに前記車両情報を表示させる通常表示制御をする第1プロセッサコアと、前記通常表示制御において前記ディスプレイに前記車両情報が正しく表示されない不正表示状態であるときに前記ディスプレイに前記車両情報を表示させる代替表示制御をする第2プロセッサコアと、を内蔵する、
車両用表示装置。
【請求項2】
前記SOCは、複数のレイヤを合成した画面を前記ディスプレイに表示させ、
前記第1プロセッサコアは、前記通常表示制御において第1レイヤに前記車両情報を表す第1画像を描画し、
前記第2プロセッサコアは、前記代替表示において前記第1レイヤよりも上層の第2レイヤに前記車両情報を表す第2画像を描画する、
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記第1画像は、走行速度と警告灯と車両自動制御状態を含み、
前記第2画像は、前記車両自動制御状態を含まず、前記走行速度と前記警告灯を含む、
請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記SOCは、前記不正表示状態と判定すると、前記第1プロセッサコアの再起動を実行する、
請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記SOCは、前記第1レイヤと前記第2レイヤの間に位置する第3レイヤに前記車両情報を表す第3画像を描画する第3プロセッサコアを備え、
前記第2プロセッサコアは、前記SOCの起動時に前記第1プロセッサコア及び前記第3プロセッサコアよりも先立って起動し、
前記第3プロセッサコアは、前記SOCの起動時に前記第2プロセッサコアが起動後に前記第1プロセッサコアに先立って起動し、前記第1プロセッサコアが前記通常表示制御を開始するまでの間、前記第3レイヤに前記第3画像を描画する、
請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記第1画像は、オープニング演出画像を含まず、
前記第2画像は、前記オープニング演出画像を含まず、
前記第3画像は、前記走行速度と前記車両自動制御状態を含まず、前記警告灯と前記オープニング演出画像を含む、
請求項5に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記第1プロセッサコアは、3D描画により前記第1レイヤに前記第1画像を描画し、
前記第2プロセッサコアは、ビットブロック転送により前記第2レイヤに前記第2画像を描画し、
前記第3プロセッサコアは、2D描画により前記第3レイヤに前記第3画像を描画する、
請求項6に記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記SOCは、前記第1プロセッサの動作クロックの異常を検出すると、前記不正表示状態であると判定する、
請求項1-7の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項9】
前記SOCは、前記第1レイヤに描画されたデータの誤りを検出すると、前記不正表示状態であると判定する、
請求項1-7の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項10】
前記SOCは、前記ディスプレイに出力する映像信号データの誤りを検出すると、前記不正表示状態であると判定する、
請求項1-7の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両情報を画像で表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両情報を含む情報画像を表示する車両用表示装置が特許文献1に開示されている。この車両用表示装置は、グラフィックコントローラなどの描画処理手段によって情報画像を含む複数のレイヤを合成して画像表示装置に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車両用表示装置においては、描画処理手段が誤動作した場合に情報画像が表示できなくなる。
【0005】
本開示は、上述した課題を考慮して、機能安全の観点から信頼性の高い車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両用表示装置は、
画像を表示するディスプレイと、前記ディスプレイに車両情報を表す画像を表示させるマルチコアのSOCと、を備えた車両用表示装置において、
前記SOCは、通常時に前記ディスプレイに前記車両情報を表示させる通常表示制御をする第1プロセッサコアと、前記通常表示制御において前記ディスプレイに前記車両情報が表示されない不正表示状態であるときに前記ディスプレイに前記車両情報を表示させる代替表示制御をする第2プロセッサコアと、を内蔵する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、機能安全の観点から信頼性の高い車両用表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
車両用表示装置Mは、車両情報を車両の搭乗者に表示する計器である。車両用表示装置Mは、車両のインストルメントパネルに搭載される。
【0010】
車両情報とは、例えば、車両の走行速度、エンジン回転数、車両自動制御状態、警告灯、残燃料量(残エネルギー量)、タイヤ空気圧、経路案内情報、車載カメラの映像、などの車両の運転に関わる情報である。
【0011】
車両自動制御状態とは、車両の加減速や操舵の制御を車両が自動制御する自動運転モードの動作状態である。自動運転モードは、例えば、前方車両との車間距離を一定に保って一定の速度で走行するオートパイロットモード、運転者が方向指示器を操作すると車両が操舵を制御して車線を変更するオートレーンチェンジモード、車両が駐車可能と判断した場所に車両を移動させて駐車するオートパークモード、などである。
【0012】
オートパイロットモードの動作状態とは、例えば、目標走行速度、前方車両の検出状態、前方車両との車間距離、運転者の運転準備状態、オートパイロットモードの中止予告警告、などである。運転者の運転準備状態とは、運転者がステアリングに手を置き即座に手動で運転可能な状態であるか否かを判定したものである。
【0013】
オートレーンチェンジモードの動作状態とは、例えば、車線変更先の障害物(後続車の有無)の検出状態、車線変更の際の自車両の移動経路の案内、運転者の運転準備状態、オートレーンチェンジの中止予告警告、などである。
【0014】
オートパークモードの動作状態とは、例えば、地図上(または外部カメラが撮像した画像上)の駐車可能な場所の候補、駐車予定の場所、外部カメラが撮像した車両周辺の画像、運転者の運転準備状態、オートパークモードの中止予告警告、などである。
【0015】
車両用表示装置Mは、SOC(System On a Chip)1と、ディスプレイ2を備える。
【0016】
SOC1は、車両用表示装置Mの動作に必要な機能のすべてを1つの集積回路チップに実装した統合半導体チップである。車両用表示装置Mの動作に必要な機能とは、ディスプレイ2の車両情報を表示させる機能(計器表示機能)である。SOC1は、車両の周囲を撮像する車載カメラCから車両の周囲を撮像した映像信号を取得し、必要に応じてディスプレイ2に表示させる。また、SOC1は、車内ネットワークNを介して車載コントロールユニットEから取得した車両情報をディスプレイ2に表示させる。
【0017】
ディスプレイ2は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの画像を表示する機器である。ディスプレイ2は、SOC1が出力した映像信号を入力し、この映像信号に基づく画像を画面に表示する。
【0018】
(SOCの構成)
SOC1は、第1プロセッサコア11A、第2プロセッサコア11B、第3プロセッサコア11C、PVTモニタ部12、通信部13、ビデオ入力部14、ディスプレイ制御部15、ROM16、RAM17、2D描画部18、3D描画部19、を内蔵する。
【0019】
第1プロセッサコア11Aは、他のコアとは別に独立して機能する演算装置である。
【0020】
第1プロセッサコア11Aは、ROM16に格納されたOS(Operating System)及びこのOS上で動作するプログラムをRAM17にロードして、動作を開始する。第1プロセッサコア11Aは、OSをロードするため、各プロセッサコア11A~11Cの中で最も起動時間が長い。
【0021】
第1プロセッサコア11Aは、後述する通常表示モードにおいて、車両情報を表す画像をRAM17の画面レイヤL1に対応する領域に描画する。
【0022】
第2プロセッサコア11Bは、他のコアとは別に独立して機能する演算装置である。第2プロセッサコア11Bは、内部メモリ11B1を内蔵している。内部メモリ11B1は、コア内ROMとコア内RAMを備える。
【0023】
第2プロセッサコア11Bは、コア内ROMに格納されたプログラムをコア内RAMにロードして動作を開始する。第2プロセッサコア11Bは、各プロセッサコア11A~11Cの中で最も起動時間が短い。
【0024】
第2プロセッサコア11Bは、暗号化された命令コード(暗号化命令コード)を復号して実行するセキュアプロセッサコアである。第2プロセッサコア11Bは、固有の鍵(コア固有鍵)を記憶するコア固有鍵記憶部を備える。内部メモリ11B1のコア内ROMは、暗号化されたプログラムを書き換え不可能な形式で格納している。第2プロセッサコア11Bは、コア固有鍵を用いてコア内ROMに格納されたプログラムの暗号化命令コードの認証を行い復号して実行する。
【0025】
第2プロセッサコア11Bは、後述する緊急表示モードにおいて、車両情報を表す画像をRAM17の画面レイヤL2に対応する領域に描画する。
【0026】
第3プロセッサコア11Cは、他のコアとは別に独立して機能する演算装置である。
【0027】
第3プロセッサコア11Cは、ROM16に格納されたプログラムをRAM17にロードして、動作を開始する。
【0028】
第3プロセッサコア11Cは、後述する起動演出表示モードにおいて、車両情報を表す画像をRAM17の画面レイヤL3に対応する領域に描画する。
【0029】
PVT(Process, Voltage and Temperature)モニタ部12は、各プロセッサコア11A~11Cの動作が正常か否かを監視する機能ブロックである。PVTモニタ部12は、各プロセッサコア11A~11Cに供給される電源電圧、動作クロックが正常であるかどうかを監視する。また、PVTモニタ部12は、各プロセッサコア11A~11Cの温度が動作保証範囲内であるか否かを監視する。
【0030】
通信部13は、所定の通信プロトコルに準じて通信を行う機能ブロックである。所定の通信プロトコルは、例えば、CAN(Controller Area Network)MOST(Media Oriented Systems Transport)、Ethernetなどである。通信部13は、車内ネットワークNを介して車載コントロールユニットEと通信して車両情報を取得し、RAM17に格納する。
【0031】
ビデオ入力部14は、所定の規格の映像信号を入力する機能ブロックである。所定の規格の映像信号とは、NTSC(National Television System Committee)、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)などである。ビデオ入力部14は、車載カメラCから車両の周囲を撮像した映像信号を入力し、RAM17に格納する。
【0032】
ディスプレイ制御部15は、ディスプレイ2に所定の規格の映像信号を出力し、ディスプレイ2に車両情報を表す画像を表示させる機能ブロックである。所定の規格の映像信号とは、LVDSやHDMI(登録商標)などである。
【0033】
図2を参照して説明する。ディスプレイ制御部15は、各プロセッサコア11A~11Cの演算により画面レイヤL1~L3を合成レイヤLとして重ね合わせて合成する。各画面レイヤL1~L3は下から順にL1、L3、L2の順になっている。ディスプレイ制御部15は、画面レイヤL1の上に画面レイヤL3を重ね、さらに画面レイヤL3の上に画面レイヤL2を重ねることで、1つの画面として合成レイヤLを重ね合わせて合成する。ディスプレイ制御部15は、合成レイヤLを表す映像信号をディスプレイ2に出力する。
【0034】
ROM16は、例えば、NAND型フラッシュメモリやNOR型フラッシュメモリである。
【0035】
RAM17は、例えば、DDR(Double Data Rate)方式でデータを転送するDDRSDRAMである。RAM17は、各プロセッサコア11A~11Cが演算したデータを一時的に格納するワークメモリである。
【0036】
2D描画部18は、2次元のベクターグラフィックまたはラスターグラフィックの画像描画をする機能ブロックである。
【0037】
3D描画部19は、3次元のコンピュータグラフィックの画像描画をする機能ブロックである。
【0038】
(SOC1の起動シーケンス)
SOC1の各プロセッサコア11A~11Cの起動について説明する。SOC1に電源が投入されると、最初に第2プロセッサコア11Bが起動する。第2プロセッサコア11Bは、自身の起動を完了すると、第3プロセッサコア11Cを起動させる。第3プロセッサコア11Cは、自身の起動を完了すると、第1プロセッサコア11Aを起動する。第3プロセッサコア11Cが起動完了した状態で、且つ、第1プロセッサコア11Aが起動完了するまでの間、SOC1は起動演出表示モードを実行する。
【0039】
(起動演出表示モード:起動表示制御)
起動演出表示モードについて説明する。
【0040】
第1プロセッサコア11Aは、画面レイヤL1に何も描画しない。また、第2プロセッサコア11Bも、画面レイヤL2に何も描画しない。何も描画しないとは、画面全体が透過度最大の完全に透明な無色である状態である。
【0041】
第3プロセッサコア11Cは、2D描画部18を制御して、車両情報を表す画像を画面レイヤL3に描画する。画面レイヤL3に描画される車両情報は、警告灯31、車両用表示装置Mが搭載される車両(あるいは車両製造企業)のトレードマーク32、起動の演出を飾る装飾33である。警告灯31は、車載バッテリの電圧異常などの警告に対応するシンボルマークを表す画像である。このトレードマーク32と装飾33は、車両用表示装置Mの起動を演出するオープニング演出画像である。オープニング演出画像は、例えばリング状の装飾33が回転する様態で見えるように、複数の装飾33を切り替えてアニメーションするものであってもよい。
【0042】
第2プロセッサコア11Bは、画面レイヤL2に何も描画しない。
【0043】
ディスプレイ制御部15は、画面レイヤL1~L3を合成レイヤLに合成し、
図4に示す画像をディスプレイ2の表示画面20に表示する。この起動演出表示モードでは、警告灯31を表示可能な状態であり、オープニング演出画像により車両用表示装置Mの起動を演出する表示となる。
【0044】
このオープニング演出画像の表示を完了し、且つ、第1プロセッサコア11Aの起動が完了すると、SOC1は通常表示モードに移行する。
【0045】
(通常表示モード:通常表示制御)
通常表示モードについて説明する。
【0046】
第1プロセッサコア11Aは、3D描画部19を制御して、車両情報を表す画像を画面レイヤL1に描画する。画面レイヤL1に描画される車両情報は、警告灯31、走行速度34、エンジン回転数35、車両自動制御状態36である。3D描画部19で描画する走行速度34は、指標目盛と指針を持つ指針式計器の様態である。3D描画部19で描画するエンジン回転数35は、走行速度34と同様に立体的な指針式計器の様態である。3D描画部19で描画する車両自動制御状態36は、自車両と周辺の道路上に制御状態を示すシンボルが配置した立体的な様態である。
【0047】
第3プロセッサコア11Cは、画面レイヤL3に何も描画しない。
【0048】
第1プロセッサコア11Bは、画面レイヤL2に何も描画しない。
【0049】
ディスプレイ制御部15は、画面レイヤL1~L3を合成レイヤLに合成し、
図5に示す画像をディスプレイ2の表示画面20に表示する。この通常表示モードでは、多様な車両情報を運転者に表示する。
【0050】
この通常表示モード中において、第2プロセッサコア11Bは、PVTモニタ部12によって第1プロセッサコア11Aを監視する。通常表示モードのときに第1プロセッサコア11Aの動作が異常であると判断された状態は、通常表示制御においてディスプレイ2に正しい車両情報が表示されない不正表示状態である。SOC1は、第1プロセッサコアAが不正表示状態となると、緊急表示モードに移行する。
【0051】
(緊急表示モード:代替表示制御)
緊急表示モードについて説明する。緊急表示モードでは、第1プロセッサコアの動作が異常であると判定された場合に移行するものである。
【0052】
第1プロセッサコアの動作が異常であるため、画面レイヤL1に描画されている画像は不明である。
【0053】
第3プロセッサコア11Cは、画面レイヤL3に何も描画しない。
【0054】
第2プロセッサコア11Bは、内部メモリ11B1に格納されている画像をビットブロック転送(BITBLT)して車両情報を表す画像を画面レイヤL2に描画する。画面レイヤL2に表示される車両情報は、警告灯31、走行速度34、警告メッセージ37である。これら車両情報は、不透過な背景の上に描画される。ビットブロック転送により描画される走行速度34は、デジタル数値で表現されたデジタル計器の様態である。警告メッセージ37は、通常表示モードから緊急表示モードに移行した理由、緊急表示モードにおいて運転者がすべき行動の提案を表すメッセージである。警告メッセージ37は、例えば、「メインプロセッサコアが故障」及び「すみやかに安全な場所に停車してください」というメッセージである。
【0055】
ディスプレイ制御部15は、画面レイヤL1~L3を合成レイヤLに合成し、
図6に示す画像をディスプレイ2の表示画面20に表示する。このとき、画面レイヤL1及びL3の状態に関わらず、最上層の画面レイヤL3によって上書きされて、画面レイヤL3が表示される。
【0056】
また、第2プロセッサコア11Bは、第1プロセッサコア11Aを再起動させる。第2プロセッサコア11Bは、PVTモニタ部12によって第1プロセッサコア11Aを監視している。第1プロセッサコア11Aが再起動により動作が正常になった場合は、SOC1は通常表示モードに復帰する。
【0057】
代替表示制御をする第2プロセッサコア11Bは、プログラムの改竄を防止できるシステム堅牢性の高いセキュアプロセッサコアであることから、第1プロセッサコア11Aが不正表示状態であっても安全に計器表示機能が提供できる。
【0058】
以上が本開示の車両用表示装置Mの第1実施形態の説明である。
【0059】
本開示の車両用表示装置Mは、画像を表示するディスプレイ2と、ディスプレイ2に車両情報を表す画像を表示させるマルチコアのSOC1と、を備える。SOC1は、通常時に前記ディスプレイ2に車両情報を表示させる通常表示制御をする第1プロセッサコア11Aと、通常表示制御においてディスプレイ2に車両情報が正しく表示されない不正表示状態であるときにディスプレイ2に車両情報を表示させる代替表示制御をする第2プロセッサコア11Bと、を内蔵する。
このように構成することで、第1プロセッサコア11Aの動作に異常が生じた場合でも第2プロセッサコア11Bによって車両情報を代替表示できるため、機能安全の観点から信頼性が高まる。
【0060】
(他の実施形態:変形例)
本開示の車両用表示装置Mは、以下の変更をしてもよい。
【0061】
車両用表示装置Mは、車両の運転席の前方にあるウインドシールドに虚像を表示するヘッドアップディスプレイに適用してもよい。
【0062】
SOC1は、車両情報の他に、エンターテイメント情報をディスプレイ2に表示させてもよい。エンターテイメント情報とは、カーオーディオの動作状態(再生中の音楽に関する情報など)、携帯電話と接続して携帯電話上で操作するアプリケーションの操作をする「CarPlay(登録商標)」の動作状態、などである。エンターテイメント情報は、第1プロセッサコア11Aが画面レイヤL1のみに描画することが好ましく、第2プロセッサコア11Bが描画する画面レイヤL2や第3プロセッサコア11Cが描画する画面レイヤL3には描画しないことが好ましい。
【0063】
通常時の表示において、SOC1の第3プロセッサコア11Cが画面レイヤL3に警告灯31を描画し、第1プロセッサコア11Aが画面レイヤL1に警告灯31を除く他の車両情報すべてを描画することで、1画面を構成してもよい。この構成の場合、通常時の描画負荷を2つのプロセッサコアに分散することができる。
【0064】
SOC1の計器表示機能を除く「他の機能」を別のICチップとする構成としてもよい。言い換えると、SOC1の計器表示機能をSiP(System in a Package)とし、他の機能を別のICチップとする構成としてもよい。他の機能とは、例えば、「CarPlay(登録商標)」と連携する機能、カーエアコンを制御する機能、カーオーディオを制御する機能、「Wi Fi(登録商標)」や「Bluetooth(登録商標)」などの無線通信規格で通信する機能、などである。つまり、車両用表示装置Mの主機能である計器表示機能を1つのチップに集約する構成であればよい。
【0065】
SOC1が内蔵するROM16及びRAM17の容量の拡張を目的として、SOC1に外部メモリを接続する構成としてもよい。
【0066】
CRC符号などの誤り検出符号による画面レイヤL1の画像の誤りを検出した場合に、不正表示状態であると判定してもよい。この場合、画面レイヤL1に描画された画像が正しくないため、正しい車両情報がディスプレイ2に表示されない。この場合、画面レイヤL1に画像を描画させる第1プロセッサコア11Aや3D描画部19の動作に異常が生じたことが原因であると推定できる。この誤り検出符号による画像の誤り検出は、画面レイヤL1全体で誤りを検出してもよいし、個別の車両情報を表す画像や所定の領域の誤りを検出してもよい。この誤り検出符号による画像の誤り検出は、ディスプレイ制御部15が実行してもよいし、別の機能ブロックで構成してもよい。
【0067】
RAM17に格納された合成レイヤL1のデータとディスプレイ制御部15が出力する映像信号のデータを比較して、合成レイヤL1が正しく映像信号に変換されてない場合に、不正表示状態であると判定してもよい。この場合、ディスプレイ制御部15の動作に異常が生じたことにより、正しい車両情報がディスプレイ2に表示されない。合成レイヤL1が正しく映像信号に変換されたかは、CRC符号などの誤り検出符号による誤り検出によってしてもよい。この映像信号の誤り検出は、ディスプレイ制御部15とは別の機能ブロックで構成することが好ましい。
【符号の説明】
【0068】
M …車両用表示装置
1 …SOC(マルチコアのSOC)
11A …第1プロセッサコア
11B …第2プロセッサコア
11B1…内部メモリ
11C …第3プロセッサコア
12 …PVTモニタ部
13 …通信部
14 …ビデオ入力部
15 …ディスプレイ制御部
16 …ROM
17 …RAM
18 …2D描画部
19 …3D描画部
2 …ディスプレイ
20 …表示画面
31 …警告灯
32 …トレードマーク(オープニング演出画像)
33 …装飾(オープニング演出画像)
34 …走行速度
35 …エンジン回転数
36 …車両自動制御状態
37 …警告メッセージ
C …車載カメラ
E …車載ECU
N …車内ネットワーク
L …合成レイヤ
L1 …画面レイヤ1(第1レイヤ)
L2 …画面レイヤ2(第2レイヤ)
L3 …画面レイヤ3(第3レイヤ)