(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046908
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】鋼板の識別装置および鋼板の識別方法
(51)【国際特許分類】
G06V 30/14 20220101AFI20240329BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20240329BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20240329BHJP
G06V 30/19 20220101ALI20240329BHJP
【FI】
G06V30/14 360Z
G06V30/14 340J
B21C51/00 R
B21B38/00 Z
G06V30/19 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152271
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智彦
【テーマコード(参考)】
5B029
5B064
【Fターム(参考)】
5B029CC27
5B064AA10
5B064CA08
5B064DA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】鋼板に施されたドットパターンから精度よく文字を認識し、識別する識別装置および識別方法を提供する。
【解決手段】厚鋼板1の表面の文字(固有番号11)を含む画像を撮像するカメラ2と、撮像した画像から文字を認識する文字認識手段3を備える識別装置100であって、文字認識手段3は、複数のしきい値で2値化処理し、認識文字のうち一致割合が所望の値となるものを認識文字として決定することと、他の文字画像部との位置関係を考慮し、文字の位置および範囲を推定した修正文字画像を登録文字と比較することとの、いずれか一方または両方の処理を行う。また、得られた文字列を命名法則で判定することが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板表面に表示された文字を識別する識別装置であって、
前記鋼板表面の前記文字を含む画像の撮像手段と、
撮像した画像から前記文字を認識する文字認識手段と、
を、備え、
前記文字認識手段が、
前記画像を所定のしきい値で絶対的または相対的2値化処理する画像処理部と、
前記画像処理部で2値化処理した画像から前記文字が記載されている領域を判別し、文字画像部を抽出する文字切出部と、
抽出した前記文字画像部を事前に記憶した登録文字と比較して、一致割合を取得する一致割合取得部と、
前記文字画像部との一致割合が所定の値以上の前記登録文字の一つを前記文字画像部があらわす認識文字として前記文字を決定する文字識別部と、
を有し、下記いずれか一方の機能または両方の機能を持つ、鋼板の識別装置。
機能A:前記画像処理部は、複数のしきい値で絶対的または相対的2値化処理し、前記文字切出部は、2値化処理したそれぞれの画像から文字画像部を抽出し、前記文字識別部は、前記複数のしきい値で2値化処理した画像から得られた前記認識文字のうち一致割合が所望の値となるものを前記文字として決定する。
機能B:前記文字切出部は、前記2値化処理した画像に対し、文字切出部が抽出した他の文字画像部との位置関係を考慮し、文字の位置および範囲を推定し、文字情報を補完した修正文字画像として取得し、前記一致割合取得部は、前記修正文字画像を前記登録文字と比較する。
【請求項2】
前記文字認識手段は、
さらに、決定した一連の文字列が、あらかじめ定められた命名法則に合致するか判定する文字列判定部を有する、請求項1に記載の鋼板の識別装置。
【請求項3】
コンピュータを用いて、鋼板の製造時に鋼板表面に表示された文字を識別するための識別方法であって、
前記鋼板表面の文字を含む画像の撮像工程と、
撮像した画像から前記文字を認識する文字認識工程と、
を、含み、
前記文字認識工程は、
前記画像を所定のしきい値で絶対的または相対的2値化処理する画像処理ステップと、
2値化処理した画像から前記文字が記載されている領域を判別し、文字画像部を抽出する文字切出ステップと、
抽出した前記文字画像部を事前に記憶した登録文字と比較して、一致割合を取得する一致割合取得ステップと、
前記文字画像部との一致割合が所定の値以上の前記登録文字の一つを前記文字画像部があらわす認識文字として決定する文字識別ステップと、
を含み、下記いずれか一方の処理または両方の処理を行う、鋼板の識別方法。
処理A:前記画像処理ステップでは、複数のしきい値で絶対的または相対的2値化処理し複数の画像を得て、前記文字切出ステップでは、2値化処理したそれぞれの画像から文字画像部を抽出し、前記文字識別ステップでは、前記複数のしきい値で2値化処理した画像から得られた前記認識文字のうち、一致割合が所望の値となるものを前記文字として決定する。
処理B:前記文字切出ステップでは、前記2値化処理した画像に対し、文字切出部が抽出した他の文字画像部との位置関係を考慮し、文字の位置および範囲を推定し、文字情報を補完した修正文字画像として取得し、前記一致割合取得ステップでは、前記修正文字画像を前記登録文字と比較する。
【請求項4】
前記文字認識工程に、
さらに、決定した一連の文字列が、あらかじめ定められた命名法則に合致するか判定する文字列判定ステップを含む、請求項3に記載の鋼板の識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板に施されたドットパターンから精度よく文字を認識し、鋼板を識別する装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厚板などの鋼板を製造する製造ラインでは、オンライン処理(製造ライン上で行う処理)やオフライン処理(製造ラインの外で行う処理)中の鋼板を管理するために、鋼板の固有番号(板番)などのマーキングをドットパターンで行う場合が多い。マーキングされた固有番号は、その後の処理の判断に利用されたり、向け先別に仕分けて出荷するための搬送時に利用されたりする。厚鋼板は、一般に薄鋼板と比較して表面が粗く(凹凸が激しく)、スケールなどで色調がまだらの場合がある。そこで、通常の2値化処理では認識の難しい文字情報の認識手段が開発されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、通常の2値化処理では1文字ごとに正しく切り出せない場合に、文字の複数要素に関する特徴量をうまく計算することで、文字の切り出しを行う技術が開示されている。また、特許文献2には、ドット文字の変形が生じた場合についても傾斜パターン、上下ずれパターン、波変形パターンを用意して照合することで変形文字についても認識する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-168076号公報
【特許文献2】特開2003-187187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、以下のような課題があった。ドット文字は、印字機器の不具合や印字後の環境によりドット文字の一部が欠けることがある。また、厚鋼板では表面の凹凸や汚れ、スケールにより画像にノイズが混入することがある。そのような場合、通常の画像認識方法では、認識率が大きく低下することが知られている。特許文献1や2に記載の技術では、文字の切り出しや文字の変形については、うまく画像認識することができるものの、ドット欠けやノイズが混入したドットパターンについての効果的に文字を認識する画像認識方法については課題であった。
【0006】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、鋼板に施されたドットパターンから精度よく文字を認識し、鋼板を識別する装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる鋼板の識別装置は、鋼板表面に表示された文字を識別する識別装置であって、前記鋼板表面の前記文字を含む画像の撮像手段と、撮像した画像から前記文字を認識する文字認識手段と、を、備え、前記文字認識手段が、前記画像を所定のしきい値で絶対的または相対的2値化処理する画像処理部と、前記画像処理部で2値化処理した画像から前記文字が記載されている領域を判別し、文字画像部を抽出する文字切出部と、抽出した前記文字画像部を事前に記憶した登録文字と比較して、一致割合を取得する一致割合取得部と、前記文字画像部との一致割合が所定の値以上の前記登録文字の一つを前記文字画像部があらわす認識文字として前記文字を決定する文字識別部と、を有し、下記いずれか一方の機能または両方の機能を持つことを特徴とする。
機能A:前記画像処理部は、複数のしきい値で絶対的または相対的2値化処理し、前記文字切出部は、2値化処理したそれぞれの画像から文字画像部を抽出し、前記文字識別部は、前記複数のしきい値で2値化処理した画像から得られた前記認識文字のうち一致割合が所望の値となるものを前記文字として決定する。
機能B:前記文字切出部は、前記2値化処理した画像に対し、文字切出部が抽出した他の文字画像部との位置関係を考慮し、文字の位置および範囲を推定し、文字情報を補完した修正文字画像として取得し、前記一致割合取得部は、前記修正文字画像を前記登録文字と比較する。
【0008】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる鋼板の識別方法は、コンピュータを用いて、鋼板の製造時に鋼板表面に表示された文字を識別するための識別方法であって、前記鋼板表面の文字を含む画像の撮像工程と、撮像した画像から前記文字を認識する文字認識工程と、を、含み、前記文字認識工程は、前記画像を所定のしきい値で絶対的または相対的2値化処理する画像処理ステップと、2値化処理した画像から前記文字が記載されている領域を判別し、文字画像部を抽出する文字切出ステップと、抽出した前記文字画像部を事前に記憶した登録文字と比較して、一致割合を取得する一致割合取得ステップと、前記文字画像部との一致割合が所定の値以上の前記登録文字の一つを前記文字画像部があらわす認識文字として決定する文字識別ステップと、を含み、下記いずれか一方の処理または両方の処理を行うことを特徴とする。
処理A:前記画像処理ステップでは、複数のしきい値で絶対的または相対的2値化処理し複数の画像を得て、前記文字切出ステップでは、2値化処理したそれぞれの画像から文字画像部を抽出し、前記文字識別ステップでは、前記複数のしきい値で2値化処理した画像から得られた前記認識文字のうち、一致割合が所望の値となるものを前記文字として決定する。
処理B:前記文字切出ステップでは、前記2値化処理した画像に対し、文字切出部が抽出した他の文字画像部との位置関係を考慮し、文字の位置および範囲を推定し、文字情報を補完した修正文字画像として取得し、前記一致割合取得ステップでは、前記修正文字画像を前記登録文字と比較する。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる鋼板の識別装置および方法によれば、ノイズが混入したり、ドットが一部欠けたりした文字であっても文字の位置および輪郭の検出を確実に行うことができ、文字識別の正答割合を向上させることが可能となる。したがって、作業者の視認による誤読を排除し、後続の処理を確実に実行することができ、また、誤配なく製品を出荷することができる。
【0010】
さらに、鋼板の識別装置および方法は、決定した一連の文字列が、あらかじめ定められた命名法則に合致するか判定するようにすれば、文字列全体として誤検出を排除できるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる鋼板の識別装置の構成を示す模式図である。
【
図2】上記実施形態の装置を用いた鋼板の識別方法のフロー図である。
【
図3】(a)~(f)は、上記実施形態にかかる文字認識の一例を示す画像である。
【
図4】鋼板に表示した固有番号のドット文字の画像例であって、(a)はドット文字が正常に認識できる画像を表し、(b)ドット文字の一部がかすれてかけている画像を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態にかかる鋼板の識別装置100の構成を示す模式図である。厚鋼板などの製造時には、鋼板1は製品長および製品幅にせん断され、必要に応じて、矯正や超音波探傷を施したうえで、出荷される。せん断され、製品サイズに整えられた鋼板1には、表示機によって板番を含む固有番号11が表示される。たとえば、ステンシルペーパーにドット状の孔を作成し、塗料をステンシルペーパーに吹き付けたり、ドットプリンタで印字したりして、文字や数字が鋼板1上に表示される。本実施形態では、鋼板1の表面に表示されたドット文字からなる一連の文字列、つまり、固有番号11を鋼板の識別装置100で識別する。そして、その鋼板1に指定されたその後の処理、たとえば、冷間矯正機による矯正条件や自動超音波探傷装置(AUT)による探傷試験の有無、製品倉庫の置き場指示および出荷指示に、識別した固有番号11を役立てるものである。
【0014】
本実施形態にかかる鋼板の識別装置100は、鋼板1の表面に表示されたドット文字からなる固有番号11を含む画像を撮像する撮像手段2と、撮像した画像から固有番号11を構成するドット文字を認識する文字認識手段3と、を備える。
【0015】
撮像手段2は、高解像度のCCDカメラなどを用いることが好ましい。撮像手段2にはカメラに接続されたビデオエンコーダを備えていてもよい。文字認識手段3は、画像処理部と、文字切出部と、一致割合取得部と、文字識別部と、を有している。文字列判定部を有していてもよい。文字認識手段3は、図示しない、制御部、記憶部、操作部、表示部および通信部等を備えていてもよく、各部をバスによって接続していてもよい。
【0016】
制御部は中央演算装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)等により構成されるコンピュータである。制御部のCPUは、操作部の操作に応じて、記憶部、たとえば、記憶部内のプログラムを記憶する記憶領域に記憶されているシステムプログラムや、各種処理プログラムを読みだしてRAMの作業領域に展開し、展開されたプログラムに従って、後述する各種処理を実行し、文字認識手段3の各機能を実現する。また、CPUは、バスを介して他の構成部から信号やデータを受け取ったり、制御信号や命令を送ったりするほか、通信部を介して、撮像手段2の画像を受け取ったり、固有番号11に対応する文字情報を送受信したりする。通信部は、他の機器と有線または無線で通信するように構成される。
【0017】
記憶部は、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性の半導体メモリやハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)等により構成される。記憶部は着脱可能なフラッシュメモリ等を含んでいてもよい。記憶部は、制御部において各種処理を実行するためのプログラムをはじめとする各種プログラムや、プログラムによる処理の実行に必要なパラメータ、または、処理結果等のデータを記憶する。記憶部に記憶されている各種プログラムはコンピュータにより読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部は当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0018】
本実施形態では、文字認識手段3の記憶部に、撮像手段2が撮影した鋼板1の表面の固有番号11を含む画像を解析し、ドット文字を認識するための、画像処理、文字切出処理、一致割合取得処理、文字識別処理、および、好ましくは文字列判定処理を行うプログラムが記憶されている。
【0019】
表示部は、たとえば、液晶ディスプレイ(LCD)やCRT、有機発光ダイオード(LED)などのモニターが例示される。文字認識手段3の記憶部には、表示内容を選択する表示処理のプログラムが記憶されている。
【0020】
通信部は、LAN(Local Area Network)アダプターやモデム、無線通信装置などを備え、通信ネットワークに接続された各装置との間の送受信を制御する。通信部は、たとえば、ネットワークカード等の通信用のインターフェースを備えるものであってもよい。通信部は、外部装置との間で各種データを送受信できるようになっており、たとえば、撮像手段2が撮影した画像データ等は、この通信部を介して文字認識手段3に入力され、識別した固有番号11の文字情報をプロセスコンピュータに出力する。操作部は、カーソルキー、数字入力キーおよび各種機能キーを備えたキーボードやマウス、タッチパネルなどのポインティングデバイスを備え、キー操作やマウス操作などにより入力された指示信号を制御部に出力する。
【0021】
図1の例では、文字認識手段3を1個のコンピュータとして構成しているが、機能ごとに異なる装置に分割しても構わない。
【0022】
文字認識手段3の画像処理部31は、撮像手段2から伝送された画像を2値化処理する。画像がカラー画像の場合には、グレー画像に変換することもできる。2値化手法として、画像全体に1つのしきい値で2値化する絶対的なしきい値による方法と、画像のピクセルごとに周辺のピクセルの明度値に基づいてしきい値を変化させる相対的なしきい値による方法を用いることができる。絶対的なしきい値による方法は、処理時間を短縮することができる。また、相対的なしきい値による方法は、輝度むらを含む画像の場合に文字認識精度を向上させることができる。画像処理部31では、たとえば、2値化画像の白のドットを膨張処理し、ドット文字をドットが連続化した文字の画像に置き替えることが好ましい。その後の、文字認識が容易になる。
図4に撮像した画像をグレー変換した例を示す。
図4(a)のような画像であれば、絶対的しきい値で2値化処理して文字認識可能である。一方、図(b)のように輝度むらがある場合には、少なくとも相対的しきい値による2値化によって認識精度を高める必要がある。場合によっては、文字欠けの補完処理を必要とする。
【0023】
文字認識手段3の文字切出部32は、2値化処理した画像または2値化後膨張処理し、ドットが連続化した画像からドット文字画像(文字画像部)を切出す。具体的には、文字の輪郭を抽出し、抽出した輪郭を囲う最小の矩形を文字領域(ドット文字枠)として、ドット文字画像を切出す。このようにして切出した画像には様々なノイズが混入する場合がある。鋼板1と撮像手段2との位置関係やカメラの解像度、視野など事前に把握したうえで、文字領域と認識する画像の幅と高さとが所定の範囲内にあるものだけをドット文字画像として、切出すことが好ましい。ドット文字画像の切出しは、撮像手段2が撮影した画像中の固有番号11が存在すると想定される領域を指定して行うことが好ましい。
【0024】
文字認識手段3の一致割合取得部33は、記憶部にあらかじめ記憶した登録文字の画像と、文字切出部32が抽出したドット文字画像を比較し、両者が一致している一致割合を計算する。たとえば、全ピクセル数中の一致ピクセル数を百分率で表現する。文字認識手段3の文字識別部34は対象ドット文字画像と一致割合が所定の値以上の登録文字の一つをそのドット文字画像があらわす認識文字とする。最も一致割合の大きい登録文字をそのドット文字画像があらわす認識文字とすることが好ましい。この作業を、文字切出部32が切出したすべてのドット文字画像について行い、固有番号11の文字列とする。
【0025】
文字認識手段3には、識別された固有番号11の文字列が、あらかじめ定められた命名法則に合致しているか判定する文字列判定部35を有することが好ましい。文字列の認識精度を向上させることができる。たとえば、命名法則には、文字の桁数、桁ごとの文字の種類(英字または数字)、スペースの有無と位置を含む。
【0026】
本実施形態では、文字の認識精度を向上させるために、文字認識手段3が以下の機能Aおよび機能Bのいずれか、または、両方を持つ。
【0027】
(機能A)
画像処理部31が、さらに、あらかじめ指定した複数のしきい値で絶対的または相対的2値化処理する。そして、文字切出部32は、それぞれの画像からドット文字画像を抽出し切出す。さらに、文字識別部34は対象となるドット文字画像について、異なるしきい値から得られた認識文字のうち、一致割合が所望の値となるものを固有番号11を表す文字として決定する。最も一致割合の大きい認識文字を、固有番号11を表す文字として決定することが好ましい。しきい値によっては、ノイズが過多となったり、かすれてしまったりして、一致割合が低下する場合がある。そのような場合に、しきい値を変えて、文字を認識することが好ましい。なお、この機能Aでは、複数の画像を処理することになるため、計算時間がかかることになる。たとえば、目標の解析時間を考慮したり、所定の一致割合未満のときに実行したりすることが好ましい。
【0028】
(機能B)
文字切出部32は、認識が可能であった他のドット文字画像との位置関係をもとに、2値化処理した画像のうちドット文字が存在すると推定されるドット文字画像の領域を、つまり、位置と範囲を設定して、文字情報を補完した修正ドット文字画像(修正文字画像)として切出す。一致割合取得部33は、この修正ドット文字画像と登録文字とを比較し、一致割合を算出する。その際、補完された領域は、対応する登録文字の領域と一致すると仮定することができる。あるいは、保管された領域を除き、登録文字との一致割合を求めることもできる。
【0029】
つぎに、上記実施形態にかかる鋼板の識別装置を用いた、鋼板の識別方法について、
図1および
図2のフローを参照しながら説明する。
【0030】
鋼鈑の製造ラインまたは製造ライン外の所定の位置に搬送された鋼板1の表面に表示された固有番号11を、たとえば、上部に設置された高解像度CCDカメラ(撮像手段2)で撮影する(撮像工程)。得られた画像はビデオエンコーダなどを介して、文字認識手段3であるパーソナルコンピュータに伝送される。
【0031】
文字認識手段3に伝送された画像は、たとえば、
図2の処理フローでドット文字が認識される(文字認識工程)。最初の画像処理ステップでは、画像を所定のしきい値で絶対的または相対的2値化処理する。2値化処理の手法、たとえば、カラーからグレーへの変換、絶対的2値化、相対的2値化などの処理手法やしきい値の決め方を選択する(S1)。その選択は、操作部からの入力に基づいてもよいし、過去の処理の学習結果から定めてもよい。定めた2値化手法およびしきい値に基づき、画像を2値化処理する(S2)。
【0032】
次に、文字切出しステップでは、得られた2値化画像のドットを連続化する膨張処理などを施し、ドット文字の領域を判別し、たとえば、輪郭に外接する矩形の文字領域をドット文字画像(文字画像部)として切出す(S3)。その際、ノイズを考慮して、所定の大きさの範囲の矩形枠のみをドット文字画像と認識することが好ましい。初期値では、ドット欠け(文字欠け)がないものとして(S4)、文字認識対象のドット文字画像として選択する(S5A)。
【0033】
次に、一致割合取得ステップでは、得られたドット文字画像と登録文字の画像とを比較し、両者が一致している一致割合を計算する。たとえば、ドット文字画像の全画素数に対する2値化した値がドット文字画像と登録文字画像とで一致している画素数の百分率を一致割合とする(S6)
【0034】
次に、文字識別ステップでは、一致割合が所定値、たとえば、70%以上の登録文字があるか、または、処理終了するか、を判定する(S7)。対象のドット文字画像に対し、すべての登録文字について一致割合が所定値未満であれば、事前に定めた規則に従い、しきい値を変更して画像の2値化処理のステップに戻る(S2)。たとえば、しきい値を5%増減する。増減それぞれ10回を限度とするなどを処理終了の条件に定めることができる。鋼板の識別処理にかけられる時間を勘案して定めることが好ましい。一致割合が所定値以上、または、処理終了であれば、対象となるドット文字画像に対し、2値化処理を複数回行ったかどうかを判定する(S8)。2値化処理が1回であれば、一致割合が所定値以上の登録文字の一つを認識文字として抽出する(S9A)。一致割合が最大の登録文字を認識文字として抽出することが好ましい。2値化処理が複数回であれば、それぞれの2値化処理で一致割合が所定値以上の文字のうち、一致割合が大きい方の登録文字の一つを対象ドット文字画像の認識文字として抽出する(S9B)。それぞれの2値化処理で一致割合が最大の登録文字のうち、最大の一致割合を示す登録文字を対象ドット文字画像の認識文字として抽出することが好ましい。
【0035】
次に、対象領域のすべての文字について認識処理が終了しているか判定する(S10)。たとえば、固有番号の文字画像の切出しにかかるS3において、ドット欠けなどにより、文字領域として認識されなかった場合には、認識文字桁数が不足する。その場合(S4の有)には、すでに認識したドット文字画像の矩形領域の大きさと位置とから、2値化処理した画像上でドット欠け文字の位置と領域とを推定し、修正ドット文字画像(修正文字画像)に補完する。
【0036】
たとえば、修正ドット文字画像と登録文字の画像との比較では、ドット欠け(文字欠け)部分を除いた画像領域で一致割合を算出する(S6)。その後の処理は、通常と同じとする。
【0037】
固有番号のすべての文字の認識が終了したら(S10)、得られた文字列があらかじめ定められた固有番号の命名法則に合致しているかどうか判定する(S11)。合致していれば、表示部に画像情報と併せて認識文字を表示したり、後続する処理を管理するプロセスコンピュータに伝送したりする。
得られた文字列が命名法則に違反している場合には、表示部にその旨表示するとともに警告を行い、操作者に知らせることが好ましい。
命名法則としては、文字桁数のほか、数字か英字かあるいは両方か、固定文字(日付)や空白の数や位置などが判定される。また、誤認識を生じやすい、たとえば、「0」(ゼロ)と「O」(オー)などは、一方のみを使用するように定めることが好ましい。
【実施例0038】
(実施例1)
図3に本実施形態にかかる鋼板の識別装置を用い、鋼板の識別処理を行った例を示す。
図3(a)は、カラーで撮像したドット文字画像4(文字画像部)をグレー変換したものである。
図3(b)では、各画素について、近傍の画素の輝度平均に対し、輝度が所定値高い場合、白と判定する相対的2値化処理を施し、2値化ドット文字画像41とした。
図3(c)では、白を膨張処理し、ドット文字を連続化し、連続化ドット文字画像42とした。
【0039】
図3(d)では、連続化ドット文字画像42の輪郭に外接する矩形枠が所定の大きさのものをドット文字枠43として選択した。
図3(d)の例では、「H」、「2」および「C」に対応する画像を選択した。ドット文字枠43内の画像を、あらかじめ記憶した登録文字の画像と比較し、一致割合がそれぞれ、89%、86%および88%である、H、2およびCを認識文字と決定した。
【0040】
つぎに、確定したHと2との画像上の距離、2とCとの画像上の距離、および、固有番号11の命名法則から取得した文字桁数などから、
図3(e)に示すように、ドット文字が存在すると仮定した修正ドット文字枠45を配置した。
図3(f)では、修正ドット文字枠45のうち、所定の範囲のドット文字画像を有するものを選択し、
図3(d)と同様に登録文字の画像と比較した。この場合、ドットの欠損した領域を除いた部分を用いて、一致割合を比較することが好ましい。1、4および6について、一致割合がそれぞれ82%、80%および81%と判定できた。また、6とCとの間に空白46が存在することが確認できた。さいごに、得られた文字列「H2146 C」を固有番号11の命名法則である文字桁数、各桁に配置された文字の種類ならびに空白の数および位置から、正しい固有番号11であるかどうかを判断した。その後、得られた文字列を固有番号11として、画像とともに表示して操作者に知らせるとともに、プロセスコンピュータに伝送して、以降の処理に供した。
【0041】
(実施例2)
上記実施形態にかかる(A)複数のしきい値で相対的2値化処理を行った場合、(B)ドット欠けを考慮した修正ドット文字画像(修正文字画像)を用いる場合、(A+B)AとBとのいずれも適用した場合と、所定のしきい値で相対的2値化処理を1回だけ行った従来法とを用いて、同じ100枚の厚鋼板に表示された固有番号を識別処理した。結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
表1中の認識精度は、100枚中正しく文字列を認識できた枚数を表す、A法、B法いずれも従来法より認識精度が向上し、両法を組み合わせることにより、全数を正しく認識できた。