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特開2024-46909コンクリートの養生方法、及び養生シート
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  • 特開-コンクリートの養生方法、及び養生シート 図1
  • 特開-コンクリートの養生方法、及び養生シート 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046909
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】コンクリートの養生方法、及び養生シート
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20240329BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20240329BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
E04G21/02 104
B28B11/24
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152275
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000199979
【氏名又は名称】川上産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】矢野 安則
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 功
(72)【発明者】
【氏名】涌井 優
(72)【発明者】
【氏名】島谷 幸博
【テーマコード(参考)】
2E172
4G055
4J200
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172EA03
4G055AA01
4G055BA10
4J200AA28
4J200BA11
4J200BA37
4J200BA38
4J200CA01
4J200DA12
4J200DA16
(57)【要約】
【課題】コンクリート構造物の施工期間を短縮できるコンクリートの養生方法、及びこの養生方法に使用できる養生シートを提供すること。
【解決手段】コンクリートの養生方法であって、生分解性を有するシート部材2を備えた養生シート1を使用して、コンクリート5の養生を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの養生方法であって、
生分解性を有するシート部材を備えた養生シートを使用して、コンクリートの養生を行う、コンクリートの養生方法。
【請求項2】
前記シート部材が、気泡緩衝材である、請求項1に記載のコンクリートの養生方法。
【請求項3】
前記養生シートが、接着部材と前記シート部材が積層された積層構造であり、
前記接着部材で、前記コンクリートに前記養生シートを付着させる、請求項1又は2に記載のコンクリートの養生方法。
【請求項4】
前記養生シートを使用して、埋戻しが行われる箇所に位置するコンクリートを養生する、請求項1又は2に記載のコンクリートの養生方法。
【請求項5】
コンクリートの養生に使用する養生シートであって、
シート部材と接着部材が積層された積層構造であり、
前記シート部材が、生分解性を有する、養生シート。
【請求項6】
前記シート部材が、気泡緩衝材である、請求項5に記載の養生シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの養生方法、及び養生シートに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の施工では、打設後のコンクリートに生じ得るひび割れ等の抑制を目的として、所定期間コンクリートの表面を保護する養生が行われている。コンクリートの養生には、一般的に、養生シートが使用されている。養生シートとしては、特許文献1、2に提案がされているような各種のものが知られている。
【0003】
通常、養生シートは、コンクリートの養生が終了するまで、コンクリートに粘着等されており、コンクリートの養生期間が終了したときに撤去される。このような養生シートを使用するコンクリート構造物の施工では、最終的に、養生シートを撤去する工程が必要となっている。
【0004】
また、コンクリート構造物の施工において、掘削した部分にコンクリートを打設し、このコンクリートの養生が終了した後に、掘削した部分を、土等で埋戻す埋戻しが行われる場合もある。埋戻しが行われる箇所に位置するコンクリートの養生を養生シートで行う場合、埋戻しは、養生シートの撤去が終了するまで行うことができない。換言すれば、コンクリートの養生が終了するまで、埋戻しできない。つまり、養生シートを使用して、埋戻しが行われる箇所に位置するコンクリートの養生を行うことは、コンクリート構造物の施工工期の短縮の妨げとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-6682号公報
【特許文献2】特開2020-200695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、コンクリート構造物の施工工期を短縮できるコンクリートの養生方法、及びこの養生方法に使用できる養生シートを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施の形態に係るコンクリートの養生方法は、生分解性を有するシート部材を備えた養生シートを使用して、コンクリートの養生を行う。
【0008】
前記シート部材を、気泡緩衝材としてもよい。
前記養生シートが、接着部材と前記シート部材が積層された積層構造であり、前記接着部材で、前記コンクリートに前記養生シートを付着させてもよい。
前記養生シートを使用して、埋戻しが行われる箇所に位置するコンクリートを養生してもよい。
【0009】
本開示の実施の形態に係る養生シートは、シート部材と接着部材が積層された積層構造であり、前記シート部材が、生分解性を有する。
【0010】
前記シート部材を、気泡緩衝材としてもよい。
【0011】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコンクリートの養生方法や、養生シートによれば、コンクリート構造物の施工工期を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るコンクリートの養生方法の一例を示す工程図である。
図2】(a)~(c)は、本実施形態の養生シートの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
<<コンクリートの養生方法>>
本実施形態に係るコンクリートの養生方法は、養生シート1を使用してコンクリートを養生する養生方法に関する。本実施形態に係るコンクリートの養生方法は、コンクリートを養生する養生シート1として、生分解性を有するシート部材2を備えた養生シート1を使用する。本実施形態に係るコンクリートの養生方法によれば、最終的に、養生シート1の全部、又は一部分が分解されることから、養生シート1の撤去が不要となる。本実施形態に係るコンクリートの養生方法によれば、養生シート1を撤去することなく、コンクリート構造物を施工できる。本実施形態に係るコンクリートの養生方法によれば、コンクリート構造物の施工工期を短縮できる。
【0016】
(養生シート)
本実施形態に係るコンクリートの養生方法で使用する養生シート1は、生分解性を有するシート部材2を備える。
【0017】
図2(a)~(c)は、本実施形態に係るコンクリートの養生方法で使用する養生シート1の一例を示す概略断面図である。図2(a)に示す形態の養生シート1は、生分解性を有するシート部材2のみからなる単層構造であり、図2(b)、図2(c)に示す形態の養生シート1は、生分解性を有するシート部材2を含む積層構造である。また、各図に示す形態において、シート部材2を、生分解性を有する複数の部材を積層した積層構造としてもよい。生分解性を有するシート部材2を備えれば、これ以外の形態としてもよい。
【0018】
シート部材2は、生分解性を有する材料を含む。本願明細書でいう生分解性を有する材料とは、微生物等の生物の作用により分解する性質を有する材料を意味する。生分解性を有するシート部材2とは、シート部材2の総質量に対して、生分解性を有する材料を50質量%より多く含むものを意味する。
【0019】
生分解性を有する材料としては、従来公知の生分解性プラスチックを適宜選択して使用できる。生分解性プラスチックの種類としては、微生物産生系、天然物系、及び化学合成系等を例示できる。微生物産生系としては、ポリヒドロキシアルカノエート、及びバクテリアセルロース等を例示できる。天然物系としては、セルロース誘導体、及びデンプン等を例示できる。化学合成系としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、及び脂肪族ポリエステル類等を例示できる。これ以外の生分解性を有する材料でもよい。
【0020】
シート部材2を構成する生分解性を有する材料は、1種でもよく、2種以上でもよい。また、シート部材2は、生分解性を有しない材料を含んでもよい。好ましい形態のシート部材2は、シート部材2の総質量に対して、生分解性を有する材料を90質量%より多く含む。
【0021】
シート部材2の厚みに限定はなく、シート部材2に含まれる生分解性を有する材料に応じて適宜決定すればよい。一例としてのシート部材2の厚みは0.5mm以上である。一例としてのシート部材2の厚みは1mm以上である。シート部材2の厚みをこのような厚みとすることで、養生シート1の保温性をより良好なものとできる。
【0022】
好ましい形態のシート部材2は、生分解性を有する気泡緩衝材である。一例としての気泡緩衝材は、空気が閉じ込められた小胞が面方向に複数存在している。このようなシート部材2によれば、養生シート1に高い保温性を付与でき、当該養生シート1を使用したコンクリートの養生において、コンクリートの保温性を極めて良好なものとできる。
【0023】
本実施形態に係るコンクリートの養生方法では、コンクリートの表面を、養生シート1で保護する。養生シート1は、コンクリートの表面を保護できるように配置すればよい。
【0024】
例えば、養生シート1を袋状とし、この養生シート1をコンクリートにかぶせて、コンクリートの表面を保護してもよい。また、コンクリートの表面に、養生シート1を巻きまわして、コンクリートの表面を保護してもよい。
【0025】
本実施形態に係る好ましい形態のコンクリートの養生方法は、コンクリートの表面と、養生シート1が、直接的に、又は他の部材を介して間接的に密着するように、養生シート1を配置する。このように養生シート1を配置することで、養生シート1によるコンクリートの保水効果、及び保温効果をより良好なものとできる。コンクリートの表面と養生シート1の一部分が密着するように、養生シート1を配置してもよい。
【0026】
本実施形態に係るコンクリートの養生方法で使用する一例としての養生シート1は、シート部材2と、接着部材3が積層された積層構造である(図2(b)参照)。この形態の養生シート1によれば、接着部材3で、コンクリートに養生シート1を密着でき、コンクリートの保水効果、及び保温効果をより良好なものとできる。接着部材3の厚みについて限定はなく、接着性を発現できる厚みとすればよい。
【0027】
接着部材3は、接着性を有する材料を含有している。接着性を有する材料としては、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、天然ゴム、合成ゴム、デンプン、デキストリン、にかわ、ゼラチン、及びポリビニルアルコール等を例示できる。これ以外の材料を含有してもよい。
【0028】
一例としての接着部材3は、接着性、及び生分解性を有する材料を含有している。
【0029】
一例としての養生シート1は、シート部材2、接着部材3、マスキング部材4がこの順番で積層された積層構造である。この形態の養生シート1は、マスキング部材4によって、養生シート1の接着性が抑えられており、マスキング部材4を剥離することで、養生シート1に接着性を発現できる。マスキング部材4としては、従来公知の剥離シート等を使用できる。
【0030】
また、コンクリートの表面に接着剤等を塗布し、この接着剤により、コンクリートと養生シート1とを密着させてもよい。養生シート1と重なるコンクリートの表面の一部に接着剤を塗布し、これに養生シート1を重ねた場合には、コンクリートと養生シート1とを一部分で密着できる。一方で、養生シート1と重なるコンクリートの表面の全体に接着剤を塗布し、これに養生シート1を重ねた場合には、コンクリートと養生シート1とを完全に密着できる。接着剤としては、従来公知の接着剤や、接着性を有する材料を適宜選択して使用できる。接着剤の使用にかえて、両面が接着性を有する部材で、コンクリートと養生シート1とを密着させてもよい。
【0031】
また、コンクリートの型枠の内表面に、予め養生シート1を配置し、これにコンクリートを流し込むことで、コンクリートと養生シート1を密着できる。コンクリートの型枠としては、鋼製型枠、及び木製型枠等を例示できる。
【0032】
また、生分解性、及び接着性を有するシート部材2を使用してもよい。一例としてのシート部材2は、生分解性を有し、且つ接着性を有する材料を含む。一例としてのシート部材2は、生分解性を有する材料と、接着性を有する材料を含む。
【0033】
次に、本実施形態に係るコンクリートの養生方法の適用例について一例をあげて説明する。図1は、本実施形態に係るコンクリートの養生方法の一例を示す概略図である。
【0034】
図1に示す形態は、埋戻し工法が行われるコンクリート構造物の施工時におけるコンクリートの養生方法の一例を示す工程図である。
【0035】
図1(a)は、掘削した部分に、コンクリート5を打設した状態を示している。図1(b)は、コンクリート5の表面を養生シート1で保護した状態を示している。図1(c)は、コンクリート5の表面を養生シート1で保護したまま、埋戻し部分Xの埋戻しを行った状態を示している。
【0036】
本実施形態に係るコンクリートの養生方法では、コンクリート5の表面を保護する養生シート1として、生分解性を有するシート部材2を備えたものを使用している。養生シート1は最終的に分解されることから、養生シート1の撤去を要しない。したがって、図1(c)に示すように、コンクリート5の表面を養生シート1で保護した状態で、埋戻しが可能となる。換言すれば、コンクリート5の養生が終了するよりも前に、埋戻しが可能となる。また、埋戻された状態において、養生シート1は、その分解がされるまでの間、コンクリート5の表面を保護できることから、埋戻しがされた状態において、コンクリート5を養生できる。
【0037】
本実施形態に係るコンクリートの養生方法によれば、コンクリート5の養生が終了する前に埋戻しが可能であり、コンクリート構造物の施工工期を飛躍的に短縮できる。本実施形態に係るコンクリートの養生方法は、埋戻しがされる箇所に位置したコンクリート5を養生するときに好適である。
【0038】
なお、生分解性を有しない従来の養生シートを使用する場合には、図1(b)と、図1(c)の間に、養生シートを撤去する工程が必要となる。養生シートの撤去は、コンクリートの養生が終了するまで行うことができず、本実施形態に係るコンクリートの養生方法と比較して、施工工期は長くなる。
【0039】
なお、図1に示す形態では、コンクリート5を打設した後に、コンクリート5の表面に養生シート1を貼りつける等した形態を示しているが、上述したように、型枠に養生シート1を配置して、コンクリート5と養生シート1を密着させてもよい。
【0040】
<<養生シート>>
本実施形態に係る養生シート1は、コンクリートの養生に使用する養生シート1であって、シート部材2と接着部材3が積層された積層構造であり、シート部材2が、生分解性を有する。
【0041】
本実施形態に係る養生シート1によれば、接着部材3で、コンクリートと養生シート1とを密着でき、コンクリートの保水性を良好なものとできる。また、シート部材2は、最終的に分解されることから、養生シート1の撤去を必要とせず、コンクリート構造物の施工工期を短縮できる。
【0042】
本実施形態に係る養生シート1は、本実施形態に係るコンクリートの養生方法において説明した養生シート1の構成を適宜選択でき、ここでの詳細な説明は省略する。好ましい形態のシート部材2は、気泡緩衝材である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・養生シート
2・・・シート部材
3・・・接着部材
4・・・マスキング部材
5・・・コンクリート
X・・・埋戻し部分
図1
図2