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  • 特開-スライドドア用のワイヤハーネス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046912
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】スライドドア用のワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240329BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240329BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B60R16/02 620C
B60R16/02 623T
H02G3/04 037
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152280
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】峰 義彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光広
(72)【発明者】
【氏名】堤 洸貴
(72)【発明者】
【氏名】宇野 広輝
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
【テーマコード(参考)】
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DA10
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD06
5G357DG04
5G357DG06
5G363AA07
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA15
5G363DA20
5G363DC04
(57)【要約】
【課題】スライドドアの開閉動作の円滑化を図りながらコスト上昇の抑制を図るスライドドア用のワイヤハーネスの提供。
【解決手段】自動車の車体とスライドドアとの間に配策されるワイヤハーネス1であって、長手方向の途中がクランク状に屈曲された形状のワイヤハーネス1の屈曲領域11,12に、プロテクタ2が装着されており、プロテクタ2には、ワイヤハーネス1の屈曲形状に対応する形状に形成されているとともにワイヤハーネス1の径方向寸法よりも大きな幅に設定されている溝21が設けられており、溝21の底面には、ワイヤハーネス1が溝21の屈曲部位22,23の内角部27,28に非接触となるように緩みを持つ状態に拘束するためのピン3が取り外し可能に差し込まれる穴24~26が設けられており、ワイヤハーネス1の屈曲領域11,12の一方側が、プロテクタ2に締結部材4を用いて固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体とスライドドアとの間に配策されるワイヤハーネスであって、
長手方向の途中がクランク状に屈曲された形状のワイヤハーネスの屈曲領域に、プロテクタが装着されており、
前記プロテクタには、前記ワイヤハーネスの屈曲形状に対応する形状に形成されているとともに前記ワイヤハーネスの径方向寸法よりも大きな幅に設定されている溝が設けられており、
前記溝の底面には、前記ワイヤハーネスを前記溝の屈曲部位における内角部に非接触にさせるように長手方向に緩みを持つ状態に拘束するためのピンが取り外し可能に差し込まれる穴が設けられており、
前記ワイヤハーネスの前記屈曲領域の一方側が、前記プロテクタに締結部材を用いて固定されていることを特徴とするスライドドア用のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などのスライドドア用のワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
スライドドアを備える自動車において、前記スライドドアに装着される各種電装品(例えばパワーウインドウ、オートロック等)に電源を供給するためのワイヤハーネスを、90度屈曲する施工経路に沿うように屈曲して施工する際に、当該ワイヤハーネスが前記施工経路の屈曲部における内角部に接触してしまうことがあって、前記ワイヤハーネスにおいて前記施工経路の屈曲部を通過する区間の長さが短くなりやすい。
【0003】
このようなワイヤハーネスの取り回し状態では、前記スライドドアの開閉に伴い、前記ワイヤハーネスが前記施工経路の屈曲部において捻回されながら押し引きされるために、当該ワイヤハーネスの動きが悪くなるとともに、前記ワイヤハーネスの屈曲耐久性が低下することが懸念される。
【0004】
これに対し、例えば特許文献1では、前記ワイヤハーネスをリンク部材の第一、第二リンク片でもって前記車体とスライドドアとの間に配策するようにした構造が開示されている。
【0005】
前記第一リンク片の一端側と前記第二リンク片の一端側とは揺動自在に連結されていて、前記第一リンク片の他端側には前記第一リンク片と前記第二リンク片との揺動量を一定の範囲に制限するための第一、第二ストッパーが設けられている。
【0006】
そして、前記スライドドアの開閉時には、前記第一リンク片と前記第二リンク片とが前記第一、第二ストッパーで適正範囲内に制限されて揺動されることにより、前記ワイヤハーネスが前記スライドドアに干渉しないように動かされるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-260770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1では、前記ワイヤハーネスをガイドするための部品点数が多いため、コスト増が懸念される。
【0009】
このような事情に鑑み、本発明は、スライドドアの開閉動作の円滑化を図りながらコスト上昇の抑制を図るスライドドア用のワイヤハーネスの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自動車の車体とスライドドアとの間に配策されるワイヤハーネスであって、長手方向の途中がクランク状に屈曲された形状のワイヤハーネスの屈曲領域に、プロテクタが装着されており、前記プロテクタには、前記ワイヤハーネスの屈曲形状に対応する形状に形成されているとともに前記ワイヤハーネスの径方向寸法よりも大きな幅に設定されている溝が設けられており、前記溝の底面には、前記ワイヤハーネスを前記溝の屈曲部位における内角部に非接触にさせるように長手方向に緩みを持つ状態に拘束するためのピンが取り外し可能に差し込まれる穴が設けられており、前記ワイヤハーネスの前記屈曲領域の一方側が、前記プロテクタに締結部材を用いて固定されていることを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、前記ワイヤハーネスに前記プロテクタを装着して当該プロテクタの穴に前記ピンが差し込まれると、前記ワイヤハーネスが前記溝の屈曲部位における内角部に非接触となるように長手方向に緩みを持つ状態に拘束されることになる。
【0012】
このように前記ワイヤハーネスの姿勢を拘束するために前記プロテクタと前記ピンを用いるだけであるから、従来例に比べて部品点数が少なくて済むなど、コストの上昇を抑制することが可能になる。
【0013】
しかも、前記ワイヤハーネスを拘束した状態において前記ピンを前記穴から取り外した場合、前記ワイヤハーネスが前記溝内において長手方向に緩んだ状態に保たれることになるので、前記スライドドアを開閉させることに伴い前記ワイヤハーネスが捻回されながら押し引きされるものの、その際に前記ワイヤハーネスが前記溝内で突っ張らずに済むようになるとともに、前記ワイヤハーネスが前記溝の前記屈曲部位における内角部に当接しにくくなる。
【0014】
これにより、前記ワイヤハーネスの動きがスムースになるとともに、前記ワイヤハーネスの屈曲耐久性が向上することになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スライドドアの開閉動作の円滑化を図りながらコスト上昇の抑制を図るスライドドア用のワイヤハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るスライドドア用のワイヤハーネスの一実施形態を示す図である。
図2】プロテクタの穴からピンを外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1および図2に本発明の一実施形態を示している。図中、1はワイヤハーネスを示している。
【0019】
ワイヤハーネス1は、図示していないが、自動車の車体とスライドドアとの間に配策されるものである。
【0020】
このワイヤハーネス1は、例えば図1に示すように、長手方向の途中がクランク状に屈曲する姿勢とされることから2つの(第1、第2)の屈曲領域11,12が設けられる。第1、第2の屈曲領域11,12の屈曲角度は、共に90度に設定されている。
【0021】
このワイヤハーネス1の第1、第2の屈曲領域11,12には、プロテクタ2が装着されている。ワイヤハーネス1の第2の屈曲領域12の一方側が、プロテクタ2に締結部材(例えば結束バンドなど)4を用いることにより固定されている。
【0022】
プロテクタ2には、ワイヤハーネス1が隙間を持つ状態で嵌め合わされる溝21が設けられている。このような状態にするために、少なくとも溝21の幅寸法が、ワイヤハーネス1の径方向寸法よりも大きく設定されている。
【0023】
この溝21は、クランク状に屈曲されていることから2つの(第1、第2)の屈曲部位22,23が設けられている。第1、第2の屈曲部位22,23の屈曲角度は、共に90度に設定されている。
【0024】
溝21の底面には、ワイヤハーネス1の屈曲形状をして形状に拘束するためのピン3が1つずつ取り外し可能に差し込まれる第1、第2、第3の穴24,25,26が設けられている。
【0025】
そして、各ピン3を第1~第3の穴24~26に差し込んだ状態では、ワイヤハーネス1が溝21の第1、第2の屈曲部位22,23における各内角部27,28に非接触となるように長手方向に緩みを持つ状態に拘束されるようになる。
【0026】
第1~第3の穴24~26の設置場所の一例を説明する。まず、溝21の第1の屈曲部位22における内角部27の近傍に第1の穴24が設けられており、また、溝21の第2の屈曲部位23における内角部28の近傍に第2の穴25が設けられており、さらに、第1の屈曲部位22の内角部27から第2の屈曲部位23の外角部(符号省略)へ向かう途中に第3の穴26が1つ設けられている。
【0027】
次に、図2を参照して、ワイヤハーネス1にプロテクタ2を装着する手順ならびに様子を説明する。
【0028】
まず、図示していない治具台にプロテクタ2を載せておいて、予めクランク状に屈曲させておいたワイヤハーネス1の第2の屈曲領域12の一方側をプロテクタ2に締結部材4を用いることにより固定してから、ワイヤハーネス1をプロテクタ2の溝21内に嵌め合わせる。
【0029】
この後、図1に示すように、ワイヤハーネス1の第1、第2の屈曲領域11,12を溝21の第1、第2の屈曲部位22,23における各内角部27,28に接触させないようにしながら、当該ワイヤハーネス1の第1、第2の屈曲領域11,12における各内側湾曲面にそれぞれ1つのピン3を沿わせながら第1、第2の穴24,25に差し込むとともに、ワイヤハーネス1の第1の屈曲領域11の内側湾曲面から第2の屈曲領域12の外側湾曲面へ向かう直線領域の途中に1つのピン3を沿わせながら第3の穴26に差し込む。このとき、各ピン3が治具台にも差し込まれるようになっていて、治具台にプロテクタ2が固定される。
【0030】
これにより、ワイヤハーネス1が溝21の第1、第2の屈曲部位22,23における各内角部27,28に非接触となるように長手方向に緩みを持つ状態に拘束されるようになる。
【0031】
この後、3つのピン3を第1~第3の穴24~26から取り外し、前記治具台からプロテクタ2を離脱させる。
【0032】
ところで、一般に、ワイヤハーネス1は、その内部芯線(金、銅などの軟質金属など)の性質により、一旦屈曲されると、その屈曲姿勢を保つ状態(塑性変形)になる。そのため、ピン3を取り外した状態でも、ワイヤハーネス1は、3つのピン3で拘束された姿勢に保たれることになる。
【0033】
そのため、プロテクタ2を装着したワイヤハーネス1を、図示していないが、車体においてスライドドア取付用の開口部に取り付けた状態で、スライドドアを開閉させたときに、ワイヤハーネス1が捻回されながら押し引きされるものの、その際、図1の二点鎖線で示すようにワイヤハーネス1が溝21内で突っ張らずに済むようになるとともに、ワイヤハーネス1が溝21の第1、第2の屈曲部位22,23における各内角部27,28に干渉しにくくなり、万一、干渉したとしても弱く当接する程度で済む。
【0034】
但し、ピン3でワイヤハーネス1を長手方向に緩みを持つ状態にしていない場合には、図1の二点鎖線で示すように、ワイヤハーネス1が溝21内で突っ張ってプロテクタ2の第1、第2の屈曲部位22,23における各内角部27,28に干渉してしまうので、スライドドアを開閉させることに伴い、ワイヤハーネス1が溝21の第1、第2の屈曲部位22,23における各内角部27,28に強く当接することになってしまい、ワイヤハーネス1の動きが悪くなるとともに、屈曲耐久性が低下することになる。
【0035】
以上説明したように本発明を適用した実施形態では、ワイヤハーネス1をプロテクタ2の溝21の第1、第2の屈曲部位22,23における各内角部27,28に非接触にさせるように長手方向に緩みを持つ状態に嵌め合わせているから、スライドドアの開閉動作が円滑になるとともに、ワイヤハーネス1の屈曲耐久性が向上することになる。
【0036】
しかも、ワイヤハーネス1の姿勢を拘束するためにプロテクタ2とピン3を用いるだけであるから、従来例に比べて部品点数が少なくて済むなど、コストの上昇を抑制することが可能になる。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。上記実施形態において、例えばピン3の使用数を2つまたは4つ以上とすることが可能であり、また、ワイヤハーネス1の屈曲数を1つまたは3つ以上とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、スライドドア用のワイヤハーネスに好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ワイヤハーネス、11 第1の屈曲領域、12 第2の屈曲領域、2 プロテクタ、21 溝、22 第1の屈曲部位、23 第2の屈曲部位、24 第1の穴、25 第2の穴、26 第3の穴、27 第1の屈曲部位の内角部、28 第2の屈曲部位の内角部、3 ピン、4 締結部材。
図1
図2