(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004692
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】切削加工機
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/157 20060101AFI20240110BHJP
A61C 13/38 20060101ALI20240110BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B23Q3/157 C
A61C13/38
B23Q17/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104448
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐太
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
【Fターム(参考)】
3C002HH06
3C002KK01
3C002LL00
3C029EE20
(57)【要約】
【課題】ユーザがツールストッカーに関する操作を行い易い。
【解決手段】切削加工機100は、ツールストッカー60と、ケース本体10と、ストッカー移動機構80とを備えている。ツールストッカー60には、被切削物5を切削する切削ツール8が複数収容される。ケース本体10には、ツールストッカー60が配置されたツールエリアAR5と、ツールエリアAR5の前方に配置され、ツールエリアAR5と連通するツール開口14とが形成されている。ストッカー移動機構80は、ツールエリアAR5内にツールストッカー60が配置される第1位置P1と、ケース本体10のツール開口14よりもケース本体10の外側においてツールストッカー60の少なくとも一部が配置される第2位置P2との間に、ツールストッカー60を移動させる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切削物を切削する切削ツールが複数収容されるツールストッカーと、
前記ツールストッカーが配置されたツールエリアと、前記ツールエリアの前方に配置され、前記ツールエリアと連通するツール開口と、が形成されたケース本体と、
前記ツールエリア内に前記ツールストッカーが配置される第1位置と、前記ケース本体の前記ツール開口よりも前記ケース本体の外側において前記ツールストッカーの少なくとも一部が配置される第2位置との間に、前記ツールストッカーを移動させるストッカー移動機構と、
を備えた、切削加工機。
【請求項2】
前記ストッカー移動機構は、
前記第1位置から前記第2位置に向かって延びたガイドレールと、
前記ガイドレールに摺動自在に係合し、前記ツールストッカーが設けられたキャリッジと、
を備えた、請求項1に記載された切削加工機。
【請求項3】
前記ストッカー移動機構は、前記キャリッジを前記ガイドレールに沿って移動させる移動モータを備え、
前記ツールストッカーを前記第1位置と前記第2位置との間に移動させるように前記移動モータの駆動を制御するストッカー移動制御部を有する制御装置を備えた、請求項2に記載された切削加工機。
【請求項4】
前記第2位置において、前記ツールストッカーが前を向くように前記ツールストッカーを回転させるストッカー回転機構を備えた、請求項1に記載された切削加工機。
【請求項5】
前記ストッカー回転機構は、前記ツールストッカーが設けられた回転軸を備えた、請求項4に記載された切削加工機。
【請求項6】
前記ストッカー回転機構は、前記回転軸を回転させる回転モータを備え、
前記回転軸を回転させるように前記回転モータの駆動を制御する回転制御部を有する制御装置を備えた、請求項5に記載された切削加工機。
【請求項7】
前記ケース本体の前方にいるユーザを検出する検出機構を備え、
前記制御装置は、前記検出機構の検出結果に基づいて、前記ユーザの目線の高さを推定する推定部を有し、
前記回転制御部は、前記推定部によって推定された前記ユーザの目線の高さに応じて、前記回転軸を回転させる、請求項6に記載された切削加工機。
【請求項8】
前記ツールストッカーは、前記切削ツールが挿入される挿入孔が形成された挿入面を有し、
前記回転制御部は、前記推定部によって推定された前記ユーザの目線の高さが、基準高さ以上のときよりも、前記基準高さ未満のときの方が、前記ツールストッカーの前記挿入面が前方を向くように前記回転モータの駆動を制御する、請求項7に記載された切削加工機。
【請求項9】
検出機構は、前記ツールエリア内に配置された状態で固定され、かつ、前記ユーザの顔を撮影するカメラであり、
前記推定部は、前記検出機構によって撮影された画像から前記ユーザの目の位置を特定して、前記ユーザの目線の高さを推定する、請求項7に記載された切削加工機。
【請求項10】
前記ケース本体には、前記被切削物を切削加工する切削エリアが形成され、
前記ツールエリアは、前記切削エリアとは異なるエリアであり、かつ、前記切削エリアよりも上方に配置されている、請求項1から9までの何れか1つに記載された切削加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、棒状の切削ツールを軸回りに回転させて被切削物を切削加工する切削加工機が開示されている。上記切削加工機は、被切削物を切削加工する切削ツールを把持する把持部を有するスピンドルと、被切削物を保持する保持部とを備えている。また、切削加工機は、一回の作業で多様な切削加工を自動的かつ連続的に実施するために、刃物部の形状が異なる複数の切削ツールを自動的に交換する自動刃物交換機能(オートツールチェンジャー,Auto Tool Changer:ATC)を備えている。複数の切削ツールは、例えばツールストッカーに収容されている。ツールストッカーは、ケース本体の内部の空間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ツールストッカーに対して、切削ツールを収容したり、切削ツールを取り出したりするなどのツールストッカーに関する操作が行われる。このツールストッカーに関する操作は、ユーザが手動で行うものであり、ケース本体の内部の空間に配置されたツールストッカーに対して行われる。そのため、ユーザは、ケース本体の内部に手を入れてツールストッカーに関する操作をするため、ツールストッカーに関する操作がし難いことがあった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ツールストッカーを備えた切削加工機において、ユーザがツールストッカーに関する操作を行い易い切削加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る切削加工機は、ツールストッカーと、ケース本体と、ストッカー移動機構とを備えている。前記ツールストッカーには、被切削物を切削する切削ツールが複数収容されている。前記ケース本体には、前記ツールストッカーが配置されたツールエリアと、前記ツールエリアの前方に配置され、前記ツールエリアと連通するツール開口と、が形成されている。前記ストッカー移動機構は、前記ツールエリア内に前記ツールストッカーが配置される第1位置と、前記ケース本体の前記ツール開口よりも前記ケース本体の外側において前記ツールストッカーの少なくとも一部が配置される第2位置との間に、前記ツールストッカーを移動させる。
【0007】
前記切削加工機によれば、例えばユーザがツールストッカーに切削ツールを収容したり、ツールストッカー収容した切削ツールを取り出したりするときには、ツールストッカーが第2位置に配置されるように、ツールストッカーを移動させる。よって、ツールストッカーの少なくとも一部がツールエリアよりも手前に配置された状態で、ユーザは、ツールストッカーに関する操作をすることができる。したがって、ユーザがツールストッカーに切削ツールを収容したり、ツールストッカーに収容した切削ツールを取り出したりする操作を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ツールストッカーを備えた切削加工機において、ユーザがツールストッカーに関する操作を行い易い切削加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る切削加工機を示す斜視図である。
【
図2】アダプタが装着された被切削物を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る切削加工機を示す右側面図である。
【
図4】実施形態に係る切削加工機のブロック図である。
【
図5】クランプおよび支持部材を示す平面図である。
【
図8】ツールストッカー、ストッカー移動機構およびストッカー回転機構を模式的に示した斜視図である。
【
図10】ツールストッカーを移動および回転させる制御手順を示すフローチャートである。
【
図11】ユーザの目線の高さが第1基準高さ以上のときのツールストッカーの回転角度を示した模式図である。
【
図12】ユーザの目線の高さが第1基準高さ未満であり、かつ、第2基準高さ以上のときのツールストッカーの回転角度を示した模式図である。
【
図13】ユーザの目線の高さが第2基準高さ未満のときのツールストッカーの回転角度を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る切削加工機について説明する。なお、ここで説明される実施の形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
【0011】
図1は、本実施形態に係る切削加工機100を示す斜視図である。
図2は、アダプタ6が装着された被切削物5を示す平面図である。
図3は、本実施形態に係る切削加工機100を示す右側面図である。
図4は、本実施形態に係る切削加工機100のブロック図である。ここでは、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ切削加工機100の前、後、左、右、上、下を意味するものとする。なお、上述した方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、切削加工機100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものではない。
【0012】
本実施形態では、切削加工機100は、いわゆるクーラントを使用しないドライ式の切削加工機である。切削加工機100は、被切削物5(
図2参照)を切削加工することで、対象物を作製する。ここで、対象物の種類は特に限定されないが、歯科用成形品、例えば歯冠補綴物、人工歯、義歯床などである。歯冠補綴物として、例えばクラウン、ブリッジ、コーピング、インレー、アンレー、べニア、カスタムアバットメントなどが挙げられる。本実施形態では、切削加工機100は、デンタル分野で使用されるものであり、被切削物5から歯科用成形品を作製する。ただし、切削加工機100が使用される分野は、デンタル分野に限定されない。
【0013】
図2に示す被切削物5は、板状のものである。ここでは、被切削物5は円盤形状である。被切削物5は、ジルコニア、ワックス、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ハイブリッドレジン、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、石膏などの種類の材料によって形成されている。被切削物5の材料の種類としてジルコニアを用いるときには、例えば、半焼結したジルコニアが用いられることが好ましい。ただし、被切削物5の形状および材料は特に限定されない。被切削物5は、例えばブロック状(ここでは、立方体形状や直方体形状など)であってもよい。
【0014】
本実施形態では、
図2に示すように、被切削物5は、アダプタ6に装着されている。ここでは、アダプタ6には、円形状の嵌合孔6aが形成されている。被切削物5は、嵌合孔6aに嵌合(例えば略嵌合、言い換えると挿入)されることで、アダプタ6に装着される。ここでは、被切削物5の上方に配置されたアダプタ6を押し下げることで、嵌合孔6aに被切削物5が挿入されて固定される。被切削物5は、アダプタ6に装着された状態で切削加工機100に収容され、切削加工される。
【0015】
図1に示すように、切削加工機100は、ケース本体10を備えている。ケース本体10は、箱状であり、内部に空間を有している。
【0016】
本実施形態では、ケース本体10の内部の空間は、複数のエリアに区画されている。ここでは、ケース本体10には、収容エリアAR1と、切削エリアAR2と、駆動エリアAR3(
図3参照)と、切削装置エリアAR4(
図3参照)と、ツールエリアAR5とが形成されている。
【0017】
図1に示すように、収容エリアAR1は、ユーザがワークチェンジャー16bに被切削物5を収容するためのエリアである。ここで、ワークチェンジャー16bとは、ケース本体10内において、複数の被切削物5が収容されるものである。収容エリアAR1は、ケース本体10の左上部分に配置されている。図示は省略するが、収容エリアAR1は、ケース本体10の前端部から前後方向の中央部まで延びている。切削エリアAR2は、棒状に形成された切削ツール8(
図6参照)を使用して被切削物5を切削加工するためのエリアである。切削エリアAR2は、ケース本体10の左下部分に配置され、かつ、収容エリアAR1の下方に配置されている。切削エリアAR2は、ケース本体10の前端部から後端部まで延びている。切削エリアAR2は、収容エリアAR1と連通している。
【0018】
ここでは、ワークチェンジャー16bは、収容エリアAR1と切削エリアAR2との間で移動可能に構成されている。後述のクランプ20(
図5参照)が把持する被切削物5を交換するときには、ワークチェンジャー16bは、収容エリアAR1から切削エリアAR2に向かって移動する。そして、切削エリアAR2において、クランプ20が把持している被切削物5がワークチェンジャー16bに収容され、ワークチェンジャー16bに収容されている他の被切削物5がクランプ20によって把持されて取り出される。
【0019】
図3に示す駆動エリアAR3は、後述する移動機構50(
図4参照)が配置されたエリアである。
図1に示すように、駆動エリアAR3は、ケース本体10の右下部分に配置され、かつ、切削エリアAR2の右方に配置されている。
図3に示すように、駆動エリアAR3は、ケース本体10の前端部から後端部まで延びている。切削装置エリアAR4は、後述の切削装置30(
図6参照)が配置されたエリアである。切削装置エリアAR4は、ケース本体10の後上部分に配置されている。切削装置エリアAR4は、収容エリアAR1の後方、切削エリアAR2の上方、かつ、駆動エリアAR3の上方に配置されている。切削装置エリアAR4は、左右方向に延びており、ケース本体10の左右方向の幅のほぼ全てを占めている。切削装置エリアAR4は、切削エリアAR2と連通している。
【0020】
ツールエリアAR5は、後述のツールストッカー60(
図7参照)が配置されたエリアである。
図1に示すように、ツールエリアAR5は、ケース本体10の右上部分に配置されている。ここでは、
図3に示すように、ツールエリアAR5は、ケース本体10の前端部から前後方向の中央部まで延びている。ツールエリアAR5は、
図1に示すように、収容エリアAR1の右方、駆動エリアAR3の上方、かつ、
図3に示すように、切削装置エリアAR4の前方に配置されている。
図1に示すように、ツールエリアAR5は、切削エリアAR2よりも上方に配置されている。ツールエリアAR5は、切削装置エリアAR4と連通している。
【0021】
ケース本体10には、収容開口11、切削開口12、駆動開口13およびツール開口14が形成されている。収容開口11は、収容エリアAR1の前方に配置され、収容エリアAR1と連通している。ケース本体10には、収容開口11を開閉可能な収容扉16が設けられている。切削開口12は、切削エリアAR2の前方に配置され、切削エリアAR2と連通している。ケース本体10には、切削開口12を開閉可能な切削扉17が設けられている。
【0022】
図3に示すように、駆動開口13は、駆動エリアAR3の前方に配置され、駆動エリアAR3と連通している。ケース本体10には、駆動開口13を開閉可能な駆動扉18が設けられている。ツール開口14は、ツールエリアAR5の前方に配置され、ツールエリアAR5と連通している。ケース本体10には、ツール開口14を開閉可能なツール扉19が設けられている。ツール扉19は、ケース本体10に対して例えば右端を軸にして回転可能であり、右端を軸に回転することで、ツール開口14を開閉することができる。
【0023】
本実施形態では、
図1に示すように、収容扉16、切削扉17、および、ツール扉19には、それぞれ内部を視認可能なように透明な窓部16a、17a、および、19aが設けられている。駆動扉18の前面には、操作パネル18aが設けられている。
図3に示すように、ケース本体10の前面(ここでは、収容開口11、切削開口12、駆動開口13およびツール開口14)は、底面に対して斜めに形成されており、上方に向かうにしたがって後方に傾くように形成されている。
【0024】
図5は、クランプ20および支持部材40を示す平面図である。
図6は、切削装置30を示す斜視図である。本実施形態では、切削加工機100は、クランプ20(
図5参照)と、切削装置30(
図6参照)とを備えている。クランプ20および切削装置30は、切削エリアAR2において、被切削物5を切削加工する際に使用されるものである。
図5に示すように、クランプ20は、切削エリアAR2に配置されている。クランプ20は、切削加工時に被切削物5を把持するものである。詳しくは、クランプ20は、被切削物5に装着されたアダプタ6を把持する。なお、クランプ20の形状および構成は特に限定されない。
【0025】
本実施形態では、クランプ20は、被切削物5の一部の形状、言い換えるとアダプタ6の一部に形状に対応した形状を有している。ここでは、クランプ20はC字形状である。クランプ20は、第1挟持部21と、第2挟持部22と、連結部23とを有している。第1挟持部21と第2挟持部22とは、前後方向に延びた棒状のものであり、左右方向に対向している。第1挟持部21と第2挟持部22との間に被切削物5が配置され、第1挟持部21と第2挟持部22とによって被切削物5が挟まれることで、把持される。
【0026】
連結部23は、第1挟持部21と第2挟持部22とを連結するものであり、第1挟持部21と第2挟持部22とに架け渡されている。ここでは、連結部23は、第1挟持部21の後端、および、第2挟持部22の後端に接続されている。
【0027】
本実施形態では、クランプ20は、支持部材40によって支持されている。ここでは、支持部材40は、左右方向に延びた第1部分41と、第1部分41の右端から前方に延びた第2部分42とを有している。支持部材40は、第1部分41と第2部分42とによってL字状に形成されている。第1部分41は、連結部23の後方に配置されており、前後方向に延びた第1回転軸46を介して連結部23に接続されている。クランプ20は、第1回転軸46を軸に回転可能に構成されている。図示は省略するが、第1回転軸46には、第1駆動モータが接続されている。この第1駆動モータは、後述の制御装置110(
図4参照)に通信可能に接続されている。制御装置110が第1駆動モータを駆動させることで、第1回転軸46は回転する。
【0028】
第2部分42は、第2挟持部22の右方に配置されている。第2部分42には、左右方向に延びた第2回転軸47が接続されている。支持部材40は、第2回転軸47を軸に回転可能に構成されている。図示は省略するが、第2回転軸47には、第2駆動モータが接続されている。この第2駆動モータは、後述の制御装置110に通信可能に接続されている。制御装置110が第2駆動モータを駆動させることで、第2回転軸47が回転する。ここでは、支持部材40が回転すると、クランプ20は、支持部材40と同様に、第2回転軸47を軸に回転する。
【0029】
図6に示すように、切削装置30は、切削ツール8を回転させながら被切削物5(
図2参照)に接触させることで、被切削物5を切削加工する。切削装置30は、スピンドル31と、切削ツール8を把持するツール把持部32と、を有している。スピンドル31は、ツール把持部32、および、ツール把持部32に把持された切削ツール8を、長手方向を軸にして回転させるものである。スピンドル31は、例えば上下方向に延びており、上下方向に延びた中心軸周りに回転可能に構成されている。
【0030】
ツール把持部32は、切削ツール8を把持するものであり、スピンドル31に設けられている。詳しくは、ツール把持部32は、スピンドル31の底面に設けられている。本実施形態では、切削ツール8は、先端に刃物部8aを有している。切削加工機100には、刃物部8aの形状が異なる複数の切削ツール8が予め用意されている。ツール把持部32は、複数の切削ツール8のうち1つを選択的に把持する。スピンドル31が上下方向に延びた中心軸周りに回転することで、ツール把持部32、および、ツール把持部32に把持された切削ツール8は、切削ツール8の中心軸周りに回転する。
【0031】
本実施形態では、切削装置30は、切削装置エリアAR4に配置されている。ここでは、切削加工時において、切削装置30のツール把持部32に把持された切削ツール8の刃物部8aは、切削エリアAR2(
図2参照)に配置されることが可能である。そのため、ツール把持部32に把持された切削ツール8は、切削エリアAR2において、スピンドル31によって回転された状態で、クランプ20に把持された被切削物5に接触することで、被切削物5が切削加工される。
【0032】
本実施形態では、
図4に示すように、切削加工機100は、移動機構50を備えている。移動機構50は、クランプ20と、切削装置30とを相対的に3次元方向に移動可能に構成されている。本実施形態において、切削加工とは、クランプ20と切削装置30との相対的な位置関係を変更しながら、ツール把持部32に把持された切削ツール8を、切削エリアAR2において、クランプ20に把持された被切削物5の所望の部分に接触させて、被切削物5を所望の形状に切削加工することをいう。
【0033】
移動機構50の少なくとも一部は、駆動エリアAR3(
図3参照)に配置されている。移動機構50の構成は特に限定されない。ここでは、移動機構50は、クランプ移動機構51と、左右移動機構52と、上下移動機構53とを備えている。クランプ移動機構51は、駆動エリアAR3に配置されている。クランプ移動機構51は、例えば支持部材40(
図5参照)に接続されており、支持部材40およびクランプ20(
図5参照)を前後方向に移動させるように構成されている。左右移動機構52と、上下移動機構53は、切削装置30(
図6参照)を移動させる機構である。ここでは、左右移動機構52は、切削装置30を左右方向に移動させるように構成されている。上下移動機構53は、切削装置30を上下方向に移動させるように構成されている。ここでは、左右移動機構52および上下移動機構53は、切削装置エリアAR4(
図3参照)に配置されている。なお、クランプ移動機構51、左右移動機構52、および、上下移動機構53の構成は特に限定されず、例えばボールねじや、駆動モータなどによって構成されたものであってもよい。
【0034】
図7は、ツールストッカー60を示す平面図である。
図8は、ツールストッカー60、ストッカー移動機構80およびストッカー回転機構90を模式的に示した斜視図である。本実施形態では、切削加工機100は、ツールストッカー60(
図7参照)と、ストッカー移動機構80(
図8参照)と、ストッカー回転機構90(
図8参照)とを備えている。
図7に示すように、ツールストッカー60は、被切削物5を切削する切削ツール8(
図6参照)が複数収容されるものである。なお、図示は省略するが、ツールストッカー60には、切削ツール8以外にセンシングピン(図示せず)が収容されていてもよい。センシングピンとは、クランプ20や切削装置30の位置を自動補正する際に用いられるものである。
図7に示すように、ツールストッカー60は、ツールエリアAR5に配置されている。
【0035】
本実施形態では、ツールストッカー60は、挿入面61を有している。挿入面61は、ツールストッカー60がツールエリアAR5に配置されている状態において、ツールストッカー60の上面を構成している。挿入面61には、複数の挿入孔62が形成されている。1つの挿入孔62には、1つの切削ツール8が挿入される。ここでは、挿入孔62に切削ツール8が挿入された状態が、切削ツール8がツールストッカー60に収容されている状態である。挿入孔62は、挿入面61が上方を向いている状態において、板状のツールストッカー60を上下方向に貫通するように構成されている。なお、挿入孔62の数は特に限定されない。ここでは、15個の挿入孔62が挿入面61に形成されている。そのため、ツールストッカー60には、15個の切削ツール8を収容することが可能である。ここでは、複数の挿入孔62は、いわゆる千鳥状に配置されている。しかしながら、複数の挿入孔62がどのように配置されているかは、特に限定されない。
【0036】
挿入面61には、センシング挿入孔63が形成されている。センシング挿入孔63には、上述のセンシングピンが挿入される。センシング挿入孔63は、挿入面61が上方を向いている状態において、ツールストッカー60を上下方向に貫通するように構成されている。ここでは、センシング挿入孔63の数は1つであるが、特に限定されない。センシング挿入孔63は、複数の挿入孔62の後方に配置されている。
【0037】
挿入面61には、ツールセンサ64が設けられている。ツールセンサ64は、切削ツール8の長さを検出するセンサである。ツールセンサ64は、導電性材料によって形成されている。ツールセンサ64と切削ツール8とが接触したときには、電流が流れるように構成されている。ツールセンサ64は、ツールセンサ64と切削ツール8とが接触したときのスピンドル31の位置に基づいて、切削ツール8の長さを検出する。ツールセンサ64は、複数の挿入孔62の後方に配置され、かつ、センシング挿入孔63の右方に配置されている。ツールセンサ64は、挿入面61から上方に突出している。
【0038】
なお、
図8では、複数の挿入孔62、センシング挿入孔63、および、ツールセンサ64の図示は省略されている。
【0039】
本実施形態では、
図6に示す切削装置30のツール把持部32は、ツールストッカー60に収容された切削ツール8を把持可能に構成されている。詳しくは後述するが、ツールストッカー60は前後方向に移動可能に構成されている。ツールストッカー60が後方に移動することで、ツールストッカー60は、切削装置エリアAR4(
図3参照)に配置され、かつ、スピンドル31およびツール把持部32の下方に配置される。そして、スピンドル31およびツール把持部32をツールストッカー60に向かって移動させ、挿入孔62に挿入された切削ツール8の上端部をツール把持部32が把持する。その後、スピンドル31およびツール把持部32が上方に移動することで、ツール把持部32に把持された切削ツール8を挿入孔62から抜くことができる。
【0040】
図8に示すように、ストッカー移動機構80は、矢印A1のように、ツールストッカー60を移動させる機構である。
図9は、第1位置P1と第2位置P2とを示した模式図である。
図9において、2点破線よりも右側のエリアがツールエリアAR5であり、2点破線よりも左側のエリアは、ケース本体10の前方のエリアである。本実施形態では、ストッカー移動機構80は、
図9に示すように、ツールストッカー60の少なくとも一部が、ツール開口14を通じてツールエリアAR5よりも前方に配置される位置まで移動させることが可能である。ここでは、
図8に示すように、ストッカー移動機構80は、ツールストッカー60を第1位置P1と第2位置P2との間で移動可能に構成されている。
【0041】
図9に示すように、第1位置P1とは、ツールストッカー60がツールエリアAR5内に配置されているときのツールストッカー60の位置である。例えばツールストッカー60に対して切削ツール8の収容に関する操作や、ツール把持部32による切削ツール8を交換する動作が行われていないときには、ツールストッカー60は、第1位置P1に配置される。第1位置P1は、ツールストッカー60の待機位置であるともいえる。
【0042】
第2位置P2とは、第1位置P1よりも前方の位置である。第2位置P2とは、ツールストッカー60の一部が、ケース本体10のツール開口14(言い換えると、ツールエリアAR5)よりもケース本体10の外側に配置されているときのツールストッカー60の位置である。言い換えると、ツールストッカー60が第2位置P2に配置されているとき、ツールストッカー60の少なくとも一部がツール開口14(言い換えると、ツールエリアAR5)よりも前方に配置されている。なお、本実施形態では、第2位置P2のとき、ツールストッカー60の前部がツール開口14よりも前方に配置されている。ここで、ツールストッカー60の前部とは、ツールストッカー60を前後に2等分したときの前側の部分のことである。ただし、第2位置P2のとき、ツールストッカー60の全体がツール開口14よりも前方に配置されてもよい。なお、本実施形態では、詳しくは後述するが、ツールストッカー60が第2位置P2に配置されている状態で、回転するように構成されている。そのため、ツールストッカー60の回転角度に応じて、第2位置P2のときに、ツールストッカー60の全体がツール開口14よりも前方に配置されてもよい。
【0043】
本実施形態では、
図8に示すように、ストッカー移動機構80は、ツールエリアAR5に配置されているが、他のエリア、例えば駆動エリアAR3に配置されていてもよい。また、ストッカー移動機構80の構成は特に限定されない。ここでは、ストッカー移動機構80は、ボールねじ84を使用してツールストッカー60を移動可能に構成されている。ストッカー移動機構80は、ガイドレール81と、棒状キャリッジ82と、移動部材83と、ボールねじ84と、移動モータ85とを備えている。
【0044】
ガイドレール81は、第1位置P1から第2位置P2に向かって延びている。ここでは、ガイドレール81は、前後方向に延びており、ツールエリアAR5に配置されている。ガイドレール81の数は特に限定されない。本実施形態では、ガイドレール81の数は2つであるが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。2つのガイドレール81は、左右方向に並んで配置されている。以下、左に配置されたガイドレール81を左ガイドレール81Lともいい、右に配置されたガイドレール81を右ガイドレール81Rともいう。左ガイドレール81Lと、右ガイドレール81Rとは、ツールストッカー60を挟んで対向している。左ガイドレール81Lは、ツールストッカー60の左方に配置されている。右ガイドレール81Rは、ツールストッカー60の右方に配置されている。
【0045】
本実施形態では、ガイドレール81(言い換えると、左ガイドレール81Lおよび右ガイドレール81R)には、摺動孔86が形成されている。摺動孔86は、ガイドレール81を左右方向に貫通させた孔である。摺動孔86は、第1位置P1から第2位置P2に向かって延びた長孔であり、かつ、前後方向に延びた長孔である。
【0046】
棒状キャリッジ82は、本発明のキャリッジの一例である。棒状キャリッジ82は、ガイドレール81に摺動自在に係合している。棒状キャリッジ82は、左ガイドレール81Lと右ガイドレール81Rの両方に摺動自在に係合している。ここでは、棒状キャリッジ82は、左右方向に延びた棒状のものである。棒状キャリッジ82は、ガイドレール81に形成された摺動孔86に挿入されている。棒状キャリッジ82は、摺動孔86に挿入された状態で、ガイドレール81に沿って前後方向に移動可能である。棒状キャリッジ82には、ツールストッカー60が設けられている。ここでは、棒状キャリッジ82のうち、左ガイドレール81Lと右ガイドレール81Rとの間に配置された部分にツールストッカー60が設けられている。本実施形態では、棒状キャリッジ82は、ツールストッカー60の後端部に設けられているが、ツールストッカー60に対する棒状キャリッジ82の位置は特に限定されない。例えば棒状キャリッジ82は、ツールストッカー60の前端部に設けられてもよいし、ツールストッカー60の前後方向の中央部分に設けられてもよい。
【0047】
移動部材83は、棒状キャリッジ82に接続されるものである。ここでは、移動部材83は、棒状キャリッジ82の左端部に接続されている。なお、本実施形態では、移動部材83には、後述の回転モータ91が設けられている。この回転モータ91が棒状キャリッジ82に接続されている。そのため、移動部材83は、回転モータ91を介して間接的に棒状キャリッジ82に接続されている。ここでは、移動部材83は立方体形状であるが、移動部材83の形状は、特に限定されない。
【0048】
ボールねじ84は、棒状キャリッジ82の左方において、第1位置P1から第2位置P2に向かう方向に延びている。ボールねじ84は、ガイドレール81と平行に配置されている。ボールねじ84は、前後方向に延びている。ボールねじ84は、移動部材83に係合している。ここでは、移動部材83には、ナット87が設けられている。ボールねじ84は、移動部材83のナット87に螺合することで、移動部材83に係合している。移動モータ85は、棒状キャリッジ82をガイドレール81に沿って移動させるモータである。移動モータ85は、ボールねじ84(詳しくは、ボールねじ84の後端)に接続されている。
【0049】
本実施形態では、移動モータ85が駆動することで、ボールねじ84が中心軸を軸にして回転する。このことで、ボールねじ84に係合している移動部材83がボールねじ84に沿って前後方向に移動する。移動部材83の移動に伴い、棒状キャリッジ82およびツールストッカー60は、ガイドレール81に沿って前後方向に移動する。このようにして、ツールストッカー60は、第1位置P1と第2位置P2との間を移動することが可能になる。
【0050】
なお、本実施形態では、ストッカー移動機構80は、ツールストッカー60を切削装置エリアAR4(
図3参照)に移動させるように構成されていてもよい。この場合、ガイドレール81およびボールねじ84は、一部(例えば後部)が切削装置エリアAR4に配置されるように、更に後方に延びていてもよい。このことによって、ストッカー移動機構80によって、ツールストッカー60が切削装置エリアAR4に移動し、切削装置エリアAR4においてツール把持部32に把持された切削ツール8の交換を行うことができる。
【0051】
図8に示すように、ストッカー回転機構90は、矢印A2のように、ツールストッカー60を回転させる機構である。ここでは、ストッカー回転機構90は、左右方向に延びた棒状キャリッジ82の中心軸を軸にして、ツールストッカー60を前後または上下に回転させる。ストッカー回転機構90は、ツールストッカー60が第2位置P2に配置されている状態において、ツールストッカー60を回転させるように構成されている。
【0052】
なお、ストッカー回転機構90の構成は特に限定されない。本実施形態では、ストッカー回転機構90は、上述の棒状キャリッジ82と、回転モータ91とを備えている。棒状キャリッジ82は、本発明におけるストッカー回転機構が備える回転軸の一例でもある。上述のように、棒状キャリッジ82は、左右方向に延びている。棒状キャリッジ82には、ツールストッカー60が設けられている。回転モータ91は、棒状キャリッジ82を回転させる。詳しくは、回転モータ91は、棒状キャリッジ82の中心軸を軸に棒状キャリッジ82を回転させるものである。回転モータ91は、ストッカー移動機構80の移動部材83に設けられている。詳しくは、回転モータ91は、移動部材83の上面に固定されている。回転モータ91は、棒状キャリッジ82(ここでは、棒状キャリッジ82の左端部)に接続されている。
【0053】
本実施形態では、回転モータ91が駆動することで、回転モータ91に接続された棒状キャリッジ82が中心軸を軸に回転する。このことによって、棒状キャリッジ82に設けられたツールストッカー60が、棒状キャリッジ82の中心軸を軸にして、矢印A2のように回転する。
【0054】
図3に示すように、切削加工機100は、検出機構95を備えている。検出機構95は、ケース本体10の前方にいるユーザを検出する機構である。ここで、ケース本体10の前方にいるユーザとは、手動でツールストッカー60に切削ツール8を収容する操作、または、ツールストッカー60に収容された切削ツール8を取り出す操作を行うユーザと言い換えることができる。ここでは、検出機構95によって検出されたユーザの検出結果に基づいて、ユーザの目線の高さを推定する。そのため、検出機構95は、ユーザのうちの目の位置(言い換えると、目の高さ)を検出する。
【0055】
検出機構95は、ツールエリアAR5に配置されており、ツール扉19に設けられた窓部19aを通じて、ケース本体10の前方にいるユーザを検出する。検出機構95は、ツールエリアAR5のうちのツールストッカー60により近い位置に配置されているとよい。ただし、ケース本体10の前方にいるユーザを検出することができれば、検出機構95の配置位置は特に限定されない。例えば検出機構95は、ツールエリアAR5の外側であって、ツール扉19の前面に設けられていてもよい。
【0056】
また、検出機構95は、ユーザ(詳しくはユーザの目の位置)を検出することができれば、その種類は特に限定されない。本実施形態では、検出機構95は、カメラによって構成されている。ここでは、検出機構95の一例であるカメラによって、ケース本体10の前方にいるユーザの顔を撮影する。検出機構95によって撮影された成果物は、画像である。画像は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。ここでは、検出機構95は、ユーザの顔が映った画像を取得する。この画像から得られる目の位置と、検出機構95が配置された高さに基づいて、ユーザの目線の高さを推定する。
【0057】
図4に示すように、切削加工機100は、制御装置110を備えている。制御装置110は、被切削物5に対する切削加工に関する制御を行う装置である。また、制御装置110は、ツールストッカー60の移動および回転の制御を行う装置である。制御装置110の構成は特に限定されない。制御装置110は、例えばマイクロコンピュータである。制御装置110は、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を備えている。制御装置110は、ケース本体10の内部に設けられている。ただし、制御装置110は、ケース本体10の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置110は、有線または無線を介して切削加工機100の制御基板(図示せず)と通信可能に接続されている。
【0058】
本実施形態では、制御装置110は、操作パネル18a、切削装置30(詳しくは、スピンドル31)、移動機構50(詳しくは、クランプ移動機構51、左右移動機構52、および、上下移動機構53)、ツールストッカー60のツールセンサ64、ストッカー移動機構80(詳しくは、移動モータ85)、ストッカー回転機構90(詳しくは、回転モータ91)、および、検出機構95と通信可能に接続されている。制御装置110は、操作パネル18a、切削装置30、移動機構50、ツールストッカー60のツールセンサ64、ストッカー移動機構80、ストッカー回転機構90、および、検出機構95を制御可能に構成されている。
【0059】
ところで、本実施形態において、
図1に示すように、ツールストッカー60が収容されているツールエリアAR5は、例えば切削エリアAR2よりも上方に配置され、かつ、ケース本体10の上部に配置されている。すなわち、ツールエリアAR5は、比較的に高い位置に配置されている。ユーザは、ツール扉19を操作してツール開口14を開放させて、ツールストッカー60に切削ツール8を手動で収容する操作や、ツールストッカー60に収容された切削ツール8を手動で取り出す操作を行う。以下、ツールストッカー60に切削ツール8を手動で収容する操作、および、ツールストッカー60に収容された切削ツール8を手動で取り出す操作のことを、ツールストッカー60に関する操作ともいう。このように、ツールエリアAR5が比較的に高い位置に配置されていると、ユーザがツールストッカー60に関する操作を行い難いことがあった。例えばユーザの身長が低い場合には、高い位置に配置されたツールエリアAR5を覗き込み難く、ツールストッカー60に関する操作を行い難いことがあった。
【0060】
そこで、本実施形態では、ツール扉19を操作してツール開口14を開放させたとき、ツールストッカー60を前方に移動させる。そして、ユーザは、ツールストッカー60が前方に移動した状態で、ツールストッカー60に切削ツール8を手動で収容したり、ツールストッカー60に収容された切削ツール8を手動で取り出したりする、いわゆるツールストッカー60に関する操作を行う。
【0061】
本実施形態では、ユーザがツールストッカー60に対する操作を行い易くするための制御を制御装置110が行う。
図4に示すように、制御装置110は、記憶部111と、ストッカー移動制御部113と、推定部115と、回転制御部117とを備えている。記憶部111と、ストッカー移動制御部113と、推定部115と、回転制御部117とは、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば記憶部111と、ストッカー移動制御部113と、推定部115と、回転制御部117は、1つまたは複数のプロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0062】
ストッカー移動制御部113は、
図8に示すように、ツールストッカー60を第1位置P1と第2位置P2との間に移動させるように、ストッカー移動機構80の移動モータ85の駆動を制御する。推定部115は、検出機構95の検出結果に基づいて、ユーザの目線の高さを推定する。回転制御部117は、棒状キャリッジ82を回転させるように回転モータ91の駆動を制御する。なお、ストッカー移動制御部113、推定部115および回転制御部117におけるそれぞれの詳しい制御については後述する。
【0063】
次に、ツールストッカー60を移動および回転させる制御手順について、
図10のフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、
図10のステップS101を実行する前において、
図1に示すように、ツール扉19は閉じられており、ツール開口14は閉鎖されている。このとき、
図9の破線で示すように、ツールストッカー60は、ツールエリアAR5の第1位置P1に配置されている。また、ツールストッカー60は、第1位置P1において挿入面61が上方を向くような姿勢で配置されている。例えばユーザが切削加工機100のケース本体10の前に立ち、ツール扉19を操作して、ツール扉19が開いてツール開口14が開放されたとき、ステップS101が実行される。なお、例えば切削加工機100には、ツール扉19の開閉を検出するセンサが設けられており、当該センサによってツール扉19が開いたことを制御装置110が検知する。
【0064】
図10のステップS101では、ツール扉19が開いてツール開口14が開放された状態において、
図4のストッカー移動制御部113は、ツールストッカー60を移動させる。ここでは、ストッカー移動制御部113は、
図9に示すように、第1位置P1に配置されているツールストッカー60が第2位置P2に配置されるように、かつ、ツールストッカー60を第2位置P2に向かって移動させるように移動モータ85(
図8参照)を制御する。ストッカー移動制御部113は、ツールストッカー60が前方に移動するように移動モータ85の駆動を制御する。ここでは、ストッカー移動制御部113による制御によって、
図8に示すように、第1位置P1に配置されたツールストッカー60がガイドレール81に沿って第2位置P2に向かって移動する。そして、
図9に示すように、ツールストッカー60が第2位置P2に配置されたとき、ツールストッカー60の少なくとも一部は、ツール開口14よりも前方に配置される。なお、ステップS101を実行した後において、ツールストッカー60は、挿入面61が上方を向いた姿勢で配置されている。
【0065】
次に、
図10のステップS103では、
図4の推定部115は、ケース本体10の前にいるユーザの目線の高さH2を推定する。ここでは、推定部115は、検出機構95の検出結果に基づいて、ケース本体10の前にいるユーザの目線の高さH2を推定する。本実施形態では、推定部115は、検出機構95に検出信号を送信する。検出信号を受信した検出機構95は、ケース本体10の前にいるユーザの顔を撮影して画像を得る。検出機構95によって撮影された画像は、制御装置110に送信される。推定部115は、送信された画像を受信することで、検出機構95によって撮影された画像を取得する。
【0066】
その後、推定部115は、例えば画像処理の技術を用いて、画像からユーザの目の位置を特定する。本実施形態では、検出機構95は、ケース本体10に固定されている。そのため、検出機構95の上下方向の位置は、固定である。ここでは、制御装置110の記憶部111(
図4参照)には、検出機構95の上下方向の位置、すなわち検出機構95の高さが予め記憶されている。推定部115は、検出機構95から取得した画像におけるユーザの目の位置と、検出機構95の高さに基づいて、ケース本体10の前にいるユーザの目線の高さH2を算出する。
【0067】
ここでは、ユーザの目線の高さH2とは、ユーザの目の高さと言い換えることができる。ユーザの目線の高さH2は、ユーザが正面を向いたときの目の中心の高さであり、ツールストッカー60(言い換えるとツールエリアAR5)に対する目の中心の高さである。
【0068】
次に、
図10のステップS105では、
図4の回転制御部117は、ツールストッカー60を回転させる。ここでは、回転制御部117は、第2位置P2に配置されているツールストッカー60を回転させる。回転制御部117は、
図8に示すように、棒状キャリッジ82の中心軸を軸にツールストッカー60を回転させるように、回転モータ91の駆動を制御する。本実施形態では、回転制御部117は、ツールストッカー60の挿入面61が前方を向くようにツールストッカー60を回転させる。なお、回転制御部117によるツールストッカー60を回転させる回転角度は特に限定されない。ここでは、ケース本体10の前にいるユーザの目線の高さH2に応じて、ツールストッカー60の回転角度が決定される。回転制御部117は、推定部115によって推定されたユーザの目線の高さH2に応じて、ツールストッカー60の回転角度を決定する。なお、ここでいう回転角度とは、ツールストッカー60の挿入面61が上方を向いている状態を基準にした角度、例えば挿入面61が水平面上に配置されている状態を基準にした角度のことをいう。
【0069】
図11、
図12、
図13は、ツールストッカー60の回転角度を示した模式図である。
図11~
図13において、2点破線よりも右側のエリアがツールエリアAR5であり、2点破線よりも左側のエリアは、ケース本体10の前方のエリアである。回転制御部117は、推定部115によって推定されたユーザの目線の高さH2に応じて、棒状キャリッジ82を回転させる。ここでは、回転制御部117は、
図11~
図13に示すように、推定部115によって推定されたユーザの目線の高さH2が、基準高さH1以上のときよりも、基準高さH1未満のときの方が、ツールストッカー60の挿入面61が前方を向くように、言い換えると挿入面61が垂直に近くなるように、回転モータ91の駆動を制御する。本実施形態では、ツールストッカー60の回転角度は、3段階で調整される。回転制御部117は、推定部115によって推定されたユーザの目線の高さH2と、基準高さH1とを比較することで、ツールストッカー60の回転角度を、3段階で調整する。
【0070】
ここで、基準高さH1とは、
図4の記憶部111に予め記憶された値である。本実施形態では、
図11に示すように、基準高さH1は、第1基準高さH11と、第2基準高さH12とを有している。第1基準高さH11および第2基準高さH12の具体的な値は特に限定されず、例えばツールエリアAR5の高さに応じて設定されるものである。
【0071】
第1基準高さH11は、第2基準高さH12よりも高いものである。ここでは、
図11に示すように、ユーザの目線の高さH2が、第1基準高さH11以上のときには、回転制御部117は、ツールストッカー60の回転角度を第1角度R11に決定する。
図12に示すように、ユーザの目線の高さH2が、第1基準高さH11未満であり、かつ、第2基準高さH12以上であるときには、回転制御部117は、ツールストッカー60の回転角度を第2角度R12に決定する。また、
図13に示すように、ユーザの目線の高さH2が、第2基準高さH12未満であるときには、回転制御部117は、ツールストッカー60の回転角度を第3角度R13に決定する。
【0072】
ここで、第1角度R11、第2角度R12および第3角度R13は、0度より大きく、90度以下である。
図11および
図12に示すように、第2角度R12は、第1角度R11よりも大きい。
図11~
図13に示すように、第3角度R13は、第1角度R11よりも大きく、かつ、第2角度R12よりも大きい。すなわち、推定部115によって推定されたユーザの目線の高さH2が低い程、ツールストッカー60の回転角度が大きく設定される。また、ユーザの目線の高さH2が低い程、ツールストッカー60の挿入面61が垂直に近くなるような向きになるように、ツールストッカー60が回転制御部117によって回転される。
【0073】
以上のようにツールストッカー60が第2位置P2において回転された後、ユーザは、ツールストッカー60に切削ツール8を収容したり、ツールストッカー60に収容された切削ツール8を取り出したりすることができる。
【0074】
なお、ユーザによるツールストッカー60に関する操作が終了した後、ツールストッカー60は、挿入面61が上方を向くように回転するように、ストッカー回転機構90が制御される。その後、ツールストッカー60が第1位置P1に向かって移動するようにストッカー移動機構80が制御される。
【0075】
以上、本実施形態では、
図8に示すように、切削加工機100は、ツールストッカー60と、ケース本体10(
図1参照)と、ストッカー移動機構80とを備えている。ツールストッカー60には、被切削物5を切削する切削ツール8(
図6参照)が複数収容されている。
図3に示すように、ケース本体10には、ツールストッカー60が配置されたツールエリアAR5と、ツールエリアAR5の前方に配置され、ツールエリアAR5と連通するツール開口14とが形成されている。ストッカー移動機構80は、
図9に示すように、ツールエリアAR5内にツールストッカー60が配置される第1位置P1と、ケース本体10のツール開口14よりもケース本体10の外側においてツールストッカー60の少なくとも一部が配置される第2位置P2との間に、ツールストッカー60を移動させる。このことによって、例えばユーザがツールストッカー60に切削ツール8を収容したり、ツールストッカー60に収容した切削ツール8を取り出したりするときには、ツールストッカー60が第2位置P2に配置されるように、ツールストッカー60を移動させる。よって、ツールストッカー60の少なくとも一部がツールエリアAR5よりも手前に配置された状態で、ユーザは、ツールストッカー60に関する操作をすることができる。したがって、ユーザがツールストッカー60に切削ツール8を収容したり、ツールストッカー60に収容した切削ツール8を取り出したりする操作を容易に行うことができる。
【0076】
本実施形態では、
図8に示すように、ストッカー移動機構80は、第1位置P1から第2位置P2に向かって延びたガイドレール81と、ガイドレール81に摺動自在に係合し、ツールストッカー60が設けられた棒状キャリッジ82とを備えている。このことによって、棒状キャリッジ82をガイドレール81に沿って移動させるという簡単な手段で、ツールストッカー60を第1位置P1と第2位置P2の間に移動させ易くすることができる。
【0077】
本実施形態では、ストッカー移動機構80は、棒状キャリッジ82をガイドレール81に沿って移動させる移動モータ85を備えている。制御装置110は、ツールストッカー60を第1位置P1と第2位置P2との間に移動させるように移動モータ85の駆動を制御するストッカー移動制御部113(
図4参照)を有している。このことによって、ストッカー移動制御部113によって、ツールストッカー60を第1位置P1から第2位置P2に向かって自動で移動させることができる。よって、ユーザが例えばツールストッカー60を手動で手前に引っ張るなどの操作をすることなく、ツールストッカー60を第2位置P2に配置することができる。
【0078】
本実施形態では、
図8に示すように、切削加工機100は、第2位置P2において、ツールストッカー60が前を向くようにツールストッカー60を回転させるストッカー回転機構90を備えている。このことによって、
図11に示すように、ツールストッカー60が前を向くように回転された後の状態で、ユーザは、ツールストッカー60に関する操作をすることができる。したがって、ユーザがツールストッカー60に切削ツール8を収容したり、ツールストッカー60に収容した切削ツール8を取り出したりする操作をより容易に行うことができる。
【0079】
本実施形態では、
図8に示すように、ストッカー回転機構90は、ツールストッカー60が設けられた棒状キャリッジ82と、棒状キャリッジ82を回転させる回転モータ91と、を備えている。制御装置110は、棒状キャリッジ82を回転させるように回転モータ91の駆動を制御する回転制御部117(
図4参照)を有している。このことによって、回転制御部117によって、ツールストッカー60を自動で回転させることができる。よって、ユーザが例えばツールストッカー60を手動で回転させるなどの操作をすることなく、ツールストッカー60が前を向くように回転させることができる。
【0080】
本実施形態では、切削加工機100は、ケース本体10の前方にいるユーザを検出する検出機構95(
図3参照)を備えている。制御装置110は、検出機構95の検出結果に基づいて、ユーザの目線の高さH2を推定する推定部115(
図4参照)を有している。回転制御部117は、推定部115によって推定されたユーザの目線の高さH2に応じて、棒状キャリッジ82を回転させる。このことによって、ユーザの目線の高さH2に応じて、ツールストッカー60を回転させることができる。よって、ユーザが見易い位置になるように、ツールストッカー60を回転させることができるため、ツールストッカー60に関する操作をし易い。
【0081】
本実施形態では、
図7に示すように、ツールストッカー60は、切削ツール8が挿入される挿入孔62が形成された挿入面61を有している。回転制御部117は、
図11~
図13に示すように、推定部115によって推定されたユーザの目線の高さH2が、基準高さH1以上のときよりも、基準高さH1未満のときの方が、ツールストッカー60の挿入面61が前方を向くように回転モータ91の駆動を制御する。このことによって、ユーザの目線が低い程、挿入面61が垂直に近づくようにツールストッカー60が回転する。よって、ユーザの目線が低い場合であっても、挿入面61を見易くすることができる。したがって、ユーザの目線が低い場合であっても、ツールストッカー60に関する操作をし易くすることができる。
【0082】
本実施形態では、検出機構95は、ツールエリアAR5内に配置された状態で固定され、かつ、ユーザの顔を撮影するカメラである。推定部115は、検出機構95によって撮影された画像からユーザの目の位置を特定して、ユーザの目線の高さH2を推定する。このように、検出機構95の位置が固定されるため、検出機構95の高さは固定される。そのため、検出機構95によって撮影された画像からユーザの目の位置を特定することで、画像から得られたユーザの目の位置と、検出機構95の高さから、ユーザの目線の高さH2を推定することができる。
【0083】
本実施形態では、
図1に示すように、ケース本体10には、被切削物5を切削加工する切削エリアAR2が形成されている。ツールエリアAR5は、切削エリアAR2とは異なるエリアであり、かつ、切削エリアAR2よりも上方に配置されている。このことによって、ツールエリアAR5は比較的に高い位置に配置される。そのため、ユーザの身長によっては、ツールエリアAR5に配置されたツールストッカー60を操作し難いことがあり得る。しかしながら、本実施形態では、ツールストッカー60は、第2位置P2まで移動することが可能であり、ツールエリアAR5よりも手前に配置することができる。よって、ツールエリアAR5が比較的に高い位置に配置されている場合であっても、ツールストッカー60に関する操作をし易くすることができる。
【0084】
なお、本実施形態では、ストッカー移動機構80は、移動モータ85を備えていた。そして、移動モータ85を駆動させることで、ツールストッカー60を自動で第1位置P1と第2位置P2との間で移動させていた。しかしながら、移動モータ85は省略されてもよい。この場合、ユーザがツールストッカー60を手で持って移動させることで、ツールストッカー60がガイドレール81に沿って、第1位置P1と第2位置P2との間を移動することができる。
【0085】
本実施形態では、ストッカー回転機構90は、回転モータ91を備えていた。そして、回転モータ91を駆動させることで、ツールストッカー60を自動で回転させていた。しかしながら、回転モータ91は省略されてもよい。この場合、ユーザは、第2位置P2に配置されたツールストッカー60を手で持って回転させることで、ツールストッカー60は、棒状キャリッジ82を軸にして回転することができる。
【0086】
なお、ストッカー回転機構90自体が省略されてもよい。すなわち、ツールストッカー60は、回転せずに、第1位置P1と第2位置P2との間で移動可能に構成されていてもよい。この場合であっても、ツールストッカー60を第2位置P2に配置することができるため、ツールストッカー60に関する操作をし易くすることができる。
【符号の説明】
【0087】
5 被切削物
8 切削ツール
10 ケース本体
14 ツール開口
60 ツールストッカー
61 挿入面
62 挿入孔
80 ストッカー移動機構
81 ガイドレール
82 棒状キャリッジ(キャリッジ、回転軸)
85 移動モータ
90 ストッカー回転機構
91 回転モータ
95 検出機構
100 切削加工機
110 制御装置
113 ストッカー移動制御部
115 推定部
117 回転制御部
AR2 切削エリア
AR5 ツールエリア
P1 第1位置
P2 第2位置