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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004693
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】補聴器
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/02 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H04R25/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104449
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】507212768
【氏名又は名称】三菱ケミカルグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】金森 英里
(72)【発明者】
【氏名】般谷 徹
(57)【要約】
【課題】使用者が不快感なく使用できる補聴器を提供する。
【解決手段】補聴器10は、フロント部1と、使用者Uの耳Eに掛けられる一対のテンプル部2と、外部の音を電気信号に変換するマイクロフォン3と、電気信号に基づいて出力信号を送信する制御部4と、出力信号を出力音に変換するスピーカ5と、テンプル部2から延出して出力音を伝える中空部を有する音導管6と、を備える。音導管6は、音導管6の中空部に通じる開口63を有する。開口63は、使用者Uの顔Fの側面に対向する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の透光体と前記透光体を互いに連結するブリッジとを有するフロント部と、
前記フロント部に連結されて使用者の耳に掛けられる一対のテンプル部と、
外部の音を電気信号に変換するマイクロフォンと、
前記電気信号に基づいて出力信号を送信する制御部と、
前記テンプル部に設けられ、前記出力信号を出力音に変換するスピーカと、
前記テンプル部から延出して前記出力音を伝える中空部を有する音導管と、を備え、
前記音導管は、前記中空部に通じ、前記使用者の顔の側面に対向する開口を有する、
補聴器。
【請求項2】
前記音導管の先端部に、他の部分より内径が大きい拡径部が形成され、
前記開口は、前記拡径部に形成されている、
請求項1記載の補聴器。
【請求項3】
前記拡径部は、曲面からなる外表面を有する形状とされている、
請求項2記載の補聴器。
【請求項4】
前記中空部は、前記テンプル部の長さ方向に沿う断面が、前記テンプル部の長さ方向を長径とする長孔形状とされている、
請求項1に記載の補聴器。
【請求項5】
前記テンプル部を、互いに等しい第1長さ範囲と第2長さ範囲と第3長さ範囲とに分けたとき、前記音導管は、前記第2長さ範囲に包含される、
請求項1~4のうちいずれか1項に記載の補聴器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補聴器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声の聴き取りを補助する補聴器が用いられている。補聴器としては、例えば、使用者の外耳道に挿入されるイヤホンを備えたイヤホン型補聴器がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001-508261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の補聴器では、イヤホンが使用者の外耳道に挿入されるため、使用者が不快に感じることがあった。
【0005】
本発明の一態様は、使用者が不快感なく使用できる補聴器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の一態様は、以下の手段を提供する。
[1]一対の透光体と前記透光体を互いに連結するブリッジとを有するフロント部と、前記フロント部に連結されて使用者の耳に掛けられる一対のテンプル部と、外部の音を電気信号に変換するマイクロフォンと、前記電気信号に基づいて出力信号を送信する制御部と、前記テンプル部に設けられ、前記出力信号を出力音に変換するスピーカと、前記テンプル部から延出して前記出力音を伝える中空部を有する音導管と、を備え、前記音導管は、前記中空部に通じ、前記使用者の顔の側面に対向する開口を有する、補聴器。
【0007】
[2]前記音導管の先端部に、他の部分より内径が大きい拡径部が形成され、前記開口は、前記拡径部に形成されている、[1]記載の補聴器。
【0008】
[3]前記拡径部は、曲面からなる外表面を有する形状とされている、[2]に記載の補聴器。
【0009】
[4]前記中空部は、前記テンプル部の長さ方向に沿う断面が、前記テンプル部の長さ方向を長径とする長孔形状とされている、[1]に記載の補聴器。
【0010】
[5]前記テンプル部を、互いに等しい第1長さ範囲と第2長さ範囲と第3長さ範囲とに分けたとき、前記音導管は、前記第2長さ範囲に包含される、[1]~[4]のうちいずれか1つに記載の補聴器。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、使用者が不快感なく使用できる補聴器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の補聴器の斜視図である。
図2】実施形態の補聴器の斜視図である。
図3】実施形態の補聴器のテンプル部および音導管の側面図である。
図4】実施形態の補聴器のテンプル部および音導管の一部断面状態の斜視図である。
図5】実施形態の補聴器の音導管の長さ方向に沿う断面図である。
図6】実施形態の補聴器の拡大斜視図である。
図7】テンプル部を展開した形態の補聴器の平面図である。
図8】テンプル部を折りたたんだ形態の補聴器の平面図である。
図9】実施形態の補聴器のブロック図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
[補聴器]
図1は、実施形態の補聴器10の斜視図である。図2は、補聴器10を斜め後方から見た斜視図である。図3は、テンプル部2および音導管6の側面図である。図4は、テンプル部2および音導管6の一部断面状態の斜視図である。図5は、音導管の長さ方向に沿う断面図である。図6は、補聴器10の拡大斜視図である。図7は、テンプル部2を展開した形態の補聴器10の平面図である。図8は、テンプル部2を折りたたんだ形態の補聴器の平面図である。図9は、補聴器10のブロック図の例である。
【0015】
図1および図2に示すように、補聴器10は、フロント部1と、一対のテンプル部2と、マイクロフォン3と、制御部4と、一対のスピーカ5と、一対の音導管6と、バッテリ7とを備える。
【0016】
以下、図1に即して各構成の位置関係を規定する。図1に示すように、補聴器10は、使用者Uの顔Fに装着した状態とする。2つのテンプル部2は水平に並ぶ。ここで定めた位置関係は、補聴器10の使用時の姿勢を限定しない。
【0017】
2つのテンプル部2の並び方向はY方向である。Y方向は左右方向である。水平面内でY方向に直交する方向はX方向である。X方向は前後方向である。使用者Uの前方は-X方向である。使用者Uの後方は+X方向である。X方向およびY方向に直交する方向はZ方向である。2つのテンプル部2が互いに近づく方向は内方である。2つのテンプル部2が互いに離れる方向は外方である。
【0018】
フロント部1は、一対の透光体11と、一対のリム12と、ブリッジ13と、一対の智14と、一対の鼻あて15(図2参照)と、を備える。
透光体11は、透明な板状体である。透光体11は、使用者Uの目の前に配置される。透光体11は、可視光が全波長域にわたって厚さ方向に透過可能であることが好ましい。使用者Uは、顔Fに補聴器10を装着することで、透光体11を通した視界を得る。
【0019】
透光体11は、正面から見て(すなわち、厚さ方向から見て)、例えば、楕円形状、長円形状、円形状、角丸四角形状、矩形状などであってよい。透光体11は、視力矯正の機能を持つレンズであってもよいし、視力矯正の機能がなくてもよい。視力矯正の機能を持つレンズとしては、凸レンズ、凹レンズなどがある。透光体11は、無色であってもよいし、着色されていてもよい。なお、両目に対応することができれば、透光体の数はひとつでもよい。
【0020】
リム12は、透光体11の外周縁の少なくとも一部に取り付けられて透光体11を保持する。本実施形態では、リム12は、透光体11の外周縁の全周にわたる環状に形成されている。リム12は、合成樹脂、金属などにより形成されている。なお、フロント部は、リムがなくてもよい。
【0021】
ブリッジ13は、2つのリム12を連結する。ブリッジ13は、例えば、リム12と一体に形成されている。ブリッジ13は、合成樹脂、金属などにより形成されている。なお、リムがない場合、ブリッジは直接、2つの透光体どうしを連結する。
【0022】
智14は、リム12の左右方向の端部のうちブリッジ13とは反対の端部に形成されている。智14は、リム12と一体に形成されている。智14は、合成樹脂、金属などにより形成されている。
【0023】
図2および図6に示すように、一対の鼻あて15は、使用者Uの鼻に載って透光体11およびリム12を支持する。鼻あて15は、ブリッジ13の後面から互いに離れつつ後方に突出する。鼻あて15は、例えば、板状に形成されている。
【0024】
図1に示すように、テンプル部2は、管状に形成されている。一対のテンプル部2は、使用者Uの耳Eに掛けられてフロント部1を支持する。テンプル部2は、ヒンジ部21(図2参照)を介して智14に回動自在に連結されている。テンプル部2は、合成樹脂、金属などにより形成されている。
【0025】
テンプル部2は、フロント部1に対して回動することによって、展開した形態(展開形態P1)(図7参照)と、折りたたんだ形態(折りたたみ形態P2)(図8参照)とを切り替えできる。図7に示すように、展開形態P1では、テンプル部2はフロント部1から概略、後方に延びる。
【0026】
図1および図2に示すように、マイクロフォン3は、例えば、一対の智14のうち一方に内蔵されている。マイクロフォン3は、外部の音を電気信号に変換する。
【0027】
制御部4は、一方のテンプル部2に内蔵されている。
図9に示すように、制御部4は、マイク制御部41と、通信制御部42と、アンテナ43と、アンプ44と、音変調部45と、を備える。
マイク制御部41は、マイクロフォン3からの電気信号に基づいて制御信号をアンプ44に送る。アンプ44は、制御信号に基づいて出力信号をスピーカ5に送る。アンプ44は、信号を増幅してスピーカ5に送ることができる。
【0028】
アンテナ43は、スマートフォン等からの無線信号を受信し、受信信号を通信制御部42に送る。通信制御部42は、受信信号に基づいて、制御信号を音変調部45に送る。音変調部45は、受信信号に応じて音の変調度を調整した制御信号をアンプ44に送る。このように、制御部4は、アンテナ43からの信号に基づいてスピーカ5の音量を調整することができる。
【0029】
アンテナ43は、制御部4からの送信信号に基づいて信号を送信することもできる。
【0030】
図1および図2に示すように、一対のスピーカ5は、それぞれ一方および他方のテンプル部2に内蔵されている。図5に示すように、スピーカ5は、管状のテンプル部2の内部の中空部2aに設けられている。図9に示すように、スピーカ5は、アンプ44に電気的に接続されている。スピーカ5は、制御部4からの出力信号を出力音に変換する。
【0031】
スピーカ5としては、例えば、バランスドアーマチュア型のスピーカが使用できる。バランスドアーマチュア型は、振動板が連結されたアーマチュア(可動鉄片)を、2組のコイルと磁石で挟み込んだ構造を有する。バランスドアーマチュア型のスピーカでは、それぞれのコイルに電流を流しアーマチュア内の磁界を変化させる。これにより、アーマチュアは振動し、音波が発生する。
【0032】
図5に示すように、テンプル部2内には、隔壁8が設けられている。隔壁8は、中空部2aを前後に区画する。隔壁8は、マイクロフォン3(図1参照)とスピーカ5との間のいずれかの位置に形成されている。隔壁8によって、マイクロフォン3とスピーカ5との間で音が伝わるのを抑制し、ハウリングを抑えることができる。
【0033】
図3は、テンプル部2および音導管6の内方の側面を示す図である。図3に示すように、音導管6は、テンプル部2の下縁から斜め後方に向けて延出する。音導管6は、後方に行くほど徐々に下降するように傾斜している。
【0034】
図4および図5に示すように、音導管6は、内部に中空部6aを有する。図5に示すように、中空部6aは、テンプル部2の中空部2aと連通する。音導管6は、先端に向かって、テンプル部2に対する傾斜角度が徐々に小さくなるように湾曲していてもよい。
【0035】
図4は、テンプル部2の長さ方向に沿う音導管6の断面を示す。図4は、XY平面に沿う断面を示す。図4に示すように、中空部6aの断面形状は、テンプル部の長さ方向を長径とする長孔形状である。中空部6aが長孔形状であると、音導管6のY方向寸法を抑えつつ、中空部6aの断面積を大きくすることができる。そのため、中空部6aを通した出力音の伝達を効率よく行うことができる。図5に示すように、中空部6aの内径は、先端部61(拡径部62)を除いて一定であってよい。
【0036】
図1および図2に示すように、音導管6の先端部61には、音導管6の他の部分より大きい内径を有する拡径部62が形成されていてもよい。先端部61の内径と、音導管6の他の部分の内径との関係は特に限定されない。先端部61の内径は、音導管6の他の部分の内径より大きくてもよいし、音導管6の他の部分の内径と同じでもよいし、音導管6の他の部分の内径より小さくてもよい。
【0037】
拡径部62の内面には、開口63が形成されている。開口63は、中空部6aに通じる。開口63は、使用者Uが補聴器10を装着したときに、使用者Uの顔Fの側面に対向する。開口63は、使用者Uが補聴器10を装着したときに、耳Eの外耳道孔に近い位置にあることが望ましい。開口63は、耳Eの外耳道孔に対向する位置にあってもよい。
【0038】
拡径部62は、曲面からなる外表面を有する形状とされている。拡径部62の外面形状は、例えば、半楕円球状、半球状などであってよい。拡径部62は、曲面からなる外表面を有する形状であることによって、音導管6の先端が使用者Uの顔Fに当たって顔Fを傷付けるのを抑制できる。
【0039】
音導管6の長さは、例えば、3cm~5cmとすることができる。
中空部6aの内径は、例えば、4mm~9mmとすることができる。中空部6aの内径をこの範囲とすることによって、人間の音声(例えば、周波数100Hz~1000Hz)が伝わりやすくなる。
【0040】
図1に示すように、テンプル部2を3つの長さ範囲(第1長さ範囲L1、第2長さ範囲L2、および第3長さ範囲L3)に分ける。第1長さ範囲L1と、第2長さ範囲L2と、第3長さ範囲L3とは互いに等しい。第2長さ範囲L2は第1長さ範囲L1の後方に連なる長さ範囲である。第3長さ範囲L3は第2長さ範囲L2の後方に連なる長さ範囲である。
【0041】
音導管6は、Z方向から見て、第2長さ範囲L2に包含されることが望ましい。音導管6が第2長さ範囲L2に包含される範囲にあると、開口63を耳Eに近い位置に配置することができるため、開口63からの音が使用者Uに伝わりやすい。
【0042】
バッテリ7としては、例えば、リチウムイオン電池が挙げられる。バッテリ7は、制御部4が設けられたテンプル部2とは異なるテンプル部2に設けられている。図1に示す例では、バッテリ7は右のテンプル部2に設けられている。制御部4は左のテンプル部2に設けられている。バッテリ7と制御部4とが異なるテンプル部2に設けられていることにより、2つのテンプル部2の重量の偏りを小さくできる。そのため、使用者Uの耳Eおよび鼻にかかる荷重を抑制できる。
【0043】
[補聴器の使用方法]
補聴器10の使用方法の一例を説明する。
使用者Uは、顔Fに補聴器10を装着する。透光体11が使用者Uの目の前に配置されるため、使用者Uは、透光体11を通した視界を得ることができる。
【0044】
テンプル部2を耳Eに掛けることによって、音導管6の先端部61に形成された開口63は、顔Fの側面であって外耳道孔に近い位置に対向する。音導管6は、顔Fに接してもよいが、顔Fに接触しないことが望ましい。
【0045】
マイクロフォン3は外部の音を電気信号に変換する。制御部4は電気信号に基づいて出力信号を送信する。スピーカ5は出力信号を出力音に変換する。出力音は音導管6の中空部6a内を先端方向に伝わり、開口63から放出される。これにより、使用者Uは出力音を認識する。
【0046】
[実施形態の補聴器が奏する効果]
補聴器10は、出力音を伝える中空部6aを有する音導管6を備える。音導管6は、中空部6aに通じる開口63を有する。開口63は使用者Uの顔Fの側面に対向する。そのため、出力音を使用者Uに効率よく伝えることができる。補聴器10は、外耳道に挿入されるイヤホンを有するタイプの補聴器とは異なり、使用者Uが不快感なく使用できる。
【0047】
音導管6の開口63は拡径部62に形成されているため、開口面積を大きく確保できる。そのため、耳Eに対する音導管6の位置にずれが生じても使用者Uに出力音が伝わりやすい。
【0048】
本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、図1に示す音導管6は、先端部61に拡径部62が形成されているが、音導管は、拡径部がない形状であってもよい。図1に示す音導管6は、先端部61に開口63が形成されているが、開口は、音導管の長さ方向の中間位置に形成されていてもよい。補聴器10のフロント部1は、一対の透光体11とブリッジ13とを備えるが、フロント部は、ブリッジがない構成も可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…フロント部、2…テンプル部、3…マイクロフォン、4…制御部、5…スピーカ、6…音導管、6a…中空部、10…補聴器、11…透光体、13…ブリッジ、61…先端部、62…拡径部、63…開口、L1…第1長さ範囲、L2…第2長さ範囲、L3…第3長さ範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9