(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046948
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】液体用紙容器
(51)【国際特許分類】
B65D 3/08 20060101AFI20240329BHJP
B65D 3/12 20060101ALI20240329BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B65D3/08
B65D3/12 A
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152337
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩田 賢
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AA22
3E086AB01
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086CA11
3E086CA35
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】本発明の解決しようとする課題は、液体用紙容器において、内容物を絞り出し易く、廃棄時における嵩張りも少ない液体用紙容器を提案するものである。
【解決手段】紙を総重量の50%以上使用した液体用紙容器1であって、少なくとも胴部2と底面部3との2つの部品からなり、底面部の形状が楕円形状であることを特徴とする液体用紙容器である。胴部を構成する積層体4の厚さよりも底面部を構成する積層体8の厚さが薄くても良い。また、胴部を構成する紙層の坪量よりも底面部を構成する紙層の坪量が小さくても良い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を総重量の50%以上使用した液体用紙容器であって、少なくとも胴部と底面部との2つの部品からなり、底面部の形状が楕円形状であることを特徴とする液体用紙容器。
【請求項2】
紙を総重量の50%以上使用した液体用紙容器であって、少なくとも胴部と底面部との2つの部品からなり、底面部の形状が楕円形状であって、胴部を構成する積層体の厚さよりも底面部を構成する積層体の厚さが薄いことを特徴とする液体用紙容器。
【請求項3】
紙を総重量の50%以上使用した液体用紙容器であって、少なくとも胴部と底面部との2つの部品からなり、底面部の形状が楕円形状であって、胴部を構成する積層体の厚さよりも底面部を構成する積層体の厚さが薄く、かつ、胴部に使用する紙の坪量の方が、底面部に使用する紙の坪量よりも大きいことを特徴とする液体用紙容器。
【請求項4】
紙を総重量の50%以上使用した液体用紙容器であって、少なくとも胴部と底面部との2つの部品からなり、底面部の形状が楕円形状であって、胴部を構成する積層体の厚さよりも底面部を構成する積層体の厚さが薄く、かつ底面部が紙を含まないことを特徴とする液体用紙容器。
【請求項5】
前記胴部は、外面に合成樹脂層を有し、中心に紙層を有し、内面にシーラント層を有する積層体の側端部同士がシールされて筒状に形成されており、
前記底面部は、外面にシーラント層を有し、中心に紙層を有し、内面にシーラント層を有する積層体の周縁部が下方に折り込まれて形成されており、
前記胴部の下端部は前記下方に折り込まれた底面部の周縁部に巻き込まれてシールされており、
前記胴部の上端は前記楕円形状の底面の長径と平行にシールされてトップシール部を形成しており、
前記胴部を構成する積層体の端面は、内容物に接触しないように保護されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体用紙容器。
【請求項6】
前記胴部は、外面に合成樹脂層を有し、中心に紙層を有し、内面にシーラント層を有する積層体の側端部同士がシールされて筒状に形成されており、
前記底面部は、外面にシーラント層を有し、中心に合成樹脂層を有し、内面にシーラント層を有する積層体の周縁部が下方に折り込まれて形成されており、
前記胴部の下端部は前記下方に折り込まれた底面部の周縁部に巻き込まれてシールされており、
前記胴部の上端は前記楕円形状の底面の長径と平行にシールされてトップシール部を形成しており、
前記胴部を構成する積層体の端面は、内容物に接触しないように保護されていることを特徴とする請求項4に記載の液体用紙容器。
【請求項7】
前記胴部は、外面に合成樹脂層を有し、中心に紙層を有し、内面にシーラント層を有する積層体の側端部同士がシールされて筒状に形成されており、
前記底面部は、内面にシーラント層を有し、外面に紙層を有する積層体の周縁部が下方に折り込まれて形成されており、
前記胴部の下端部は前記下方に折り込まれた底面部の周縁部にシールされており、
前記胴部の上端は前記楕円形状の底面の長径と平行にシールされてトップシール部を形成しており、
前記胴部を構成する積層体の端面は、内容物に接触しないように保護されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体用紙容器。
【請求項8】
前記胴部は、外面に合成樹脂層を有し、中心に紙層を有し、内面にシーラント層を有する積層体の側端部同士がシールされて筒状に形成されており、
前記底面部は、内面にシーラント層を有し、外面に合成樹脂層を有する積層体の周縁部が下方に折り込まれて形成されており、
前記胴部の下端部は前記下方に折り込まれた底面部の周縁部にシールされており、
前記胴部の上端は前記楕円形状の底面の長径と平行にシールされてトップシール部を形成しており、
前記胴部を構成する積層体の端面は、内容物に接触しないように保護されていることを特徴とする請求項4に記載の液体用紙容器。
【請求項9】
前記胴部を構成する積層体は、前記トップシール部を弦とする表裏2本の円弧状の折罫線を有し、
前記トップシール部の両端部近傍に開封開始部と、それぞれの開封開始部から延設された、トップシール部両端部に開口部を設けるための開封線を有し、
前記トップシール部を押し下げて前記円弧状の折罫線を折ることにより、前記開口部が開くようにしたことを特徴とする請求項5に記載の液体用紙容器。
【請求項10】
前記胴部を構成する積層体は、前記トップシール部を弦とする表裏2本の円弧状の折罫線を有し、
前記トップシール部の両端部近傍に開封開始部と、それぞれの開封開始部から延設された、トップシール部両端部に開口部を設けるための開封線を有し、
前記トップシール部を押し下げて前記円弧状の折罫線を折ることにより、前記開口部が開くようにしたことを特徴とする請求項6に記載の液体用紙容器。
【請求項11】
前記胴部を構成する積層体は、前記トップシール部を弦とする表裏2本の円弧状の折罫線を有し、
前記トップシール部の両端部近傍に開封開始部と、それぞれの開封開始部から延設された、トップシール部両端部に開口部を設けるための開封線を有し、
前記トップシール部を押し下げて前記円弧状の折罫線を折ることにより、前記開口部が開くようにしたことを特徴とする請求項7に記載の液体用紙容器。
【請求項12】
前記胴部を構成する積層体は、前記トップシール部を弦とする表裏2本の円弧状の折罫線を有し、
前記トップシール部の両端部近傍に開封開始部と、それぞれの開封開始部から延設された、トップシール部両端部に開口部を設けるための開封線を有し、
前記トップシール部を押し下げて前記円弧状の折罫線を折ることにより、前記開口部が開くようにしたことを特徴とする請求項8に記載の液体用紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種液体を収納するための液体用紙容器に関し、特に内容物が高粘度であっても絞り出し易く、廃棄時にも嵩張らず、廃棄し易い液体用紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体用の紙容器としては、牛乳の紙パックのような屋根型の頭部を持ったゲーベルトップ型紙容器を始めとして煉瓦形状のブリック型、円筒形状のもの、ピラミッド型のもの等、様々な形状の紙容器が実用化されている。
【0003】
一方で、詰替用のシャンプーやリンスなど、ある程度粘度の高い液体を収納するための容器としては、スタンディングパウチと称するプラスチックフィルム積層材料を用いた自立型の容器が広く用いられている。
【0004】
牛乳のように粘度の低い液体は、絞り出す必要がなく、容器を傾けるだけでほぼ使い切ることができるが、シャンプーやリンスのように粘度の高い液体を無駄なく取り出すためには、容器から絞り出す必要があり、このため柔軟で絞り出し易いプラスチックフィルム積層材料を用いた容器が用いられているものと考えられる。
【0005】
しかし近年、プラスチックによる環境汚染や海洋汚染が問題視される中で、従来プラスチックが用いられていた用途において、紙による代替が検討されるようになってきた。紙は再生産可能な資源であると共に自然環境において分解し易い材料であるため、紙を用いた容器は、地球環境に対する負荷が低いと考えられているからである。
【0006】
前述のシャンプーやリンスのように粘度の高い液体を収納する容器として、柔軟なプラスチックフィルム積層材料を用いたスタンディングパウチが用いられている理由としては、絞り出し易さだけではなく、内容物を充填する際の、充填し易さも関係している。
【0007】
液体充填機においては、折り畳まれた状態で搬入された詰替容器の充填開口部を開き、充填ノズルから液体を注入するが、この時、容器の底面は、液体の重量によって自動的に開かなければならない。柔軟なプラスチックフィルム積層体であれば、この底開きが円滑に行われるが、紙を含む積層体の場合、プラスチックフィルム積層体よりも剛性が高いため、この工程が円滑に行われない恐れがあった。
【0008】
特許文献1に記載された液体紙容器は、従来の液体用紙容器の剛性が高くて潰し難いという問題を解決しようとしたものであるが、内容物の絞り出しを容易にすることを目的としたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は、液体用紙容器において、内容物を絞り出し易く、廃棄時における嵩張りも少ない液体用紙容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、紙を総重量の50%以上使用した液体用紙容器であって、少なくとも胴部と底面部との2つの部品からなり、底面部の形状が楕円形状であることを特徴とする液体用紙容器である。
【0012】
本発明に係る液体用紙容器は、紙を総重量の50%以上使用しているので、紙容器として認定される。また、底面部の形状を楕円形状としたことにより、短径方向に潰し易くなり、絞り出し操作が可能となった。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、紙を総重量の50%以上使用した液体用紙容器であって、少なくとも胴部と底面部との2つの部品からなり、底面部の形状が楕円形状であって、胴部を構成する積層体の厚さよりも底面部を構成する積層体の厚さが薄いことを特徴とする液体用紙容器である。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、紙を総重量の50%以上使用した液体用紙容器であって、少なくとも胴部と底面部との2つの部品からなり、底面部の形状が楕円形状であって、胴部を構成する積層体の厚さよりも底面部を構成する積層体の厚さが薄く、かつ、胴部に使用する紙の坪量の方が、底面部に使用する紙の坪量よりも大きいことを特徴とする液体用紙容器である。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、紙を総重量の50%以上使用した液体用紙容器であって、少なくとも胴部と底面部との2つの部品からなり、底面部の形状が楕円形状であって、胴部を構成する積層体の厚さよりも底面部を構成する積層体の厚さが薄く、かつ底面部が紙を含まないことを特徴とする液体用紙容器である。
【0016】
胴部は、外面に合成樹脂層を有し、中心に紙層を有し、内面にシーラント層を有する積層体の側端部同士がシールされて筒状に形成されていても良い。
【0017】
胴部を構成する積層体の端面は、内容物に接触しないように保護されていることが望ましい。
【0018】
底面部は、外面にシーラント層を有し、中心に紙層を有し、内面にシーラント層を有する積層体の周縁部が下方に折り込まれて形成され、胴部の下端部は前記下方に折り込まれた底面部の周縁部に巻き込まれてシールされていても良い。
【0019】
また、底面部は、内面にシーラント層を有し、外面に紙層を有する積層体の周縁部が下方に折り込まれて形成されており、前記胴部の下端部は前記下方に折り込まれた底面部の周縁部にシールされていても良い。
【0020】
いずれの場合も底面部の紙層は、合成樹脂層で代替することができる。
【0021】
胴部の上端は前記楕円形状の底面の長径と平行にシールされてトップシール部を形成することができる。
【0022】
胴部を構成する積層体には、トップシール部を弦とする表裏2本の円弧状の折罫線を設けることができる。また、トップシール部の両端部近傍には、開封開始部と、それぞれの開封開始部から延設された、トップシール部両端部に開口部を設けるための開封線を有することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る液体用紙容器は、紙を総重量の50%以上使用しているので、紙容器とし
て認定される。このため使用後の廃棄に当たっては、紙容器としての規定が適用される。
【0024】
底面部の形状を楕円形状としたことにより、底を折り畳めることで短径方向に潰し易くなり、絞り出し操作も可能となった。
【0025】
請求項2に記載の発明のように、底面部を構成する積層体の厚さを胴部を構成する積層体の厚さよりも薄くした場合には、充填時の底開き性がより向上すると共に内容物の絞り出し易さも向上し、底を折り畳めることで廃棄時にも嵩張らず、廃棄が容易となる。
【0026】
また請求項3に記載の発明のように、胴部に使用する紙の坪量の方が、底面部に使用する紙の坪量よりも大きく、従って底面部の紙の坪量が小さい場合も同様に充填時における底開き性の改善や、内容物の絞り出し易さの向上、さらには底を折り畳めることで廃棄時に嵩張らない点についての改善が期待できる。
【0027】
さらに請求項4に記載の発明において、底面部に紙を使用しない場合には、底面部がしなやかな合成樹脂フィルムのみとなる結果、充填時における底開き性や、内容物の絞り出し易さ、さらには、廃棄時に底を折り畳めることで嵩張らない点についても、さらなる改善が期待できる。
【0028】
胴部を構成する積層体に、トップシール部を弦とする表裏2本の円弧状の折罫線を設けた場合には、トップシール部を押し下げて円弧状の折罫線を折ることにより、開口部が開くようにすることができるため、内容物の注出を迅速に行うことができる。
【0029】
また、トップシール部の両端部近傍に、開封開始部と、それぞれの開封開始部から延設された、トップシール部両端部に開口部を設けるための開封線を有する場合には、開封操作が容易となる。
【0030】
また、トップシール部の両端部近傍に開口部を設けることにより、一方の開口部を注出口とし、他方の開口部を空気取り入れ口とすることができるため、注出作がさらに円滑に行われる。
【0031】
本発明に係る液体用紙容器は、基本的な構造が紙カップと同様であるため、紙カップの製造設備を用いて製造することができる。このため、生産効率が良く、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明に係る液体用紙容器の一実施態様を示した斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のA-A´断面を模式的に示した断面説明図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した液体用紙容器のブランクの展開図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した液体用紙容器の未シール状態を示した斜視説明図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る液体用紙容器の他の実施態様を示した斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5のB-B´断面を模式的に示した断面説明図である。
【
図7】
図7は、
図5に示した液体用紙容器のブランクの展開図である。
【
図8】
図8は、
図5に示した液体用紙容器の上部を下方に押し込んだ状態を示した斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8のC-C´断面を模式的に示した断面説明図である。
【
図10】
図10は、
図8の状態から、開口部を開封した状態を示した斜視説明図である。
【
図11】
図11は、本発明に係る液体用紙容器の他の実施態様を示した斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明に係る液体用紙容器の胴部と底面部の構造の一例を模式的に示した断面説明図である。
【
図14】
図14は、本発明に係る液体用紙容器の胴部と底面部の構造の他の例を模式的に示した断面説明図である。
【
図15】
図15は、本発明に係る液体用紙容器の胴部の接合方法の一例を模式的に示した断面説明図である。
【
図16】
図16は、本発明に係る液体用紙容器の胴部の接合方法の他の例を模式的に示した断面説明図である。
【
図17】
図17は、本発明に係る液体用紙容器の胴部の接合方法の他の例を模式的に示した断面説明図である。
【
図18】
図18は、本発明に係る液体用紙容器の胴部の接合方法の他の例を模式的に示した断面説明図である。
【
図19】
図19は、本発明に係る液体用紙容器の胴部に用いる積層体の断面構成の一例を示した断面模式図である。
【
図20】
図20は、本発明に係る液体用紙容器の底面部に用いる積層体の断面構成の一例を示した断面模式図である。
【
図21】
図21は、本発明に係る液体用紙容器の底面部に用いる積層体の断面構成の他の例を示した断面模式図である。
【
図22】
図22は、本発明に係る液体用紙容器の底面部に用いる積層体の断面構成の他の例を示した断面模式図である。
【
図23】
図23は、本発明に係る液体用紙容器の底面部に用いる積層体の断面構成の他の例を示した断面模式図である。
【
図24】
図24は、本発明に係る液体用紙容器の胴部に用いる積層体の断面構成の他の例を示した断面模式図である。
【
図25】
図25は、本発明に係る液体用紙容器の底面部に用いる積層体の断面構成の他の例を示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下図面を参照しながら、本発明に係る液体用紙容器について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る液体用紙容器1の一実施態様を示した斜視図である。
図2は、
図1のA-A´断面を模式的に示した断面説明図である。
図3は、
図1に示した液体用紙容器1のブランク(BL)の展開図である。
図4は、
図1に示した液体用紙容器1の未シール状態を示した斜視説明図である。
図19は、本発明に係る液体用紙容器1の胴部2に用いる積層体4の断面構成の一例を示した断面模式図である。
図20は、本発明に係る液体用紙容器1の底面部3に用いる積層体8の断面構成の一例を示した断面模式図である。
図21は、本発明に係る液体用紙容器1の底面部3に用いる積層体8の断面構成の他の例を示した断面模式図である。以下これらの図面を参照しながら説明する。
【0034】
本発明に係る液体用紙容器1は、紙を総重量の50%以上使用した液体用紙容器であって、少なくとも胴部2と底面部3との2つの部品からなり、底面部3の形状が楕円形状であることを特徴とする液体用紙容器である。
【0035】
本発明に係る液体用紙容器1は、紙を総重量の50%以上使用しているので、紙容器として認定される。このため、使用後の処理方法としては、それぞれの自治体が定める処理方法に従って紙容器として処理される。すなわち洗浄して紙としてリサイクルするか、洗浄が困難な場合は焼却処分することができる。紙は再生産可能な資源であるため、たとえ焼却処分されたとしても、地球環境に対する負荷は小さいものとなる。
【0036】
本発明に係る液体用紙容器1は、
図3のブランク図に示したように底面部3の形状が楕円形状であることを特徴とする。楕円形状であることは、短径方向に潰し易いことを意味している。このため、内容物を取り出す際に、短径方向に底を折り畳めることで潰して絞り出す操作が容易となり、廃棄時にも潰して廃棄することが容易となる。
【0037】
なお底面部3の形状は、厳密な楕円形である必要はなく、要は角がなくて短径と長径の差があるような形状であれば良い。
【0038】
図19は、本発明に係る液体用紙容器1の胴部2に用いる積層体4の断面構成の一例を示した断面模式図である。この例では、紙容器の外側から合成樹脂層1(5)、紙層1(6)、シーラント層1(7)の順に配置されている。なお各層の貼り合わせには、接着剤や押出樹脂を使用することが一般的であるが、図ではこれらの層は省略されている。
【0039】
図20は、本発明に係る液体用紙容器1の底面部3に用いる積層体8の断面構成の一例を示した断面模式図である。容器内面側から順にシーラント層2(9)、紙層2(10)、シーラント層3(11)が積層されている。同様に各層の貼り合わせに使用する接着剤層や押出樹脂層は省略されている。
【0040】
底面部3に用いる積層体8の厚さは、胴部2に用いる積層体4の厚さよりも、小さくすることが好ましい。また、さらに底面部3に用いる積層体8の紙層2(10)の坪量は、胴部2に用いる積層体4の紙層1(6)の坪量よりも小さくすることが好ましい。このようにすることで、底面部3のしなやかさが増し、内容物の絞り出し易さが向上し、廃棄時にも底を折り畳めることで嵩張らず、廃棄が容易なものとなる。
【0041】
図1、2に示した例では、胴部2は、外面に合成樹脂層1(5)を有し、中心に紙層1(6)を有し、内面にシーラント層1(7)を有する積層体の側端部同士がシールされて胴部シール部15によって筒状に形成されている。
【0042】
底面部3は、外面にシーラント層3(11)を有し、中心に紙層2(10)を有し、内面にシーラント層2(9)を有する積層体8の周縁部が下方に折り込まれて形成されており、前記胴部2の下端部は前記下方に折り込まれた底面部3の周縁部に巻き込まれてシールされている。
【0043】
このように胴部2の下端が底面部3の周縁部に巻き込まれていることにより、容器底面において積層体の端面が露出することがない。このことは、この容器が例えば風呂場の中などにおいて使用されるような場合であっても、底面から水が浸み込むことがないことを意味している。
【0044】
胴部2の上端は前記楕円形状の底面3の長径と平行にシールされてトップシール部14を形成している。トップシール部14は、液体用紙容器1に内容物を充填した後にシールされる。
図4は、未シール状態の斜視図である。
【0045】
胴部2を構成する積層体4の端面は、内容物に接触しないように保護されている必要がある。胴部積層体4の端面が露出していると、内容物が紙層1(6)に浸み込んでしまうからである。
図15~18は、胴部シール部15において、胴部積層体4の端面が内容物に接触しないように保護する方法を示したものである。
【0046】
図15に示した方法は、胴部シール部15において、容器内面側(図の下側)の胴部積層体4の端部を巻き込んで内容物と接触しないようにしたものである。
【0047】
図16に示した方法は、保護テープ16を用いて、容器内面(図の下側)に露出した胴部積層体4の端面を保護するものである。この場合の保護テープ16の層構成としては、例えば基材層/シーラント層1(7)の構成で良い。基材層としては、シーラント層1よりも耐熱性の高い合成樹脂フィルムを使用する。
【0048】
図17に示した方法は、胴部積層体4の端面同士を突き合わせにして、表裏面から保護テープ16で繋ぐものである。このような接合方法を採用するためには、胴部積層体4を構成する合成樹脂層1(5)をシーラント層1(7)と同じ材質にしておくと良い。
【0049】
図18に示した方法は、容器内面側(図の下側)に露出した胴部積層体4の端面のみを保護テープ16で保護する方法である。この場合の保護テープ16の層構成としは、シーラント層1(7)/基材層/シーラント層1(7)の構成とする。
【0050】
図5は、本発明に係る液体用紙容器1の他の実施態様を示した斜視図である。
図6は、
図5のB-B´断面を模式的に示した断面説明図である。
図7は、
図5に示した液体用紙容器1のブランク(BL)の展開図である。
【0051】
図13、14は、胴部2と底面部3の構造を模式的に示した断面説明図である。
図13示した例は
図1、2に示した液体用紙容器の例であり、胴部2の下端部が下方に折り込まれた底面部3の周縁部に巻き込まれてシールされている。
【0052】
図14に示した例では、底面部3は、内面にシーラント層2(9)を有し、外面に紙層2(10)を有する積層体の周縁部が下方に折り込まれて形成されており、胴部2の下端部は前記下方に折り込まれた底面部3の周縁部にシールされている。
【0053】
この例では、胴部2の下端を底面部に巻き込む必要がないので、底面部積層体8としては、
図21のようにシーラント層3(11)を省略することができる。
【0054】
この場合、水がかかる場所での使用には不向きであるが、底面部積層体8の層構成は、
簡単なものとなる。
【0055】
図22は、本発明に係る液体用紙容器1の底面部3に用いる積層体8の断面構成の他の例を示した断面模式図である。この例では、紙層2(10)の代わりに、合成樹脂層2(12)が用いられており、シーラント層2(9)/合成樹脂層2(12)/シーラント層3(11)の構成となっている。
【0056】
紙を用いないことで、積層体8のしなやかさが増すため、内容物の絞り出し易さや、廃棄時の嵩張り防止効果が高まる。
【0057】
図23は、本発明に係る液体用紙容器1の底面部3に用いる積層体8の断面構成の他の例を示した断面模式図である。この例でも、紙層2(10)の代わりに、合成樹脂層2(12)が用いられており、シーラント層2(9)/合成樹脂層2(12)の構成となっている。
【0058】
図5は、本発明に係る液体用紙容器1の他の実施態様を示した斜視図である。
図6は、
図5のB-B´断面を模式的に示した断面説明図である。
図7は、
図5に示した液体用紙容器1のブランク(BL)の展開図である。
【0059】
この例では、胴部2を構成する積層体4は、トップシール部14を弦とする表裏2本の円弧状の折罫線22を有し、トップシール部14の両端部近傍に開封開始部19と、それぞれの開封開始部から延設された、トップシール部両端部に開口部21を設けるための開封線20を有し、前記トップシール部14を押し下げて円弧状の折罫線22を折ることにより、開口部21が開くようにしたことを特徴とする。
【0060】
図8は、
図5に示した液体用紙容器1の上部を下方に押し込んだ状態を示した斜視図である。
図9は、
図8のC-C´断面を模式的に示した断面説明図である。また、
図10は、
図8の状態から、開口部21を開封した状態を示した斜視説明図である。
【0061】
この例では、2つの開口部21が、大きく開いて、それぞれ注出口および給気口となるため、内容物の注出が極めて円滑に行われる。
【0062】
開封開始部は、V字型のノッチやU字型のノッチあるいは、直線状の切れ目等任意に選択できる。開封線20は、ハーフカット線、ミシン目線等とすることができる。開封線20は、最内面に到達しないことが必要である。開封線20は、単に切断位置を示す印刷線でも良い。
【0063】
図11は、本発明に係る液体用紙容器1の他の実施態様を示した斜視図である。
図12は、
図11に示した液体用紙容器1のブランク(BL)の展開図である。
【0064】
この例では、トップシール部14が水平であるため、内容物充填後のシールが容易となる利点がある。すなわち直線状のシールバーを使用することができるため、専用の曲線状のシールバーを準備する必要がない。
【0065】
図24は、本発明に係る液体用紙容器1の胴部2に用いる積層体4の断面構成の他の例を示した断面模式図である。また、
図25は、本発明に係る液体用紙容器1の底面部3に用いる積層体8の断面構成の他の例を示した断面模式図である。
【0066】
これらの例では、その層構成中にガスバリア層13を含むことを特徴としている。層構成中に酸素や水蒸気の透過を抑制するガスバリア層13を含むことにより、内容物の保存性が飛躍的に高まる。
【0067】
以下本発明に係る液体用紙容器1に用いる材料について説明する。紙層1、2としては、各種の紙を用いることができる。例を挙げれば、コート紙、上質紙、耐水紙、クラフト紙、晒クラフト紙、パック原紙、カップ原紙等である。
【0068】
シーラント層1~3としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用される。具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0069】
合成樹脂層1、2としては、各種合成樹脂フィルムを用いることができるが、一般的にシーラント層よりも耐熱性の高い合成樹脂フィルムが用いられる。例を挙げれば、延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(OPP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)、ポリアミド樹脂フィルム(ONy)等である。合成樹脂層は、単層である必要はなく、複数層からなるものでも良い。
【0070】
ガスバリア層13としては、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ガスバリア性ナイロンフィルム、ガスバリア性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のガスバリア性フィルムや、PETフィルム等にアルミニウム等の金属を蒸着した金属蒸着フィルムや、PETフィルムに酸化アルミニウムや酸化珪素等の無機酸化物を蒸着させた無機酸化物蒸着フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層、あるいはアルミニウム箔等の金属箔などを用いることができる。
【0071】
本発明に係る液体用紙容器1の製造方法について説明する。本発明に係る液体用紙容器は、紙コップの製造方法を応用することができる。まず紙層1の表面に必要な印刷を施す。次に紙層1と合成樹脂層1とシーラント層1を貼り合わせて胴部積層体を作成する。以上の工程は枚葉でも可能であるが、巻き取りで連続的に行うことで能率よく行うことができる。次に胴部積層体を所定のブランク形状に打ち抜く。
【0072】
次に同様に底面部積層体を作成し、楕円形状に打ち抜く。打ち抜いた底面部ブランクの周縁部を下方向に絞り込む。成形が済んだ底面部を金型に装着し、胴部ブランクを巻き付けて胴部シール部をシールする。次いで胴部の下部を底面部に巻き込んでシールする。
【0073】
通常の紙コップであると、この後上部を外側に巻き込んで完成となるが、本発明に係る液体用紙容器では、胴部の上部は充填用開口部として、未シールのままとする。
【0074】
このように、本発明に係る液体用紙容器は、紙コップの製造工程に近似しているため、紙コップの製造設備を用いて能率良く製造することができる。
【符号の説明】
【0075】
1・・・液体用紙容器
2・・・胴部
3・・・底面部
BL・・・ブランク
4・・・胴部積層体
5・・・合成樹脂層1
6・・・紙層1
7・・・シーラント層1
8・・・底面部積層体
9・・・シーラント層2
10・・・紙層2
11・・・シーラント層3
12・・・合成樹脂層2
13・・・ガスバリア層
14・・・トップシール部
15・・・胴部シール部
16・・・保護テープ
17・・・底面部折込シール部
18・・・底面部シール部
19・・・開封開始部
20・・・開封線
21・・・開口部
22・・・円弧状の折罫線