(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046959
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】焙煎装置
(51)【国際特許分類】
A23N 12/10 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
A23N12/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152349
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】598171830
【氏名又は名称】エジソンハード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 英人
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061AA01
4B061AA09
4B061BA09
4B061CD07
4B061CD12
4B061CD18
(57)【要約】
【課題】コーヒー豆等の焙煎対象物の成分を極力逃がさず、かつ加熱によるエネルギ消費のより少ない焙煎装置を実現する。
【解決手段】焙煎対象物Cを内部空間Iに収容しその内部空間Iの雰囲気が外部空間Oとの間で流出入しないように維持できる密閉可能な収容容器1と、前記収容容器1の内部空間Iに配設され、密閉した収容容器1の内部空間Iに収容した焙煎対象物Cを加熱する加熱機構3と、前記収容容器1の内部空間Iと外部空間Oとの間に介在し、前記加熱機構3により焙煎対象物Cを加熱する際に真空に近づくように吸引され減圧される断熱層111と、前記加熱機構3による焙煎対象物Cの加熱後に冷媒を流通させて前記収容容器1の内部空間I及び焙煎対象物Cを冷却する冷媒ジャケット111とを具備する焙煎装置を構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー豆その他の穀類または茶葉等の焙煎対象物を加熱し焙煎するためのものであって、
焙煎対象物を内部空間に収容しその内部空間の雰囲気が外部空間との間で流出入しないように維持できる密閉可能な収容容器と、
前記収容容器の内部空間に配設され、密閉した収容容器の内部空間に収容した焙煎対象物を加熱する加熱機構と、
前記収容容器の内部空間と外部空間との間に介在し、前記加熱機構により焙煎対象物を加熱する際に真空に近づくように吸引され減圧される断熱層と、
前記加熱機構による焙煎対象物の加熱後に冷媒を流通させて前記収容容器の内部空間及び焙煎対象物を冷却する冷媒ジャケットと
を具備する焙煎装置。
【請求項2】
前記断熱層が前記冷媒ジャケットとしても機能し、焙煎対象物を加熱する際に吸引され、焙煎対象物の加熱後に冷媒が流入する請求項1記載の焙煎装置。
【請求項3】
前記冷媒が水である請求項1または2記載の焙煎装置。
【請求項4】
前記収容容器の内部空間に不活性ガスを注入するガス注入機構を具備し、
前記収容容器の内部空間の空気の一部または全部を前記不活性ガスで置換した状態で、密閉した収容容器の内部空間に収容した焙煎対象物を前記加熱機構により加熱する請求項1記載の焙煎装置。
【請求項5】
前記収容容器の内部空間の圧力を調節可能な請求項1記載の焙煎装置。
【請求項6】
前記収容容器の内部空間の温度を調節可能な請求項1記載の焙煎装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー豆その他の穀類または茶葉等の焙煎対象物を加熱し焙煎するための焙煎装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラムの内にコーヒー豆等の焙煎対象物を収め、ドラムを回転させながら焙煎対象物を加熱して焙煎を行う焙煎装置が公知である(例えば、下記特許文献を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存の焙煎装置では、熱風即ち高熱の空気が焙煎対象物に当たってこれを加熱する。焙煎対象物に吹き当たった空気は、ダクトを通じて大気に放出される。その放出される空気には、焙煎対象物の香りや風味を司る成分が含まれている。つまり、焙煎の過程で、焙煎対象物の香りや風味の一部を逃がし、損なっていることになる。
【0005】
また、焙煎中に焙煎対象物の匂いが室内に溢れ、人によってはそれを不快に感じる可能性がある。とりわけ、地下(デパートの食料品売り場等)や、窓の開かない鉄道車両、航空機、船舶、潜水艦等の乗り物の中で焙煎処理を行おうとする場合に、問題が顕在化し得る。
【0006】
以上の点に着目してなされた本発明は、焙煎する対象物の成分を極力逃がさず、かつ加熱によるエネルギ消費のより少ない焙煎装置を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、コーヒー豆その他の穀類または茶葉等の焙煎対象物を加熱し焙煎するためのものであって、焙煎対象物を内部空間に収容しその内部空間の雰囲気が外部空間との間で流出入しないように維持できる密閉可能な収容容器と、前記収容容器の内部空間に配設され、密閉した収容容器の内部空間に収容した焙煎対象物を加熱する加熱機構と、前記収容容器の内部空間と外部空間との間に介在し、前記加熱機構により焙煎対象物を加熱する際に真空に近づくように吸引され減圧される断熱層と、前記加熱機構による焙煎対象物の加熱後に冷媒を流通させて前記収容容器の内部空間及び焙煎対象物を冷却する冷媒ジャケットとを具備する焙煎装置を構成した。
【0008】
本発明に係る焙煎装置では、収容容器を密閉したままで、その内部空間に収めた焙煎対象物を加熱して焙煎を実行できる。このとき、断熱層を真空引きして、収容容器の内部空間から外部空間へと熱が逃げることを抑制する。加熱を終えたら、冷媒ジャケットに冷媒を供給して可及的速やかに焙煎対象物を冷却する。
【0009】
前記断熱層が前記冷媒ジャケットとしても機能し、焙煎対象物を加熱する際にこの断熱層が吸引され、焙煎対象物の加熱後に同断熱層に冷媒が流入する構造とすれば、焙煎装置の肥大化を抑制できる。前記冷媒は、例えば水である。
【0010】
加えて、前記収容容器の内部空間に不活性ガスを注入するガス注入機構を具備し、前記収容容器の内部空間の空気の一部または全部を前記不活性ガスで置換した状態で、密閉した収容容器の内部空間に収容した焙煎対象物を前記加熱機構により加熱し焙煎するものとすることが好ましい。
【0011】
さらに、焙煎対象物の加熱時、及び/または、加熱後の冷却時に、前記収容容器の内部空間の圧力や温度を柔軟に調節可能であればより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、焙煎する対象物の成分を極力逃がさず、かつ加熱によるエネルギ消費のより少ない焙煎装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の焙煎装置の模式的な正断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に本実施形態の焙煎装置の模式的な正断面図を、
図2に同実施形態の焙煎装置の模式的な側断面図を、それぞれ示す。本実施形態の焙煎装置は、焙煎対象物C、例えばコーヒー豆を内部空間Iに収容し、その内部空間Iの雰囲気を大気圧よりも高圧としながら内部空間Iの雰囲気が外部空間Oとの間で流出入しないように維持できる密閉可能な収容容器1と、収容容器1の内部空間Iに不活性ガス、典型的には窒素ガスを注入するガス注入機構2と、密閉した収容容器1の内部空間Iで焙煎対象物Cを加熱する加熱機構3と、加熱を終えた焙煎対象物Cを収容容器1の内部空間Iに包有したまま冷却する冷却機構4とを主たる要素とする。
【0015】
収容容器1は、内部空間を囲繞する円筒状の本体11と、その本体11の正面側を開閉する扉12と、その本体11の背面側を閉塞する隔壁13とを備えている。扉12を開けば、内部空間Iを外部Oに開放することができる。扉12を閉じれば、内部空間Iを外部Oから隔絶して閉止することができる。収容容器1は、その内部空間Iの雰囲気の圧力を大気圧を超える高圧に保つことが可能な耐圧性能を有している。例えば、収容容器1は、最高使用圧力を0.5MPaとし、内部空間Iの雰囲気の圧力を0.5MPaまで増大させることができる。収容容器1が、その内部空間Iの雰囲気の圧力を少なくとも0.5MPa以上、1MPa以上、または1.5MPa以上の高圧に保つことが可能な耐圧性能を有するものであってもよい。
【0016】
収容容器1の本体11の肉厚の内には、中空の断熱層111を形成している。断熱層111は、本体11の大部分に亘って拡張しており、内部空間Iを包囲している。これにより、本体11は二重構造をなしていると言える。中空の断熱層131は、隔壁13の内にも形成することがある。この場合、本体11の断熱層111と隔壁13の断熱層131とは連通する。さらに、扉12の内にも、断熱層(図示せず)を形成してよい。その断熱層もまた、本体11の断熱層111に連通することになる。断熱層111、131の存在により、収容容器1はちょうど魔法瓶のような構造体として機能する。
【0017】
収容容器1の扉12を本体11の前端に密着させるようにして閉止すると、内部空間Iが外部空間Oから隔絶されて密閉されるとともに、断熱層111、131もまた外部空間Oと直接連通しない閉じた空隙層となる。
【0018】
その上で、断熱層111、131に接続する吸引路14と、吸引路14を開閉するバルブ15と、吸引路14を通じて断熱層111、131内を吸引する真空ポンプ16とを付設している。
【0019】
収容容器1の扉12を閉じた状態で、吸引路14上のバルブ15を開弁しかつ真空ポンプ16を稼働させれば、断熱層111、131を真空引き、即ち断熱層111、131内を大気圧よりも減圧し真空に近づけることができる。その上で、バルブ15を閉弁すれば、吸引路14を遮断して断熱層111、131内を真空に近い状況に維持することもできる。
【0020】
因みに、収容容器1の本体11、隔壁13及び/または扉12(の特に外面)に、内部空間Iと外部空間Oとの間での熱の出入りを抑制するための断熱材(図示せず)を敷設しても構わない。また、扉12を閉じた状態で外部Oから内部空間Iを覗き見ることのできるようなサイトホール17を、本体11、隔壁13及び/または扉12に開設しておくことも好ましい。
【0021】
ガス注入機構2は、大気圧よりも高圧の不活性ガスの供給源となるボンベ(または、タンク等)20と、当該ボンベ20に接続し同ボンベ20から収容容器1の内部空間Iに不活性ガスを導入する導入路21と、収容容器1の内部空間Iの雰囲気を外部空間Oに排出させる排出路22と、導入路21及び排出路22をそれぞれ個別に開閉するバルブ23、24とを要素とする。
【0022】
収容容器1の扉12を閉じた状態で、導入路21及び排出路22上の両バルブ23、24を開弁すれば、ボンベ20から供給される不活性ガスにより収容容器1の内部空間Iの空気を置換することができる。さらに、排出路22上のバルブ24を閉弁したまま導入路21上のバルブ23を開弁して、高圧の不活性ガスを収容容器1の内部空間Iに充填し、内部空間Iの圧力を大気圧よりも高圧化できる。両バルブ23、24を閉弁すれば、導入路21及び排出路22を遮断してこれを通じた雰囲気の流出入を抑止し、収容容器1の内部空間を気密に維持することができる。
【0023】
加熱機構3は、その内に焙煎対象物Cを収める回転可能なドラム(焙煎カゴ)31と、ドラム31内の焙煎対象物Cを加熱するヒータ32とを要素とする。ドラム31は、正面側が開通し背面側が閉塞した円筒状をなす、銅、鉄、ステンレス鋼等を素材とする金属製の部材であり、前後方向に伸びる略水平な軸Aを中心に回動する。ドラム31は、その中心軸Aと略並行に延伸する駆動ローラ33及び従動ローラ34により下方から支持されている。各ローラ33、34の外周面はそれぞれ、ドラム31の外周壁に外接している。駆動ローラ33は、伝動装置(例えば、減速機や、チェーン及びスプロケットを要素とする巻掛伝動機構等)35を介して駆動モータ36に接続しており、駆動モータ36から回転駆動力の供給を受けて自転し、ドラム31の外周壁を転がすようにしてドラム31を回転させる。従動ローラ34は、ドラム31の外周壁を支えながらドラム31に従動して自転する。なお、ドラム31の外周壁に、これを貫通する多数の小孔(図示せず)を穿っていることがある。
【0024】
ヒータ32は、収容容器1の内部空間Iにおけるドラム31の直下、駆動ローラ33と従動ローラ34との間の領域に所在し、ドラム31及び当該ドラム31に収められた焙煎対象物Cを加熱する。ヒータ32は、例えば通電することで発熱するカートリッジヒータであり、収容容器1の内部空間I及びドラム31内の雰囲気の温度を250℃以上まで高めることが可能である。
【0025】
冷却機構4は、冷媒を貯留するタンク40と、当該タンク40に接続するとともにタンク40から収容容器1の冷媒ジャケット111、131内に冷媒を注入する注入路41と、冷媒ジャケット111、131内から冷媒を排出させタンク40へと還流させる還流路42と、注入路41及び還流路42をそれぞれ個別に開閉するバルブ43、44と、タンク40に蓄えている冷媒を吸込み吐出して注入路41ひいては冷媒ジャケット111、131内に送り込むポンプ45とを要素とする。冷媒は液体、典型的には水または化学的に安定な水性溶液であることが好ましい。なお、タンク40に、当該タンク40に貯留している冷媒を冷やしその温度を低下させるための熱交換器(図示せず)を付設することがある。
【0026】
本実施形態では、収容容器1に形成した断熱層111、131を、冷媒を流通させるジャケット111、131としても機能させる。焙煎対象物Cをヒータ32により加熱する際には、断熱層111、131を真空引きして、収容空間Iから外部空間Oに熱が逃げることを抑制する。そして、焙煎対象物Cを十分に加熱した後、この断熱層111、131に冷媒(冷却水)を流入させ、かつまた冷媒を循環させることで、内部空間Iにある焙煎対象物Iを可及的速やかに冷却するのである。
【0027】
尤も、冷媒ジャケットを、断熱層111、131から独立した(断熱層111、131に冷媒が流入し得ない)別個のものとして設けてもよい。一例として、断熱層111、131よりも内側、収容容器1の本体11の内周に添うように、軸Aと略平行に伸びる複数本のパイプ様の冷媒ジャケットを配設することが考えられる。
【0028】
改めて、焙煎対象物Cを焙煎する工程を概説すると、まず、焙煎対象物Cを収容容器1の内部空間Iにあるドラム31に収めて、扉12を閉止する。
【0029】
次に、吸引路14上のバルブ15を開弁し、真空ポンプ16を稼働させて、収容容器1の断熱層111、131内を吸引する。このとき、注入路41及び還流路42上のバルブ43、44は何れも閉弁する(ポンプ45も停止している)。焙煎対象物Cの加熱処理中、真空ポンプ16を稼働させ続けてもよいが、断熱層111、131内が十分に減圧され真空に近づいたら、バルブ15を閉弁して真空ポンプ16を停止させてもよい。
【0030】
断熱層111、131の真空引きと相前後して、導入路21上のバルブ23及び排出路22上のバルブ24を開弁し、ボンベ20から収容容器1の内部空間Iに不活性ガスを充填する。不活性ガスによる内部空間Iの空気の置換がなされたと思しき適宜のタイミングで、排出路22上のバルブ24を閉弁し、内部空間Iの圧力を高圧化する。しかる後、導入路21上のバルブ23を閉弁し、ボンベ20から内部空拳Iに向けた不活性ガスの供給を止める。
【0031】
しかして、本焙煎装置の制御を司るコントローラ(図示せず)が、駆動モータ36を起動してドラム31を回転させつつ、ヒータ32に通電してヒータ32を発熱させ、ドラム31内に収めている焙煎対象物Cを加熱処理する。既述の通り、加熱処理中は、収容容器1の断熱層111、131内が大気圧よりも大きく減圧されており、内部空間Iの熱が外部空間Oに逃げにくくなっている。並びに、内部空間Iは密封され、内部空間Iの雰囲気が外部空間Oに漏出することも抑制される。
【0032】
焙煎対象物Cの加熱処理を完了したら、ヒータ32への通電を停止する。ドラム31の回転は、ヒータ32への通電停止とともに停止してもよく、ヒータ32への通電停止後も継続してもよい。
【0033】
そして、注入路41上のバルブ43及び還流路42上のバルブ44を開弁し、ポンプ45を稼働させて、冷媒ジャケット111、131に冷媒を流通させる。このとき、吸引路14上のバルブ15は閉弁する(真空ポンプ16も停止している)。これにより、収容容器1の内部空間Iに焙煎対象物Cを収容したまま、内部空間Iの雰囲気及び焙煎対象物Cを急速に冷却する。
【0034】
また、排出路22上のバルブ24を開弁して、収容容器1の内部空間Iの雰囲気を外部空間Oに排出する。バルブ24の開弁及び内部空間Iの雰囲気の排気は、焙煎対象物Cの加熱の完了(ヒータ32への通電停止)の直後から開始してもよく、冷媒ジャケット111、131に冷媒を流通させてある程度以上内部空間Iの雰囲気及び焙煎対象物Cの温度が低下するのを待ってから行ってもよい。あるいは、焙煎対象物Cの冷却処理を完了した後にバルブ24を開弁し排気するようにしてもよい。冷媒による冷却処理中、扉12は閉止したままである。
【0035】
焙煎対象物Cの冷却処理を完了したら、ポンプ45を停止させて冷媒の循環を止め、冷媒ジャケット111、131内に残る冷媒を還流路44を通じてタンク40に流下させる。その後、バルブ43、44を閉弁する。最後に、扉12を開いて、内部空間Iから焙煎対象物Cを取り出す。
【0036】
収容容器1には、その内部空間Iの現在温度を検出する温度センサまたは温度計(図示せず)や、内部空間Iの現在圧力を検出する圧力センサまたは圧力計(図示せず)を設置する。これらが検出した内部空間Iの温度及び/または圧力は、人が視認できるように表示してもよいし、その温度値及び/または圧力値の情報を制御コントローラに入力するようにしてもよい。人がバルブ15、23、24、43、44の開度やヒータ32の出力を手動で操作できる態様であれば、人が内部空間Iの温度及び/または圧力を確認しながら、その温度及び/または圧力を任意に調節することができる。焙煎装置の制御コントローラが温度値及び/または圧力値の情報を受け取り、バルブ15、23、24、43、44の開度やヒータ32の出力を自動操作し、内部空間Iの温度及び/または圧力を所要の目標値に調節するようなフィードバック制御を実施することも可能である。
【0037】
本実施形態の焙煎装置によれば、収容容器1の内部空間Iに収容した焙煎対象物Cを、内部空間Iで加熱するとともに、内部空間Iに収容したまま冷却することが可能である。焙煎対象物Cの加熱中の少なくとも一時期または全期間に亘り、収容容器1の内部空間Iの雰囲気を高圧に維持し、かつ気密を維持してその雰囲気を外部に漏出させずに住む。さらには、加熱を終えた焙煎対象物Cの冷却中の少なくとも一時期または全期間に亘り、内部空間Iの気密を維持してその雰囲気を外部に漏出させないようにすることもできる。これにより、焙煎対象物Cの焙煎の過程で、その香りや風味等の成分を極力逃さず、焙煎対象物Cに封じ込めることができ、従来の焙煎装置では得られない味わい豊かなコーヒー等Cを生成することを期待できる。
【0038】
焙煎により焙煎対象物Cの匂いが室内に溢れることも避けられる。実際、加熱処理中は無論のこと、加熱処理後にバルブ24を開弁して収容容器1の内部空間Iの雰囲気を外部Oに排気したときに、焙煎対象物Cの匂いは殆ど感じられない。本実施形態の焙煎装置は、地下(デパートの食料品売り場等)や、窓の開かない鉄道車両、航空機、船舶、潜水艦等の乗り物の中での使用にも適している。
【0039】
焙煎対象物Cの加熱中の少なくとも一時期または全期間に亘り、断熱層111、131内を真空引きして減圧し、収容容器1の内部空間Iから外部Oに熱が逃げることを抑止するので、ヒータ32が効率的に焙煎対象物Cを加熱処理することができ、ヒータ32による電力消費が削減される。
【0040】
本実施形態の焙煎装置における断熱層111、131は、冷媒ジャケットとしても機能する。焙煎対象物Cの加熱処理の際には、断熱層111、131が真空ポンプ16により吸引される。焙煎対象物Cの加熱後の冷却処理では、同断熱層111、131に冷媒が流入する。このような構造を採用することにより、焙煎装置の肥大化を抑制できる。
【0041】
加えて、本実施形態の焙煎装置は、収容容器1の内部空間Iに不活性ガスを注入するガス注入機構2を具備している。そして、焙煎対象物Cを加熱し焙煎する際に、内部空間Iの空気の一部または全部を不活性ガスで置換した状態で、密閉した収容容器1の内部空間Iに収容した焙煎対象物Cを加熱する。加熱中の収容容器1の内部空間Iの雰囲気に占める不活性ガスの割合(分圧)は任意に調整でき、例えば50%程度としてもよいし、99%強としてもよい。本実施形態によれば、加熱中の焙煎対象物Cの酸化を効果的に防止し、その香りや風味の劣化を抑制することができる。
【0042】
本実施形態の焙煎装置は、焙煎対象物Cを加熱し焙煎する際の収容容器1の内部空間Iの圧力や温度を柔軟に調節可能である。従って、焙煎時の雰囲気の圧力や温度の調整を通じて、様々な香りや味の焙煎対象物Cを生成することが可能である。
【0043】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…収容容器
111、131…断熱層、冷媒ジャケット
14…吸引路
15…バルブ
16…真空ポンプ
2…ガス注入機構
20…ボンベ
21…導入路
22…排出路
23、24…バルブ
25…ボンベ
3…加熱機構
31…ドラム
32…ヒータ
4…冷却機構
40…タンク
41…注入路
42…還流路
43、44…バルブ
45…冷媒ポンプ
C…焙煎対象物
I…収容容器の内部空間
O…外部空間