(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046974
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
F16K31/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152369
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 将志
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA14
3H062BB33
3H062CC02
3H062DD01
3H062DD11
3H062EE08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】弁体又は弁座の摩耗を抑制できる電動弁の提供。
【解決手段】電動弁1は、弁座10dを備えた弁本体10に対して、軸線方向に相対移動可能な弁軸ホルダ15と、弁座に対して接離可能な弁体部21dを備え、弁本体に対して軸線方向に相対移動可能な弁軸21と、弁軸とともに軸線方向に移動する被駆動部材37と、弁軸に取り付けられるばねストッパ36と、弁体部が弁座に接近する方向に弁軸を付勢するばね部材39と、ばね部材の一端に当接するばね受け部38と、を有し、弁軸ホルダが被駆動部材に当接することにより、弁軸ホルダから被駆動部材を介して弁軸に、弁体部が弁座から離間する方向の駆動力が伝達され、ばね受け部は、少なくとも全閉位置を含む弁軸の第1の軸線方向位置において、弁軸ホルダとばね部材との間に挟持され、また少なくとも全開位置を含む弁軸の第2の軸線方向位置において、ばねストッパとばね部材との間に挟持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して、軸線方向に相対移動可能な弁軸ホルダと、
前記弁座に対して接離可能な弁体部を備え、前記弁本体に対して軸線方向に相対移動可能な弁軸と、
前記弁軸とともに軸線方向に移動する被駆動部材と、
前記弁軸に取り付けられるばねストッパと、
前記弁体部が前記弁座に接近する方向に前記弁軸を付勢するばね部材と、
前記ばね部材の一端に当接するばね受け部と、を有し、
前記弁軸ホルダが前記被駆動部材に当接することにより、前記弁軸ホルダから前記被駆動部材を介して前記弁軸に、前記弁体部が前記弁座から離間する方向の駆動力が伝達され、
前記ばね受け部は、少なくとも全閉位置を含む前記弁軸の第1の軸線方向位置において、前記弁軸ホルダと前記ばね部材との間に挟持され、また少なくとも全開位置を含む前記弁軸の第2の軸線方向位置において、前記ばねストッパと前記ばね部材との間に挟持される、
ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記弁軸ホルダは、中空円筒部、及び前記中空円筒部の一端に形成された壁を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記ばね受け部は、前記弁軸が挿通された環状板材からなり、前記第1の軸線方向位置において前記壁に当接する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記ばねストッパは、前記弁軸に固着されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項5】
前記ばねストッパは、長さが規定されており、前記弁軸に対して軸線方向に相対移動可能に取り付けられており、
前記被駆動部材は、前記弁軸に固着されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項6】
前記ばねストッパは、前記弁軸の第1の軸線方向位置において、前記被駆動部材に対して軸線方向に相対移動可能であり、前記弁軸の第2の軸線方向位置において、前記被駆動部材に当接することにより軸線方向に固定される、
ことを特徴とする請求項5に記載の電動弁。
【請求項7】
前記ばね受け部は、前記ばねストッパと一体である、
ことを特徴とする請求項6に記載の電動弁。
【請求項8】
前記弁座は、前記弁体部が着座したときに流体が通過可能な溝を、径方向にわたって有する、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すモータ駆動型の電動弁は、ステッピングモータのロータに連結された弁軸が、雄ねじ部と雌ねじ部とを螺合させてなるねじ機構の作用により、ロータとともに回転すると同時に軸線方向に変位し、それにより弁体と弁座の隙間を増減させて流量を制御している。
【0003】
このような電動弁においては、弁体を備えた弁軸と弁軸ホルダとの間に閉弁ばねが配置されており、弁体が弁座に着座した閉弁状態、また弁体が弁座より離間した開弁状態のいずれの状態でも、弁軸ホルダと弁体との間に閉弁ばねの付勢力が作用している。この付勢力の作用により、開弁状態の弁体は、弁軸の回転に対して連れ回りすることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、弁体が弁座に着座すれば両者間に摩擦力が発生するため、最終的には弁体の回転は静止する。しかしながら、弁体と弁座との摩擦力は、弁座に向かって弁体が押し付けられる軸力に応じて増大するため、弁体の回転トルクに抗することができる摩擦力が発生するまでは、弁座に接しながら弁体は回転し続け、それにより弁体と弁座との間に摩耗が生じるおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、弁体又は弁座の摩耗を抑制できる電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動弁は、
弁座を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して、軸線方向に相対移動可能な弁軸ホルダと、
前記弁座に対して接離可能な弁体部を備え、前記弁本体に対して軸線方向に相対移動可能な弁軸と、
前記弁軸とともに軸線方向に移動する被駆動部材と、
前記弁軸に取り付けられるばねストッパと、
前記弁体部が前記弁座に接近する方向に前記弁軸を付勢するばね部材と、
前記ばね部材の一端に当接するばね受け部と、を有し、
前記弁軸ホルダが前記被駆動部材に当接することにより、前記弁軸ホルダから前記被駆動部材を介して前記弁軸に、前記弁体部が前記弁座から離間する方向の駆動力が伝達され、
前記ばね受け部は、少なくとも全閉位置を含む前記弁軸の第1の軸線方向位置において、前記弁軸ホルダと前記ばね部材との間に挟持され、また少なくとも全開位置を含む前記弁軸の第2の軸線方向位置において、前記ばねストッパと前記ばね部材との間に挟持される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弁体又は弁座の摩耗を抑制できる電動弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電動弁の縦断面図であり、完全閉弁状態を示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る電動弁の縦断面図であり、完全閉弁状態と完全開弁状態との間の中間状態を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る電動弁の縦断面図であり、完全閉弁状態と完全開弁状態との間の中間状態を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る電動弁の縦断面図であり、完全開弁状態を示す。
【
図5】
図5は、縦軸にオリフィス流量、横軸にステータに供給されるパルス数をとって示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明にかかる実施形態について説明する。
図1~4は、本発明の実施形態に係る電動弁1の縦断面図である。ここで、上方とは、電動弁1におけるロータ側をいい、下方とは、ロータに対する弁座側をいう。
【0011】
(電動弁の構成)
電動弁1は、上端が開口した有底円筒状の弁本体10と、弁本体10の上端に取り付けられる有頂円筒状のキャン45と、弁本体10の内側に固定された弁軸ホルダ15と、弁軸ホルダ15の内側に配設された弁軸21と、弁軸ホルダ15に対し一体的に回動可能に連結固定されたロータ30と、ロータ30を回転駆動すべくキャン45の外周に外嵌されたステータ(不図示)とを備えている。ここでは、ロータ30とステータとでステッピングモータが構成される。電動弁1の軸線をLとする。
【0012】
弁本体10は、中空円筒部10aと底壁部10bとを連設してなる。底壁部10bにおいて、その中央に貫通孔10cが形成されている。貫通孔10cは、上端側に形成され下方に向かうにつれて縮径する第1テーパ部10dと、第1テーパ部10dの下端につながり下方に向かうにつれて拡径する第2テーパ部10eと、第2テーパ部10eの下端につながる円筒孔10fとからなる。第1テーパ部10dには、径方向にわたって、1つ又は複数のV字状の溝10hが形成されている。第1テーパ部10dが弁座を構成する。
【0013】
底壁部10bの下面において、貫通孔10cの周囲に環状溝10gが形成されており、環状溝10g内に縦パイプT1の端部が嵌挿され、ロウ付けなどにより接続されている。
【0014】
弁本体10の中空円筒部10aには、段付き開口10iが形成されており、段付き開口10iに横パイプT2が、その端部を内側段部に突き当てるように嵌挿され、ロウ付けなどにより接続されている。段付き開口10iの軸線をOとする。軸線Oは軸線Lに直交する。
【0015】
弁本体10の中空円筒部10aの上端近傍外周には、鍔部材18がロウ付けにより固定されており、また鍔部材18の外周には、キャン45の下端が溶接され、これにより弁本体10とキャン45とが密閉した状態で一体化される。中空円筒部10aの内部が、弁室VCを構成する。
【0016】
キャン45の内部に配置されたロータ30は、金属磁性粉末と樹脂を混合して中空円筒状に帯磁されて成形され、その内周から径方向内側に突出するようにして、接続リング31がインサート成形によって同軸に固定されている。接続リング31の内周は、弁軸ホルダ15の外周に固定されている。
【0017】
弁軸ホルダ15は、ホルダ円筒部15aと上壁15bとを連設してなり、上壁15bの上面から薄肉のカシメ円筒部15cが上方に突出している。カシメ円筒部15cの外周に、接続リング31の内周が嵌合した状態で、カシメ円筒部15cの上端を径方向外側に塑性変形させてカシメることにより、接続リング31が弁軸ホルダ15に連結される。
【0018】
弁軸ホルダ15の上壁15bは、上面が円形にくぼんだ円形凹部15dと、円形凹部15dの中央に形成され上壁15bを貫通する中央開口15eとを有する。またホルダ円筒部15aは、その下端近傍内周に雌ねじ部15fを有する。
【0019】
ホルダ円筒部15aの外周面には、円筒状の上ストッパ部材34がインサート成形により接合され、その下端はホルダ円筒部15aの下端より下方に配置される。上ストッパ部材34の下面における周方向1か所が下方に突出しており、これにより上ストッパ部34aが形成される。
【0020】
ガイドブッシュ33は、ホルダ円筒部15a内に配置される縮径円筒部33aと、縮径円筒部33aよりも大径の拡径円筒部33bとを連設してなる。縮径円筒部33aの外周には、弁軸ホルダ15の雌ねじ部15fに係合する雄ねじ部33cが形成されている。雄ねじ部33cの上方における縮径円筒部33aの外周面は、ホルダ円筒部15aの内周面に相対摺動可能に嵌合する。
【0021】
拡径円筒部33bは、その外周を中空円筒部10aの内周に圧入により嵌合することにより弁本体10に取り付けられている。縮径円筒部33aと拡径円筒部33bとの境界付近に、ガイドブッシュ33の内外を連通する連通孔33dが形成されている。
【0022】
拡径円筒部33bの外周面の上端近傍には、環状の下ストッパ部材35がインサート成形により接合されている。下ストッパ部材35の上面における周方向1か所が上方に突出しており、これにより下ストッパ部35aが形成される。
【0023】
円柱状の弁軸21は、小径軸部21aと、小径軸部21aより大径の大径軸部21bと、小径軸部21aより大径で大径軸部21bより小径の中径軸部21cと、弁体部21dとを連設してなる。
【0024】
小径軸部21aの外周の所定位置には、円管状部材であるばねストッパ36が圧入または溶接により取り付けられ(固着され)ている。ばねストッパ36は、弁軸ホルダ15の中央開口15eに対して相対移動可能に嵌挿されている。
【0025】
ばねストッパ36の上部に、中空円筒状のプッシュナット(被駆動部材)37が圧入により取り付けられている。プッシュナット37は、第1内周面37aと、第1内周面37aよりも大径の第2内周面37bとを有しており、ばねストッパ36の外周面は第2内周面37bに嵌合している。すなわち、プッシュナット37は、弁軸21に対して直接的に、又はばねストッパ36を介して間接的に固定されており、これらは一体的に軸線方向に移動する。プッシュナット37の下端は、弁軸ホルダ15の円形凹部15d内に進入可能である。プッシュナット37とばねストッパ36とを一体化してもよい。
【0026】
なお、ばねストッパ36は、軸線方向の長さが規定されていれば、弁軸21に対して固定されている必要はなく、例えば隙間嵌めの寸法関係で、弁軸21に対して軸線方向に相対移動可能となるように取付けられてもよい。ただし、その場合にはプッシュナット37が、弁軸21に対して例えば圧入、溶接、溶着などにより、所定位置に固定(固着)されている必要がある。この場合、後述する少なくとも全閉位置を含む弁軸21の第1の軸線方向位置において、ばねストッパ36はプッシュナット37に対して軸線方向に相対移動可能である。また、少なくとも全開位置を含む弁軸21の第2の軸線方向位置において、ばねストッパ36は、その上端がプッシュナット37の第1内周面37aと第2内周面37bとの間の段差部に当接し、弁軸21に対して軸線方向に固定される。また、ばねストッパ36を弁軸21に固定しない場合には、後述するワッシャ38とばねストッパ36とを一体として、弁軸21に対して相対移動可能とすることもできる。
【0027】
プッシュナット37の周囲には、復帰ばね40が嵌合している。復帰ばね40は、ロータ30が一方向に回転して雌ねじ部15fと雄ねじ部33cとの螺合が外れたときに、キャン45に対して弁軸ホルダ15を下方に付勢することにより、ロータ30が他方向に回転したときに、雌ねじ部15fと雄ねじ部33cとの再螺合を促す機能を有する。
【0028】
弁軸21の大径軸部21bは、ガイドブッシュ33の内周に対して、軸線方向及び回転方向に相対移動可能に嵌合している。小径軸部21aの外周とガイドブッシュ33の内周との間に、閉弁ばね(ばね部材)39が配置されている。閉弁ばね39の下端は、小径軸部21aと大径軸部21bとの間の段部に当接し、閉弁ばね39の上端は、小径軸部21aに嵌合したワッシャ(ばね受け部)38の下面に当接する。環状板材であるワッシャ38は、ホルダ円筒部15aの内径より小さく、縮径円筒部33aの内径より大きい外径を有し、ガイドブッシュ33の上端と、弁軸ホルダ15の上壁15bとの間において、小径軸部21aに対して軸線方向及び回転方向に相対移動可能に配置されている。
【0029】
弁軸21の弁体部21dは、下方に向かうにつれて縮径し第1テーパ部10dに着座可能である第1弁体テーパ部21eと、下方に向かうにつれて縮径し第1弁体テーパ部21eよりも軸線Lに対する傾き角が小さい第2弁体テーパ部21fと、下方に向かうにつれて縮径し第2弁体テーパ部21fよりも軸線Lに対する傾き角が大きい第3弁体テーパ部21gとからなる。
【0030】
組付け時において、弁軸21とばねストッパ36との位置調整は、キャン45、復帰ばね40、プッシュナット37を組み付ける前の状態で、閉弁方向にロータ30を回転させつつ弁軸21を下降させて、第1弁体テーパ部21eを第1テーパ部10dに着座させる。その後、同方向に所定のトルクを付与したのち、逆方向に規定量だけロータ30を回転させ、その位置(
図2に示す位置)でワッシャ38の上面に、ばねストッパ36の下端が当接するようにして、ばねストッパ36を弁軸21に圧入により嵌合させ、または溶接などの手法で位置決め固定する。その後に、プッシュナット37を弁軸21の所定位置に圧入により位置決め固定し、復帰ばね40及びキャン45を取り付ける。ただし、ばねストッパ36の組付手法は以上に限られず、例えば、ばねストッパ36の下端が、単体での弁軸21の上端から既定の位置となるように、治具等を用いて取り付けるようにしてもよい。
【0031】
(電動弁の動作)
次に、電動弁1の開弁動作を、
図1~5を参照して具体的に説明する。
本実施形態において、ばねストッパ36がワッシャ38に当接しない弁軸21の位置(少なくとも全閉位置を含む)を、「第1の軸線方向位置」とし、ばねストッパ36がワッシャ38に当接する弁軸21の位置(少なくとも全開位置を含む)を、「第2の軸線方向位置」とする。ここで「全開位置」とは、第1弁体テーパ部21eが第1テーパ部10dから最も離れた位置を言い、電動弁1では、弁軸ホルダ15の上方(開弁方向)への動作が停止された位置(上端位置)である。一方、「全閉位置」とは、第1弁体テーパ部21eが第1テーパ部10dに最も近接又は当接状態で最も強く押圧した位置を言い、電動弁1では、上ストッパ部34aと下ストッパ部35aとが係合することによって、弁軸ホルダ15の下方(閉弁方向)への動作が停止された位置(下端位置)である。なお、図において、上ストッパ部34aと下ストッパ部35aの相対位置関係は誇張して示しており、実際とは異なる。
【0032】
図5は、縦軸にオリフィス流量(貫通孔10cを通過する冷媒の流量)、横軸にステータに供給されるパルス数をとって示すグラフである。
図5において、p1は
図1に示す全閉位置に対応し、p2は
図2に示す位置に対応し、p3は
図3に示す位置に対応し、p4は
図3と
図4の間の位置に対応し、p5は
図4に示す全開位置に対応する。ここで、「第2の軸線方向位置」は、全開位置(p5)からp4,p3の位置を経てp2の位置までの範囲であり、開弁点は「第2の軸線方向位置」の範囲内に位置している。これに対し「第1の軸線方向位置」は、p2(正確にはp2より僅かに閉弁側)の位置から全閉位置(p1:0パルス数の位置)までの範囲である。
【0033】
まず、横パイプT2から弁室VC内に冷媒(流体)が進入しているものとし、電動弁1は
図1に示す完全閉弁状態にあるものとする。このとき、ばねストッパ36とワッシャ38との間に隙間があり、したがって弁軸ホルダ15の上壁15bの下面にワッシャ38の上面が当接している。
【0034】
このような完全閉弁状態では、
図1に示すように、プッシュナット37の下端が円形凹部15dの底面から離間している。また、閉弁ばね39の上端はワッシャ38の下面に当接し、その下端は、弁軸21の小径軸部21aと大径軸部21bとの間の段部に当接しているため、閉弁ばね39の付勢力により弁軸21は下方に付勢される。これにより所定の面圧で第1弁体テーパ部21eが第1テーパ部10dに向かって押圧されて着座し、弁室VCから貫通孔10cを通過して縦パイプT1に向かう冷媒の流れが制限される。なお、本実施形態では、第1テーパ部10dに溝10hが形成されているため、完全閉弁状態でも溝10hを通って一定量の冷媒が流れる。ただし、溝10hを設けなくてもよい。
【0035】
かかる完全閉弁状態から、外部の電源回路よりステータ(不図示)にパルス給電が行われると、ロータ30及び弁軸21が一方向に回転駆動され、それに応じて雌ねじ部15fと雄ねじ部33cからなるねじ送り機構を介して、弁軸21及び弁軸ホルダ15が回転しながら上昇する。しかしながら、
図2に示すように、閉弁ばね39の付勢力によって、弁軸21が下方に付勢された状態のままであるため、第1弁体テーパ部21eが第1テーパ部10dに着座し続け、貫通孔10cを通過する冷媒は制限されたままである。
【0036】
このとき、弁軸21は、ワッシャ38及び閉弁ばね39を介して弁軸ホルダ15から回転トルクを受けるが、圧縮された閉弁ばね39の付勢力が比較的強いため、第1弁体テーパ部21eと第1テーパ部10dとの間に作用する摩擦力が高く、弁軸21は回転しない。ただし、該摩擦力が回転トルクに抗しきれなくなると、弁軸21が回転するが、その際の摩耗量はわずかである。
【0037】
完全閉弁状態から、ステータに所定パルス数(例えば15パルス)のパルス給電が行われると、ばねストッパ36の下端がワッシャ38の上面に当接し、
図3に示すように、ワッシャ38を弁軸ホルダ15の上壁15bから離間させる。これにより閉弁ばね39の上端は、ワッシャ38を介してばねストッパ36により支持される。すなわち、弁軸21が第1の軸線方向位置から上昇して第2の軸線方向位置になると、ばねストッパ36が閉弁ばね39の付勢力を支持することとなる。それにより、弁軸21と弁軸ホルダ15との間のトルク伝達が実質的に消失するため、仮に第1弁体テーパ部21eが第1テーパ部10dから離間する前であっても、両者の摩耗を抑えることができる。特に、本実施形態のように第1テーパ部10dに溝10hが形成されている場合、その尖った縁で削られることにより、第1弁体テーパ部21eの摩耗量が増大する恐れがあるため、ばねストッパ36の機能は有効である。
【0038】
弁軸ホルダ15の上昇により、プッシュナット37の下端が円形凹部15d内に進入してその底面に当接した時点から、プッシュナット37を介して開弁方向への駆動力伝達が開始され、弁軸21が弁軸ホルダ15とともに上昇を開始する。弁軸21の上昇により、第1弁体テーパ部21eが第1テーパ部10dから離間するので、貫通孔10cが開放される。これにより、横パイプT2から弁室VC内へと進入した冷媒は、第1弁体テーパ部21eと第1テーパ部10dとの間の隙間、及び貫通孔10cを通って第1の配管T1へと流れる。
【0039】
このとき、ステータへのパルス給電に応じて弁軸21のリフト量が定まるため、冷媒の流量制御を行える。さらにパルス給電を続けることで、最終的に
図4に示すように、弁軸21が完全開弁状態となる。なお、第2の軸線方向位置では、弁軸21は弁軸ホルダ15に対して軸線方向に支持されないため、弁軸21が軸線方向にがたつく恐れがある。そこで、弁軸21のがたつきを抑えるため、プッシュナット37の下端を下方に延長し、第2の軸線方向位置でも弁軸ホルダ15の円形凹部15dの側壁に嵌合させるようにして、両者間に摺動抵抗を付与してもよい。
【0040】
一方、かかる完全開弁状態から、外部の電源回路よりステータに逆特性のパルス給電が行われると、ロータ30及び弁軸21が他方向に回転駆動され、上述したねじ送り機構を介して、弁軸ホルダ15とともに弁軸21が回転しながら下降する。
【0041】
弁軸ホルダ15が下降しても、ワッシャ38がばねストッパ36に支持されている間(第2の軸線方向位置にあるとき)は、弁軸21には弁軸ホルダ15から回転トルクがほとんど伝達されない。このため、仮に、第1弁体テーパ部21eと第1テーパ部10dとが接していたとしても、両者の摩耗を抑えることができる。
【0042】
弁軸ホルダ15が規定量下降したときに、第1弁体テーパ部21eが第1テーパ部10dに着座する。これにより、弁室VCから縦パイプT1側へ向かう冷媒の流れが制限される。
【0043】
この時点では、上ストッパ部34aは未だ下ストッパ部35aに当接しておらず、ロータ30及び弁軸21の回転下降は停止されず、閉弁ばね39が所定量圧縮されるまでパルス給電が継続される。それにより、第1弁体テーパ部21eが第1テーパ部10dに着座したまま回転が制止される一方、ロータ30、弁軸ホルダ15等はさらに回転しながら下降する。
【0044】
このとき、着座した弁軸21に対して弁軸ホルダ15が下降するため、閉弁ばね39が縮長圧縮され、これにより弁軸ホルダ15の下降力が吸収される。その後、閉弁ばね39の圧縮量が所定量となったとき、上ストッパ部34aが下ストッパ部35aに当接して係止され、ロータ30が最下降位置に達し、ステータに対しパルス給電が継続されてもロータ30及び弁軸ホルダ15の下降は強制的に停止される。
【0045】
このように、第1弁体テーパ部21eが第1テーパ部10dに着座して貫通孔10cが閉止された後においても、上ストッパ部34aが下ストッパ部35aに当接して係止される制御用原点位置に達するまでは、ロータ30及び弁軸ホルダ15の回転下降が継続されることにより、閉弁ばね39が圧縮される。そのため、閉弁ばね39の付勢力により第1弁体テーパ部21eが第1テーパ部10dに強く押し付けられ、冷媒漏れ等を確実に防止できる。
【0046】
なお、電動弁の具体的な構成は上述した各実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計の変更があっても本発明に含まれることはもちろんである。
【0047】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(第1の形態)
弁座を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して、軸線方向に相対移動可能な弁軸ホルダと、
前記弁座に対して接離可能な弁体部を備え、前記弁本体に対して軸線方向に相対移動可能な弁軸と、
前記弁軸とともに軸線方向に移動する被駆動部材と、
前記弁軸に取り付けられるばねストッパと、
前記弁体部が前記弁座に接近する方向に前記弁軸を付勢するばね部材と、
前記ばね部材の一端に当接するばね受け部と、を有し、
前記弁軸ホルダが前記被駆動部材に当接することにより、前記弁軸ホルダから前記被駆動部材を介して前記弁軸に、前記弁体部が前記弁座から離間する方向の駆動力が伝達され、
前記ばね受け部は、少なくとも全閉位置を含む前記弁軸の第1の軸線方向位置において、前記弁軸ホルダと前記ばね部材との間に挟持され、また少なくとも全開位置を含む前記弁軸の第2の軸線方向位置において、前記ばねストッパと前記ばね部材との間に挟持される、
ことを特徴とする電動弁。
【0048】
(第2の形態)
前記弁軸ホルダは、中空円筒部、及び前記中空円筒部の一端に形成された壁を有する、
ことを特徴とする第1の形態の電動弁。
【0049】
(第3の形態)
前記ばね受け部は、前記弁軸が挿通された環状板材からなり、前記第1の軸線方向位置において前記壁に当接する、
ことを特徴とする第2の形態の電動弁。
【0050】
(第4の形態)
前記ばねストッパは、前記弁軸に固着されている、
ことを特徴とする第1の形態~第3の形態のいずれかの形態の電動弁。
【0051】
(第5の形態)
前記ばねストッパは、長さが規定されており、前記弁軸に対して軸線方向に相対移動可能に取り付けられており、
前記被駆動部材は、前記弁軸に固着されている、
ことを特徴とする第1の形態~第3の形態のいずれかの形態の電動弁。
【0052】
(第6の形態)
前記ばねストッパは、前記弁軸の第1の軸線方向位置において、前記被駆動部材に対して軸線方向に相対移動可能であり、前記弁軸の第2の軸線方向位置において、前記被駆動部材に当接することにより軸線方向に固定される、
ことを特徴とする第5の形態の電動弁。
【0053】
(第7の形態)
前記ばね受け部は、前記ばねストッパと一体である、
ことを特徴とする第6の形態の電動弁。
【0054】
(第8の形態)
前記弁座は、前記弁体部が着座したときに流体が通過可能な溝を、径方向にわたって有する、
ことを特徴とする第1の形態~第7の形態のいずれかの形態の電動弁。
【符号の説明】
【0055】
1 電動弁
10 弁本体
10d 第1テーパ部
10h 溝
15 弁軸ホルダ
15a ホルダ円筒部
15b 上壁
15d 円形凹部
15e 中央開口
21 弁軸
21d 弁体部
33 ガイドブッシュ
36 ばねストッパ
37 プッシュナット
38 ワッシャ
39 閉弁ばね
30 ロータ
VC 弁室