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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046987
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】施工管理システム及び施工管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/08 20240101AFI20240329BHJP
【FI】
G06Q10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152392
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】前▲崎▼ 貴博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正憲
(72)【発明者】
【氏名】山本 真哉
(72)【発明者】
【氏名】横島 喬
(72)【発明者】
【氏名】宮下 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】平田 弘達
(72)【発明者】
【氏名】大貫 奈々美
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC51
(57)【要約】
【課題】土の流通状態をリアルタイムに管理することができる施工管理システム及び施工管理方法を提供する。
【解決手段】管理対象領域内の複数の車両が行う運土を管理する施工管理システムであって、前記車両に設けられ、前記車両が行う運土に関する作業内容と前記車両の位置とを含む運土情報を生成する検出部と、複数の前記車両に設けられた複数の前記検出部から複数の運土情報を取得し、複数の前記運土情報を集約し、運搬する土の量を自動集計する集計情報を生成し、複数の前記運土情報に基づいて複数の車両と地図データとを統合し、前記集計情報に基づいて、前記土の流通状態をリアルタイムに管理する運土帳票を生成する管理装置と、を備えることを特徴とする施工管理システムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象領域内の複数の車両が行う運土を管理する施工管理システムであって、
前記車両に設けられ、前記車両が行う運土に関する作業内容と前記車両の位置とを含む運土情報を生成する検出部と、
複数の前記車両に設けられた複数の前記検出部から複数の運土情報を取得し、
複数の前記運土情報を集約し、運搬する土の量を自動集計する集計情報を生成し、
複数の前記運土情報に基づいて複数の車両と地図データとを統合し、
前記集計情報に基づいて、前記土の流通状態をリアルタイムに管理する運土帳票を生成する管理装置と、を備えることを特徴とする、
施工管理システム。
【請求項2】
前記検出部は、前記車両の位置情報と、前記車両の作業内容に関する作業情報とを含む前記運土情報を生成する、
請求項1に記載の施工管理システム。
【請求項3】
前記検出部は、前記車両に設けられた積載部を監視し、
前記積載部に積載された前記土を検出し、
前記積載部における空荷、運搬、積載量、積み下ろしを含む前記運土情報を生成する、
請求項2に記載の施工管理システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記位置情報と前記運土情報とに基づいて、前記車両の位置と前記車両の前記作業内容とを関連付けて前記地図データに統合し、前記車両の現在の位置と空荷、運搬、積載量、積み下ろしの状態を前記地図データ上に表示させる、
請求項3に記載の施工管理システム。
【請求項5】
前記管理装置は、前記土の前記積み込みを行った第1位置における前記積載量と、前記土の前記積み下ろしを行った第2位置における前記積載量とに基づいて、前記第1位置における前記土の搬出量を積算すると共に、前記第2位置における前記土の搬入量を積算し、前記集計情報を生成し、前記集計情報に基づいて前記第1位置と前記第2位置との間の前記運土の前記流通状態を示す前記運土帳票を自動的に生成する、
請求項4に記載の施工管理システム。
【請求項6】
前記管理装置は、前記土の種類に応じた前記運土帳票を生成する、
請求項5に記載の施工管理システム。
【請求項7】
管理対象領域内の複数の車両が行う運土を管理する施工管理システムに搭載されたコンピュータにおいて実行される施工管理方法であって、
前記車両に設けられた検出部により生成された、前記車両が行う運土に関する作業内容と前記車両の位置とを含む運土情報を複数の前記車両から取得し、
複数の前記運土情報を集約し、
運搬する土の量を自動集計する集計情報を生成し、
複数の前記運土情報に基づいて複数の車両と地図データとを統合し、
前記集計情報に基づいて、前記土の流通状態をリアルタイムに管理する運土帳票を生成することを特徴とする、
施工管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工管理システム及び施工管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
造成工事において、土の運搬管理は必須事項である。土の運搬管理においては、土を掘った場所と土を運んで積み上げた場所との施工記録に基づいて、施工進捗が把握されると共に、施工計画が策定され、品質管理される。従来、ダンプトラックなどの車両がどのエリアからどこのエリアに土を運搬したかという土の運搬管理は、車両運転手などの人力に基づいて記録されていた。
【0003】
複数のダンプが配備された現場では、それぞれの車両の運土記録を回収し、施工現場内の土を運搬した回数及びその土量合計を手作業で集計している。これらデータは、施工計画の策定や品質管理に必須であるのにもかかわらず、運転手が手作業により記録するため運土した場所の正確な位置を把握できない虞があると共に、数え間違いや記録の欠損が生じ、データの信頼性が欠如する虞がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、ダンプトラックの撮像データと位置情報とに基づいてダンプトラックの作業情報と位置情報とを管理し表示手段に表示する車両管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-263080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術によれば、ダンプトラックの位置情報や作業情報を管理するものであり、土の運搬管理を行うものではなかった。
【0007】
本発明は、土の流通状態をリアルタイムに管理することができる施工管理システム及び施工管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、本発明は、管理対象領域内の複数の車両が行う運土を管理する施工管理システムであって、前記車両に設けられ、前記車両が行う運土に関する作業内容と前記車両の位置とを含む運土情報を生成する検出部と、複数の前記車両に設けられた複数の前記検出部から複数の運土情報を取得し、複数の前記運土情報を集約し、運搬する土の量を自動集計する集計情報を生成し、複数の前記運土情報に基づいて複数の車両と地図データとを統合し、前記集計情報に基づいて、前記土の流通状態をリアルタイムに管理する運土帳票を生成する管理装置と、を備えることを特徴とする、施工管理システムである。
【0009】
本発明によれば、複数の車両から複数の運土情報を取得して集約することにより、管理対象領域における土の流通状態をリアルタイムに管理することができる。
【0010】
また、本発明の前記検出部は、前記車両の位置情報と、前記車両の作業内容に関する作業情報とを含む前記運土情報を生成してもよい。
【0011】
本発明によれば、複数の車両から複数の運土情報を取得して集約することにより、車両の位置と、車両の作業内容とを関連付けて管理することができる。
【0012】
また、本発明の前記検出部は、前記車両に設けられた積載部を監視し、前記積載部に積載された前記土を検出し、前記積載部における空荷、運搬、積載量、積み下ろしを含む前記運土情報を生成してもよい。
【0013】
本発明によれば、車両に検出部が設けられていることにより、車両の積載部に載置された土の状態や積載量と車両の作業内容とを管理することができる。
【0014】
また、本発明の前記管理装置は、前記位置情報と前記運土情報とに基づいて、前記車両の位置と前記車両の前記作業内容とを関連付けて前記地図データに統合し、前記車両の現在の位置と空荷、運搬、積載量、積み下ろしの状態を前記地図データ上に表示させてもよい。
【0015】
本発明によれば、複数の車両から複数の運土情報を取得して集約することにより、表示部に表示される地図データに基づいて、車両の位置や作業内容を管理することができる。
【0016】
また、本発明の前記管理装置は、前記土の前記積み込みを行った第1位置における前記積載量と、前記土の前記積み下ろしを行った第2位置における前記積載量とに基づいて、前記第1位置における前記土の搬出量を積算すると共に、前記第2位置における前記土の搬入量を積算し、前記集計情報を生成し、前記集計情報に基づいて前記第1位置と前記第2位置との間の前記運土の前記流通状態を示す前記運土帳票を自動的に生成してもよい。
【0017】
本発明によれば、複数の車両から複数の運土情報を取得して集約することにより、管理対象領域における土の搬出量や移動の状態をリアルタイムに管理することができる。
【0018】
また、本発明の前記管理装置は、前記土の種類に応じた前記運土帳票を生成してもよい。
【0019】
本発明によれば、複数の車両から複数の運土情報を取得して集約して運土帳票を生成することにより、正確な運土管理を行うと共に、帳票を作成する手間を削減し、施工管理を効率化することができる。
【0020】
本発明の一態様は、管理対象領域内の複数の車両が行う運土を管理する施工管理システムに搭載されたコンピュータにおいて実行される施工管理方法であって、前記車両に設けられた検出部により生成された、前記車両が行う運土に関する作業内容と前記車両の位置とを含む運土情報を複数の前記車両から取得し、複数の前記運土情報を集約し、運搬する土の量を自動集計する集計情報を生成し、複数の前記運土情報に基づいて複数の車両と地図データとを統合し、前記集計情報に基づいて、前記土の流通状態をリアルタイムに管理する運土帳票を生成することを特徴とする、施工管理方法である。
【0021】
本発明によれば、複数の車両から複数の運土情報を取得して集約することにより、管理対象領域における土の流通状態をリアルタイムに管理する施工管理方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、管理対象領域における土の流通状態をリアルタイムに管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る施工管理システムの構成を示すブロック図である。
図2】車両の構成を示す図である。
図3】点群データを変換する方法を示す図である。
図4】積載部の状態と変換データとの対応関係を示す図である。
図5】検出部により認識されるデータの一例を示す図である。
図6】施工管理システムの処理を概略的に示す図である。
図7】地図データと車両の位置とを統合した画像データの一例を示す図である。
図8】管理装置において実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る施工管理システム及び施工管理方法の実施形態について説明する。施工管理システムは、管理対象領域内の複数の車両が行う土の流通を管理するものである。
【0025】
図1に示されるように、施工管理システム1は、複数の車両Mn(n:自然数)と、複数の車両MnとネットワークNWを介して通信可能に接続された管理装置10とを備える。ネットワークNWは、公衆網や無線LAN(Local Area Network)を利用した通信回線である。
【0026】
車両Mnは、例えば、建設現場等の管理対象領域内にて土の運搬作業を行うダンプトラックである。車両Mnは、例えば、運搬する土に関する情報を検出する検出部Sと、ネットワークNWを介して管理装置10と、情報を送受信する通信部Tと、運搬対象物を載置する積載部MS(図2参照)とを備える。
【0027】
通信部Tは、無線によりネットワークNWと通信可能な通信デバイスである。検出部Sは、例えば、車両Mnの位置情報を検出する位置センサGを備える。位置センサGは、例えば、人工衛星との通信に基づいて車両Mnの位置を測位するGNSS(Global Navigation Satellite System)センサである。
【0028】
検出部Sは、車両Mnにより運搬される土を監視する監視センサLを備える。監視センサLは、例えば、レーザ光に基づいて物体を検出する3DLidar(3dimensional Light Detection And Ranging)である。監視センサLは、車両Mnに積載される土を3次元データに基づいて検出する。監視センサLは、車両Mnに設けられた積載部の状態を3次元データに基づいて検出する。検出部Sは、監視センサLの検出値に基づいて積載部の運用状態を判定する判定部Hを備える。
【0029】
判定部Hは、監視センサLの検出値に基づいて、積載部における土の積み込み、運搬、積載量、積み下ろしを判定し判定結果を出力する。判定部Hは、監視センサLの検出値に基づいて、積載部が上げ状態であるか通常状態であるかを判定する。判定部Hは、積載部が通常状態である状態の教師データと監視センサLの検出値とを比較する。判定部Hは、積載部が通常状態である状態の教師データと監視センサLの検出値とを比較し、積載部が上げ状態であると判定した場合、判定結果を出力する。判定部Hは、積載部が通常状態であると判定した場合、積載部上に土が載置されているか否かを判定する。
【0030】
判定部Hは、積載部が空である状態の教師データと監視センサLの検出値とを比較し、積載部が空であると判定した場合、判定結果を出力する。判定部Hは、積載部の上げ状態、通常状態、空荷の状態のいずれかの状態であるか否かを並列的に判定する。判定部Hは、積載部が空である状態の教師データと監視センサLの検出値とを比較し、積載部に土が載置されていると判定した場合、土の積載量を判定する。判定部Hは、土の積載量に対する教師データと監視センサLの検出値とを比較し、土の積載量を算出し、算出結果を出力する。
【0031】
判定部Hは、積載部の状態と土の積載量との判定結果に基づいて積載部における土の積み込み、運搬、積み下ろしを含む車両Mnの作業内容に関する作業情報を出力する。判定部Hは、作業情報と土の積載量の算出結果とを統合的に判定し積載部と土の積載状態との関係を示す運土情報を出力する。運土情報は、空荷、運搬、積載量、積み下ろし等の積載部と土の積載状態を含んでいる情報である。検出部Sは、判定部Hの出力に基づいて車両Mnが行う運土に関する作業内容に関する作業情報と車両Mnの位置情報とを含む運土情報を検出し、通信部Tを介して管理装置10に送信する。
【0032】
検出部Sは、判定部Hの判定に必要なデータと検出結果や判定結果を記憶する記憶部Dを備える。記憶部Dは、ハードディスクドライブ(HDD)、フラッシュメモリ等の記憶媒体を有する。判定部H及び記憶部Dは、パーソナルコンピュータ、タブレット型端末装置、スマートフォン等の情報処理端末装置により構成される。判定部Hにおいて実行される処理や記憶部Dにおける記憶処理は、管理装置10側において実行されてもよい。
【0033】
管理装置10は、検出部Sの検出値に基づいて管理対象領域内における土の流通状態をリアルタイムに管理するパーソナルコンピュータ等により構成された情報処理端末装置である。管理装置10は、複数の車両Mnから運土情報を集約するクラウドサーバに構成されている。管理装置10は、単独の情報処理端末装置であってもよいし、複数の情報処理端末装置により構成されていてもよい。
【0034】
管理装置10は、例えば、ネットワークNWに通信可能に接続された通信部12と、通信部12により取得された情報に基づいて演算結果を出力する演算部14と、演算に必要なデータを記憶する記憶部16と、各種情報を出力する表示部18とを備える。
【0035】
通信部12は、無線又は有線によりネットワークNWと通信可能な通信デバイスである。通信部12は、ネットワークNWを介して複数の車両Mnに設けられた複数の検出部Sから複数の運土情報を取得する。記憶部16は、ハードディスクドライブ(HDD)、フラッシュメモリ等の記憶媒体を有する。記憶部16は管理装置10に必ずしも内蔵され、又は外部接続されているわけではなく、ネットワークNWを通じてデータを提供するサーバ(不図示)に設けられていてもよい。表示部18は、液晶ディスプレイ等の表示装置である。表示部18は、演算部14の演算結果を出力する。
【0036】
演算部14は、例えば、複数の運土情報を集約し、運搬する土の量を自動集計する集計情報を生成する。演算部14は、土の積み込みを行った第1位置における積載量と、土の積み下ろしを行った第2位置における積載量とに基づいて、第1位置における土の搬出量を積算すると共に、第2位置における土の搬入量を積算した集計情報を生成する。演算部14は、集計情報に基づいて、土の流通状態をリアルタイムに管理する運土帳票を生成する。演算部14は、集計情報に基づいて第1位置と第2位置との間の運土の流通状態を示す運土帳票を自動的に生成する。
【0037】
演算部14は、表示部18を制御して、複数の運土情報に基づいて複数の車両Mnと地図データとを統合し、地図上に車両Mnを表示させる。演算部14は、表示部18を制御して、位置情報と運土情報とに基づいて、車両Mnの位置と車両Mnの作業内容とを関連付けて地図データに統合し、車両Mnの現在の位置情報と、土の積み込み、運搬、積み下ろし等の作業状態を含む作業情報を地図データ上に表示させる。
【0038】
次に、検出部Sの具体的な動作について説明する。
【0039】
図2に示されるように、車両Mnは、車両本体MHと、車両本体MHに設けられた積載部MSとを備えている。車両本体MH側には、積載部MSの状態と、積載部MSに載置された土Rの状態を監視する検出部Sが設けられている。積載部MSは、運搬対象を運搬可能に倒置した通常状態と、運搬対象を積み下ろす際に立ち上がった積み下ろし状態となるように可動する。
【0040】
検出部Sにおいて位置センサGは、人工衛星との通信に基づいて車両本体MHの位置情報を生成する。検出部Sにおいて、監視センサLは、レーザ光L1を積載部MS側に照射しつつ走査し、反射光に基づいて積載部MSの状態と、積載部MSに載置された土Rの状態との3次元データを生成する。監視センサLは、生成した3次元データを記憶部Dに記憶する。監視センサLは、例えば、対象物から反射した反射光を受信し、点群データを生成し記憶部Dに記憶する。監視センサLは、反射光に基づいて点群データを生成し、記憶部Dに記憶する。
【0041】
検出部Sにおいて判定部Hは、例えば、監視センサLにより検出された検出値を利用して積載部MSの状態と、積載部MSに載置された土Rの状態を判定する。判定部Hは、例えば、記憶部Dに記憶された監視センサLの検出値を教師データとし、ニューラルネットワークを利用した機械学習に基づいて積載部MSの状態と、積載部MSに載置された土Rの状態を判定した判定結果を出力する。教師データの作成においては、記憶部Dに記憶された点群データに対して積載部MSの状態がラベリングされる。
【0042】
ラベリングは、作業者が手作業により入力してもよいし、判定部Hにより自動的に処理されてもよい。ラベリングは、膨大な数のデータが存在する場合、多大な労力を要するため、判定部Hにより自動的又は半自動的に処理されてもよい。まず、点群データが監視センサLにより取得された際に、作業者は、目視に基づいて車両Mnの積載部MSを監視し、手作業により積載部MSの状態変化を記録した表計算データを作成する。
【0043】
表計算データには、例えば、13:00 carry→13:05 dump up→13:06 empty→…. のように、時刻と積載部MSの状態とを関連付けた作業情報を記録する。次に、この記録を用いて、ある時刻における車両Mnの状態を把握し、点群データと積載部MSの状態とを時刻データに基づいて関連付け、自動ラベリングを実施する。上述した積載部MSの状態の記録によれば、13:00から13:05の間に取得した点群データにcarry のラベリングを自動的に付与する。
【0044】
このように点群データ取得の際に手作業で作成した車両Mnの状態を記録した表計算データを用いることで、点群データへのcarry, dump up, empty等の積載部MSの状態を示すラベリングを自動化し、判定部Hによる機械学習に用いられる教師データの作成に必要な労力を削減することができる。
【0045】
点群データには、不要なデータも含まれる。データ量を削減するため、点群データが加工される。監視センサLは、車両Mnの積載部MS以外にもレーザ光L1を照射し点群データとして計測する。点群データの容量を削減するため、積載部MSの状態を認識するため、積載部MS以外の不要な点データが削除される。不必要な点データは、車両Mnの積載部MSが点データとなり得る座標の範囲を作業者による処理に基づいて設定する。この範囲は、例えば、座標におけるパラメータ(-5<x<5,y<10など)に設定される。点群データにおいては、パラメータにより設定された範囲以外の点データが自動的に削除される。
【0046】
次に、点群データは、機械学習に利用可能なデータ構造に変換される。3D-Lidarによって生成される点群データは、照射したレーザ光L1の反射光に基づいて生成されるため、点データの数が一定では無いという特性を有する。そのため、点群データは、例えば、100 pixel*100pixelの画像等の一定のデータ構造に変換される。点群データは、例えば、グリッドデータに変換する場合、xyzの3次元座標空間を正立方体で表現し、その立方体に計測した点データが存在するか否かが確認される。
【0047】
図3(A)に示されるように、二次元グリッドを用いて点群データの変換の原理を説明すると、点データPは、格子状に仕切られた各単位グリッドに属するように対応付けられる。図3(B)に示されるように、各単位グリッドに属する点データPは、二次元グリッド内の各単位グリッドにおいて数値データに変換される。点データPが存在する単位グリッドにおいては、点データPは数値データ「1」に変換される。点データPが存在しない単位グリッドにおいては、数値データ「0」に変換される。
【0048】
図3(A)に示されるように、所定の単位グリッドQ内に複数の点データPが存在する場合がある。図3(B)に示されるように、対応する数値データの所定の単位グリッドQにおいて、複数の点データPは、数値データ「1」に変換される。上記処理と同様に、3次元の点群データは、三次元グリッドに配置された数値データに変換される。
【0049】
図4(A)には、積載部MSに土Rが載置された状態が示されている。図4(B)には、図4(A)の状態において計測された点群データを変換したグリッドデータが示されている。第1領域U1や第2領域U2に示される点群データは、3D-Lidarにより計測された点データである。各立方体Wは、点群データをグリッドデータに変換した際に数値「1」に変換された所である。ここで立方体Wの大きさは、機械学習においてチューニングされるパラメータとなる。グリッドデータは、車両Mnの積載部MSに載置された土Rの表面形状を示している。図示するように、点群データは、グリッドにおける立方体に変換されることにより、3D-Lidarが取得した点データの数に依存せず、機械学習に利用可能なデータ構造に変換することができる。このとき、判定部Hは、グリッドデータに基づいて土Rの積載量を算出してもよい。
【0050】
次に、変換された点群データを教師データとし、判定部Hは、積載部MSに載置された土Rを判定可能とする様に、ニューラルネットワークに基づく機械学習を行い、機械学習に用いられるパラメータを調整する。この時、ニューラルネットワークに入力する点群データをグリッドデータに変換させるプログラムも記憶部Dに記憶する。記憶部Dに記憶されたプログラムは、演算部14に3D-Lidarが生成した点群データをニューラルネットワークへ入力する前にデータ変換する処理を実行させる。
【0051】
機械学習を行った後、調整されたパラメータは、記憶部Dに記憶される。判定部Hは、パラメータが調整されたニューラルネットワークに基づいて、監視センサLにより取得され、変換された積載部MSの状態を示す点群データを利用して積載部MSの状態の判定結果をリアルタイムに出力する。判定部Hは、所定の周期において車両Mnの積載部MSの状態を判定し、判定結果を出力する。実施形態の検出部Sは、処理能力に応じて0.1秒毎に車両Mnの積載部MSの状態を判定し、判定結果を出力した。
【0052】
図5には、監視センサLにより取得された車両Mnの積載部MSの点群データを利用したニューラルネットワークを用いた判定結果を含む表示画像Z1が示されている。図示するように、表示画像Z1には、積載部MSにおける運土情報が表示されている。運土情報には、積載部MSがcarry(運搬中)であるという作業情報と、点群データとが示されている。
【0053】
判定部Hの精度を向上させるため、ニューラルネットワークを用いた判定処理に、処理を順次切り替え可能なステートマシンが組み合わされてもよい。車両Mnの積載部MSの状態は、「empty:空荷」→「carry:運搬」→「dump up:積み下ろし」→「empty空荷」と循環する性質を利用し、判定部Hが車両Mnの積載部MSの状態の変化を認識した場合に、ステートマシンに基づいて車両Mnの積載部MSの状態を次に遷移する状態に変更する。
【0054】
例えば、ステートマシンの状態がemptyで判定部Hがcarryと判定した場合(実際には車両Mnの積載部MSに土Rを積み込み始めたタイミング)においては、ステートマシンの状態をcarryに変更する。ステートマシンの状態がemptyである場合において、判定部Hが車両Mnの積載部MSの状態をdump-upと誤認識した場合、判定部Hの判定結果を誤りとしてステートマシンの状態をemptyに留め、判定部Hは、ステートマシンの状態を利用して判定結果を修正する。
【0055】
上述したように、ステートマシンにより車両Mnの積載部MSの状態を管理することにより、判定部Hが誤認識した場合でも、判定部Hにおける誤認識を修正することが可能になる。(例えば、車両Mnの積載部MSが空荷であり、ステートマシンの状態がemptyの状態において車両Mnが移動している際に、積載部MSの上部が木で覆われた場合において、判定部Hが積載部MSの状態をdump-upと判定した場合、ステートマシンの状態を参照することにより、判定部Hの判定結果をemptyに修正することができる。
【0056】
判定部Hは、ステートマシンの状態が変化した時に、車両Mnの位置情報と、変化した車両Mnの作業内容に関する作業情報とを含む運土情報を管理装置10に送信する。このとき、判定部Hは、車両Mnの積載部MSに積載された土Rの積載量を含む運土情報を管理装置10に送信してもよい。
【0057】
管理装置10には、複数の車両Mnから複数の運土情報が送信され、集約される。管理装置10は、複数の運土情報に基づいて、いずれかの車両Mnが管理対象領域内における第1位置において土Rを積み込み、第2位置において土Rを積み下ろしたかという情報を集積し、土の流通状態をリアルタイムに管理することができる。管理装置10は、管理対象領域内の複数の車両Mnから送信された運土情報を統合管理し、管理対象領域全体の運土管理を実現するクラウドサーバに構成されている。
【0058】
図6には、施工管理システム1における処理が概略的に示されている。車両Mnにおいて検出部Sが積載部MSに載置された土Rの状態を検出し、検出値に基づいて運土情報Fnを生成する。検出部Sは、ネットワークNWを介して運土情報Fnを管理装置10に送信する。複数の車両Mnから送信された複数の運土情報Fnは、演算部14により統合処理され記憶部16に記憶される。演算部14には、例えば、データを統合処理するデータパイプラインが設けられている。
【0059】
管理装置10により受信される運土情報Fnには、車両Mnの作業情報と位置情報とを含んでいる。演算部14は、データパイプラインによる処理に基づいて、運土情報Fnに管理対象領域において設定されたエリア情報、土の種類などの施工現場の情報を追加する。データパイプラインにより処理されたデータは、記憶部16に記憶される。演算部14は、記憶されたデータに基づいて、施工管理者向けに車両Mnの運土管理情報Kを提供する。
【0060】
図7に示されるように、演算部14は、例えば、表示部18を制御して車両Mnが積土した位置と盛土した位置を地図画像Z2上に表示させる。施工管理者は管理装置10にアクセスし、運土管理情報Kを取得し、管理対象領域Eにおける運土管理を行うことができる。また、演算部14は、統合処理された運土情報Fnに基づいて、管理対象領域E内の第1位置において積み上げられた土Rがどのくらいの土量において管理対象領域E内の第2位置に移動したかを管理する集計情報を含む運土帳票CHを自動作成もすることができる。
【0061】
管理装置10は、施工管理者のニーズに応じて様々な情報を生成し、提供してもよい。管理装置10は、様々なクラウドサービスを用いて実現可能であり、ローカルに配置したサーバにおいて構成されていてもよい。
【0062】
図8には、施工管理システムに搭載されたコンピュータを構成する管理装置10を用いた施工管理方法がフローチャートにより示されている。車両Mnに設けられた検出部Sにより生成された、車両が行う運土に関する作業内容と車両の位置とを含む運土情報Fnを複数の車両Mnから取得する(ステップS100)。複数の運土情報Fnを集約する(ステップS102)。運搬する土の量を自動集計する集計情報を生成する(ステップS104)。複数の運土情報Fnに基づいて複数の車両Mnと地図データとを統合する(ステップS106)。集計情報に基づいて、土Rの流通状態をリアルタイムに管理する運土帳票CHを生成する(ステップS108)。
【0063】
上述したように施工管理システム1によれば、複数の車両Mnの運土情報Fnを統合して管理対象領域内の複数の車両が行う土Rの流通をリアルタイムに管理することができる。施工管理システム1によれば、運土帳票CHを作業者の手作業に基づいて生成していた従来手法に比して、運土帳票CHを自動生成し、正確で、且つ効率的に土Rの流通を管理することができる。施工管理システム1によれば、車両Mnの運転手から提出される管理簿の不正確性を解消すると共に、運土帳票の作成の労力を大幅に低減することができる。施工管理システム1によれば、現場施工管理者は、信頼性の高いデータを自動的に取得できるため、原価管理の正確性向上とともに生産性を向上することができる。
【0064】
上述した判定部H、演算部14は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。これらの各機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め記憶部16に設けられたHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、監視センサLは、Laidarだけでなく、カメラを用いた撮像データを取得してもよい。判定部Hは、撮像データを利用した機械学習に基づいて積載部MSの状態を判定してもよい。判定部Hの判定処理は、管理装置10側において実行されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 施工管理システム
10 管理装置
CH 運土帳票
E 管理対象領域
Fn 運土情報
Mn 車両
MS 積載部
R 土
S 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8