(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046994
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】表示装置及びソースドライバ
(51)【国際特許分類】
G09G 3/20 20060101AFI20240329BHJP
G09G 3/36 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G09G3/20 670M
G09G3/36
G09G3/20 611C
G09G3/20 623R
G09G3/20 623A
G09G3/20 623V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152399
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 俊佑
【テーマコード(参考)】
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
5C006AC21
5C006AF43
5C006AF52
5C006AF54
5C006AF65
5C006AF71
5C006BB11
5C006BC03
5C006BC11
5C006BC20
5C006BC23
5C006BC24
5C006BF24
5C006BF25
5C006BF26
5C006BF33
5C006BF34
5C006FA32
5C080BB05
5C080DD12
5C080DD14
5C080FF09
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
(57)【要約】
【課題】データ線の時分割駆動に用いるセレクト信号を出力するバッファ間での貫通電流の発生を抑える。
【解決手段】階調電圧信号を出力する複数のソースドライバと、出力された階調電圧信号を複数のデータ線に切替可能に供給するセレクタと、を含む。複数のソースドライバは、切替信号を出力する第1の出力バッファを有する第1のソースドライバ及び第2の出力バッファを有する第2のドライバを含む。第1の出力バッファは、切替信号の出力端を介して接続され且つ相補的にオンオフする第1及び第2トランジスタを有する。第2の出力バッファは、切替信号の出力端を介して接続され且つ相補的にオンオフする第3及び第4トランジスタを有する。第1及び第2の出力バッファの出力端は電気的に接続され、第1のドライバは、出力端間で貫通電流が発生する状態になったことを検出する異常検出回路を有する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のデータ線及び複数本のゲート線と、前記複数本のデータ線と前記複数本のゲート線との交差部の各々にマトリクス状に設けられた複数個の画素部と、を有するディスプレイと、
各々が映像データ信号に基づいて階調電圧信号を出力する複数のソースドライバと、
切替信号の供給を受け、前記複数のソースドライバの各々から出力された前記階調電圧信号を前記複数本のデータ線のうちの2以上のデータ線に前記切替信号に応じて切替可能に夫々供給するセレクタと、
を含み、
前記複数のソースドライバは、前記切替信号を出力する第1の出力バッファを有する第1のソースドライバ及び前記切替信号を出力する第2の出力バッファを有する第2のソースドライバを含み、
前記第1の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第1のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けて相補的にオン及びオフとなる第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、
前記第2の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第2のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けて相補的にオン及びオフとなる第3トランジスタ及び第4トランジスタを含み、
前記第1の出力バッファ及び前記第2の出力バッファは、各々の前記出力端同士が電気的に接続され、
前記第1のソースドライバは、前記第1の出力バッファの前記出力端と前記第2の出力バッファの前記出力端との間で貫通電流が発生する状態になったことを検出する異常検出回路を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記異常検出回路は、前記第1のノードの電位及び前記第2のノードの電位に基づいて、前記貫通電流が発生する状態になったことを検出することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記異常検出回路は、第1入力端が前記第1のノードに接続されるとともに第2入力端が前記第2のノードに接続され、出力端から前記第1のノードの電位と前記第2のノードの電位との排他的論理和を出力する排他的論理和回路を含むことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1トランジスタは、第1端に電源電圧の印加を受け且つ第2端が前記第1のノードに接続された第1導電型のトランジスタであり、
前記第2トランジスタは、第1端が接地され且つ第2端が前記第1のノードに接続された第2導電型のトランジスタであり、
前記第3トランジスタは、第1端に電源電圧の印加を受け且つ第2端が前記第2のノードに接続された前記第1導電型のトランジスタであり、
前記第4トランジスタは、第1端が接地され且つ第2端が前記第2のノードに接続された前記第2導電型のトランジスタであることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記異常検出回路は、前記第1の出力バッファ及び前記第2の出力バッファに向けてテスト信号を出力し、
前記第1の出力バッファは、前記テスト信号の受信に応じて第1のフィードバック信号を前記異常検出回路に向けて送信し、
前記第2の出力バッファは、前記テスト信号の受信に応じて第2のフィードバック信号を前記異常検出回路に向けて送信し、
前記異常検出回路は、前記第1のフィードバック信号を受信したタイミングと前記第2のフィードバック信号を受信したタイミングとの時間差に基づいて、前記貫通電流が発生する状態になったことを検出することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数のソースドライバは、前記複数本のゲート線の延伸方向に沿って配列され、
前記第1のソースドライバ及び前記第2のソースドライバは、配列された前記複数のソースドライバのうちの両端部に位置するソースドライバであり、
前記第1の出力バッファ及び前記第2の出力バッファの各々の出力端は、前記ディスプレイを構成するパネル上で短絡されることにより、電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の表示装置。
【請求項7】
複数本のデータ線及び複数本のゲート線と、前記複数本のデータ線と前記複数本のゲート線との交差部の各々にマトリクス状に設けられた複数個の画素部と、を有する表示パネルに接続され、映像データ信号に基づいて階調電圧信号を出力するソースドライバであって、
前記ソースドライバから出力された前記階調電圧信号を前記複数本のデータ線のうちの2以上のデータ線に切替信号に応じて切替可能に供給するセレクタに接続され、各々が前記階調電圧信号を出力する複数のドライバICを含み、
前記複数のドライバICは、前記切替信号を出力する第1の出力バッファを有する第1のドライバIC及び前記切替信号を出力する第2の出力バッファを有する第2のドライバICを含み、
前記第1の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第1のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けて相補的にオン及びオフとなる第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、
前記第2の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第2のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けて相補的にオン及びオフとなる第3トランジスタ及び第4トランジスタを含み、
前記第1の出力バッファ及び前記第2の出力バッファは、各々の前記出力端が電気的に接続され、
前記第1のドライバICは、前記第1の出力バッファの出力端と前記第2の出力バッファの出力端との間で貫通電流が発生する状態になったことを検出する異常検出回路を有することを特徴とするソースドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及びソースドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置における表示パネルの横長化に伴い、ソースドライバを複数のドライバICによって構成する仕様が主流となっている。複数のドライバICは、ゲート線の延伸方向に沿って配置され、例えば隣接するドライバIC同士がカスケード接続されている。
【0003】
また、チップ面積の増大を抑えるため、ドライバICに設けられた出力アンプがそれぞれ複数のデータ線を駆動できるように、データ線の時分割駆動を行う表示装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
データ線の時分割駆動を行う表示装置では、ソースドライバと表示パネルとの間に設けられたマルチプレクスセレクタが、ソースドライバから供給されたセレクト信号に基づいて、駆動対象となるデータ線の切り替えを順次行う。ソースドライバが複数のドライバICから構成されている場合、ゲート線の延伸方向に沿って配置された複数のドライバICのうちの両端に位置するドライバIC(以下、左端のドライバIC及び右端のドライバICと称する)が、セレクト信号をマルチプレクスセレクタにそれぞれ供給する。
【0006】
セレクト信号を出力するバッファは、例えば相補的に動作するように各々のドレイン同士が接続されたPチャネル型MOSトランジスタ(以下、PMOSと称する)及びNチャネル型MOSトランジスタ(以下、NMOSと称する)から構成されている。左端のドライバICのバッファの出力及び右端のドライバICのバッファの出力は、マルチプレクスセレクタを介して互いに接続され、パネル上でショートされている。
【0007】
左端のドライバIC及び右端のドライバICの各々のバッファは、互いに同じタイミングでPMOS及びNMOSが相補的にオン及びオフとなるように動作することが好ましい。しかし、各ドライバICに供給される映像信号の信号遅延等により、各々のバッファの動作タイミングに時間差が生じる場合がある。この時間差に起因して、左端のドライバICのバッファの出力と右端のドライバICのバッファの出力との間で、貫通電流が発生するおそれがある。
【0008】
例えば、左端のドライバICのバッファを構成するPMOSがオンになるタイミングと右端のドライバICのバッファを構成するPMOSがオンになるタイミングとに時間差が生じた場合、左端のドライバICではPMOSがオンであるにもかかわらず、右端のドライバICではNMOSがオンになる時間が発生し、バッファ間で貫通電流が発生する。同様に、右端のドライバICではPMOSがオンであるにもかかわらず、左端のドライバICではNMOSがオンになる時間が発生し、バッファ間で貫通電流が発生する。
【0009】
このように、両端のドライバICのバッファの動作タイミングに時間差が生じることに起因して、バッファ間で貫通電流が発生するという問題があった。また、貫通電流の発生により、EMI(Electro Magnetic Interference)ノイズが発生するおそれがあるという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、複数のドライバICからなるソースドライバからのセレクト信号に基づいてデータ線を時分割で駆動する表示装置において、セレクト信号を出力するバッファ間における貫通電流の発生を抑えることが可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る表示装置は、複数本のデータ線及び複数本のゲート線と、前記複数本のデータ線と前記複数本のゲート線との交差部の各々にマトリクス状に設けられた複数個の画素部と、を有するディスプレイと、各々が映像データ信号に基づいて階調電圧信号を出力する複数のソースドライバと、切替信号の供給を受け、前記複数のソースドライバの各々から出力された前記階調電圧信号を前記複数本のデータ線のうちの2以上のデータ線に前記切替信号に応じて切替可能に夫々供給するセレクタと、を含み、前記複数のソースドライバは、前記切替信号を出力する第1の出力バッファを有する第1のソースドライバ及び前記切替信号を出力する第2の出力バッファを有する第2のソースドライバを含み、前記第1の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第1のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けて相補的にオン及びオフとなる第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、前記第2の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第2のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けて相補的にオン及びオフとなる第3トランジスタ及び第4トランジスタを含み、前記第1の出力バッファ及び前記第2の出力バッファは、各々の前記出力端同士が電気的に接続され、前記第1のソースドライバは、前記第1の出力バッファの前記出力端と前記第2の出力バッファの前記出力端との間で貫通電流が発生する状態になったことを検出する異常検出回路を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るソースドライバは、複数本のデータ線及び複数本のゲート線と、前記複数本のデータ線と前記複数本のゲート線との交差部の各々にマトリクス状に設けられた複数個の画素部と、を有する表示パネルに接続され、映像データ信号に基づいて階調電圧信号を出力するソースドライバであって、前記ソースドライバから出力された前記階調電圧信号を前記複数本のデータ線のうちの2以上のデータ線に切替信号に応じて切替可能に供給するセレクタに接続され、各々が前記階調電圧信号を出力する複数のドライバICを含み、前記複数のドライバICは、前記切替信号を出力する第1の出力バッファを有する第1のドライバIC及び前記切替信号を出力する第2の出力バッファを有する第2のドライバICを含み、前記第1の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第1のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けて相補的にオン及びオフとなる第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、前記第2の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第2のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けて相補的にオン及びオフとなる第3トランジスタ及び第4トランジスタを含み、前記第1の出力バッファ及び前記第2の出力バッファは、各々の前記出力端が電気的に接続され、前記第1のドライバICは、前記第1の出力バッファの出力端と前記第2の出力バッファの出力端との間で貫通電流が発生する状態になったことを検出する異常検出回路を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る表示装置によれば、データ線の時分割駆動における切り替えを制御するためのセレクト信号を出力するバッファ間における貫通電流の発生を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1の表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図2A】両端のドライバICにおけるバッファの構成を示す図である。
【
図2B】バッファの印加電圧の変化及び貫通電流の発生を示すタイムチャートである。
【
図3A】実施例1の異常電流検出回路の構成を示す回路図である。
【
図3B】排他的論理和回路の真理値表を示す図である。
【
図4】実施例2の異常電流検出回路を含むドライバICの構成を示すブロック図である。
【
図5】実施例2の異常検出における各信号の信号波形の例を示すタイムチャートである。
【
図6】変形例の表示装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0016】
図1は、本発明の実施例1に係る表示装置100の構成を示すブロック図である。表示装置100は、表示ディスプレイ11、マスターIC12、スレーブIC13-1~13-n、マルチプレクスセレクタ14、GIP15L及び15Rを含む。
【0017】
表示ディスプレイ11は、複数の画素部がマトリクス状に配置された半導体基板から構成されている。表示ディスプレイ11は、水平走査ラインである複数本のゲート線S1~Smと、これに交差して直交するように配された複数本のデータ線D1~Dnと、を有する。画素部の各々は、ゲート線S1~Sm及びデータ線D1~Dnの交差部に設けられている。
【0018】
マスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nは、ソースドライバを構成するドライバIC群である。マスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nは、ゲート線S1~Smの延伸方向に沿って配列されている。
【0019】
マスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nの各々は、外部から供給された映像信号VDに基づいて、画素部に印加するための階調電圧信号を生成する。マスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nは、生成した階調電圧信号をデータ線D1~Dnに出力する。映像信号VDは、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)によるデータ伝送によって供給される。
【0020】
マルチプレクスセレクタ14は、表示ディスプレイ11とマスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nとの間に設けられ、マスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nの出力アンプから出力された階調電圧信号を、複数のデータ線(本実施例では、1つの出力アンプにつき3本のデータ線)に切替可能に供給するセレクタである。マルチプレクスセレクタ14は、マスターIC12及びスレーブIC13-nから供給されたセレクト信号SELに基づいて切り替えを行う。これにより、データ線D1~Dnの時分割駆動が行われる。
【0021】
GIP15L及び15Rは、GIP(Gate In Panel)技術を用いてパネル上に搭載されたゲートドライバである。GIP15Lは、マスターIC12からゲート制御信号の供給を受け、ゲート制御信号に含まれるクロックタイミングに基づいて、ゲート線S1~Smにゲート信号を順次供給する。また、GIP15Rは、スレーブIC13-nからゲート制御信号の供給を受け、ゲート制御信号に含まれるクロックタイミングに基づいて、ゲート線S1~Smにゲート信号を順次供給する。
【0022】
ソースドライバを構成するマスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nの各々は、階調電圧信号を出力するための複数の出力アンプを有している。本実施例では、出力アンプ1つ毎に3本のデータ線が切替可能に接続されており、マルチプレクスセレクタ14の切り替え動作に応じてデータ線の時分割駆動を行うことが可能に構成されている。
【0023】
ゲート線S1~Smの延伸方向に配列されたマスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nのうち、両端に位置するマスターIC12及びスレーブIC13-nは、マルチプレクスセレクタ14の切り替えタイミングを制御するセレクト信号SELを、マルチプレクスセレクタ14に供給する。
【0024】
マスターIC12は、セレクト信号SELを出力するためのバッファBUF1を有する。また、スレーブIC13-nは、セレクト信号SELを出力するためのバッファBUFnを有する。本実施例では、マスターIC12に設けられたタイミングコントローラ(
図1では図示を省略)により、バッファBUF1及びバッファBUFnからのセレクト信号SELの出力タイミングの調整が行われる。
【0025】
また、マスターIC12は、異常電流検出回路21を有する。異常電流検出回路21は、マスターIC12のバッファBUF1とスレーブIC13-nのバッファBUFnとの間で貫通電流が発生する状態となったことを検出する検出回路である。異常電流検出回路21による検出結果(判定結果)は、マスターIC12内のタイミングコントローラに供給される。
【0026】
図2Aは、マスターIC12のバッファBUF1及びスレーブIC13-nのBUFnの構成を示す図である。
【0027】
バッファBUF1は、トランジスタPM1及びNM1から構成されている。また、バッファBUFnは、トランジスタPM2及びNM2から構成されている。本実施例では、各トランジスタは同じサイズ(ゲート幅、ゲート長)を有する。
【0028】
トランジスタPM1は、第1導電型であるPチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、PMOSトランジスタ)である。トランジスタPM1のソースは、電源電圧VDDの供給ラインに接続されている。
【0029】
トランジスタNM1は、第2導電型であるNチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、NMOSトランジスタ)である。トランジスタNM1のソースは、接地されている。トランジスタPM1及びNM1の各々のドレインは、ノードn1を介して互いに接続されている。ノードn1は、バッファBUF1の信号出力端である。すなわち、ノードn1からセレクト信号SELが出力され、マルチプレクスセレクタ14に供給される。
【0030】
トランジスタPM1及びNM1の各々のゲートには、共通の入力電圧VG1が印加される。入力電圧VG1の信号レベルに応じて、トランジスタPM1及びNM1は相補的にON及びOFFとなる。具体的には、VG1がLレベル(論理レベル0)のとき、トランジスタPM1はON、トランジスタNM1はOFFとなる。また、VG1がHレベル(論理レベル1)のとき、トランジスタPM1はOFF、トランジスタNM1はONとなる。
【0031】
トランジスタPM2は、第1導電型であるPチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、PMOSトランジスタ)である。トランジスタPM2のソースは、電源電圧VDDの供給ラインに接続されている。
【0032】
トランジスタNM2は、第2導電型であるNチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、NMOSトランジスタ)である。トランジスタNM2のソースは、接地されている。トランジスタPM2及びNM2の各々のドレインは、ノードn2を介して互いに接続されている。ノードn2は、バッファBUFnの信号出力端である。すなわち、ノードn2からセレクト信号SELが出力され、マルチプレクスセレクタ14に供給される。
【0033】
トランジスタPM2及びNM2の各々のゲートには、共通の入力電圧VG2が印加される。入力電圧VG2の信号レベルに応じて、トランジスタPM2及びNM2は相補的にON及びOFFとなる。具体的には、VG2がLレベル(論理レベル0)のとき、トランジスタPM2はON、トランジスタNM2はOFFとなる。また、VG2がHレベル(論理レベル1)のとき、トランジスタPM2はOFF、トランジスタNM2はONとなる。
【0034】
バッファBUF1の信号出力端であるノードn1及びバッファBUFnの信号出力端であるノードn2は、表示ディスプレイ11を構成するパネル上で、例えばマルチプレクスセレクタ14の配線を介してショートされている。
図2Aでは、ノードn1とノードn2とがショートされた接続部分を、模式的に接続ラインL1として示している。また、
図2Aの接続ラインL1の抵抗及び容量は、マルチプレクスセレクタ14内の配線の寄生成分及び切替スイッチ(トランジスタ)の寄生容量を等価回路で表したものである。
【0035】
バッファBUF1及びバッファBUFnは、各々のPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタが同じタイミングでオン及びオフとなるように動作することが好ましい。しかし、入力電圧VG1及びVG2の電圧変化のタイミングにずれが生じると、バッファBUF1及びBUFnの動作のタイミングにずれが生じ、接続ラインL1において貫通電流が発生するおそれがある。
【0036】
図2Bは、バッファBUF1及びBUFnの動作のタイミングにずれが生じる場合の入力電圧及び電流の時間変化を示すタイムチャートである。
【0037】
期間T1では、入力電圧VG1と入力電圧VG2の電圧変化のタイミングにずれが生じておらず、互いに同じタイミングでHレベル及びLレベルに変化する。このため、バッファBUF1のトランジスタPM1とバッファBUFnのトランジスタPM2、バッファBUF1のトランジスタNM1とバッファBUFnのトランジスタNM2は、それぞれ同じタイミングでON及びOFFとなる。
【0038】
したがって、期間T1では、トランジスタPM1及びPM2がOFFのタイミングでトランジスタNM1及びNM2がONとなり、トランジスタNM1のドレインソース間に電流In1、トランジスタNM2のドレインソース間に電流In2がそれぞれ流れる。また、トランジスタPM1及びPM2がONのタイミングでトランジスタNM1及びNM2がOFFとなり、トランジスタPM1のソースドレイン間に電流Ip1、トランジスタPM2のソースドレイン間に電流Ip2がそれぞれ流れる。なお、上記の通り各トランジスタは同じサイズを有するため、電流In1と電流In2、電流Ip1と電流Ip2はそれぞれ同じ信号波形となる。
【0039】
期間T2は、入力電圧VG1及び入力電圧VG2の電圧変化のタイミングに時間差が生じている期間である。期間T2の開始直後に、入力電圧VG1がHレベルで且つ入力電圧VG2はLレベルとなる期間d1が生じている。期間d1では、入力電圧VG1がHレベルであるため、バッファBUF1のトランジスタPM1はOFF、トランジスタNM1はONの状態となる。一方、入力電圧VG2はLレベルであるため、バッファBUFnのトランジスタPM2はON、トランジスタNM2はOFFの状態となる。したがって、電流がトランジスタPM2から接続ラインL1を介してトランジスタNM1に向かって流れる、所謂貫通電流が発生する。
【0040】
また、期間d2では、入力電圧VG1がLレベルで且つ入力電圧VG2がHレベルとなる。入力電圧VG1がLレベルであるため、バッファBUF1のトランジスタPM1はON、トランジスタNM1はOFFの状態となる。一方、入力電圧VG2はHレベルであるため、バッファBUFnのトランジスタPM2はOFF、トランジスタNM2はONの状態となる。したがって、電流がトランジスタPM1から接続ラインL1を介してトランジスタNM2に向かって流れる、所謂貫通電流が発生する。
【0041】
図1に示す異常電流検出回路21は、このような貫通電流の発生を検出する回路である。本実施例では、異常電流検出回路21は、バッファBUF1内のノードn1の電位及びバッファBUFn内のノードn2の電位に基づいて、異常電流の発生を検出する。
【0042】
図3Aは、異常電流検出回路21の構成を示す回路図である。異常電流検出回路21は、排他的論理和回路XORから構成されている。
【0043】
排他的論理和回路XORの第1の入力端は、バッファBUF1のトランジスタPM1及びNM1の各々のドレインを接続するノードであるノードn1に接続されている。排他的論理和回路XORの第1の入力端には、ノードn1の電位を“H”又は“L”の2値の電圧レベルで示す第1の入力電圧O1が入力される。
【0044】
排他的論理和回路XORの第2の入力端は、バッファBUFnのトランジスタPM2及びNM2の各々のドレインを接続するノードであるノードn2に接続されている。排他的論理和回路XORの第2の入力端には、ノードn2の電位を“H”又は“L”の2値の電圧レベルで示す第2の入力電圧O2が入力される。
【0045】
排他的論理和回路XORは、第1の入力電圧O1及び第2の入力電圧O2の排他的論理和を判定結果JDとして出力する。
【0046】
上記の通り、バッファBUF1及びBUFnは同じタイミングで動作することが好ましく、バッファBUF1及びBUFnの出力端の電圧レベルがHレベル又はLレベルに揃っている状態が「正常」な状態となる。一方、バッファBUF1及びBUFnの動作タイミングに時間差が生じた場合、バッファ間の接続ラインに異常電流(貫通電流)が流れる「異常」な状態となる。排他的論理和回路XORは、バッファ間が「正常」であることを示すLレベルの信号又は「異常」であることを示すHレベルの判定結果JDを出力する。
【0047】
図3Bは、排他的論理和回路XORの真理値表を示す図である。第1の入力電圧O1がHレベル、第2の入力電圧O2がLレベルである場合、排他的論理和回路XORの出力である判定結果JDはHレベル、すなわち「異常」を示す判定結果となる。また、第1の入力電圧O1がLレベル、第2の入力電圧O2がHレベルである場合、排他的論理和回路XORの出力である判定結果JDはHレベル、すなわち「異常」を示す判定結果となる。
【0048】
一方、第1の入力電圧O1及び第2の入力電圧O2がともにLレベルである場合、排他的論理和回路XORの出力である判定結果JDはLレベル、すなわち「正常」を示す判定結果となる。また、第1の入力電圧O1及び第2の入力電圧O2がともにHレベルである場合、排他的論理和回路XORの出力である判定結果JDはLレベル、すなわち「正常」を示す判定結果となる。
【0049】
判定結果JDは、マスターIC12に設けられた図示せぬタイミングコントローラに供給される。マスターIC12内のタイミングコントローラは、判定結果JDに基づいて、バッファBUF1に印加される入力電圧VG1の電圧変化のタイミングと、スレーブIC13-nのバッファBUFnに印加される入力電圧VG2の電圧変化のタイミングに時間差が生じないように、入力電圧VG1及びVG2の出力のタイミング調整を行う。これにより、貫通電流の発生が防止される。
【0050】
以上のように、本実施例の表示装置100では、マスターIC12に異常電流検出回路21が設けられ、バッファBUF1とBUFnとの間に貫通電流が発生する状態になっているか否かを検出する。異常電流検出回路21は、排他的論理和回路XORから構成され、バッファBUF1を構成するトランジスタPM1及びNM1の接続ノードの電位とバッファBUFnを構成するトランジスタPM2及びNM2の接続ノードの電位とに基づいて検出を行う。
【0051】
本実施例の表示装置100によれば、データ線を時分割で駆動する表示装置において、時分割駆動のためのセレクト信号SELを出力するバッファ間における貫通電流の発生を抑えることが可能となる。また、貫通電流の発生を抑えることにより、EMIノイズを低減することが可能となる。
バッファBUF1Aは、実施例1のバッファBUF1と同様の構成を有し、入力電圧VG1の印加を受けてセレクト信号SELを出力する出力バッファである。同様に、バッファBUFnAは、実施例1のバッファBUFnと同様の構成を有し、入力電圧VG2の印加を受けてセレクト信号SELを出力する出力バッファである。
タイミングコントローラ32は、接続ラインLA1によってバッファBUF1Aに接続されている。タイミングコントローラ32は、接続ラインLA1を介して入力電圧VG1をバッファBUF1Aに供給する。
また、タイミングコントローラ32は、接続ラインLB1によってスレーブIC13-nのバッファBUFnAに接続されている。タイミングコントローラ32は、接続ラインLB1を介して入力電圧VG2をバッファBUFnAに供給する。
なお、接続ラインLB1は接続ラインLA1よりも長いため、入力電圧VG2が出力されてからバッファBUFnAに到達するまでの時間は、入力電圧VG1が出力されてからバッファBUF1Aに供給されるまでの時間よりも長い。このため、タイミングコントローラ32は、バッファBUF1Aに印加される入力電圧VG1の電圧変化のタイミングとバッファBUFnAに印加される入力電圧VG2の電圧変化のタイミングとを一致させるべく、入力電圧VG1及びVG2の出力のタイミングを調整する。
また、タイミングコントローラ32は、入力電圧VG1及びVG2の出力のタイミングを調整するためのテストパルスTP1及びTP2を出力し、これに応じてタイミング検出回路33から供給された受信タイミング信号RTを受信して、入力電圧VG1及びVG2の出力のタイミングの調整を行う。
タイミングコントローラ32は、所定のパルス幅を有する1パルスの信号であるテストパルスTP1を、接続ラインLA1を介してバッファBUF1Aに供給する。同様に、タイミングコントローラ32は、テストパルスTP1と同様の波形を有するテストパルスTP2を、接続ラインLB1を介してバッファBUFnAに供給する。
本実施例のバッファBUF1Aは、タイミングコントローラ32からのテストパルスTP1の受信に応じて、フィードバック信号FB1をタイミング検出回路33に供給する機能を有する。バッファBUF1Aは、接続ラインLA2によってタイミング検出回路33と接続されており、接続ラインLA2を介してフィードバック信号FB1をタイミング検出回路33に供給する。
また、本実施例のバッファBUFnAは、タイミングコントローラ32からのテストパルスTP2の受信に応じて、フィードバック信号FB2をタイミング検出回路33に供給する機能を有する。バッファBUFnAは、接続ラインLB2によってタイミング検出回路33と接続されており、接続ラインLB2を介してフィードバック信号FB2をタイミング検出回路33に供給する。
同様に、接続ラインLB1及びLB2も同じ長さを有し、テストパルスTP2がタイミングコントローラ32から出力されてバッファBUFnAに到達するまでの時間と、フィードバック信号FB2がバッファBUFnAから出力されてタイミング検出回路33に到達するまでの時間とが一致するように設計されている。
タイミング検出回路33は、フィードバック信号FB1及びフィードバック信号FB2を受信し、それぞれの受信タイミングを示す1パルスの信号を受信タイミング信号RTとして出力する。受信タイミング信号RTは、タイミングコントローラ32に供給される。
タイミングコントローラ32は、図示せぬパルスカウンタを有しており、受信タイミング信号RTを受信したタイミングの時間差を当該パルスカウンタで計測する。タイミングコントローラ32は、パルスカウンタによる計測結果に基づいて、入力電圧VG1及びVG2の出力のタイミングを調整する。
タイミングコントローラ32は、まず接続ライン(LB1)の距離が長いバッファBUFnAに向けて、テストパルスTP2を出力する。タイミングコントローラ32は、テストパルスTP2の出力からt1秒後に、接続ライン(LA1)の距離が短いバッファBUF1Aに向けて、テストパルスTP1を出力する。
なお、テストパルスTP1及びTP2の出力タイミングの時間差である“t1”は、接続ラインLA1及び接続ラインLB1の長さの差異に鑑みて設定されている。具体的には、接続ラインの長さ以外の要因による信号遅延がないと仮定した場合に、テストパルスTP1がバッファBUF1Aに到達する時間とテストパルスTP2がバッファBUFnAに到達する時間とが一致するように、時間差“t1”が設定されている。
タイミング検出回路33は、フィードバック信号FB1及びFB2を順次受信する。上記の通り、接続ラインの長さ以外の要因による信号遅延がないと仮定した場合、テストパルスTP2は、テストパルスTP1がバッファBUF1Aに到達するのと同時に、バッファBUFnに到達することになる。したがって、テストパルスと同じ長さの接続ラインを戻ってくるフィードバック信号FB1とフィードバック信号FB2の受信タイミングには、時間差“t1”が生じる。すなわち、接続ラインの長さ以外の要因による信号遅延がないと仮定した場合、タイミング検出回路33は、フィードバック信号FB1を受信してからt1秒後にフィードバック信号FB2を受信することになる。
タイミングコントローラ32は、受信タイミング信号RTを受信してからt1秒後にパルスカウンタを用いたパルスカウントを開始し、時間差Δtを計測する。計測された時間差Δtは、タイミングコントローラ32が入力電圧VG1及びVG2を出力した際の、バッファBUF1A及びBUFnAにおける受信タイミングの時間差に相当する時間差となる。したがって、タイミングコントローラ32は、計測した時間差Δtに基づいて、入力電圧VG1及びVG2の出力のタイミングを調整する。
すなわち、タイミング検出回路33によるフィードバック信号FB1及びFB2の受信に(t1+Δt)の時間差が生じている場合、入力電圧VG1及びVG2がそれぞれバッファBUF1A及びBUFnAに到達する時間にΔtの時間差が生じることになる。したがって、タイミングコントローラ32は、時間差Δtが小さくなるように出力タイミングの調整を行うことにより、入力電圧VG1がバッファBUF1Aに到達するタイミングと入力電圧VG2がバッファBUFnAに到達するタイミングとの時間差を小さくすることができる。
以上のように、本実施例の表示装置では、異常検出調整回路31(タイミングコントローラ32、タイミング検出回路33)がバッファBUF1A及びBUFnAに向けてテストパルス(TP1、TP2)を出力し、バッファBUF1A及びBUFnAからのフィードバック信号FB1及びFB1を受信したタイミングの時間差に基づいて、入力電圧VG1及びVG2の出力のタイミングを調整する。
本実施例の表示装置によれば、各バッファに供給される入力電圧のタイミングを揃えることにより、バッファ間における貫通電流の発生を抑えることが可能となる。また、貫通電流の発生を抑えることにより、EMIノイズを低減することが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例1では、異常電流検出回路21が排他的論理和回路XORから構成されている場合を例として説明した。しかし、異常電流検出回路の構成はこれに限られず、ノードn1の電位とノードn2の電位とに基づいて、貫通電流が発生する状態であるか否かを判定可能な回路構成であればよい。
また、上記実施例2では、接続ラインLA1とLA2とが同じ長さを有し、接続ラインLB1とLB2とが同じ長さを有する場合を例として説明した。しかし、接続ラインの長さの関係はこれに限られず、接続ラインの長さの差に起因したフィードバック信号FB1及びFB2の受信のタイミング差が、入力電圧VG1及びVG2の出力のタイミング差(上記実施例では、t1)に応じた既知のタイミング差となるように、接続ラインLA1とLA2、LB1とLB2がそれぞれ所定の関係を有する長さに設計されていればよい。
また、上記実施例では、セレクト信号SELを出力するバッファ間における貫通電流の発生を防止するために各バッファの動作タイミングを制御する場合を例として説明した。しかし、セレクト信号SELを出力するバッファの動作タイミングの調整を用いて、他の信号を出力するバッファの動作タイミングの調整を行ってもよい。
マスターIC12Bは、ゲート制御信号GCSを出力するためのバッファBUF1-2を有する。バッファBUF1-2から出力されたゲート制御信号GCSは、GIP15Lに供給される。バッファBUF1-2は、バッファBUF1の動作と連動したタイミングで動作し、ゲート制御信号GCSの出力を行う。
スレーブIC13-nBは、ゲート制御信号GCSを出力するためのバッファBUFn-2を有する。バッファBUFn-2から出力されたゲート制御信号GCSは、GIP15Rに供給される。バッファBUFn-2は、バッファBUFnの動作と連動したタイミングで動作し、ゲート制御信号GCSの出力を行う。
また、タイミングコントローラは、バッファBUF1及びBUFnの動作タイミングの制御と連動して、バッファBUF1-2及びバッファBUFn-2の動作タイミングの制御を行う。これにより、バッファBUF1-2から出力されたゲート制御信号GCSがGIP15Lに供給されるタイミングと、バッファBUFn-2から出力されたゲート制御信号GCSがGIP15Rに供給されるタイミングとを揃えることができる。