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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046997
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ウェットティシュー
(51)【国際特許分類】
   A47K 7/00 20060101AFI20240329BHJP
   A47L 13/17 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A47K7/00 E
A47L13/17 A
A47K7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152402
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
3B074
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA04
3B074AB01
3B074AC02
3B074CC03
(57)【要約】
【課題】薬液を含浸するシートに紙を用いて、六つ折り又はそれ以上に折り畳んだ状態で積層されたとしても、風合いとコンパクト性に優れ、かつ、破れにくいウェットティシューを提供する。
【解決手段】少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートに薬液を含浸させ、六つ折り又はそれ以上に折り畳んだ状態で積層されたウェットティシューであって、シートを、KES圧縮試験機で圧縮した際のWC(圧縮仕事量)が0.15gf・cm/cm以上0.65gf・cm/cm以下であり、シートにおける、湿潤時の引張強度が2.2N/25mm以上3.8N/25mm以下であることを特徴とする、ウェットティシューを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートに薬液を含浸させ、六つ折り又はそれ以上に折り畳んだ状態で積層されたウェットティシューであって、
前記シートを、KES圧縮試験機で圧縮した際のWC(圧縮仕事量)が0.15gf・cm/cm以上0.65gf・cm/cm以下であり、
前記シートにおける、湿潤時の引張強度が2.2N/25mm以上3.8N/25mm以下であることを特徴とする、ウェットティシュー。
【請求項2】
前記シートに、KES圧縮試験機によって50gf/cmの荷重をかけた際の前記シートの厚みをT、0.5gf/cmの荷重をかけた際の前記シートの厚みをTとしたときに、(T-T)/Tが0.40以上であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー。
【請求項3】
前記シートに、KES圧縮試験機によって50gf/cmの荷重をかけた際の前記シートの厚みTが、160μm以上440μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー。
【請求項4】
前記シートは、表面に抄紙機由来の凹凸のパターンを有し、
前記凹凸における、凹部と凸部を合わせた高さが100μm以上300μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製のシートに薬液を含浸させたウェットティシューに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットティシュー製品は、一般的に不織布や紙からなるシートに薬液を含浸させ、製造される。
【0003】
ウェットティシューの包装や容器のタイプとしては、ボトルタイプ、ピロータイプ、ハンディタイプ等様々である。中でも、外出先での手拭きや除菌作業の頻度が増加していることから、持ち運びに適したコンパクトな形状である、いわゆるハンディタイプの市場が広がっている。
【0004】
ハンディタイプは、折り畳まれたシートが積層されて、ポップアップせずに1枚ずつ取り出す製品が多く、コンパクト性や取り出し性が良好となるような折り方が施されている。
【0005】
そのようなハンディタイプのウェットティシューの文献として、例えば特許文献1には、包装袋上に開口部が設けられ、開口部上にシート状開閉蓋が設けられ、開口部の幅は15~30mm、長さが25~50mmであり、開口部の長さ方向両側が円弧形となり、ウェットティシューの積層体は複数枚の独立した1枚ティシューが折り畳まれた後、厚さ方向に互いに積層され、ティシュー折り畳み体の長さが70~80mm、幅が32.5~37.5mm、高さが6~20mmである、超ミニウェットティシュー包装体が開示されている。また、超ミニウェットティシュー包装体の長さは、83~105mm、幅が38.5~41mm、高さが8~22mmであり、使用時にシート状開閉蓋を開き、包装袋の隙間内からウェットティシューを引き出し、開閉蓋には剥離停止部が設置され、シート状開閉蓋の包装袋からの剥離を防止する旨も開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、開口部を有する袋状の袋本体と、開口部を開閉自在に覆う蓋材と、を備える包装体の内部に複数枚が積層された状態でウェットシートが収納され、開口部から1枚ずつ取り出されて使用されるウェットシート包装体において、ウェットシートは、包装体収納時に開口部と対向する位置の上面側に、長手方向又は幅方向に折られることで形成されたつまみ部と、長手方向又は幅方向の端部のうち、つまみ部が形成されていない方向の両端部が、下方に向けてS字型又はZ字型に折り畳まれて形成された折畳み部と、を備える、ウェットシート包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3220555号公報
【特許文献2】特開2013-075674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、近年の環境意識の高まりから、シートにプラスティックを使用しない紙製のウェットティシューが求められている。特にハンディタイプのような外出時に使用する製品においては、シートを使用した後の分別のしやすさや、生分解性を有する等の利点から、紙のシートであることの要望が高まっている。
しかしながら、ハンディタイプのシートに紙を用いる場合、コンパクトに折り畳むために、シートに折り目が多くなり、折り目部分でシートが破れやすくなる問題があった。
【0009】
折り目が付きにくくするために、折り加工を緩めると、コンパクトに積層することができず、持ち運び性が低下してしまう。また、破れを抑制するために紙の強度を高くすると、今度は風合いが悪くなってしまう。
さらに、シートに紙を用いると、シート同士が張り付きやすいために取り出しの際にシートが1枚ごとに出にくく、張り付いた状態で出てきやすい問題があった。
【0010】
このように紙をウェットティシューのシートに用いて、ハンディタイプの製品とする場合、風合いとコンパクト性に優れ、かつ、破れにくいウェットティシューとすることが困難であった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、薬液を含浸するシートに紙を用いて、六つ折り又はそれ以上に折り畳んだ状態で積層されたとしても、風合いとコンパクト性に優れ、かつ、破れにくいウェットティシューを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者は鋭意検討を行い、少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートに薬液を含浸させ、六つ折り又はそれ以上に折り畳んだ状態で積層されたウェットティシューにおいて、シートにおける、KES圧縮試験機で圧縮した際のWC(圧縮仕事量)、及び湿潤時の引張強度を、それぞれ所定の数値範囲内とすることで、風合いとコンパクト性に優れ、かつ、破れにくいウェットティシューとすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0013】
(1)本発明の第1の態様は、少なくともパルプ繊維を含む紙製のシートに薬液を含浸させ、六つ折り又はそれ以上に折り畳んだ状態で積層されたウェットティシューであって、前記シートを、KES圧縮試験機で圧縮した際のWC(圧縮仕事量)が0.15gf・cm/cm以上0.65gf・cm/cm以下であり、前記シートにおける、湿潤時の引張強度が2.2N/25mm以上3.8N/25mm以下であることを特徴とする、ウェットティシューである。
【0014】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のウェットティシューであって、前記シートに、KES圧縮試験機によって50gf/cmの荷重をかけた際の前記シートの厚みをT、0.5gf/cmの荷重をかけた際の前記シートの厚みをTとしたときに、(T-T)/Tが0.40以上であることを特徴とするものである。
【0015】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載のウェットティシューであって、前記シートに、KES圧縮試験機によって50gf/cmの荷重をかけた際の前記シートの厚みTが、160μm以上440μm以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載のウェットティシューであって、前記シートは、表面に抄紙機由来の凹凸のパターンを有し、前記凹凸における、凹部と凸部を合わせた高さが100μm以上300μm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、薬液を含浸するシートに紙を用いて、六つ折り又はそれ以上に折り畳んだ状態で積層されたとしても、風合いとコンパクト性に優れ、かつ、破れにくいウェットティシューを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るウェットティシューの斜視図である。
図2】シートのマイクロスコープによる高さプロファイル(マッピング)のX-Y平面画像である。
図3図2(b)の線分S1-S2における凹凸の高さ((測定)断面曲線S)プロファイルの画像である。
図4図3の(測定)断面曲線Sを処理した粗さ曲線Wの画像である。
図5図4からのシートの抄紙機由来の凹凸の高さの求め方を示す図である。
図6】シートの抄紙工程において抄紙機由来の凹凸を付与する箇所の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
また、ウェットティシューにおけるMD方向とは、シートの製造時における搬送方向(Machine Direction)であり、CD方向とは、搬送方向に対して垂直な幅方向(Cross Direction)である。
【0020】
<ウェットティシュー>
本実施形態に係るウェットティシュー1は、少なくともパルプ繊維を含む紙製のシート2に薬液を含浸させ、六つ折り又はそれ以上に折り畳んだ状態で積層された、ウェットティシュー1である。
シート2が紙製であることにより、合成繊維を含まないことから、生分解性に優れており、かつ、経済的に優れたウェットティシュー1とすることができる。なお、シート2は1プライ又は2プライであることが好ましく、1プライであることがより好ましい。
【0021】
また、シート2の六つ折りにおける折り畳み方は、ウェットティシューやウェットシート等に通常用いられる折り方であれば特に制限されないが、例えばシート2の短辺方向をおよそ四等分するように一方を山折り、他方を谷折りし(Z折り)、その後に長辺方向をおよそ二等分するように山折り又は谷折りする(半折り)折り方が挙げられる。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るウェットティシュー1の斜視図である。図1に示すように、ウェットティシュー1は、薬液を含浸させ、六つ折り又はそれ以上に折り畳んだ状態で積層されたシート2を、包装体3によって包装するものである。
包装体3の形状等は特に限定されないが、コンパクト性の観点から、図1に示すような可撓性を有し、水不透過性である包装フィルムからなることが好ましい。また、包装体3は取り出し穴4を有することが好ましい。
【0023】
(シート)
シート2に用いるパルプ繊維は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等、一般的なパルプ繊維(木材パルプ)を用いることができる。その中でも、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を含むことが好ましい。また、パルプ繊維におけるNBKPとLBKPの含有割合は50:50以上100:0以下が好ましく、70:30以上100:0以下がより好ましく、90:10以上100:0以下が更に好ましく、100:0が最も好ましい。
NBKPとしては、例えばラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる繊維が好ましい。なお、NBKPの代わりにNUKP、LBKPの代わりにLUKPを用いることもできる。
【0024】
また、シート2に含浸させる薬液は、通常ウェットティシューに用いられるアルコール、保湿剤、防腐剤、抗菌剤、安定化剤等を配合すればよい。
このとき、シート2への薬液の含浸倍率が、2倍以上4倍以下であることが好ましい。含浸倍率が2倍未満であると湿潤性が十分ではないため、ウェットティシュー1が風合いに劣り、4倍を超えるとシート2が破れやすくなる。
【0025】
含浸倍率の測定方法は、まずウェットティシュー1(薬液を含浸させたシート2)の面積及び重量を測定し、その後、ウェットティシュー1をアルコール溶液で洗浄し、絶乾させる。絶乾後、23℃、50%RH環境下で調湿し、シート2の重量を測定する。そして、紙1gに対して含浸された薬液の重量を含浸倍率とする。
なお、含浸倍率は2.3倍以上3.5倍以下であることがより好ましく、2.5倍以上3.2倍以下であることが更に好ましい。
【0026】
なお、後述するシート2の湿潤時の引張強度を適正化しやすくするために、シート2は水解性を有さないことが好ましい。また、製造時においてエンボスロールのような設備に限定されず、かつ、エンボスによるシート強度の低下がなく、後述する引張強度を適正化しやすいため、シート2は後述する抄紙機由来ではない、エンボス加工による凹凸を両面ともに有さないことが好ましい。
【0027】
また、シート2は表面にエンボスとは異なる、抄紙機由来の凹凸のパターンを有し、凹凸における凸部と凹部を合わせた高さが100μm以上300μm以下であることが好ましい。凹凸の高さが100μm未満であると、シート2同士が張り付き、1枚ずつ取り出しにくくなる。凹凸の高さが300μmを超えると、シート2の嵩が高くなりすぎて、積層したときのコンパクト性に劣る。凹凸の高さが上記の数値範囲内であることにより、シート2が隣接(積層)された状態でプレスされる工程において、シート2同士の接触点が少なくなり、張り付きにくくなることによって、1枚ずつ取り出しやすくなる。
なお、凸部と凹部を合わせた高さは、130μm以上270μm以下であることが好ましく、150μm以上250μm以下であることがより好ましい。また、抄紙機由来の凹凸は、クレープ率やウェットクレープなど一般的な方法で調整することができる。
【0028】
シート2の抄紙機由来の凹凸の高さは、マイクロスコープを用いて測定する。マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、測定倍率12倍、視野面積24mm×18mmで測定する。測定倍率と視野面積は、求める凹凸の大きさによって、適宜変更してもよい。なお、3次元測定機や輪郭形状測定機は、点や線で測定されるが、ワンショット3D測定の場合、面全体を測定するため、全体の形状やうねりがわかりやすい。
【0029】
図2から図5を参照して、抄紙機由来の凹凸の高さの具体的な測定方法について説明する。なお、測定は薬液を含浸させたシート2(ウェットティシュー1)に対して行う。
図2(a)は、マイクロスコープによる高さプロファイル(マッピング)のX-Y平面画像である。図2の上下方向がシート2の横方向、左右方向がシート2の縦方向となる。そして、図2(b)に示すように、高さプロファイル(マッピング)のX-Y平面画像の任意の位置で、縦方向に平行な線分S1-S2を引くと、図3に示す凹凸の高さ((測定)断面曲線S)プロファイルが得られる。なお、個々の凹凸は縦方向に沿って延びており、線分S1-S2はこれら複数の凹凸を横断するので、X-Y平面画像の縦方向のどの位置で線分S1-S2を引いても、凹凸の高さプロファイルはほとんど変わらない。
【0030】
ここで、高さプロファイルは、実際のシート2表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであるが、ノイズ(シート2表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでいる。そのため、凹凸の高さの算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
そこで、図3の(測定)断面曲線Sを重み平均ラジオボタンのフィルターのサイズを±12とし、スムージングした図4の粗さ曲線Wを得る。なお、重み平均ラジオボタンのフィルターを用いたスムージングは、上記の解析ソフトを使用すれば、自動で得られる。
【0031】
得られた粗さ曲線Wについて、図5に示すように、凸部と隣接する凹部の縦軸の差を10か所(H1~H10)測定し、平均を凹凸の高さ(Rc)とする。また、高さプロファイル1画像につき線分S1-S2を3本設定し、図4の粗さ曲線Wを3つ得る。そして、これら3つの粗さ曲線WそれぞれにつきRcを求める。試料の画像を3枚用意し、合計9個のデータ(Rc)を平均して求めた、凹凸の高さを採用する。
【0032】
(シートの物性)
シート2の絶乾状態における坪量は20g/m以上50g/m以下であることが好ましい。坪量が20g/m未満であるとシート2が風合いに劣り、50g/mを超えると嵩高になりすぎてウェットティシュー1がコンパクト性に劣る。
シート2の絶乾状態における坪量は、JIS P 8124に準拠して測定される。なお、シート2の絶乾状態における坪量は、25g/m以上45g/m以下であることがより好ましく、30g/m以上40g/m以下であることが更に好ましい。
【0033】
また、本実施形態に係るシート2における湿潤時の引張強度は、2.2N/25mm以上3.8N/25mm以下である。引張強度が2.2N/25mm未満であるとシート2が破れやすく、3.8N/25mmを超えるとシート2の風合いが悪くなる。
なお、シート2の湿潤時の引張強度は、2.4N/25mm以上3.6N/25mm以下であることが好ましく、2.6N/25mm以上3.3N/25mm以下であることがより好ましい。
【0034】
湿潤時の引張強度は、積層された状態のウェットティシュー1からシート2を1枚引き出し、幅25mmに裁断後、引張試験機によって、つかみ幅:100mm、伸張速度:300±5mm/minで測定し、10回の平均値とする。また、この場合における引張強度は、シート2のCD方向における引張強度を意味する。
なお、シート2の湿潤時の引張強度は、抄紙工程における湿潤紙力剤の添加といった一般的な方法で調整することができる。また、シート2における縦方向及び横方向(MD方向及びCD方向)の調整も同様に、繊維配向により調整することができる。
【0035】
また、シート2にKES圧縮試験機によって50gf/cmの荷重をかけた際の、シート2の厚みTが160μm以上440μm以下であることが好ましい。Tが160μm未満であると、シート2を手に持った際の風合いに劣り、440μmを超えると、シート2の嵩が高くなりすぎて、積層したときのコンパクト性に劣る。
なお、厚みTは200μm以上400μm以下であることがより好ましく、250μm以上350μm以下であることが更に好ましい。
【0036】
さらに、KES圧縮試験機によって0.5gf/cmの荷重をかけた際のシート2の厚みをTとしたときに、(T-T)/Tが0.40以上であることが好ましい。数値が0.40未満であると、シート2に折り目がつきやすくなる。
なお、(T-T)/Tは0.45以上であることがより好ましく、0.50以上0.55以下であることが更に好ましい。
【0037】
そして、上記のTは400μm以上800μm以下であることが好ましい。Tが400μm未満であると、シート2を手に持った際の風合いに劣り、800μmを超えると、シート2の嵩が高くなりすぎて、積層したときのコンパクト性に劣る。
なお、Tは500μm以上780μm以下であることがより好ましく、600μm以上750μm以下であることが更に好ましい。T及びTはシート2における抄紙機由来の凹凸や、絶乾状態の坪量で調整することができる。
【0038】
そして、上記の厚みに関連して、シート2をKES圧縮試験機で圧縮した際のWC(圧縮仕事量)が0.15gf・cm/cm以上0.65gf・cm/cm以下である。WCが0.15gf・cm/cm未満であるとシート2に折り目がつきやすくなり、0.65gf・cm/cmを超えるとシート2の嵩が高くなりすぎて、積層したときのコンパクト性に劣る。
なお、WC(圧縮仕事量)は、0.25gf・cm/cm以上0.55gf・cm/cm以下であることが好ましく、0.35gf・cm/cm以上0.50gf・cm/cm以下であることがより好ましい。WC(圧縮仕事量)はシート2における抄紙機由来の凹凸や、絶乾状態の坪量、湿潤時の引張強度で調整することができる。
【0039】
厚み及びWCは、KES-G5自動化圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて測定する。
2cmの加圧板と受圧板の間に、ウェットティシュー1(薬液を含浸させたシート2)を140mm×200mmの大きさにカットしたサンプルを設置する。そして、0.020cm/secの速さで加圧板を下降させ、その際に変化する圧力と、その時のサンプルの厚みを測定する。
は圧力が0.5gf/cmにおけるサンプルの厚み(μm)であり、Tは圧力が50gf/cmにおけるサンプルの厚み(μm)である。T及びTの値は、10回の測定を行った平均値として算出した値である。また、WCは圧縮仕事量であり、同様に10回の平均値を算出する。
【0040】
(ウェットティシューの製造方法)
本実施形態に係るウェットティシュー1の製造方法としては、通常のウェットティシュー製品等と同様の工程で製造することができる。具体的には、(1)抄紙及びクレーピング、(2)裁断、(3)折り畳み、積層及び薬液含浸、といった工程によって、ウェットティシュー1(シート2の積層体)を得ることができる。なお、薬液含浸のタイミングは積層の前後どちらでもよく、積層と含浸を同時に行ってもよい。
なお、この場合における(後述する1つの包装体3ごとの)シート2の積層枚数は、コンパクト性に劣るものでなければ、特に制限されないが、10枚以上50枚以下であることが好ましい。
【0041】
抄紙工程では、上述したように抄紙機由来の凹凸のパターンがシート2に施されることが好ましい。この凹凸のパターンを有することにより、シート2のT、Tといった厚みやWCを適正化しやすい。なお、抄紙機由来とは、シート2の抄紙工程において、抄紙機のヘッドボックスからヤンキードライヤー12の入口までの間に付与されることを意味する。
具体的には、図6に示す抄紙工程の一部において、脱水ロール11とヤンキードライヤー12の間に配置される、ベルトプレス部10にて凹凸を付与することができる。ベルトプレス部10では、湿紙14と凹凸ベルト13(凹凸ベルト13は、ベルトプレス部10とヤンキードライヤー12をループしている)を一緒にプレスすることで、湿紙14に凹凸のパターンを付与することができる。
【0042】
(加工方式、包装形態)
その後、ウェットティシュー1(シート2の積層体)を包装体3によって包装する。
上記の製造方法により製造されるシート2の一辺の寸法は80mm以上300mm以下であることが好ましく、120mm以上220mm以下であることがより好ましい。なお、上記の抄紙工程では広幅(例えば1000mm)のまま抄紙し、加工機において10丁取り(例えば幅100mm)にカットすることもある。
【0043】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、薬液を含浸するシートに紙を用いて、六つ折り又はそれ以上に折り畳んだ状態で積層されたとしても、風合いとコンパクト性に優れ、かつ、破れにくいウェットティシューを提供することができる。
【実施例0044】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0045】
表1~表3に示す各条件において、実施例1~15及び比較例1~7のそれぞれのウェットティシューを作製し、以下の評価を行った。なお、下記の評価以外の各パラメータは、上述した基準又は測定方法に従って行った。
また、表1~3の各実施例及び各比較例において、シートの六つ折りの折り方は全てZ折り+半折りとし、30枚積層したウェットティシューは、取り出し口が45mm×20mmの略矩形であるラベル付き軟包装体に包装した。
【0046】
1.取り出し性
モニター30名により、包装体からウェットティシュー(シート)を1枚取り出したときのウェットティシューの取り出し性を4段階で評価した。評価は、確実に1枚取り出せるものを◎、ある程度の割合で1枚取り出せるものを○、張り付いた状態で2枚以上取り出されてしまう場合が少しあるものを△、張り付いた状態で2枚以上取り出されてしまう場合が多いものを×として、30名が最も多く選んだ評価を最終的な評価とした。
【0047】
2.シートの破れにくさ
モニター30名により、包装体からウェットティシュー(シート)を1枚取り出して汚れを拭き取ったときのシートの破れにくさを4段階で評価した。評価は、非常に破れにくいものを◎、ある程度破れにくいものを○、少し破れやすいものを△、非常に破れやすいものを×として、30名が最も多く選んだ評価を最終的な評価とした。
【0048】
3.コンパクト性
モニター30名により、積層し包装した状態におけるウェットティシュー(シート)のコンパクト性を4段階で評価した。評価は、使用上においてコンパクト性に特に優れるものを◎、優れるものを○、少し嵩張るものを△、嵩張るものを×として、30名が最も多く選んだ評価を最終的な評価とした。
【0049】
4.風合い
モニター30名により、ウェットティシュー(シート)の風合いを4段階で評価した。評価は、風合いに優れるものを◎、ある程度風合いがあるものを○、風合いにやや劣るものを△、風合いに劣るものを×として、30名が最も多く選んだ評価を最終的な評価とした。
【0050】
表1及び2に、各実施例の条件及び評価結果を示し、表3に、各比較例の条件及び評価結果を示す。
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
以上より、薬液を含浸するシートに紙を用いて、六つ折り又はそれ以上に折り畳んだ状態で積層されたとしても、風合いとコンパクト性に優れ、かつ、破れにくいウェットティシューが得られることが確認された。
【符号の説明】
【0054】
1 ウェットティシュー
2 シート
3 包装体
4 取り出し穴
10 ベルトプレス部
11 脱水ロール
12 ヤンキードライヤー
13 凹凸ベルト
14 湿紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6