(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004701
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】水耕栽培用パネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20240110BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20240110BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A01G31/00 604
B29C49/04
B29C51/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104457
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 秀治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 稔
【テーマコード(参考)】
2B314
4F208
【Fターム(参考)】
2B314MA23
2B314NC40
2B314NC43
2B314ND05
2B314ND24
2B314PA08
2B314PC08
2B314PC29
4F208AC03
4F208AG07
4F208AG28
4F208AH01
4F208AR12
4F208LA01
4F208LB01
4F208LG05
4F208LG08
4F208LG22
4F208LJ09
4F208LW02
4F208LW23
4F208MA01
4F208MB01
4F208MC02
4F208MG22
4F208MJ09
4F208MW02
4F208MW23
(57)【要約】
【課題】栽培物が孔から脱落することが抑制可能な水耕栽培用パネルを提供する。
【解決手段】本発明によれば、水耕栽培用パネルであって、前記パネルには、栽培物が挿入される孔が前記パネルを上下方向に貫通するように設けられており、前記孔内には、環状のベース面と、前記ベース面の外縁から前記上面に向かって延在する上側側面が設けられており、前記ベース面と前記上側側面は、非平行である、パネルが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水耕栽培用パネルであって、
前記パネルには、栽培物が挿入される孔が前記パネルを上下方向に貫通するように設けられており、
前記孔内には、環状のベース面と、前記ベース面の外縁から前記上面に向かって延在する上側側面が設けられており、
前記ベース面と前記上側側面は、非平行である、パネル。
【請求項2】
請求項1に記載のパネルであって、
前記孔には、前記ベース面の内縁から前記下面に向かって延在する下側側面が設けられており、
前記ベース面と前記下側側面の間の角度は、20~90度である、パネル。
【請求項3】
請求項2に記載のパネルであって、
前記下側側面は、前記下面に向かって漸次拡径するように傾斜するテーパー面である、パネル。
【請求項4】
水耕栽培用パネルの製造方法であって、
配置工程と、成形工程と、後処理工程を備え、
前記配置工程では、互いに開閉可能な第1及び第2金型を開状態にして、第1及び第2金型の間にパリソンを配置し、
第1金型は、第1リブを備え、
第2金型は、第2リブを備え、
第1及び第2リブは、互いに対向するように配置され、
第1リブの先端面の外縁の直径は、第2リブの先端面の外縁の直径よりも大きく、
前記成形工程では、第1金型と第2金型の間に前記パリソンを配置した状態で第1及び第2金型を閉状態にして第1及び第2リブを互いに突き合わせることによって、前記パリソンの対向する内面同士を溶着させて溶着部を形成すると共に前記パリソンをパネル形状に成形して成形体を形成し、
前記後処理工程では、前記溶着部を除去して孔を形成する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法であって、
前記溶着部の除去は、第2リブの先端面が押し付けられた部位の外縁に沿って行われる、方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の方法であって、
第1リブの先端面と第2リブの先端面の少なくとも一方には、環状の環状面が設けられ、
前記環状面の内側には凹部が設けられている、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記環状面は、第1リブの先端面と第2リブの先端面の両方に設けられており、
第1リブの環状面の幅は、第2リブの環状面の幅よりも大きい、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培用パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、植物が苗床部材に植設されて構成された栽培物が挿入される孔が設けられた水耕栽培用パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパネルでは、苗床部材と孔の内面との間の摩擦力によって栽培物を孔内に保持している。しかし、このような形態では、摩擦力が不十分になりやすく、その場合に、栽培物が脱落してしまう虞がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、栽培物が孔から脱落することが抑制可能な水耕栽培用パネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)水耕栽培用パネルであって、前記パネルには、栽培物が挿入される孔が前記パネルを上下方向に貫通するように設けられており、前記孔内には、環状のベース面と、前記ベース面の外縁から前記上面に向かって延在する上側側面が設けられており、前記ベース面と前記上側側面は、非平行である、パネル。
(2)(1)に記載のパネルであって、前記孔には、前記ベース面の内縁から前記下面に向かって延在する下側側面が設けられており、前記ベース面と前記下側側面の間の角度は、20~90度である、パネル。
(3)(2)に記載のパネルであって、前記下側側面は、前記下面に向かって漸次拡径するように傾斜するテーパー面である、パネル。
(4)水耕栽培用パネルの製造方法であって、配置工程と、成形工程と、後処理工程を備え、前記配置工程では、互いに開閉可能な第1及び第2金型を開状態にして、第1及び第2金型の間にパリソンを配置し、第1金型は、第1リブを備え、第2金型は、第2リブを備え、第1及び第2リブは、互いに対向するように配置され、第1リブの先端面の外縁の直径は、第2リブの先端面の外縁の直径よりも大きく、前記成形工程では、第1金型と第2金型の間に前記パリソンを配置した状態で第1及び第2金型を閉状態にして第1及び第2リブを互いに突き合わせることによって、前記パリソンの対向する内面同士を溶着させて溶着部を形成すると共に前記パリソンをパネル形状に成形して成形体を形成し、前記後処理工程では、前記溶着部を除去して孔を形成する、方法。
(5)(4)に記載の製造方法であって、前記溶着部の除去は、第2リブの先端面が押し付けられた部位の外縁に沿って行われる、方法。
(6)(4)又は(5)に記載の方法であって、第1リブの先端面と第2リブの先端面の少なくとも一方には、環状の環状面が設けられ、前記環状面の内側には凹部が設けられている、方法。
(7)(6)に記載の方法であって、前記環状面は、第1リブの先端面と第2リブの先端面の両方に設けられており、第1リブの環状面の幅は、第2リブの環状面の幅よりも大きい、方法。
【0007】
本発明では、パネルの孔内には、環状のベース面と、これに非平行な上側側面が設けられている。
栽培物を圧縮状態で孔内に挿入すると、栽培物が孔内で復元力によって膨らんで、孔内のベース面によって保持されやすい。このため、栽培物が孔から脱落することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2Aは、
図1Aのパネル10の短手方向の中央を通る断面図であり、
図2Bは、
図2A中の領域Bの拡大図であり、
図2Cは、孔20に栽培物4を挿入したパネル10を養液9上に浮かべた状態を示す、
図2Bに対応する断面図である。なお、
図2Bは、パネル10の構造を詳細に示し、その他の図では、パネル10は、
図2Bよりも簡略化して図示している。
【
図3】第1金型21と第2金型22の間にパリソン5として第1及び第2樹脂シート5a,5bを配置した後の状態を示す断面図である。なお、
図3~
図10では、図示の便宜上、断面よりも奥のある部位を示す線は省略している。
【
図4】
図4Aは、
図3から第1リブ21a及び第2リブ22aを取り出した断面図であり、
図4Bは、
図4Aのリブ21a,22aを互いに突き合わせた状態の断面図である。
【
図5】
図4の状態から、金型21,22で、樹脂シート5a,5bを賦形した後の状態を示す断面図である。
【
図6】
図5の状態から、金型21,22を閉じた後の状態を示す断面図である。
【
図7】
図7Aは、
図6からリブ21a,22a近傍の部位を抜き出した断面図であり、
図7Bは、
図7Aからリブ21a,22aを除いた状態を示し、
図7Cは、
図7Bから第2リブ22aの先端面22gが押し付けられた部位20gの外縁20hに沿って溶着部7を除去した後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0010】
1.水耕栽培用パネル10
図1~
図2に示す本発明の一実施形態の水耕栽培用パネル10は、
図2Cに示すように、養液9上に浮かべられて水耕栽培に用いられるものである。パネル10は、好ましくは、中空の樹脂成形体で構成される。
【0011】
パネル10は、略長方形状であり、その短辺方向の寸法が例えば20~60cmであり、長辺方向の寸法が例えば50~100cmであり、厚みが例えば20~40mmである。短辺方向の寸法は、具体的には例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。長辺方向の寸法は、具体的には例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。パネル10の厚さは、具体的には例えば、具体的には例えば、20、25、30、35、40mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0012】
パネル10には、栽培物4が挿入される孔20がパネル10を上下方向に貫通するように設けられている。栽培物4は、孔20に保持しやすくすべく、植物Pが栓体50に植設されて構成されることが好ましい。栓体50は、スポンジなどの、弾性変形可能でありかつ吸水性を有するものであることが好ましい。栓体50の弾性力によって栓体50を孔20の内面に押し付けて栽培物4を孔20に保持することが可能になる。
【0013】
パネル10には、複数の孔20が設けられており、複数の孔20が規則的に設けられることが好ましい。隣接する孔20間の間隔は、例えば、50mm以上が好ましい。この間隔は、例えば、50~150mmであり、具体的には例えば、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以上であってもよい。
【0014】
孔20は、上面10a側の開口径D1が例えば20~40mmであり、下面10b側の開口径D2が例えば30~70mmである。本明細書において、「開口径」及び「直径」は、円相当径を意味する。
【0015】
D1は、具体的には例えば、20、25、30、35、40mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。D2は、具体的には例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。D2/D1は、例えば、1.1~3.0であり、具体的には例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0016】
孔20内には、環状のベース面20aと、ベース面20aの外縁20fから上面10aに向かって延在する上側側面20iが設けられている。ベース面20aは、上側側面20iの下縁から孔20の中心に向かって突出するように設けられる。このため、栓体50を圧縮状態で孔20内に挿入すると、栓体50が孔内で復元力によって膨らんで、孔20内のベース面20aによって保持されやすい。このため、栓体50が孔20から脱落することが抑制される。なお、栓体50を圧縮状態にする代わりに、植物Pの一部を圧縮状態にして孔20内に挿入してもよい。以下、栓体50を圧縮状態にして孔20内に挿入する場合を例に挙げて説明を続ける。
【0017】
ベース面20aは、平坦面であることが好ましいが湾曲面であってもよい。ベース面20aは、パネル10の上面10aと平行であることが好ましいが、非平行であってもよい。ベース面20aは、上面10aに対する角度が、例えば、-30~30度であり、具体的には例えば、具体的には例えば、-30、-25、-20、-15、-10、-5、0、5、10、15、20、25、30度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、ベース面20aの内縁20bが外縁20fよりも上面10aに近づくように傾斜する場合の角度を正とする。
【0018】
上側側面20iは、上面10aに向かって漸次拡径するように傾斜するテーパー面であることが好ましい。上側側面20iは、上面10aの法線に対する傾斜角度γが、例えば0~30度であり、5~20度が好ましい。傾斜角度γは、具体的には例えば、0、5、10、15、20、25、30度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ベース面20aと上側側面20iは、非平行であり、ベース面20aと上側側面20iの間の角度θは、例えば、90~175度であり、95~135度が好ましい。角度θは、具体的には例えば、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
ベース面20aの内縁20bにおいて孔20の開口径が最小になっている。内縁20bでの開口径D3は、例えば、15~35mmであり、具体的には例えば、15、20、25、30、35mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ベース面20aの外縁20fの直径D4は、例えば、15.5~40mmであり、具体的には例えば、15.5、20、25、30、35、40mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ベース面20aの幅は、例えば、0.5~5mmであり、1~3mmが好ましい。この幅は、具体的には例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。D1/D3は、例えば、1.10~1.50であり、具体的には例えば、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。上面10aからベース面20aまでの距離は、例えば、3~20mmであり、具体的には例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
孔20には、ベース面20aの内縁20bから下面10bに向かって延在する下側側面20cが設けられることが好ましい。ベース面20aと下側側面20cの間の角度αは、20~90度が好ましく、35~75度がさらに好ましい。角度αは、具体的には例えば、20、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この場合、角度αが直角又は鋭角であるので、ベース面20aと下側側面20cによって構成される突起20dが栓体50にめり込みやすくなる。このため、栓体50が孔20から脱落することが一層抑制される。
【0021】
下側側面20cは、下面10bに向かって漸次拡径するように傾斜するテーパー面であることが好ましい。また、下側側面20cよりも下面10b側に、下側側面20cよりも、下面10bの法線に対する傾斜角度が小さいテーパー面20eが設けられることが好ましい。これによって、内縁20bよりも下面10b側での孔20の容積が大きくなり、栓体50に養液や空気が供給されやすくなる。下側側面20c及びテーパー面20eの、下面10bの法線に対する傾斜角度をβ1、β2とすると、β1-β2は、例えば、15~45度であり、具体的には例えば、15、20、25、30、35、40、45度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。β1は、例えば、30~60度であり、40~50度が好ましい。β2は、例えば5~25度であり、10~20度が好ましい。
【0022】
2.水耕栽培用パネル10の製造方法
本発明の一実施形態の水耕栽培用パネル10の製造方法は、配置工程と、成形工程と、後処理工程を備える。以下、各工程について説明する。
【0023】
2-1.配置工程
配置工程では、
図3に示すように、互いに開閉可能な金型21,22を開状態にして、金型21,22の間にパリソン5を配置する。
【0024】
第1金型21は、第1リブ21aを備え、第2金型22は、第2リブ22aを備える。第1リブ21aは、孔20の内面のうち内縁20bよりも上面10a側の部位の形状に対応した形状を有し、第2リブ22aは、孔20の内面のうち内縁20bよりも下面10b側の部位の形状に対応した形状を有する。このため、リブ21a,22aによって孔20の内面に対応した形状の凹部が形成される。リブ21a,22aは、互いに対向するように配置される。
【0025】
本実施形態では、
図4に示すように、第1リブ21aの先端面21gの外縁21hの直径は、第2リブ22aの先端面22gの外縁22hの直径よりも大きくなっている。リブ21a,22aをこのように構成することによって、リブ21a,22aの中心位置にずれが生じた場合でも、溶着部7を容易に除去することができる。この作用効果は、「2-4.比較例との対比」でより詳細に説明する。先端面21g,22gは、平坦面であることが好ましいが、湾曲面であってもよい。先端面21g,22gは、金型21,22の開閉方向(
図3の左右方向)に対して垂直であることが好ましいが、非垂直であってもよい。
【0026】
第1リブ21aは、第1ベース21bに着脱可能に固定されることが好ましい。第1リブ21aは、第1取付突起21cを第1ベース21bの第1取付孔21eに挿入して固定することができる。第1リブ21aが着脱可能に第1ベース21bに固定されているので、第1金型21に設ける第1リブ21aの数が可変である。このため、パネル10の仕様に合わせて、第1リブ21aの数を変更することによって、孔20の数を容易に変更することができる。ここでの説明は、第2金型22についても同様である(「第1」を「第2」に読み替え、符号「21」を「22」に読み替える。)
【0027】
リブ21a,22aは、ベース21b,22bと一体で形成して着脱不能にすることも可能であるが、本実施形態のように、リブ21a,22aが、ベース21b,22bと一体化されていない場合、リブ21a,22aの中心位置のずれが生じやすいので、リブ21a,22aが、ベース21b,22bと一体化されておらず、着脱可能である場合に、本発明を適用する技術的意義が特に顕著である。
【0028】
パリソン5は、溶融樹脂を押出ヘッド(不図示)から押し出すことによって形成することができる。パリソン5は、筒状であってもシート状であってもよい。パリソン5がシート状である場合、パリソン5は、例えば、一対の樹脂シート5a,5bで構成される。この場合、
図3に示すように、金型21,22の間に樹脂シート5a,5bを配置する
【0029】
パリソン5を構成する樹脂は、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂が好ましく、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。
【0030】
2-2.成形工程
成形工程では、
図5~
図6に示すように、第1金型21と第2金型22の間にパリソン5を配置した状態で金型21,22を閉状態にしてリブ21a,22aを互いに突き合わせることによって、パリソン5の対向する内面同士を溶着させて溶着部7を形成すると共にパリソン5をパネル形状に成形して成形体8を形成する。成形方法としては、ブロー成形、真空成形、その組み合わせなどが挙げられる。
【0031】
パリソン5が樹脂シート5a,5bで構成される場合、まず、
図5に示すように、第1金型21で樹脂シート5aを真空吸引して第1金型21の賦形面21fに沿った形状に賦形し、第2金型22で樹脂シート5bを真空吸引して第2金型22の賦形面22fに沿った形状に賦形する。次に、
図6に示すように、金型21,22を閉状態にしてリブ21a,22aを互いに突き合わせることによって、樹脂シート5a,5bを互いに溶着させて溶着部7を形成すると共に樹脂シート5a,5bをパネル形状に成形して成形体8を形成する。
【0032】
2-3.後処理工程
後処理工程では、
図7に示すように、成形体8から溶着部7を除去して孔20を形成する。溶着部7の除去は、金型21,22内で行ってもよく、金型21,22を開いて成形体8を取り出してから行ってもよい。
【0033】
溶着部7の除去は、
図7B~
図7Cに示すように、第2リブ22aの先端面22gが押し付けられた部位20gの外縁20hに沿って行われる。これによって、先端面22gの外縁22hに対応した形状の孔20が形成される。溶着部7の除去は、カッターなどを用いて溶着部7を切断することによって行うことができる。部位20gは、パリソン5が先端面21g,22gで押し潰されて薄肉化された薄肉部になっているので、部位20gに沿って溶着部7を切断することによって、溶着部7を容易に除去することができる。
【0034】
後処理工程において、成形体8に付着したバリ5cの除去などの各種後処理を行うことによって、
図7C及び
図1~
図2に示すように、所望のパネル10を得ることができる。
【0035】
本実施形態の方法では、樹脂シート5a,5bを賦形する際に、リブ21a,22aが最初の樹脂シート5a,5bに当接し、その後に、賦形面21f,22fのその他の面が樹脂シートに当接する。このため、樹脂シート5a,5bは、リブ21a,22aの先端面21g,22gが当接している部位及びその近傍ではほとんど又は全く延伸されず、その他の部位が延伸されることによって賦形される。このため、孔20の側壁の肉厚が大きくなりやすく、リブ21a,22aの合わせ面近傍(内縁20b近傍)での肉厚が特に大きくなりやすい。また、内縁20b近傍には、リブ21a,22aの突き合わせの際に押し出された樹脂によって、パネル10中空部内にはみ出したはみ出し樹脂部20l(
図2Bに図示)が形成されやすく、この観点でも、内縁20b近傍での肉厚が大きくなりやすい。このような構成によれば、内縁20b近傍での強度が高くなると共に、樹脂シート5a,5bの溶着強度が高くなる。
【0036】
2-4.比較例との対比
本発明の比較例の構成では、
図9Aに示すように、リブ21a,22aの中心位置C1,C2が同一直線上にあり、外縁21hと外縁22hが一致している。そして、後処理工程では、
図9B~
図9Cに示すように、外縁20hに沿って溶着部7が除去される。
【0037】
このような構成は、リブ21a,22aの中心位置C1,C2が同一直線上にあれば問題を生じさせないが、実際には、
図10Aに示すように、リブ21a,22aの中心位置C1,C2には、ずれが生じてしまう場合があり、中心位置がずれると外縁21h,22hにもずれが生じ、
図10B~
図10Cに示すように、外縁20hの一部に、パリソン5が先端面21g,22gで薄肉化されていない部位(非薄肉部)20jが設けられてしまう。そして、
図10D~
図10Eに示すように、外縁20hに沿って溶着部7を除去しようとすると、非薄肉部20jを切除する必要があるので、孔20の形状が想定したものと異なってしまったり、孔20の内面のカット面20kが滑らかになるように仕上げるために、通常よりも多くの時間がかかってしまったりするという問題が生じる。
【0038】
本実施形態では、第1リブ21aの先端面21gの外縁21hの直径を、第2リブの先端面22gの外縁22hの直径よりも大きくすることによって、このような問題を解決している。このような構成では、
図8に示すように、リブ21a,22aの中心位置C1,C2にずれが生じた場合に、外縁22hが外縁21hの外側にはみ出すことが抑制され、このため、リブ21a,22aの中心位置C1,C2がずれた場合でも、外縁20hの全体が薄肉部となるので、外縁20hに沿って溶着部7を除去するのが容易である。
【0039】
なお、リブ21a,22aの中心位置C1,C2のずれが、外縁21hと外縁22hの間の幅よりも大きいと、外縁22hが外縁21hからはみ出してしまう場合があるので、外縁21hと外縁22hの間の幅は、リブ21a,22aの中心位置C1,C2のずれとして想定される最大値よりも大きくすることが好ましい。例えば、リブ21a,22aの中心位置C1,C2のずれが最大でも1mmである場合は、外縁21hと外縁22hの間の幅は、例えば、2mmにすればよい。外縁21hと外縁22hの間の幅は、ベース面20aの幅に対応しており、外縁21hと外縁22hの間の幅は、例えば、0.5~5mmであり、1~3mmが好ましい。この幅は、具体的には例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0040】
図4に示すように、第1リブ21aの先端面21gと第2リブ22aの先端面22gの少なくとも一方には環状の環状面21i,22iが設けられていることが好ましい。この場合、環状面21i,22iの内側に設けられた凹部21j,22jが樹脂溜まり23となり、先端面21g,22gを突き合わせた部位から押し出された樹脂を樹脂溜まり23に収容することができる。
【0041】
環状面21i,22iは、第1リブ21aの先端面21gと第2リブ22aの先端面22gの両方に設けられていることが好ましい。環状面21iの幅は、環状面22iの幅よりも大きいことが好ましい。この場合、第1リブ21aの先端面21gの外縁21hの直径を、第2リブの先端面22gの外縁22hの直径よりも大きくしつつ、樹脂溜まり23を大きくしやすい。
【符号の説明】
【0042】
4 :栽培物
5 :パリソン
5a :第2樹脂シート
5b :第2樹脂シート
5c :バリ
7 :溶着部
8 :成形体
9 :養液
10 :水耕栽培用パネル
10a :上面
10b :下面
20 :孔
20a :ベース面
20b :内縁
20c :下側側面
20d :突起
20e :テーパー面
20f :外縁
20g :部位
20h :外縁
20i :上側側面
20j :非薄肉部
20k :カット面
20l :はみ出し樹脂部
21 :第1金型
21a :第1リブ
21b :第1ベース
21c :第1取付突起
21e :第1取付孔
21f :賦形面
21g :先端面
21h :外縁
21i :環状面
21j :凹部
22 :第2金型
22a :第2リブ
22b :ベース
22c :第2取付突起
22e :第2取付孔
22f :賦形面
22g :先端面
22h :外縁
22i :環状面
22j :凹部
23 :樹脂溜まり
50 :栓体
B :領域
C1 :中心位置
C2 :中心位置
D1 :開口径
D2 :開口径
D3 :開口径
E :領域
P :植物
α :角度
γ :傾斜角度
θ :角度