(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047013
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
B41J2/14 303
B41J2/14 607
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152423
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】星 知明
(72)【発明者】
【氏名】久保田 禅
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF36
2C057AF71
2C057AG12
2C057AG45
2C057AG91
2C057AN01
2C057AR14
2C057BA03
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】チャネル(駆動壁)の形状を変更することなく、各吐出チャネル間での吐出性能のばらつきを抑制できるヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係るヘッドチップにおいて、第1共通電極部及び第2共通電極部のうち駆動壁を挟んでX方向で向かい合い、かつ駆動壁に電界を発生させる領域を対向領域とすると、第1上側共通部におけるZ方向の寸法は、複数の駆動壁間においてXの第1側に位置する駆動壁からX方向の第2側に位置する駆動壁に向かうに従い小さく形成され、第2上側共通部におけるZ方向の寸法は、複数の駆動壁間においてX方向の第2側に位置する駆動壁からX方向の第1側に位置する駆動壁に向かうに従い小さく形成され、対向領域におけるY方向の寸法は、X方向の両端側に位置する駆動壁からX方向の中央部に位置する駆動壁に向かうに従い小さくなっている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びるチャネルが前記第1方向に交差する第2方向に複数配列されたアクチュエータプレートと、
前記アクチュエータプレートにおいて隣り合う前記チャネル間を仕切る駆動壁のうち前記第2方向の第1側を向く第1側面上に配置された第1電極部、及び前記駆動壁のうち前記第1側とは反対側である前記第2方向の第2側を向く第2側面上に配置された第2電極部を有し、前記アクチュエータプレートのうち前記駆動壁を変形させて前記チャネルの容積を変化させる電極と、を備え、
前記第1電極部及び前記第2電極部のうち前記駆動壁を挟んで前記第2方向で向かい合い、かつ前記駆動壁に電界を発生させる領域を対向領域とすると、
前記第1電極部における前記第2方向から見て前記第1方向に交差する第3方向の寸法は、複数の前記駆動壁間において前記第2方向の第1側に位置する前記駆動壁から前記第2方向の第2側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さく形成され、
前記第2電極部における前記第3方向の寸法は、複数の前記駆動壁間において前記第2側に位置する前記駆動壁から前記第1側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さく形成され、
前記対向領域における前記第1方向の寸法は、前記第2方向の両端側に位置する前記駆動壁から前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなっているヘッドチップ。
【請求項2】
前記対向領域の面積は、複数の前記駆動壁間で互いに同一になるように設定されている請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項3】
前記対向領域における前記第1方向の第1側端部は、複数の前記駆動壁間において前記第1方向で同じ位置に配置されている請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項4】
前記アクチュエータプレートにおける前記第3方向を向く面上には、噴射孔プレートが配置され、
前記噴射孔プレートのうち、前記第3方向から見て前記チャネルにおける前記第1方向の中央部に重なり合う位置には、前記チャネルに各別に連通する噴射孔が形成され、
前記対向領域における前記第1方向の両端部は、前記第2方向の両端側に位置する駆動壁から前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁に向かうに従い前記第1方向の内側に位置する請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項5】
前記第1電極部は、前記第3方向の一方側に位置する第1一方側領域、及び前記第1一方側領域に対して前記第3方向の他方側に連なる第1他方側領域を備え、
前記第2電極部は、前記第3方向の一方側に位置する第2一方側領域、及び前記第2一方側領域に対して前記第3方向の他方側に連なる第2他方側領域を備え、
前記対向領域のうち前記第1一方側領域及び前記第2一方側領域により構成された部分の前記第1方向の寸法は、前記第2方向の両端側に位置する前記駆動壁から前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなっている請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項6】
前記第1電極部と前記第1側面との間において、前記第1方向の一部には第1低誘電膜が配置され、
前記第2電極部と前記第2側面との間において、前記第1方向の一部には第2低誘電膜が配置され、
前記第1低誘電膜及び前記第2低誘電膜における前記第1方向の寸法は、前記第2方向の中央部に位置する駆動壁から前記第2方向の両側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなっている請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップを備えている液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の液体噴射ヘッドを備えている液体噴射記録装置。
【請求項9】
第1方向に延びるチャネルが前記第1方向に交差する第2方向に複数配列されたアクチュエータプレートと、
前記アクチュエータプレートにおいて隣り合う前記チャネル間を仕切る駆動壁のうち前記第2方向の第1側を向く第1側面上に配置された第1電極部、及び前記駆動壁のうち前記第1側とは反対側である前記第2方向の第2側を向く第2側面上に配置された第2電極部を有し、前記駆動壁を変形させて前記チャネルの容積を変化させる電極と、を備えたヘッドチップの製造方法であって、
前記アクチュエータプレートに対して前記第2方向の前記第1側に配置された蒸着源から、前記第1方向から見て前記第2方向に交差する斜め方向に斜め蒸着を行うことで、前記第2方向から見て前記第1方向に交差する第3方向の寸法が、複数の前記駆動壁間において前記第2方向の第1側に位置する前記駆動壁から前記第2方向の第2側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなる前記第1電極部を前記第1側面上に成膜する第1蒸着工程と、
前記アクチュエータプレートに対して前記第2方向の前記第2側に配置された蒸着源から、前記第1方向から見て前記第2方向に交差する斜め方向に斜め蒸着を行うことで、前記第3方向の寸法が、複数の前記駆動壁間において前記第2側に位置する前記駆動壁から前記第1側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなる前記第2電極部を前記第2側面上に成膜する第2蒸着工程と、を備え、
前記第1電極部及び前記第2電極部のうち前記駆動壁を挟んで前記第2方向で向かい合う領域を対向領域とすると、前記対向領域における前記第1方向の寸法を、前記第2方向の両端側に位置する前記駆動壁から前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくするヘッドチップの製造方法。
【請求項10】
前記第1蒸着工程及び前記第2蒸着工程では、前記第3方向から見て前記アクチュエータプレートと重なり合って配置されたマスクを用いて斜め蒸着を行うことで、前記マスクの開口部を通じて前記第1側面に前記第1電極部が形成されるとともに、前記第2側面に前記第2電極部が形成され、
前記開口部は、前記第1方向の寸法が、前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁から前記第2方向の両端側に位置する前記駆動壁に向かうに従い大きくなっている請求項9に記載のヘッドチップの製造方法。
【請求項11】
前記第1蒸着工程では、前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁から前記第2方向の両端側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなる第1低誘電膜が前記第1側面に形成された状態で斜め蒸着を行い、
前記第2蒸着工程では、前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁から前記第2方向の両側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなる第2低誘電膜が前記第2側面に形成された状態で斜め蒸着を行う請求項9に記載のヘッドチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに搭載されるインクジェットヘッドは、インクジェットヘッドに搭載されるヘッドチップを通じて被記録媒体にインクを吐出する。ヘッドチップは、吐出チャネル及び非吐出チャネルが形成されたアクチュエータプレートと、吐出チャネルに連通するノズル孔を有するノズルプレートと、を備えている。吐出チャネル及び非吐出チャネルは、駆動壁を隔てて交互に配列されている。
ヘッドチップにおいて、インクを吐出させるには、駆動壁に形成された電極間に電圧を印加して、駆動壁を厚み滑り変形させる。これにより、吐出チャネル内の容積が変化することで、吐出チャネル内のインクがノズル孔を通じて吐出される。
【0003】
上述した電極は、チャネル延在方向から見てチャネル配列方向に交差する斜め方向から斜め蒸着を行うことで、各チャネルの内面(駆動壁)に成膜される。しかしながら、斜め蒸着により電極を形成する場合、蒸着源からの距離に応じて電極の蒸着深さが変化する。すなわち、チャネル深さ方向における電極の寸法は、蒸着源から遠いチャネルほど小さくなる。その結果、駆動壁を間に挟んで向かい合う電極同士が対向する領域(以下、対向領域)の面積が各駆動壁ごとに異なる。この場合、電圧印加時における駆動壁の変位量(吐出チャネルの容積変化量)が各駆動壁間で異なることで、インクの吐出速度にばらつきが生じる。これにより、被記録媒体へのインクの着弾タイミングにばらつきが生じ、吐出性能の低下に繋がるという課題があった。
【0004】
上述した課題に対して、例えば下記特許文献1には、駆動壁の厚さを対向領域の面積ばらつきに応じて変更することで、吐出チャネルの容積変化量を調整する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術にあっては、駆動壁の厚さを変更する場合には、駆動壁の強度等、耐久性に影響が及ぶ可能性がある。
【0007】
本開示は、チャネル(駆動壁)の形状を変更することなく、各吐出チャネル間での吐出性能のばらつきを抑制できるヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係るヘッドチップは、第1方向に延びるチャネルが前記第1方向に交差する第2方向に複数配列されたアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートにおいて隣り合う前記チャネル間を仕切る駆動壁のうち前記第2方向の第1側を向く第1側面上に配置された第1電極部、及び前記駆動壁のうち前記第1側とは反対側である前記第2方向の第2側を向く第2側面上に配置された第2電極部を有し、前記アクチュエータプレートのうち前記駆動壁を変形させて前記チャネルの容積を変化させる電極と、を備え、前記第1電極部及び前記第2電極部のうち前記駆動壁を挟んで前記第2方向で向かい合い、かつ前記駆動壁に電界を発生させる領域を対向領域とすると、前記第1電極部における前記第2方向から見て前記第1方向に交差する第3方向の寸法は、複数の前記駆動壁間において前記第2方向の第1側に位置する前記駆動壁から前記第2方向の第2側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さく形成され、前記第2電極部における前記第3方向の寸法は、複数の前記駆動壁間において前記第2側に位置する前記駆動壁から前記第1側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さく形成され、前記対向領域における前記第1方向の寸法は、前記第2方向の両端側に位置する前記駆動壁から前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなっている。
【0009】
駆動壁の側面に対して第3方向の第1側から斜め蒸着によって電極を形成すると、蒸着源から第2方向に離れるに従い各駆動壁の側面に形成される電極の第3方向における寸法が漸次小さくなる。したがって、アクチュエータプレートに対して第2方向の第1側に配置された蒸着源によって第1電極部を形成する場合、複数の駆動壁間において第2方向の第2側端に位置する駆動壁から第2方向の第1側端に位置する駆動壁に向かうに従い第1電極部における第3方向の寸法が小さくなる。アクチュエータプレートに対して第2方向の第2側に配置された蒸着源によって第2電極部を形成する場合、複数の駆動壁間において第2方向の第1側端に位置する駆動壁から第2方向の第2側端に位置する駆動壁に向かうに従い第2電極部における第3方向の寸法が小さくなる。
このような構成の下、本態様によれば、第2方向の両端側に位置する駆動壁から第2方向の中央部に位置する駆動壁に向かうに従い、対向領域における第1方向の寸法を小さくした。これにより、各駆動壁において、対向領域の面積(有効面積)を、蒸着源からの距離に依存することなく設定できる。この場合、チャネル(駆動壁)の形状変更をすることなく、各チャネル間において有効面積が均一化し易くなる。その結果、液体の噴射時において、駆動壁の変位量を均一化することができので、吐出性能のばらつきを抑制できる。
【0010】
(2)上記(1)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記対向領域の面積は、複数の前記駆動壁間で互いに同一になるように設定されていることが好ましい。
本態様によれば、各駆動壁間での有効面積が同一になるように設定することで、噴射性能のばらつきをより確実に抑制できる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記対向領域における前記第1方向の第1側端部は、複数の前記駆動壁間において前記第1方向で同じ位置に配置されていることが好ましい。
本態様によれば、複数のチャネル間において各電極部の第1方向の長さを異ならせた場合であっても、各電極部における第1側端部の位置が各チャネル間で揃う。これにより、電極部と外部配線とを接続する端子をアクチュエータプレートの表面に形成する場合に、各電極部を端子に引き回し易くなる。
【0012】
(4)上記(1)又は(2)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記アクチュエータプレートにおける前記第3方向を向く面上には、噴射孔プレートが配置され、前記噴射孔プレートのうち、前記第3方向から見て前記チャネルにおける前記第1方向の中央部に重なり合う位置には、前記チャネルに各別に連通する噴射孔が形成され、前記対向領域における前記第1方向の両端部は、前記第2方向の両端側に位置する駆動壁から前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁に向かうに従い前記第1方向の内側に位置することが好ましい。
本態様によれば、複数の駆動壁間において各電極部の第1方向の長さを異ならせた場合であっても、各駆動壁間において対向領域に対して第1方向の中央部で噴射孔を開口させることができる。これにより、各チャネル間での噴射性能のばらつきをより確実に抑制できる。
【0013】
(5)上記(1)から(4)の何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1電極部は、前記第3方向の一方側に位置する第1一方側領域、及び前記第1一方側領域に対して前記第3方向の他方側に連なる第1他方側領域を備え、前記第2電極部は、前記第3方向の一方側に位置する第2一方側領域、及び前記第2一方側領域に対して前記第3方向の他方側に連なる第2他方側領域を備え、前記対向領域のうち前記第1一方側領域及び前記第2一方側領域により構成された部分の前記第1方向の寸法は、前記第2方向の両端側に位置する前記駆動壁から前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなっていることが好ましい。
本態様によれば、アクチュエータプレートに対して第3方向の両側から駆動配線を形成する場合において、対向領域の第3方向での寸法ばらつきに起因する有効面積のばらつきを、第1一方側領域及び第2一方側領域における第1方向の寸法調整で吸収することができる。
【0014】
(6)上記(1)から(5)の何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1電極部と前記第1側面との間において、前記第1方向の一部には第1低誘電膜が配置され、前記第2電極部と前記第2側面との間において、前記第1方向の一部には第2低誘電膜が配置され、前記第1低誘電膜及び前記第2低誘電膜における前記第1方向の寸法は、前記第2方向の中央部に位置する駆動壁から前記第2方向の両側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなっていることが好ましい。
本態様によれば、第1低誘電膜及び第2低誘電膜における第1方向の寸法を、第2方向の中央部に位置する駆動壁から第2方向の両端側に位置する駆動壁に向かうに従い小さく することで、第2方向の両端側に位置する駆動壁から第2方向の中央部に位置する駆動壁に向かうに従い、対向領域における第1方向の寸法を小さくすることができる。これにより、各駆動壁間において、有効面積が均一化し易くなる。
【0015】
(7)本開示の一態様に係る液体噴射ヘッドは、上記(1)から(6)の何れかの態様に係るヘッドチップを備えている。
本態様によれば、各吐出チャネル毎の吐出性能のばらつきが少ない高性能な液体噴射ヘッドを提供できる。
【0016】
(8)本開示の一態様に係る液体噴射記録装置は、上記(7)の態様に係る液体噴射ヘッドを備えている。
本態様によれば、各吐出チャネル毎の吐出性能のばらつきが少ない高性能な液体噴射記録装置を提供できる。
【0017】
(9)本開示の一態様に係るヘッドチップの製造方法は、第1方向に延びるチャネルが前記第1方向に交差する第2方向に複数配列されたアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートにおいて隣り合う前記チャネル間を仕切る駆動壁のうち前記第2方向の第1側を向く第1側面上に配置された第1電極部、及び前記駆動壁のうち前記第1側とは反対側である前記第2方向の第2側を向く第2側面上に配置された第2電極部を有し、前記駆動壁を変形させて前記チャネルの容積を変化させる電極と、を備えたヘッドチップの製造方法であって、前記アクチュエータプレートに対して前記第2方向の前記第1側に配置された蒸着源から、前記第1方向から見て前記第2方向に交差する斜め方向に斜め蒸着を行うことで、前記第2方向から見て前記第1方向に交差する第3方向の寸法が、複数の前記駆動壁間において前記第2方向の第1側に位置する前記駆動壁から前記第2方向の第2側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなる前記第1電極部を前記第1側面上に成膜する第1蒸着工程と、前記アクチュエータプレートに対して前記第2方向の前記第2側に配置された蒸着源から、前記第1方向から見て前記第2方向に交差する斜め方向に斜め蒸着を行うことで、前記第3方向の寸法が、複数の前記駆動壁間において前記第2側に位置する前記駆動壁から前記第1側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなる前記第2電極部を前記第2側面上に成膜する第2蒸着工程と、を備え、前記第1電極部及び前記第2電極部のうち前記駆動壁を挟んで前記第2方向で向かい合う領域を対向領域とすると、前記対向領域における前記第1方向の寸法を、前記第2方向の両端側に位置する前記駆動壁から前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくする。
【0018】
(10)上記(9)の態様に係るヘッドチップの製造方法において、前記第1蒸着工程及び前記第2蒸着工程では、前記第3方向から見て前記アクチュエータプレートと重なり合って配置されたマスクを用いて斜め蒸着を行うことで、前記マスクの開口部を通じて前記第1側面に前記第1電極部が形成されるとともに、前記第2側面に前記第2電極部が形成され、前記開口部は、前記第1方向の寸法が、前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁から前記第2方向の両端側に位置する前記駆動壁に向かうに従い大きくなっていることが好ましい。
本態様によれば、現状のプロセスを変更せず、マスクの形状を変更するだけで、各駆動壁間において有効面積が均一化し易くなる。
【0019】
(11)上記(10)の態様に係るヘッドチップの製造方法において、前記第1蒸着工程では、前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁から前記第2方向の両端側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなる第1低誘電膜が前記第1側面に形成された状態で斜め蒸着を行い、前記第2蒸着工程では、前記第2方向の中央部に位置する前記駆動壁から前記第2方向の両側に位置する前記駆動壁に向かうに従い小さくなる第2低誘電膜が前記第2側面に形成された状態で斜め蒸着を行うことが好ましい。
本態様によれば、駆動壁の側面に対して予め低誘電膜を形成しておくことで、駆動壁の側面に第1方向の寸法を一律で電極部を形成した場合であっても、電極部のうち駆動壁の側面に接している部分であって、互いに向かい合う部分のみを対向領域として機能させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の一態様によれば、チャネル(駆動壁)の形状を変更することなく、各吐出チャネル間での吐出性能のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係るインクジェットヘッド及びインク循環機構の概略構成図である。
【
図3】第1実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に対応する断面図である。
【
図6】
図3のVI-VI線に対応する断面図である。
【
図9】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図10】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(断面図)である。
【
図11】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(断面図)である。
【
図12】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(断面図)である。
【
図13】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(断面図)である。
【
図14】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(断面図)である。
【
図15】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(平面図)である。
【
図16】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(平面図)である。
【
図17】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(平面図)である。
【
図18】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(平面図)である。
【
図19】第1上側蒸着工程を説明するためのヘッドチップを示す断面図である。
【
図20】チャネルの配列方向(X方向)に対するtanβを示すグラフである。
【
図21】変形例に係るに係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(平面図)である。
【
図22】変形例に係るに係るヘッドチップの平面図である。
【
図23】チャネルの配列方向(X方向)に対する静電容量を示すグラフである。
【
図24】変形例に係るに係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(平面図)である。
【
図25】変形例に係るに係るヘッドチップの平面図である。
【
図26】第2実施形態に係るに係るヘッドチップの平面図である。
【
図27】第2実施形態に係るに係るヘッドチップの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図28】第2実施形態に係るに係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(平面図)である。
【
図29】第2実施形態に係るに係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(平面図)である。
【
図30】第3実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
【
図31】
図30のXXXI-XXXI線に対応する断面図である。
【
図32】
図30のXXXII-XXXII線に対応する断面図である。
【
図33】
図30のXXXIII-XXXIII線に対応する断面図である。
【
図34】第3実施形態に係るヘッドチップの平面図である。
【
図35】第3実施形態に係るに係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(平面図)である。
【
図36】第3実施形態に係るに係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。以下の実施形態では、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0023】
(第1実施形態)
[プリンタ1]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、第1実施形態のプリンタ(液体噴射記録装置)1は、一対の搬送機構2,3と、インクタンク4と、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)5と、インク循環機構6と、走査機構7と、を備えている。
【0024】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。この場合、X方向は被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向(副走査方向)に一致している。Y方向は走査機構7の走査方向(主走査方向)に一致している。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向(重力方向)を示している。以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。第1実施形態において、+Z側は重力方向の上方に相当し、-Z側は重力方向の下方に相当する。
【0025】
搬送機構2,3は、被記録媒体Pを+X側に搬送する。搬送機構2,3は、例えばY方向に延びる一対のローラ11,12をそれぞれ含んでいる。
インクタンク4は、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。各インクジェットヘッド5は、接続されたインクタンク4に応じてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されている。なお、インクタンク4に収容されるインクは、溶剤に水を使用した水性インク(導電性インク)を用いることが可能である。
【0026】
図2は、インクジェットヘッド5及びインク循環機構6の概略構成図である。
図1、
図2に示すように、インク循環機構6は、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させる。具体的に、インク循環機構6は、インク供給管21及びインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備えている。
【0027】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を通してインクジェットヘッド5にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧になる。
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インク排出管22内を通してインクジェットヘッド5からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧になる。インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を通して循環可能となっている。
【0028】
走査機構7は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。走査機構7は、Y方向に延びるガイドレール28と、ガイドレール28に移動可能に支持されたキャリッジ29と、を備えている。
【0029】
<インクジェットヘッド5>
図1に示すように、インクジェットヘッド5は、キャリッジ29に搭載されている。図示の例では、複数のインクジェットヘッド5が、一つのキャリッジ29にY方向に並んで搭載されている。インクジェットヘッド5は、ヘッドチップ50(
図3参照)と、インク循環機構6及びヘッドチップ50間を接続するインク供給部(不図示)と、ヘッドチップ50に駆動電圧を印加する制御部(不図示)と、を備えている。
【0030】
<ヘッドチップ50>
図3は、ヘッドチップ50の分解斜視図である。
図3に示すヘッドチップ50は、後述する吐出チャネル61における延在方向(Y方向)の中央部からインクを吐出する、いわゆる循環式サイドシュートタイプのヘッドチップ50である。ヘッドチップ50は、ノズルプレート51と、アクチュエータプレート52と、カバープレート53と、を備えている。ヘッドチップ50は、ノズルプレート51、アクチュエータプレート52及びカバープレート53が、この順番にZ方向(第3方向)に積層された構成である。
【0031】
アクチュエータプレート52は、酸化物を含む圧電材料により形成されている。第1実施形態において、アクチュエータプレート52は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等により形成されている。アクチュエータプレート52は、例えば分極方向がZ方向の+側と-側とで異なる、いわゆるシェブロン基板である。
【0032】
アクチュエータプレート52には、チャネル列60が形成されている。チャネル列60は、インクが充填される吐出チャネルチャネル)61、及びインクが充填されない非吐出チャネル(チャネル)62を有している。各チャネル61,62は、アクチュエータプレート52において、X方向(第2方向)に間隔をあけた状態で交互に配列されている。第1実施形態では、チャネル延在方向(第1方向)がY方向に一致する構成について説明するが、チャネル延在方向がY方向に交差していてもよい。
【0033】
図4は、
図3のIV-IV線に対応する断面図である。
図4に示すように、吐出チャネル61は、X方向から見て下方に向けて凸の円弧状に形成されている。吐出チャネル61は、Y方向の中央部において、アクチュエータプレート52をZ方向に貫通している。すなわち、吐出チャネル61は、アクチュエータプレート52の上面(+Z側を向く面)及び下面(-Z側を向く面)上でそれぞれ開口している。吐出チャネル61は、Y方向の両端部において、Y方向の外側に向かうに従い深さが漸次浅くなっている。
【0034】
図5は、
図3のV-V線に対応する断面図である。
図5に示すように、非吐出チャネル62は、アクチュエータプレート52をZ方向に貫通した状態で、Y方向に直線状に延びている。
図3に示すように、アクチュエータプレート52のうち、隣り合う吐出チャネル61及び非吐出チャネル62間に位置する部分は、それぞれ駆動壁65を構成している。したがって、チャネル61,62は、一対の駆動壁65によってX方向の両側が囲まれている。第1実施形態では、チャネル列60が一列のヘッドチップ50を例にして説明しているが、チャネル列60は、Y方向に複数列設けられていてもよい。この場合、隣り合うチャネル列60を構成する吐出チャネル61同士は、チャネル列60の個数をnとすると、一のチャネル列60における吐出チャネル61の配列ピッチに対して1/nピッチ毎にずれて配列されていることが好ましい。
【0035】
図6は、
図3のVI-VI線に対応する断面図である。
図6に示すように、カバープレート53は、各チャネル61,62の上端開口部を覆うように、アクチュエータプレート52の上面に、接着等によって積層されている。
図4に示すように、カバープレート53において、チャネル列60の-Y側端部と平面視で重なり合う位置には、入口共通インク室70が形成されている。入口共通インク室70は、例えばチャネル列60を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート53の上面で開口している。
入口共通インク室70において、吐出チャネル61と平面視で重なり合う位置には、入口スリット71が形成されている。入口スリット71は、各吐出チャネル61の-Y側端部と、入口共通インク室70内と、の間を各別に連通している。
【0036】
カバープレート53において、チャネル列60の+Y側端部と平面視で重なり合う位置には、出口共通インク室75が形成されている。出口共通インク室75は、例えばチャネル列60を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート53の上面で開口している。
出口共通インク室75において、非吐出チャネル62と平面視で重なり合う位置には、出口スリット76が形成されている。出口スリット76は、各吐出チャネル61の+Y側端部と、出口共通インク室75内と、の間を各別に連通している。したがって、入口スリット71及び出口スリット76は、それぞれ各吐出チャネル61に連通する一方、非吐出チャネル62には連通していない。
【0037】
図6に示すように、ノズルプレート51は、アクチュエータプレート52の下面(開口面)に接着等により積層されているノズルプレート51は、金属材料(SUSやNi-Pd等)により厚さが50μm程度に形成されている。但し、ノズルプレート51は、金属材料の他、樹脂材料(ポリイミド等)、ガラス、シリコン等による単層構造、又は積層構造であってもよい。
【0038】
ノズルプレート51には、ノズルプレート51をZ方向に貫通する複数のノズル孔79が形成されている。ノズル孔79は、例えば上方から下方に向かうに従い内径が漸次縮小するテーパ状に形成されている。ノズル孔79は、それぞれX方向に間隔をあけて配置されている。各ノズル孔79は、対応する吐出チャネル61のうちY方向の中央部で各別に連通している。したがって、各非吐出チャネル62は、ノズル孔79には連通しておらず、ノズルプレート51により下方から覆われている。
【0039】
図3に示すように、各ノズル孔79は、吐出チャネル61のうちY方向の中央部において千鳥状に配列されている。具体的に、一の吐出チャネル61に連通するノズル孔79と、一の吐出チャネル61に対してX方向の両側に位置する一対の他の吐出チャネル61に連通するノズル孔79に対してY方向にずれて配置されている。また、一対の他の吐出チャネル61に連通するノズル孔79同士は、Y方向で同じ位置に配置されている。但し、各ノズル孔79は、X方向に直線状に配列されていてもよい。
【0040】
なお、ノズルプレート51とアクチュエータプレート52との間に中間プレート(不図示)を介在させてもよい。この場合、吐出チャネル61とノズル孔79とは、中間プレートに形成された連通孔を通じて連通させる。
【0041】
次に、アクチュエータプレート52に形成された駆動配線について説明する。
図7は、
図3のVII矢視図である。
図7に示すように、アクチュエータプレート52には、共通配線81及び個別配線82が形成されている。
【0042】
図4、
図7に示すように、共通配線81は、共通電極(電極)85と、共通端子86と、を備えている。
共通電極85は、吐出チャネル61の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。共通電極85は、吐出チャネル61の内面において、Z方向の全域に亘って形成されている。なお、共通電極85の詳細については後述する。
【0043】
共通端子86は、アクチュエータプレート52のうち、吐出チャネル61に対して-Y側に位置する部分(以下、尾部90という。)に形成されている。共通端子86は、尾部90の下面において、各吐出チャネル61に対応して設けられている。各共通端子86は、対応する吐出チャネル61に対してY方向に直線状に延びている。共通端子86における+Y側端部は、吐出チャネル61の下端開口縁において共通電極85に連なっている。
【0044】
図4、
図7に示すように、個別配線82は、個別電極87と、個別端子88と、バイパス配線89と、を備えている。
個別電極87は、各非吐出チャネル62の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。図示の例において、個別電極87は、非吐出チャネル62の内面において、Z方向の全域に亘って形成されている。なお、個別電極87の詳細については後述する。
【0045】
個別端子88は、尾部90の下面において、共通端子86よりも-Y側に位置する部分に形成されている。個別端子88は、X方向に延びる帯状とされている。個別端子88は、吐出チャネル61を間に挟んでX方向で向かい合う非吐出チャネル62の下端開口縁において、吐出チャネル61を間に挟んでX方向で向かい合う個別電極87同士を接続している。尾部90において、共通端子86と個別端子88との間に位置する部分には、区画溝91が形成されている。区画溝91は、尾部90において、X方向に延びている。区画溝91は、共通端子86と個別端子88とを分離している。
【0046】
バイパス配線89は、アクチュエータプレート52のうち、個別端子88よりも+Y側に位置する部分に形成されている。バイパス配線89は、アクチュエータプレート52の上面、及び吐出チャネル61を間に挟んでX方向で向かい合う非吐出チャネル62の両内側面を通じて、吐出チャネル61を間に挟んでX方向で向かい合う個別電極87同士を接続している。
【0047】
図4、
図5に示すように、尾部90の下面には、フレキシブルプリント基板92が圧着されている。フレキシブルプリント基板92は、尾部90の下面において、共通端子86と個別端子88に接続されている。フレキシブルプリント基板92は、アクチュエータプレート52の外側を通って上方に引き出されている。
【0048】
図8は、
図3のVIII矢視図である。
ここで、
図4、
図6、
図8に示すように、上述した共通電極85は、吐出チャネル61の内側面(吐出チャネル61に対して-X側に位置する駆動壁65)のうち+X側を向く面(以下、+X側面という。)に形成された第1共通電極部(第1電極部)100と、吐出チャネル61の内側面のうち-X側を向く面(以下、-X側面という。)に形成された第2共通電極部(第2電極部)101と、を備えている。
【0049】
第1共通電極部100は、吐出チャネル61の+X側面(第1側面)において、Z方向の全体に亘って形成されている。第1共通電極部100は、第1上側共通部(第1一方側電極部)100aと、第1下側共通部(第1他方側電極部)100bと、を備えている。
図6に示すように、第1上側共通部100aは、第1共通電極部100の上部領域を構成する。第1上側共通部100aの上端縁は、吐出チャネル61の上端開口縁に達している。
【0050】
第1上側共通部100aの下端縁は、各吐出チャネル61を構成する複数の駆動壁65のうち、最も+X側に位置する駆動壁65(以下、+X側端の駆動壁65という。)から最も-X側に位置する駆動壁65(以下、-X側端の駆動壁65という。)に向かうに従い上方に位置している。すなわち、第1上側共通部100aのZ方向の寸法は、+X側端の駆動壁65から-X側端の駆動壁65に向かうに従い、徐々に小さくなっている。
【0051】
図8に示すように、第1上側共通部100aのY方向での寸法は、各吐出チャネル61を構成する複数の駆動壁65のうちX方向の両端側に位置する駆動壁65(以下、両端側の駆動壁65A,65Bという。)からX方向の中央部に位置する駆動壁65(以下、中央部の駆動壁65Cという。)に向かうに従い徐々に小さくなっている。第1実施形態において、各第1上側共通部100aは、それぞれのY方向の中心が一致するように形成されている。すなわち、各第1上側共通部100aにおけるY方向の両端は、両端側の駆動壁65から中央部の駆動壁65に向かうに従い、Y方向の内側に位置している。
図4に示すように、第1上側共通部100aにおけるY方向の最大寸法(両端側の駆動壁65A,65Bに形成された第1上側共通部100a)は、第1下側共通部100bよりも小さくなっている。
【0052】
図6に示すように、第1下側共通部100bは、第1共通電極部100の下部領域を構成する。第1下側共通部100bの下端縁は、吐出チャネル61の下端開口縁に達している。第1共通電極部100は、第1下側共通部100bを介して共通端子86に接続されている(
図7参照)。第1下側共通部100bの上端部と、第1上側共通部100aの下端部と、が重なり合うことで、第1共通電極部100が吐出チャネル61の+X側面において、Z方向の全体に亘って形成されている。
【0053】
第1下側共通部100bの上端縁は、+X側端の駆動壁65Bから-X側端の駆動壁65Aに向かうに従い、下方に位置している。すなわち、第1下側共通部100bのZ方向の寸法は、-X側端の駆動壁65Aから-X側端の駆動壁65Bに向かうに従い、徐々に小さくなっている。なお、第1上側共通部100aと第1下側共通部100bとは、-X側端の駆動壁65Aにおいても、導通が確保できるように(少なくとも一部が重なり合うように)、Z方向の寸法がそれぞれ設定されている。
【0054】
図7に示すように、第1下側共通部100bにおけるY方向の寸法は、各吐出チャネル61間で同等に形成されている。第1実施形態において、第1下側共通部100bは、吐出チャネル61の下端開口部におけるY方向の寸法と同等に形成されている。
【0055】
図4、
図6、
図8に示すように、第2共通電極部101は、吐出チャネル61の-X側面(第2側面)において、Z方向の全体に亘って形成されている。第2共通電極部101は、第2上側共通部(第2一方側電極部)101aと、第2下側共通部(第2他方側電極部)101bと、を備えている。
第2上側共通部101aは、第2共通電極部101の上部領域を構成する。第2上側共通部101aの上端縁は、吐出チャネル61の上端開口縁に達している。
【0056】
図6に示すように、第2上側共通部101aの下端縁は、各吐出チャネル61を構成する複数の駆動壁65のうち、-X側端の駆動壁65から+X側端の駆動壁65に向かうに従い、上方に位置している。すなわち、第2上側共通部101aのZ方向の寸法は、-X側端の駆動壁65から+X側端の駆動壁65に向かうに従い、徐々に小さくなっている。
【0057】
図8に示すように、第2上側共通部101aのY方向での寸法は、両端側の駆動壁65A,65Bから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い徐々に小さくなっている。第1実施形態において、各第2上側共通部101aは、それぞれのY方向の中心が一致するように形成されている。すなわち、各第2上側共通部101aにおけるY方向の両端は、両端側の駆動壁65から中央部の駆動壁65に向かうに従い、Y方向の内側に位置している。第1実施形態において、第2上側共通部101aにおけるY方向の最大寸法(両端側の駆動壁65A,65Bに形成された第2上側共通部101a)は、第2下側共通部101bよりも小さくなっている(
図4参照)。
【0058】
図6に示すように、第2下側共通部101bは、第2共通電極部101の下部領域を構成する。第2下側共通部101bの下端縁は、吐出チャネル61の下端開口縁に達している。第2共通電極部101は、第2下側共通部101bを介して共通端子86に接続されている。第2下側共通部101bの上端部と、第2上側共通部101aの下端部と、が重なり合うことで、第2共通電極部101が吐出チャネル61の-X側面において、Z方向の全体に亘って形成されている。
【0059】
各吐出チャネル61間において、第2下側共通部101bの上端縁は、-X側端の駆動壁65から+X側端の駆動壁65に向かうに従い、下方に位置している。すなわち、第2下側共通部101bのZ方向の寸法は、-X側端の駆動壁65から-X側端の駆動壁65に向かうに従い、徐々に小さくなっている。なお、第2上側共通部101aと第2下側共通部101bとは、+X側端の駆動壁65Bにおいても、導通が確保できるように、Z方向の寸法がそれぞれ設定されている。
【0060】
図7に示すように、第2下側共通部101bにおけるY方向の寸法は、各吐出チャネル61間で同等に形成されている。第1実施形態において、第2下側共通部101bは、吐出チャネル61の下端開口部におけるY方向の寸法と同等に形成されている。
【0061】
図5、
図6、
図8に示すように、個別電極87は、非吐出チャネル62(駆動壁65)の+X側面(第1側面)に形成された第1個別電極部(第1電極部)110と、非吐出チャネル62(駆動壁65)の-X側面(第2側面)に形成された第2個別電極部(第2電極部)111と、を備えている。
【0062】
第1個別電極部110は、非吐出チャネル62の+X側面において、Z方向の全体に亘って形成されている。第1個別電極部110は、第1上側個別部(第1一方側電極部)110aと、第1下側個別部(第1他方側電極部)110bと、を備えている。
第1上側個別部110aは、第1個別電極部110の上部領域を構成する。第1上側個別部110aは、側面視において、少なくとも吐出チャネル61と重なり合う範囲に形成されている(
図5参照)。第1上側個別部110aの上端縁は、非吐出チャネル62の上端開口縁に達している。
【0063】
図6に示すように、第1上側個別部110aの下端縁は、各非吐出チャネル62を構成する駆動壁65のうち、最も+X側に位置する駆動壁65(以下、+X側端の駆動壁65Eという。)から最も-X側に位置する駆動壁65(以下、-X側端の駆動壁65Dという。)に向かうに従い、上方に位置している。すなわち、第1上側個別部110aのZ方向の寸法は、+X側端の駆動壁65Eから-X側端の駆動壁65Dに向かうに従い、徐々に小さくなっている。
【0064】
図8に示すように、第1上側個別部110aのY方向での寸法は、各非吐出チャネル62を構成する複数の駆動壁65のうちX方向の両端側に位置する駆動壁65(以下、両端側の駆動壁65D,65Eという。)からX方向の中央部に位置する駆動壁65(以下、中央部の駆動壁65Cという。)に向かうに従い徐々に小さくなっている。第1実施形態において、各第1上側個別部110aは、それぞれのY方向の中心が一致するように形成されている。すなわち、各第1上側個別部110aにおけるY方向の両端は、両端側の駆動壁65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い、Y方向の内側に位置している。第1実施形態において、第1上側個別部110aにおけるY方向の寸法は、駆動壁65を挟んで向かい合う第1上側共通部100aにおけるY方向の寸法と同等になっている。
【0065】
図6に示すように、第1下側個別部110bは、第1個別電極部110の下部領域を構成する。第1下側個別部110bの下端縁は、非吐出チャネル62の下端開口縁に達している。
図7に示すように、第1個別電極部110は、第1下側個別部110bを介して個別端子88に接続されている。第1下側個別部110bの上端部と、第1上側個別部110aの下端部と、が重なり合うことで、第1個別電極部110が非吐出チャネル62の+X側面において、Z方向の全体に亘って形成されている。
【0066】
第1下側個別部110bの上端縁は、+X側端の駆動壁65Eから-X側端の駆動壁65Dに向かうに従い、下方に位置している。すなわち、第1下側個別部110bのZ方向の寸法は、+X側端の駆動壁65Eから-X側端の駆動壁65Dに向かうに従い、徐々に小さくなっている。なお、第1上側個別部110aと第1下側個別部110bとは、-X側端の駆動壁65Dにおいても、導通が確保できるように(少なくとも一部が重なり合うように)、Z方向の寸法がそれぞれ設定されている。
【0067】
図7に示すように、第1下側個別部110bにおけるY方向の寸法は、各非吐出チャネル62間で同等に形成されている。第1実施形態において、第1下側個別部110bは、非吐出チャネル62におけるY方向の寸法と同等に形成されている。
【0068】
図5、
図6、
図8に示すように、第2個別電極部111は、非吐出チャネル62の-X側面において、Z方向の全体に亘って形成されている。第2個別電極部111は、第2上側個別部111aと、第2下側個別部111bと、を備えている。
第2上側個別部111aは、第2個別電極部111の上部領域を構成する。第1実施形態において、第2上側個別部111aは、側面視において、少なくとも吐出チャネル61と重なり合う範囲に形成されている。第2上側個別部111aの上端縁は、非吐出チャネル62の上端開口縁に達している。
【0069】
図6に示すように、第2上側個別部111aの下端縁は、-X側端の駆動壁65Dから+X側端の駆動壁65Eに向かうに従い、上方に位置している。すなわち、第2上側個別部111aのZ方向の寸法は、-X側端の駆動壁65Dから+X側端の駆動壁65Eに向かうに従い、徐々に小さくなっている。
【0070】
図8に示すように、第2上側個別部111aのY方向での寸法は、両端側の駆動壁65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い徐々に小さくなっている。第1実施形態において、各第2上側個別部111aは、それぞれのY方向の中心が一致している。すなわち、各第2上側個別部111aにおけるY方向の両端は、両端側の駆動壁65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い、Y方向の内側に位置している。第1実施形態において、第2上側個別部111aにおけるY方向の寸法は、駆動壁65を挟んで向かい合う第2上側共通部101aにおけるY方向の寸法と同等になっている。
【0071】
図5、
図6、
図8に示すように、第2下側個別部111bは、第2個別電極部111の下部領域を構成する。第2下側個別部111bの下端縁は、非吐出チャネル62の下端開口縁に達している。第2個別電極部111は、第2下側個別部111bを介して個別端子88に接続されている(
図7参照)。第2下側個別部111bの上端部と、第2上側個別部111aの下端部と、が重なり合うことで、第2個別電極部111が非吐出チャネル62の-X側面において、Z方向の全体に亘って形成されている。
【0072】
図6に示すように、各非吐出チャネル62間において、第2下側個別部111bの上端縁は、-X側端の駆動壁65Dから+X側端の駆動壁65Eに向かうに従い、下方に位置している。すなわち、第2下側個別部111bのZ方向の寸法は、-X側端の駆動壁65Dから+X側端の駆動壁65Eに向かうに従い、徐々に小さくなっている。第2上側個別部111aと第2下側個別部111bとは、+X側端の駆動壁65Eにおいても、導通が確保できるように、Z方向の寸法がそれぞれ設定されている。
【0073】
図7に示すように、第2下側個別部111bにおけるY方向の寸法は、各非吐出チャネル62間で同等に形成されている。第1実施形態において、第2下側個別部111bは、非吐出チャネル62におけるY方向の寸法と同等に形成されている。
【0074】
ここで、
図6、
図8に示すように、吐出チャネル61と、吐出チャネル61に対して-X側で隣り合う非吐出チャネル62と、の間を仕切る駆動壁65aには、+X側面に第1共通電極部100が形成され、-X側面に第2個別電極部111が形成されている。各駆動壁65aに形成された第1共通電極部100及び第2個別電極部111のうち、駆動壁65aを挟んで向かい合い(X方向から見て重なり合い)、かつ駆動壁65aに対して電界を生じさせる領域を第1対向領域とする。この場合、第1対向領域のうち第1上側共通部100aは、+X側端の駆動壁65aから-X側端の駆動壁65aに向かうに従いZ方向の寸法が徐々に小さくなる一方、両端側の駆動壁65aから中央部の駆動壁65aに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなっている。また、第1対向領域のうち第2上側個別部111aは、-X側端の駆動壁65aから+X側端の駆動壁65aに向かうに従いZ方向の寸法が徐々に小さくなっている一方、両端側の駆動壁65aから中央部の駆動壁65aに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなっている。これにより、各第1対向領域の面積が各駆動壁65a毎に同一になるように設定されている。
【0075】
吐出チャネル61と、吐出チャネル61に対して+X側で隣り合う非吐出チャネル62と、の間を仕切る駆動壁65bには、-X側面に第2共通電極部101が形成され、+X側面に第1個別電極部110が形成されている。各駆動壁65bに形成された第2共通電極部101及び第1個別電極部110のうち、駆動壁65bを挟んで向かい合い(X方向から見て重なり合い)、かつ駆動壁65bに対して電界を生じさせる領域を第2対向領域とする。この場合、第2対向領域のうち第2上側共通部101aは、-X側端の駆動壁65bから+X側端の駆動壁65bに向かうに従いZ方向の寸法が徐々に小さくなる一方、両端側の駆動壁65bから中央部の駆動壁65bに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなっている。また、第2対向領域のうち第1上側個別部110aは、+X側端の駆動壁65bから-X側端の駆動壁65bに向かうに従いZ方向の寸法が徐々に小さくなっている一方、両端側の駆動壁65bから中央部の駆動壁65bに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなっている。これにより、各第2対向領域の面積が各駆動壁65b毎に同一になるように設定されている。第1実施形態では、全ての駆動壁65a,65bにおいて、第1対向領域及び各第2対向領域の面積が同一になっていることが好ましい。
【0076】
[プリンタ1の動作方法]
次に、プリンタ1を利用して、被記録媒体Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
プリンタ1は、初期状態として、各インクタンク4にそれぞれ異なる色のインクが十分に充填されているものとする。インクジェットヘッド5には、インクタンク4内のインクがインク循環機構6を介して充填された状態となっている。
【0077】
このような初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、被記録媒体Pが搬送機構2,3のローラ11,12に挟み込まれながら+X側に搬送される。被記録媒体Pの搬送と同時にキャリッジ29がY方向に移動することで、キャリッジ29に搭載されたインクジェットヘッド5がY方向に往復移動する。
インクジェットヘッド5が往復移動する間に、各インクジェットヘッド5よりインクを被記録媒体Pに適宜吐出させる。これにより、被記録媒体Pに対して文字や画像等の記録を行うことができる。
【0078】
ここで、各インクジェットヘッド5の動きについて、以下に詳細に説明する。
第1実施形態のような循環式サイドシュートタイプのインクジェットヘッド5では、まず
図2に示す加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を作動させることで、循環流路23内にインクを流通させる。この場合、インク供給管21を流通するインクは、
図4に示すように、入口共通インク室70及び入口スリット71を通して各吐出チャネル61内に供給される。各吐出チャネル61内に供給されたインクは、各吐出チャネル61をY方向に流通する。その後、インクは、出口スリット76を通じて出口共通インク室75に排出された後、インク排出管22を通してインクタンク4に戻される。これにより、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクを循環させることができる。
【0079】
キャリッジ29(
図1参照)の移動によってインクジェットヘッド5の往復移動が開始されると、フレキシブルプリント基板92を介して共通電極85及び個別電極87間に駆動電圧が印加される。この際、個別電極87を駆動電位Vddとし、共通電極85を基準電位GNDとして各電極85,87間に駆動電圧を印加する。すると、各駆動壁65のうち、各対向領域で挟まれた部分に電界が生じることで、各駆動壁65がZ方向の中間部分を中心にしてV字状に屈曲変形する。すなわち、駆動壁65は吐出チャネル61の容積が拡大するように変形する。
【0080】
各吐出チャネル61の容積を増大させた後、共通電極85及び個別電極87間に印加した電圧をゼロにする。すると、駆動壁65が復元し、一旦増大した吐出チャネル61の容積が元の容積に戻る。これにより、吐出チャネル61の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。その結果、インクがノズル孔79を通じて液滴状に吐出される。ノズル孔79から吐出されたインクが被記録媒体P上に着弾することで、被記録媒体Pに文字や画像等を記録することができる。
【0081】
[ヘッドチップ50の製造方法]
次に、ヘッドチップ50の製造方法について説明する。
図9は、ヘッドチップ50の製造方法を示すフローチャートである。
図10~
図18は、ヘッドチップ50の製造方法を説明するための工程図である。以下の説明では、便宜上、ヘッドチップ50をチップレベルで製造する場合を例にして説明する。
図9に示すように、ヘッドチップ50の製造方法は、上面パターン形成工程S1と、アクチュエータプレート加工工程S2と、第1配線形成工程S3と、カバープレート接合工程S4と、グラインド工程S5と、下面パターン形成工程S6と、第2配線形成工程S7と、ノズルプレート接合工程S8と、を備えている。
【0082】
上面パターン形成工程S1では、アクチュエータプレート52の上面に対してマスクパターン(不図示)を形成する。具体的には、アクチュエータプレート52の上面にマスク材料(例えば、レジスト膜)を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いてマスク材料をパターニングする。マスクパターンには、バイパス配線89の形成領域のうち、アクチュエータプレート52の上面に位置する部分にマスク開口が形成されている。なお、上面パターン形成工程S1に代えて、第1配線形成工程S3の後、レーザー照射等によってアクチュエータプレート52の上面上に形成された不要な導電材料を除去してもよい。
【0083】
図10、
図15に示すように、アクチュエータプレート加工工程S2では、アクチュエータプレート52のうち、吐出チャネル61及び非吐出チャネル62の形成領域に対してアクチュエータプレート52の上方からダイサーを進入させる。この際、マスクパターンのうち各チャネル61,62の形成領域に位置する部分が、ダイサーによってアクチュエータプレート52とともに一括して切削される。なお、ダイサーの進入量は、後のグラインド工程S5でのアクチュエータプレート52の仕上がり厚さよりも大きく設定する。
【0084】
図11、
図16に示すように、第1配線形成工程S3では、アクチュエータプレート52の上方から電極材料を成膜することで、バイパス配線89、上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aを形成する。第1配線形成工程S3では、アクチュエータプレート52の上面に上面側メタルマスク135をセットした状態で、第1上側蒸着工程(第1蒸着工程)S3aと第2上側蒸着工程(第2蒸着工程)S3bとを行う。各上側蒸着工程S3a,S3bでは、Y方向から見てアクチュエータプレート52の上面に交差する斜め方向から電極材料を斜め蒸着する。具体的に、第1上側蒸着工程S3aでは、アクチュエータプレート52の上方であって、アクチュエータプレート52に対して+X側に配置された蒸着源136から、各駆動壁65の+X側面に対して斜め蒸着を行う(
図16参照)。第2上側蒸着工程S3bでは、アクチュエータプレート52に対して-X側に配置された蒸着源136から、各駆動壁65の-X側面に対して斜め蒸着を行う(
図17参照)。
【0085】
上面側メタルマスク135には、第1マスク開口135a及び第2マスク開口135bが形成されている。第1マスク開口135aは、上面側メタルマスク135のうち上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aの形成領域に平面視で重なる部分が、チャネル列60全体に亘って一括して開口している。第1マスク開口135aは、X方向の両端側から中心に向かうに従い、Y方向の寸法が徐々に縮小している。第1実施形態では、第1マスク開口135aの開口縁のうち、Y方向で向かい合う対向縁同士がX方向の両端側から中心に向かうに従いY方向の内側に延びている。第2マスク開口135bは、上面側メタルマスク135のうちバイパス配線89の形成領域に平面視で重なる部分が、各チャネル列60全体に亘って一括して開口している。
【0086】
以下、第1マスク開口135aの設定方法について説明する。
図19は、第1上側蒸着工程S3aを説明するためのヘッドチップ50を示す断面図である。
図19に示すように、各チャネル61,62の内側面(成膜面)に対して斜め蒸着を行う場合、蒸着源136から成膜面までのX方向の距離に応じて蒸着深さD(D1,D2…)が異なる。具体的に、蒸着源とチャネル61,62の上端開口部との間のX方向の距離をx(x1,x2…)、アクチュエータプレート52の上面と蒸着源136とのZ方向の寸法をz、チャネル61,62の上端開口部におけるX方向の寸法をsとした場合、以下の式(1)が成り立つ。
tanβ=s/D=x/z…(1)
式(1)より、蒸着深さDは式(2)の通り表される。
D=s/tanβ=sz/x…(2)
式(2)より、蒸着深さDは、tanβ(β1,β2…)が大きくなるに従い(蒸着源136からX方向に離れるに従い)浅くなることが分かる。
【0087】
図6、
図8に示すように、対向領域を設定するにあたっては、一の駆動壁65に形成された共通電極部100及び個別電極部110のうち、面積の小さい電極部が支配的となる。ヘッドチップ50では、上側共通部100a,101a及び下側共通部100b,101b同士、並びに上側個別部110a,111a及び下側個別部110b,111b同士でY方向の寸法が異なっている。具体的に、下側共通部100b,101b及び下側個別部110b,111bについては、端子86,88に接続する関係で、Y方向の寸法を調整することが難しい。一方、上側共通部100a,101aは、Y方向の寸法を吐出チャネル61の下端開口部よりも大きく形成してしまうと、グラインド工程S5の際にY方向の両端部が吐出チャネル61におけるY方向の両端縁とともに削られてしまい、バリが発生する可能性がある。したがって、上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aについては、グラインド工程S5で発生するバリを抑制するために、Y方向の寸法を吐出チャネル61の下端開口部(下側共通部100b,101b及び下側個別部110b,111b)よりも小さくする必要がある。この場合、従来のヘッドチップのように、上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aのY方向での寸法を各駆動壁65間で同一に設定した場合には、両端側に位置する駆動壁65において、上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aの何れかの蒸着深さDが最小となる。そのため、対向領域の面積は、両端側の駆動壁65で最小となり、両端側の駆動壁65から中央部の駆動壁65に向かうに従い徐々に大きくなる。
【0088】
図20は、チャネル61,62の配列方向(X方向)に対するtanβ(蒸着深さDの理論値)を示すグラフである。具体的に、
図20に示すグラフは、X方向を横軸とした上で、各チャネル61,62でのtanβの値をプロットしたものである。
図20において、実線は第1上側蒸着工程S3aを示し、破線は第2上側蒸着工程S3bを示している。
図20に示すように、蒸着源136の高さzを一定とした場合、蒸着源136からの距離xが増加するに従い、tanβが増加することが分かる。式(2)より、蒸着深さDはtanβに対して反比例することから、チャネル61,62の上端開口部の寸法sと、蒸着源136の高さzを一定とした場合、蒸着深さDは蒸着源136からのX方向の距離に対して反比例する。
【0089】
そこで、駆動壁65毎の上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aにおけるtanβ(蒸着深さD)の大きさに合わせて、上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aのY方向の寸法(蒸着長さ)を調整する。具体的には、中央部の駆動壁65Cでの上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aのY方向の寸法が最小となり、両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eでの上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aのY方向の寸法が最大となるように、第1マスク開口135aのY方向の寸法を調整する。すなわち、中央部の駆動壁65Cと両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eとの間のtanβ(蒸着深さD)の差分をaとすると、中央部の駆動壁65Cと両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eとの間でY方向の寸法(蒸着長さ)をaだけ異ならせる。第1実施形態では、各駆動壁65間において、蒸着長さの調整量を、1:1の割合でY方向の両側に分配している。すなわち、第1マスク開口135aのうちY方向で向かい合う対向縁同士がX方向の両端側から中心に向かうに従いY方向の内側に延びている。なお、蒸着長さをY方向の両側で分配するにあたって、分配率は1:1以外であってもよい。
【0090】
図11、
図16に示すように、上述した上面側メタルマスク135を用いて第1上側蒸着工程S3aを行うことで、バイパス配線89、第1上側共通部100a及び第1上側個別部110aが形成される。具体的に、バイパス配線89は、アクチュエータプレート52の上面及び非吐出チャネル62の+X側面に跨って形成される。また、第1上側共通部100a及び第1上側個別部110aは、+X側端の駆動壁65B,65Eから-X側端の駆動壁65A,65Dに向かうに従いZ方向の寸法が徐々に小さくなる一方、両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなるように形成される。
【0091】
図12、
図17に示すように、第2上側蒸着工程S3bでは、第1上側蒸着工程S3aに対してアクチュエータプレート52の中心回りにアクチュエータプレート52を180°反転させた状態で、アクチュエータプレート52に対して斜め蒸着を行う。これにより、バイパス配線89のうち、アクチュエータプレート52の上面及び非吐出チャネル62の-X側面に位置する部分が形成される。また、第2上側共通部101a及び第2上側個別部111aは、-X側端の駆動壁65A,65Dから+X側端の駆動壁65B,65Eに向かうに従いZ方向の寸法が徐々に小さくなる一方、両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなるように形成される。なお、第1配線形成工程S3の終了後は、上面側メタルマスク135を取り外し、リフトオフ等によってマスクパターンを除去する。
【0092】
図13に示すように、カバープレート接合工程S4では、アクチュエータプレート52の上面に対し、接着剤を介してカバープレート53を貼り付ける。これにより、アクチュエータプレート52及びカバープレート53が積層された積層体が形成される。
【0093】
図14に示すように、グラインド工程S5では、アクチュエータプレート52の下面に対してグラインド加工を施す(
図13中鎖線参照)。この際、吐出チャネル61及び非吐出チャネル62がアクチュエータプレート52の下面で開口するまでアクチュエータプレート52をグラインドする。
【0094】
下面パターン形成工程S6では、アクチュエータプレート52の下面に対して、共通端子86及び個別端子88の形成領域が開口するマスクパターン(不図示)を形成する。なお、下面パターン形成工程S6に代えて、第2配線形成工程S7の後、レーザー照射等によってアクチュエータプレート52の下面上に形成された不要な導電材料を除去してもよい。
【0095】
図18に示すように、第2配線形成工程S7では、アクチュエータプレート52の下方から電極材料を成膜することで、共通端子86、個別端子88、下側共通部100b,101b及び下側個別部110b,111bを形成する。第2配線形成工程S7では、アクチュエータプレート52の下面に下面側メタルマスク141をセットした状態で、上述した第1配線形成工程S3と同様に、アクチュエータプレート52に対して+X側及び-X側から斜め蒸着を行う。下面側メタルマスク141に形成されたマスク開口141aは、共通端子86、個別端子88、下側共通部100b,101b及び下側個別部110b,111bの形成領域と平面視で重なる部分が、チャネル列60の全体に亘って一括して開口している。これにより、アクチュエータプレート52の下面に共通端子86及び個別端子88が形成され、吐出チャネル61の下端開口部を通じて下側共通部100b,101bが形成され、非吐出チャネル62の下端開口部を通じて下側個別部110b,111bが形成される。なお、第2配線形成工程S7の終了後は、下面側メタルマスク141を取り外し、リフトオフ等によってマスクパターンを除去する。また、第2配線形成工程S7の後、アクチュエータプレート52の下面に対して区画溝91を形成する。
【0096】
ノズルプレート接合工程S8では、ノズル孔79と吐出チャネル61とを位置合わせした状態で、アクチュエータプレート52の下面に接着剤を介してノズルプレート51を貼り付ける。
以上により、ヘッドチップ50が製造される。なお、ノズルプレート51とアクチュエータプレート52との間に中間プレートを介在させる場合には、第2配線形成工程S7とノズルプレート接合工程S8との間に、中間プレート接合工程を行う。中間プレート接合工程では、アクチュエータプレート52の下面に対し、接着剤を介して中間プレートを接合する。
【0097】
このように、本実施形態のヘッドチップ50において、第1上側共通部100aは、両端側の駆動壁65A,65Bから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなっており、第2上側個別部111aは、両端側の駆動壁65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなっている構成とした。また、第2上側共通部101aは、両端側の駆動壁65A,65Bから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなっており、第1上側個別部110aは、両端側の駆動壁65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなっている構成とした。
この構成によれば、各チャネル61,62(駆動壁65)において、対向領域の面積(有効面積)を、蒸着源136からの距離に依存することなく設定できる。この場合、チャネル61,62(駆動壁65)の形状変更をすることなく、各チャネル61,62間において、有効面積が均一化し易くなる。その結果、インク吐出時において、駆動壁65の変位量を均一化することができるので、吐出性能のばらつきを抑制できる。
しかも、第1上側蒸着工程S3aにおいて、Y方向の寸法が両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さい第1マスク開口135aが形成された上面側メタルマスク135を用いて斜め蒸着を行うことで、現状のプロセスを変更せず、各チャネル61,62間において有効面積が均一化し易くなる。
【0098】
本実施形態では、各対向領域の面積が各チャネル61,62(駆動壁65)間で互いに同一になるように設定されている構成とした。
この構成によれば、各駆動壁65間での有効面積が同一になるように設定することで、吐出性能のばらつきをより確実に抑制できる。
【0099】
本実施形態のヘッドチップ50において、対向領域におけるY方向両端部は、X方向の両端側に位置する駆動壁65A,65B,65D,65Eから中央部に位置する駆動壁65Cに向かうに従いY方向の内側に位置する構成とした。
この構成によれば、複数の駆動壁65間において各電極部100,101のY方向の長さを異ならせた場合であっても、各駆動壁65間において対向領域に対してY方向の中央部でノズル孔79を開口させることができる。これにより、各チャネル61,62間での吐出性能のばらつきをより確実に抑制できる。
【0100】
本実施形態のヘッドチップ50において、共通電極部100,101は、上方に位置する上側共通部100a,101a及び下方に位置する下側共通部100b,101bを備え、個別電極部110,111は、上方に位置する上側個別部110a,111a及び下方に位置する下側個別部110b,111bを備え、対向領域のうち上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aのY方向の寸法は、両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い小さくなっている構成とした。
この構成によれば、アクチュエータプレート52に対してZ方向の両側から駆動配線を形成する場合において、対向領域のZ方向での寸法ばらつきに起因する有効面積のばらつきを、上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aにおけるY方向の寸法調整で吸収することができる。
【0101】
本実施形態のインクジェットヘッド5及びプリンタ1は、上述したヘッドチップ50を備えているので、各吐出チャネル61毎の吐出性能のばらつきが少ない高性能なインクジェットヘッド5及びプリンタ1を提供できる。
【0102】
なお、上述した第1実施形態では、上面側メタルマスク135の第1マスク開口135aをtanβの理論値に合わせて設定したが、この構成に限られない。例えば
図21に示す上面側メタルマスク135のように、
図20に示すグラフを直線近似したものに合わせて第1マスク開口135aを設定してもよい。この場合、第1マスク開口135aにおけるY方向で向かい合う端縁を直線状に形成することができるので、上面側メタルマスク135の加工性を向上させることができる。
【0103】
そして、
図21に示す上面側メタルマスク135を用いて第1配線形成工程S3を行うことで、
図22に示すように、上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aのY方向の寸法が、両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い直線状に小さくなる。
【0104】
第1マスク開口135aは、従来のヘッドチップにおける各駆動壁65での静電容量のシミュレーション結果に合わせて設定してもよい。なお、従来のヘッドチップとは、上側共通部及び上側個別部のY方向の寸法が各駆動壁65間で同一のものである。
【0105】
図23は、従来のヘッドチップにおいて、チャネル61,62の配列方向(X方向)に対する各駆動壁65での静電容量の大きさを示すグラフである。
図23に示すグラフのように、従来のヘッドチップでは、対向領域の面積が両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い徐々に大きくなることから、静電容量についても両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い徐々に大きくなる。したがって、各駆動壁65での静電容量の大きさに合わせて上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aのY方向の寸法する場合においても、上述した第1実施形態と同様に、中央部の駆動壁65Cでの上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aのY方向の寸法が最小となり、両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eでの上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aのY方向の寸法が最大となるように、第1マスク開口135のY方向の寸法が調整される。なお、各駆動壁65での静電容量の大きさは、チャネル列60全体で円弧状に表される。そのため、
図24に示すように、静電容量の大きさに合わせて第1マスク開口135aを設定する場合には、第1マスク開口135aのうちY方向で向かい合う端縁がX方向の中心に向かうに従いY方向の内側に向けて凸の円弧状に形成される。
【0106】
そして、
図24に示す上面側メタルマスク135を用いて第1配線形成工程S3を行うことで、
図25に示すように、上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aのY方向の寸法が、両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い円弧状に小さくなる。
【0107】
(第2実施形態)
図26は、第2実施形態に係るヘッドチップ50の平面図である。第2実施形態では、上側共通部100a及び上側個別部110aと駆動壁65との間に、低誘電膜200a~200dを介在させることで、対向領域の調整を行う点で第1実施形態と相違している。
【0108】
図26に示すように、低誘電膜200a~200dは、第1共通側低誘電膜200aと、第2共通側低誘電膜200bと、第1個別側低誘電膜200cと、第2個別側低誘電膜200dと、を含んでいる。低誘電膜200a~200dは、誘電率が低い材料(例えばSiO
2等)により形成された薄膜である。
【0109】
第1共通側低誘電膜200aは、各吐出チャネル61の内側面のうち+X側面において、Y方向の両端部に一対ずつ形成されている。各第1共通側低誘電膜200aの上端縁は、吐出チャネル61の上端開口縁に達している。第1共通側低誘電膜200aのZ方向の寸法は、対応する各吐出チャネル61の+X側面に形成された第1上側共通部100aと同様に、+X側端の駆動壁65から-X側端の駆動壁65に向かうに従い、徐々に小さくなっている。
【0110】
各吐出チャネル61の+X側面に形成された一対の第1共通側低誘電膜200aにおいて、それぞれのY方向の寸法は、両端側の駆動壁65A,65Bから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い徐々に大きくなっている。各吐出チャネル61の+X側面に形成された一対の第1共通側低誘電膜200aにおいて、Y方向の外側端縁の位置は、各吐出チャネル61間で一致している。各吐出チャネル61の+X側面に形成された一対の第1共通側低誘電膜200aにおいて、Y方向の内側端縁の位置は、両端側の駆動壁65A,65Bから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の内側に位置している。
【0111】
第2共通側低誘電膜200bは、各吐出チャネル61の内側面のうち-X側面において、Y方向の両端部に一対ずつ形成されている。各第2共通側低誘電膜200bの上端縁は、吐出チャネル61の上端開口縁に達している。第2共通側低誘電膜200bのZ方向の寸法は、対応する各吐出チャネル61の-X側面に形成された第2上側共通部101aと同様に、-X側端の駆動壁65Aから+X側端の駆動壁65Bに向かうに従い、徐々に小さくなっている。
【0112】
各吐出チャネル61の-X側面に形成された一対の第2共通側低誘電膜200bにおいて、それぞれのY方向の寸法は、両端側の駆動壁65A,65Bから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い徐々に大きくなっている。各吐出チャネル61の-X側面に形成された一対の第2共通側低誘電膜200bにおいて、Y方向の外側端縁の位置は、各吐出チャネル61間で一致している。各吐出チャネル61の+X側面に形成された一対の第2共通側低誘電膜200bにおいて、Y方向の内側端縁の位置は、両端側の駆動壁65A,65Bから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の内側に位置している。
【0113】
第1個別側低誘電膜200cは、各非吐出チャネル62の内側面のうち+X側面において、側面視で吐出チャネル61におけるY方向の両端部に重なり合う部分に一対ずつ形成されている。各第1個別側低誘電膜200cの上端縁は、非吐出チャネル62の上端開口縁に達している。第1個別側低誘電膜200cのZ方向の寸法は、対応する各非吐出チャネル62の+X側面に形成された第1上側個別部110aと同様に、+X側端の駆動壁65Eから-X側端の駆動壁65Dに向かうに従い、徐々に小さくなっている。
【0114】
各非吐出チャネル62の+X側面に形成された一対の第1個別側低誘電膜200cにおいて、それぞれのY方向の寸法は、両端側の駆動壁65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い徐々に大きくなっている。各非吐出チャネル62の+X側面に形成された一対の第1個別側低誘電膜200cにおいて、Y方向の外側端縁の位置は、各非吐出チャネル62間で一致している。各非吐出チャネル62の+X側面に形成された一対の第1個別側低誘電膜200cにおいて、Y方向の内側端縁の位置は、両端側の駆動壁65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の内側に位置している。
【0115】
第2個別側低誘電膜200dは、各非吐出チャネル62の内側面のうち-X側面において、側面視で吐出チャネル61におけるY方向の両端部に重なり合う部分に一対ずつ形成されている。各第2個別側低誘電膜200dの上端縁は、非吐出チャネル62の上端開口縁に達している。第2個別側低誘電膜200dのZ方向の寸法は、対応する各非吐出チャネル62の-X側面に形成された第2上側個別部111aと同様に、-X側端の駆動壁65Dから+X側端の駆動壁65Eに向かうに従い、徐々に小さくなっている。
【0116】
各非吐出チャネル62の+X側面に形成された一対の第2個別側低誘電膜200dにおいて、それぞれのY方向の寸法は、両端側の駆動壁65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い徐々に大きくなっている。各非吐出チャネル62の-X側面に形成された一対の第2個別側低誘電膜200dにおいて、Y方向の外側端縁の位置は、各非吐出チャネル62間で一致している。各非吐出チャネル62の-X側面に形成された一対の第2個別側低誘電膜200dにおいて、Y方向の内側端縁の位置は、両端側の駆動壁65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の内側に位置している。
【0117】
第2実施形態において、第1上側共通部100a及び第2上側共通部101aは、各吐出チャネル61間において、Y方向の寸法が同等に形成されている。具体的に、第1上側共通部100a及び第2上側共通部101aは、吐出チャネル61におけるY方向のほぼ全域に亘って延びている。すなわち、第1上側共通部100aのうち、Y方向の両端部は、第1共通側低誘電膜200aを挟んで吐出チャネル61の+X側面上に配置されている。一方、第2上側共通部101aのうち、Y方向の両端部は、第2個別側低誘電膜200dを挟んで非吐出チャネル62の-X側面上に配置されている。
【0118】
第1上側個別部110a及び第2上側個別部111aは、各非吐出チャネル62間において、Y方向の寸法が同等に形成されている。第2実施形態において、第1上側個別部110a及び第2上側個別部111aは、上側共通部100a,101aとY方向で同等の寸法に形成されている。第1上側個別部110aのうち、Y方向の両端部は、第1個別側低誘電膜200cを挟んで非吐出チャネル62の+X側面上に配置されている。一方、第2上側個別部111aのうち、Y方向の両端部は、第2個別側低誘電膜200dを挟んで非吐出チャネル62の-X側面上に配置されている。
【0119】
ここで、第1上側共通部100aのうち、第1共通側低誘電膜200aと重なり合う部分は、駆動壁65に対して電界を生じさせない部分となる。第2上側個別部111aのうち、第2個別側低誘電膜200dと重なり合う部分は、駆動壁65に対して電界を生じさせない部分となる。したがって、第1上側共通部100a及び第2上側個別部111aは、駆動壁65に直接接している部分(低誘電膜200a,200dに対してY方向の内側に位置する部分)が、第1対向領域を構成する。この場合、第1上側共通部100a及び第2上側個別部111aのうち、第1対向領域を構成する部分は、両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなっている。第2実施形態において、各第1対向領域の面積は各駆動壁65毎に同一になるように設定されている。
【0120】
第2上側共通部101aのうち、第2共通側低誘電膜200bと重なり合う部分は、駆動壁65に対して電界を生じさせない部分となる。第1上側個別部110aのうち、第1個別側低誘電膜200cと重なり合う部分は、駆動壁65に対して電界を生じさせない部分となる。したがって、第2上側共通部101a及び第2上側個別部111aは、駆動壁65に直接接している部分(低誘電膜200b,200cに対してY方向の内側に位置する部分)が、第2対向領域を構成する。この場合、第2上側共通部101a及び第1上側個別部110aのうち、第2対向領域を構成する部分は、両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなっている。第2実施形態において、各第2対向領域の面積は各駆動壁65毎に同一になるように設定されている。
【0121】
なお、第2実施形態では、各電極のうち対向領域を構成する部分が、駆動壁65に直接接している構成について説明したが、この構成に限られない。各電極のうち対向領域を構成する部分において、駆動壁65と各電極との間に導電性を有する材料が介在していてもよい。すなわち、駆動壁65と各電極とが間接的に接している場合であっても、駆動壁65に対して電界を生じさせる構成であれば対向領域として機能させることができる。また、低誘電膜200a~200dは、対応する各電極のうち所望の領域に形成されていれば、各電極に対してY方向の外側にはみ出していてもよい。
【0122】
次に、第2実施形態に係るヘッドチップ50の製造方法について説明する。第2実施形態のヘッドチップ50を製造するには、
図27示すようにアクチュエータプレート加工工程S2と第1配線形成工程S3との間に低誘電膜形成工程S10を行う。
【0123】
図28、
図29は、第2実施形態に係るヘッドチップ50の製造方法を説明するための平面図である。
図28に示すように、低誘電膜形成工程S10では、アクチュエータプレート52の上面に低誘電膜用メタルマスク210をセットした状態で、第1成膜工程S10aと第2成膜工程S10bとを行う。第1成膜工程S10aでは、アクチュエータプレート52の上方であって、アクチュエータプレート52に対して+X側に配置された蒸着源220から、各駆動壁65の+X側面に対して斜め蒸着を行う。
図29に示すように、第2成膜工程S10bでは、アクチュエータプレート52に対して-X側に配置された蒸着源220から、各駆動壁65の-X側面に対して斜め蒸着を行う。
【0124】
低誘電膜用メタルマスク210には、平面視において、各チャネル61,62の低誘電膜200a~200dの形成領域が一括して開口するマスク開口210aが形成されている。マスク開口210aは、チャネル列60におけるY方向の両端部に一対で設けられている。各マスク開口210aは、X方向の両側から中心に向かうに従いY方向の寸法が徐々に拡大している。なお、X方向の位置に対するマスク開口210aのY方向の寸法は、上述した第1マスク開口135aの設定方法に基づいて行う。すなわち、各チャネル61,62の内側面のうち、対向領域として機能する部分以外の部分が、低誘電膜200a~200dで覆われるようにマスク開口210aの寸法を調整する。
【0125】
上述した低誘電膜用メタルマスク210を用いて第1成膜工程S10aを行うことで、第1共通側低誘電膜200a及び第1個別側低誘電膜200cが対応するチャネル61,62の+X側面に一対ずつ形成される。
図29に示すように、第2成膜工程S10bでは、第1成膜工程S10aに対してアクチュエータプレート52の中心回りにアクチュエータプレート52を180°反転させた状態で、アクチュエータプレート52に対して斜め蒸着を行う。これにより、第2共通側低誘電膜200b及び第2個別側低誘電膜200dが対応するチャネル61,62の-X側面に一対ずつ形成される。
【0126】
このように、第2実施形態では、低誘電膜200a~200dにおけるY方向の寸法を、中央部の駆動壁65から両端側の駆動壁65に向かうに従い小さくする構成とした。
この構成によれば、対応する低誘電膜200a~200dを覆うように共通電極部100,101及び個別電極部110,111を形成することで、対向領域のうち上側共通部100a,101a及び上側個別部110a,111aのY方向の寸法は、両端側の駆動壁65A,65B,65D,65Eから中央部の駆動壁65Cに向かうに従い小さくなる。これにより、各チャネル61,62間において、有効面積が均一化し易くなる。
【0127】
しかも、チャネル61,62の内側面に対して予め低誘電膜200a~200dを形成しておくことで、チャネル61,62の内側面にY方向の寸法を一律で電極部100,101,110,111を形成した場合であっても、電極部100,101,110,111のうちチャネル61,62の内側面に接している部分であって、互いに向かい合う部分のみを対向領域として機能させることができる。
【0128】
なお、第2実施形態では、各駆動壁65の上半部分のみに低誘電膜200a~200dが形成された構成について説明したが、この構成に限られない。低誘電膜200a~200dは、例えばアクチュエータプレート52に対して上下両面から成膜することで、各駆動壁65におけるZ方向の全体に亘って形成してもよい。
【0129】
(第3実施形態)
図30は、第3実施形態に係るヘッドチップ300の分解斜視図である。第3実施形態では、吐出チャネル310における延在方向の端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのヘッドチップ300を採用する点で上述した各実施形態と相違している。
図30に示すヘッドチップ300は、アクチュエータプレート301と、カバープレート302と、ノズルプレート303と、を備えている。
アクチュエータプレート301は、Y方向を厚さ方向として配置されている。以下の説明において、+Y側を表面側とし、-Y側を裏面側という場合がある。
【0130】
アクチュエータプレート301には、吐出チャネル310及び非吐出チャネル311が形成されている。吐出チャネル(チャネル)310及び非吐出チャネル(チャネル)311は、駆動壁312を隔ててX方向に交互に並んで形成されている。
【0131】
図31は、
図30のXXXI-XXXI線に対応する断面図である。
図31に示すように、吐出チャネル310は、アクチュエータプレート301の下端面(開口面)上で開口するとともに、Z方向に延びている。吐出チャネル310の上端部は、上方に向かうに従い吐出チャネル310の深さが漸次浅くなる円弧状に形成されている。
【0132】
図32は、
図30のXXXII-XXXII線に対応する断面図である。
図32に示すように、非吐出チャネル311は、アクチュエータプレート301をZ方向に貫通している。非吐出チャネル311の深さは、Z方向の全域で一様になっている。
【0133】
図30に示すように、カバープレート302は、アクチュエータプレート301の表面に接合されている。カバープレート302は、アクチュエータプレート301の上端部(以下、尾部301aという。)を突出させた状態で、各チャネル310,311の表面側開口部を閉塞している。
【0134】
カバープレート302において、吐出チャネル310の上端部とY方向から見て重なり合う位置には、共通インク室302aが形成されている。共通インク室302aは、例えば各チャネル310,311を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート302の表面上で開口している。
共通インク室302aにおいて、吐出チャネル310とY方向から見て重なり合う位置には、スリット302bが形成されている。スリット302bは、各吐出チャネル310の上端部と、共通インク室302a内と、の間を各別に連通している。スリット302bは、それぞれ各吐出チャネル310に連通する一方、各非吐出チャネル311には連通していない。
【0135】
ノズルプレート303は、アクチュエータプレート301の下端面に接合されている。ノズルプレート303には、ノズル孔303aが形成されている。ノズル孔303aは、ノズルプレート303のうち、吐出チャネル310にZ方向で向かい合う位置に各別に形成されている。
【0136】
アクチュエータプレート301には、共通配線320及び個別配線321が形成されている。
図30、
図31に示すように、共通配線320は、共通電極325と、共通端子326と、を備えている。
共通電極325は、各吐出チャネル310の内側面にそれぞれ形成されている。
共通端子326は、アクチュエータプレート301の表面上において、吐出チャネル310の上方に位置する部分(尾部301a)に形成されている。共通端子326の下端部は、吐出チャネル310における表面側開口縁において、共通電極325に接続されている。
【0137】
図30、
図32に示すように、個別配線321は、個別電極327と、個別端子328と、を備えている。
個別電極327は、各非吐出チャネル311の内側面にそれぞれ形成されている。
個別端子328は、アクチュエータプレート301の表面上において、共通端子326よりも上方に位置する部分に形成されている。個別端子328は、吐出チャネル310を間に挟んでX方向で向かい合う非吐出チャネル311の個別電極327同士を接続している。
【0138】
尾部301aの表面には、フレキシブルプリント基板340が圧着されている。フレキシブルプリント基板340は、尾部301aの表面において、共通端子326と個別端子328に接続されている。
【0139】
図33は、
図30のXXXIII-XXXIII線に対応する断面図である。
ここで、
図33に示すように、共通電極325は、各吐出チャネル310の+X側面に形成された第1共通電極部325aと、各吐出チャネル310の-X側面に形成された第2共通電極部325bと、を含んでいる。
第1共通電極部325aは、各吐出チャネル310の+X側面において、表面側の半分を含む領域に形成されている。第1共通電極部325aの表面側端縁は、吐出チャネル310の表面側開口縁に達している。各第1共通電極部325aの裏面側端縁は、+X側面におけるY方向の中心よりも裏面側に位置している。各吐出チャネル310間において、第1共通電極部325aの裏面側端縁は、+X側端の駆動壁312Aから-X側端の駆動壁312Bに向かうに従い表面側に位置している。すなわち、第1共通電極部325aのY方向の寸法は、+X側端の駆動壁312Aから-X側端の駆動壁312Bに向かうに従い、徐々に小さくなっている。
【0140】
図34は、第3実施形態に係るアクチュエータプレート301の平面図である。
図34に示すように、各吐出チャネル310間において、第1共通電極部325aのZ方向での寸法は、X方向における両端側の駆動壁312A,312BからX方向の中央部の駆動壁312Cに向かうに従い徐々に小さくなっている。第3実施形態において、各第1共通電極部325aは、それぞれの上端縁の位置が一致している。すなわち、各第1共通電極部325aの下端縁は、両端側の駆動壁312A,312Bから中央部の駆動壁312Cに向かうに従い上方に位置している。
【0141】
図33に示すように、第2共通電極部325bは、各吐出チャネル310の-X側面において、表面側の半分を含む領域に形成されている。第2共通電極部325bの表面側端縁は、吐出チャネル310の表面側開口縁に達している。各第2共通電極部325bの裏面側端縁は、-X側面におけるY方向の中心よりも裏面側に位置している。各吐出チャネル310間において、第2共通電極部325bの裏面側端縁は、-X側端の駆動壁312から+X側端の駆動壁312に向かうに従い表面側に位置している。すなわち、第2共通電極部325bのY方向の寸法は、-X側端の駆動壁312Bから+X側端の駆動壁312Aに向かうに従い、徐々に小さくなっている。
【0142】
図34に示すように、各吐出チャネル310間において、第2共通電極部325bのZ方向での寸法は、両端側の駆動壁312A,312Bから中央部の駆動壁312Cに向かうに従い徐々に小さくなっている。第3実施形態において、各第2共通電極部325bは、それぞれの上端縁の位置が一致している。すなわち、各第2共通電極部325bの下端縁は、両端側の駆動壁312A,312Bから中央部の駆動壁312Cに向かうに従い上方に位置している。
【0143】
図33に示すように、個別電極327は、各非吐出チャネル311の+X側面に形成された第1個別電極部327aと、各非吐出チャネル311の-X側面に形成された第2個別電極部327bと、を備えている。
第1個別電極部327aは、各非吐出チャネル311の+X側面において、表面側の半分を含む領域に形成されている。第1個別電極部327aの表面側端縁は、非吐出チャネル311の表面側開口縁に達している。各第1個別電極部327aの裏面側端縁は、+X側面におけるY方向の中心よりも裏面側に位置している。各非吐出チャネル311間において、第1個別電極部327aの裏面側端縁は、+X側端の駆動壁312Dから-X側端の駆動壁312Eに向かうに従い表面側に位置している。すなわち、第1個別電極部327aのY方向の寸法は、+X側端の駆動壁312Dから-X側端の駆動壁312Eに向かうに従い、徐々に小さくなっている。
【0144】
図34に示すように、各非吐出チャネル311間において、第1個別電極部327aのZ方向での寸法は、両端側の駆動壁312D,312Eから中央部の駆動壁312Cに向かうに従い徐々に小さくなっている。第3実施形態において、各第1個別電極部327aは、それぞれの上端縁の位置が一致している。すなわち、各第1個別電極部327aの下端縁は、両端側の駆動壁312D,312Eから中央部の駆動壁312Cに向かうに従い上方に位置している。
【0145】
図33に示すように、第2個別電極部327bは、各非吐出チャネル311の-X側面において、表面側の半分を含む領域に形成されている。第2個別電極部327bの表面側端縁は、非吐出チャネル311の表面側開口縁に達している。各第2個別電極部327bの裏面側端縁は、-X側面におけるY方向の中心よりも裏面側に位置している。各非吐出チャネル311間において、第2個別電極部327bの裏面側端縁は、-X側端の駆動壁312Eから+X側端の駆動壁312Dに向かうに従い表面側に位置している。すなわち、第2個別電極部327bのY方向の寸法は、-X側端の駆動壁312Eから+X側端の駆動壁312Dに向かうに従い、徐々に小さくなっている。
【0146】
図34に示すように、各非吐出チャネル311間において、第2個別電極部327bのZ方向での寸法は、両端側の駆動壁312D,312Eから中央部の駆動壁312Cに向かうに従い徐々に小さくなっている。第3実施形態において、各第2個別電極部327bは、それぞれの上端縁の位置が一致している。すなわち、各第2個別電極部327bの下端縁は、両端側の駆動壁312D,312Eから中央部の駆動壁312Cに向かうに従い上方に位置している。
【0147】
図33、
図34に示すように、吐出チャネル310と、吐出チャネル310に対して-X側で隣り合う非吐出チャネル311と、の間を仕切る駆動壁312aには、+X側面に第1共通電極部325aが形成され、-X側面に第2個別電極部327bが形成されている。各駆動壁312aに形成された第1共通電極部325a及び第2個別電極部327bのうち、駆動壁312aを挟んで向かい合い(X方向から見て重なり合い)、かつ駆動壁312aに対して電界を生じさせる領域を第1対向領域とする。この場合、
図33に示すように、第1対向領域のうち第1共通電極部325aは、+X側端の駆動壁312aから-X側端の駆動壁312aに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなる一方、両端側の駆動壁312aから中央部の駆動壁312aに向かうに従いZ方向の寸法が徐々に小さくなっている。
図34に示すように、第1対向領域のうち第2個別電極部327bは、-X側端の駆動壁312aから+X側端の駆動壁312aに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなっている一方、両端側の駆動壁312aから中央部の駆動壁312aに向かうに従いZ方向の寸法が徐々に小さくなっている。これにより、各第1対向領域の面積が各駆動壁65a毎に同一になるように設定されている。
【0148】
図33、
図34に示すように、吐出チャネル310と、吐出チャネル310に対して+X側で隣り合う非吐出チャネル311と、の間を仕切る駆動壁312bには、-X側面に第2共通電極部325bが形成され、+X側面に第1個別電極部327aが形成されている。各駆動壁312bに形成された第2共通電極部325b及び第1個別電極部327aのうち、駆動壁312bを挟んで向かい合い(X方向から見て重なり合い)、かつ駆動壁312bに対して電界を生じさせる領域を第2対向領域とする。この場合、第2対向領域のうち第2共通電極部325bは、-X側端の駆動壁312bから+X側端の駆動壁312bに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなる一方、両端側の駆動壁312bから中央部の駆動壁312bに向かうに従いZ方向の寸法が徐々に小さくなっている。また、第2対向領域のうち第1個別電極部327aは、+X側端の駆動壁312bから-X側端の駆動壁312bに向かうに従いY方向の寸法が徐々に小さくなっている一方、両端側の駆動壁312bから中央部の駆動壁312bに向かうに従いZ方向の寸法が徐々に小さくなっている。これにより、各第2対向領域の面積が各駆動壁312b毎に同一になるように設定されている。第3実施形態では、全ての駆動壁312a,312bにおいて、第1対向領域及び各第2対向領域の面積が同一になっていることが好ましい。
【0149】
図35、
図36は、第3実施形態に係るヘッドチップ300の製造方法を説明するための工程図である。
第3実施形態において、共通電極部325a,325b及び個別電極部327a,327bを形成するには、
図35、
図36に示すように、配線形成工程で用いるメタルマスク350のマスク開口350aを、上述した設定方法に倣って調整する。すなわち、駆動壁312毎の共通電極部325a,325b及び個別電極部327a,327bにおけるtanβ(蒸着深さD)の大きさに合わせて、共通電極部325a,325b及び個別電極部327a,327bのZ方向の寸法を調整する。この際、各駆動壁312間において、蒸着長さの調整量をZ方向の片側のみで調整する。したがって、中央部の駆動壁312での共通電極部325a,325b及び個別電極部327a,327bのZ方向の寸法が最小となり、両端側の駆動壁312A,312B,D,312Eでの共通電極部325a,325b及び個別電極部327a,327bのZ方向の寸法が最大となるように、マスク開口350aを形成する。
【0150】
その上で、配線形成工程では、
図35に示すように、アクチュエータプレート301の上方であって、アクチュエータプレート301に対して+X側に配置された蒸着源351から、各駆動壁312の+X側面に対して斜め蒸着を行う。これにより、各駆動壁312の+X側面に、第1共通電極部325a及び第1個別電極部327aが形成される。
その後、
図36に示すように、アクチュエータプレート301に対して+X側に配置された蒸着源351から、各駆動壁312の-X側面に対して斜め蒸着を行う。これにより、各駆動壁312の-X側面に、第2共通電極部325b及び第2個別電極部327bが形成される。
【0151】
以上の通り、第1実施形態のように駆動配線がチャネルの両側から形成される場合、及び第3実施形態のように駆動配線がチャネルの片側のみに形成される場合の双方において、同様の配線形成工程によって対向領域の面積の均一化を図ることができる。これにより、汎用性に優れた製造方法を提供できる。
しかも、本実施形態では、各電極部325,325の上端部が、複数のチャネル310,311間で同じ位置に配置されている構成とした。
この構成によれば、複数のチャネル310,311間において各共通電極部325a,325b及び個別電極部327a,327bのZ方向の寸法を異ならせた場合であっても、各共通電極部325a,325b及び個別電極部327a,327bにおける上端部の位置が各チャネル310,311間で揃う。これにより、共通電極部325a,325b及び個別電極部327a,327bとフレキシブルプリント基板340とを接続する端子326,328をアクチュエータプレート301の表面に形成する場合に、各共通電極部325a,325b及び個別電極部327a,327bを端子326,328に引き回し易くなる。
【0152】
第3実施形態では、エッジシュートタイプのヘッドチップ300において、アクチュエータプレート52がモノポール基板である場合を説明したが、この構成に限られない。エッジシュートタイプのヘッドチップ300において、アクチュエータプレート52がシェブロン基板である場合にも本開示の構成を適用することが可能である。また、サイドシュートタイプのヘッドチップにおいて、アクチュエータプレート52にモノポール基板を用いてもよい。さらに、第3実施形態のヘッドチップ300において、上述した第2実施形態のように各電極と駆動壁との間に低誘電膜を介在させることで、対向領域の面積を調整するようにしてもよい。
【0153】
(その他の変形例)
なお、本開示の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、液体噴射記録装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
上述した実施形態では、印刷時にインクジェットヘッドが被記録媒体に対して移動する構成(いわゆる、シャトル機)を例にして説明をしたが、この構成に限られない。本開示に係る構成は、インクジェットヘッドを固定した状態で、インクジェットヘッドに対して被記録媒体を移動させる構成(いわゆる、固定ヘッド機)に採用してもよい。
上述した実施形態では、被記録媒体Pが紙の場合について説明したが、この構成に限られない。被記録媒体Pは、紙に限らず、金属材料や樹脂材料であってもよく、食品等であってもよい。
上述した実施形態では、液体噴射ヘッドが液体噴射記録装置に搭載された構成について説明したが、この構成に限られない。すなわち、液体噴射ヘッドから噴射される液体は、被記録媒体に着弾させるものに限らず、例えば調剤中に配合する薬液や、食品に添加する調味料や香料等の食品添加物、空気中に噴射する芳香剤等であってもよい。
【0154】
上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に沿わせてもよい。
上述した実施形態では、電圧の印加によって吐出チャネルの容積が拡大する方向にアクチュエータプレートを変形させた後、アクチュエータプレートを復元させることで、インクを吐出させる構成(いわゆる、引き打ち)について説明したが、この構成に限られない。本開示に係るヘッドチップは、電圧の印加によって吐出チャネルの容積が縮小する方向にアクチュエータプレートを変形させることで、インクを吐出させる構成(いわゆる、押し打ち)であってもよい。押し打ちを行う場合、駆動電圧の印加により、アクチュエータプレートは、吐出チャネル内に向けて膨出するように変形する。これにより、吐出チャネル内の容積が減少することで、吐出チャネル内の圧力が増加し、吐出チャネル内のインクがノズル孔を通じて外部に吐出される。駆動電圧をゼロにすると、アクチュエータプレートが復元する。その結果、吐出チャネル内の容積が元に戻る。
【0155】
上述した実施形態では、第1対向領域及び第2対向領域の面積が各駆動壁毎に同一になるように、電極の寸法を調整した場合について説明したが、この構成に限られない。第1対向領域及び第2対向領域の面積は、各駆動壁毎に僅かに異なっていてもよい。
【0156】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0157】
1:プリンタ(液体噴射記録装置)
5:インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
50:ヘッドチップ
52:アクチュエータプレート
61:吐出チャネル(チャネル)
62:非吐出チャネル(チャネル)
65,65b,65A,65B,65C,65D,65E:駆動壁
85:共通電極(電極)
87:個別電極(電極)
100:第1共通電極部(第1電極部)
101:第2共通電極部(第2電極部)
100a:第1上側共通部(第1一方側電極部)
100b:第1下側共通部(第1他方側電極部)
101a:第2上側共通部(第2一方側電極部)
101b:第2下側共通部(第2他方側電極部)
110:第1個別電極部(第1電極部)
110a:第1上側個別部(第1一方側電極部)
110b:第1下側個別部(第1他方側電極部)
111a:第2上側個別部(第2一方側電極部)
111b:第2下側個別部(第2他方側電極部)
111:第2個別電極部(第2電極部)
136:蒸着源
200a:第1共通側低誘電膜(第1低誘電膜)
200b:第2共通側低誘電膜(第2低誘電膜)
200c:第1個別側低誘電膜(第1低誘電膜)
200d:第2個別側低誘電膜(第2低誘電膜)
300:ヘッドチップ
301:アクチュエータプレート
310:吐出チャネル(チャネル)
311:非吐出チャネル(チャネル)
312,312a,312b,312A,312B,312C,312D,312E:駆動壁
325:共通電極部(電極部)
327:個別電極部(電極部)
351:蒸着源