(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000471
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】静的体幹バランス測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
A61B5/11 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022109336
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】306019373
【氏名又は名称】株式会社 高橋技術コンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】高橋 保雄
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA11
4C038VB12
(57)【要約】
【課題】トレ-ニングジムや自宅で器具等を使って体幹筋力を鍛えることはあるが、その効果を評価する方法として、被測定者が直立した状態で静的体幹バランスを客観的に簡単に、しかも定量的に評価するシステムは見当たらない。
【解決手段】被測定者が直立して両腕を身体の後ろ側において左右の掌を組み合わせ、その掌を外部から下方に押し下げることにより静的体幹バランスを測定する方法において、被測定者がその上に乗り被測定者の重心位置を取得するための手段と、被測定者が組み合わせた掌を予め設定した力で、一定速度で下方に押し下げる手段とを具備し、被測定者が組み合わせた掌を下方に押し下げ始めてからの垂直方向の距離とその時の被測定者の重心移動距離とを配信する手段を具備したことを特徴とする静的体幹バランス測定装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者が直立して両腕を身体の後ろ側において左右の掌を組み合わせ、その掌を外部から下方に押し下げることにより静的体幹バランスを測定する方法において、被測定者がその上に乗り被測定者の重心位置を取得するための手段と、被測定者が組み合わせた掌を予め設定した力で、一定速度で下方に押し下げる手段とを具備したことを特徴とする静的体幹バランス測定装置。
【請求項2】
被測定者が組み合わせた掌を下方に押し下げ始めてからの垂直方向の距離とその時の被測定者の重心移動距離とを配信する手段を具備したことを特徴とする静的体幹バランス測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定者が立位状態で手を後ろに組んで、その手を垂直上方から設定した力で押し下げて、被測定者の重心移動量を計測して静的体幹バランスを測定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会を迎え、高齢者(65歳以上)人口は年々増加し、健康寿命延伸が社会の大きな課題となっている。特に、転倒は寝たきりへとつながることが問題である。転倒の内的要因として老化によるバランス能力の低下は転倒の危険性を高める要因である。また、高齢になっても積極的にスポ-ツに取り組むことにより健康寿命延伸が期待できるが、そのためにもバランス能力を維持することが重要である。
【0003】
体幹筋力を鍛えるために、トレ-ニングジムや自宅で器具等を使って実施することはあるが、その効果を客観的に簡単に、しかも定量的に評価するシステムは見当たらない。
【0004】
非特許文献1および2には、機器を用いて体幹筋力を測定・評価する方法も開示されている。
【0005】
非特許文献3には、被測定者が直立して両腕を身体の後ろ側において左右の掌を組み合わせ、第三者がその掌を下方に押した時の足圧中心の移動量を測定して被測定者の静的体幹バランスを評価する方法が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「体幹筋力発揮時間とバランスの関係」理学療法科学 28(2)(209-214,2013)
【非特許文献2】「体幹筋力測定の実際」日本腰痛学会誌 7(1)(31-34,2001)
【非特許文献3】国士舘大学大学院スポーツシステム研究科身体運動学研究室著「パフォ-マンステスト測定結果」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1および2には、立位状態での静的体幹バランス方法は記載されていない。
【0008】
非特許文献3には被測定者が直立した状態で静的体幹バランスを測定する方法が開示されている。
図1にてより詳しく説明する。1の被測定者は直立して両腕を身体の後ろ側において左右の掌を組み合わせ、2の第三者が1の被測定者の掌を下方に押す。第三者は常に同じ人物が同じように下方に押す必要があるので、下方に押す力と被測定者の足圧中心の移動量との関係を客観的に、定量的に評価することは難しい。
【0009】
本発明の目的は、上記の技術課題を解決し、被測定者の静的体幹バランスを客観的に定量的に評価する装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の構成を具備した点に特徴がある。
【0011】
被測定者がその上に乗り被測定者の重心位置を取得するための手段と、被測定者が直立して両腕を身体の後ろ側において左右の掌を組み合わせ、その掌を予め設定した力で、一定速度で下方に押し下げる手段とを具備した。
【0012】
被測定者が組み合わせた掌を下方に押し下げ始めてからの垂直方向の距離とその時の被測定者の重心移動距離とを配信する手段を具備した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
【0014】
被測定者は第三者の力を借りることなく組み合わせた掌を下方に押し下げる力により重心位置が移動することにより自分の静的体幹バランスの状態を客観的に定量化できる。
【0015】
例えば、組み合わせた掌を下方に押し下げる手段により掌が垂直方向に移動した距離と重心位置が移動した距離との関係において、静的体幹バランンスが良い場合は、移動した垂直距離が同じでも重心位置の移動距離は短く、静的体幹バランンスが悪い場合は、移動した垂直距離が同じでも重心位置の移動距離は長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】 非特許文献3の静的体幹バランスを評価する方法を示したイラスト図である。
【
図2】 本発明に係る静的体幹バランス測定装置を示す上面図である。
【
図3】 本発明に係る静的体幹バランス測定装置を示す側面図である。
【
図4】 本発明に係る静的体幹バランス測定装置の使用状態を示す側面図である。
【
図5】 本発明に係る静的体幹バランス測定装置の使用手順を示すフロ-チャ-トである。
【
図6】 本発明に係る静的体幹バランス測定装置の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る静的体幹バランス測定装置の一実施例の形態を
図2~
図6に基づいて説明する。
【実施例0018】
図2~
図3に、本発明の静的体幹バランス測定装置の一実施例を示す。図において、3は重心移動量測定装置、4は油圧シリンダ-、5は4の油圧シリンダ-先端に固着された垂直方向に移動するブラケット(A)、6は5のブラケット(A)の垂直方向に、その位置が調整自在なように取り付けられたアーム、7は5のブラケットに6のアームを固定するためのロックであり、8は、6のアームの先端に取り付けられたヘッドである。
【0019】
9は4の油圧シリンダ-の末端に固着されたブラケット(B)であり、9のブラケット(B)と3の重心移動量測定装置は、10の共通のベースプレ-トに固着されている。
【0020】
図には示されていないが、4の油圧シリンダ-には油圧ポンプから作動油が送られ、途中には圧力調整弁および流量調整用の制限オリフィス等が設けられている。その結果、作動油は、その圧力を設定でき、一定流量で4の油圧シリンダ-に送ることができる。
【0021】
図4は、本発明の静的体幹バランス測定装置を用いた状態の一実施例を示す。1の被測定者は、3の重心移動量測定装置の上に両足を置いて、膝を伸ばして直立し、その両腕の掌を後ろに組み、8のヘッドが該掌を上から押す状態で測定する。
【0022】
図5は、本発明の静的体幹バランス測定装置を用いる順番を示した一実施例のフロ-チャ-トである。
【0023】
(1)先ず、4の油圧シリンダ-の先端高さが初期位置にあることを確認する。
【0024】
(2)次に、1の被測定者が、3の重心移動量測定装置の上に乗って、膝を伸ばして直立し、その両腕の掌を後ろに組み、8のヘッドが該掌を上から押す状態で測定することができる該測定装置上の位置を決める。その両足の位置が該測定装置上の標準位置である。
【0025】
(3)次に、1の被測定者が、3の重心移動量測定装置の上に乗って、膝を伸ばして直立し、その両腕の掌を後ろに組み、8のヘッドが該掌を上から押し始める状態の高さになるように、6のアームの垂直方向の高さを決め、その高さで6のアームを7のロックで固定する。
【0026】
(4)以上で測定の準備ができたので油圧ポンプのスイッチを入れて測定を開始する。
【0027】
図6は、本発明の静的体幹バランス測定装置を用いて測定した結果の一実施例を示したグラフである。
【0028】
グラフ(1)は、8のヘッドにより移動した手の掌の垂直方向の移動距離(X)と3の重心移動量測定装置により計測された重心の移動距離(Y)を示している。曲線(A)は静的体幹バランスが弱い状態、曲線(B)は強い状態を示している。曲線(B)の方が、同じ掌の移動距離(X)でも、重心の移動距離(Y)が小さい。
【0029】
グラフ(2)は、移動距離(X)と(X)に対する重心の移動距離の変化率(Y)との関係を示している。曲線(C)は静的体幹バランスが弱い状態、曲線(D)は強い状態を示している。曲線(C)の方が、小さな移動距離(X)でも変化率(Y)が大きくなっている。
【0030】
8のヘッドに掛かる力は4のシリンダ-に掛かる油圧から計算できるが、8のヘッドの中に力覚センサ-を設けて、直接8のヘッドから掌に伝えられる力を計測しても良い。
【0031】
他の実施例として、4の油圧シリンダ-とそのシステムの代わりに、空気圧シリンダ-とそのシステム、および電動シリンダ-とそのシステムを用いても同様に静的体幹バランス測定ができる。
以上のように、本発明の静的体幹バランス測定装置は、例えば、高齢になっても積極的にスポ-ツに取り組む人や、寝たきりへとつながる転倒予防のためにトレ-ニングジムや自宅で器具等を使って体幹筋力を鍛える人達が、その効果を客観的に簡単に、しかも定量的に評価するシステムとして利用するものである。