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特開2024-47104電動カート、電動カート管理システム、電動駆動ユニット、電動駆動ユニット管理システム、電動カートの制御方法、電動カートの制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047104
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】電動カート、電動カート管理システム、電動駆動ユニット、電動駆動ユニット管理システム、電動カートの制御方法、電動カートの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
B62B3/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152530
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】飯白 豊充
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050HH07
3D050KK14
(57)【要約】
【課題】不具合を有する状態で使用される可能性を低減できる電動カートの技術を提供することを目的とする。
【解決手段】ある態様の電動カート100は、ユーザが操作力を加えて移動させるカート本体と、カート本体に備えられてカート本体に与えられた操作力に応じて駆動または制動をするためのアシスト力を発生するアシスト部2と、アシスト部2への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与え、指示後に取得された情報に基づいてアシスト部2が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断部4と、判断部4が、アシスト部2は所定の条件を満たさないと判断したときはアシスト部2の動作を制限する制限部5と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが操作力を加えて移動させるカート本体と、
前記カート本体に備えられて前記カート本体に与えられた前記操作力に応じて駆動または制動をするためのアシスト力を発生するアシスト部と、
前記アシスト部への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与え、当該指示後に取得された情報に基づいて前記アシスト部が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断部と、
前記判断部が、前記アシスト部は所定の条件を満たさないと判断したときは前記アシスト部の動作を制限する制限部と、
を備える電動カート。
【請求項2】
前記制限部は、前記判断部が前記指示後に取得された情報に基づく判断を行っていないときは、前記アシスト部は所定の条件を満たさないと判断する、請求項1に記載の電動カート。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記操作力と当該操作力に対応する前記アシスト力とが所定の関係にあることである、請求項1に記載の電動カート。
【請求項4】
ユーザが操作力を加えて移動させるカートに備えられ前記カートに与えられた前記操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部と、
前記アシスト部への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与え、当該指示後に取得された情報に基づいて前記アシスト部が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断部と、
前記判断部が、前記アシスト部は所定の条件を満たさないと判断したときは前記アシスト部の動作を制限する制限部と、
を備え、
前記判断部および前記制限部の少なくとも一部は、前記アシスト部と通信可能な外部端末に搭載される電動カート管理システム。
【請求項5】
ユーザが操作力を加えて移動させるカートに与えられた前記操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部と、
前記アシスト部への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与え、当該指示後に取得された情報に基づいて前記アシスト部が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断部と、
前記判断部が、前記アシスト部は所定の条件を満たさないと判断したときは前記アシスト部の動作を制限する制限部と、
を備える電動駆動ユニット。
【請求項6】
ユーザが操作力を加えて移動させるカートに与えられた前記操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部と、
前記アシスト部への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与え、当該指示後に取得された情報に基づいて前記アシスト部が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断部と、
前記判断部が、前記アシスト部は所定の条件を満たさないと判断したときは前記アシスト部の動作を制限する制限部と、
を備え、
前記アシスト部は、前記判断部および前記制限部の少なくとも一部が搭載された外部端末と通信可能である電動駆動ユニット管理システム。
【請求項7】
ユーザが操作力を加えて移動させるカートに与えられた前記操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部を備える前記カートの前記アシスト部への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与えるステップと、
当該指示後に取得された情報に基づいて前記アシスト部が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで、前記アシスト部は所定の条件を満たさないと判断したときは前記アシスト部の動作を制限するステップと、
を含む電動カートの制御方法。
【請求項8】
ユーザが操作力を加えて移動させるカートに与えられた前記操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部を備える前記カートの前記アシスト部への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与えるステップと、
当該指示後に取得された情報に基づいて前記アシスト部が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで、前記アシスト部は所定の条件を満たさないと判断したときは前記アシスト部の動作を制限するステップと、
をコンピュータに実行させる電動カートの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動カート、電動カート管理システム、電動駆動ユニット、電動駆動ユニット管理システム、電動カートの制御方法および電動カートの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、幼児などを乗せる直方体状の運搬箱体を備えた幼児等運搬用手押し車が記載されている。この手押し車は、運搬箱体の前下部に取り付けられた前走行輪と、運搬箱体の後下部に取り付けられた後走行輪と、運搬箱板の中央下部に取り付けられた中央走行輪とを有する。また、運搬箱体の後面に、手押し操作が行ない易くなるようにハンドルが取り付けられており、このハンドルを握り持って手押しすることにより運搬箱体を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-203128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、以下の認識を得た。ハンドルを握り持って手押しするカートについて、動力部を設け、手押力のユーザ負担を軽減することが考えられる。この場合、手押力を測定するグリップセンサに設けた操作力検出用の入力部と、モータを含む動力部とのセットを左右それぞれに設けることができる。この入力部は、ゼロ点から一方側に操作されたときに正方向の駆動力を発生させ、他方側に操作されたときに逆方向の駆動力を発生させる構成が可能である。
【0005】
しかし、操作力検出用の入力部は、経年劣化等によりゼロ点がずれる不具合を有する場合があり、その状態で電源が投入されると、カートが意図せず前後方向に動いて衝突や落下の要因となり得る。また、連日、屋外で使用され、保管環境が悪い場合にはこのような不具合を生じる可能性は一層高まる。これらから、発明者は、不具合を有する状態で使用される可能性を低減する観点から、従来技術には改善の余地があることを認識した。
【0006】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、不具合を有する状態で使用される可能性を低減できる電動カートの技術を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電動カートは、ユーザが操作力を加えて移動させるカート本体と、カート本体に備えられてカート本体に与えられた操作力に応じて駆動または制動をするためのアシスト力を発生するアシスト部と、アシスト部への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与え、当該指示後に取得された情報に基づいてアシスト部が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断部と、判断部が、アシスト部は所定の条件を満たさないと判断したときはアシスト部の動作を制限する制限部と、を備える。
【0008】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不具合を有する状態で使用される可能性を低減できる電動カートの技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の電動カートを概略的に示す側面図である。
図2図1の電動カートのシステム構成を示すブロック図である。
図3図1の電動カートの操作部を模式的に示す図である。
図4図1の電動カートの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0012】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部または全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部または全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0013】
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付して区別し、総称するときはこれらを省略する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0014】
本発明に係るある態様の電動カートは、ユーザが操作力を加えて移動させるカート本体と、カート本体に備えられてカート本体に与えられた操作力に応じて駆動または制動をするためのアシスト力を発生するアシスト部と、アシスト部への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与え、当該指示後に取得された情報に基づいてアシスト部が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断部と、判断部が、アシスト部は所定の条件を満たさないと判断したときはアシスト部の動作を制限する制限部と、を備える。
【0015】
この構成によれば、アシスト部が所定の条件を満たすまでアシスト部の動作が制限されるので、不具合に起因して、電動カートが電源投入されアシスト部への給電が開始されたとき(以下、「給電開始時」という)にアシスト部が意図しない動作をする可能性を低減できる。
【0016】
一例として、制限部は、判断部が指示後に取得された情報に基づく判断を行っていないときは、アシスト部は所定の条件を満たさないと判断する。この場合、給電開始直後などに判断部が未判断のときにアシスト部が意図しない動作をする可能性を低減できる。
【0017】
一例として、上記の所定の条件は、操作力と当該操作力に対応するアシスト力とが所定の関係にあることである。この場合、操作力とアシスト力との関係に問題がある場合であって、給電開始時にアシスト部が意図しない動作をする可能性を低減できる。
【0018】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態及び変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0019】
[第1実施形態]
以下、図1図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る電動カート100を説明する。図1は、電動カート100を概略的に示す側面図である。図2は、電動カート100の情報処理に関するシステム構成を示すブロック図である。
【0020】
図2に示す電動カート100の各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0021】
電動カート100の全体構成を説明する。実施形態の電動カート100は、1人または数人の幼児を乗せて例えば街中を移動可能な電動アシスト付き手押し車両として好適に適用できる。図1に示す電動カート100は、カート本体9と、アシスト部2とを主に備える。アシスト部2は、情報処理部10と、動力部21と、バッテリ22と、電源スイッチ24とを主に備える。
【0022】
情報処理部10は、すべての機能が、カート本体9に装着される内部処理部20に搭載されてもよいが、一部の機能は、カート本体9から離れた別の装置に搭載され、通信手段を介して互いに連携してもよい。実施形態の情報処理部10は、内部処理部20と、外部端末60とを含み、情報処理機能を分担している。内部処理部20の処理機能の一部は、外部端末60で処理されてもよいし、外部端末60の処理機能の一部は、内部処理部20で処理されてもよい。外部端末60としては、情報表示機能と、情報入力機能と、情報処理機能と、通信機能とを有するスマートフォンを採用できる。
【0023】
電源スイッチ24をオンにすると、バッテリ22の電力に基づいて電動カート100に電源が投入され、アシスト部2への給電が開始され、アシスト部2はオンになる。電源スイッチ24をオフにすると、電動カート100への電源供給が停止され、アシスト部2への給電が停止され、アシスト部2はオフになる。
【0024】
カート本体9は、ユーザが操作力Fuを加えて移動させる手押し車両である。以下、カート本体9の移動方向を前後方向といい、前後方向に直交する車幅方向を幅方向という。カート本体9は、直方体状の箱体である収容部92と、収容部92の下部に取り付けられた複数の車輪93、94と、収容部92の後方寄り上部に取り付けられたグリップ部95とを主に含む。実施形態は、2つの前輪93と、2つの後輪94とを含む。収容部92は、幼児等を収容するために上部が開放された袋体97と、袋体97を支持するために、パイプ等で構成されたフレーム体98とで構成される。フレーム体98は、袋体97の外殻を構成する。
【0025】
前輪93は、フレーム体98の前方寄りの左右両側に回転可能に取り付けられる従動輪である。2つの後輪94は、フレーム体98の後方寄りの左右両側に取り付けられる。2つの後輪94は、それぞれ動力部21によって駆動される駆動輪である。つまり、後輪94には、アシスト部2のアシスト力Faが入力される。グリップ部95は、フレーム体98の後部上端から後方に延びる棒状の部分である。この例では、幅方向に離間して配置される2つのグリップ部95が設けられる。2つのグリップ部95は、前後方向に延伸するパイプ状を有する。2つのグリップ部95の先端には、幅方向に延びるパイプ状の横棒(不図示)が連結される。
【0026】
2つのグリップ部95のそれぞれには、ハンドブレーキレバー96が設けられる。ユーザは、ハンドブレーキレバー96をグリップ部95に近づけることで電動カート100にブレーキをかけることができる。
【0027】
2つのグリップ部95それぞれには、ユーザが操作力Fuを加えるための2つの操作部23が設けられる。2つの操作部23は、幅方向に離間して配置され、それぞれ操作力Fuを検知するグリップセンサである。以下、車輪93、94、動力部21および操作部23について左右を区別するときは符号の末尾に「L」または「R」を付し、区別しないときはこれを省略する。
【0028】
操作部23は、操作部23を前後方向に押し込む力である操作力Fuを測定し、この測定結果をセンサ信号S1として内部処理部20に提供する。この例では、2つの操作部23は、互いに独立しており、左右で別々のセンサ信号S1を内部処理部20に提供する。内部処理部20は、左側の操作部23Lのセンサ信号S1に基づいて左側の後輪94Lの動力部21Lを制御し、右側の操作部23Rのセンサ信号S1に基づいて右側の後輪94Rの動力部21Rを制御する。このように、内部処理部20は、アシスト部2を制御する制御部として機能する。
【0029】
図3は、操作部23を模式的に示す図である。図3(A)は、初期状態を示し、図3(B)は、初期状態から経時変化した状態(以下、「経時状態」という)を示す。操作部23は、ストロークの前側と後側の中央位置Mにセンサ信号S1がゼロ(正でも負でもない状態)であるゼロ点Pを有する。センサ信号S1は、操作部23がゼロ点Pよりも前側(図中右側)に押し込まれたときに正になり、操作部23がゼロ点Pよりも後側(図中左側)に押し込まれたときに負になる。図3では操作部23の基準位置Jを黒三角で示し、ゼロ点Pを白三角で示している。
【0030】
操作部23のゼロ点Pは、電動カート100の製造時に所定の初期位置(例えば、中央位置M)に設定される。図3(A)の例では、操作部23の基準位置Jが中央位置Mに位置する場合に、センサ信号S1はゼロになる。センサ信号S1がゼロの場合、アシスト部2はアシスト力を出力しない。したがって、操作力Fuがゼロの状態で、操作部23が中央位置Mに来るように設定しておけば、給電開始直後に電動カート100が意図せず移動することがない。
【0031】
しかし、経時変化により操作部23のゼロ点Pは、初期位置から前後いずれかに偏倚した位置にシフトすることがある。図3(B)の例では、経時位置Kは初期の中央位置Mから後側の位置に偏倚している。この場合、操作部23の基準位置Jが中央位置Mに位置するとき、操作部23がゼロ点Pよりも前側に押し込まれたときと同様に、センサ信号S1は正になる。ゼロでないセンサ信号S1が内部処理部20に提供されると、アシスト部2はアシスト力を出力する。したがって、操作力Fuがゼロの状態で、操作部23が中央位置Mに来る設定では、給電開始直後に電動カート100が意図せず前側に移動する可能性がある。このように、ゼロ点Pの過度なシフトは、衝突や落下の原因となる可能性があり、再調整が望まれる不具合状態といえる。
【0032】
アシスト部2を説明する。アシスト部2は、カート本体9に加えられる操作力Fuに応じて駆動または制動するためのアシスト力Faを発生させる。駆動するためのアシスト力Faは、操作力Fuと同じ方向にカート本体9を加速する力である。制動するためのアシスト力Faは、カート本体9の移動を減速するブレーキ力である。
【0033】
動力部21は、内部処理部20の制御に基づいてアシスト力Faを発生させる電気モータである。この例では、左右2つの後輪94にそれぞれ連結された2つの動力部21が設けられる。左右2つの動力部21は、共通に制御されてもよいが、この例では左右2つの操作部23のセンサ信号S1に基づいて別々に制御される。この例の動力部21は、内輪ギア駆動モータである。
【0034】
バッテリ22は、動力部21およびその他の部分に電力を供給する。バッテリ22は、繰り返し充放電可能なリチウムイオン電池などの二次電池である。一例として、バッテリ22は、フレーム体98の後面外側に設けられたポケット型のラック(不図示)に着脱可能に保持されてもよい。
【0035】
この例では、指示部3、判断部4、および制限部5は、通信機能を有する外部端末60に搭載される。
【0036】
内部処理部20を説明する。内部処理部20は、入力部71と、通信部72と、記憶部73と、第1駆動部75と、第2駆動部76と、電源検知部77とを含む。入力部71は、第1操作部23Lおよび第2操作部23Rからセンサ信号S1を受け付ける。通信部72は、外部端末60と通信して情報を送受信する。通信部72は、外部端末60に搭載された指示部3、判断部4、および制限部5に対して情報を提供可能であり、これらから情報を取得できる。通信部72と外部との間の通信方式に制限はないが、この例では、通信部72の通信方式としてBluetooth Low Energy (BLE) を利用したBeacon(登録商標)を採用している。
【0037】
記憶部73は、入力部71の入力情報、この入力情報を処理した中間処理情報、通信部72の送受信情報、第1駆動部75および第2駆動部76の出力情報等を時系列的に記憶できる。記憶部73は、電動カート100の制御プログラムP100を格納できる。
【0038】
第1駆動部75は、第1動力部21Lを駆動し、後輪94Lにアシスト力を発生させる。第2駆動部76は、第2動力部21Rを駆動し、後輪94Rにアシスト力を発生させる。電源検知部77は、アシスト部2への給電の有無を検知する。すなわち、電源検知部77は、アシスト部2への給電開始を検知できる。第1駆動部75および第2駆動部76は、給電開始時の初期状態では動作を停止しており、制限部5による制限が解除される(動作が許可される)まで動作を開始しない。つまり、給電開始直後は、アシスト部2はアシスト力を発生しない。
【0039】
指示部3は、電動カート100が電源投入されアシスト部2への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与える。この例では、電動カート100が電源投入されアシスト部2への給電が開始されたとき、指示部3は、アシスト部2の自己診断モードの起動を指示するメッセージを外部端末60に表示させる。
【0040】
判断部4は、上記の指示後に取得された情報に基づいてアシスト部2が所定の条件を満たすかどうかを判断する。実施形態では、当該所定の条件は、操作力と当該操作力に対応するアシスト力とが所定の関係にあることである。以下、アシスト部2が所定の条件を満たす場合、アシスト部2は正常といい、アシスト部2が所定の条件を満たさない場合、アシスト部2は異常であるという。
【0041】
ユーザが外部端末60から自己診断モードを起動すると、判断部4は、操作部23の基準位置Jを中央位置Mにセットする指示メッセージを外部端末60に表示させる。基準位置Jが中央位置Mにセットされたら、判断部4は、入力部71を介して、第1操作部23Lおよび第2操作部23Rからセンサ信号S1を取得する。
【0042】
判断部4は、取得されたセンサ信号S1に基づいてアシスト部2が所定の条件を満たすかどうかを判断する。この例では、取得されたセンサ信号S1がゼロを含む所定の範囲内であるかどうかを判定する。アシスト部2のアシスト力は、センサ信号S1が所定の範囲内の場合に実用的に許容可能な大きさで、センサ信号S1が所定の範囲外の場合に許容できない大きさになる。判断部4は、センサ信号S1が所定の範囲内である場合にアシスト部2は正常と判断し、センサ信号S1が所定の範囲外である場合に、アシスト部2は異常と判断する。
【0043】
判断部4は、判断結果を外部端末60に表示させる。判断部4は、異常と判断したとき、操作部23のゼロ点Pが中央位置Mにある状態でセンサ信号S1がゼロになるように調整する指示を外部端末60に表示させてもよい。
【0044】
制限部5は、判断部4が、アシスト部2は所定の条件を満たさないと判断したときはアシスト部の動作を制限する。この例では、制限部5は、判断部4が指示後に取得された情報に基づく判断を行っていないときは、アシスト部は所定の条件を満たさないと判断する。
換言すれば、制限部5は、判断部4が、アシスト部2は所定の条件を満たすと判断するまではアシスト部2の動作を制限する。つまり、制限部5は、判断部4が正常と判断するまでアシスト部2の動作を制限する。具体的には、制限部5は、給電開始時から判断部4が正常と判断するまで、第1駆動部75および第2駆動部76を停止するように制御する。したがって、電動カート100は、非電動のカートとしてしか使用できなくなる。また、制限部5は、判断部4が正常と判断したら、アシスト部2の動作制限を解除する。制限が解除されたら、第1駆動部75および第2駆動部76は通常通りに動作し、アシスト部2は、操作部23への操作力Fuに応じたアシスト力を発生する。
【0045】
このように構成された電動カート100の動作の一例を説明する。図4は、電動カート100の動作の一例のプロセスS110を示すフローチャートである。このプロセスは、電動カート100の電源投入直時すなわち給電開始時の動作プロセスである。
【0046】
プロセスS110では、電源が投入されたらアシスト部2を動作制限する(ステップS111)。電源投入直後すなわち給電開始直後にアシスト部2の動作は禁止され、アシスト力は発生しない。
【0047】
次に、指示部3は、所定操作を行うようにユーザに指示を与える(ステップS112)。このステップでは、指示部3は、アシスト部2の自己診断モードの起動を指示するメッセージを外部端末60に表示させる。この表示に応じて、ユーザは外部端末60から自己診断モードを起動する(ステップS113)。
【0048】
次に、判断部4は、外部端末60に所定の指示メッセージを表示させる(ステップS114)。この指示メッセージは、操作部23の基準位置Jを中央位置Mにセットするようユーザに指示するメッセージであってもよい。この指示メッセージに応じて、ユーザは基準位置Jを中央位置Mにセットする(ステップS115)。
【0049】
基準位置Jが中央位置Mにセットされたら、判断部4は、入力部71を介して、第1操作部23Lおよび第2操作部23Rからセンサ信号S1を取得する(ステップS116)。
【0050】
次に、判断部4は、取得されたセンサ信号S1が正常範囲内かどうかを判定する(ステップS117)。センサ信号S1が所定の範囲外である場合(ステップS117のN)、判断部4は、アシスト部2は異常と判断し、制限部5は、アシスト部2の動作制限を維持する(ステップS118)。例えば、制限部5は、第1駆動部75および第2駆動部76を停止するように制御する。このステップで、判断部4は、判断結果を外部端末60に表示させ、操作部23の調整を促すメッセージを外部端末60に表示させてもよい。ステップS118を実行したら、プロセスS110は終了する。
【0051】
センサ信号S1が所定の範囲内である場合(ステップS117のY)、判断部4は、アシスト部2は正常と判断し、制限部5は、アシスト部2の動作制限を解除する(ステップS119)。制限が解除されたら、アシスト部2は、操作部23への操作力Fuに応じたアシスト力を発生させる。ステップS119を実行したら、プロセスS110は終了する。
【0052】
上記のプロセスは一例であり、各種の変形が可能である。指示部3、判断部4、および制限部5は、スマートフォンの特定アプリケーションプロクラム(以下、「特定アプリ」という)として外部端末60にインストールすることができる。使用時には特定アプリがインストールされた外部端末60を所持するユーザが、外部端末60を介して電動カート100を操作する。
【0053】
日常、電動カート100の電源投入時即ち給電開始時に、上記の特定アプリを起動し、上記プロセスにより、アシスト部2の動作制限を解除する。プロセスS110では、動作制限が解除される前は、アシスト部2は、アシスト力を出力しない。
【0054】
判断部4の判断に関する所定の条件は、電動カート100を点検動作させたときの操作力Fuと電動カート100の挙動との関係が所定範囲内であることであってもよい。以下、特定アプリによる日常診断機能を例に説明する。
【0055】
この特定アプリは、日常診断機能を有してもよい。例えば、日常診断機能は、動作制限が解除される前に、外部端末60の操作に基づいて電動カート100に試験運転を行わせる機能であってもよい。一例として、試験運転は、空荷の電動カート100を短時間(例えば1秒)または短距離(例えば1m)移動させるものであってもよい。この試験運転のときに、ユーザが操作部23に加えた操作力Fuが想定よりも大きい場合、操作力Fuを加えない状態で電動カート100が動くことが確認された場合に、特定アプリは、電動カート100の使用を中止し、修理依頼をするように外部端末60に表示させてもよい。
【0056】
判断部4の判断に関する所定の条件は、電動カート100を試験運転したときのモータ電流値、モータ電流値の差、モータ出力、カート速度などの計測値が所定範囲内であることであってもよい。以下、特定アプリによる定期点検機能を例に説明する。
【0057】
この特定アプリは、定期点検機能を有してもよい。例えば、定期点検機能は、動作制限が解除される前に、外部端末60の操作に基づいて操作部23のグリップセンサ出力または動力部21のモータ出力を検査する機能であってもよい。一例として、この検査では、下記の第1~第4動作を実行し、ウエイトの有無によるモータ電流値の差を取得する。
第1動作:空荷で電動カート100を短時間(例えば5秒)前進させる。
第2動作:空荷で電動カート100を短時間(例えば5秒)後進させる。
第3動作:基準のウエイトを積んだ状態で電動カート100を短時間(例えば5秒)前進させる。
第4動作:基準のウエイトを積んだ状態で電動カート100を短時間(例えば5秒)後進させる。
【0058】
ウエイトの有無によるモータ電流値が所定の基準範囲内の場合を正常とし、電流差が所定の基準範囲外の場合を異常と判断する。異常と判断した場合、特定アプリは、電動カート100の使用を中止し、修理依頼をするように外部端末60に表示させてもよい。
【0059】
以上が第1実施形態の説明である。
【0060】
以下、本発明の第2~第6実施形態を説明する。第2~第6実施形態の図面及び説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0061】
本発明の第2実施形態は、電動カート管理システム200である。電動カート管理システム200は、ユーザが操作力を加えて移動させるカート100に備えられカート100に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部2と、アシスト部2への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与え、当該指示後に取得された情報に基づいてアシスト部2が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断部4と、判断部4が、アシスト部2は所定の条件を満たさないと判断したときはアシスト部2の動作を制限する制限部5と、を備える。判断部4および制限部5の少なくとも一部は、アシスト部2と通信可能な外部端末60に搭載される。
【0062】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0063】
本発明の第3実施形態は、電動駆動ユニット300である。電動駆動ユニット300は、ユーザが操作力を加えて移動させるカート100に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部2と、アシスト部2への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与え、当該指示後に取得された情報に基づいてアシスト部2が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断部4と、判断部4が、アシスト部2は所定の条件を満たさないと判断したときはアシスト部2の動作を制限する制限部5と、を備える。
【0064】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0065】
本発明の第4実施形態は、電動駆動ユニット管理システム400である。電動駆動ユニット管理システム400は、ユーザが操作力を加えて移動させるカート100に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部2と、アシスト部2への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与え、当該指示後に取得された情報に基づいてアシスト部2が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断部4と、判断部4が、アシスト部2は所定の条件を満たさないと判断したときはアシスト部2の動作を制限する制限部5と、を備える。アシスト部2は、判断部4および制限部5の少なくとも一部が搭載された外部端末60と通信可能である。
【0066】
第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0067】
本発明の第5実施形態は、電動カート100の制御方法である。この方法は、ユーザが操作力を加えて移動させるカート100に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部2を備えるカート100のアシスト部2への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与えるステップ(S112)と、当該指示後に取得された情報に基づいてアシスト部2が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断ステップ(S117)と、判断ステップで、アシスト部2は所定の条件を満たさないと判断したときはアシスト部2の動作を制限するステップ(S118)と、を含む。
【0068】
第5実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0069】
本発明の第6実施形態は、電動カート100の制御プログラムP100である。制御プログラムP100は、ユーザが操作力を加えて移動させるカート100に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部2を備えるカート100のアシスト部2への給電が開始されたとき、所定操作を行うようにユーザに指示を与えるステップ(S112)と、当該指示後に取得された情報に基づいてアシスト部2が所定の条件を満たすかどうかを判断する判断ステップ(S117)と、判断ステップで、アシスト部2は所定の条件を満たさないと判断したときはアシスト部2の動作を制限するステップ(S118)と、をコンピュータに実行させる。
【0070】
第6実施形態の制御プログラムのこれらの機能は、電動カート100の機能ブロックに対応する複数のモジュールが実装されたアプリケーションプログラムとして、情報処理部10のストレージ(例えば記憶部73)および外部端末60にインストールされてもよい。第3実施形態の制御プログラムは、電動カート100に組み込まれたコンピュータのプロセッサ(例えばCPU)のメインメモリに読み出しされて実行されてもよい。
【0071】
第6実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0072】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上記した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上記の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容にも設計変更が許容され得る。
【0073】
[変形例]
以下、変形例を説明する。変形例の図面及び説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0074】
実施形態の説明では、操作部23がグリップセンサである例を示したが、これに限定されない。操作部23は、トルクセンサなどグリップセンサとは異なるセンサであってもよい。
【0075】
実施形態の説明では、通信部72の通信方式としてBeacon(登録商標)を用いる例を示したが、これに限定されない。例えば、通信部の通信方式としてWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などを採用できる。
【0076】
実施形態の説明では、動力部21が内輪ギア駆動モータである例を示したが、これに限定されない。例えば、動力部は、後輪に内装されるインホイールモータであってもよい。
【0077】
実施形態の説明では、電動カート100が4輪である例を示したが、これに限定されない。例えば、電動カートは、5輪以上であってもよい
【0078】
実施形態の説明では、指示部3が外部端末60に備えられる例を示したが、これに限定されない。例えば、指示部は、カート本体に取り付けられた液晶モニタであってもよい。
【0079】
上記の変形例は、各実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0080】
上記した各実施形態及び変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0081】
2 アシスト部、 3 指示部、 4 判断部、 5 制限部、 9 カート本体、 10 情報処理部、 20 内部処理部、 21 動力部、 22 バッテリ、 23 操作部、 60 外部端末、 73 記憶部、 75 第1駆動部、 76 第2駆動部、 93 前輪、 94 後輪、 95 グリップ部、 100 電動カート、 200 電動カート管理システム、 300 電動駆動ユニット、 400 電動駆動ユニット管理システム。
図1
図2
図3
図4