(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047105
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】電動カート、電動カート管理システム、電動駆動ユニット、電動駆動ユニット管理システム、電動カートの制御方法、電動カートの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B62B 3/00 20060101AFI20240329BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240329BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240329BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240329BHJP
【FI】
B62B3/00 G
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152531
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】飯白 豊充
【テーマコード(参考)】
3D050
5H125
【Fターム(参考)】
3D050AA04
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050KK14
5H125AA14
5H125AA17
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC08
5H125CA01
5H125CC07
5H125CD02
5H125EE27
5H125EE41
5H125EE51
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】カートの使用中にバッテリが切れる可能性を低減できる電動カートの技術を提供することを目的とする。
【解決手段】ある態様の電動カート100は、ユーザが操作力を加えて移動させるカート本体と、カート本体に備えられてカート本体に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部2に電力を供給するバッテリ22と、バッテリ22に関する情報を取得する情報取得部81と、情報取得部81の取得結果を記憶する記憶部73と、記憶部73に記憶された情報に基づいて、カート本体の1回の移動でアシスト部2に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量として推定する推定部62と、情報取得部81で取得されたバッテリ22の現在のバッテリ残量が、推定部62で推定された推定バッテリ量よりも小さい場合に報知する報知部64と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが操作力を加えて移動させるカート本体と、
前記カート本体に備えられて前記カート本体に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部に電力を供給するバッテリと、
前記バッテリに関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部の取得結果を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記カート本体の1回の移動で前記アシスト部に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量として推定する推定部と、
前記情報取得部で取得された前記バッテリの現在のバッテリ残量が、前記推定部で推定された前記推定バッテリ量よりも小さい場合に報知する報知部と、
を備える電動カート。
【請求項2】
前記推定部は、前記バッテリが過去の所定期間中に電力を供給したときのバッテリ消費量に基づいて、前記推定バッテリ量を推定する、請求項1に記載の電動カート。
【請求項3】
前記情報取得部で取得された前記バッテリの現在のバッテリ残量が、前記推定部で推定された前記推定バッテリ量よりも小さい場合に前記アシスト部の動作を制限する制限部を備える、請求項1に記載の電動カート。
【請求項4】
本電動カートに関する移動距離情報および外部環境情報の少なくとも1つを含む情報を取得する関連情報取得部を備え、
前記推定部は、前記関連情報取得部の取得結果を加味して前記推定バッテリ量を推定する、請求項1に記載の電動カート。
【請求項5】
本電動カートの乗車人数を取得する人数情報取得部を備え、
前記推定部は、前記人数情報取得部の取得結果を加味して前記推定バッテリ量を推定する、請求項1に記載の電動カート。
【請求項6】
ユーザが操作力を加えて移動させるカートに与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部に電力を供給するバッテリと、
前記バッテリに関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部の取得結果を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記カートの1回の移動で前記アシスト部に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量として推定する推定部と、
前記情報取得部で取得された前記バッテリの現在のバッテリ残量が、前記推定部で推定された前記推定バッテリ量よりも小さい場合に報知する報知部と、
を備え、
前記推定部と前記報知部の少なくとも一部は、前記記憶部と情報交換可能な外部端末に搭載される電動カート管理システム。
【請求項7】
前記カートに関する移動距離情報および外部環境情報の少なくとも1つを含む情報を取得する関連情報取得部を備え、
前記推定部は、前記関連情報取得部の取得結果を加味して前記推定バッテリ量を推定する、請求項6に記載の電動カート管理システム。
【請求項8】
前記カートの乗車人数を取得する人数情報取得部を備え、
前記推定部は、前記人数情報取得部の取得結果を加味して前記推定バッテリ量を推定する、請求項6に記載の電動カート管理システム。
【請求項9】
ユーザが操作力を加えて移動させるカートに与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部に電力を供給するバッテリと、
前記バッテリに関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部の取得結果を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記カートの1回の移動で前記アシスト部に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量として推定する推定部と、
前記情報取得部で取得された前記バッテリの現在のバッテリ残量が、前記推定部で推定された前記推定バッテリ量よりも小さい場合に報知する報知部と、
を備える電動駆動ユニット。
【請求項10】
ユーザが操作力を加えて移動させるカートに与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部に電力を供給するバッテリと、
前記バッテリに関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部の取得結果を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記カートの1回の移動で前記アシスト部に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量として推定する推定部と、
前記情報取得部で取得された前記バッテリの現在のバッテリ残量が、前記推定部で推定された前記推定バッテリ量よりも小さい場合に報知する報知部と、
を備え、
前記記憶部は、前記推定部と前記報知部の少なくとも一部が搭載された外部端末と情報交換可能である電動駆動ユニット管理システム。
【請求項11】
ユーザが操作力を加えて移動させるカートに与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部に電力を供給するバッテリに関する情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された結果を記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップで記憶された情報に基づいて、前記バッテリの現在のバッテリ残量を算出する算出ステップと、
前記記憶ステップで記憶された情報に基づいて、前記カートの1回の移動で前記アシスト部に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量として推定する推定ステップと、
前記算出ステップで算出された前記バッテリの現在のバッテリ残量と前記推定ステップで推定された前記推定バッテリ量とを比較する比較ステップと、
前記バッテリの現在のバッテリ残量が前記推定バッテリ量よりも小さい場合に報知するステップと、
を含む電動カートの制御方法。
【請求項12】
ユーザが操作力を加えて移動させるカートに与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部に電力を供給するバッテリに関する情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された結果を記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップで記憶された情報に基づいて、前記バッテリの現在のバッテリ残量を算出する算出ステップと、
前記記憶ステップで記憶された情報に基づいて、前記カートの1回の移動で前記アシスト部に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量として推定する推定ステップと、
前記算出ステップで算出された前記バッテリの現在のバッテリ残量と前記推定ステップで推定された前記推定バッテリ量とを比較する比較ステップと、
前記バッテリの現在のバッテリ残量が前記推定バッテリ量よりも小さい場合に報知するステップと、
をコンピュータに実行させる電動カートの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動カート、電動カート管理システム、電動駆動ユニット、電動駆動ユニット管理システム、電動カートの制御方法および電動カートの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、幼児などを乗せる直方体状の運搬箱体を備えた幼児等運搬用手押し車が記載されている。この手押し車は、運搬箱体の前下部に取り付けられた前走行輪と、運搬箱体の後下部に取り付けられた後走行輪と、運搬箱板の中央下部に取り付けられた中央走行輪とを有する。また、運搬箱体の後面に、手押し操作が行ない易くなるようにハンドルが取り付けられており、このハンドルを握り持って手押しすることにより運搬箱体を移動させる。
【0003】
また、特許文献2には、自車の状態を検知する手段及び検知した状態情報を送信する手段を有するゴルフカートが記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、バッテリの電力を用いて動力を発生させることでユーザをアシストし、出力が異なる複数の駆動モードによって駆動可能な補助装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-203128号公報
【特許文献2】特開2002-085611号公報
【特許文献3】特開2018-043593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者は、以下の認識を得た。複数の幼児を乗せて運搬するための手押カートでは、運搬中は幼児の体重が加わるため、カートを押す力が大きくなり、ユーザの負担が大きくなる。そこで、手押しカートに補助力(アシスト力)を与える動力部を設け、ユーザの手押力の負担を軽減することが考えられる。この場合、動力部および動力部に電力を供給するバッテリ等を搭載する分、カートの質量は増加する。
【0007】
このカートで、幼児の運搬中にバッテリが切れると、補助力がなくなりユーザの負担が大きくなる。特に、動力部およびバッテリを搭載しているため、これらを非搭載のカートよりも、バッテリ切れ時のユーザ負担は大きくなる。このため、カートの使用中にバッテリが切れる可能性は低いことが望ましい。これらのことから、発明者らは、特許文献1-3に記載の発明は、カートの使用中にバッテリが切れる可能性を低減する観点から、改善の余地があることを認識した。
【0008】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、カートの使用中にバッテリが切れる可能性を低減できる電動カートの技術を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電動カートは、ユーザが操作力を加えて移動させるカート本体と、カート本体に備えられてカート本体に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部に電力を供給するバッテリと、バッテリに関する情報を取得する情報取得部と、情報取得部の取得結果を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された情報に基づいて、カート本体の1回の移動でアシスト部に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量として推定する推定部と、情報取得部で取得されたバッテリの現在のバッテリ残量が、推定部で推定された推定バッテリ量よりも小さい場合に報知する報知部と、を備える。
【0010】
この態様によれば、バッテリ残量が将来のバッテリ消費量よりも小さい場合に報知されるから、カートの使用中にバッテリが切れる可能性を低減できる。
【0011】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カートの使用中にバッテリが切れる可能性を低減できる電動カートの技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の電動カートを概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1の電動カートのシステム構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の電動カートの操作部を模式的に示す図である。
【
図4】
図1の電動カートの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0015】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部または全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部または全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0016】
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付して区別し、総称するときはこれらを省略する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0017】
本発明のある態様の電動カートは、ユーザが操作力を加えて移動させるカート本体と、カート本体に備えられてカート本体に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部に電力を供給するバッテリと、バッテリに関する情報を取得する情報取得部と、情報取得部の取得結果を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された情報に基づいて、カート本体の1回の移動でアシスト部に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量として推定する推定部と、情報取得部で取得されたバッテリの現在のバッテリ残量が、推定部で推定された推定バッテリ量よりも小さい場合に報知する報知部と、を備える。
【0018】
この構成によれば、バッテリ残量が推定バッテリ量よりも小さい場合に報知されるから、ユーザはバッテリ残量が少ないことを認識できる。この報知に応じてバッテリ残量を増やしたり、使用を中止したりすることで、カート使用中にバッテリが切れる可能性を低減できる。
【0019】
一例として、上記推定部は、バッテリが過去の所定期間中に電力を供給したときのバッテリ消費量に基づいて、推定バッテリ量を推定する。この場合、当該電動カートの過去の実績に基づいて推定できるため、個体差の影響を抑制し推定精度を向上できる。日常の移動経路の状況に応じた推定ができるので、移動経路のバラツキの影響を抑え、推定精度を向上できる。
【0020】
一例として、情報取得部で取得されたバッテリの現在のバッテリ残量が、推定部で推定された推定バッテリ量よりも小さい場合にアシスト部の動作を制限する制限部を備える。この場合、バッテリ残量が推定バッテリ量よりも小さい場合に動作制限されるから、誤って使用される可能性を低減できる。
【0021】
一例として、上記電動カートは、本電動カートに関する移動距離情報および外部環境情報の少なくとも1つを含む情報を取得する関連情報取得部を備え、推定部は、関連情報取得部の取得結果を加味して推定バッテリ量を推定する。この場合、バッテリ消費量の変動要因である移動距離や外部環境情を考慮してバッテリ消費量を推定できる。このため、変動要因の影響を抑制し、推定精度を向上できる。
【0022】
一例として、上記電動カートは、本電動カートの乗車人数を取得する人数情報取得部を備え、推定部は、人数情報取得部の取得結果を加味して推定バッテリ量を推定する。この場合、バッテリ消費量の変動要因である乗車人数を考慮してバッテリ消費量を推定できる。このため、変動要因の影響を抑制し、推定精度を向上できる。
【0023】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態及び変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0024】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る電動カート100を説明する。
図1は、電動カート100を概略的に示す側面図である。
図2は、電動カート100の情報処理に関するシステム構成を示すブロック図である。
【0025】
図2に示す電動カート100の各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0026】
電動カート100の全体構成を説明する。実施形態の電動カート100は、1人または数人の幼児を乗せて例えば街中を移動可能な電動アシスト付き手押し車両として好適に適用できる。
図1に示す電動カート100は、カート本体9と、アシスト部2と、推定部62と、判断部63と、報知部64と、制限部65と、バッテリ情報取得部81と、関連情報取得部82と、人数情報取得部83とを主に備える。アシスト部2は、情報処理部10と、動力部21と、バッテリ22と、電源スイッチ24とを含む。
【0027】
情報処理部10は、すべての機能が、カート本体9に装着される内部処理部20に搭載されてもよいが、一部の機能は、カート本体9から離れた別の装置に搭載され、通信手段を介して互いに連携してもよい。実施形態の情報処理部10は、内部処理部20と、外部端末60とを含み、情報処理機能を分担している。内部処理部20の処理機能の一部は、外部端末60で処理されてもよいし、外部端末60の処理機能の一部は、内部処理部20で処理されてもよい。外部端末60としては、情報表示機能と、情報入力機能と、情報処理機能と、通信機能とを有するスマートフォンを採用できる。
【0028】
電源スイッチ24をオンにすると、バッテリ22の電力に基づいて電動カート100に電源が投入され、アシスト部2はオンになる。電源スイッチ24をオフにすると、電動カート100への電源供給が停止され、アシスト部2はオフになる。
【0029】
バッテリ情報取得部81は、バッテリ22に関する情報を取得する。関連情報取得部82は、電動カート100に関する移動距離情報および外部環境情報の少なくとも1つを含む情報を取得する。人数情報取得部83は、電動カート100の乗車人数を取得する。
【0030】
カート本体9は、ユーザが操作力Fuを加えて移動させる手押し車両である。以下、カート本体9の移動方向を前後方向といい、前後方向に直交する車幅方向を幅方向という。カート本体9は、直方体状の箱体である収容部92と、収容部92の下部に取り付けられた複数の車輪93、94と、収容部92の後方寄り上部に取り付けられたグリップ部95とを主に含む。実施形態は、2つの前輪93と、2つの後輪94とを含む。収容部92は、幼児等を収容するために上部が開放された袋体97と、袋体97を支持するために、パイプ等で構成されたフレーム体98とで構成される。フレーム体98は、袋体97の外殻を構成する。
【0031】
前輪93は、フレーム体98の前方寄りの左右両側に回転可能に取り付けられる従動輪である。2つの後輪94は、フレーム体98の後方寄りの左右両側に取り付けられる。2つの後輪94は、それぞれ動力部21によって駆動される駆動輪である。つまり、後輪94には、アシスト部2のアシスト力Faが入力される。グリップ部95は、フレーム体98の後部上端から後方に延びる棒状の部分である。この例では、幅方向に離間して配置される2つのグリップ部95が設けられる。2つのグリップ部95は、前後方向に延伸するパイプ状を有する。2つのグリップ部95の先端には、幅方向に延びるパイプ状の横棒(不図示)が連結される。
【0032】
2つのグリップ部95のそれぞれには、ハンドブレーキレバー96が設けられる。ユーザは、ハンドブレーキレバー96をグリップ部95に近づけることで電動カート100にブレーキをかけることができる。
【0033】
2つのグリップ部95それぞれには、ユーザが操作力Fuを加えるための2つの操作部23が設けられる。2つの操作部23は、幅方向に離間して配置され、それぞれ操作力Fuを検知するグリップセンサである。以下、車輪93、94、動力部21および操作部23について左右を区別するときは符号の末尾に「L」または「R」を付し、区別しないときはこれを省略する。操作部23は、操作部23を前後方向に押し込む力である操作力Fuを測定し、この測定結果をセンサ信号S1として内部処理部20に提供する。この例では、2つの操作部23は、互いに独立しており、左右で別々のセンサ信号S1を内部処理部20に提供する。内部処理部20は、左側の操作部23Lのセンサ信号S1に基づいて左側の後輪94Lの動力部21Lを制御し、右側の操作部23Rのセンサ信号S1に基づいて右側の後輪94Rの動力部21Rを制御する。このように、内部処理部20は、アシスト部2を制御する制御部として機能する。
【0034】
図3は、操作部23を模式的に示す図である。操作部23は、ストロークの前側と後側の中央位置Mにセンサ信号S1がゼロ(正でも負でもない状態)であるゼロ点Pを有する。センサ信号S1は、操作部23がゼロ点Pよりも前側(図中右側)に押し込まれたときに正になり、操作部23がゼロ点Pよりも後側(図中左側)に押し込まれたときに負になる。
図3では操作部23の基準位置Jを黒三角で示し、ゼロ点Pを白三角で示している。
【0035】
操作部23のゼロ点Pは、電動カート100の製造時に所定の初期位置(例えば、中央位置M)に設定される。
図3の例では、操作部23の基準位置Jが中央位置Mに位置する場合に、センサ信号S1はゼロになる。センサ信号S1がゼロの場合、アシスト部2はアシスト力を出力しない。したがって、操作力Fuがゼロの状態で、操作部23が中央位置Mに来るように設定しておけば、電源投入直後に電動カート100が意図せず移動することがない。
【0036】
アシスト部2を説明する。アシスト部2は、カート本体9に加えられる操作力Fuに応じて駆動または制動するためのアシスト力Faを発生させる。駆動するためのアシスト力Faは、操作力Fuと同じ方向にカート本体9を加速する力である。制動するためのアシスト力Faは、カート本体9の移動を減速するブレーキ力である。
【0037】
動力部21は、内部処理部20の制御に基づいてアシスト力Faを発生させる電気モータである。この例では、左右2つの後輪94にそれぞれ連結された2つの動力部21が設けられる。左右2つの動力部21は、共通に制御されてもよいが、この例では左右2つの操作部23のセンサ信号S1に基づいて別々に制御される。この例の動力部21は、内輪ギア駆動モータである。
【0038】
バッテリ22は、動力部21およびその他の部分に電力を供給する。バッテリ22は、繰り返し充放電可能なリチウムイオン電池などの二次電池である。一例として、バッテリ22は、フレーム体98の後面外側に設けられたポケット型のラック(不図示)に着脱可能に保持されてもよい。
【0039】
内部処理部20、推定部62、判断部63、報知部64、および制限部65は、カート本体9に搭載されてもよいが、一部はカート本体9から離れた別の装置に搭載され、通信手段を介して互いに連携しもよい。例えば、推定部62、判断部63、報知部64、および制限部65の少なくとも一部はアシスト部2と通信可能な外部端末に搭載できる。実施形態では、推定部62、判断部63、報知部64、および制限部65は、通信機能を有する外部端末60に搭載される。この例の外部端末60は、GPS受信機66を備える。GPS受信機66は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の一種であり、受信した衛星電波を用いて自身の現在位置を提供できる。
【0040】
内部処理部20を説明する。内部処理部20は、入力部71と、通信部72と、記憶部73と、第1駆動部75と、第2駆動部76と、電源検知部77とを含む。入力部71は、第1操作部23Lおよび第2操作部23Rからセンサ信号S1を受け付ける。また、入力部71は、バッテリ情報取得部81、関連情報取得部82、および人数情報取得部83からそれぞれの取得情報を受け付ける。
【0041】
通信部72は、外部端末60と通信して情報を送受信する。通信部72は、推定部62、判断部63、報知部64、および制限部65に対して情報を提供可能であり、これらから情報を取得できる。通信部72は、GPS受信機66から位置情報を取得できる。通信部72と外部との間の通信方式に制限はないが、この例では、通信部72の通信方式としてBluetooth Low Energy (BLE) を利用したBeacon(登録商標)を採用している。
【0042】
記憶部73は、入力部71の入力情報、この入力情報を処理した中間処理情報、通信部72の送受信情報、第1駆動部75および第2駆動部76の出力情報等を時系列的に記憶できる。特に、記憶部73は、バッテリ情報取得部81、関連情報取得部82、および人数情報取得部83の取得結果を記憶する。記憶部73は、電動カート100の制御プログラムP100を格納できる。
【0043】
第1駆動部75は、第1動力部21Lを駆動し、後輪94Lにアシスト力を発生させる。第2駆動部76は、第2動力部21Rを駆動し、後輪94Rにアシスト力を発生させる。電源検知部77は、電源投入の有無を検知する。第1駆動部75および第2駆動部76は、電源投入時の初期状態では動作を停止しており、制限部65による制限が解除される(動作が許可される)まで動作を開始しない。つまり、電源投入直後は、アシスト部2はアシスト力を発生しない。
【0044】
バッテリ情報取得部81は、バッテリ22の電圧、電流、温度、劣化度等の情報を取得し、その取得結果を内部処理部20に提供する。内部処理部20は、バッテリ情報取得部81の取得結果に基づいてバッテリ22の現在のバッテリ残量(以下、「バッテリ残量R」という)を算出する。バッテリ残量Rは、追加的な充電がない状態でバッテリ22が供給可能な電力(電流時間積)である。内部処理部20は、バッテリ22の電圧および電流の経時的な変化を記憶しておき、これらの経時的な変化からバッテリ残量Rを算出できる。
【0045】
関連情報取得部82は、電動カート100に関する移動距離情報および外部環境情報の少なくとも1つを含む情報を取得する。移動距離情報は、例えば、電動カート100がこれから移動する予定移動距離であってもよい。例えば、関連情報取得部82は、所定のタイミングに、ユーザが入力した予定移動距離を移動距離情報として取得できる。例えば、関連情報取得部82は、GPS受信機で取得した現在位置(移動元位置)と移動先位置までの経路上の距離を移動距離情報として取得できる。現在位置に戻る往復の場合も同様に取得できる。
【0046】
バッテリ消費量は、移動距離が長いと増え、移動距離が短いと減る。内部処理部20は、予め、移動距離とバッテリ消費量との相関関係を係数(以下、「距離係数」という)として記憶部73に記憶できる。
【0047】
外部環境情報は、例えば、電動カート100がこれから移動する経路における気温、湿度、天候、経路の混雑状況等であってもよい。関連情報取得部82は、所定のタイミングに、ユーザが入力した外部環境情報を取得できる。バッテリ消費量は、気温が高いと増え、気温が低いと減る。また、バッテリ消費量の大小は、湿度、天候、経路の混雑状況それぞれに相関を有する。内部処理部20は、予め、外部環境情報とバッテリ消費量との相関関係を係数(以下、「外部環境係数」という)として記憶部73に記憶できる。
【0048】
人数情報取得部83は、これから移動する電動カート100の乗車する人の数(乗車人数)を取得する。内部処理部20は、乗車人数に予め取得された平均体重を乗算して乗車質量を算出する。バッテリ消費量は、乗車質量が大きいと増え、乗車質量が小さいと減る。内部処理部20は、予め、乗車質量とバッテリ消費量との相関関係を係数(以下、「質量係数」という)として記憶部73に記憶できる。人数情報取得部83は、所定のタイミングに、ユーザが入力した乗車人数を取得できる。別例として、電動カート100に質量センサを設け、内部処理部20は、この質量センサで検出した質量を用いて乗車質量を算出できる。算出された乗車質量を平均体重で除算することにより乗車人数を算出できる。
【0049】
推定部62は、記憶部73に記憶された情報に基づいて、電動カート100の1回の移動でアシスト部2に必要と推定されるバッテリ消費量(以下、「推定バッテリ量U」という)を推定する。推定バッテリ量Uは、電動カート100の1回の移動でアシスト部2が消費すると推定されるバッテリ量であってもよい。この例では、1回の移動は、バッテリ22がオフの状態からオンになり再度オフになるまでをいい、かつ、電動カート100が本来の目的で日常的に行われる移動を指し、非日常的な移動、始業点検などの試験的な移動、イレギュラーな移動などを含まない。バッテリ22が、アシスト部2の動力部21に電力供給を開始することをバッテリ22がオンになるといい、動力部21への電力供給を停止することをオフになるという。また、バッテリ消費量は、電動カート100が消費するためにバッテリ22から出力される電力(電流時間積)であり、推定バッテリ量Uは将来のバッテリ消費量である。
【0050】
推定部62は、内部処理部20を介して、記憶部73からバッテリ22の履歴情報を読み出し、過去の所定期間内における、電動カート100の使用回数と、その使用時のバッテリ消費量の総和とを算出する。この所定期間は、1日、1週間、1月、3月、半年、1年などであってもよい。
【0051】
推定部62は、バッテリ消費量の総和を使用回数で除算した結果から、過去の使用1回当たりのバッテリ消費量(以下、「過去の平均消費量」という)を算出する。内部処理部20は、過去の平均消費量を推定バッテリ量としてもよい。別例として、推定バッテリ量は、過去のバッテリ消費量の個々のデータの平均値と推定標準偏差を求め、この推定標準偏差に所定の係数を乗じた結果を平均値に加算して算出されてもよい。また、このように算出された結果をベース値として、後述する変動要因を加味して推定バッテリ量を推定してもよい。
【0052】
この例では、推定部62は、ベース値を基準に、予定移動距離情報、外部環境情報、および乗車質量の少なくとも1つを加味して推定バッテリ量Uを推定する。例えば、推定部62は、記憶部73から、予定移動距離に対応する距離係数と、外部環境情報に対応する外部環境係数と、乗車質量に対応する質量係数を読み出し、ベース値にこれらの係数を乗算するなどの数学的な処理を施すことにより推定バッテリ量Uを推定できる。
【0053】
判断部63は、バッテリ22の現在のバッテリ残量Rが、推定部62で推定された推定バッテリ量Uよりも小さいか否かを判断する。
【0054】
報知部64は、判断部63が、現在のバッテリ残量Rが推定バッテリ量Uよりも小さいと判断した場合に外部に報知する。報知手段は限定されず、光や音など人が感知できる手段であればどのような手段を用いてもよい。この例では、報知部64は、外部端末60にバッテリ残量が不足していることを表示するとともに、ビープ音を出力する。
【0055】
制限部65は、判断部63が、現在のバッテリ残量Rが推定バッテリ量Uよりも小さいと判断した場合にアシスト部2の動作を制限する。この例では、制限部65は、電源投入時から判断部63がバッテリ残量は足りていると判断するまで、第1駆動部75および第2駆動部76を停止するように制御する。制限部65は、バッテリ残量は足りていると判断したら、アシスト部2の動作制限を解除する。制限が解除されたら、第1駆動部75および第2駆動部76は通常に動作し、アシスト部2は、操作部23への操作力Fuに応じたアシスト力Faを発生させる。
【0056】
このように構成された電動カート100の動作の一例を説明する。
図4は、電動カート100の動作の一例のプロセスS110を示すフローチャートである。このプロセスは、推定バッテリ量Uと現在のバッテリ残量Rに基づく動作プロセスであり、例えば電動カート100の電源投入時に実行される。
【0057】
プロセスS110では、電源投入されたらアシスト部2を動作制限する(ステップS111)。電動カート100は、電源投入直後にバッテリ残量と将来の消費量(推定バッテリ量)とが判明するまではアシスト部2を動作させない。
【0058】
次に、内部処理部20は、バッテリ情報取得部81を介してバッテリ22に関する情報(バッテリ情報)を取得する(ステップS112)。次に、内部処理部20は、バッテリ情報取得部81の取得結果(バッテリ情報)を記憶部73に記憶する(ステップS113)。このようにバッテリ情報を随時、時系列的に記憶することにより、記憶部73にバッテリ22のバッテリ残量の履歴が蓄積され、バッテリ22が電力を供給したときのバッテリ残量の変化パターンを把握できる。
【0059】
次に、内部処理部20は、記憶部73の記憶されたバッテリ情報に基づいてバッテリ22の現在のバッテリ残量Rを算出する(ステップS114)。
【0060】
次に、内部処理部20は、バッテリ22が過去の所定期間中に電力を供給したときのバッテリ消費量を特定する(ステップS115)。このステップで、内部処理部20は、記憶部73に記憶されたバッテリ22のバッテリ残量の履歴情報から過去のバッテリ消費量を特定する。ここでの所定期間は一例として1ヶ月である。
【0061】
次に、内部処理部20は、関連情報取得部82を介して電動カート100に関する移動距離情報および外部環境情報の少なくとも1つを含む情報(以下、「カート関連情報」という)を取得する(ステップS116)。カート関連情報は、電動カート100がこれから移動するときにその移動(例えば、散歩)に関して取得されてもよい。
【0062】
上述したように、移動距離情報は、例えば、電動カート100がこれから移動する予定移動距離であってもよい。このステップで、内部処理部20は、外部端末60に移動距離情報の入力を促す表示をさせ、この表示に対してユーザが入力した予定移動距離を移動距離情報として取得できる。内部処理部20は、取得された移動距離情報に対応する距離係数を求め、その結果を保持する。
【0063】
別の例を説明する。内部処理部20は、外部端末60に地図を表示させ、GPS受信機で取得した現在位置と、この地図上のユーザが指した地点までの経路の距離を移動距離情報として取得できる。現在位置に戻る往復の場合も同様に取得できる。
【0064】
上述したように、外部環境情報は、例えば、電動カート100がこれから移動する経路における気温、湿度、天候、経路の混雑状況等であってもよい。このステップで、内部処理部20は、外部端末60に外部環境情報の入力を促す表示をさせ、この表示に対してユーザが入力した予測情報を外部環境情報として取得できる。また、バッテリ消費量の大小は、湿度、天候、経路の混雑状況にそれぞれに相関を有する。内部処理部20は、取得された外部環境情報に対応する外部環境係数を求め、その結果を保持する。
【0065】
次に、内部処理部20は、人数情報取得部83を介して電動カート100の乗車人数を取得する(ステップS117)。この乗車人数は、これから移動する電動カート100に乗車する人の数である。このステップで、内部処理部20は、外部端末60に乗車人数の入力を促す表示をさせ、この表示に対してユーザが入力した乗車人数を取得できる。内部処理部20は、乗車人数に平均体重を乗算して乗車質量を算出する。内部処理部20は、算出された乗車質量に対応する質量係数を求め、その結果を保持する。
【0066】
次に、推定部62は、バッテリ22の推定バッテリ量Uを推定する(ステップS118)。このステップで、内部処理部20は、記憶部73に記憶された情報に基づいてバッテリ22の推定バッテリ量Uを推定する。このステップでは、推定バッテリ量のベース値を基準に、ステップS116で取得された予定移動距離情報および外部環境情報と、ステップS117で算出された乗車質量との少なくとも1つを加味して推定バッテリ量Uを推定する。推定バッテリ量Uは、ベース値に距離係数、外部環境係数、および質量係数を乗算して推定できる。
【0067】
次に、判断部63は、現在のバッテリ残量Rが推定バッテリ量Uよりも小さいか否かを判断する(ステップS119)。バッテリ残量Rが推定バッテリ量Uよりも小さい場合(ステップS119のY)、内部処理部20は、バッテリ残量が不足していることを報知部64に報知させる(ステップS121)。また、内部処理部20は、制限部65にアシスト部2の動作制限を継続させる(ステップS122)。ステップS122を実行したら、プロセスS110は終了する。
【0068】
現在のバッテリ残量Rが推定バッテリ量U以上の場合(ステップS119のN)、内部処理部20は、制限部65にアシスト部2の動作制限を解除させる(ステップS120)。制限が解除されたら、アシスト部2は、操作部23への操作力Fuに応じたアシスト力を発生させる。ステップS120を実行したら、プロセスS110は終了する。
【0069】
上記のプロセスは一例であり、各種の変形が可能である。推定部62、報知部64、制限部65は、スマートフォンの特定アプリケーションプロクラム(以下、「特定アプリ」という)として外部端末60にインストールすることができる。使用時には特定アプリがインストールされた外部端末60を所持するユーザが、外部端末60を介して電動カート100を操作する。
【0070】
日常、電動カート100の電源投入時に、上記の特定アプリを起動し、上記プロセスにより、バッテリの残量と将来の消費量とを比較し、バッテリの残量が将来の消費量を上回る場合は、アシスト部2の動作制限を解除する。動作制限が解除される前は、アシスト部2は、アシスト力を出力しない。
【0071】
ステップS120を実行したら、ユーザは操作部23に操作力Fuを入力して電動カート100を移動させる。この際、電動カート100は、移動に使用されるたびに、1回の移動において電源がオンであった時間と、バッテリ消費量とを時系列データとして記憶部73に記憶する。また、電動カート100は、移動中にGPS受信機で取得した位置情報から、移動コースを取得し、記憶部73に記憶する。所定期間内に取得された移動コースの記憶情報を分析して、各移動コースのバッテリ消費量を算出できる。内部処理部20は、電動カート100の電源投入時に、外部端末60に複数の移動コースを表示させ、この表示に対してユーザが選択した移動コースについて記憶された情報を優先的に使用して推定バッテリ量Uを推定してもよい。
【0072】
電動カート100の動作は、上記のプロセスに限定されない。電動カート100は、移動に使用されるたびに、1回の移動において電源がオンであった時間と、バッテリ消費量とを時系列データとして記憶部73に記憶してもよい。電動カート100は、例えば、過去1週間の時系列データを分析して1回の移動におけるバッテリ消費量を予測し、このバッテリ消費量が、使用開始時のバッテリ残量Rよりも少ない場合に、警告表示用のインジケータで警告してもよい。
【0073】
以上が第1実施形態の説明である。
【0074】
以下、本発明の第2~第6実施形態を説明する。第2~第6実施形態の図面及び説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0075】
本発明の第2実施形態は、電動カート100を管理する管理システム200である。電動カート管理システム200は、ユーザが操作力を加えて移動させるカート100に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部2に電力を供給するバッテリ22と、バッテリ22に関する情報を取得する情報取得部81と、情報取得部81の取得結果を記憶する記憶部73と、記憶部73に記憶された情報に基づいて、カート100の1回の移動でアシスト部2に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量Uとして推定する推定部62と、情報取得部81で取得されたバッテリ22の現在のバッテリ残量Rが、推定部62で推定された推定バッテリ量Uよりも小さい場合に報知する報知部64と、を備える。推定部62と報知部64の少なくとも一部は、記憶部73と情報交換可能な外部端末60に搭載される。
【0076】
電動カート管理システム200は、電動カートに関する移動距離情報および外部環境情報の少なくとも1つを含む情報を取得する関連情報取得部82を備え、推定部62は、関連情報取得部82の取得結果を加味して推定バッテリ量Uを推定する。
【0077】
電動カート管理システム200は、電動カートの乗車人数を取得する人数情報取得部83を備え、推定部62は、人数情報取得部83の取得結果を加味して推定バッテリ量Uを推定する。
【0078】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0079】
本発明の第3実施形態は、電動駆動ユニット300である。電動駆動ユニット300は、ユーザが操作力を加えて移動させるカート100に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部2に電力を供給するバッテリ22と、バッテリ22に関する情報を取得する情報取得部81と、情報取得部81の取得結果を記憶する記憶部73と、記憶部73に記憶された情報に基づいて、カート100の1回の移動でアシスト部2に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量Uとして推定する推定部62と、情報取得部81で取得されたバッテリ22の現在のバッテリ残量Rが、推定部62で推定された推定バッテリ量Uよりも小さい場合に報知する報知部64と、を備える。
【0080】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0081】
本発明の第4実施形態は、電動駆動ユニット300を管理する管理システム400である。電動駆動ユニット管理システム400は、ユーザが操作力を加えて移動させるカート100に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部2に電力を供給するバッテリ22と、バッテリ22に関する情報を取得する情報取得部81と、情報取得部81の取得結果を記憶する記憶部73と、記憶部73に記憶された情報に基づいて、カート100の1回の移動でアシスト部2に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量Uとして推定する推定部62と、情報取得部81で取得されたバッテリ22の現在のバッテリ残量Rが、推定部62で推定された推定バッテリ量Uよりも小さい場合に報知する報知部64と、を備える。記憶部73は、推定部62と報知部64の少なくとも一部が搭載された外部端末60と情報交換可能である。
【0082】
第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0083】
本発明の第5実施形態は、電動カート100の制御方法である。この方法は、ユーザが操作力を加えて移動させるカート100に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部2に電力を供給するバッテリ22に関する情報を取得する取得ステップ(S112)と、取得ステップで取得された結果を記憶する記憶ステップ(S113)と、記憶ステップで記憶された情報に基づいて、バッテリ22の現在のバッテリ残量Rを算出する算出ステップと(S114)、記憶ステップで記憶された情報に基づいて、カート100の1回の移動でアシスト部2に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量Uとして推定する推定ステップ(S118)と、算出ステップで算出されたバッテリ22の現在のバッテリ残量Rと推定ステップで推定された推定バッテリ量Uとを比較する比較ステップ(S119)と、バッテリ22の現在のバッテリ残量Rが推定バッテリ量Uよりも小さい場合に報知するステップ(S121)と、を含む。
【0084】
本発明の第6実施形態は、電動カート100の制御プログラムP100である。制御プログラムP100は、ユーザが操作力を加えて移動させるカート100に与えられた操作力に応じて駆動力または制動力を発生するアシスト部2に電力を供給するバッテリ22に関する情報を取得する取得ステップ(S112)と、取得ステップで取得された結果を記憶する記憶ステップ(S113)と、記憶ステップで記憶された情報に基づいて、バッテリ22の現在のバッテリ残量Rを算出する算出ステップと(S114)、記憶ステップで記憶された情報に基づいて、カート100の1回の移動でアシスト部2に必要と推定されるバッテリ量を推定バッテリ量Uとして推定する推定ステップ(S118)と、算出ステップで算出されたバッテリ22の現在のバッテリ残量Rと推定ステップで推定された推定バッテリ量Uとを比較する比較ステップ(S119)と、バッテリ22の現在のバッテリ残量Rが推定バッテリ量Uよりも小さい場合に報知するステップ(S121)と、をコンピュータに実行させる。
【0085】
第6実施形態の制御プログラムP100のこれらの機能は、電動カート100の機能ブロックに対応する複数のモジュールが実装されたアプリケーションプログラムとして、情報処理部10のストレージ(例えば記憶部73)および外部端末60にインストールされてもよい。第3実施形態の制御プログラムP100は、電動カート100に組み込まれたコンピュータのプロセッサ(例えばCPU)のメインメモリに読み出しされて実行されてもよい。
【0086】
第6実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0087】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容にも設計変更が許容され得る。
【0088】
[変形例]
以下、変形例を説明する。変形例の図面及び説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0089】
実施形態の説明では、操作部23がグリップセンサである例を示したが、これに限定されない。操作部23は、トルクセンサなどグリップセンサとは異なるセンサであってもよい。
【0090】
実施形態の説明では、通信部72の通信方式としてBeacon(登録商標)を用いる例を示したが、これに限定されない。例えば、通信部の通信方式としてWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などを採用できる。
【0091】
実施形態の説明では、動力部21が内輪ギア駆動モータである例を示したが、これに限定されない。例えば、動力部は、後輪に内装されるインホイールモータであってもよい。
【0092】
実施形態の説明では、電動カート100が4輪である例を示したが、これに限定されない。例えば、電動カートは、5輪以上であってもよい
【0093】
実施形態の説明では、指示部3が外部端末60に備えられる例を示したが、これに限定されない。例えば、指示部は、カート本体に取り付けられた液晶モニタであってもよい。
【0094】
実施形態の説明では、バッテリ22がオンになってからオフになるまでの間に追加的な充電が行われない例を示したが、これに限定されない。例えば、バッテリ22がオンになってからオフになるまでの間に動力部21の回生ブレーキによる充電等が行われてもよい。
【0095】
実施形態の説明では、「1回の移動」とはバッテリ22がオンになってからオフになるまでとする例を示したが、これに限定されない。例えば、「1回の移動」を、出発地を出発して目的地に到着するまでとしてもよいし、電動カート100が出発地から目的地へ出発して目的地から出発地に戻るまでとし、その過程でバッテリ22がオフになることや追加的な充電が行われることの有無を問わないこととしてもよい。その他、所定の出発地と目的地を複数回往復することを「1回の移動」として取り扱ってもよい。
【0096】
実施形態の説明では、バッテリ残量Rが推定バッテリ量Uよりも小さい場合に、報知部64による報知と制限部65によるアシスト部2の動作の制限とを実行する例を示したが、これに限定されない。例えば、バッテリ残量Rが推定バッテリ量Uよりも小さい場合に、報知と動作制限のいずれか一方だけを実行してもよい。また、バッテリ残量Rが推定バッテリ量Uよりも小さい場合に、アシスト部2の動作に機能制限等を加えてバッテリ消費量を抑制する省エネモードに切り替えてもよい。一例として、省エネモードは、駆動するためのアシスト力の発生を制限して、制動するためのアシスト力による下り坂等でのカート本体9の過剰な加速の抑制のみを行うモードであってもよい。この場合、限られたバッテリ残量で最低限のアシストの効果を得ることができる。
【0097】
上述の変形例は、各実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0098】
上述した各実施形態及び変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0099】
2 アシスト部、 9 カート本体、 10 情報処理部、 20 内部処理部、 21 動力部、 22 バッテリ、 23 操作部、 60 外部端末、 62 推定部、 64 報知部、 65 制限部、 73 記憶部、 81 バッテリ情報取得部、 82 関連情報取得部、 83 人数情報取得部、 100 電動カート、 200 管理システム、 200 電動カート管理システム、 300 電動駆動ユニット、 400 電動駆動ユニット管理システム。