IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サカタインクス株式会社の特許一覧

特開2024-47115水性インクジェット用インク組成物、及び印刷物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047115
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】水性インクジェット用インク組成物、及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20240329BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240329BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152550
(22)【出願日】2022-09-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 恵理
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝明
(72)【発明者】
【氏名】森安 員揮
(72)【発明者】
【氏名】前田 寛仁
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056FC06
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA12
2H186FA07
2H186FB10
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB54
2H186FB56
2H186FB57
4J039BC07
4J039BC12
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA36
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】保存安定性、吐出安定性、連続吐出性、及び耐擦過性を有する水性インクジェット用インク組成物を提供すること。
【解決手段】顔料、アルカリ可溶性樹脂、樹脂エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する水性インクジェット用インク組成物であって、前記アルカリ可溶性樹脂は、酸価が100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、前記界面活性剤は、アセチレン系界面活性剤と、ノニオン性界面活性剤を含有し、前記ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びアルコキシアルコールからなる群より選ばれる1種以上を含有し、前記水性インクジェット用インク組成物中、前記樹脂エマルジョンの樹脂成分は、0.5質量%以上10質量%以下であり、23℃において測定される静的表面張力が27mN/m以上33mN/m以下であり、最大泡圧法により23℃において測定される動的表面張力が、寿命時間10m秒において33mN/m以上39mN/m以下である水性インクジェット用インク組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、アルカリ可溶性樹脂、樹脂エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する水性インクジェット用インク組成物であって、
前記アルカリ可溶性樹脂は、酸価が100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、
前記界面活性剤は、アセチレン系界面活性剤と、ノニオン性界面活性剤を含有し、
前記ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びアルコキシアルコールからなる群より選ばれる1種以上を含有し、
前記水性インクジェット用インク組成物中、前記樹脂エマルジョンの樹脂成分は、0.5質量%以上10質量%以下であり、
23℃において測定される静的表面張力が27mN/m以上33mN/m以下であり、
最大泡圧法により23℃において測定される動的表面張力が、寿命時間10m秒において33mN/m以上39mN/m以下であることを特徴とする水性インクジェット用インク組成物。
【請求項2】
基材に、請求項1に記載の水性インクジェット用インク組成物を印刷して得られることを特徴とする印刷物。
【請求項3】
前記基材が非吸収性印刷媒体であることを特徴とする請求項2に記載の印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インクジェット用インク組成物、及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷・記録方式は、非常に微細なノズルから水性インクジェット用インク組成物の液滴を印刷・記録用基材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る印刷・記録方式である。
【0003】
このような水性インクジェット用インク組成物としては、例えば、顔料、アルカリ可溶性樹脂(顔料分散用樹脂)、樹脂エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水等を含有する組成物が知られている(特許文献1-4)。これら特許文献には、保存安定性や吐出安定性が良好である水性インクジェット用インク組成物が開示されている。また、水性インクジェット用インク組成物として、特定の静的表面張力及び動的表面張力を有するものも知られている(特許文献5-8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-56018号公報
【特許文献2】特開2019-1955号公報
【特許文献3】特開2018-104582号公報
【特許文献4】特開2015-137319号公報
【特許文献5】特開2004-115649号公報
【特許文献6】特開2017-197709号公報
【特許文献7】特開2017-132973号公報
【特許文献8】国際公開2018/207636号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、水性インクジェット用インク組成物は、保存安定性や吐出安定性が求められるが、連続吐出性や耐擦過性に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、保存安定性、吐出安定性、連続吐出性、及び耐擦過性に優れる水性インクジェット用インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、顔料、アルカリ可溶性樹脂、樹脂エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する水性インクジェット用インク組成物であって、前記アルカリ可溶性樹脂は、酸価が100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、前記界面活性剤は、アセチレン系界面活性剤と、ノニオン性界面活性剤を含有し、前記ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びアルコキシアルコールからなる群より選ばれる1種以上を含有し、前記水性インクジェット用インク組成物中、前記樹脂エマルジョンの樹脂成分は、0.5質量%以上10質量%以下であり、23℃において測定される静的表面張力が27mN/m以上33mN/m以下であり、最大泡圧法により23℃において測定される動的表面張力が、寿命時間10m秒において33mN/m以上39mN/m以下である水性インクジェット用インク組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、前記水性インクジェット用インク組成物を印刷して得られる印刷物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性インクジェット用インク組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されない。
【0010】
本発明の水性インクジェット用インク組成物は、界面活性剤として、アセチレン系界面活性剤と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びアルコキシアルコールからなる群より選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤を併用して、静的表面張力及び動的表面張力を適正範囲に調整することにより、インク流路内でのインクのリフィル性を向上させることから、インクジェット印刷における吐出安定性及び連続吐出性を向上させ、また、特定範囲の酸価を有するアルカリ可溶性樹脂と、特定量の樹脂エマルジョンを併用することにより、インク中での顔料の分散を安定化し、インク塗膜の強度を向上させることから、保存安定性及び耐擦過性を向上させることができる。よって、本発明の水性インクジェット用インク組成物は、保存安定性、吐出安定性、連続吐出性、及び耐擦過性のバランスに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水性インクジェット用インク組成物は、顔料、アルカリ可溶性樹脂、樹脂エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する。
【0012】
<顔料>
本発明の顔料は、インクジェット用インク組成物に使用される有機顔料や無機顔料を特に制限なく使用することができる。前記有機顔料としては、例えば、染料レーキ顔料、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジコ系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、ラバンスロン系顔料、キノフタロン系顔料、ピランスロン系顔料、インダンスロン系顔料等が挙げられる。また、前記無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。前記顔料は、公知の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。前記顔料は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
前記顔料の代表的な色相ごとの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0014】
イエロー顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等が挙げられる。
【0015】
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、7、12、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。
【0016】
シアン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60等が挙げられる。
【0017】
ブラック顔料としては、例えば、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)等が挙げられる。
【0018】
ホワイト顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられ、アルミナ、シリカ等の種々の材料で表面処理されていてもよい。
【0019】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、通常のインクや塗料の顔料分散用やバインダーとして利用できるアルカリ可溶性樹脂であって、塩基性化合物の存在下で水性媒体中に溶解できるものであり、酸価が100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である。前記アルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基(-P(=O)(OH))等のアニオン性基の1種又は2種以上を含有する樹脂が好ましい。
【0020】
前記アルカリ可溶性樹脂は、さらに、主に顔料との吸着性を向上させるための疎水性部分を分子中に有することが好ましい。分子内に導入する疎水性部分としては、例えば、長鎖アルキル基、脂環族、芳香族の環状炭化水素基等の疎水性基が挙げられる。
【0021】
前記アルカリ可溶性樹脂の酸価は、保存安定性及び連続吐出性を向上させ、水性媒体への溶解性を高める観点から、120mgKOH/g以上であることが好ましく、140mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、前記アルカリ可溶性樹脂の酸価は、保存安定性及び耐擦過性を向上させ、印刷物の耐水性を向上させる観点から、240mgKOH/g以下であることが好ましく、230mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が100mgKOH/gより小さいと樹脂の溶解性が下がるため、保存安定性、連続吐出性が低下する場合がある。また、酸価が250mgKOH/gより大きいと、親水性が高くなり過ぎるため、保存安定性、耐擦過性が低下する場合がある。なお、上記の酸価は、アルカリ可溶性樹脂を合成するために用いる単量体の組成に基づいて、アルカリ可溶性樹脂1gを中和するのに理論上要する水酸化カリウムのmg数を算術的に求めた理論酸価である。
【0022】
前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、印刷物の耐ブロッキング性を向上させる観点から、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、印刷物の耐折り曲げ性を向上させる観点から、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
【0023】
前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、アルカリ可溶性樹脂がアクリル系共重合体樹脂の場合、下記のWoodの式により求めた理論ガラス転移温度である。
Woodの式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・・+Wx/Tgx
[式中、Tg1~Tgxはアルカリ可溶性樹脂を構成する単量体1、2、3・・・xのそれぞれの単独重合体のガラス転移温度、W1~Wxは単量体1、2、3・・・xのそれぞれの重合分率、Tgは理論ガラス転移温度を表す。ただし、Woodの式におけるガラス転移温度は絶対温度である。]
【0024】
前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、アルカリ可溶性樹脂がアクリル系共重合体樹脂以外の場合、熱分析により求めた実測ガラス転移温度である。熱分析の方法としては、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じ、一例として、パーキンエルマー社製Pyris1 DSCを用いて、昇温速度20℃/分、窒素ガス流速20ミリリットル/分の条件下でガラス転移温度を測定することができる。
【0025】
前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、印刷物の耐水性を向上させる観点から、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、水性媒体への溶解性を高める観点から、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましい。
【0026】
前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED-D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0027】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。この様なアルカリ可溶性樹脂を合成するための材料については、例えば、特開2000-94825号公報に開示されており、該公報に記載されている材料を使用して得られるアクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が利用可能である。さらには、これら以外のその他の材料を用いて得られた樹脂も利用可能である。前記アルカリ可溶性樹脂は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
前記アクリル系共重合樹脂としては、例えば、アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体の混合物を通常のラジカル発生剤(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャリブチルパーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等)の存在下、溶媒中で重合して得られるものが使用できる。
【0029】
前記アニオン性基含有単量体としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基を有する単量体が挙げられ、これらの中でも、カルボキシル基を有する単量体が特に好ましい。
【0030】
前記カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、無水フマール酸、マレイン酸ハーフエステル等が挙げられる。また、前記スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、スルホエチルメタクリレート等が挙げられる。また、前記ホスホン酸基を有する単量体としては、例えば、ホスホノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0031】
前記アニオン基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、顔料との吸着性を向上させる観点から、疎水性基含有単量体を含むことが好ましい。
【0032】
前記疎水性基含有単量体としては、例えば、長鎖アルキル基を有する単量体として、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸の炭素数が8以上のアルキルエステル類(例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシステアリル(メタ)アクリレート等)、炭素数が8以上のアルキルビニルエーテル類(例えば、ドデシルビニルエーテル等)、炭素数が8以上の脂肪酸のビニルエステル類(例えば、ビニル2-エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、ビニルステアレート等);脂環族炭化水素基を有する単量体として、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等;芳香族炭化水素基を有する単量体として、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等が挙げられる。前記疎水性基含有単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
前記アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、水性媒体中でアルカリ可溶性樹脂の凝集を抑制する観点から、親水性基含有単量体を含むことができる。
【0034】
前記親水性基含有単量体としては、(ポリ)オキシアルキレン鎖を有する単量体として、例えば、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸とのエステル化物や、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸へのエチレンオキシド付加物及び/又はプロピレンオキシド付加物等;塩基性基含有単量体として、例えば、1-ビニル-2-ピロリドン、1-ビニル-3-ピロリドン等のビニルピロリドン類、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、5-メチル-2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン等のビニルピリジン類、1-ビニルイミダゾール、1-ビニル-2-メチルイミダゾール等のビニルイミダゾール類、3-ビニルピペリジン、N-メチル-3-ビニルピペリジン等のビニルビペリジン類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸第3ブチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシ(メタ)アクリルアミド、N-エトキシ(メタ)アクリルアミド、N-ジメチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸の含窒素誘導体類等;水酸基を有する単量体として、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類等;エポキシ基を有する単量体として、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記親水性基含有単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
前記疎水性基含有単量体、及び親水性基含有単量体以外の共重合可能な他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等の(メタ)アクリル酸の炭素数が8未満のアルキルエステル類等が挙げられる。前記疎水性基含有単量体、及び親水性基含有単量体以外の共重合可能な他の単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
<樹脂エマルジョン>
本発明の水性インクジェット用インク組成物は、耐擦過性、塗膜乾燥性及び耐ハジキ性を向上させる観点から、樹脂エマルジョンを含むことが好ましい。前記樹脂エマルジョンは、水性インクジェット用インク組成物に使用される公知の樹脂エマルジョンが使用でき、例えば、アクリル系樹脂エマルジョン、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、ポリエステル系樹脂エマルジョン、ポリウレタン系樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、ポリ塩化ビニル系樹脂エマルジョン、ポリブタジエン系樹脂エマルジョン、ポリオレフィン系樹脂エマルジョン等が挙げられる。前記樹脂エマルジョンは、印刷物の塗膜の乾燥性や基材への密着性を向上させる観点から、樹脂のガラス転移温度が20℃以下であることが好ましい。なお、ガラス転移温度は、製造元のカタログ値が参考となるが、これが入手できない場合、示差走査熱量測定(DSC)によって求められ、通常、ガラス転移が起こる温度範囲の中点により算出される。前記樹脂エマルジョンは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
<界面活性剤>
本発明の界面活性剤は、アセチレン系界面活性剤と、ノニオン性界面活性剤を含有し、前記ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びアルコキシアルコールからなる群より選ばれる1種以上を含有する。
【0038】
前記アセチレン系界面活性剤としては、例えば、商品名:「SURFYNOL 104E」、「SURFYNOL 104H」、「SURFYNOL 104A」、「SURFYNOL 104BC」、「SURFYNOL 104DPM」、「SURFYNOL 104PA」、「SURFYNOL 104PG-50」、「SURFYNOL 420」、「SURFYNOL 440」、「SURFYNOL 465」、「SURFYNOL 485」、「オルフィンE1004」、「オルフィンE1010」、「オルフィンE1020」(以上、日信化学工業社製)等が挙げられる。前記アセチレン系界面活性剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、インクとの相溶性の観点から、HLB値が7以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。なお、HLB値とは、グリフィン法によって算出される界面活性剤の親水性と親油性の程度を表す指標であり、HLB値が小さいほど親油性が高く、HLB値が大きいほど親水性が高いことを示す。前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、アルキル基の炭素数及びエチレンオキシ基の平均付加モル数に制限はないが、例えば、炭素数が11~15程度であることが好ましく、炭素数が12~13程度であることがより好ましく、また、エチレンオキシ基の平均付加モル数が3~15程度であることが好ましく、エチレンオキシ基の平均付加モル数が5~10程度であることがより好ましい。
【0041】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、商品名:「エマルゲン 705」、「エマルゲン 106」、「エマルゲン 707」、「エマルゲン 1108」、「エマルゲン 1118S-70」、「エマルゲン 1135S-70」、「エマルゲン 1150S-60」(以上、花王社製)、商品名:「アデカトール LA-675B」、「アデカトール LA-775」(以上、ADEKA社製)、商品名:「TRITON(登録商標) HW1000」(Dow社製)、商品名:「サンノニック SS70」(三洋化成社製)等が挙げられる。
【0042】
前記アルコキシアルコールは、アルコールアルコキシレート系界面活性剤であり、例えば、商品名:「DYNWET800」(BYK社製)、商品名:「アデカトール LB-103」、「アデカトール LB-1220」、「アデカトール LB-1520」(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。前記アルコキシアルコールは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
<水溶性溶剤>
本発明の水溶性溶剤は、水性インクジェット用インク組成物に使用される公知の水溶性溶剤が特に制限なく使用でき、例えば、モノアルコール類、多価アルコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、窒素含有化合物類、ケトン類、エーテル類、エステル類等が挙げられる。前記水溶性溶剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
前記モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等が挙げられる。
【0045】
前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール等が挙げられる。
【0046】
前記多価アルコールの低級アルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等が挙げられる。
【0047】
前記窒素含有化合物としては、例えば、ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0048】
前記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0049】
前記エーテル類としては、例えば、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0050】
前記エステル類としては、例えば、プロピレンカルボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、酪酸エチル、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート;ε-カプロラクトン、ε-カプロラクタム等の環状エステル等が挙げられる。
【0051】
前記水溶性溶剤は、インクジェットノズル内でのインク組成物の乾燥抑制、及び基材上でのインク層(皮膜)の形成のしやすさの観点から、モノアルコール類、多価アルコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、及び窒素含有化合物類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含むことがより好ましい。
【0052】
<水>
本発明の水は、後述する顔料分散液中に含有する水性媒体としての水、及び本発明の水性インクジェット用インク組成物の濃度調製のために加える水、等を含むものである。前記水としては、例えば、イオン交換水、純水、蒸留水、工業用水等が挙げられる。前記水は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
以下、本発明の水性インクジェット用インク組成物中の各成分の割合について説明する。
【0054】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記顔料の割合は、印刷物の印画濃度を向上させる観点から、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、そして、吐出安定性を向上させる観点から、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。ただし、前記顔料が白色顔料である場合、本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記白色顔料の割合は、4質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、そして、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
前記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、前記顔料100質量部に対して、顔料の分散性を高める観点から、5質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、前記顔料100質量部に対して、水性インクジェット用組成物の粘度を低下させる観点から、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましい。
【0056】
前記樹脂エマルジョンの樹脂成分(樹脂固形分)の割合は、0.5質量%以上10質量%以下である。前記樹脂エマルジョンの樹脂成分(樹脂固形分)の割合は、水性インクジェット用インク組成物中、印刷画質及び耐擦過性を向上させる観点から、0.6質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることが好ましく、そして、吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記アセチレン系界面活性剤の割合は、吐出安定性を向上させる観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、そして、保存安定性を向上させる観点から、2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。
【0058】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記ノニオン性界面活性剤の割合は、吐出安定性を向上させる観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、そして、保存安定性を向上させる観点から、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
さらに、本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記アセチレン系界面活性剤と前記ノニオン性界面活性剤の合計量の割合は、保存安定性を向上させ、静的表面張力を適切な範囲に調整できるという観点から、4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記水溶性溶剤の割合は、吐出安定性を向上させる観点から、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、そして、塗膜乾燥性を向上させる観点から、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0060】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記水(各成分に含有する水を含む)の割合は、塗膜乾燥性を向上させる観点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、そして、吐出安定性を向上させる観点から、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
<塩基性化合物>
本発明の水性インクジェット用インク組成物には、アルカリ可溶性樹脂を溶解させる観点から、塩基性化合物を含むことが好ましい。前記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性化合物;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、N、N-ジメチルエタノールアミン、N、N-ジエチルエタノールアミン、N、N-ジブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等の有機塩基性化合物等が挙げられる。前記塩基性化合物は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記塩基性化合物の割合は、前記アルカリ可溶性樹脂を媒体中に溶解させる量であればよいが、通常、アルカリ可溶性樹脂の分散安定性を高める観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、そして、印刷物の耐水性を高める観点から、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0063】
本発明の水性インクジェット用インク組成物には、さらに、目的に応じて公知の樹脂、アニオン性界面活性剤やシリコーン系界面活性剤等の上記以外の界面活性剤、ワックスエマルション、顔料分散剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保存性向上剤、消泡剤、pH調整剤等の添加剤を添加することができる。
【0064】
本発明の水性インクジェット用インク組成物は、23℃において測定される静的表面張力が27mN/m以上33mN/m以下であり、最大泡圧法により23℃において測定される動的表面張力が、寿命時間10m秒において33mN/m以上39mN/m以下である。上記の静的表面張力が27mN/m未満33mN/m超の場合、メニスカスが不安定となる、あるいはノズル面でインクが供給不足となるため、吐出安定性及び連続吐出性が不良となる可能性がある。また、上記の動的表面張力が33mN/m未満39mN/m超の場合も同様に、メニスカスが不安定となる、あるいはノズル面でインクが供給不足となるため、吐出安定性及び連続吐出性が不良となる可能性がある。
【0065】
<水性インクジェット用インク組成物の調製方法>
本発明の水性インクジェット用インク組成物を調製(製造)する方法としては、特に限定されず、上記の成分を順番に、あるいは同時に添加して、混合すればよいが、例えば、(1)前記塩基性化合物の存在下にアルカリ可溶性樹脂を水に溶解した水性樹脂ワニス、顔料、必要に応じて顔料分散剤等を混合した後、各種分散機、例えばボールミル、アトライター、ロールミル、サンドミル、アジテーターミル等を利用して顔料分散液(インクベース)を調製し、さらに残りの材料を添加して、水性インクジェット用インク組成物を調製する方法や、(2)上記の方法で顔料を分散した後、酸析法や再公表特許WO2005/116147号公報に記載のイオン交換手段等により、顔料表面にアルカリ可溶性樹脂を析出させた樹脂被覆顔料を得、次いで得られた樹脂被覆顔料を塩基性化合物で中和し、各種分散機(高速攪拌装置等)を用いて水に再分散し、さらに残りの材料を添加して、水性インクジェット用インク組成物を調製する方法等が挙げられる。
【0066】
本発明の水性インクジェット用インク組成物は、製造後の初期粘度が2.0~15.0mPa・s、好ましくは3.0~12.0mPa・sの範囲である。粘度は、例えば、E型粘度計(商品名「RE100L型粘度計」、東機産業社製)により測定できる。
【0067】
<印刷物>
本発明の印刷物は、前記水性インクジェット用インク組成物を印刷して得られる。具体的には、前記水性インクジェット用インク組成物を、基材にインクジェット印刷機を用いて塗工(印刷)して得られる。
【0068】
前記基材としては、例えば、アート紙、インクジェット専用紙、インクジェット光沢紙等のコート紙、ポリプロピレンフィルムやポリ塩化ビニルシートのようなプラスチック系基材等の非吸収性印刷媒体;普通紙、オフセット紙等の未コート紙;綿等の布帛等が挙げられる。とくに、本発明の水性インクジェット用インク組成物は、非吸収性印刷媒体に好適である。
【0069】
<インクジェット印刷方法>
本発明のインクジェット印刷方法は、従来公知の条件が適宜採用できるが、例えば、前記水性インクジェット用インク組成物をインクカートリッジに収容し、該インクカートリッジをシングルパス方式等のインクジェット記録装置に装着して、ノズルから基材へ噴射することによりインクジェット印刷をする方法が挙げられる。
【実施例0070】
以下に本発明を実施例等によって説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
【0071】
<水性樹脂ワニスの準備>
水酸化カリウム4.9質量部と水70.1質量部との混合溶液に、表1に示すアクリル酸/ステアリルアクリレート/スチレンの共重合体(アルカリ可溶性樹脂(1)~(5))を25質量部溶解させて、固形分25質量%の水性樹脂ワニス(1)~(5)を得た。
【0072】
【表1】
【0073】
<製造例1>
<顔料分散液(ブラックインクベース)の製造>
上記の水性樹脂ワニス(1)の32質量部に水48質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。この顔料分散用樹脂ワニスに、更にカーボンブラック(商品名「プリンテックス90」、デグサ社製)の20質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、ブラックインクベース(1)(顔料濃度20質量%)を製造した。
【0074】
<製造例2~3>
水性樹脂ワニス(1)の替わりに、上記の水性樹脂ワニス(2)又は水性樹脂ワニス(3)を使用したこと以外は、製造例1と同様の方法を行い、ブラックインクベース(2)及びブラックインクベース(3)(いずれも顔料濃度20質量%)を製造した。
【0075】
<製造例4~6>
<顔料分散液(イエロー、マゼンダ、及びシアンインクベース)の製造>
カーボンブラック(商品名「プリンテックス90」、デグサ社製)の替わりに、イエロー顔料(商品名「ノバパームイエロー4G01」、クラリアント社製)、マゼンタ顔料(商品名「インクジェットマゼンタE5B02」、クラリアント社製)、又はシアン顔料(商品名「ヘリオゲンブルーL7101F」、BASF社製)を使用したこと以外は、製造例1と同様の方法を行い、製造例4のイエローインクベース、製造例5のマゼンダインクベース、及び製造例6のシアンインクベース(いずれも顔料濃度20質量%)を製造した。
【0076】
<製造例7>
<顔料分散液(ホワイトインクベース)の製造>
上記の水性樹脂ワニス(1)の32質量部に水28質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。この顔料分散用樹脂ワニスに、更に酸化チタン(商品名「CR-960」、デュポン社製)の40質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、ホワイトインクベース(顔料濃度40質量%)を製造した。
【0077】
<比較製造例1~2>
水性樹脂ワニス(1)の替わりに、上記の水性樹脂ワニス(4)又は水性樹脂ワニス(5)を使用したこと以外は、製造例1と同様の方法を行い、ブラックインクベース(4)及びブラックインクベース(5)(いずれも顔料濃度20質量%)を製造した。
【0078】
<実施例1>
<水性インクジェット用インク組成物の製造>
表2の質量割合になるように、前記ブラックインクベース(1)、水溶性溶剤としてプロピレングリコール、アセチレン系界面活性剤としてアセチレン系界面活性剤(商品名「SURFYNOL 465」、日信化学工業社製)、ノニオン性界面活性剤としてアルコキシアルコール(アルコールアルコキシレート系界面活性剤、商品名「DYNWET 800」、BYK社製)、樹脂エマルジョンとしてポリエチレン系樹脂エマルジョン(商品名「AQUACER531」、BYK社製)、及び水を攪拌混合し、実施例1の水性インクジェット用インク組成物を製造した。
【0079】
<実施例2~26、比較例1~11>
<水性インクジェット用インク組成物の製造>
各実施例及び各比較例において、使用する原料及びその量を、表2-4に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、各実施例及び各比較例の水性インクジェット用インク組成物を製造した。
【0080】
<動的表面張力(mN/m)の測定>
上記の各実施例及び比較例の水性インクジェット用インク組成物について、最大泡圧法を利用した動的表面張力計(商品名「BUBLE PRESSURE TENSIOMETER BP100」、KRUSS製)を用い、23℃における寿命時間10m秒での動的表面張力(mN/m)を測定した。
【0081】
<静的表面張力(mN/m)の測定>
上記の各実施例及び比較例の水性インクジェット用インク組成物について、Wilhelmy法を利用した自動表面張力計(商品名「CBVP-A3型」、協和界面科学製)及びプラチナ製プレートを使用し、23℃における静的表面張力(mN/m)を測定した。
【0082】
<水性インクジェット用インク組成物の評価>
以下の方法により評価し、それらの結果を表2-4に示す。なお、以下の評価において、1つでも×があるインク組成物は不合格とする。
【0083】
<保存安定性>
上記で製造した水性インクジェット用インク組成物をそれぞれガラス瓶にとり、25℃の粘度を粘度計(東機産業社製 RE100L型)を用い測定した。その後、密栓し60℃、1ヵ月保存し、保存後の粘度(25℃)を粘度計により測定した。経時安定性は、粘度変化率(60℃、1ヵ月後の粘度-保存前の粘度/保存前の粘度)で評価した。
[評価基準]
○:粘度変化率が5%未満である。
△:粘度変化率が5%以上、10%未満である。
×:粘度変化率が10%以上である。
【0084】
<吐出安定性>
上記で製造した水性インクジェット用インク組成物を、エプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて、白インク以外は写真用紙GL-101A450(キヤノン社製)に、白インクは遮蔽紙に印字を行い、吐出安定性を評価した。
[評価基準]
○:印字の乱れがなく、安定して吐出できる。
△:多少印字の乱れがあるものの、吐出できる。
×:印字の乱れがあり、安定して吐出できない。
【0085】
<連続吐出性>
上記で製造した水性インクジェット用インク組成物を、エプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて、白インク以外は写真用紙GL-101A450(キヤノン社製)に、白インクは遮蔽紙に、15cm×20cmのベタ画像を50枚連続で印刷し、連続吐出性を評価した。
[評価基準]
○:画質が良好で、安定して吐出できる。
×:スジ等画質の劣化が見られ、安定して吐出できない。
【0086】
<耐擦過性>
連続吐出性の評価で作成したベタ画像が印刷された印刷物を80℃のオーブンで3分間乾燥させたあと、綿棒で印刷面をこすって耐擦過性を評価した。
[評価基準]
○:塗膜面を綿棒で10回摩擦した後でも全くかすれなかった。
△:塗膜面を綿棒で10回摩擦した後、綿棒に色が移り、摩擦部分がわずかにかすれた。
×:塗膜面を綿棒で10回摩擦した後、摩擦部分が全て剥がれた。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
表2-4中、樹脂エマルジョンとして、
AQUACER531は、ポリエチレン系樹脂エマルジョン(BYK社製);
ヨドゾールAD173は、アクリル系樹脂エマルジョン(ヘンケル社製);
NeoCryl A-1092は、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン(コベストロ社製);
ビニブラン1245Lは、酢酸ビニル-アクリル系樹脂エマルジョン(日信化学工業社製);
ビニブラン278は、塩化ビニル-アクリル系樹脂エマルジョン(日信化学工業社製);
ビニブランGV6181は、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(日信化学工業社製);
スーパーフレックス740は、ポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョン(第一工業製薬社製);
NeoRez R-966は、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂エマルジョン(コベストロ社製);
スーパーフレックス420NSは、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂エマルジョン(第一工業製薬社製);
セポルジョンESは、ポリエステル系樹脂エマルジョン(住友精化社製);を示す。
【0091】
また、表2-4中、
SURFYNOL 465は、アセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製);
SURFYNOL 440は、アセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製);
DYNWET 800は、アルコキシアルコール(アルコールアルコキシレート系界面活性剤、BYK社製);
エマルゲン 705は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製);
TEGO Glide450は、シリコーン系界面活性剤(Evonik社製);
パーソフト EFは、アニオン性界面活性剤(日油社製);
TEGO TWIN4100は、シリコーン系界面活性剤(Evonik社製);を示す。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、アルカリ可溶性樹脂、樹脂エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する水性インクジェット用インク組成物であって、
前記アルカリ可溶性樹脂は、酸価が100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、
前記界面活性剤(但し、パーフルオロアルキル基の炭素原子数が6以下のパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物であるフッ素系界面活性剤を除く。)は、アセチレン系界面活性剤と、ノニオン性界面活性剤を含有し、
前記ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びアルコキシアルコールからなる群より選ばれる1種以上を含有し、
前記水性インクジェット用インク組成物中、前記樹脂エマルジョンの樹脂成分は、0.5質量%以上10質量%以下であり、
23℃において測定される静的表面張力が27mN/m以上33mN/m以下であり、
最大泡圧法により23℃において測定される動的表面張力が、寿命時間10m秒において33mN/m以上39mN/m以下であることを特徴とする水性インクジェット用インク組成物。
【請求項2】
基材に、請求項1に記載の水性インクジェット用インク組成物を印刷して得られることを特徴とする印刷物。
【請求項3】
前記基材が非吸収性印刷媒体であることを特徴とする請求項2に記載の印刷物。