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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047131
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】電極部材の製造装置および電極部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240329BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240329BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20240329BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20240329BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20240329BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240329BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240329BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20240329BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240329BHJP
【ＦＩ】
H01M4/139
H01M4/04 A
B05D1/28
B05D5/12 B
B05D1/36 Z
B05D7/24 301E
B05D3/00 D
B05D7/14 G
B05D7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】ＯＬ
(21)【出願番号】P 2022152577
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】榎原 勝志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 典之
(72)【発明者】
【氏名】海野 公則
(72)【発明者】
【氏名】小浦 兼嗣
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛司
【テーマコード（参考）】
4D075
5H050
【Ｆターム（参考）】
4D075AC02
4D075AC05
4D075AC88
4D075AC93
4D075AE03
4D075BB16X
4D075BB91X
4D075BB91Z
4D075BB92Y
4D075CA22
4D075CA47
4D075CA48
4D075DB06
4D075DC08
4D075DC11
4D075DC15
4D075DC18
4D075DC19
4D075EA06
4D075EA10
4D075EB07
4D075EB12
4D075EB14
4D075EB51
4D075EB56
4D075EC01
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB08
5H050FA08
5H050HA00
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】本開示は、製造不良の発生を抑制可能な電極部材の製造装置を提供することを主目的とする。
【解決手段】
本開示においては、電池に用いられる電極部材の製造装置であって、上記製造装置は、搬送される集電体を支持するためのバックアップロールと、上記バックアップロール上の上記集電体に第１スラリーを塗工することで第１塗工層を形成するための第１ダイと、上記バックアップロール上の上記第１塗工層に第２スラリーを塗工することで第２塗工層を形成するための第２ダイと、を有し、上記第１ダイおよび上記第２ダイは、互いに独立しており、水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、上記第２ダイにおける上記第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である、電極部材の製造装置を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図１
【解決手段】
本開示においては、電池に用いられる電極部材の製造装置であって、上記製造装置は、搬送される集電体を支持するためのバックアップロールと、上記バックアップロール上の上記集電体に第１スラリーを塗工することで第１塗工層を形成するための第１ダイと、上記バックアップロール上の上記第１塗工層に第２スラリーを塗工することで第２塗工層を形成するための第２ダイと、を有し、上記第１ダイおよび上記第２ダイは、互いに独立しており、水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、上記第２ダイにおける上記第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である、電極部材の製造装置を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図１
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池に用いられる電極部材の製造装置であって、
前記製造装置は、
搬送される集電体を支持するためのバックアップロールと、
前記バックアップロール上の前記集電体に第１スラリーを塗工することで第１塗工層を形成するための第１ダイと、
前記バックアップロール上の前記第１塗工層に第２スラリーを塗工することで第２塗工層を形成するための第２ダイと、
を有し、
前記第１ダイおよび前記第２ダイは、互いに独立しており、
水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、前記第２ダイにおける前記第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である、電極部材の製造装置。
前記製造装置は、
搬送される集電体を支持するためのバックアップロールと、
前記バックアップロール上の前記集電体に第１スラリーを塗工することで第１塗工層を形成するための第１ダイと、
前記バックアップロール上の前記第１塗工層に第２スラリーを塗工することで第２塗工層を形成するための第２ダイと、
を有し、
前記第１ダイおよび前記第２ダイは、互いに独立しており、
水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、前記第２ダイにおける前記第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である、電極部材の製造装置。
【請求項2】
前記第１ダイにおける前記第１スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋３０°以下である、請求項１に記載の電極部材の製造装置。
【請求項3】
前記第２スラリーは、活物質およびバインダを含有し、
前記第２スラリーは、せん断速度１ｓ－１におけるせん断粘度が、５Ｐａ・秒以下であり、
前記第２塗工層の厚さが２００μｍ以上である、請求項１または請求項２に記載の電極部材の製造装置。
前記第２スラリーは、せん断速度１ｓ－１におけるせん断粘度が、５Ｐａ・秒以下であり、
前記第２塗工層の厚さが２００μｍ以上である、請求項１または請求項２に記載の電極部材の製造装置。
【請求項4】
前記製造装置は、前記集電体の搬送方向において、前記第１ダイの下流側、かつ、前記第２ダイの上流側に、前記第１塗工層の表面の状態を測定する第１センサを有し、前記第２ダイの下流側に、前記第２塗工層の表面の状態を測定する第２センサを有する、請求項１または請求項２に記載の電極部材の製造装置。
【請求項5】
電池に用いられる電極部材の製造方法であって、
前記製造方法は、
搬送される集電体をバックアップロールにより支持する支持工程と、
前記バックアップロール上の前記集電体に、第１ダイを用いて、第１スラリーを塗工し、第１塗工層を形成する第１塗工層形成工程と、
前記バックアップロール上の前記第１塗工層に、第２ダイを用いて、第２スラリーを塗工し、第２塗工層を形成する第２塗工層形成工程と、
を有し、
前記第１ダイおよび前記第２ダイは、互いに独立しており、
水平方向を０°とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、前記第２ダイにおける前記第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である、電極部材の製造方法。
前記製造方法は、
搬送される集電体をバックアップロールにより支持する支持工程と、
前記バックアップロール上の前記集電体に、第１ダイを用いて、第１スラリーを塗工し、第１塗工層を形成する第１塗工層形成工程と、
前記バックアップロール上の前記第１塗工層に、第２ダイを用いて、第２スラリーを塗工し、第２塗工層を形成する第２塗工層形成工程と、
を有し、
前記第１ダイおよび前記第２ダイは、互いに独立しており、
水平方向を０°とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、前記第２ダイにおける前記第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である、電極部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極部材の製造装置および電極部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池は、集電体と、活物質を含有する電極層と、を有する電極体を備える。電極体の作製方法として、例えば、集電体上にスラリーを塗工し塗工層を形成し電極部材を作製し、その後、電極部材を乾燥し、塗工層から電極層を形成する方法が知られている。また、そのような電極部材を作製するための製造装置も知られている。
【0003】
例えば特許文献１には、ｎ種類の塗工液を、一定の走行速度で走行するウエブに塗工する塗工ヘッドを有する塗工装置が開示されている。特許文献１では、間欠塗工や、種類の異なる塗工部を塗工できる塗工装置を提供することを課題としている。また、特許文献２には、電極ペーストを、ダイより集電箔上に塗工する工程と、塗工された電極ペーストを乾燥する工程と、を包含する電極の製造方法が開示されている。また、特許文献３には、基材の搬送を行うバックアップロールと、ペースト（スラリー）を吐出するダイと、を有する塗工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開２０１６－１４７２１６号公報
【特許文献2】特開２０２２－０８０６１０号公報
【特許文献3】特開２０１６－０６４３３９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば特許文献１では、複数の塗工液（スラリー）を、１つのダイを用いて塗工している。この場合、複数のスラリーが常時接触しているため、各層のスラリーの混濁が生じる可能性がある。そこで、本発明者等は、互いに独立した複数のダイを用いて、それぞれ、スラリーを塗工することを検討したところ、以下のような知見が得られた。
【0006】
すなわち、ダイにおけるスラリーの吐出角度によっては、スラリーが自重により、ダイの先端（リップ）から落下する場合があり、製造不良が生じるという知見が得られた。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、製造不良の発生を抑制可能な電極部材の製造装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
［１］
電池に用いられる電極部材の製造装置であって、上記製造装置は、搬送される集電体を支持するためのバックアップロールと、上記バックアップロール上の上記集電体に第１スラリーを塗工することで第１塗工層を形成するための第１ダイと、上記バックアップロール上の上記第１塗工層に第２スラリーを塗工することで第２塗工層を形成するための第２ダイと、を有し、上記第１ダイおよび上記第２ダイは、互いに独立しており、水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、上記第２ダイにおける上記第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である、電極部材の製造装置。
電池に用いられる電極部材の製造装置であって、上記製造装置は、搬送される集電体を支持するためのバックアップロールと、上記バックアップロール上の上記集電体に第１スラリーを塗工することで第１塗工層を形成するための第１ダイと、上記バックアップロール上の上記第１塗工層に第２スラリーを塗工することで第２塗工層を形成するための第２ダイと、を有し、上記第１ダイおよび上記第２ダイは、互いに独立しており、水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、上記第２ダイにおける上記第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である、電極部材の製造装置。
【0009】
［２］
上記第１ダイにおける上記第１スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋３０°以下である、［１］に記載の電極部材の製造装置。
上記第１ダイにおける上記第１スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋３０°以下である、［１］に記載の電極部材の製造装置。
【0010】
［３］
上記第２スラリーは、活物質およびバインダを含有し、上記第２スラリーは、せん断速度１ｓ－１におけるせん断粘度が、５Ｐａ・秒以下であり、上記第２塗工層の厚さが２００μｍ以上である、［１］または［２］に記載の電極部材の製造装置。
上記第２スラリーは、活物質およびバインダを含有し、上記第２スラリーは、せん断速度１ｓ－１におけるせん断粘度が、５Ｐａ・秒以下であり、上記第２塗工層の厚さが２００μｍ以上である、［１］または［２］に記載の電極部材の製造装置。
【0011】
［４］
上記製造装置は、上記集電体の搬送方向において、上記第１ダイの下流側、かつ、上記第２ダイの上流側に、上記第１塗工層の表面の状態を測定する第１センサを有し、上記第２ダイの下流側に、上記第２塗工層の表面の状態を測定する第２センサを有する、［１］から［３］までのいずれかに記載の電極部材の製造装置。
上記製造装置は、上記集電体の搬送方向において、上記第１ダイの下流側、かつ、上記第２ダイの上流側に、上記第１塗工層の表面の状態を測定する第１センサを有し、上記第２ダイの下流側に、上記第２塗工層の表面の状態を測定する第２センサを有する、［１］から［３］までのいずれかに記載の電極部材の製造装置。
【0012】
［５］
電池に用いられる電極部材の製造方法であって、上記製造方法は、搬送される集電体をバックアップロールにより支持する支持工程と、上記バックアップロール上の上記集電体に、第１ダイを用いて、第１スラリーを塗工し、第１塗工層を形成する第１塗工層形成工程と、上記バックアップロール上の上記第１塗工層に、第２ダイを用いて、第２スラリーを塗工し、第２塗工層を形成する第２塗工層形成工程と、を有し、上記第１ダイおよび上記第２ダイは、互いに独立しており、水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、上記第２ダイにおける上記第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である、電極部材の製造方法。
電池に用いられる電極部材の製造方法であって、上記製造方法は、搬送される集電体をバックアップロールにより支持する支持工程と、上記バックアップロール上の上記集電体に、第１ダイを用いて、第１スラリーを塗工し、第１塗工層を形成する第１塗工層形成工程と、上記バックアップロール上の上記第１塗工層に、第２ダイを用いて、第２スラリーを塗工し、第２塗工層を形成する第２塗工層形成工程と、を有し、上記第１ダイおよび上記第２ダイは、互いに独立しており、水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、上記第２ダイにおける上記第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である、電極部材の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本開示における電極部材の製造装置は、製造不良の発生を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示における電極部材の製造装置を例示する概略斜視図および概略断面図である。
【図2】本開示における電極部材の製造方法を例示する概略断面図である。
【図3】本開示における課題を説明する概略断面図である。
【図4】本開示における電極部材の製造装置を例示する概略断面図である。
【図5】実施例１および比較例１の結果である。
【図6】実施例１～４および比較例１の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示における実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0016】
Ａ．電極部材の製造装置
図１（ａ）は、本開示における電極部材の製造装置を例示する概略斜視図であり、図１（ｂ）は、本開示における電極部材の製造装置を例示する概略断面図である。また、図２は、本開示における電極部材の製造方法を例示する概略断面図である。図１（ａ）および図１（ｂ）に示すように、製造装置１００は、バックアップロール１０と、第１ダイ２０ａと、第２ダイ２０ｂと、を有する。
図１（ａ）は、本開示における電極部材の製造装置を例示する概略斜視図であり、図１（ｂ）は、本開示における電極部材の製造装置を例示する概略断面図である。また、図２は、本開示における電極部材の製造方法を例示する概略断面図である。図１（ａ）および図１（ｂ）に示すように、製造装置１００は、バックアップロール１０と、第１ダイ２０ａと、第２ダイ２０ｂと、を有する。
【0017】
図１（ａ）、図１（ｂ）および図２に示すように、バックアップロール１０は、搬送される集電体１を支持するための部材である。第１ダイ２０ａは、バックアップロール１０上の集電体１に第１スラリーを塗工することで第１塗工層２を形成するための部材である。第２ダイ２０ｂは、バックアップロール１０上の第１塗工層２に第２スラリーを塗工することで第２塗工層３を形成するための部材である。
【0018】
図１（ｂ）に示すように、第１ダイ２０ａおよび第２ダイ２０ｂは、互いに独立している。また、図１（ｂ）に示すように、水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、第２ダイ２０ｂにおける第２スラリーの吐出角度θｂが、－９０°以上、＋６０°以下である。図１（ｂ）では、第２ダイ２０ｂにおける第２スラリーの吐出角度θｂが＋６０°であり、第１ダイ２０ａにおける第１スラリーの吐出角度θａが０°である。
【0019】
本開示によれば、第２ダイにおける第２スラリーの吐出角度が所定の角度にあることから、製造不良の発生を抑制できる。上述したように、例えば特許文献１では、複数の塗工液（スラリー）を、１つのダイを用いて塗工している。この場合、複数のスラリーが常時接触しているため、各層のスラリーの混濁が生じる可能性がある。特に、急激な流動変動が発生する端部（始端および終端）において、スラリーの混濁が顕著になる。さらに、複数のスラリーを用いて、複数の塗工層を形成するため、例えば、各々の塗工層の厚さを正確に把握することが難しい。
【0020】
そこで、本発明者等は、互いに独立した複数のダイを用いて、それぞれ、スラリーを塗工することを検討した。複数のダイを用いることで、各層のスラリーの混濁が生じることを抑制できる。さらに、各々のダイの間に、検査器を配置することで、各々の塗工層の厚さを正確に把握することができる。
【0021】
一方、互いに独立した複数のダイを用いた場合、電体の搬送方向において、第１ダイより下流側に配置される第２ダイに、塗工不良が発生することを知見した。具体的に、図３（ａ）に示すように、第２ダイ２０ｂにおけるスラリーの吐出角度が大きくなると、図３（ｂ）に示すように、第２スラリーが自重により、第２ダイ２０ｂの先端（リップ）から落下する場合があることを知見した。図３（ｂ）では、第２ダイ２０ｂの先端（領域α）に存在していた第２スラリーが、自重により落下し、第２塗工層３の終端（領域β）に取り込まれることで、突起部が生じている。一方、次の第２塗工層３の始端（領域γ）には、第２スラリーが塗工されないため、欠損部が生じている。
【0022】
このように、本発明者等は、ダイにおけるスラリーの吐出角度によっては、スラリーが自重により、ダイの先端（リップ）から落下する場合があり、製造不良が生じるという知見を得た。これに対して、本開示においては、第２ダイにおける第２スラリーの吐出角度を所定の角度にすることで、製造不良の発生を抑制できる。
【0023】
また、塗工層を乾燥して電極層を形成する際に、分散媒の蒸発に伴って、厚さ方向においてバインダ濃度が不均一になる場合がある。具体的に、電極層において、集電体側でバインダ濃度が低くなり、集電体とは反対側でバインダ濃度が高くなる場合がある。これに対して、後述するように、上流側のダイ（第１ダイ）で塗工する第１スラリーにおけるバインダ濃度を相対的に高くし、下流側のダイ（第２ダイ）で塗工する第２スラリーにおけるバインダ濃度を相対的に低くすることで、電極層におけるバインダ濃度を、厚さ方向において、均一化できる。
【0024】
１．ダイ
本開示における電極部材の製造装置は、スラリーを塗工するためのダイとして、少なくとも２つのダイを有する。ダイ（ダイヘッド）は、集電体の搬送方向に直交する方向に延びるスリットを有するスリットダイであることが好ましい。スリットを介して、スラリーが塗工される。
本開示における電極部材の製造装置は、スラリーを塗工するためのダイとして、少なくとも２つのダイを有する。ダイ（ダイヘッド）は、集電体の搬送方向に直交する方向に延びるスリットを有するスリットダイであることが好ましい。スリットを介して、スラリーが塗工される。
【0025】
第１ダイは、バックアップロール上の上記集電体に第１スラリーを塗工することで第１塗工層を形成するためのダイである。第１ダイは、第１スラリーを、集電体に直接塗工するためのダイであってもよく、集電体に他の層を介して塗工するためのダイであってもよい。他の層は、例えば、塗工層である。
【0026】
第２ダイは、バックアップロール上の第１塗工層に第２スラリーを塗工することで第２塗工層を形成するためのダイである。第２ダイは、集電体の搬送方向において、通常、第１ダイより下流側に配置される。第２ダイは、第２スラリーを、第１塗工層に直接塗工するためのダイであってもよく、第１塗工層に他の層を介して塗工するためのダイであってもよい。他の層は、例えば、塗工層である。第１ダイおよび第２ダイは、集電体の搬送方向において、隣り合うように配置されていることが好ましい。
【0027】
第１ダイおよび第２ダイは、互いに独立している。すなわち、第１ダイおよび第２ダイは、１つのダイ（ダイヘッド）において複数のスラリーを同時に吐出するもの（例えば特許文献１の図１におけるダイ１００）には該当しない。
【0028】
図１（ｂ）に示すように、水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とし、第２ダイ２０ｂにおける第２スラリーの吐出角度をθｂとする。吐出角度θｂは、通常、＋６０°以下である。吐出角度θｂは、＋４５°以下であってもよく、＋３０°以下であってもよく、０°であってもよい。一方、吐出角度θｂは、通常、－９０°以上であり、－８５°以上であってもよい。また、吐出角度θｂは、０°より大きく、＋６０°以下であってもよい。この場合、吐出角度θｂは、５°以上であってもよい。一方、吐出角度θｂは、－９０°以上であり、０°より小さくてもよい。この場合、吐出角度θｂは、－５°以下であってもよい。
【0029】
図１（ｂ）に示すように、第１ダイ２０ａにおける第１スラリーの吐出角度をθａとする。吐出角度θａは、特に限定されないが、例えば、＋６０°以下であり、＋４５°以下であってもよく、＋３０°以下であってもよく、０°であってもよい。一方、吐出角度θａは、通常、－９０°以上であり、－８５°以上であってもよい。また、吐出角度θａは、０°より大きく、＋６０°以下であってもよい。この場合、吐出角度θａは、５°以上であってもよい。一方、吐出角度θａは、－９０°以上であり、０°より小さくてもよい。この場合、吐出角度θａは、－５°以下であってもよい。
【0030】
図１（ｂ）に示すように、バックアップロール１０の回転中心Ｃを通り、鉛直方向に平行な軸をＡＸとする。図１（ｂ）において、第１ダイ２０ａおよび第２ダイ２０ｂは、軸ＡＸで区画される２つの領域において、同一の領域（図１（ｂ）では軸ＡＸの左側の領域）に配置されている。この場合、吐出角度θｂは、吐出角度θａより大きくなる。吐出角度θｂおよび吐出角度θａの差は、例えば５°以上であり、１５°以上であってもよく、３０°以上であってもよい。一方、特に図示しないが、第１ダイ２０ａおよび第２ダイ２０ｂは、軸ＡＸで区画される２つの領域において、それぞれ異なる領域に配置されていてもよい。
【0031】
図４（ａ）に示すように、第２ダイ２０ｂにおける吐出角度θｂが０°であり、第１ダイ２０ａにおける吐出角度θａが０°未満であってもよい。また、図４（ｂ）に示すように、電極部材の製造装置は、第１バックアップロール１０ａおよび第２バックアップロール１０ｂを有していてもよい。第１ダイ２０ａは、第１バックアップロール１０ａ上の集電体１に第１スラリーを塗工し、第２ダイ２０ｂは、第２バックアップロール１０ｂ上の第１塗工層２に第２スラリーを塗工してもよい。
【0032】
第１ダイおよび第２ダイは、それぞれ、第１スラリーおよび第２スラリーを塗工するためのダイである。スラリー（第１スラリーおよび第２スラリー）は、活物質および分散媒を少なくとも含有し、バインダおよび導電材の少なくとも一つをさらに含有していてもよい。
【0033】
第２スラリーは、せん断速度１／ｓにおけるせん断粘度が、例えば、５Ｐａ・秒以下であり、４Ｐａ・秒以下であってもよく、３Ｐａ・秒以下であってもよく、２Ｐａ・秒以下であってもよい。また、第２スラリーの固形分におけるバインダの割合は、例えば、５重量％以下であり、３重量％以下であってもよい。なお、第２スラリーの固形分が複数のバインダを含有する場合、バインダの割合は、複数のバインダの合計に該当する。
【0034】
第１スラリーの固形分におけるバインダの割合（重量％）は、第２スラリーの固形分におけるバインダの割合（重量％）より多いことが好ましい。第１スラリーの固形分におけるバインダの割合（重量％）をＣ１´とし、第２スラリーの固形分におけるバインダの割合（重量％）をＣ２´とする。Ｃ２´に対するＣ１´の比率（Ｃ１´／Ｃ２´）は、例えば３以上であり、５以上であってもよい。一方、Ｃ１´／Ｃ２´は、例えば１０以下である。
【0035】
２．バックアップロール
本開示におけるバックアップロールは、搬送される集電体を支持するための部材である。集電体は、通常、所定の張力が付与された状態で搬送される。また、バックアップロールは、集電体を自身に巻き付けて、集電体を搬送する。また、バックアップロールは、典型的には、円柱形状または円筒形状を有する部材である。バックアップロールは、回転軸を中心に回転するように構成されている。
本開示におけるバックアップロールは、搬送される集電体を支持するための部材である。集電体は、通常、所定の張力が付与された状態で搬送される。また、バックアップロールは、集電体を自身に巻き付けて、集電体を搬送する。また、バックアップロールは、典型的には、円柱形状または円筒形状を有する部材である。バックアップロールは、回転軸を中心に回転するように構成されている。
【0036】
３．電極部材の製造装置
本開示における電極部材の製造装置は、集電体の搬送方向において、第１ダイの下流側、かつ、第２ダイの上流側に、第１塗工層の表面の状態を測定する第１センサを有することが好ましい。第１センサとしては、例えば、変位センサ、カラーセンサが挙げられる。例えば、変位センサを設けることで、第１塗工層の厚さを正確に把握できる。変位センサとしては、例えば、レーザ変位センサが挙げられる。また、カラーセンサを用いることで、第１塗工層が形成された領域と、第１塗工層が形成されていない領域（集電体が露出する領域）と、正確に把握できる。
本開示における電極部材の製造装置は、集電体の搬送方向において、第１ダイの下流側、かつ、第２ダイの上流側に、第１塗工層の表面の状態を測定する第１センサを有することが好ましい。第１センサとしては、例えば、変位センサ、カラーセンサが挙げられる。例えば、変位センサを設けることで、第１塗工層の厚さを正確に把握できる。変位センサとしては、例えば、レーザ変位センサが挙げられる。また、カラーセンサを用いることで、第１塗工層が形成された領域と、第１塗工層が形成されていない領域（集電体が露出する領域）と、正確に把握できる。
【0037】
本開示における電極部材の製造装置は、集電体の搬送方向において、第２ダイの下流側に、第２塗工層の表面の状態を測定する第２センサを有していてもよい。第２センサとしては、例えば、変位センサ、カラーセンサが挙げられる。
【0038】
４．電極部材
本開示における電極部材は、集電体と、上記集電体上に配置された塗工層と、を有する。塗工層は、集電体側から順に、第１塗工層および第２塗工層を有する。
本開示における電極部材は、集電体と、上記集電体上に配置された塗工層と、を有する。塗工層は、集電体側から順に、第１塗工層および第２塗工層を有する。
【0039】
集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、ＳＵＳ、ニッケル等の金属材料が挙げられる。集電体の形状は、例えば箔状である。
【0040】
第１塗工層の厚さ（Ｔ１）、および、第２塗工層の厚さ（Ｔ２）の関係は、特に限定されない。両者の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。「第１塗工層の厚さ、および、第２塗工層の厚さが同じである」とは、両者の厚さの差が、１０μｍ以下であることをいう。
【0041】
また、第２塗工層の厚さＴ２は、第１塗工層の厚さＴ１より大きくてもよい。この場合、Ｔ１に対するＴ２の割合（Ｔ２／Ｔ１）は、１より大きく、１．５以上であってもよく、２以上であってもよい。一方、Ｔ２／Ｔ１は、例えば１０以下であり、５以下であってもよい。
【0042】
また、第２塗工層の厚さＴ２は、第１塗工層の厚さＴ１より小さくてもよい。この場合、Ｔ１に対するＴ２の割合（Ｔ２／Ｔ１）は、１より小さく、０．９以下であってもよく、０．５以下であってもよい。一方、Ｔ２／Ｔ１は、例えば０．１以上である。
【0043】
本開示における塗工層は、第１塗工層および第２塗工層を少なくとも有する。本開示における塗工層は、第１塗工層および第２塗工層のみを有していてもよい。一方、本開示における塗工層は、第１塗工層および第２塗工層に加えて、他の塗工層を有していてもよい。他の塗工層は、単一の層であってもよく、複数の層であってもよい。
【0044】
第１塗工層の厚さＴ１は、例えば、５０μｍ以上であり、５００μｍ以下である。第２塗工層の厚さＴ２は、例えば、５０μｍ以上であり、５００μｍ以下である。中でも、第２塗工層の厚さＴ２は、２００μｍ以上であってもよく、２５０μｍ以上であってもよく、３００μｍ以上であってもよく、３５０μｍ以上であってもよい。また、塗工層の厚さは、例えば２００μｍ以上であり、４００μｍ以上であってもよく、６００μｍ以上であってもよい。一方、塗工層の厚さは、例えば１０００μｍ以下である。
【0045】
第１塗工層および第２塗工層は、それぞれバインダを含有していてもよい。その場合、第１塗工層におけるバインダの割合（重量％）と、第２塗工層におけるバインダの割合（重量％）との関係は特に限定されない。両者の割合は、同じであってもよく、異なっていてもよい。「第１塗工層におけるバインダの割合（重量％）と、第２塗工層におけるバインダの割合（重量％）とが同じである」とは、両者の割合の差が、１重量％以下であることをいう。
【0046】
第１塗工層におけるバインダの割合（重量％）をＣ１とし、第２塗工層におけるバインダの割合（重量％）をＣ２とする。Ｃ１＞Ｃ２の場合、Ｃ２に対するＣ１の比率（Ｃ１／Ｃ２）は、例えば３以上であり、５以上であってもよい。一方、Ｃ１／Ｃ２は、例えば１０以下である。また、Ｃ１＞Ｃ２の場合、上述した厚さの関係は、特に限定されず、Ｔ２＞Ｔ１であってもよく、Ｔ２＝Ｔ１であってもよく、Ｔ２＜Ｔ１であってもよい。
【0047】
Ｃ１＜Ｃ２の場合、Ｃ２に対するＣ１の比率（Ｃ１／Ｃ２）は、例えば０．９以下であり、０．８以下であってもよい。一方、Ｃ１／Ｃ２は、例えば０．１以上である。また、Ｃ１＜Ｃ２の場合、上述した厚さの関係は、特に限定されず、Ｔ２＞Ｔ１であってもよく、Ｔ２＝Ｔ１であってもよく、Ｔ２＜Ｔ１であってもよい。なお、Ｃ１＝Ｃ２の場合も、上述した厚さの関係は、特に限定されず、Ｔ２＞Ｔ１であってもよく、Ｔ２＝Ｔ１であってもよく、Ｔ２＜Ｔ１であってもよい。
【0048】
第１塗工層および第２塗工層は、それぞれ、活物質を少なくとも含有する。第１塗工層および第２塗工層は、活物質として、正極活物質を含有していてもよく、負極活物質を含有していてもよい。正極活物質としては、例えば酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、具体的には、ＬｉＣｏＯ２、ＬｉＭｎＯ２、ＬｉＮｉＯ２、ＬｉＶＯ２、ＬｉＮｉ１／３Ｃｏ１／３Ｍｎ１／３Ｏ２等の岩塩層状型活物質、ＬｉＭｎ２Ｏ４、Ｌｉ（Ｎｉ０．５Ｍｎ１．５）Ｏ４等のスピネル型活物質、ＬｉＦｅＰＯ４、ＬｉＭｎＰＯ４、ＬｉＮｉＰＯ４、ＬｉＣｏＰＯ４等のオリビン型活物質が挙げられる。一方、負極活物質としては、例えば、Ｌｉ、Ｌｉ合金等のＬｉ系活物質、グラファイト等のカーボン活物質、Ｓｉ、ＳｉＯ等のＳｉ系活物質が挙げられる。
【0049】
第１塗工層および第２塗工層は、それぞれ、導電材を含有していてもよい。導電材としては、例えば、炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック（ＡＢ）、ケッチェンブラック（ＫＢ）等の粒子状炭素材料、炭素繊維、カーボンナノチューブ（ＣＮＴ）、カーボンナノファイバー（ＣＮＦ）等の繊維状炭素材料が挙げられる。第１塗工層および第２塗工層は、それぞれ、導電材を１種のみ含有していてもよく、２種以上含有していてもよい。
【0050】
第１塗工層および第２塗工層は、それぞれ、バインダを含有していてもよい。バインダとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース（ＣＭＣ）等のセルロース系バインダ、スチレンブタジエンゴム（ＳＢＲ）等のゴム系バインダ、ポリフッ化ビニリデン（ＰＶＤＦ）等のフッ素系バインダが挙げられる。第１塗工層および第２塗工層は、それぞれ、バインダを１種のみ含有していてもよく、２種以上含有していてもよい。
【0051】
本開示における電極部材は、集電体と、上記集電体上に配置された塗工層と、を有する。塗工層は、集電体側から順に、第１塗工層および第２塗工層を有する。第１塗工層および第２塗工層を乾燥することで、それぞれ、第１電極層および第２電極層が得られる。すなわち、集電体と、上記集電体上に配置された第１電極層と、上記第１電極層上に配置された第２電極層と、を有する電極体が得られる。第１電極層および第２電極層は、正極層であってもよく、負極層であってもよい。
【0052】
また、本開示においては、電池に用いられる電極体の製造装置を提供することもできる。電極体の製造装置は、バックアップロールと、第１ダイと、第２ダイと、第１塗工層および第２塗工層を乾燥するための乾燥機と、を有する。バックアップロール、第１ダイおよび第２ダイについては、上述した内容と同様である。また、乾燥機については、公知の乾燥機を採用することができる。
【0053】
本開示における電極部材および電極体は、電池に用いられる。本開示における電池の種類は、特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池が挙げられる。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車（ＨＥＶ）、プラグインハイブリッド車（ＰＨＥＶ）、電気自動車（ＢＥＶ）、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車（ＨＥＶ）、プラグインハイブリッド車（ＰＨＥＶ）または電気自動車（ＢＥＶ）の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体（例えば、鉄道、船舶、航空機）の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0054】
Ｂ．電極部材の製造方法
図２は、本開示における電極部材の製造方法を例示する概略断面図である。図２においては、まず、搬送される集電体１をバックアップロール１０により支持する（支持工程）。次に、バックアップロール１０上の集電体１に、第１ダイ２０ａを用いて、第１スラリーを塗工し、第１塗工層２を形成する（第１塗工層形成工程）。次に、バックアップロール１０上の第１塗工層２に、第２ダイ２０ｂを用いて、第２スラリーを塗工し、第２塗工層３を形成する（第２塗工層形成工程）。第１ダイ２０ａおよび第２ダイ２０ｂは、互いに独立している。また、水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、第２ダイ２０ｂにおける第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である。
図２は、本開示における電極部材の製造方法を例示する概略断面図である。図２においては、まず、搬送される集電体１をバックアップロール１０により支持する（支持工程）。次に、バックアップロール１０上の集電体１に、第１ダイ２０ａを用いて、第１スラリーを塗工し、第１塗工層２を形成する（第１塗工層形成工程）。次に、バックアップロール１０上の第１塗工層２に、第２ダイ２０ｂを用いて、第２スラリーを塗工し、第２塗工層３を形成する（第２塗工層形成工程）。第１ダイ２０ａおよび第２ダイ２０ｂは、互いに独立している。また、水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、第２ダイ２０ｂにおける第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である。
【0055】
本開示によれば、第２ダイにおける第２スラリーの吐出角度が所定の角度にあることから、製造不良の発生を抑制した電極部材が得られる。
【0056】
１．支持工程
本開示における支持工程は、搬送される集電体をバックアップロールにより支持する工程である。バックアップロールおよび集電体については、上記「Ａ．電極部材」に記載した内容と同様である。集電体の搬送速度は、特に限定されないが、例えば、０．３ｍ／分以上、３ｍ／分以下である。
本開示における支持工程は、搬送される集電体をバックアップロールにより支持する工程である。バックアップロールおよび集電体については、上記「Ａ．電極部材」に記載した内容と同様である。集電体の搬送速度は、特に限定されないが、例えば、０．３ｍ／分以上、３ｍ／分以下である。
【0057】
２．第１塗工層形成工程
本開示における第１塗工層形成工程は、上記バックアップロール上の上記集電体に、第１ダイを用いて、第１スラリーを塗工し、第１塗工層を形成する工程である。第１ダイ、第１スラリーおよび第１塗工層については、上記「Ａ．電極部材」に記載した内容と同様である。第１スラリーの吐出量、および、第１ダイおよびバックアップロールの間のギャップは、所望の厚さの第１塗工層が得られるように、適宜調整する。また、第１スラリーは、連続的に塗工されてもよく、間欠的に塗工されてもよい。
本開示における第１塗工層形成工程は、上記バックアップロール上の上記集電体に、第１ダイを用いて、第１スラリーを塗工し、第１塗工層を形成する工程である。第１ダイ、第１スラリーおよび第１塗工層については、上記「Ａ．電極部材」に記載した内容と同様である。第１スラリーの吐出量、および、第１ダイおよびバックアップロールの間のギャップは、所望の厚さの第１塗工層が得られるように、適宜調整する。また、第１スラリーは、連続的に塗工されてもよく、間欠的に塗工されてもよい。
【0058】
３．第２塗工層形成工程
本開示における第２塗工層形成工程は、上記バックアップロール上の上記第１塗工層に、第２ダイを用いて、第２スラリーを塗工し、第２塗工層を形成する工程である。また、水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、上記第２ダイにおける上記第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である。第２ダイ、第２スラリーおよび第２塗工層については、上記「Ａ．電極部材」に記載した内容と同様である。第２スラリーの吐出量、および、第２ダイおよびバックアップロールの間のギャップは、所望の厚さの第２塗工層が得られるように、適宜調整する。また、第２スラリーは、通常、第１塗工層に合わせて塗工される。
本開示における第２塗工層形成工程は、上記バックアップロール上の上記第１塗工層に、第２ダイを用いて、第２スラリーを塗工し、第２塗工層を形成する工程である。また、水平方向を基準（０°）とし、鉛直下向きを＋９０°とし、鉛直上向きを－９０°とした場合に、上記第２ダイにおける上記第２スラリーの吐出角度が、－９０°以上、＋６０°以下である。第２ダイ、第２スラリーおよび第２塗工層については、上記「Ａ．電極部材」に記載した内容と同様である。第２スラリーの吐出量、および、第２ダイおよびバックアップロールの間のギャップは、所望の厚さの第２塗工層が得られるように、適宜調整する。また、第２スラリーは、通常、第１塗工層に合わせて塗工される。
【0059】
４．電極部材
本開示における電極部材については、上記「Ａ．電極部材」に記載した内容と同様である。また、本開示においては、上記電極部材における上記第１塗工層および上記第２塗工層を乾燥し、上記第１塗工層から第１電極層を形成し、上記第２塗工層から第２電極層を形成する乾燥工程を有する、電極体の製造方法を提供することができる。これにより、集電体と、上記集電体上に配置された電極層（第１電極層および第２電極層）と、を有する電極体が得られる。
本開示における電極部材については、上記「Ａ．電極部材」に記載した内容と同様である。また、本開示においては、上記電極部材における上記第１塗工層および上記第２塗工層を乾燥し、上記第１塗工層から第１電極層を形成し、上記第２塗工層から第２電極層を形成する乾燥工程を有する、電極体の製造方法を提供することができる。これにより、集電体と、上記集電体上に配置された電極層（第１電極層および第２電極層）と、を有する電極体が得られる。
【0060】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0061】
［実施例１］
（第１スラリーの作製）
負極活物質（黒鉛）、第１のバインダ（ＣＭＣ）および第２のバインダ（ＳＢＲ）を、以下の表１に示す割合で混合した。得られた混合物に水を加え、第１スラリーを得た。得られた第１スラリーを、２５℃で２４時間静置し、その後、レオメータを用いて、せん断速度１ｓ－１におけるせん断粘度を測定した。
（第１スラリーの作製）
負極活物質（黒鉛）、第１のバインダ（ＣＭＣ）および第２のバインダ（ＳＢＲ）を、以下の表１に示す割合で混合した。得られた混合物に水を加え、第１スラリーを得た。得られた第１スラリーを、２５℃で２４時間静置し、その後、レオメータを用いて、せん断速度１ｓ－１におけるせん断粘度を測定した。
【0062】
（第２スラリーの作製）
負極活物質（黒鉛）、第１のバインダ（ＣＭＣ）および第２のバインダ（ＳＢＲ）を、以下の表１に示す割合で混合した。得られた混合物に水を加え、第２スラリーを得た。得られた第２スラリーに対して、上記と同様にして、せん断粘度を測定した。
負極活物質（黒鉛）、第１のバインダ（ＣＭＣ）および第２のバインダ（ＳＢＲ）を、以下の表１に示す割合で混合した。得られた混合物に水を加え、第２スラリーを得た。得られた第２スラリーに対して、上記と同様にして、せん断粘度を測定した。
【0063】
（電極部材の作製）
図１（ａ）に示す製造装置を用い、集電体（Ｃｕ箔）を搬送しつつ、集電体上に、第１塗工層（７０μｍ）および第２塗工層（３７０μｍ）を形成し、電極部材を得た。第１ダイの吐出角度θａは０°であり、第２ダイの吐出角度θｂは＋６０°であった。
図１（ａ）に示す製造装置を用い、集電体（Ｃｕ箔）を搬送しつつ、集電体上に、第１塗工層（７０μｍ）および第２塗工層（３７０μｍ）を形成し、電極部材を得た。第１ダイの吐出角度θａは０°であり、第２ダイの吐出角度θｂは＋６０°であった。
【0064】
【表1】
【0065】
［実施例２～４］
第２ダイの吐出角度θｂを、＋４５°（実施例２）、＋３０°（実施例３）、０°（実施例４）に変更したこと以外は、実施例１と同様にして、電極部材を得た。なお、実施例４では、図１（ａ）に示す製造装置の代わりに、図４（ｂ）に示す製造装置を用いた。
第２ダイの吐出角度θｂを、＋４５°（実施例２）、＋３０°（実施例３）、０°（実施例４）に変更したこと以外は、実施例１と同様にして、電極部材を得た。なお、実施例４では、図１（ａ）に示す製造装置の代わりに、図４（ｂ）に示す製造装置を用いた。
【0066】
［比較例１］
第２ダイの吐出角度θｂを、＋９０°に変更したこと以外は、実施例１と同様にして、電極部材を得た。
第２ダイの吐出角度θｂを、＋９０°に変更したこと以外は、実施例１と同様にして、電極部材を得た。
【0067】
［評価］
実施例１および比較例１で得られた第２塗工層の表面を、レーザ変位センサで測定し、第２塗工層の厚さプロファイルを作成した。その結果を図５に示す。図５（ａ）に示すように、実施例１では、１回目（図面左側）の終端において、僅かに突起部が形成され、２回目（図面右側）の始端において、僅かに欠損部が形成されたことが確認された。これに対して、比較例１では、１回目（図面左側）の終端において、大きな突起部が形成され、２回目（図面右側）の始端において、大きな欠損部が形成されたことが確認された。
実施例１および比較例１で得られた第２塗工層の表面を、レーザ変位センサで測定し、第２塗工層の厚さプロファイルを作成した。その結果を図５に示す。図５（ａ）に示すように、実施例１では、１回目（図面左側）の終端において、僅かに突起部が形成され、２回目（図面右側）の始端において、僅かに欠損部が形成されたことが確認された。これに対して、比較例１では、１回目（図面左側）の終端において、大きな突起部が形成され、２回目（図面右側）の始端において、大きな欠損部が形成されたことが確認された。
【0068】
【符号の説明】
【0069】
１…集電体
２…第１塗工層
３…第２塗工層
１０…バックアップロール
２０…ダイ
２０ａ…第１ダイ
２０ｂ…第２ダイ
１００…製造装置
２…第１塗工層
３…第２塗工層
１０…バックアップロール
２０…ダイ
２０ａ…第１ダイ
２０ｂ…第２ダイ
１００…製造装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
