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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047146
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】脱酸素剤包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240329BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20240329BHJP
   B32B 23/06 20060101ALI20240329BHJP
   B32B 23/10 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D81/26 S
B32B23/06
B32B23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152596
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】717000414
【氏名又は名称】株式会社プレジール
(71)【出願人】
【識別番号】520303232
【氏名又は名称】三菱ガス化学トレーディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(74)【代理人】
【識別番号】100120570
【弁理士】
【氏名又は名称】中 敦士
(72)【発明者】
【氏名】梅村 俊和
(72)【発明者】
【氏名】城口 聡子
(72)【発明者】
【氏名】高桑 恭平
(72)【発明者】
【氏名】戸田 雄士
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067BA17A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067CA24
3E067EE25
3E067GB13
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD08
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA43
3E086BB05
3E086CA01
4F100AK01B
4F100AK41B
4F100BA02
4F100DG10A
4F100DG15A
4F100GB15
4F100JC00A
4F100JC00B
4F100JL12B
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自然環境を守り、海洋生物の保護に資することができ、かつ経済性にも優れた脱酸素剤包装体を提供する。
【解決手段】一方の外層を構成する紙(A1)又は生分解性不織布(A2)からなる基材(A)と、他方の外層を構成する、通気孔が設けられた生分解性プラスチックフィルム(B)とが互いに対向するように重ね合わされて、その周縁が貼り合わせて形成された通気性包装体中に、環境負荷低減型の鉄系脱酸素剤又は有機系脱酸素剤が収納された脱酸素剤包装体であって、前記包装体は生分解性プラスチックフィルム(B)が熱融着性を有するフィルムであり、一方の外層と他方の外層の周縁が熱融着により貼り合わせて形成された包装体である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の外層を構成する紙(A1)又は生分解性不織布(A2)からなる基材(A)と、
他方の外層を構成する、生分解性プラスチックフィルム(B)とを互いに対向するように重ね合わせてその周縁が貼り合わされて形成された通気性包装体中に、
環境負荷低減型の鉄系脱酸素剤(E)又は有機系脱酸素剤(F)が収納された脱酸素剤包装体であって、
(i)前記包装体は、他方の外層を形成する生分解性プラスチックフィルム(B)が通気孔を有する熱融着性のフィルムであり、一方の外層と他方の外層の周縁が熱融着により貼り合わされて形成されている包装体、
(ii)前記包装体は、他方の外層を形成する生分解性プラスチックフィルム(B)の内面側に該生分解性プラスチックフィルム(B)よりも融点の低い他の生分解性プラスチックフィルム(C)が積層されていると共に該積層フィルムに通気孔が設けられていて、一方の外層と他方の外層の周縁が熱融着により貼り合わされて形成されている包装体、又は
(iii)前記包装体は、一方の外層を形成する基材(A)の内面側の少なくとも周縁に塗布された生分解性接着剤(D)により、一方の外層と、通気孔を有する生分解性プラスチックフィルム(B)からなる他方の外層の周縁が接着により貼り合わされて形成されている包装体、
であることを特徴とする、脱酸素剤包装体。
【請求項2】
前記生分解性プラスチックフィルム(B)、又は生分解性プラスチックフィルム(B)と生分解性プラスチックフィルム(C)が
化学合成由来の、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンサクシネート(PES)、及びポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)、
微生物産生由来の、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3/4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、
並びに、植物又は動物が作る天然物由来の修飾デンプン、酢酸セルロース、及びキトサン、
から選択された1種又は2種以上の樹脂から形成されたプラスチックフィルムである、請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項3】
前記生分解性プラスチックフィルム(B)がポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項4】
前記生分解性接着剤(D)が生分解性ウレタン粘着剤、ポリ乳酸系コンポスタブル接着剤、及びでん粉を変性して得られる生分解性接着剤から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項5】
前記紙(A1)が通気性を有する洋紙、中性紙、酸性紙、合成紙、和紙、もしくは上質紙、
又は生分解性不織布(A2)が通気性を有するポリ乳酸系不織布、もしくはセルロース系不織布である、請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項6】
前記鉄系脱酸素剤(E)が、鉄紛、又は鉄粉を主成分としてその他に無機酸のアンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩、遷移金属、遷移金属化合物、水、保水剤、膨潤剤、金属塩、滑剤、及び多孔性担体から選択される1種又は2種以上の成分から選択された混合物又は組成物である、
請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項7】
前記有機系脱酸素剤(F)が易酸化性有機物としてアスコルビン酸、アスコルビン酸塩、エリソルビン酸、グリセリン、グリセリン酸、没食子酸、トコフェロール、不飽和基を有する有機化合物、及びカテキンから選択される1種又は2種以上を含む混合物又は組成物である、
請求項1に記載の脱酸素剤包装体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋汚染等の原因の一つとして懸念されるマイクロプラスチックの発生を防止し、またコンポストとして処理可能な脱酸素剤包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックによる海洋汚染が問題になっている。特に化石資源である石油を出発原料とする合成樹脂は生分解性が極めて低いことが知られている。このような合成樹脂を用いた包装材料、繊維、発泡材料は河川や海洋に投棄されると、漂ううちに紫外線や波の影響などで細かく分解されたプラスチックごみとなる。一般に直径が5mm以下の微小プラスチックはマイクロプラスチックといわれていて、表面に有害物質が吸着し易く、水中の生物がえさと間違えて食べてしまうことから、生態系への影響などが懸念されており、その減量は世界各国での課題となっている。
【0003】
一方、食品分野では長期間の「おいしさ」や「鮮度」の保持と「安全性」を担保する為に脱酸素剤が広く使用されている。また、脱酸素剤は食品のみならず、更に医薬、衣料品、化粧品等の劣化防止、また衣類や寝具の防ダニ、防カビにも幅広く用いられている。脱酸素剤は真空包装やガス置換包装では実現できない脱酸素効果をもたらすので、被包装物と共にガスバリア性の包装容器に封入・密封するだけで大きな効果を発揮する。被包装物の大きさにもよるが、典型的な例としては、食品に使用する場合に、縦横のサイズがそれぞれ2~5cm、厚み5mm以下の化石資源由来の合成樹脂製の小袋に脱酸素剤を収納したものが広く用いられている。
【0004】
脱酸素剤は、例えば鉄粉を使用した場合には鉄が錆びる際に酸素と結合して酸化物となる反応が進行して密閉容器内の酸素を吸収する作用を発揮する。このように酸素を吸収する作用を発揮する脱酸素剤として、鉄粉、第一鉄塩、その他、マンガン、テクネチウム等のマンガン族、コバルト、ニッケル等の鉄族、及び銅族等の無機物、多価フェノール等の易酸化性有機物等が挙げられており、これらの中でも鉄粉が最も広く使用されている。
【0005】
これらの脱酸素剤が収納された包装体は、使用により酸素吸収能力を消失した場合、一般ゴミとして焼却されるか埋設処理されるが、例えば、脱酸素剤が食品保存用として用いられた場合には、屋外で残存食品と一緒に投棄されると投棄後に土壌中に残存するか、一部は河川や海洋に流出するなどの問題が発生するおそれがある。
【0006】
下記特許文献1には、脱酸素剤を包装する包装袋が2層以上の高分子フィルムからなり、該フィルムの少なくとも1層は水蒸気透過率が80g/m2・24hr以下の高分子フィルムで平均孔径が50~350μmの貫通孔を有している脱酸素用包装袋が開示されている。
下記特許文献2には、包装材料を構成する外層がバイオマス由来の熱可塑性樹脂層(A)、紙層(B)、バイオマス由来のヒートシール性熱可塑性樹脂層(C)の少なくとも3層を積層してなる脱酸素剤包装材料が開示されている。下記特許文献3には、被包装物を収容する内袋と、少なくとも1つの前記内袋を収容する外袋とを備える包装体で、前記内袋および前記外袋は紙基材を主体とするシートから構成され、前記外袋は、前記内袋を収容した状態で密封されている包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-006378号公報
【特許文献2】特開2012-218411号公報
【特許文献3】特開2020-193006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に開示された包装袋において、該包装袋を形成する、紙と不織布を含まない2層以上の高分子フィルムのうち、高分子フィルムAは特定の水蒸気透過率を有する化石資源由来のオレフィン系樹脂等であり、他の高分子フィルムBは熱溶着され易いオレフィン系樹脂である。該熱溶着性オレフィン系樹脂として、化石資源由来のポリエチレン等の熱可塑性樹脂の例示の中にバイオマス由来のポリ乳酸などの生分解性プラスチック樹脂が挙げられている程度である。従って、特許文献1には包装袋全体を生分解性フィルムで形成する技術思想は記載されていない。
【0009】
前記特許文献2に開示された脱酸素剤包装材料を構成する層は、少なくともバイオマス由来の熱可塑性樹脂層(A)、紙層(B)、バイオマス由来のヒートシール性熱可塑性樹脂層(C)からなる3層が積層された構造であり、更に熱可塑性樹脂層(A)と紙層(B)間の接着性を向上するために接着層を設けることが好ましいとの記載がされている。しかし、包装材料の層構成が多くなると製造工程もそれに伴い増加するので経済性が低下するおそれがある。
【0010】
前記特許文献3には、再利用の容易な材料から構成され、かつ、被包装物を密閉することができる包装体を提供することを課題として、内袋を構成する紙基材上の一方の面上に、水蒸気バリア層、1層以上のオーバーコート層をこの順に備えた層構成が示されていて、該オーバーコート層を形成する水懸濁性高分子として化石資源由来のエチレン・アクリル系共重合体の他にバイオマス由来のポリ乳酸等も例示されている。従って、特許文献3にも包材全体を紙と生分解性樹脂から形成する技術思想は記載されていない。
【0011】
脱酸素剤包装体は使用により酸素吸収能力を消失した場合、一般ゴミとして焼却されるか、埋設処理されるが、脱酸素剤の包装体に上記引用文献1,3に記載された化石資源由来の樹脂フィルムが使用されている場合、屋外に投棄されると、河川や海洋汚染の発生原因になるおそれがある。また、上記引用文献2に記載された包装体がバイオマス由来又は化学合成由来の生分解性樹脂フィルムから形成されていても、包装体の層構成が多くなると製造コストの点から経済性が低下するおそれがある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、環境負荷を増加させず、海洋生物の保護に資することができ、かつ経済性にも優れた脱酸素剤包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、包装体を構成する層構成の数を極力少なくすると共に、使用材料を紙又は生分解性不織布と、生分解性プラスチックフィルム、生分解性接着剤等を使用し、かつ脱酸素剤として環境負荷低減型の成分を使用することにより、経済性に優れ、河川や海洋汚染の発生原因となるマイクロプラスチックの発生を防止して、海洋生物の保護に資することができる脱酸素剤包装体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の(1)~(7)に記載する発明を要旨とする。
(1)一方の外層を構成する紙(A1)又は生分解性不織布(A2)からなる基材(A)と、
他方の外層を構成する、生分解性プラスチックフィルム(B)とを互いに対向するように重ね合わせてその周縁が貼り合わされて形成された通気性包装体中に、
環境負荷低減型の鉄系脱酸素剤(E)又は有機系脱酸素剤(F)が収納された脱酸素剤包装体であって、
(i)前記包装体は、他方の外層を形成する生分解性プラスチックフィルム(B)が通気孔を有する熱融着性のフィルムであり、一方の外層と他方の外層の周縁が熱融着により貼り合わされて形成されている包装体(第1の実施形態)、
(ii)前記包装体は、他方の外層を形成する生分解性プラスチックフィルム(B)の内面側に該生分解性プラスチックフィルム(B)よりも融点の低い他の生分解性プラスチックフィルム(C)が積層されていると共に該積層フィルムに通気孔が設けられていて、一方の外層と他方の外層の周縁が熱融着により貼り合わされて形成されている包装体(第2の実施形態)、又は
(iii)前記包装体は、一方の外層を形成する基材(A)の内面側の少なくとも周縁に塗布された生分解性接着剤(D)により、一方の外層と、通気孔を有する生分解性プラスチックフィルム(B)からなる他方の外層の周縁が接着により貼り合わされて形成されている包装体(第3の実施形態)、
であることを特徴とする、脱酸素剤包装体。
【0014】
(2)前記生分解性プラスチックフィルム(B)、又は生分解性プラスチックフィルム(B)と生分解性プラスチックフィルム(C)が
化学合成由来の、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンサクシネート(PES)、及びポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)、
微生物産生由来の、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3/4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、
並びに、植物又は動物が作る天然物由来の修飾デンプン、酢酸セルロース、及びキトサン、
から選択された1種又は2種以上の樹脂から形成されたプラスチックフィルムである、前記(1)に記載の脱酸素剤包装体。
(3)前記生分解性プラスチックフィルム(B)がポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)から選択される1種又は2種以上である、前記(1)又は(2)に記載の脱酸素剤包装体。
【0015】
(4)前記生分解性接着剤(D)が生分解性ウレタン粘着剤、ポリ乳酸系コンポスタブル接着剤、及びでん粉を変性して得られる生分解性接着剤から選択される1種又は2種以上である、前記(1)から(3)のいずれかに記載の脱酸素剤包装体。
(5)前記紙(A1)が通気性を有する洋紙、中性紙、酸性紙、合成紙、和紙、もしくは上質紙、
又は生分解性不織布(A2)が通気性を有するポリ乳酸系不織布、もしくはセルロース系不織布である、前記(1)から(4)のいずれかに記載の脱酸素剤包装体。
(6)前記鉄系脱酸素剤(E)が、鉄紛、又は鉄粉を主成分としてその他に無機酸のアンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩、遷移金属、遷移金属化合物、水、保水剤、膨潤剤、金属塩、滑剤、及び多孔性担体から選択される1種又は2種以上の成分から選択された混合物又は組成物である、前記(1)から(5)のいずれかに記載の脱酸素剤包装体。
(7)前記有機系脱酸素剤(F)が易酸化性有機物としてアスコルビン酸、アスコルビン酸塩、エリソルビン酸、グリセリン、グリセリン酸、没食子酸、トコフェロール、不飽和基を有する有機化合物、及びカテキンから選択される1種又は2種以上を含む混合物又は組成物である、前記(1)から(5)のいずれかに記載の脱酸素剤包装体。
【発明の効果】
【0016】
本発明の脱酸素剤包装体における包装体は、包装体を構成する層数が少なく、通気性に有していると共に、生分解性に優れているので、回収されずに自然界に廃棄されても一定時間で分解して、土壌汚染、及び河川や海洋汚染の原因となるマイクロプラスチック発生を防止することが可能である。また該包装体に収納される脱酸素剤は、酸素吸収性を有していると共にその成分は、自然界に存在するか、使用により酸化され自然界に存在する物質に変化するか、又は安全性・非蓄積性が確認後に市販され日常で使用されている、環境負荷低減型の無機物・有機物であるので土壌や海洋の汚染を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の脱酸素剤包装体の1例の断面を示す説明用の概念図である。
図2図2は、本発明の脱酸素剤包装体の他の例の断面を示す説明用の概念図である。
図3図3は、本発明の脱酸素剤包装体の他の例の断面を示す説明用の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の脱酸素剤包装体を詳細に説明する。
本発明の脱酸素剤包装体は、
一方の外層を構成する紙(A1)又は生分解性不織布(A2)からなる基材(A)と、
他方の外層を構成する、生分解性プラスチックフィルム(B)とを互いに対向するように重ね合わせてその周縁が貼り合わされて形成された通気性包装体中に、
環境負荷低減型の鉄系脱酸素剤(E)又は有機系脱酸素剤(F)が収納された脱酸素剤包装体であって、
(i)前記包装体は、他方の外層を形成する生分解性プラスチックフィルム(B)が通気孔を有する熱融着性のフィルムであり、一方の外層と他方の外層の周縁が熱融着により貼り合わされて形成されている包装体(第1の実施形態)、
(ii)前記包装体は、他方の外層を形成する生分解性プラスチックフィルム(B)の内面側に該生分解性プラスチックフィルム(B)よりも融点の低い他の生分解性プラスチックフィルム(C)が積層されていると共に該積層フィルムに通気孔が設けられていて、一方の外層と他方の外層の周縁が熱融着により貼り合わされて形成されている包装体(第2の実施形態)、又は
(iii)前記包装体は、一方の外層を形成する基材(A)の内面側の少なくとも周縁に塗布された生分解性接着剤(D)により、一方の外層と、通気孔を有する生分解性プラスチックフィルム(B)からなる他方の外層の周縁が接着により貼り合わされて形成されている包装体(第3の実施形態)、
であることを特徴とする。
【0019】
図1は、本発明の脱酸素剤包装体の一例を示す断面図であり、該脱酸素剤包装体11は、包装体31中に脱酸素剤34が収納されている。包装体31は、一方の外層を構成する基材(A)21と他方の外層を構成する生分解性プラスチックフィルム(B)22から形成されていて、一方の外層周縁と他方の外層周縁の貼り合わせ部25で熱融着されている。
図2は、本発明の脱酸素剤包装体の他の例を示す、断面図であり、該脱酸素剤包装体12は、包装体32中に脱酸素剤34が収納されている。包装体32は、一方の外層を構成する基材(A)21と、他方の外層を構成する生分解性プラスチックフィルム(B)22と該フィルムより融点の低い生分解性プラスチックフィルム(C)23の積層フィルムから形成されていて、一方の外層周縁と他方の外層周縁の貼り合わせ部26で熱融着されている。
図3は、本発明の脱酸素剤包装体の他の例を示す、断面図であり、該脱酸素剤包装体13は、包装体33中に脱酸素剤34が収納されている。包装体33は、一方の外層を構成する、内面の少なくとも周縁に生分解性接着剤(D)24が塗布されている基材(A)21と、他方の外層を構成する生分解性プラスチックフィルム(B)22から形成されていて、一方の外層周縁と他方の外層周縁の貼り合わせ部27で接着されている。
【0020】
[包装体]
本発明の包装体は、一方の外層を構成する基材(A)と、他方の外層を構成する生分解性プラスチックフィルム(B)とを互いに対向するように重ね合わせた状態で、その周縁を貼り合わせて形成されていて、通気性を有している。
【0021】
(i)基材(A)
基材(A)は、紙(A1)又は生分解性不織布(A2)から形成されていて、紙(A1)としては通気孔を有する洋紙、中性紙、酸性紙、合成紙、和紙、上質紙等が挙げられるが、洋紙が好ましい。紙(A1)の通気性を向上するために、後述する方法により通気孔を設けることができる。また、紙(A1)の耐水性、撥水性等を向上するために、該紙に生分解性を有する食用油、糊、樹脂の水性エマルジョン等を塗布することもできる。
生分解性不織布(A2)はポリ乳酸系不織布、又はセルロース系不織布の使用が好ましいが、後述する生分解性プラスチック性不織布を使用することも可能である。生分解性不織布(A2)の通気性を向上するために、後述する方法により通気孔を設けることができる。尚、該不織布の製造工程は基本的に、フリース(繊維の集積層)を形成する工程と、形成したフリースを結合する工程に分けられ、それぞれの工程において様々な製法が知られているが、本発明で使用される不織布の製造工程は特に限定されるものではない。
【0022】
本発明で使用可能な不織布の製造方法の具体例として、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート樹脂(PBS)あるいはその類似構造樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシブチレートコヒドロキシバレレート(PHBV)、ポリブチレンアジペート-テレフタレート(PBAT)、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシヘキサン酸(PHBH)、等の生分解性樹脂を溶融紡糸して、繊維の直径が1~50μmの繊維を製造し、これを2~5cmにカットして捲縮し、繊維を引きそろえる為にカード機にかけ、繊維同士を絡ませるためにニードルパンチ処理して不織布を作製する方法が挙げられる。
他の具体例として、前記樹脂を押出機で溶融し、ノズルから垂れ流して高速の空気で吹き飛ばし、金網でからめ捕るメルトブロー方式で不織布を製造する方法が挙げられる。尚、この際に用いる樹脂の溶融粘度、空気の風速、ノズルから金網間の距離によって、繊維径が1~30μmになるように制御することができる。更に、他の具体例として不織布製造の際に、融点の異なる2種類の樹脂を用いて別々のノズルから溶融した樹脂を押出すか、又は芯鞘の2重構造を有する繊維を作製するために、鞘の樹脂の融点が芯の樹脂より低い樹脂を用いて芯鞘の2重構造の繊維を作り、二つの樹脂の融点の中間温度で圧縮することにより、繊維同士を強固に融着させる方法が挙げられる。
【0023】
(ii) 生分解性プラスチックフィルム(B)
業界団体である日本バイオプラスチック協会(JBPA)は、2000年6月に通商産業省生物化学産業課の委託を受けて財団法人バイオインダストリー協会が策定した生分解性プラスチックの生分解性と安全性を保障するスキームを基にグリーンプラ識別表示制度を制定し、一方、2002年3月には製品のコンポスト化性に係わる基準を制定している。
生分解性プラスチックフィルムは一般に、化学合成由来のプラスチックフィルム、微生物産生由来のプラスチックフィルム、及び植物又は動物が作る天然物由来のプラスチックフィルムに分けられている。このようなプラスチックフィルムは、また硬質系と軟質系に分けられているが、2種類以上の混合又は共重合等により軟質系への改質を図ることができる可能性がある。
【0024】
前記第1、第2、及び第3の実施形態の脱酸素剤包装体において、生分解性プラスチックフィルム(B)に好適に利用できるプラスチックフィルムとして、特に限定されるものではないが、下記の1種又は2種以上の混合物の使用が好ましい。化学合成由来のプラスチックフィルムとして、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンサクシネート(PES)、及びポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)等が挙げられる。
微生物産生由来のプラスチックフィルムとして、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3/4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)等が挙げられる。
植物又は動物が作る天然物由来のプラスチックフィルムとして、修飾デンプン、酢酸セルロース、キトサン等が挙げられる。
【0025】
前記生分解性プラスチックフィルム(B)としては、上記生分解性プラスチックフィルムの中でも、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)から選択される1種又は二種以上がより好ましい。
生分解性プラスチックフィルム(B)には通気性を得るために通気孔が設けられる。該通気孔のサイズ(直径)は、特に制限はないが、酸素ガスの透過性を考慮すると5~500μm程度が好ましく、その穴の形状は円形、楕円形状等が好ましい。このような微細な通気孔は、フィルムを多数の針が付けられた針ロールとゴムロールで挟み込む手段、電子線照射等の手段を使用して形成することができる。通気孔を形成する工程はフィルム成形直後、製袋直前、製袋後等脱酸素の機能を発揮するのに支障が生じなければ特に制限されない。
【0026】
(iii)生分解性プラスチックフィルム(C)
前記第2の実施形態の脱酸素剤包装体において、包装体は他方の外層を形成する生分解性プラスチックフィルム(B)の内面側に該生分解性プラスチックフィルム(B)よりも融点の低い他の生分解性プラスチックフィルム(C)を積層させて、一方の外層と他方の外層の周縁を熱融着により貼り合わせて形成される。この場合の積層には、前記2つのフィルムを単に重ね合わせた状態と、前記2つのフィルムを融着させて一体化させた状態等が含まれる。
【0027】
生分解性プラスチックフィルム(C)は、基本的には前記生分解性プラスチックフィルム(B)の説明で例示したフィルムが使用可能であり、生分解性プラスチックフィルム(B)との組み合わせにおいて、生分解性プラスチックフィルム(B)よりも融点の低い物性のフィルムから選択される。
具体的には、生分解性プラスチックフィルム(B)として、例えば比較的融点の高い生分解性樹脂であるポリ乳酸(融点約170℃)、ブテンジオールビニルアルコールコポリマー(融点170-225℃)等を用いる場合、生分解性プラスチックフィルム(C)としては、融点が110℃から130℃程度であるポリブチレンサクシネート樹脂(PBS)あるいはその類似構造樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシブチレート-コヒドロキシバレレート(PHBV)、ポリブチレンアジペート-テレフタレート(PBAT)、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシヘキサン酸(PHBH)等を好適に用いることができる。より好ましい生分解性プラスチックフィルム(C)としては、上記生分解性プラスチックフィルム(B)として例示されたフィルムと同様であり、融点の違いを考慮して選択することができる。
尚、生分解性プラスチックフィルム(B)と生分解性プラスチックフィルム(C)からなる積層フィルムに通気孔を設ける手段は、該積層フィルムが単に重ね合わせた状態で周縁のみを融着して製袋する場合には、2つのフィルをそれぞれ別工程で穿孔することができ、重ね合わせた状態で穿孔することもできる。一方、前記積層フィルムが融着されて一体化される場合には、融着後に穿孔することが好ましい。通気孔のサイズ(直径)と、通気孔を設ける手段は、前記と同様である。
【0028】
(iv)生分解性接着剤(D)
後述する第3の実施形態の脱酸素剤包装体においては、包装体は基材(A)の内面側の少なくとも周縁に塗布された生分解性接着剤(D)により、一方の外層を構成する基材(A)と、他方の外層を構成する生分解性プラスチックフィルム(B)の周縁を接着により貼り合わせて形成される。
生分解性プラスチックフィルム(B)を基材(A)に塗布する部分は、該基材(A)の周縁には限定されないが、製袋を考慮すると基材(A)の周縁のみに塗布するのが好ましい。
生分解性接着剤(D)は、特に限定されるものではないが、生分解性ウレタン粘着剤、ポリ乳酸系コンポスタブル接着剤、及びでん粉を変性して得られる生分解性接着剤から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
尚、使用可能な市販の接着剤としては、例えば、東洋モートン(株)製の生分解性ドライラミネート接着剤(商品名:EA-2800A/B)、トーヨーケム(株)製の生分解性ウレタン粘着剤(商品名:EXK20-143)、BiologiQ社(本社:米国アイダホ州)製の変性でんぷん接着剤(商品名:BioBlend(登録商標) BC27130)、日本コ―ンスターチ(株)製の変性でんぷん接着剤(商品名:コーンポール)等を用いることが出来る。
これらのホットメルト接着剤等の接着剤は、通気性を有する紙又は生分解性不織布の周縁にあらかじめ塗布しておき、3方を熱接着して袋状とし、脱酸素剤を該袋状物に収納した後に未シール部分を熱接着することが好ましい。
【0029】
また上記実施形態1~3において、通気孔が設けられた生分解性プラスチックフィルム(B)の外面にエンボス加工を施すことによって、該フィルム(B)の外面が被包装物を収容する外袋の内面に密着した場合でも、該フィルム(B)の外面に沿った方向での空気の異動が可能であるので、脱酸素剤の脱酸素効果を確実に発揮することが可能になる。
【0030】
[脱酸素剤]
本発明で使用される脱酸素剤は、マイクロプラスチックの発生原因にならず、かつ環境負荷低減型の物質又は成分から構成できるのが特徴である。
小袋状等に収納されている、酸素吸収性を有する脱酸素剤は、一般に主成分として鉄を用いた鉄系脱酸素剤(E)と、非鉄系である有機系脱酸素剤(F)に分けられている。
【0031】
(i)鉄系脱酸素剤(E)
鉄系脱酸素剤(E)は、鉄紛、又は鉄粉を主成分としてその他に遷移金属、無機酸のアンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩、遷移金属化合物、水、保水剤、膨潤剤、金属塩、滑剤、及び多孔性担体等から選択される1種又は2種以上の成分から選択された混合物又は組成物である。
鉄粉(鉄粒子)は、鉄の表面が露出したものであれば特に限定されず、還元鉄粉、電解鉄粉、噴霧鉄粉等を使用することができる。該鉄紛には、鉄以外に、マンガン、コバルト、ニッケル等の他の遷移金属を含有させることができる。鉄系脱酸素剤(E)中の鉄粉の含有量は、40質量%以上が好ましく、40~90質量%程度がより好ましい。前記無機酸のアンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩等のアンモニウム塩は、鉄の酸化反応に触媒的に作用し、鉄の活性を向上させる機能を有している。
【0032】
前記遷移金属化合物は、酸素吸収反応を活発化する触媒として作用し、具体例として、遷移金属のハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩等が挙げられる。鉄系脱酸素剤には水が含有されているのが好ましく、混合物又は組成物中の水の含有量は特に限定されないが、15~30質量%程度が好ましい。前記保水剤としては、水を保持できるものであれば特に限定されないが、珪藻土、ゼオライト等の多孔性物質を使用できる。前記膨潤剤は、水分により膨潤し、造粒物の形状を保持するための粘結機能を有する物質であり、ナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、ナトリウムモンモリロナイト等の粘土鉱物が挙げられるが、アラビアゴム、ゼラチン等の有機膨潤剤も使用することができる。
【0033】
前記金属塩は、鉄の酸化反応に触媒的に作用し、鉄の活性を向上させる物質であり、また、脱酸素剤組成物中の水が蒸散して脱酸素剤組成物から失われるのを防止する役割を果たす。金属塩としてはハロゲン化金属が好ましく、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、銅、亜鉛、アルミニウム、鉄等のハロゲン化金属が挙げられる。前記滑剤は、脱酸素剤混合物又は組成物の流動性を向上して、脱酸素剤混合物又は組成物を包装材料に充填包装し易くする。該滑剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
脱酸素剤混合物又は組成物は、混合造粒物であってもよく、また前記混合造粒物の外側に多孔性担体を含む層を有するものであってもよい。多孔性担体は、多数の細孔を表面及び内部に有して多孔質の形状を有している担体であればよく、シリカ類が好ましい。
前記鉄系脱酸素剤(E)に含まれる無機物は、自然界に存在する無機物、脱酸素作用を発揮して化学反応で変化して自然界に存在する無機物、又は安全性、非蓄積性等を考慮して日常生活で使用されている無機物から選択することが可能であるので、本発明の鉄系脱酸素剤(E)は、環境負荷低減型の脱酸素剤である。
【0034】
(ii)有機系脱酸素剤(F)
有機系脱酸素剤(F)は、酸素吸収性を有し、かつ環境負荷低減型の易酸化性有機物であれば特に限定されるものではないが、本発明で好ましい易酸化性有機物としてアスコルビン酸、アスコルビン酸塩、エリソルビン酸、グリセリン、グリセリン酸、トコフェロール、没食子酸、不飽和基を有する有機化合物、カテキン等から選択される1種又は2種以上を含む組成物が挙げられる。酸素吸収性能、入手しやすさ、価格などの点から、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、没食子酸を用いることが好ましい。
有機系脱酸素剤(F)に用いられる有機化合物は、アルカリ性水溶液中で酸素吸収の反応が進行する場合が多いので、有機系脱酸素剤(F)には、該有機物質をアルカリ性物質と共に水に溶解した水溶液を、活性炭等の多孔性の担体に含浸させて、粉粒体として用いることが好ましい。また、有機系脱酸素剤(F)は、アルカリ水溶液中で、金属塩の存在下に、脱酸素剤としての機能をより発揮することができるので、例えば、有機系脱酸素剤(F)、金属塩、水、及び多孔性担体を含む層と、アルカリ性物質を含む層とを有する多層の粉粒体を形成して脱酸素剤として使用することも可能である。
【0035】
アスコルビン酸は、自然界においてビタミンCとして動植物に広く分布して還元作用を有しており、そのナトリウム塩はサプリメントとして使用されている。エリソルビン酸はL-アスコルビン酸の立体異性体で、酸化防止剤として食品添加物に使用されており、還元作用はアスコルビン酸よりも強い。グリセリンは食品添加物として使用されている。グリセリン酸は天然に存在する三炭素の糖酸である。没食子酸は茶等のほとんどの植物に含まれる抗酸化剤で、還元性が強い。トコフェロール(ビタミンE)のうち特にD-α-トコフェロールは自然界に広く普遍的に存在し、酸化還元力は強い。
不飽和基を有する有機化合物としては、不飽和脂肪酸化合物や不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物が挙げられる。不飽和脂肪酸化合物の具体例としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などが挙げられ、不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物の具体例としては、天然ゴム等の液状オリゴマーが挙げられる。カテキンは、ポリフェノールの一種で、特にお茶の苦み成分(タンニンとも呼ばれる)として知られている。
前記アルカリ性物質としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物等を用いることができる。前記金属塩としては、必要に応じて例えば遷移金属のハロゲン化物、硫酸塩等から必要に応じて選択することができ、具体的には塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等を用いることができる。
上記の通り、有機系脱酸素剤(F)に用いられる物質、成分は特に環境に負荷を与えない原料、成分から選択することが可能であるので、本発明の有機系脱酸素剤(F)は、環境負荷低減型の脱酸素剤である。
【0036】
[脱酸素剤包装体の製造方法]
本発明の脱酸素剤包装体の製造方法は、特に限定されるものではないが、具体例として以下の第1~第3の実施形態について説明する。
(i)第1の実施形態
図1を用いて本発明の第1の実施形態である脱酸素剤包装体11の製造方法について説明する。
他方の外層を構成する生分解性プラスチックフィルム(B)22として、通気孔を有するに熱融着性フィルムが使用される。4方シールにより包装体を形成する場合には、一方の外層を形成する基材(A)21と他方の外層を形成する生分解性プラスチックフィルム(B)22とを互いに対向するように重ね合わせた状態で、その3方の周縁を熱融着により貼り合わせて袋状として、脱酸素剤34を該袋状物に収納する。その後、熱融着されていない残りの1方向の外層周縁の貼り合わせ部25を熱融着することにより、貼り合わせされて通気性を有する包装体31が形成されて、脱酸素剤34が収納された脱酸素剤包装体11を作製することができる。尚、図1は正面側からの断面図であるので貼り合わせ部は2箇所存在しているが、平面からの断面図では矩形状の包装体を3方シールして袋状物とし、脱酸素剤34を該袋状物に収納後、未シールの外層周縁25の1方向を熱融着により貼り合わせすれば、包装体31が作製される。
【0037】
(ii)第2の実施形態
図2を用いて本発明の第2の実施形態である脱酸素剤包装体12の製造方法について説明する。
他方の外層として、生分解性プラスチックフィルム(B)22の内面側に該フィルム(B)よりも融点の低い、同サイズの他の生分解性プラスチックフィルム(C)23を重ね合わせ、その後重ね合わせた状態で通気孔が設けられた積層フィルムを使用する。この場合、前記フィルム(B)とフィルム(C)は、前記の通り単に重ね合わせた積層フィルムでもよく、また重ね合わせた後に融着して一体化された積層フィルムとして使用することもできる。また、通気孔の形成については、前記フィルム(A)とフィルム(B)にそれぞれに予め通気孔を設けていてもよく、前記の通り2つのフルムを重ね合わせた状態で通気孔を形成してもよく、更に前記フィルム(B)とフィルム(C)が融着により一体化される場合には融着後に通気孔を設けることが望ましい。
4方シールにより包装体を形成する場合には、一方の外層を構成する基材(A)21と前記他方の外層の積層フィルムを互いに対抗するように重ね合わせた状態で3方の周縁を熱融着により貼り合わせて袋状とし、脱酸素剤を該袋状物に収納する。その後、熱融着されていない1方の未シール周縁部を熱融着により貼り合わせて貼り合わせ部26を形成して、通気性を有する包装体32とすることにより、脱酸素剤34が包装体に収納された脱酸素剤包装体12を作製することができる。
【0038】
(iii)第3の実施形態
図3を用いて本発明の第3の実施形態である脱酸素剤包装体13の製造方法について説明する。
一方の外層として、基材(A)21の内面側の少なくとも周縁に生分解性接着剤(D)24を塗布、又は塗布後乾燥した改質紙又は不織布が使用される。
この場合、生分解性接着剤(D)は基材(A)の周縁部以外にも塗布することは可能であるが、製袋時の操作性を考慮すると、周縁部のみに塗布することが好ましい。
4方シールにより包装体を形成する場合には、一方の外層を構成する、生分解性接着剤(D)24が塗布された基材(A)21と他方の外層を構成する、通気孔を有する生分解性プラスチックフィルム(B)22とを互いに対向するように重ね合わせた状態で、その3方の周縁を熱接着等により貼り合わせて袋状とし、脱酸素剤34を該袋状物に収納する。その後、接着されていない残りの1方向の外層周縁を熱接着して貼り合わせ部27とすることにより、通気性を有する包装体33が形成されて、脱酸素剤34が収納された脱酸素剤包装体13を作製することができる。
【実施例0039】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
洋紙と、通気孔を有するポリブチレンサクシネートフィルムを重ねて三方の周縁面を熱融着して袋状にした後、該袋状物の中に脱酸素剤である鉄粉を収納し、その後残りの一方の周縁面を熱融着によりシールして、脱酸素材包装体を作製し、該包装体の酸素吸収性と生分解性を評価した。
【0040】
具体的には、坪量が50g/mで、サイズが縦50mm、横50mmの洋紙に、縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔が設けられた、前記洋紙と同じサイズで厚さが40μmのヒートシール性を有するポリブチレンサクシネート(三菱ケミカル(株)製、商品名:バイオPBS FZ91)のフィルムを互いに対向するように重ね合わせて、三方の周縁面の幅3mmを140℃の加熱下で加圧により熱融着して袋状とした。その後、該袋状物の中に脱酸素剤の鉄粉3gを収納し、残りの一方の周縁面を前記と同様に140℃で熱融着してシールし、脱酸素剤包装体を作製した。
得られた脱酸素剤包装体と水10mlを含浸させた綿を500ml容積のガラス瓶に投入して密栓した。25℃で20時間放置した後、前記ガラス瓶内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定した。尚、生分解性の評価は後述する。
【0041】
(実施例2)
洋紙と、通気孔が設けられたポリ乳酸フィルムの内面側に通気孔が設けられたポリブチレンアジペートテレフタレートを重ねた積層フィルムとが互いに相対するように重ねられた状態で三方の周縁面を熱融着して袋状にして、前記洋紙とポリブチレンアジペートテレフタレートフィルム間に脱酸素剤を収納した後、残りの周縁の開口部を熱融着によりシールして、脱酸素剤包装体を作製し、該包装体の酸素吸収性を評価した。
【0042】
具体的には、坪量が50g/mでサイズが縦50mm、横50mmの洋紙に、縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔を有する厚さが40μmで同サイズのポリ乳酸フィルム(ユニチカ(株)製、商品名:テラマックTP4000)の内側に、縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔を有する厚さが30μmのポリブチレンアジペートテレフタレート(浙江華峰環保材料有限公司製)のフィルムを積層した2層フィルムを重ね合わせた。次に、前記洋紙と2層からなる積層フィルムとが互いに相対するように重ねられた状態で、三方の周縁面の幅3mmを140℃の加熱下で圧力をかけ、熱融着して袋状とした。
前記洋紙とポリブチレンアジペートテレフタレートフィルムとの間に脱酸素剤であるアスコルビン酸ソーダ粉末5gを収納し、残りの一方の周縁面を同様に140℃で加圧下に熱融着してシールした。このようにして作製した脱酸素剤包装体と水10mlを含浸させた綿を500ml容積のガラス瓶に投入し密栓した。25℃で20時間放置した後のガラス瓶内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定した。尚、生分解性の評価は後述する。
【0043】
(実施例3)
実施例3において、洋紙の内面側の周縁にポリ乳酸系生分解性接着剤を塗布して乾燥させて得た改質洋紙に、通気孔を有するブテンジオールビニルアルコールコポリマーフィルムを互いに相対するように重ねた後三方の周縁面を熱接着し袋状とした。前記袋状内に脱酸素剤を収納した後、未シール部を熱接着によりシールし、脱酸素剤包装体を作製した。
具体的には、坪量が50g/mでサイズが縦50mm、横50mmの洋紙の内面側の周縁に、ポリ乳酸系生分解性接着剤(東洋モートン(株)製、商品名:EA-H4770)を水に分散させて25g/mの割合で塗布後乾燥してホットメルト接着剤とした、改質洋紙を得た。該改質洋紙に、縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔を有する厚さが40μmで同サイズのブテンジオールビニルアルコールコポリマー(三菱ケミカル製、商品名:GポリマーBVE8049)のフィルムを互いに相対するように重ねて、三方の周縁面の幅3mmを140℃に加熱して熱接着し袋状とした。その後、該袋状物内に脱酸素剤の鉄粉3gを挿入し、残った未シール一方の周縁面を同様に140℃で熱接着し、脱酸素剤包装体を得た。
このようにして作製した脱酸素剤包装体と水10mlを含浸させた綿を500ml容積のガラス瓶に投入し密栓した。25℃で20時間放置した後のガラス瓶内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定した。
【0044】
(実施例4,5)
実施例4,5において、上記実施例3において改質洋紙を作製する際に使用したポリ乳酸系生分解性接着剤の代わりに、実施例4では生分解性ウレタン接着剤(トーヨーケム(株)製、商品名:EKK20-143)を使用し、実施例5では化工澱粉コーンポール(日本コーンスターチ(株)製、でん粉を変性して得られる生分解性バイオマスプラスチック)をそれぞれ水に分散させて上記と同濃度25g/mの割合で塗布して乾燥させてホットメルト接着剤とした以外は実施例3と同様にして脱酸素剤包装体を作製した。
次に、上記実施例3と同様に、作製した脱酸素剤包装体と水10mlを含浸させた綿を500ml容積のガラス瓶に投入し密栓した。25℃で20時間放置した後のガラス瓶内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定した。
【0045】
(比較例1)
坪量50g/mの洋紙の内面側の周縁にホットメルト接着剤(東洋モートン(株)製ヒートシール剤、商品名:AD-33G1A)を塗布して乾燥した後、該洋紙を縦50mm、横50mmに切り取り、縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔を設けて改質洋紙を得た。該改質洋紙に、縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔を有する厚さが40μmで同サイズのポリエチレンフィルム(日本ポリエチレン(株)製、商品名:ノバッテック(登録商標)LD LF405)を互いに相対するように重ね合わせて、三方の周縁面の幅3mmを140℃に加熱して熱接着して袋状とした。その後、該袋状物内に脱酸素剤の鉄粉3gを収納し、残った一方の周縁面を同様に140℃で熱接着してシールした。このようにして作製した脱酸素剤包装体と、水10mlを含浸させた綿を500ml容積のガラス瓶に投入して密栓した。25℃で20時間放置した後のガラス瓶内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定した。
【0046】
(比較例2)
坪量50g/mの洋紙の内面側の周縁にホットメルト接着剤(東洋モートン(株)製ヒートシール剤、商品名:AD-33G1A)を塗布後乾燥し、次に該接着剤が塗布された洋紙を縦50mm、横50mmに切り取り、その後縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔を設けて改質洋紙を作製した。
前記改質洋紙に、縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔を有する厚さが25μmで同サイズのPET製フィルム(日榮新化(株)製、商品名:白コート25-SN)を互いに相対するように重ね合わせて、三方の周縁面の幅3mmを140℃で熱接着して袋状とした。その後、該袋状物内に脱酸素剤の鉄粉3gを収納し、残った未シールの周縁面を同様に140℃で熱接着してシールした。このようにして作製した脱酸素剤包装体と水10mlを含浸させた綿を500ml容積のガラス瓶に投入し密栓した。25℃で20時間放置した後のガラス瓶内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定した。
上記実施例1~5で測定したガラス瓶内の酸素濃度測定結果を表1にまとめて示す。
【0047】
(コンポスト試験)
上記実施例1~5、及び比較例1~2で作製した脱酸素剤包装体についてコンポスト試験により生分解性を評価した。
825μm(30メッシュ)の篩を通過し、かつ425μm(20メッシュ)の篩を不通過の海砂を105℃で3時間乾燥させた。前記乾燥して得られた海砂320g、105℃で3時間乾燥させた牛糞堆肥60g、および純水166gを混合してコンポストを作製した。得られたコンポスト中に上記実施例1~5で作製した、包材が生分解性を有する脱酸素剤包装体、及び比較例1~2で作製した包材が非生分解性である脱酸素剤包装体それぞれを埋め、58℃100%RHの雰囲気下で保存した。
保管開始10週間後、20週間後にそれぞれ取り出して生分解性を評価した。
評価基準は下記の通りである。
〇:脱酸素剤包装体に穴が開くなどの生分解の進行と黄変が観察された。
△:脱酸素剤包装体に穴が開くなどの生分解の進行は認められたが、黄変は観察されなかった。
×:脱酸素剤包装体に穴が開くなどの分解の進行も黄変も観察されなかった。
評価結果をまとめて表1に示す。
【0048】
【表1】
【符号の説明】
【0049】
11 脱酸素剤包装体
12 脱酸素剤包装体
13 脱酸素剤包装体
21 基材(A)
22 生分解性プラスチックフィルム(B)
23 生分解性プラスチックフィルム(C)
24 生分解性接着剤(D)
25 一方の外層周縁と他方の外層周縁の貼り合わせ部
26 一方の外層周縁と他方の外層周縁の貼り合わせ部
27 一方の外層周縁と他方の外層周縁の貼り合わせ部
31 包装体
32 包装体
33 包装体
34 脱酸素剤

図1
図2
図3