(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047179
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】着座構造物
(51)【国際特許分類】
A61G 5/14 20060101AFI20240329BHJP
A61G 5/02 20060101ALI20240329BHJP
A61G 5/12 20060101ALI20240329BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A61G5/14 711
A61G5/02
A61G5/12 701
B60N2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152655
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】502327953
【氏名又は名称】三貴ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】紙屋 潤一郎
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087BB25
(57)【要約】
【課題】使用者が着座する着座支持部を、使用者が立上り易くする立上り位置へ昇動させると共に、該昇動させる際に使用者に恐怖感が想起されてしまうことを抑制し得る着座構造物を提案する。
【解決手段】着座シート部31が差し渡された左右一対の座フレーム杆部12が、ベースフレーム部11に固結された前側杆部41と、着座位置と立上り位置とに変換される後側杆部42とに分離されてなり、後側杆部42を、位置変換機構51によって、着座位置と立上り位置とで後傾姿勢または水平姿勢に保持すると共に、水平姿勢よりも前傾させず且つ着座位置の姿勢よりも後傾させた中間姿勢を介して、着座位置と立上り位置とに昇降させる構成である。本構成によれば、左右の後側杆部42に差し渡されたシート主部34で、使用者が安定して着座でき、昇降時に恐怖感が想起されることを抑制できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレーム部と、
前記ベースフレームに設けられた、使用者の臀部を支持する着座支持部と
を備えた着座構造物において、
前記着座支持部を、所定の着座位置と該着座位置の上方に位置する立上り位置との間で昇降させる昇降駆動手段と、
前記昇降駆動手段を駆動させる昇降操作手段と、
前記着座支持部を、前記着座位置と前記立上り位置とで水平姿勢または後傾姿勢に夫々保つと共に、前記昇降駆動手段の駆動により、前記着座支持部を、前記水平姿勢よりも前傾させず且つ前記着座位置の姿勢に比して後傾させる中間姿勢を介して、該着座位置と前記立上り位置とに位置変換させる位置変換機構と
を備えたものであることを特徴とする着座構造物。
【請求項2】
ベースフレーム部と、
前記ベースフレーム部に左右方向に所定間隔をおいて並設された、前後方向に沿う左右一対の座フレーム杆部と、
左右の座フレーム杆部に支持され、使用者の臀部を支持する着座シート部と
を備えた着座構造物において、
前記左右の座フレーム杆部は、
前後に分離された前側杆部と後側杆部とにより夫々構成され、前記着座シート部が少なくとも該後側杆部により支持されたものであって、
前記前側杆部が、前記ベースフレーム部に固定され、
前記後側杆部が、前記前側杆部の直後方に位置する着座位置と、該着座位置よりも前側上方に位置する立上り位置とに位置変換可能に設けられたものであり、
前記後側杆部を前記着座位置と前記立上り位置との間で昇降させる昇降駆動手段と、
前記昇降駆動手段を駆動させる昇降操作手段と、
前記後側杆部を、前記着座位置と前記立上り位置とで水平姿勢または後傾姿勢に夫々保つと共に、前記昇降駆動手段を駆動させることにより、前記後側杆部を、前記水平姿勢よりも前傾させず且つ前記着座位置の姿勢に比して後傾させる中間姿勢を介して、該着座位置と前記立上り位置とに位置変換させる位置変換機構と
を備えたものであることを特徴とする着座構造物。
【請求項3】
着座シート部は、
左右の座フレーム杆部の後側杆部に夫々連結されて、左右の後側杆部に差し渡されたシート主部と、
前記シート主部から前方へ延成され、左右の座フレーム杆部に連結されないシート傾動部と、
前記シート傾動部から延成され、左右の座フレーム杆部の前側杆部に夫々連結されて左右の前側杆部に差し渡されたシート前固定部と
を備えたものであることを特徴とする請求項2に記載の着座構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が容易に着座できると共に、着座した使用者が容易に立上ることができる着座構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車いすは、高齢者や下肢に障害を持つ障害者などが使用することから、着座する際や立ち上がる際に腕の力を使ったり介助者の助けを要したりする。そのため、腕力の弱い者は、介助者の助けを借りられない状況で、車いすに座ったり該車いすから立ち上がったりすることが困難であった。こうした問題を解決するために、例えば特許文献1には、本体フレームに回動自在に支持された前座部と該前座部に蝶番で連結された後座部とにより座部が構成され、該後座部をガススプリングにより昇降動させることによって、座部を略水平な着座位置と該着座位置に比して前傾させた立上り位置とに変換させる構成が提案されている。かかる従来構成によれば、座部を立上り位置とすることで、該座部に座り易くなると共に立上り易くなることから、介助者の助けを借りられない状況であっても、比較的容易に着座したり立ち上がったりできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した従来構成(特許文献1の構成)にあっては、後座部を昇動させることによって座部を着座位置から立上り位置に変換することから、該座部が水平な着座位置から徐々に前傾して立上り位置に至る。このように座部が前傾しながら昇動すると、使用者の腰位置が高くなるにつれて、前方へ降下し易くなることから、該座部に座っている使用者の姿勢が不安定になる。特に、車いすを使用する前記高齢者や障害者は、前記不安定な姿勢を下半身で支えることが難しく、座部の前傾により恐怖感が想起されてしまう虞があった。
【0005】
本発明は、座部が着座位置から昇動する際に、該座部に着座した使用者の姿勢を安定させることができ、該使用者に恐怖感が想起されてしまうことを抑制し得る着座構造物を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一発明は、ベースフレーム部と、前記ベースフレームに設けられた、使用者の臀部を支持する着座支持部とを備えた着座構造物において、前記着座支持部を、所定の着座位置と該着座位置の上方に位置する立上り位置との間で昇降させる昇降駆動手段と、前記昇降駆動手段を駆動させる昇降操作手段と、前記着座支持部を、前記着座位置と前記立上り位置とで水平姿勢または後傾姿勢に夫々保つと共に、前記昇降駆動手段の駆動により、前記着座支持部を、前記水平姿勢よりも前傾させず且つ前記着座位置の姿勢に比して後傾させる中間姿勢を介して、該着座位置と前記立上り位置とに位置変換させる位置変換機構とを備えたものであることを特徴とする着座構造物である。
ここで、第一発明の着座構造物は、使用者が着座できる構造のものであれば、車いす、キャスタ付きのいす、所定場所に設置されるいすやソファ、自動車用のいす、劇場用のいす等のいずれにも適用できる。
【0007】
かかる構成にあっては、着座支持部を立上り位置とすることにより、該着座支持部に着座した使用者が立上り易くなると共に、該着座支持部に使用者が着座し易くなる。そして、着座支持部が着座位置と立上り位置とに位置変換する間で前傾しないことに加えて、着座位置から中間姿勢で後傾した後に立上り位置へ昇動することから、該着座位置と立上り位置との間で使用者が着座支持部に安定して着座し続けられる。これにより、着座支持部が位置変換する間に、使用者に恐怖感を想起させることを抑制でき、使用者は、該着座支持部を昇降させる操作を安心して行うことができる。
【0008】
本発明の第二発明は、ベースフレーム部と、前記ベースフレーム部に左右方向に所定間隔をおいて並設された、前後方向に沿う左右一対の座フレーム杆部と、左右の座フレーム杆部に支持され、使用者の臀部を支持する着座シート部とを備えた着座構造物において、 前記左右の座フレーム杆部は、前後に分離された前側杆部と後側杆部とにより夫々構成され、前記着座シート部が少なくとも該後側杆部により支持されたものであって、前記前側杆部が、前記ベースフレーム部に固定され、前記後側杆部が、前記前側杆部の直後方に位置する着座位置と、該着座位置よりも前側上方に位置する立上り位置とに位置変換可能に設けられたものであり、前記後側杆部を前記着座位置と前記立上り位置との間で昇降させる昇降駆動手段と、前記昇降駆動手段を駆動させる昇降操作手段と、前記後側杆部を、前記着座位置と前記立上り位置とで水平姿勢または後傾姿勢に夫々保つと共に、前記昇降駆動手段を駆動させることにより、前記後側杆部を、前記水平姿勢よりも前傾させず且つ前記着座位置の姿勢に比して後傾させる中間姿勢を介して、該着座位置と前記立上り位置とに位置変換させる位置変換機構とを備えたものであることを特徴とする着座構造物である。
ここで、第二発明の着座構造物は、前述した第一発明と同様に様々ないすやソファに適用できる。
【0009】
かかる構成にあっては、座フレーム杆部の後側杆部に着座シート部を支持することから、該後側杆部の昇動に伴って該着座シート部も昇動する。そのため、座フレーム杆部の後側杆部を立上り位置とすることにより、着座シート部に着座した使用者が立上り易くなると共に、該着座シート部に使用者が着座し易くなる。そして、後側杆部が着座位置から立上り位置までの間で前傾しないことに加えて、後側杆部が着座位置の姿勢から中間姿勢で後傾した後に立上り位置へ昇動することから、該着座位置と立上り位置との間で使用者が着座シート部に安定して着座し続けられる。これにより、着座シート部を昇降させる間に、使用者に恐怖感を想起させることを抑制でき、使用者は、該着座シート部を昇降させる操作を安心して行うことができる。
【0010】
前述した本発明の着座構造物にあって、着座シート部は、左右の座フレーム杆部の後側杆部に夫々連結されて、左右の後側杆部に差し渡されたシート主部と、前記シート主部から前方へ延成され、左右の座フレーム杆部に連結されないシート傾動部と、前記シート傾動部から延成され、左右の座フレーム杆部の前側杆部に夫々連結されて左右の前側杆部に差し渡されたシート前固定部とを備えたものである構成が提案される。
【0011】
かかる構成にあっては、座フレーム杆部の後側杆部を昇動させると、着座シート部のシート主部が該後側杆部に伴って昇動する一方、前側杆部に連結されたシート前固定部が位置固定されていることから、シート傾動部が前方へ傾斜していく。これにより、着座シート部のシート主部に着座した使用者の大腿部が、該着座シート部のシート傾動部に従って前傾する(使用者の膝が伸びる)ため、立上り位置で一層立上り易くなる。
【発明の効果】
【0012】
第一発明の着座構造物によれば、着座支持部が着座位置と立上り位置とに昇降する間で、該着座支持部に使用者が安定して着座し続けられるため、該昇降する際に使用者に恐怖感が想起されることを抑制できる。
【0013】
第二発明の着座構造物によれば、座フレーム杆部の後側杆部が着座位置と立上り位置とに昇降する間で、該後側杆部に支持された着座シート部に使用者が安定して着座し続けられるため、該昇降する際に使用者に恐怖感が想起されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】車いす1の一部を省略して示す側面図である。
【
図3】座フレーム杆部12の後側杆部42が着座位置から立上り位置へ変換する過程を示す説明図である。
【
図6】
図5から続く、後側杆部42が立上り位置にある状態を示す説明図である。
【
図7】別例の車いす101の、着座支持部105が着座位置から立上り位置へ変化する過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる着座構造物を具体化した実施例の車いす1を、以下で詳細に説明する。
本実施例の車いす1は、
図1,2に示すように、金属製パイプまたはFRP製パイプ等で構成された本体フレーム2を備える。本体フレーム2は、左右の主車輪3を支持するベースフレーム部11と、該ベースフレーム部11に支持された左右一対の座フレーム杆部12と、左右の座フレーム杆部12に連結された左右一対の背もたれフレーム部14とを備える。これら各フレーム部11~14は、主に金属製パイプまたはFRP製パイプなどで形成されている。
【0016】
ベースフレーム部11は、左右一対のベースサイドフレーム部21と、左右のベースサイドフレーム部21に差し渡された複数のベース連結杆部22~26とを備え、左右のベースサイドフレーム部21がベース連結杆部22~26によって左右方向に所定間隔をおいて対設されてなる。ベースサイドフレーム部21は、上側フレーム部21a、下側フレーム部21b、前側フレーム部21c、および後側フレーム部21dとが一体的に固結されてなり、後側フレーム部21dに図示しない軸受け部を介して前記主車輪3が配設されている。そして、前側フレーム部21cには、キャスタ5とフットレスト部8とが取り付けられた前脚フレーム部15が連結されている。また、左右の前側フレーム部21cに、前記したベース連結杆部22~26が上下方向に間隔をおいて差し渡されている。
【0017】
左右のベースサイドフレーム部21には、前記した座フレーム杆部12が支持されており、左右の座フレーム杆部12が左右方向に所定間隔をおいて配置される。そして、左右の座フレーム杆部12には、着座シート部31が差し渡されている。同様に、各座フレーム杆部12に夫々連結された左右の背もたれフレーム部14が、左右方向に所定間隔をおいて配置されており、左右の背もたれフレーム部14に、図示しない背シート部が差し渡されている。この背シート部によって、使用者の背を支持する背もたれ部(図示せず)が構成されている。左右の背もたれフレーム部14には、介助者により操作される操作ハンドル9が夫々取り付けられている。また、肘掛け部19が背もたれフレーム部14と座フレーム杆部12とに支持されている。尚、前記した座フレーム杆部12と着座シート部31とは、本発明の要部にかかることから、詳細は後述する。
【0018】
さらに、本実施例の車いす1は、前記フットレスト部8の下側に、転倒防止部17が上下方向へ伸縮自在に設けられている。この転倒防止部17によれば、使用者が誤ってフットレスト部8上で立ち上った場合に、前方へ転倒することを防ぐができる。尚、転倒防止部17は、所望の高さ位置で位置決めでき、床との間隔を適宜調整することができる。
【0019】
本発明の要部について説明する。
前記した左右の座フレーム杆部12は、前後に分離された前側杆部41と後側杆部42とから夫々構成されている。前側杆部41は、前記前脚フレーム部15に一体的に設けられており、前記ベースサイドフレーム部21の前側フレーム部21cの上部に固結されている。一方、後側杆部42は、位置変換機構51を介してベースサイドフレーム部21に取り付けられており、該位置変換機構51によって、後側杆部42を前後方向に略一直線状に列なる着座位置(
図2参照)と該着座位置の前側上方に位置する立上り位置(
図6参照)とに位置変換可能に設けられている。ここで、後側杆部42が着座位置にある状態で、該後側杆部42と前側杆部41とは前後方向に所定間隔をおいて離間されている。尚、後側杆部42の後部に前記背もたれフレーム部14が連結されていることから、該背もたれフレーム部14が、後側杆部42と一体的に動く。
【0020】
左右の座フレーム杆部12には、
図2に示すように、着座シート部31が差し渡されており、該着座シート部31の両側縁部が、左右の前側杆部41と後側杆部42とに夫々固結されている。ここで、着座シート部31は、平面視で矩形状を成し、その前部が左右方向に亘って折り返され、折り返された部位の両側縁部が、左右の前側杆部41に複数のビス(図示せず)により夫々固結されている。そして、着座シート部31の両側縁部は、少なくとも後側杆部42の前端部と後端部とに、ビス(図示せず)により夫々固結されている。こうした着座シート部31は、左右の前側杆部41に夫々固結されて差し渡されたシート前固定部32と、前側杆部41に固結されていないシート傾動部33と、左右の後側杆部42に夫々固結されて差し渡されたシート主部34とから構成されており、シート前固定部32とシート傾動部33とシート主部34とが前後方向に連成されてなる。そして、着座シート部31は、シート前固定部32やシート傾動部33に比してシート主部34の前後長が長く構成されており、該シート主部34によって、車いす1に着座する使用者の臀部を支持する。
【0021】
前記した位置変換機構51は、第一固結部52、第二固結部53、第一リンク部材54、および第二リンク部材55を備える。第一固結部52は、正面視で略U字形に形成されており、その両端部が左右の後側杆部42の前端寄り部位に夫々固結されて、該後側杆部42の下方に突出されている。同様に、第二固結部53は、正面視で略U字形に形成されており、その両端部が左右の後側杆部42の後部に夫々固結されて、該後側杆部42の下方に突出されている。第二固結部53は、第一固結部52よりも下方に突出されている。また、第一リンク部材54は、一方の端部が前記第一固結部52の下部に回転自在に連結されると共に、他方の端部が前記したベースフレーム部11のベース連結杆部22に回転自在に連結される。第二リンク部材55は、一方の端部が前記第二固結部53の下部に回転自在に連結されると共に、他方の端部が前記したベースフレーム部11のベース連結杆部23に回転自在に連結される。そして、第二リンク部材55は、第一リンク部材54に比して長尺である。
【0022】
こうした位置変換機構51により、座フレーム杆部12の後側杆部42は、前記着座位置で所定の後傾姿勢に保持されると共に、前記立上り位置で水平姿勢に保持される。そして、着座位置と立上り位置とに位置変換する際に、該着座位置と立上り位置との間で、後側杆部42を、該着座位置の後傾姿勢よりも後傾させた姿勢(以下、中間姿勢)とする。すなわち、位置変換機構51は、後側杆部42を着座位置から立上り位置へ位置変換させる際に、該後側杆部42を着座位置の後傾姿勢から徐々に後傾させていき、前記中間姿勢とした後に、該中間姿勢から後傾の角度を徐々に小さくさせていき、立上り位置の水平姿勢とする。逆に、立上り位置から着座位置へ位置変換させる際には、後側杆部42を、立上り位置の水平姿勢から徐々に後傾させていき、前記中間姿勢とした後に、該中間姿勢から後傾の角度を徐々に小さくさせていき、着座位置の後傾姿勢とする。このように位置変換機構51は、後側杆部42を着座位置と立上り位置との間で昇降動させると共に、該後側杆部42を、水平よりも前傾させること無く、中間姿勢を介して着座位置の後傾姿勢と立上り位置の水平姿勢とに姿勢変化させる。
【0023】
さらに、位置変換機構51による後側杆部42の位置変換では、該後側杆部42の前端と前記前側杆部41に固結された前記シート前固定部32との距離(前記シート傾動部33の前後方向長に相当)が略一定に保たれるように、該後側杆部42を、該シート前固定部32を中心とする円弧状に昇降動させる。これにより、後側杆部42の位置変換に伴って、着座シート部31のシート傾動部33が傾動する(
図3~6参照)。
【0024】
本実施例にあって、着座位置における後側杆部42の後傾姿勢は、水平に対して約2.5度後傾させた姿勢に設定され、中間姿勢は、水平に対して約4度後傾させた姿勢に設定されている。尚、座フレーム杆部12の前側杆部41は、該着座位置の後側杆部42と同様に後傾されている(水平に対して約2.5度後傾されている)。
【0025】
また、本体フレーム2には、座フレーム杆部12の後側杆部42を着座位置と立上り位置とに昇降させるアクチュエータ61が配設されている。このアクチュエータ61は、一端が、前記したベースフレーム部11の前側フレーム部21cの下部(ベース連結杆部23よりも下方部位)に回転自在に連結されると共に、他端が、前記第一固結部52と第二固結部53とを介して後側杆部42に固結された支持部56に回転自在に連結されている。ここで、アクチュエータ61は、長手方向に伸縮する電動アクチュエータであり、一般的に知られた構成のものを適用できる。そして、アクチュエータ61は、昇降操作部62の操作によって伸縮駆動し、該伸縮駆動に伴って後側杆部42を着座位置と立上り位置との間で昇降作動させる。この昇降操作部62は、使用者や介助者などにより操作でき、前記した背もたれフレーム部14に設けられた吊持部20や前記した肘掛け部19に、吊り下げ可能となっている。尚、本実施例の車いす1には、アクチュエータ61に電力を供給するバッテリ(図示せず)が取り付けられる。
【0026】
こうしたアクチュエータ61の伸縮駆動により座フレーム杆部12の後側杆部42を着座位置と立上り位置とに位置変換させる態様について、以下に説明する。
図2,3(A)に示すように、座フレーム杆部12の後側杆部42が着座位置にある状態では、該後側杆部42が前記後傾姿勢(約2,5度後傾した姿勢)で保持される。そして、座フレーム杆部12の前側杆部41と後側杆部42とが略一直線状に列なっていることから、これらに差し渡された着座シート部31が、座フレーム杆部12と同じ後傾の状態で保たれる。
【0027】
昇降操作部62が操作されると、アクチュエータ61が伸長駆動して、
図3(A)~(B)に示すように、後側杆部42が着座位置から昇動する。ここで、アクチュエータ61の伸長駆動が位置変換機構51により変換されて、後側杆部42が、着座位置の後傾姿勢よりも後傾しながら斜め前方へ昇動する。そして、着座シート部31は、後側杆部42に固結されたシート主部34が該後側杆部42に従って後傾しつつ昇動する一方、前側杆部41に固結されたシート前固定部32と該シート主部34との間のシート傾動部33が前方へ徐々に傾斜していく。
【0028】
アクチュエータ61がさらに伸長駆動すると、
図4(A)に示すように、後側杆部42が後傾しつつ斜め前方へ昇動して前記中間姿勢(約4度後傾した姿勢)となる。本実施例にあって、後側杆部42の中間姿勢が、該後側杆部42を最も後傾させた姿勢である。着座シート部31は、シート主部34が後側杆部42の中間姿勢に従って最も後傾する一方、シート傾動部33が前方へさらに傾斜する。
【0029】
アクチュエータ61がさらに伸長駆動すると、
図4(B)に示すように、後側杆部42が、前記中間姿勢に比して後傾を解消しつつ(換言すれば、後傾する角度が徐々に小さくなる)斜め前方へ昇動する。こうした後側杆部42の昇動は、アクチュエータ61の伸長駆動が位置変換機構51により変換されることによって生じている。尚、着座シート部31は、シート主部34が後側杆部42に伴って動く一方、シート傾動部33が前方へさらに傾動する。
【0030】
この後にアクチュエータ61が伸長駆動することによって、
図5(A)~
図5(B)に示すように、後側杆部42が後傾を解消しつつ斜め前方へ昇動していく。そして、
図6に示すように、後側杆部42が立上り位置に位置変換されると、アクチュエータ61が駆動停止する。この立上り位置では、後側杆部42が水平姿勢となり、着座シート部31のシート主部34が該後側杆部42に従って水平姿勢となる。このように後側杆部42は、着座位置から立上り位置へ至る過程で、後傾姿勢から中間姿勢を介して水平姿勢に姿勢変化し、水平姿勢よりも前傾しない。こうした姿勢変化は、前述したように位置変換機構51により生じさせている。また、立上り位置では、着座シート部31のシート傾動部33が最も前方へ傾斜した状態となる。
【0031】
後側杆部42を立上り位置から着座位置へ戻す場合には、昇降操作部62の操作によりアクチュエータ61が短縮駆動し、該後側杆部42を降動させる。この後側杆部42の降動は、前述した昇動と逆の動きである。
【0032】
このように本実施例の車いす1は、座フレーム杆部12の後側杆部42を着座位置と立上り位置とに位置変換させるようにしたものであるから、該後側杆部42に差し渡された着座シート部31のシート主部34に使用者が着座することによって、前記着座位置で安定して座ることができると共に、前記立上り位置に位置変換することによって、使用者がシート主部34に着座し易く且つ立上り易くできる。ここで、後側杆部42は着座位置で後傾姿勢となることから、着座シート部31のシート主部34も該後側杆部42に従って後傾姿勢となるため、使用者が座った状態における安定性が極めて高い。また、後側杆部42が、着座位置から立上り位置へ位置変化する際に、前傾すること無く、前記後傾姿勢から前記中間姿勢を介して水平姿勢に姿勢変化することから、シート主部34に着座した使用者が安定して着座し続けられる。これにより、立上り位置へ昇動する際に、使用者に恐怖感を想起させてしまうことを抑制できる。さらに、立上り位置へ昇動する際に、着座シート部31のシート傾動部33が前方へ傾斜することから、シート主部34に着座した使用者の大腿部を前傾させることができる。これにより、立上り位置で使用者が一層立上り易くなると共に、該立上り位置で使用者が一層着座し易くなる。また、立上り位置で使用者が着座した後に、着座位置へ降動させる際には、シート主部34が後側杆部42に従って後傾していくことから、着座した状態で安定し、該使用者に安心感を想起させることができる。
【0033】
本実施例にあって、車いす1が、本発明にかかる着座構造物に相当する。アクチュエータ61が、本発明にかかる昇降駆動手段に相当し、昇降操作部62が、本発明にかかる昇降操作手段に相当する。また、着座シート部31のシート主部34が、本発明にかかる着座支持部に相当する。
【0034】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、前述の実施例における各部の寸法形状は、適宜変更することができる。
【0035】
実施例の構成では、座フレーム杆部の後側杆部を着座位置で後傾姿勢とし且つ立上り位置で水平姿勢としたものであるが、これに限らず、例えば、着座位置と立上り位置との両方で後側杆部を水平姿勢として、後傾させた中間姿勢を介して着座位置と立上り位置とに位置変換させるようにしても良い。また、着座位置と立上り位置との両方で後側杆部を後傾姿勢とし、着座位置より後傾の中間姿勢を介して位置変換させるようにしても良い。ここで、着座位置と立上り位置とでは、後傾する角度が同じであっても良いし、異なっていても良い。さらにまた、後側杆部を着座位置で水平姿勢とし且つ立上り位置で後傾姿勢とすることもできる。この場合には、立上り位置の後傾姿勢よりも後傾させた中間姿勢を介して位置変換させても良いし、着座位置から立上り位置まで徐々に後傾させるようにしても良い。
【0036】
実施例の構成では、位置変換機構が、第一固結部52と第二固結部53と第一リンク部材54と第二リンク部材55とにより構成されるものとしたが、これに限らず、実施例と同様に、座フレーム杆部の後側杆部を着座位置と立上り位置との間で姿勢変換させる構成であれば、適宜変更可能である。
【0037】
実施例の構成は、電動アクチュエータを用いて座フレーム杆部の後側杆部を昇降動させる構成であるが、これに限らず、電動アクチュエータに代えて、ガススプリングやエアシリンダなどを適用することも可能である。
【0038】
また、実施例の別例として、
図7,8に示すように、車いす101は、左右方向に所定間隔をおいて対設された左右一対の座フレーム杆部102と、左右の座フレーム杆部102に差し渡された着座シート部103とを備え、該着座シート部103によって、使用者の臀部を支持する着座支持部105が構成されている。そして、実施例と同様の位置変換機構51とアクチュエータ61とを備え、該アクチュエータ61の伸縮駆動が位置変換機構51によって座フレーム杆部102の昇降動と姿勢変化に変換される。この別例の構成では、着座支持部105が座フレーム杆部102と一体的に昇降動され、アクチュエータ61の駆動により、該着座支持部105が着座位置と立上り位置とに位置変換される。着座位置では、
図7(A)に示すように、座フレーム杆部102と着座支持部105とが後傾姿勢であり、立上り位置では、
図8に示すように、座フレーム杆部102と着座支持部105とが後傾姿勢である。そして、座フレーム杆部102と着座支持部105とは、
図7~8に示すように、前記位置変換機構51により、前傾すること無く且つ着座位置の後傾姿勢よりも後傾の中間姿勢(
図7(B))を介して、着座位置と立上り位置とに位置変換される。こうした別例の構成にあっても、着座位置で安定して座ることができると共に、立上り位置で立上り易くかつ着座し易い。そして、着座位置から立上り位置へ位置変換される際に、着座支持部105が前傾しないことから、使用者に恐怖感が想起されることを抑制できる。尚、この別例は、座フレーム杆部102と着座シート部103とが異なる以外、実施例と同じ構成であり、同じ符号を記している。
【符号の説明】
【0039】
1,101 車いす(着座構造物)
2 本体フレーム
3 主車輪
5 キャスタ
8 フットレスト部
9 操作ハンドル
11 ベースフレーム部
12,102 座フレーム杆部
14 背もたれフレーム部
15 前脚フレーム部
17 転倒防止部
19 肘掛け部
20 吊持部
21 ベースサイドフレーム部
21a 上側フレーム部
21b 下側フレーム部
21c 前側フレーム部
21d 後側フレーム部
22~26 ベース連結杆部
31,103 着座シート部
32 シート前固定部
33 シート傾動部
34 シート主部(着座支持部)
41 前側杆部
42 後側杆部
51 位置変換機構
52 第一固結部
53 第二固結部
54 第一リンク部材
55 第二リンク部材
56 支持部
61 アクチュエータ
62 昇降操作部
105 着座支持部