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特開2024-47189自動操舵システム、携帯端末及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047189
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】自動操舵システム、携帯端末及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240329BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240329BHJP
【FI】
A01B69/00 301
A01B69/00 303M
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152678
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】林田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】鶴原 優太
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA03
2B043AB20
2B043BA02
2B043BB01
2B043BB06
2B043BB14
2B043DA04
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA03
2B043EA32
2B043EB04
2B043EB05
2B043EB12
2B043EB15
2B043EB18
2B043EC02
2B043EC14
2B043EC15
2B043ED02
2B043EE01
2B043EE05
2B043EE06
2B043EE08
5H301AA03
5H301BB01
5H301BB02
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD17
5H301GG09
5H301GG16
5H301HH02
(57)【要約】
【課題】作業車両側の装備や制御負担を軽減し、自動操舵システムの大幅なコストダウンを実現する。
【解決手段】トラクタTは、アクチュエータの動力で機体を操舵する操舵装置10と、操舵装置10を制御する車両側制御部15と、携帯端末12と通信可能な車両側通信装置16と、を備え、携帯端末12は、センサ類Sと、センサ類Sの検出情報を入力する端末側制御部18と、トラクタTと通信可能な端末側通信装置20と、を備え、端末側制御部18は、センサ類Sの検出情報に基づいて、車両位置及び周辺環境を推定し、車両位置及び周辺環境に基づいて、トラクタTの目標作業経路Kを生成し、車両位置及び目標作業経路Kに基づいて、トラクタTの目標操舵角φを算出し、目標操舵角φをトラクタTに送信し、車両側制御部15は、携帯端末12が送信した目標操舵角φとなるように操舵装置10を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を作業走行する作業車両と、
前記作業車両に取り付けられる携帯端末と、を備える自動操舵システムであって、
前記作業車両は、
アクチュエータの動力で前記作業車両を操舵する操舵装置と、
前記操舵装置を制御する車両側制御部と、
前記携帯端末と通信可能な車両側通信装置と、を備え、
前記携帯端末は、
センサ類と、
前記センサ類の検出情報を入力する端末側制御部と、
前記作業車両と通信可能な端末側通信装置と、を備え、
前記端末側制御部は、
前記センサ類の検出情報に基づいて、車両位置及び周辺環境を推定する車両位置・周辺環境推定手段と、
前記車両位置及び前記周辺環境に基づいて、前記作業車両の目標作業経路を生成する目標作業経路生成手段と、
前記車両位置及び前記目標作業経路に基づいて、前記作業車両の目標操舵角を算出する目標操舵角算出手段と、
前記目標操舵角を前記端末側通信装置を介して前記作業車両に送信する目標操舵角送信手段と、を備え、
前記車両側制御部は、
前記携帯端末が送信した前記目標操舵角を前記車両側通信装置を介して受信する目標操舵角受信手段と、
受信した前記目標操舵角となるように前記操舵装置を制御する自動操舵制御手段と、を備えることを特徴とする自動操舵システム。
【請求項2】
前記周辺環境は、前記圃場の平面形状であり、
前記目標作業経路は、直線経路であり、
前記目標作業経路生成手段は、前記圃場の平面内に並列する複数の前記目標作業経路を生成することを特徴とする請求項1に記載の自動操舵システム。
【請求項3】
前記センサ類には、
前記作業車両の進行方向を撮影可能なカメラと、
前記作業車両の姿勢を検出可能な姿勢センサと、が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動操舵システム。
【請求項4】
前記センサ類には、さらに、対象物までの距離を検出する距離センサが含まれることを特徴とする請求項3に記載の自動操舵システム。
【請求項5】
圃場を作業走行する作業車両に取り付けられる携帯端末であって、
センサ類と、
前記センサ類の検出情報を入力する端末側制御部と、
前記作業車両と通信可能な端末側通信装置と、を備え、
前記端末側制御部は、
前記センサ類の検出情報に基づいて、車両位置及び周辺環境を推定する車両位置・周辺環境推定手段と、
前記車両位置及び前記周辺環境に基づいて、前記作業車両の目標作業経路を生成する目標作業経路生成手段と、
前記車両位置及び前記目標作業経路に基づいて、前記作業車両の目標操舵角を算出する目標操舵角算出手段と、
前記目標操舵角を前記端末側通信装置を介して前記作業車両に送信する目標操舵角送信手段と、を備えることを特徴とする携帯端末。
【請求項6】
圃場を作業走行する作業車両に取り付けられる携帯端末用のプログラムであって、
前記携帯端末は、
センサ類と、
前記センサ類の検出情報を入力する端末側制御部と、
前記作業車両と通信可能な端末側通信装置と、を備え、
前記端末側制御部を、
前記センサ類の検出情報に基づいて、車両位置及び周辺環境を推定する車両位置・周辺環境推定手段と、
前記車両位置及び前記周辺環境に基づいて、前記作業車両の目標作業経路を生成する目標作業経路生成手段と、
前記車両位置及び前記目標作業経路に基づいて、前記作業車両の目標操舵角を算出する目標操舵角算出手段と、
前記目標操舵角を前記端末側通信装置を介して前記作業車両に送信する目標操舵角送信手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタなどの作業車両を自動操舵するための自動操舵システム、携帯端末及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレットなどの携帯端末を利用して作業を行う作業車両が知られている。例えば、特許文献1には、少なくとも一方の面にカメラを有し、かつ少なくとも他方の面にディスプレイを有するスマートフォンと、スマートフォンを支持するスマートフォン支持台と、を備え、カメラが撮影した機体前方の画像とディスプレイ上の絶対位置に表示される指標とをディスプレイに合成表示させる農作業機が開示されている。このような農作業機によれば、作業者の視点のずれに拘わらず、圃場側指標と機体側指標との絶対的な位置関係を認識することができるので、作業者の視点のずれに起因するステアリングハンドルの誤操作を防止し、直進性を向上させることが可能になる。また、特許文献2には、自動操舵可能な乗用田植機において、タブレットを利用して速度超過警告報知や速度アップ報知を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-16377号公報
【特許文献2】特開2021-40542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2では、携帯端末を指標表示や警告報知などに補助的に利用しているに過ぎないため、自動操舵システムの大幅なコストダウンを実現することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、圃場を作業走行する作業車両と、前記作業車両に取り付けられる携帯端末と、を備える自動操舵システムであって、前記作業車両は、アクチュエータの動力で前記作業車両を操舵する操舵装置と、前記操舵装置を制御する車両側制御部と、前記携帯端末と通信可能な車両側通信装置と、を備え、前記携帯端末は、センサ類と、前記センサ類の検出情報を入力する端末側制御部と、前記作業車両と通信可能な端末側通信装置と、を備え、前記端末側制御部は、前記センサ類の検出情報に基づいて、車両位置及び周辺環境を推定する車両位置・周辺環境推定手段と、前記車両位置及び前記周辺環境に基づいて、前記作業車両の目標作業経路を生成する目標作業経路生成手段と、前記車両位置及び前記目標作業経路に基づいて、前記作業車両の目標操舵角を算出する目標操舵角算出手段と、前記目標操舵角を前記端末側通信装置を介して前記作業車両に送信する目標操舵角送信手段と、を備え、前記車両側制御部は、前記携帯端末が送信した前記目標操舵角を前記車両側通信装置を介して受信する目標操舵角受信手段と、受信した前記目標操舵角となるように前記操舵装置を制御する自動操舵制御手段と、を備えることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の自動操舵システムであって、前記周辺環境は、前記圃場の平面形状であり、前記目標作業経路は、直線経路であり、前記目標作業経路生成手段は、前記圃場の平面内に並列する複数の前記目標作業経路を生成することを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の自動操舵システムであって、前記センサ類には、前記作業車両の進行方向を撮影可能なカメラと、前記作業車両の姿勢を検出可能な姿勢センサと、が含まれることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の自動操舵システムであって、前記センサ類には、さらに、対象物までの距離を検出する距離センサが含まれることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、圃場を作業走行する作業車両に取り付けられる携帯端末であって、センサ類と、前記センサ類の検出情報を入力する端末側制御部と、前記作業車両と通信可能な端末側通信装置と、を備え、前記端末側制御部は、前記センサ類の検出情報に基づいて、車両位置及び周辺環境を推定する車両位置・周辺環境推定手段と、前記車両位置及び前記周辺環境に基づいて、前記作業車両の目標作業経路を生成する目標作業経路生成手段と、前記車両位置及び前記目標作業経路に基づいて、前記作業車両の目標操舵角を算出する目標操舵角算出手段と、前記目標操舵角を前記端末側通信装置を介して前記作業車両に送信する目標操舵角送信手段と、を備えることを特徴とする。
また、請求項6の発明は、圃場を作業走行する作業車両に取り付けられる携帯端末用のプログラムであって、前記携帯端末は、センサ類と、前記センサ類の検出情報を入力する端末側制御部と、前記作業車両と通信可能な端末側通信装置と、を備え、前記端末側制御部を、前記センサ類の検出情報に基づいて、車両位置及び周辺環境を推定する車両位置・周辺環境推定手段と、前記車両位置及び前記周辺環境に基づいて、前記作業車両の目標作業経路を生成する目標作業経路生成手段と、前記車両位置及び前記目標作業経路に基づいて、前記作業車両の目標操舵角を算出する目標操舵角算出手段と、前記目標操舵角を前記端末側通信装置を介して前記作業車両に送信する目標操舵角送信手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、携帯端末は、装備されたセンサ類を利用して車両位置及び周辺環境を推定するともに、推定した車両位置及び周辺環境に基づいて目標作業経路を生成し、さらに、車両位置及び目標作業経路に基づいて作業車両の目標操舵角を算出するので、目標操舵角を作業車両に送信すれば、作業車両側で車両位置を検出したり、目標作業経路の生成や目標操舵角の算出を行うことなく、作業車両を自動操舵することが可能になる。その結果、作業車両側の装備や制御負担を軽減し、自動操舵システムの大幅なコストダウンを実現できる。
また、請求項2の発明によれば、推定する周辺環境は、圃場の平面形状であり、目標作業経路は、直線経路であり、目標作業経路生成手段は、圃場の平面内に並列する複数の目標作業経路を生成するので、予め圃場の平面情報を用意しなくても、適切な目標作業経路を生成することができる。
また、請求項3の発明によれば、センサ類には、作業車両の進行方向を撮影可能なカメラと、作業車両の姿勢を検出可能な姿勢センサと、が含まれるので、カメラ及び姿勢センサを備える一般的なスマートフォンやタブレットを使用して安価な自動操舵システムを構築できる。
また、請求項4の発明によれば、センサ類には、さらに、対象物までの距離を検出する距離センサが含まれるので、車両位置や周辺環境の推定精度を高めることができる。
また、請求項5の発明によれば、携帯端末として本発明を実施し、請求項1と同等の効果が得られる。
また、請求項6の発明によれば、プログラムとして本発明を実施し、請求項1と同等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】トラクタの側面図である。
図2】トラクタの操縦部を示す斜視図である。
図3】自動操舵システムの構成を示すブロック図である。
図4】圃場の平面形状、目標作業経路及び操舵角を示す説明図である。
図5】自動操舵システムの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0009】
図1において、1はトラクタT(作業車両)の走行機体であって、該走行機体1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部2と、エンジン動力を変速して走行動力及び作業動力を出力するミッションケース3と、ステアリングハンドル4(図2参照)の操作に応じて操舵され、且つミッションケース3から出力される走行動力で回転駆動される左右の前輪5と、ミッションケース3から出力される走行動力で回転駆動される左右の後輪6と、ステアリングハンドル4などの各種の操作具が配置される運転部7と、各種の作業機8(図4参照)を連結可能な作業機連結部9と、を備える。
【0010】
図1及び図2に示すように、運転部7には、前述したステアリングハンドル4の他に、操舵装置10や携帯端末スタンド11が設けられる。操舵装置10は、モータ動力でステアリングハンドル4を回し操作し、前輪5を操舵する。携帯端末スタンド11は、スマートフォンなどの携帯端末12(図3参照)を取り付けるためのもので、カメラ13が前方を向き、ディスプレイ14が後方を向く姿勢で携帯端末12を支持する。
【0011】
図3に示す自動操舵システム100は、トラクタTを自動操舵するためのシステムであり、圃場を作業走行するトラクタT側の構成と、トラクタTに取り付けられる携帯端末12側の構成と、を含む。
【0012】
トラクタT側の構成には、前述した操舵装置10と、操舵装置10を制御する車両側制御部15と、携帯端末12と通信可能な車両側通信装置16と、が含まれる。
【0013】
携帯端末12側の構成には、後述するセンサ類Sと、タッチスクリーンなどの入力装置17と、センサ類Sの検出情報を入力して各種の処理を行う端末側制御部18と、画像表示を行う前述のディスプレイ14と、音を出力するスピーカ19と、トラクタTと通信可能な端末側通信装置20と、が含まれる。
【0014】
センサ類Sには、トラクタTの進行方向を撮影可能な前述のカメラ13と、対象物までの距離を計測可能なTOFセンサなどの距離センサ21と、携帯端末12(トラクタT)の向き(地磁気)を検出する磁気センサ22と、携帯端末12(トラクタT)の姿勢を検出可能なIMUセンサ23(姿勢センサ:加速度センサ及びジャイロセンサ)と、が含まれる。
【0015】
端末側制御部18は、ハードウェアとソフトウェア(プログラム)との協働により実現される機能構成として、車両位置・周辺環境推定手段と、目標作業経路生成手段と、目標操舵角算出手段と、目標操舵角送信手段と、を備える。
【0016】
車両位置・周辺環境推定手段は、センサ類Sの検出情報に基づいて、車両位置及び周辺環境を推定する。例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を使用して、車両位置を推定するとともに、周辺環境として圃場の平面形状を推定する。なお、SLAMは、カメラ13の撮影画像やその他のセンサ信号(距離センサ21、磁気センサ22、IMUセンサ23などのセンサ値)をリアルタイムに処理し、自己位置推定と環境地図を作成する技術である。このようなSLAMによれば、特定のマーカに頼らずに、圃場面や畦を認識し、空間を3次元的に処理(例えば、圃場の平面形状の推定)することが可能になる。
【0017】
目標作業経路生成手段は、車両位置・周辺環境推定手段が推定した車両位置及び周辺環境に基づいて、トラクタTの目標作業経路を生成する。例えば、図4に示すように、目標作業経路Kは、直線経路であり、圃場の平面内に並列する複数の目標作業経路Kを生成する。このとき、複数の目標作業経路Kの間隔W1は、トラクタTの作業幅W2に基づいて算出される。また、目標作業経路Kの長さLは、トラクタTが次行程に向けて旋回するための枕地Mを残すように算出される。
【0018】
目標操舵角算出手段は、車両位置・周辺環境推定手段が推定した車両位置と、目標作業経路生成手段が作成した目標作業経路に基づいて、トラクタTの目標操舵角を算出する。例えば、目標操舵角をφ、位置誤差ゲインをKpx、方位誤差ゲインをK、車両目標位置をX、車両推定位置をXn、車両目標方向をθz、車両推定方向をθzn、その他の補正値をCnとして下記の式で算出する。
φ=Kpx(X-Xn)+K(θz-θzn)+Cn
【0019】
目標操舵角送信手段は、目標操舵角算出手段が算出した目標操舵角を端末側通信装置20を介してトラクタTに送信する。例えば、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信を用いて目標操舵角φをトラクタTに送信する。
【0020】
一方、トラクタTの車両側制御部15は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能構成として、目標操舵角受信手段と、自動操舵制御手段と、を備える。
【0021】
目標操舵角受信手段は、携帯端末12が送信した目標操舵角φを車両側通信装置16を介して受信する。また、自動操舵制御手段は、受信した目標操舵角φとなるように操舵装置10を制御する。
【0022】
つぎに、上記のような機能構成を実現する自動操舵システム100の処理手順について、図5を参照して説明する。
【0023】
図5に示すように、端末側制御部18は、センサ類Sの検出情報を取得しつつSLAMを使用し、自己位置(端末基準)の推定と、周辺環境の把握を行う(S1)。つぎに、端末側制御部18は、目標作業経路Kを生成済みであるか否かを判断し(S2)、この判断結果がYESの場合は、ステップS3、S4において目標作業経路Kを生成し、判断結果がNOの場合は、ステップS3、S4をスキップする。端末側制御部18は、ステップS3において、現在位置から任意の方向への基準目標作業経路K0を生成した後、ステップS4において、基準目標作業経路K0に並列する複数の目標作業経路Kを生成する。なお、基準目標作業経路K0は、例えば、作業開始時に圃場の一辺(例えば、畦際)に沿うように生成される。
【0024】
つぎに、端末側制御部18は、自己位置を端末基準から機体基準に補正した後(S5)、目標作業経路Kと自己位置(機体基準)との差を算出するとともに(S6)、目標作業経路Kの方向と自己の方向(機体基準)との差を算出する(S7)。その後、端末側制御部18は、自己位置(機体基準)が目標作業経路K上を走行するための目標操舵角φを算出し(S8)、トラクタTに送信する。
【0025】
車両側制御部15は、携帯端末12から目標操舵角φを受信すると、目標操舵角φとなるように操舵装置10を制御する。
【0026】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、圃場を作業走行するトラクタTと、トラクタTに取り付けられる携帯端末12と、を備える自動操舵システム100であって、トラクタTは、アクチュエータの動力で機体を操舵する操舵装置10と、操舵装置10を制御する車両側制御部15と、携帯端末12と通信可能な車両側通信装置16と、を備え、携帯端末12は、センサ類Sと、センサ類Sの検出情報を入力する端末側制御部18と、トラクタTと通信可能な端末側通信装置20と、を備え、端末側制御部18は、センサ類Sの検出情報に基づいて、車両位置及び周辺環境を推定する車両位置・周辺環境推定手段と、車両位置及び周辺環境に基づいて、トラクタTの目標作業経路Kを生成する目標作業経路生成手段と、車両位置及び目標作業経路Kに基づいて、トラクタTの目標操舵角φを算出する目標操舵角算出手段と、目標操舵角φを端末側通信装置20を介してトラクタTに送信する目標操舵角送信手段と、を備え、車両側制御部15は、携帯端末12が送信した目標操舵角φを車両側通信装置16を介して受信する目標操舵角受信手段と、受信した目標操舵角φとなるように操舵装置10を制御する自動操舵制御手段と、を備えるので、自動操舵システム100の大幅なコストダウンを実現できる。つまり、携帯端末12は、装備されたセンサ類Sを利用して車両位置及び周辺環境を推定するともに、推定した車両位置及び周辺環境に基づいて目標作業経路Kを生成し、さらに、車両位置及び目標作業経路に基づいてトラクタTの目標操舵角φを算出するので、目標操舵角φをトラクタTに送信すれば、トラクタT側で車両位置を検出したり、目標作業経路の生成や目標操舵角の算出を行うことなく、トラクタTを自動操舵することが可能になる。その結果、トラクタT側の装備や制御負担を軽減し、自動操舵システム100の大幅なコストダウンを実現できる。
【0027】
また、周辺環境は、圃場の平面形状であり、目標作業経路Kは、直線経路であり、目標作業経路生成手段は、圃場の平面内に並列する複数の目標作業経路Kを生成するので、予め圃場の平面情報を用意しなくても、適切な目標作業経路Kを生成することができる。
【0028】
また、センサ類Sには、トラクタTの進行方向を撮影可能なカメラ13と、トラクタTの姿勢を検出可能なIMUセンサ23と、が含まれるので、カメラ13及びIMUセンサ23を備える一般的なスマートフォンやタブレットを使用して安価な自動操舵システム100を構築できる。
【0029】
また、センサ類Sには、さらに、対象物までの距離を検出する距離センサ21が含まれるので、車両位置や周辺環境の推定精度を高めることができる。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態に限定されないことは勿論である。例えば、適用する作業車両は、前記実施形態のトラクタTに限定されず、田植機やコンバインであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
100 自動操舵システム
T トラクタ
1 走行機体
4 ステアリングハンドル
5 前輪
10 操舵装置
11 携帯端末スタンド
12 携帯端末
13 カメラ
15 車両側制御部
16 車両側通信装置
18 端末側制御部
20 端末側通信装置
21 距離センサ
22 磁気センサ
23 IMUセンサ
S センサ類
図1
図2
図3
図4
図5