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  • 特開-電力伝送システム 図1
  • 特開-電力伝送システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047209
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/20 20160101AFI20240329BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20240329BHJP
【FI】
H02J50/20
H02J50/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152709
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小俣 順一
(72)【発明者】
【氏名】清水 信貴
(57)【要約】
【課題】電子錠の電池交換等が必要なく、低コストでメンテナンスが不要であって、電子錠が十分駆動できる電力伝送システムを提供する。
【解決手段】電力伝送システムは、電子錠が設けられた扉と扉が設けられた区画部内外とに分離して配置され、区画部側から扉側へマイクロ波を非接触の状態で伝播させて電子錠に給電するマイクロ波非接触給電装置を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子錠が設けられた扉と前記扉が設けられた区画部内外とに分離して配置され、前記区画部側から前記扉側へマイクロ波を非接触の状態で伝播させて前記電子錠に給電するマイクロ波非接触給電装置を備える、
電力伝送システム。
【請求項2】
前記マイクロ波非接触給電装置は、マイクロ波を送電する送電機と、前記送電機から送電されたマイクロ波を受電する受電機と、を有し、
前記送電機は、前記扉に隣接して前記区画部の出入口を構成した隔壁部に設置され、
前記受電機は、前記電子錠に内蔵されている、
請求項1に記載の電力伝送システム。
【請求項3】
前記隔壁部には、前記扉の解錠又は施錠に使用する非接触式ICカードを差すと電源からの電力を前記区画部内に給電し、前記非接触式ICカードを抜くと前記電源から前記区画部内への電力の給電を遮断するカードスイッチが設けられ、
前記送電機は、前記カードスイッチに対する前記電源からの送電網に配置されている、
請求項2に記載の電力伝送システム。
【請求項4】
前記送電機は、前記カードスイッチに対する前記電源からの前記送電網のうち前記カードスイッチによって電気の通電又は遮断の切り替えが実施されないよう前記カードスイッチを経由しないで前記電源に電気的に接続されている、
請求項3に記載の電力伝送システム。
【請求項5】
前記送電機は、リーダライタ部を有し、
前記受電機は、前記リーダライタ部と無線通信可能なRFIDタグ部を有する、
請求項2に記載の電力伝送システム。
【請求項6】
前記送電機は、外部システムと通信可能であり、
前記電子錠は、前記RFIDタグ部と前記リーダライタ部との無線通信を介して、前記外部システムと情報をやり取り可能且つ前記外部システムから制御可能である、
請求項5に記載の電力伝送システム。
【請求項7】
前記出入口の外部側の光を光電変換し、前記マイクロ波非接触給電装置と共に前記電子錠に給電する太陽電池給電装置を備える、
請求項1に記載の電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたNFC等によって非接触の状態で施解錠を行うホテル錠システムでは、NFCのリードやラッチボルト、デットボルトの駆動のための電源が必要である。この電源には、電池が使用されている。この電池は、定期的に交換が必要となる。
【0003】
電池交換は、ホテルの全客室について一度に一斉に行う。このため、数百室での電池交換が必要であり、電池交換の実施には時間(コスト)がかかる。また、客室に連泊している宿泊客がいる場合には、電池交換ができず、別日に電池交換を実施する必要がある。
【0004】
電池式ホテル錠の電池交換の頻度を見積もる。ホテル錠の動作消費電力は、約2mW程度である。ホテル錠は、単三乾電池4本で駆動されている。このため、1本の電池容量が3,000mAhであるとして計算すると、単三電池4本では、3,000mAhx1.5Vx4=18,000mWhを使用することが可能になる。駆動可能時間は、18,000mWh/2mW=9,000hである。年に換算すると、9,000h/24h/365d=1年であり、1年に1回の電池交換が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4295571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、電池交換をなくすと、ホテルを運営する運営会社の作業が不要になる。このため、メンテンナンス費用が削減できる。ホテル錠から電池を無くすことには、無線給電方式のホテル錠の利用が考えられる。無線給電方式のホテル錠としては、下記が挙げられる。
【0007】
(1)近接給電(電界方式又は磁界方式)
近接給電装置をドア近くに設置するタイプとした場合には、電源工事が必要である。電源配線が無いため、工事費用が高額である。電池内蔵の給電装置とした場合には、充電に時間がかかる問題と、定期的な(数か月の)メンテナンスが必要になる問題と、がある。また、工事費用もかかる。
【0008】
(2)太陽光発電
室内灯を用いて発電可能な太陽電池装置も開発されている。しかし、太陽電池装置の発電量がホテル錠の動作消費電力(2mW)に対して不足する。屋内灯による太陽電池装置の発電量は、1mW未満であるので問題になる。
【0009】
(3)圧電デバイス
ドア開閉時のドアノブの動きを圧電デバイス装置を用いて電力変換することもできる。しかし、圧電デバイスでは、発電量がホテル錠の動作消費電力(2mW)に対して不足する。現実的なドアの開閉回数では、電力不足が解消できない問題がある。
【0010】
上記無線給電方式、つまり、非接触給電システムを用いた場合には、電源配線の工事費が別途必要になったり、メンテナンスが必要になったりする課題がある。また、ホテル錠を駆動するのに十分な電力が得られない課題がある。
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、電子錠の電池交換等が必要なく、低コストでメンテナンスが不要であって、電子錠が十分駆動できる電力伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る電力伝送システムでは、電子錠が設けられた扉と前記扉が設けられた区画部内外とに分離して配置され、前記区画部側から前記扉側へマイクロ波を非接触の状態で伝播させて前記電子錠に給電するマイクロ波非接触給電装置を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、電子錠の電池交換等が必要なく、低コストでメンテナンスが不要であって、電子錠が十分駆動できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電力伝送システムを示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態の変形例に係る電力伝送システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
<電力伝送システム100>
図1は、本発明の実施形態に係る電力伝送システム100を示すブロック図である。図1に示されるように、電力伝送システム100は、マイクロ波電力伝送による送電を実施するシステムである。
【0017】
以下説明する本発明の実施形態では、電力伝送システム100がホテル錠システムに適用される場合を例に挙げる。ただし、電力伝送システム100が適用可能なシステムは、ホテル錠システムに限定されない。電力伝送システム100が適用可能なシステムは、他の例としてはマンション等を含む住宅、店舗、事業所、工場等の扉錠システムに適用できる。
【0018】
電力伝送システム100は、カードスイッチシステム10と、電子錠システム20と、を備える。
【0019】
カードスイッチシステム10は、電源11と、カードスイッチ12と、を備える。カードスイッチシステム10は、カードスイッチ12に電力を供給し、カードスイッチ12をオン又はオフに切り替える。
【0020】
電源11は、送電網を介してカードスイッチ12に電力を供給する。
【0021】
カードスイッチ12は、扉に隣接して区画部の出入口を構成した隔壁部に、扉の解錠又は施錠に使用する非接触式ICカードを差すと電源11からの電力を区画部内に給電する。また、カードスイッチ12は、非接触式ICカードを抜くと電源11から区画部内への電力の給電を遮断する。カードスイッチ12は、電源11と送電線によって繋がっている。
【0022】
電子錠システム20は、扉に設置された電子錠21を備える。電子錠システム20は、扉に設置された電子錠21に給電された電力により、扉の解錠又は施錠を実施するシステムである。
【0023】
なお、ホテル錠システムに適用された電力伝送システム100において、扉によって解錠又は施錠される出入口を有する区画部はホテルの客室であり、区画部内として客室内があり、区画部外としてホテルの廊下スペースがあり、区画部を複数備える構造体はホテル建屋であり、電子錠21はホテル錠である。
【0024】
電子錠21は、キーレスと呼ばれ、文字通り鍵(キー)の必要ない(レス)錠前である。電子錠21は、電気の力を使って扉を施解錠する機構を組み込んだ錠前である。ここで、電子錠21は、電気配線を使用して給電する電気錠とは異なる。電子錠21は、給電用のある電源からの送電網に通じた電気配線を配設することがない。また、電子錠21は、一般的な電池を使った錠前ではなく、マイクロ波電力伝送による給電によって扉を施解錠する錠前である。
【0025】
<マイクロ波非接触給電装置1>
マイクロ波非接触給電装置1は、電子錠21が設けられた扉と、扉が設けられた区画部と、に分離して配置されている。マイクロ波非接触給電装置1は、区画部側から扉側へマイクロ波を非接触の状態で伝播させて電子錠21に給電する。マイクロ波非接触給電装置1は、送電機13と、受電機22と、を有する。
【0026】
<送電機13>
送電機13は、MCU(Micro Controller Unit)14と、リーダライタ部16と、第1無線通信アンテナ17と、WLAN(Wireless LAN)18と、第2無線通信アンテナ19と、を有する。MCU14は、CPUと記憶部と通信ポートを含み、送電機13の送電を制御する。WLAN18は、送電機13をノートPC等に搭載された外部システム30と無線通信可能にする。
【0027】
送電機13は、電源11から給電されるマイクロ波を受電機22に送電する。送電機13は、カードスイッチシステム10に搭載されている。送電機13は、扉に隣接して区画部内の出入口を構成した隔壁部に設置されている。
【0028】
送電機13は、カードスイッチ12に対する電源11からの送電網に配置されている。詳しくは、送電機13は、カードスイッチ12に対する電源11からの送電網のうちカードスイッチ12によって電気の通電又は遮断の切り替えが実施されないようカードスイッチ12を経由しないで電源11に送電線を用いて電気的に接続されている。
【0029】
送電機13は、リーダライタ部16から第1無線通信アンテナ17に送電兼通信線を介してマイクロ波となる電力を送電する。送電機13は、第1無線通信アンテナ17を用いて受電機22に向けて送電線といった有線を用いないでマイクロ波の無線電力を送電する。
【0030】
送電機13は、送電兼通信線を介してリーダライタ部16と第1無線通信アンテナ17とを繋げている。
【0031】
送電機13は、WLAN18を用いて外部システム30と通信可能である。送電機13は、通信線を介してWLAN18と第2無線通信アンテナ19とを繋げている。第2無線通信アンテナ19は、外部システム30の外部無線アンテナ31と無線回線を介して接続され、送電機13と外部システム30とを無線通信させる。
【0032】
<受電機22>
受電機22は、使用者が扉の開閉に用いる扉ハンドルに設けられた電子錠21に内蔵されている。受電機22は、電子錠21と共に電子錠システム20に搭載されている。受電機22は、受電アンテナ23と、整流回路24と、グランド端子GNDに接続されたコンデンサ(容量)25と、RFIDタグ部26と、第3無線通信アンテナ27と、を有する。
【0033】
受電機22は、送電機13の第1無線通信アンテナ17から送電されたマイクロ波を受電アンテナ23によって受電する。
【0034】
受電機22は、送電線を介して接続された受電アンテナ23と整流回路24とを通ってグランド端子GNDに接続されたコンデンサ25に送電機13から送電した電力を充電して電子錠21の電源電力として利用する。
【0035】
受電機22は、RFIDタグ部26を用いて送電機13のリーダライタ部16と無線通信可能である。受電機22は、通信線を介してRFIDタグ部26と第3無線通信アンテナ27とを繋げている。電子錠21は、第1無線通信アンテナ17及び第3無線通信アンテナ27を用いたRFIDタグ部26とリーダライタ部16との無線通信を介して、外部システム30と情報をやり取り可能且つ外部システム30から制御可能である。
【0036】
ここで、RFIDタグ部26とリーダライタ部16との無線通信方式は、UHF帯を用いる。RFIDタグ部26とリーダライタ部16との無線通信方式は、例えば、バックスキャッタ通信を用いる。バックスキャッタ通信とは、RFIDのRFIDタグ部26のパッシブタグで用いられる通信方式である。RFIDタグ部26のパッシブタグは、リーダライタ部16の送信電力をDCに変換し、電源電力として利用することで動作する。リーダライタ部16への返答は、リーダライタ部16の送信波に対して内部インピーダンスを変えることで変調し、応答信号を作成する。しかし、これに限られない。その他の無線通信方式が用いられてもよい。
【0037】
<マイクロ波非接触給電装置1の作用及び効果>
マイクロ波非接触給電装置1は、マイクロ波電力伝送による送電を実施する。マイクロ波電力伝送では、伝送距離が比較的長距離にすることが可能になる。伝送距離の長距離化には、必然的に生じる伝搬損失の増大により電力効率向上の面で制限があるものの、送受電デバイスの配置間距離の自由度が増すという利点もある。
【0038】
【数1】
【0039】
例えば、周波数920MHz、光速300Mm/s、送信電力250mW、第1無線通信アンテナゲイン3dBi、受電アンテナゲイン6dBi、レクテナ電力変換効率20%とした場合には、電子錠21の動作消費電力2.0mWを伝送可能な送電機13と受電機22との間の距離は、上記式(1)にて計算されるように37cm程度となる。
【0040】
隔壁部(壁)に設置されたカードスイッチ12は、電子錠21から比較的近い距離に設置されている。つまり、区画部の解錠に使用する非接触式ICカードを抜くと区画部内電源が遮断されて屋内照明が消える。このため、必然的にドアノブ近くにカードスイッチ12が設置されている。このようなカードスイッチ12の電源11には、カードスイッチ12の施解錠に関わらずに電源11から給電される送電機13を設置している。これにより、マイクロ波電力伝送による給電が常時可能になる。
【0041】
カードスイッチシステム10に組み込んだ送電機13と、電子錠システム20に組み込んだ受電機22と、がマイクロ波非接触給電装置1を構成している。また、送電機13が扉によって開閉される出入口を有する区画部内の隔壁部の内部に設けられ、受電機22が扉の扉ハンドルに設けられた電子錠21に内蔵されている。そして、区画部と電子錠21とがある程度離れていてもマイクロ波電力伝送による送電によって電子錠21が給電される。これにより、マイクロ波非接触給電装置1を構成している送電機13及び受電機22の配置間距離の自由度を活かして、電子錠21への安定的な給電が実現できる。
【0042】
受電機22には、RFIDタグ部(UHF帯RFID Tag)26も実装し、電子錠21に接続して、インターフェースをとることにより、カードスイッチシステム10と電子錠システム20との間の通信も可能とする。
【0043】
カードスイッチシステム10と電子錠システム20とが通信することにより、以下の機能が実現可能である。
【0044】
第1に、非接触でホテル錠である電子錠21に給電することが可能になる。このため、これまでホテルを運営する運営会社が年1回程度の頻度で実施する必要があったホテル錠である電池駆動式電子錠の電池交換のメンテナンスが不要になる。
【0045】
第2に、マイクロ波帯電力伝送は、伝搬損失によって伝送距離が延びると電力効率が低下する。送電機13をカードスイッチ12や隔壁部に設置することにより、比較的少ない送電電力を用いてホテル錠である電子錠21を駆動するのに必要な電力の供給が可能になる。
【0046】
カードスイッチシステム10が外部システム30と通信可能である点も加味すると、さらに以下の機能が実現可能である。
【0047】
第3に、送電機13は、UHF帯(920MHz)のリーダライタ部(RFID Reader/Writer(R/W))16を搭載している。これに対し、電子錠21に搭載された受電機22側には、RFIDタグ部(UHF帯RFID Tag)26が実装されている。これにより、送電機13が電子錠21の受電機22と通信可能である。この場合には、電子錠21の状態(解錠状態情報や施錠状態情報)の情報が他のホテル運営システム等の外部システム30に通知可能である。
【0048】
第4に、緊急時の解錠が実現できる。すなわち、外部システム30からカードスイッチシステム10を介して電子錠21に解錠命令を直接送信できる。
【0049】
第5に、同一非接触式ICカードの使い回しや管理が実現できる。すなわち、電子錠21に記録されている非接触式ICカード情報を外部システム30から遠隔で更新できる。
【0050】
第6に、電子錠21の施解錠状態の監視が実施できる。すなわち、送電機13がUHF帯(920MHz)のリーダライタ部(RFID Reader/Writer(R/W))16を使用している。受電機22に実装したRFIDタグ部(UHF帯RFID Tag)26から電子錠21の情報(解錠状態情報や施錠状態情報)を取得することも可能である。取得した電子錠21の情報は、電子錠システム20からカードスイッチシステム10の送電機13に実装したWLAN18を介して外部システム30に送信する。従来技術である電池駆動のホテル錠システムの場合には、外部システム30がホテル錠である電池駆動式電子錠の情報を取得できない。
【0051】
<変形例>
図2は、本発明の実施形態の変形例に係る電力伝送システム100を示すブロック図である。図2に示されるように、電力伝送システム100は、出入口の外部側の光を光電変換し、マイクロ波非接触給電装置1と共に電子錠21に給電する太陽電池給電装置40を備えてもよい。
【0052】
太陽電池給電装置40単体では、電子錠21の施解錠の電力供給能力が不足している。しかし、電力伝送システム100が太陽電池給電装置40をマイクロ波非接触給電装置1と組み合わせることにより、伝送距離を長くすることが可能になる。屋内灯による太陽電池給電装置40の発電0.4mWとした場合には、電子錠21の動作消費電力2.0mWのうち、太陽電池給電装置40で発電0.4mWを賄えるので、マイクロ波非接触給電装置1での必要電力が2.0mW-0.4mW=1.6mWになる。このような1.6mWで式(1)の2.0mWを置き換えると、計算結果が伝送距離41cmになる。つまり、マイクロ波非接触給電装置1だけでの伝送距離37cmは、マイクロ波非接触給電装置1と太陽電池給電装置40とを組み合わせた伝送距離41cmに伝送距離が11%改善(41cm/37cm=1.11であり、0.11の割合改善)できる。
【0053】
<付記>
電力伝送システム100は、電子錠21が設けられた扉と扉が設けられた区画部内外とに分離して配置され、区画部側から扉側へマイクロ波を非接触の状態で伝播させて電子錠21に給電するマイクロ波非接触給電装置1を備える。
【0054】
この構成によれば、電力伝送システム100を用いた場合には、電源配線の工事費が別途必要にならず、メンテナンスが必要にならない。また、ホテル錠である電子錠21を駆動するのに十分な電力が得られる。したがって、電子錠21の電池交換等が必要なく、低コストでメンテナンスが不要であって、電子錠21が十分駆動できる。
【0055】
マイクロ波非接触給電装置1は、マイクロ波を送電する送電機13と、送電機13から送電されたマイクロ波を受電する受電機22と、を有する。送電機13は、扉に隣接して区画部の出入口を構成した隔壁部に設置されている。受電機22は、電子錠21に内蔵されている。
【0056】
マイクロ波帯電力伝送は、伝播損失により、伝送距離が延びると電力効率が低下する。この構成によれば、送電機13が扉に隣接して出入口を構成した区画部に設置されている。一方、受電機22が扉に設置された電子錠21に内蔵されている。このため、送電機13と受電機22との伝送距離が接近してマイクロ波帯電力伝送の電力効率が低下しない。これにより、比較的少ない伝送電力を用いて電子錠21に電力が給電できる。
【0057】
隔壁部には、扉の解錠又は施錠に使用する非接触式ICカードを差すと電源11からの電力を室内に給電し、非接触式ICカードを抜くと電源11から室内への電力の給電を遮断するカードスイッチ12が設けられている。送電機13は、カードスイッチ12に対する電源11からの送電網に配置されている。
【0058】
この構成によれば、既存のカードスイッチ12に対する電源11からの送電網を用いて電源11から送電機13に電力を供給できる。
【0059】
送電機13は、カードスイッチ12に対する電源11からの送電網のうちカードスイッチ12によって電気の通電又は遮断の切り替えが実施されないようカードスイッチ12を経由しないで電源11に電気的に接続されている。
【0060】
この構成によれば、送電機13に対しては、カードスイッチ12によって電気の通電又は遮断の切り替えが実施されず、電源11から送電機13に電力が常時給電できる。
【0061】
送電機13は、リーダライタ部16を有する。受電機22は、リーダライタ部16と無線通信可能なRFIDタグ部26を有する。
【0062】
この構成によれば、電子錠21の情報や状態が送電機13に送信できる。
【0063】
送電機13は、外部システム30と通信可能である。電子錠21は、RFIDタグ部26とリーダライタ部16との無線通信を介して、外部システム30と情報をやり取り可能且つ外部システム30から制御可能である。
【0064】
この構成によれば、電子錠21の施解錠状態等の情報がRFIDタグ部26とリーダライタ部16との無線通信を介して送電機13から外部システム30に送信できる。また、電子錠21に記録されている非接触式ICカード情報の更新制御や電子錠21の緊急時の解錠制御等の制御がRFIDタグ部26とリーダライタ部16との無線通信を介して外部システム30から実行できる。
【0065】
電力伝送システム100は、出入口の外部側の光を光電変換し、マイクロ波非接触給電装置1と共に電子錠21に給電する太陽電池給電装置40を備える。
【0066】
この構成によれば、マイクロ波非接触給電装置1による伝送可能距離に太陽電池給電装置40による伝送可能距離が加わり、電力伝送システム100の伝送可能距離が長くなり、電力伝送システム100の伝送性能が改善できる。
【0067】
<その他>
上記実施形態では、カードスイッチシステム10が電源11を有する構成であった。しかし、これに限られない。例えば、電源11は、カードスイッチ12を有しないシステムに構成されていてもよい。また、上記実施形態では、非接触式ICカードによって施解錠する電子錠21であった。しかし、これに限られな。電子錠21は、ナンバーボタンロック式等でもよい。また、各アンテナ17、19、23、27は、共有できる範囲で共有アンテナに構成してもよい。
【0068】
また、送電機13は、区画部内だけでなく区画部外(ホテルの場合には廊下スペース等)に設けられてもよい。送電機13が区画部外に設けられる場合としては、例えば電源から送電網が配設された既存のインターホンに送電機13が内蔵されてもよい。
【0069】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明は、主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 マイクロ波非接触給電装置
10 カードスイッチシステム
11 電源
12 カードスイッチ
13 送電機
14 MCU
16 リーダライタ部
17 第1無線通信アンテナ
18 WLAN
19 第2無線通信アンテナ
20 電子錠システム
21 電子錠
22 受電機
23 受電アンテナ
24 整流回路
25 コンデンサ
26 RFIDタグ部
27 第3無線通信アンテナ
30 外部システム
31 外部無線アンテナ
40 太陽電池給電装置
図1
図2