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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047212
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】受電機及び電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/27 20160101AFI20240329BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20240329BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H02J50/27
E05B49/00 J
E05B47/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152712
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小俣 順一
(72)【発明者】
【氏名】古谷 恒太
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA06
2E250BB33
2E250CC02
(57)【要約】
【課題】2以上の受電ユニットの出力が合成でき、受電機の給電電圧が高められる受電機及び電力伝送システムを提供する。
【解決手段】受電機は、マイクロ波を送電側から非接触の状態で受電するマイクロ波電力伝送受電機であって、アンテナと半波倍電圧整流回路とを有する受電ユニットを備え、受電ユニットは、2以上接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を送電側から非接触の状態で受電するマイクロ波電力伝送受電機であって、
アンテナと半波倍電圧整流回路とを有する受電ユニットを備え、
前記受電ユニットは、2以上接続されている、
受電機。
【請求項2】
当該受電機は、扉を開錠又は施錠する電子錠に組み込まれ、
2以上の前記受電ユニットは、前記扉の前記電子錠付き扉ハンドルの非金属部分に1つずつ異なる領域に分けて内蔵されている、
請求項1に記載の受電機。
【請求項3】
前記受電ユニットは、2以上直列に接続されている、
請求項1に記載の受電機。
【請求項4】
2以上の前記受電ユニットの前記アンテナの各々は、互いの形状が異なっている、
請求項1に記載の受電機。
【請求項5】
請求項1に記載の受電機であって、マイクロ波電力伝送送電機からマイクロ波を非接触の状態で受電する電力を動作デバイスに給電する受電機と、
前記受電機と前記動作デバイスとを接続した第1の給電線に第2の給電線を介して接続し、内部に蓄電された電力を前記動作デバイスに給電するバックアップ電源と、
前記第2の給電線の途中に配置され、前記受電機から前記バックアップ電源への給電を阻害すると共に前記バックアップ電源から前記動作デバイスへの給電を許容するダイオードと、
を備える電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電機及び電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子錠にマイクロ波電力伝送によって給電する際には、電波を遮蔽する金属部分を避ける必要がある。しかし、機械的な強度の関係で扉ハンドルのうちドアノブやサムターン周辺には、電波を遮蔽する金属部分を必ず設ける必要がある。このため、扉ハンドルの全面は、電波を透過する樹脂製にすることができない。
【0003】
扉ハンドルに1つの受電ユニットを搭載する構成である場合には、上記のドアノブやサムターン周辺の金属部分の電波の遮蔽が回避できない。ここで、受電ユニットのアンテナは、面積が広い方が受電効率を上げられる。このため、扉ハンドルの金属部分を避けて2以上の受電ユニットを搭載すると、2以上の受電ユニットのアンテナの各々は、面積が狭くなり受電効率を低下させてしまう。これに対し、2以上の受電ユニットの出力を結合し、電子錠を駆動する給電出力を高めることが考えられる。
【0004】
従来の類似技術として、レクテナアレーに各々アンテナを有する多段回路(受電ユニットに相当)を2以上搭載した技術がある(特許文献1参照)。特許文献1では、第3段回路、第2段回路、第1段回路では、RF電力合成素子は、伝送線路の中間点P0でない接続点P1に接続される。そして、伝送線路を通った信号は、RF電力合成素子で合成される。このとき、信号に含まれていた高調波が伝送線路の長さの違いにより抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6691394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、レクテナアレーにおいて、専用のデバイスを使用せずに、高調波を抑制し、変換効率を高められるだけであり、電子錠を駆動する受電機の給電電圧を高めることができない。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、2以上の受電ユニットの出力が合成でき、受電機の給電電圧が高められる受電機及び電力伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る受電機は、マイクロ波を送電側から非接触の状態で受電するマイクロ波電力伝送受電機であって、アンテナと半波倍電圧整流回路とを有する受電ユニットを備え、前記受電ユニットは、2以上接続されている。
【0009】
本発明に係る電力伝送システムは、上記の受電機であって、マイクロ波電力伝送送電機からマイクロ波を非接触の状態で受電する電力を動作デバイスに給電する受電機と、前記受電機と前記動作デバイスとを接続した第1の給電線に第2の給電線を介して接続し、内部に蓄電された電力を前記動作デバイスに給電するバックアップ電源と、前記第2の給電線の途中に配置され、前記受電機から前記バックアップ電源への給電を阻害すると共に前記バックアップ電源から前記動作デバイスへの給電を許容するダイオードと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、2以上の受電ユニットの出力が合成でき、受電機の給電電圧が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電力伝送システムを示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る扉ハンドルでの3つの受電ユニットの配置箇所を示す概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る受電ユニットを示す構成図である。
図4A図4Aは、本発明の実施形態に係る1つの受電ユニットの低電力入力時の動作を示す波形図である。
図4B図4Bは、本発明の実施形態に係る1つの受電ユニットの大電力入力時の動作を示す波形図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る直列に接続された3つの受電ユニットを示す構成図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る直列に接続された3つの受電ユニットを示す電気回路図である。
図7図7は、本発明の実施形態の変形例1に係る直列に接続された2つの受電ユニットを示す構成図である。
図8図8は、本発明の実施形態の変形例2に係る直列に接続されると共に受電アンテナの互いの形状が異なった2つの受電ユニットを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<電力伝送システム100>
図1は、本発明の実施形態に係る電力伝送システム100を示すブロック図である。図1に示されるように、電力伝送システム100は、マイクロ波電力伝送による送電を実施するシステムである。
【0014】
以下説明する本発明の実施形態では、電力伝送システム100がホテル錠システムに適用される場合を例に挙げる。ただし、電力伝送システム100が適用可能なシステムは、ホテル錠システムに限定されない。電力伝送システム100が適用可能なシステムは、他の例としてはマンション等を含む住宅、店舗、事業所、工場等の扉錠システムに適用できる。
【0015】
電力伝送システム100は、カードスイッチシステム10と、電子錠システム20と、を備える。
【0016】
カードスイッチシステム10は、電源11と、カードスイッチ12と、を備える。カードスイッチシステム10は、カードスイッチ12に電力を供給し、カードスイッチ12をオン又はオフに切り替える。
【0017】
電源11は、送電網を介してカードスイッチ12に電力を供給する。
【0018】
カードスイッチ12は、扉に隣接して区画部の出入口を構成した隔壁部に、扉の解錠又は施錠に使用する非接触式ICカードを差すと電源11からの電力を区画部内に給電する。カードスイッチ12は、非接触式ICカードを抜くと電源11から区画部内への電力の給電を遮断する。カードスイッチ12は、電源11と送電線によって繋がっている。
【0019】
電子錠システム20は、扉に設置された電子錠21を備える。電子錠システム20は、扉に設置された電子錠21に給電された電力により、扉の解錠又は施錠を実施するシステムである。
【0020】
なお、ホテル錠システムに適用された電力伝送システム100において、扉によって解錠又は施錠される出入口を有する区画部はホテルの客室であり、区画部内として客室内があり、区画部外としてホテルの廊下スペースがあり、区画部を複数備える構造体はホテル建屋であり、電子錠21はホテル錠である。
【0021】
電子錠21は、キーレスと呼ばれ、文字通り鍵(キー)の必要ない(レス)錠前である。電子錠21は、電気の力を使って扉を施解錠する機構を組み込んだ錠前である。ここで、電子錠21は、電気配線を使用して給電する電気錠とは異なる。電子錠21は、給電用のある電源からの送電網に通じた電気配線を配設することがない。また、電子錠21は、一般的な電池を使った錠前ではなく、マイクロ波電力伝送による給電によって扉を施解錠する錠前である。
【0022】
<マイクロ波非接触給電装置1>
マイクロ波非接触給電装置1は、電子錠21が設けられた扉と、扉が設けられた区画部と、に分離して配置されている。マイクロ波非接触給電装置1は、区画部側から扉側へマイクロ波を非接触の状態で伝播させて電子錠21に給電する。マイクロ波非接触給電装置1は、送電機13と、受電機22と、を有する。
【0023】
<送電機13>
送電機13は、マイクロ波電力伝送送電機である。送電機13は、MCU(Micro Controller Unit)14と、リーダライタ部16と、第1無線通信アンテナ17と、WLAN(Wireless LAN)18と、第2無線通信アンテナ19と、を有する。MCU14は、CPUと記憶部と通信ポートを含み、送電機13の送電を制御する。WLAN18は、送電機13をノートPC等に搭載された外部システム30と無線通信可能にする。
【0024】
送電機13は、電源11から給電されるマイクロ波を受電機22に送電する。送電機13は、カードスイッチシステム10に搭載されている。送電機13は、扉に隣接して区画部内の出入口を構成した隔壁部に設置されている。
【0025】
送電機13は、カードスイッチ12に対する電源11からの送電網に配置されている。詳しくは、送電機13は、カードスイッチ12に対する電源11からの送電網のうちカードスイッチ12によって電気の通電又は遮断の切り替えが実施されないようカードスイッチ12を経由しないで電源11に送電線を用いて電気的に接続されている。
【0026】
送電機13は、リーダライタ部16から第1無線通信アンテナ17に送電兼通信線を介してマイクロ波となる電力を送電する。送電機13は、第1無線通信アンテナ17を用いて受電機22に向けて送電線といった有線を用いないでマイクロ波の無線電力を送電する。
【0027】
送電機13は、送電兼通信線を介してリーダライタ部16と第1無線通信アンテナ17とを繋げている。
【0028】
送電機13は、WLAN18を用いて外部システム30と通信可能である。送電機13は、通信線を介してWLAN18と第2無線通信アンテナ19とを繋げている。第2無線通信アンテナ19は、外部システム30の外部無線アンテナ31と無線回線を介して接続され、送電機13と外部システム30とを無線通信させる。
【0029】
<受電機22>
受電機22は、マイクロ波を送電側から非接触の状態で受電するマイクロ波電力伝送受電機である。受電機22は、送電機13からマイクロ波を非接触の状態で受電する電力を電子錠21に給電する。受電機22は、電池の代わりにマイクロ波電力伝送による給電を利用している。ここで、電子錠21は、NFCカードリーダー、デットボルト、ラッチボルト駆動用モーター等を搭載している。このため、電池駆動式電子錠である場合には、1年程度の間だけ電池によって動作可能な製品であり、1年毎の電池交換が必要である。これに対し、電子錠21は、電池交換も必要なく、メンテナンス不要である。
【0030】
受電機22は、扉を開錠又は施錠する電子錠21に組み込まれ、使用者が扉の開閉に用いる扉ハンドルに設けられた電子錠21に内蔵されている。受電機22は、電子錠21と共に電子錠システム20に搭載されている。受電機22は、受電アンテナ23と、半波倍電圧整流回路24と、RFIDタグ部26と、第3無線通信アンテナ27と、を有する。
【0031】
受電機22は、受電アンテナ23と、半波倍電圧整流回路24と、からなる受電ユニット25a、25b、25cを備えている。受電ユニット25a、25b、25cは、3つ直列に接続されている。なお、受電ユニット25a、25b、25cは、1以上直列に接続されてもよい。
【0032】
なお、受電ユニット25a、25b、25cは、受電アンテナ23及び半波倍電圧整流回路24だけから構成されなくてもよい。受電ユニット25a、25b、25cは、受電アンテナ23自体の抵抗等を踏まえ、受電アンテナ23と後段の半波倍電圧整流回路24との間に、電流の流れ易さに合わせて受電効率改善を図るインピーダンス整合回路を設けてもよい。
【0033】
また、受電ユニット25a、25b、25cは、全てを直列でなく、2以上接続されてもよい。例えば、受電ユニットを3つ接続する場合に、2つの受電ユニットが並列接続されつつ、この並列回路に1つの受電ユニットが直列に接続されてもよい。
【0034】
図2は、本発明の実施形態に係る扉ハンドル50での3つの受電ユニット25a、25b、25cの配置箇所を示す概略図である。図2に示されるように、3つの受電ユニット25a、25b、25cは、扉の電子錠21付き扉ハンドル50の非金属部分の筐体の樹脂製部分51に1つずつ異なる領域に分けて内蔵されている。ここでは、扉ハンドル50のうち下側のドアノブ52と上側のサムターン周辺53との金属部分を避けて非金属部分の筐体の樹脂製部分51が形成されている。樹脂製部分51のうち扉ハンドル50の下端部とドアノブ52の下側との間、ドアノブ52とサムターン周辺53との間、サムターン周辺53の上側と扉ハンドル50の上端部との間、の3つの領域に、3つの受電ユニット25a、25b、25c各々が内蔵されている。
【0035】
図1に戻り、受電機22は、送電機13の第1無線通信アンテナ17から送電されたマイクロ波を受電アンテナ23によって受電する。
【0036】
受電機22は、送電線を介して接続された受電アンテナ23と半波倍電圧整流回路24のうちグランド端子GNDに接続された静電容量に送電機13から送電した電力を充電して電子錠21の電源電力として利用する。
【0037】
受電機22は、RFIDタグ部26を用いて送電機13のリーダライタ部16と無線通信可能である。受電機22は、通信線を介してRFIDタグ部26と第3無線通信アンテナ27とを繋げている。電子錠21は、第1無線通信アンテナ17及び第3無線通信アンテナ27を用いたRFIDタグ部26とリーダライタ部16との無線通信を介して、外部システム30と情報をやり取り可能且つ外部システム30から制御可能である。
【0038】
ここで、RFIDタグ部26とリーダライタ部16との無線通信方式は、UHF帯を用いる。RFIDタグ部26とリーダライタ部16との無線通信方式は、例えば、バックスキャッタ通信を用いる。バックスキャッタ通信とは、RFIDのRFIDタグ部26のパッシブタグで用いられる通信方式である。RFIDタグ部26のパッシブタグは、リーダライタ部16の送信電力をDCに変換し、電源電力として利用することで動作する。リーダライタ部16への返答は、リーダライタ部16の送信波に対して内部インピーダンスを変えることで変調し、応答信号を作成する。しかし、これに限られない。その他の無線通信方式が用いられてもよい。
【0039】
<マイクロ波非接触給電装置1の作用及び効果>
マイクロ波非接触給電装置1は、マイクロ波電力伝送による送電を実施する。マイクロ波電力伝送では、伝送距離が比較的長距離にすることが可能になる。伝送距離の長距離化には、必然的に生じる伝搬損失の増大により電力効率向上の面で制限があるものの、送受電デバイスの配置間距離の自由度が増すという利点もある。
【0040】
【数1】
【0041】
例えば、周波数920MHz、光速300Mm/s、送信電力250mW、第1無線通信アンテナゲイン3dBi、受電アンテナゲイン6dBi、レクテナ電力変換効率20%とした場合には、電子錠21の動作消費電力2mWを伝送可能な送電機13と受電機22との間の距離は、上記式(1)にて計算されるように37cm程度となる。
【0042】
隔壁部(壁)に設置されたカードスイッチ12は、電子錠21から比較的近い距離に設置されている。つまり、区画部の解錠に使用する非接触式ICカードを抜くと区画部内電源が遮断されて屋内照明が消える。このため、必然的にドアノブ52近くにカードスイッチ12が設置されている。このようなカードスイッチ12の電源11には、カードスイッチ12の施解錠に関わらずに電源11から給電される送電機13を設置している。これにより、マイクロ波電力伝送による給電が常時可能になる。
【0043】
カードスイッチシステム10に組み込んだ送電機13と、電子錠システム20に組み込んだ受電機22と、がマイクロ波非接触給電装置1を構成している。また、送電機13が扉によって開閉される出入口を有する区画部内に設けられ、受電機22が扉の扉ハンドル50に設けられた電子錠21に内蔵されている。そして、区画部と電子錠21とがある程度離れていてもマイクロ波電力伝送による送電によって電子錠21が給電される。これにより、マイクロ波非接触給電装置1を構成している送電機13及び受電機22の配置間距離の自由度を活かして、電子錠21への安定的な給電が実現できる。
【0044】
受電機22には、RFIDタグ部(UHF帯RFID Tag)26も実装し、電子錠21に接続して、インターフェースをとることにより、カードスイッチシステム10と電子錠システム20との間の通信も可能とする。
【0045】
<バックアップ電源40>
電力伝送システム100は、バックアップ電源(1次電池)40を備える。バックアップ電源40は、受電機22と電子錠21とを接続した第1の給電線61に第2の給電線62を介して接続されている。バックアップ電源40は、受電機22が遮蔽物等によって給電ができない場合に切り替えられて、内部に蓄電された電力を電子錠21に給電する。
【0046】
バックアップ電源40は、自己放電が少なく長期間動作可能である条件を満たすことが必要になる。このため、バックアップ電源40には、例えば塩化チオニルリチウム電池が用いられる。塩化チオニルリチウム電池は、スマートメータ等で使用される上記条件を満たす電池である。塩化チオニルリチウム電池の出力電圧は、3.6Vであり、他の1次電池と比べても高い。
【0047】
電力伝送システム100は、ダイオード41を備える。ダイオード41は、第2の給電線62の途中に配置され、受電機22からバックアップ電源40への給電を阻害すると共にバックアップ電源40から電子錠21への給電を許容する。
【0048】
<3つの受電ユニット25a、25b、25cの構成、作用及び効果>
扉ハンドル50のドアノブ52やサムターン周辺53は、機械的な強度の関係により金属で構成する必要がある。このため、扉ハンドル50の全面は、電波を透過する樹脂で構成できない。ここで、受電アンテナの面積が広い1つの受電ユニットを扉ハンドル50内に内蔵する場合には、この1つの受電ユニットは、ドアノブ52やサムターン周辺53の金属部分の遮蔽を避けられない。また、2以上の受電ユニットを搭載することで扉ハンドル50の金属部分を避けることが可能になるとしても、2以上の受電ユニットのアンテナの各々は、面積を狭くしてしまって受電効率を低下させてしまう。そこで、本発明の実施形態では、扉ハンドル50の金属部分を別々に避けて3つの受電ユニット25a、25b、25cが扉ハンドル50内に内蔵させ、これら3つの受電ユニット25a、25b、25cの出力電圧が結合している。
【0049】
図3は、本発明の実施形態に係る受電ユニット25aを示す構成図である。図3に示されるように、1つの受電ユニット25aは、第1ダイオード251と、第2ダイオード252と、整流コンデンサ253と、受電アンテナ23と、充電コンデンサ254と、から構成されている。
【0050】
第1ダイオード251は、アノードをグランド端子GNDに接続している。第2ダイオード252は、アノードを第1ダイオード251のカソードに接続している。整流コンデンサ253は、第1ダイオード251と第2ダイオード252との間の中間点と、受電アンテナ23と、の間に接続されている。充電コンデンサ254は、第2ダイオード252のカソードに接続され、グランド端子GNDに接続されている。
【0051】
1つの受電ユニット25aは、マイクロ波を受電した受電アンテナ23の受電電圧を、整流コンデンサ253、第1ダイオード251及び第2ダイオード252を主たる構成として含む半波倍電圧整流回路24により整流する。そして、1つの受電ユニット25aは、整流した電圧に対してフィルタリングの役割を果たす充電コンデンサ254の充放電を適宜繰り返しながら電圧を後段に出力する。
【0052】
上記のような回路構成を採る受電ユニット25aでは、第1ダイオード251及び第2ダイオード252の順方向電圧(VF)を低くすることで、入力電圧が低い場合に、逆方向電流によるクランプが発生しない好適な動作が可能となる。
【0053】
図4Aは、本発明の実施形態に係る1つの受電ユニット25aの低電圧入力時の動作を示す波形図である。図4Bは、本発明の実施形態に係る1つの受電ユニット25aの大電圧入力時の動作を示す波形図である。例えば図4Aに示される低電圧入力時の動作例では、第1ダイオード251及び第2ダイオードのいずれにおいても逆方向電流によるクランプが発生しておらず、受電アンテナ23での受電電圧が制限されることなく低電圧が後段に出力される。一方、例えば図4Bに示される大電圧入力時の動作例では、第1ダイオード251及び第2ダイオード252のいずれにおいても逆方向電流によってクランプが発生し、受電アンテナ23での受電電圧が制限された状態で大電圧が後段に出力される。図4Bに示される本動作例では、出力電圧は最大2V程度である。特に電圧降下値(VF)の低いショットキーバリアダイオードでは、逆方向電圧が低くなる。
【0054】
したがって、1つの受電ユニット25aを、クランプを発生させず効率的に動作させるためには、低い入力電圧で動作させることが好ましい。ただし、低い入力電圧で動作させると、1つの受電ユニット25aからの出力電圧も小さくなる。
【0055】
ここで、電力伝送システム100は、電池駆動の代替として電池交換不要で動作し続けることが求められる。しかし、マイクロ波非接触給電が遮蔽物等によって動作できなかった場合のために、1次電池をバックアップ電源40として利用する。バックアップ電源40では、自己放電が小さい必要がある。自己放電が少ない1次電池としてスマートメータ等で利用されている塩化チオニルリチウム電池が知られている。塩化チオニルリチウム電池は、出力電圧が3.6Vである。
【0056】
このため、図1に示されるようなマイクロ波非接触給電装置1とバックアップ電源40とを簡易的に切り替える場合が想定される。この場合には、マイクロ波電力伝送出力は、バックアップ電源40の出力電圧から第2の給電線62の途中のダイオード41の電圧降下値(VF)を差し引いた値(3.6V-Vf)以上の電圧を出力する必要がある。
【0057】
これを満たすように、電力伝送システム100は、扉ハンドル50に分割して小さく内蔵された受電ユニット25a、25b、25cの各々が受電電圧の出力が小さくても、受電機22が3つの受電ユニット25a、25b、25cの各々を直列に接続している。これにより、マイクロ波電力伝送出力(3つの受電ユニット25a、25b、25cの合計出力)は、規定値(3.6V-Vf)以上の電圧を出力することができる。
【0058】
図5は、本発明の実施形態に係る直列に接続された3つの受電ユニット25a、25b、25cを示す構成図である。図6は、本発明の実施形態に係る直列に接続された3つの受電ユニット25a、25b、25cを示す電気回路図である。図5図6に示されるように、図1に示す受電ユニット25a、25b、25cは、3つとも直列接続される。受電ユニット25aの出力に受電ユニット25bの第1ダイオード251のアノードが接続され、受電ユニット25bの出力に受電ユニット25cの第1ダイオード251のアノードが接続され、3つの受電ユニット25a、25b、25cから高い出力電圧が得られる。
【0059】
3つの受電ユニット25a、25b、25cの動作原理は、3つの受電アンテナ23の受電電圧が同じ場合には、受電ユニット25cの出力として、3倍の出力が得られる。なお、この受電ユニット25a、25b、25cを多段に構成することで、1つの受電ユニット25a、25b、25cの各々では実現できない高電圧が出力可能である。
【0060】
また、大電圧入力時には、第1、第2ダイオード251、252の逆方向電流が流れることにより、3つの受電ユニット25a、25b、25cの出力電圧がクランプされるため、負荷である電子錠21に過電圧がかかることもないため、電子錠21や各受電ユニット25a、25b、25c等に保護回路を追加する必要が無い。言い換えれば、第1、第2ダイオード251、252が、電子錠21を過電圧から保護する保護回路として機能する。
【0061】
<変形例1>
図7は、本発明の実施形態の変形例1に係る直列に接続された2つの受電ユニット25a、25bを示す構成図である。図7に示されるように、受電ユニット25a、25bは、2つ直列に接続されてもよい。受電ユニット25aの出力に受電ユニット25bの第1ダイオード251のアノードが接続されている。
【0062】
<変形例2>
図8は、本発明の実施形態の変形例2に係る直列に接続されると共に受電アンテナ23の互いの形状が異なった2つの受電ユニット25a、25bを示す構成図である。図8に示されるように、2つの受電ユニット25a、25bの受電アンテナ23の各々は、互いの形状が異なっている。受電アンテナ23の各々は、例えば偏波の異なるアンテナや周波数の異なるアンテナに構成することもできる。
【0063】
<付記>
受電機22は、マイクロ波を送電側から非接触の状態で受電するマイクロ波電力伝送受電機である。受電機22は、受電アンテナ23と半波倍電圧整流回路24とを有する受電ユニット25a、25b、25cを備える。受電ユニット25a、25b、25cは、2以上接続されている。
【0064】
この構成によれば、2以上の受電ユニット25a、25b、25cの出力が合成でき、受電機22の給電電圧が高められる。
【0065】
受電機22は、扉を開錠又は施錠する電子錠21に組み込まれている。2以上の受電ユニット25a、25b、25cは、扉の電子錠付き扉ハンドル50の非金属部分に1つずつ異なる領域に分けて内蔵されている。
【0066】
この構成によれば、受電ユニット25a、25b、25cでは電子錠付き扉ハンドル50の金属部分によって電磁波が透過せずに受電効率が向上できないことがなく、2以上の受電ユニット25a、25b、25cの出力が合成でき、受電機22の受電効率が向上できる。
【0067】
受電ユニット25a、25b、25cは、2以上直列に接続されている。
【0068】
この構成によれば、2以上の受電ユニット25a、25b、25cの出力が足し合わせて合成でき、受電機22の給電電圧が更に高められる。
【0069】
2以上の受電ユニット25a、25b、25cの受電アンテナ23の各々は、互いの形状が異なっている。
【0070】
この構成によれば、2以上の受電ユニット25a、25b、25cの各々が設置領域等に合わせて受電感度を向上しつつ高い出力電圧を発揮できる。
【0071】
電力伝送システム100は、マイクロ波電力伝送の送電機13からマイクロ波を非接触の状態で受電する電力を電子錠21に給電する受電機22を備える。電力伝送システム100は、受電機22と電子錠21とを接続した第1の給電線61に第2の給電線62を介して接続し、内部に蓄電された電力を電子錠21に給電するバックアップ電源40を備える。電力伝送システム100は、第2の給電線62の途中に配置され、受電機22からバックアップ電源40への給電を阻害すると共にバックアップ電源40から電子錠21への給電を許容するダイオード41を備える。
【0072】
この構成によれば、受電機22からの給電とバックアップ電源40からの給電との切り替えができる限り簡易的に実施でき、給電の切り替えのための追加部品等が不要になって低コスト化が図れる。
【0073】
<その他>
上記実施形態では、マイクロ波電力伝送を用いて送電機13からマイクロ波を非接触の状態で受電機22に受電させて電力を電子錠21に給電していた。しかし、これに限られない。受電機22に受電させた電力は、異なる動作デバイスに給電されてもよい
【0074】
上記実施形態では、受電ユニット25a、25b、25cは、それぞれ直列接続されていた。しかし、これに限られない。受電ユニット25a、25b、25cは、出力が合成できて受電機22の給電出力が高められれば、それぞれの接続が直列又は並列でもよい。
【0075】
また、送電機13は、区画部内だけでなく区画部外(ホテルの場合には廊下スペース等)に設けられてもよい。送電機13が区画部外に設けられる場合としては、例えば電源から送電網が配設された既存のインターホンに送電機13が内蔵されてもよい。
【0076】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明は、主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 マイクロ波非接触給電装置
10 カードスイッチシステム
11 電源
12 カードスイッチ
13 送電機
14 MCU
16 リーダライタ部
17 第1無線通信アンテナ
18 WLAN
19 第2無線通信アンテナ
20 電子錠システム
21 電子錠
22 受電機
23 受電アンテナ
24 半波倍電圧整流回路
25a 受電ユニット
25b 受電ユニット
25c 受電ユニット
26 RFIDタグ部
27 第3無線通信アンテナ
30 外部システム
31 外部無線アンテナ
40 バックアップ電源
41 ダイオード
50 扉ハンドル
51 樹脂製部分
52 ドアノブ
53 サムターン周辺
61 第1の給電線
62 第2の給電線
100 電力伝送システム
251 第1ダイオード
252 第2ダイオード
253 整流コンデンサ
254 充電コンデンサ

図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8