(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047221
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】発振装置、及び生体刺激装置
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
B06B1/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152731
(22)【出願日】2022-09-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】391009800
【氏名又は名称】株式会社テクノリンク
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 辰之
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA05
5D107AA14
5D107BB07
5D107BB08
5D107CC01
5D107CD03
(57)【要約】
【課題】基本波より高い周波数で安定に圧電素子を発振させることができる発振装置を提供する。
【解決手段】第1周波数と、前記第1周波数より高い第2周波数とで共振可能な圧電素子と、前記圧電素子に接続された制御電極と、電源側の電極と、接地側の電極と、を有するトランジスタと、前記トランジスタの前記接地側の電極に接続された第1コイルと、前記第1コイルに並列接続された第1コンデンサと、前記第1コンデンサと、前記トランジスタの前記制御電極との間に接続された第2コンデンサと、を備え、前記第1コイル及び前記第1コンデンサで構成される共振回路の共振周波数は、前記第1周波数より高く、前記第2周波数より低い、発振装置
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数と、前記第1周波数より高い第2周波数とで共振可能な圧電素子と、
前記圧電素子に接続された制御電極と、電源側の電極と、接地側の電極と、を有するトランジスタと、
前記トランジスタの前記接地側の電極に接続された第1コイルと、
前記第1コイルに並列接続された第1コンデンサと、
前記第1コンデンサと、前記トランジスタの前記制御電極との間に接続された第2コンデンサと、
を備え、
前記第1コイル及び前記第1コンデンサで構成される共振回路の共振周波数は、前記第1周波数より高く、前記第2周波数より低い、
発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置であって、
前記第1コンデンサと、前記第2コンデンサとの間に接続された第2コイルを備える、
発振装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発振装置であって、
前記圧電素子を前記第1周波数で共振させる第1指示に基づいて、オンとなり、前記圧電素子を前記第2周波数で共振させる第2指示に基づいて、オフとなる第1スイッチと、
前記第1指示に基づいて、オンとなり、前記第2指示に基づいて、オフとなる第2スイッチと、
前記第1スイッチに直列接続された第3コンデンサと、
前記第2スイッチに直列接続された第4コンデンサと、
を備え、
前記第1スイッチ及び前記第3コンデンサは、前記第1コンデンサに並列接続され、
前記第2スイッチ及び前記第4コンデンサは、前記第2コンデンサに並列接続された、
発振装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発振装置であって、
前記トランジスタを動作させるための電源電圧が印加される電源ラインと、
前記圧電素子を前記第1周波数で共振させる場合、第1レベルの前記電源電圧を前記電源ラインに印加し、前記圧電素子を前記第2周波数で共振させる場合、前記第1レベルと異なる第2レベルの前記電源電圧を前記電源ラインに印加する電源回路と、
を備える発振装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の発振装置であって、
前記トランジスタの電流を検出する抵抗を備える、
発振装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発振装置であって、
前記圧電素子の発振電圧の振幅を検出する検出回路を備える、
発振装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発振装置であって、
前記トランジスタの電流と、前記振幅と、に基づいて、前記圧電素子が異常な状態であるか否かを判定する制御回路を備える、
発振装置。
【請求項8】
請求項3に記載の発振装置であって、
前記第1及び第2指示に基づいて、前記第1及び第2スイッチを切り替える制御回路を備える、
発振装置。
【請求項9】
振動を生体に伝える生体刺激装置であって、
第1周波数と、前記第1周波数より高い第2周波数とで共振可能な圧電素子と、
前記圧電素子に接続された制御電極と、電源側の電極と、接地側の電極と、を有するトランジスタと、
前記トランジスタの前記接地側の電極に接続された第1コイルと、
前記第1コイルに並列接続された第1コンデンサと、
前記第1コンデンサと、前記トランジスタの前記制御電極との間に接続された第2コンデンサと、
を備え、
前記第1コイル及び前記第1コンデンサで構成される共振回路の共振周波数は、前記第1周波数より高く、前記第2周波数より低い、
生体刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置、及び生体刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発振装置には、圧電素子を発振させ、信号や振動を発生させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的な発振装置は、圧電素子を基本波の周波数で発振させるが、発振装置の用途によっては、発振装置に、例えば基本波より高い高調波の周波数で圧電素子を発振させることがある。しかしながら、例えば、圧電素子の動作条件が変化すると、発振装置は圧電素子を安定に高調波の周波数で発振させることが難しいことがある。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、基本波より高い周波数で安定に圧電素子を発振させることができる発振装置、及び生体刺激装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決する主たる本発明の第1の態様は、第1周波数と、前記第1周波数より高い第2周波数とで共振可能な圧電素子と、前記圧電素子に接続された制御電極と、電源側の電極と、接地側の電極と、を有するトランジスタと、前記トランジスタの前記接地側の電極に接続された第1コイルと、前記第1コイルに並列接続された第1コンデンサと、前記第1コンデンサと、前記トランジスタの前記制御電極との間に接続された第2コンデンサと、を備え、前記第1コイル及び前記第1コンデンサで構成される共振回路の共振周波数は、前記第1周波数より高く、前記第2周波数より低い、発振装置。
【0007】
前述した課題を解決する主たる本発明の第2の態様は、振動を生体に伝える生体刺激装置であって、第1周波数と、前記第1周波数より高い第2周波数とで共振可能な圧電素子と、前記圧電素子に接続された制御電極と、電源側の電極と、接地側の電極と、を有するトランジスタと、前記トランジスタの前記接地側の電極に接続された第1コイルと、前記第1コイルに並列接続された第1コンデンサと、前記第1コンデンサと、前記トランジスタの前記制御電極との間に接続された第2コンデンサと、を備え、前記第1コイル及び前記第1コンデンサで構成される共振回路の共振周波数は、前記第1周波数より高く、前記第2周波数より低い、生体刺激装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基本波より高い周波数で安定に圧電素子を発振させることができる発振装置、及び生体刺激装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】圧電素子X1の特性の変化について説明するための図である。
【
図5】生体刺激装置10で実行される処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。また、ここでは、各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。
【0011】
本実施形態で、「接続」とは、特段の言及がない限り電気的に接続されている状態をいう。このため「接続」には、2つの部品が配線のみならず、例えば、抵抗を介して接続されている場合も含む。
【0012】
=====本実施形態=====
<<<生体刺激装置10の構成>>>
図1は、本発明の一実施形態である生体刺激装置10の構成の一例を示す図である。生体刺激装置10は、圧電素子X1(後述)を発振させることより発生する超音波帯の振動を、例えば生体の治療部位に伝える発振装置であり、プローブ11、及び本体12を含んで構成される。
【0013】
プローブ11は、例えば人の肌に接触することにより、圧電素子X1からの振動を生体に伝える部位であり、本体12に、電源ラインLi1,接地ラインLi2等の配線を介して取り付けられている。なお、本実施形態では、電源ラインLi1,接地ラインLi2に加え、プローブ11と、本体12との間には、後述する信号S1、電圧Vd1,Vd2のそれぞれをやりとりさせるための配線が設けられている。
【0014】
プローブ11には、発振回路20が設けられ、本体12には、電源回路21、及び制御回路22が設けられている。なお、本実施形態では、発振回路20がプローブ11に設けられることとしたが、例えば、圧電素子X1のみが設けられ、圧電素子X1を除く発振回路20の構成が本体12に設けられていても良い。
【0015】
発振回路20は、電源回路21からの電源が供給されると、圧電素子X1を操作結果に応じた周波数で発振させる回路である。また、詳細について後述するが、発振回路20は、圧電素子X1を動作させるトランジスタ(後述)に流れる電流に応じた電圧Vd1と、圧電素子X1の発振電圧Vosc(後述)の振幅に応じた電圧Vd2と、を制御回路22に出力する。
【0016】
電源回路21は、圧電素子X1が発振する周波数に応じた電源電圧を発振回路20に供給する回路である。詳細は後述するが、本実施形態の電源回路21は、圧電素子X1を基本波の周波数で発振させる場合、第1レベルV1の電源電圧Vccを発振回路20に供給する。一方、電源回路21は、圧電素子X1を基本波の3倍の高調波(以下、3倍波と称する。)の周波数で発振させる場合、第1レベルV1とは異なる、第2レベルV2の電源電圧Vccを発振回路20に供給する。
【0017】
なお、第1レベルV1,第2レベルV2は、発振回路20が基本波、3倍波の周波数で所望の動作するよう、設定されている。これらのレベルは、発振回路20を構成する素子(例えば、圧電素子X1)の特性に応じて変化する。本実施形態において、「第1レベルV1」は、例えば12Vであり、「第2レベルV2」は、第1レベルV1とは異なるレベルの電圧(例えば15V)である。
【0018】
制御回路22は、利用者の操作結果等に基づいて、発振回路20、及び電源回路21の動作を制御する。詳細は後述するが、制御回路22は、操作結果に応じた信号S1,S2のそれぞれを発振回路20、及び電源回路21に出力する。また、制御回路22は、電圧Vd1,Vd2に基づいて、圧電素子X1の動作が異常であることを判定すると、所定の信号S2を出力し、圧電素子X1の発振が停止するよう、電源回路21に電源電圧Vccの生成を停止させる。
【0019】
<<発振回路20の構成>>
図2は、圧電素子X1を基本波、及び3倍波のそれぞれの周波数で発振させる発振回路20の一例を示す図である。発振回路20は、電源ラインLi1、接地ラインLi2、コンデンサC0、発振部40、バイアス回路41、切替回路42、及び検出回路43を含んで構成される。
【0020】
電源ラインLi1は、電源回路21からのプラス側の電圧である電源電圧Vccが印加されるラインであり、接地ラインLi2は、電源回路21からのマイナス側の電圧である接地電圧Vgnd(ここでは、0V)が印加されるラインである。
【0021】
電源ラインLi1と、接地ラインLi2との間には、電源ラインLi1に印加された電源電圧Vccを安定化させるためのコンデンサC0が接続されている。
【0022】
==発振部40==
発振部40は、圧電素子X1を発生させる部位であり、圧電素子X1、トランジスタQ1、インダクタL1~L3、コンデンサC1a,C2a,C3、及び抵抗R1を含んで構成される。
【0023】
圧電素子X1は、所定の周波数の交流電圧が印加されると、振動する(共振する)セラミック製の振動子である。本実施形態の圧電素子X1は、例えば、
図2に示すリアクタンス特性を有する。具体的には、圧電素子X1は、発振の基本波が周波数f1となり、3倍波が周波数f2(=3×f1)となり、5倍波が周波数f3(=5×f1)となる特性を有する。なお、本実施形態では、圧電素子X1が発振することにより、圧電素子X1及びトランジスタQ1が接続されたノードに発生する電圧を、発振電圧Voscとする。ここで、圧電素子X1は、周波数f1,f3,f5で共振可能な素子に相当する。
【0024】
トランジスタQ1は、後述するインダクタL3,L1,L2、コンデンサC1a,C2a、及び圧電素子X1とともに、正帰還回路を構成し、圧電素子X1を誘導性の領域で動作させる素子である。トランジスタQ1のベース電極は、圧電素子X1の一端に接続され、コレクタ電極は、電源ラインLi1を介して圧電素子X1の他端に接続され、エミッタ電極は、インダクタL3に接続されている。
【0025】
なお、ベース電極は、「制御電極」に相当し、コレクタ電極は、「電源側の電極」に相当し、エミッタ電極は、「接地側の電極」に相当する。また、本実施形態ではトランジスタQ1として、NPNトランジスタを用いたが、例えばNMOSトランジスタ等、他の種類のトランジスタを用いても良い。そのような場合、例えばNMOSトランジスタのゲート電極が「制御電極」に相当し、ドレイン電極が「電源側の電極」に相当し、ソース電極が「接地側の電極」に相当する。
【0026】
インダクタL1は、インダクタL3を介してトランジスタQ1に接続されている。また、インダクタL1には、コンデンサC1aが並列接続されているため、インダクタL1及びコンデンサC1aは、いわゆる共振回路を構成する。なお、インダクタL3は、トランジスタQ1のエミッタ電極から出力される波形を補償する素子である。
【0027】
ところで、本実施形態の圧電素子X1は、圧電素子X1のリアクタンスが誘導性となる領域で発振する。そして、圧電素子X1に印加される交流電圧の周波数が、
図3の周波数f1より低い場合、圧電素子X1は、基本波の周波数で発振することになる。なお、
図3は、圧電素子X1の特性の一例を示すイメージ図である。実際の圧電素子X1は、周波数f1~f3以外にも、いわゆるスプリアス共振を多く含むが、ここでは、便宜上省略している。
【0028】
圧電素子X1を3倍波の周波数f2で動作させるためには、圧電素子X1に印加される交流電圧の周波数を、圧電素子X1のリアクタンスが誘導性となる周波数f3より若干低い周波数とする必要がある。本実施形態では、圧電素子X1の発振を持続させるべく、圧電素子X1の共振点(発振周波数)より、インダクタL1及びコンデンサC1aの共振回路の共振点(共振周波数fr)を低く設定している。具体的には、インダクタL1及びコンデンサC1aの共振回路の共振周波数frを、基本波の周波数f1より高く、3倍波の周波数f2より低く設定している。
【0029】
このような範囲に共振周波数frを設定することにより、圧電素子X1が、発振部40の他の素子(例えば、後述するインダクタL2やコンデンサC2a)を含む正帰還回路の一部として動作する。本実施形態では、上述の範囲に共振周波数frを設定しつつ、正帰還回路を構成する素子(例えば、インダクタL2やコンデンサC2a)の値を調整することにより、圧電素子X1の発振電圧Voscを3倍波の周波数とすることができる。
【0030】
インダクタL2、及びコンデンサC2aのそれぞれは、共振回路からの信号を、トランジスタQ1のベース電極に帰還するための素子であり、コンデンサC1aと、トランジスタQ1のベース電極との間に接続されている。
【0031】
ここで、
図4を参照しつつ、インダクタL2の役割について説明する。
図4(a)は、圧電素子X1が取り付けられたプローブ11のヘッド部分が生体に接触した状態を説明するための図である。
図4(b)は、プローブ11のヘッド部分が生体に接触する前後の圧電素子X1のQ値の概要を説明するための図である。なお、Q値とは、共振の鋭さを示す数値である。
【0032】
図4(b)において、点線は、プローブ11が生体に接触しない状態の圧電素子X1のQ値の波形の一例であり、実線は、プローブ11が生体に接触した状態の圧電素子X1のQ値の波形の一例である。
図4(b)の実線に示すように、プローブ11が生体に接触した状態では、圧電素子X1の振動が人体に吸収されるため、機械的な振動損失が増加する。この結果、圧電素子X1の等価抵抗が増加し、圧電素子X1の振動が抑制される。したがって、、圧電素子X1の両端電圧の振幅は小さくなり、圧電素子X1の3倍波の周波数での発振が停止してしまうことがある。
【0033】
本実施形態では、インダクタL1及びコンデンサC1aで構成される共振回路から、トランジスタQ1のベース電極へ帰還される信号の振幅を大きくすべく、インダクタL2を、コンデンサC1aと、トランジスタQ1との間に接続している。この結果、本実施形態では、圧電素子X1の等価抵抗が大きくなった場合であっても、圧電素子X1を3倍波の周波数で安定に発振させることができる。
【0034】
なお、本実施形態では、トランジスタQ1、圧電素子X1、及び共振回路を選定した後に、圧電素子X1が3倍波の周波数で安定に発振するよう、例えば、インダクタL2のインダクタンス値と、コンデンサC2aの容量値とを定めている。
【0035】
抵抗R1は、トランジスタQ1に流れる電流を検出するための素子であり、インダクタL1と、接地との間に接続される。コンデンサC3は、抵抗R1に並列接続され、トランジスタQ1に流れる電流のうち、高周波成分の電流を接地に流す素子である。このため、抵抗R1は、トランジスタQ1に流れる電流のうち低周波成分(主に、直流電流)を検出することができる。
【0036】
本実施形態では、インダクタL1と、抵抗R1とが接続されたノードの電圧を電圧Vd1としている。したがって、電圧Vd1のレベルは、トランジスタQ1に流れる電流が増加するほど高くなる。
【0037】
なお、インダクタL1は、「第1コイル」に相当し、インダクタL2は、「第2コイル」に相当する。また、コンデンサC1aは、「第1コンデンサ」に相当し、コンデンサC2aは、「第2コンデンサ」に相当し、コンデンサC1bは、「第3コンデンサ」に相当し、コンデンサC2bは、「第4コンデンサ」に相当する。
==バイアス回路41==
バイアス回路41は、トランジスタQ1のベース電極に印加するバイアス電圧を生成する回路であり、抵抗R2、インダクタL4、及びコンデンサC4を含んで構成される。抵抗R2及びインダクタL4は、電源ラインLi1に印加された電源電圧Vccを、トランジスタQ1のベース電極に印加する。なお、インダクタL4は、圧電素子X1が発振した際に発生する振幅の大きい発振電圧Voscが、抵抗R2に印加することを防ぐ素子である。
【0038】
また、コンデンサC4は、トランジスタQ1のベース電極からの高周波成分の電流を接地に流す素子である。したがって、コンデンサC4は、インダクタL4とともに、抵抗R2に高周波の大きい電圧が発生することを防ぐことができる。
【0039】
==切替回路42==
切替回路42は、圧電素子X1を基本波の周波数f1で発振させるか、3倍波の周波数f2で発振させるか、を切り替える回路である。切替回路42は、抵抗R3、ソリッドステートリレーSSR1,SSR2、及びコンデンサC1b,C2bを含んで構成される。
【0040】
抵抗R3は、ソリッドステートリレーSSR1,SSR2をオンする際に、電源ラインLi1からソリッドステートリレーSSR1,SSR2に対して電流を供給するための素子である。
【0041】
ソリッドステートリレーSSR1は、発光ダイオードPD1、及びスイッチSW1を含んで構成される。発光ダイオードPD1は、例えば、
図1の制御回路22からの信号S1がローレベル(以下、Lレベル)となると点灯し、信号S1がハイレベル(以下、Hレベル)となると、消灯する。
【0042】
スイッチSW1は、コンデンサC1bに直列接続された素子であり、発光ダイオードPD1が点灯するとオンし、発光ダイオードPD1が消灯するとオフする。
【0043】
ソリッドステートリレーSSR2は、ソリッドステートリレーSSR1と同様に、発光ダイオードPD2、及びスイッチSW2を含んで構成される。発光ダイオードPD2は、信号S1がLレベルとなると点灯し、信号S1がHレベルとなると消灯する。
【0044】
スイッチSW2は、コンデンサC2bに直列接続された素子であり、発光ダイオードPD2が点灯するとオンし、発光ダイオードPD2が消灯するとオフする。
【0045】
コンデンサC1bは、圧電素子X1を基本波の周波数f1で発振させる際に用いられる素子である。コンデンサC1bの一端は、コンデンサC1aの一端に接続され、コンデンサC1bの他端は、スイッチSW1を介してコンデンサC1aの他端に接続されている。したがって、スイッチSW1がオンとなると、コンデンサC1a及びコンデンサC1bは並列接続されることになる。
【0046】
コンデンサC2bは、圧電素子X1を基本波の周波数f1で発振させる際に用いられる素子である。コンデンサC2bの一端は、コンデンサC2aの一端に接続され、コンデンサC2bの他端は、スイッチSW2を介してコンデンサC2aの他端に接続されている。したがって、スイッチSW2がオンとなると、コンデンサC2a及びコンデンサC2bは並列接続されることになる。
【0047】
なお、コンデンサC1b,C2bのそれぞれの容量値は、圧電素子X1に印加される交流電圧の周波数が、基本波の周波数f1となるよう選択されている。したがって、本実施形態では、スイッチSW1,SW2がオンの場合、発振部40は圧電素子X1を基本波の周波数f1で発振させ、スイッチSW1,SW2がオフの場合、発振部40は圧電素子X1を3倍波の周波数f2で発振させる。
【0048】
なお、スイッチSW1は、「第1スイッチ」に相当し、スイッチSW2は、「第2スイッチ」に相当する。
【0049】
また、基本波の周波数f1は「第1周波数」に相当し、3倍波の周波数f2は「第2周波数」に相当する。第1レベルV1の電源電圧Vccは、「第1レベルの電源電圧」に相当し、第2レベルV2の電源電圧Vccは、「第2レベルの電源電圧」に相当する。さらに、Lレベルの信号S1は、「第1指示」に相当し、Hレベルの信号S1は、「第2指示」に相当する。
【0050】
==検出回路43==
検出回路43は、圧電素子X1の発振電圧Voscの振幅を検出し、電圧Vdとして出力する回路である。検出回路43は、コンデンサC11,C12、ダイオードD1、及び抵抗R10を含んで構成される。
【0051】
コンデンサC11は、トランジスタQ1及び圧電素子X1が接続されたノードの発振電圧Voscの高周波成分を通過させる素子である。
【0052】
ダイオードD1は、コンデンサC11を通過した発振電圧Voscの高周波成分を整流する素子である。抵抗R10及びコンデンサC12は、ダイオードD1で整流された整流電圧の積分する積分回路である。この結果、コンデンサC12の電圧Vd2のレベルは、発振電圧Voscの振幅が大きくなると高くなる。
【0053】
上述のように、発振回路20からは、トランジスタQ1に流れる電流に応じた電圧Vd1と、発振電圧Voscの振幅に応じた電圧Vd2とが出力される。一般に、プローブ11が想定された状態で、人の肌に使用されている場合、電圧Vd1,Vd2は所定の範囲で変化する。しかしながら、例えば、プローブ11が想定されていない状態で使用されると、電圧Vd1,Vd2は所定の範囲を超えてしまうことがある。
【0054】
詳細は後述するが、本実施形態の制御回路22は、電圧Vd1,Vd2に基づいて、プローブ11が想定された状態で動作しているか否かを把握することが可能となる。そして、制御回路22は、電圧Vd1,Vd2に基づいて、プローブ11が想定された状態で動作していないと判定すると、電源回路21の動作を停止させる。
【0055】
なお、以下、プローブ11が想定された状態で動作していない状態を、適宜「プローブ11が異常な状態」、または「圧電素子X1が異常な状態」と称することがある。なお、「異常な状態」としては、例えば、プローブ11を人の肌に接触させない状態で長時間、圧電素子X1を動作させて、圧電素子X1が発熱した状態が挙げられる。
【0056】
<<<生体刺激装置10の動作>>>
図5は、生体刺激装置10の動作を説明するためのフローチャートである。まず、利用者が生体刺激装置10を操作し、プローブ11の振動の周波数を設定する。制御回路22は、設定された周波数の操作結果に基づいて、プローブ11の振動の周波数を判定する(S1)。
【0057】
基本波が選択された場合(S1:基本波)、制御回路22は、所定の信号S2を電源回路21に出力し、電源回路21に、第1レベルV1の電源電圧Vccを生成させる(S2)。また、制御回路22は、Lレベルの信号S1を発振回路20に出力するため、ソリッドステートリレーSSR1,SSR2はオン(つまり、スイッチSW1,SW2はオン)となる(S3)。この結果、発振回路20の圧電素子X1は、基本波の周波数f1で発振することになるため、プローブ11では、周波数f1の信号が生成される。
【0058】
一方、3倍波が選択された場合(S1:3倍波)、制御回路22は、所定の信号S2を電源回路21に出力し、電源回路21に、第2レベルV2の電源電圧Vccを生成させる(S4)。また、制御回路22は、Hレベルの信号S1を発振回路20に出力するため、ソリッドステートリレーSSR1,SSR2はオフ(つまり、スイッチSW1,SW2はオフ)となる(S5)。この結果、発振回路20の圧電素子X1は、3倍波の周波数f2で発振することになるため、プローブ11では、周波数f2の信号が生成される。
【0059】
なお、圧電素子X1が3倍波の周波数f2で発振する際の圧電素子X1の等価抵抗は、圧電素子X1が基本波の周波数f1で発振する際の圧電素子X1の等価抵抗より大きい。したがって、3倍波の周波数f2で発振させる場合には、基本波の周波数f1で発振させる場合より、電源電圧Vccを高くすることで、圧電素子X1の動作条件をほぼ等しくすることができる。この結果、利用者がいずれの周波数を選択した場合であっても、プローブ11で発生する信号の強度は略等しくなる。
【0060】
また、制御回路22は、操作結果に基づいて、周波数の切り替えがあったか否かを判定する(S6)。周波数の切り替えがある場合(S6:Yes)、制御回路22は、処理S1を実行し、切り替えられた周波数に応じた処理を実行する。
【0061】
一方、周波数の切り替えがない場合(S6:No)、制御回路22は、停止条件が満たされたか否かを判定する(S7)。ここで、「停止条件」とは、例えば、利用者が生体刺激装置10の動作が停止するよう操作を行った場合、または圧電素子X1が異常な状態となった場合の何れかである。
【0062】
そして、制御回路22は、停止条件が満たされない場合(S7:No)、処理S6を実行する。一方、制御回路22は、停止条件が満たされた場合(S7:Yes)、制御回路22は、電源回路21を制御し、電源電圧Vccの生成を停止させる。この結果、生体刺激装置10の動作は停止されることになる。
【0063】
===まとめ===
以上、本実施形態の生体刺激装置10について説明した。生体刺激装置10の発振回路20において、
図2のインダクタL1及びコンデンサC1aの共振回路の共振周波数frを、基本波の周波数f1より高く、3倍波の周波数f2より低く設定している。このような範囲に共振周波数frを設定すると、圧電素子X1が基本波の周波数f1でなく、3倍波の周波数f2で動作し易くなる。したがって、本実施形態では、安定に圧電素子X1の発振電圧Voscを3倍波の周波数とすることができる。
【0064】
また、例えば、
図4(b)に示すように、プローブ11を生体に接触させると、圧電素子X1の振動が人体に吸収され、圧電素子X1の等価抵抗が大きくなりQ値が変化する。したがって、例えば、一般的なコルピッツ型の発振回路を用いて圧電素子X1を3倍波の周波数f2で動作させる際には、圧電素子X1の発振が停止してしまうことがある。しかしながら、本実施形態では、インダクタL2を介して共振回路の信号を、トランジスタQ1に帰還している。したがって、発振回路20では、圧電素子X1の等価抵抗が増加した場合であっても、安定に圧電素子X1を発振させることができる。
【0065】
また、発振回路20は、スイッチSW1,SW2がオンすると、コンデンサC1aに対し、コンデンサC1bが並列接続され、コンデンサC2aに対し、コンデンサC2bが並列接続される。そして、コンデンサC1b,C2bのそれぞれは、圧電素子X1が基本波の周波数f1で発振するよう、選択されている。したがって、本実施形態では、基本波の周波数f1と、3倍波の周波数f2で圧電素子X1を発振させることができる。
【0066】
また、圧電素子X1が基本波の周波数f1で発振する場合、電源電圧Vccは第1レベルV1となり、圧電素子X1が3倍波の周波数f2で発振する場合、電源電圧Vccは第2レベルV2となる。したがって、圧電素子X1の等価抵抗が増加した場合であっても、圧電素子X1の振動の強度が減少することを防ぐことができる。
【0067】
また、発振回路20には、トランジスタQ1の電流を検出する抵抗R1が設けられている。したがって、例えば、制御回路22は、電圧Vd1に基づいて、トランジスタQ1の過電流を把握することができる。
【0068】
また、発振回路20には、発振電圧Voscの振幅に応じた電圧Vd2を検出する検出回路43が設けられている。したがって、例えば、制御回路22は、電圧Vd2に基づいて、発振電圧Voscの振幅を把握することができる。
【0069】
また、制御回路22は、例えば、電圧Vd1,Vd2に基づいて、圧電素子X1が異常な状態であるか否かを判定する(例えば、
図5の処理S7)。したがって、本実施形態では、利用者が、安全に生体刺激装置10を用いることができる。
【0070】
また、ソリッドステートリレーSSR1,SSR2の状態は、制御回路22からの信号S1によって切り替えられる。したがって、例えば、基本波、3倍波のそれぞれに対応するプローブを付け替える場合と比べ、高速でプローブ11の圧電素子X1の動作周波数を切り替えることができる。
【0071】
なお、本実施形態の発振回路20は、圧電素子X1を基本波、3倍波のそれぞれの周波数で発振させることとしたが、これに限られず、たとえば、3倍波、5倍波の周波数で発振させることとしても良い。
【0072】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0073】
10 生体刺激装置
11 プローブ
12 本体
20 発振回路
21 電源回路
22 制御回路
40 発振部
41 バイアス回路
42 切替回路
43 検出回路
C0,C1a,C1b,C2a,C2b,C3,C4,C11,C12 コンデンサ
Q1 トランジスタ
R1~R3,R10 抵抗
D1 ダイオード
X1 圧電素子
Li1 電源ライン
Li2 接地ライン
PD1,PD2 発光ダイオード
SW1,SW2 スイッチ
SSR1,SSR2 ソリッドステートリレー