(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047224
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】屈曲経路形成部材、屈曲経路形成装置、入隅領域部経路形成部材、および屈曲経路形成装置の設置構造
(51)【国際特許分類】
F16L 1/00 20060101AFI20240329BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240329BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20240329BHJP
E04F 19/02 20060101ALI20240329BHJP
E04F 17/08 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
F16L1/00 B
H02G3/04 018
F16L57/00 A
E04F19/02 B
E04F17/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152735
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛士
【テーマコード(参考)】
3H024
5G357
【Fターム(参考)】
3H024AA02
3H024AB02
3H024AC05
5G357DA06
5G357DB01
5G357DC01
5G357DC03
5G357DC04
5G357DD02
5G357DE03
5G357DE08
(57)【要約】
【課題】 壁孔が入隅領域部の角に近い位置にあっても、容易に設置することができる、屈曲経路形成部材を提供する。
【解決手段】 屈曲経路形成部材2は、二つの壁面1a、1aによって形成される入隅領域部1に沿うとともに屈曲して壁面1aに形成された壁孔1b内へと続く配線・配管材の配設路における、屈曲した経路を覆う。この屈曲経路形成部材2は、二つの壁面1a、1aのそれぞれに当接する二つの当接部2a、2aを備え、かつ、屈曲した経路を収容する収容空間2bと、その収容空間2bが入隅領域部1に沿う直線状の経路側と連通する連通口2cと、収容空間2bが壁孔1bと連通する開口2dとを備える。この開口2dは、二つの壁面1a、1aのいずれの側にも開口する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物における二つの壁面によって形成される入隅領域部に沿うとともに屈曲して前記壁面に形成された壁孔内へと続く配線・配管材の配設路における、屈曲した経路を覆う、屈曲経路形成部材であって、
前記二つの壁面のそれぞれに当接する二つの当接部を備え、かつ、
前記屈曲した経路を収容する収容空間と、その収容空間が前記配設路における前記入隅領域部に沿う直線状の経路側と連通する連通口と、前記収容空間が前記壁孔と連通する開口とを備え、
前記開口は、前記二つの壁面のいずれの側にも開口するように設けられている、屈曲経路形成部材。
【請求項2】
互いに組み付けられて前記収容空間を内部に形成する、ベース体とカバー体とを備え、
前記ベース体に、前記二つの当接部が設けられ、
前記開口は、前記ベース体に設けられ、その開口は、前記二つの当接部のそれぞれに形成される開口部を備える、請求項1に記載の屈曲経路形成部材。
【請求項3】
前記開口は、前記開口部が互いに連通して形成される、請求項2に記載の屈曲経路形成部材。
【請求項4】
前記ベース体または/および前記カバー体は、前記二つの壁面の少なくとも一方の壁面に沿うことができるように前記入隅領域部から離れる側に延設されるフランジ部を有し、そのフランジ部により、前記入隅領域部から離れる側にずれて形成された前記壁孔の一部を覆うことが可能となっている、請求項2または3に記載の屈曲経路形成部材。
【請求項5】
前記連通口は、一つであり、
前記フランジ部は、二つ設けられ、それらフランジ部は、前記二つの壁面のそれぞれの壁面に沿うことができるように延設されている、請求項4に記載の屈曲経路形成部材。
【請求項6】
請求項2または3に記載の屈曲経路形成部材と、スペーサとを備え、
前記スペーサは、前記二つの当接部における一の当接部と、その当接部に対向する前記壁面との間に介在して、その壁面に対して、前記屈曲経路形成部材を嵩上げする、屈曲経路形成装置。
【請求項7】
前記スペーサは、前記二つの当接部のそれぞれに対応するように、複数設けられ、それらスペーサは、同一形状のスペーサからなる、請求項6に記載の屈曲経路形成装置。
【請求項8】
前記スペーサは、前記当接部と重ねられるスペーサ本体と、そのスペーサ本体から突出する係合部とを備え、
前記係合部は、前記当接部と前記スペーサとが位置合わせされるように、前記当接部に設けられた被係合部に係合可能であり、また、
前記係合部は、破断可能な脆弱部を介して前記スペーサ本体と一体に形成されている、請求項6に記載の屈曲経路形成装置。
【請求項9】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の屈曲経路形成部材と、前記直線状の経路を覆う直線経路形成部材とからなる、入隅領域部経路形成部材であって、
前記直線経路形成部材は、前記直線状の経路を収容する直状収容空間を備え、
前記屈曲経路形成部材は、前記連通口側に、前記直線経路形成部材の端部が接続される接続口を備える、入隅領域部経路形成部材。
【請求項10】
請求項6に記載の屈曲経路形成装置の設置構造であって、
前記スペーサは、そのスペーサの厚みの両面から突出する係合部を備え、
前記スペーサは、前記二つの当接部における一の当接部と、その当接部に対向する前記壁面との間に、一つ、または複数重ね合わされるようにして介在し、
前記当接部とその当接部に当たる前記スペーサとが位置合わせされるように、そのスペーサの、前記当接部側の面から突出する前記係合部が、前記当接部に設けられた被係合部に係合し、また、
前記壁面に当たる前記スペーサの、前記壁面側の面から突出する前記係合部が、前記壁孔に入り込んでいる、屈曲経路形成装置の設置構造。
【請求項11】
請求項6に記載の屈曲経路形成装置の設置構造であって、
前記スペーサは、そのスペーサの厚みの少なくとも一方の面から突出する係止部を備え、
前記スペーサは、前記二つの当接部における一の当接部と、その当接部に対向する前記壁面との間に、複数重ね合わされるようにして介在し、
複数の前記スペーサは、互いに重なるスペーサどうしが位置合わせされるように、一側のスペーサの前記係止部が、他側のスペーサに設けられた被係止部に係合し、また、
前記壁面に当たる前記スペーサは、前記壁面側の面から突出する前記係止部を有し、その係止部が、前記壁孔に入り込んでいる、屈曲経路形成装置の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入隅領域部において壁孔内へと続く経路を形成する、屈曲経路形成部材、屈曲経路形成装置、入隅領域部経路形成部材、および屈曲経路形成装置の設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、壁孔を通って壁表に引き出されて壁面に沿う配管材における、屈曲部を収容保護する屈曲部保護カバーがあった(例えば、特許文献1参照)。
図20に示されるように、この保護カバー12は、壁面(図示せず)に固定される基台13と、その基台13に組み付けられる蓋体14とからなっていた。ここで、基台13は、平板状の基部13aを備え、その基部13aに、壁面にあけられた壁孔に対向し配管材が通る貫通孔13bがあけられていた。また、基部13aは、両側にV字溝13cとフランジ部13dとを備えており、そのフランジ部13dは、基部13aをV字溝13c部分で分断することで除去可能となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の保護カバー12においては、壁面にあけられた壁孔が入隅領域部の角に隣接するほどに近い位置に形成された場合は、基台13にあるフランジ部13dを除去したとしても、入隅領域部を形成する他方の壁面と干渉して保護カバー12を設置することができなかったり、その設置作業がしにくかったりした。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、壁孔が入隅領域部の角に近い位置にあっても、容易に設置することができる、屈曲経路形成部材、屈曲経路形成装置、入隅領域部経路形成部材、および屈曲経路形成装置の設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る屈曲経路形成部材、屈曲経路形成装置、入隅領域部経路形成部材、および屈曲経路形成装置の設置構造は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る屈曲経路形成部材は、建物における二つの壁面によって形成される入隅領域部に沿うとともに屈曲して前記壁面に形成された壁孔内へと続く配線・配管材の配設路における、屈曲した経路を覆う、屈曲経路形成部材である。この屈曲経路形成部材は、前記二つの壁面のそれぞれに当接する二つの当接部を備え、かつ、前記屈曲した経路を収容する収容空間と、その収容空間が前記配設路における前記入隅領域部に沿う直線状の経路側と連通する連通口と、前記収容空間が前記壁孔と連通する開口とを備える。そして、前記開口は、前記二つの壁面のいずれの側にも開口するように設けられている。
【0007】
この屈曲経路形成部材によると、屈曲経路形成部材は、二つの壁面によって形成される入隅領域部において、それら二つの壁面のそれぞれに当接する二つの当接部を備える。そして、屈曲経路形成部材は、内側の収容空間が壁面に形成された壁孔と連通する開口を備えており、その開口が二つの壁面のいずれの側にも開口することで、その開口によって、壁孔が二つの壁面のいずれにあってもその壁孔と収容空間とを連通させることができ、壁孔が入隅領域部の角に近い位置にあっても、その壁孔に対し、この屈曲経路形成部材を容易に設置することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る屈曲経路形成部材は、請求項1に記載の屈曲経路形成部材において、互いに組み付けられて前記収容空間を内部に形成する、ベース体とカバー体とを備える。ここで、前記ベース体に、前記二つの当接部が設けられる。そして、前記開口は、前記ベース体に設けられ、その開口は、前記二つの当接部のそれぞれに形成される開口部を備える。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る屈曲経路形成部材は、請求項2に記載の屈曲経路形成部材において、前記開口は、前記開口部が互いに連通して形成される。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る屈曲経路形成部材は、請求項2または3に記載の屈曲経路形成部材において、前記ベース体または/および前記カバー体は、前記二つの壁面の少なくとも一方の壁面に沿うことができるように前記入隅領域部から離れる側に延設されるフランジ部を有し、そのフランジ部により、前記入隅領域部から離れる側にずれて形成された前記壁孔の一部を覆うことが可能となっている。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係る屈曲経路形成部材は、請求項4に記載の屈曲経路形成部材において、前記連通口は、一つであり、前記フランジ部は、二つ設けられ、それらフランジ部は、前記二つの壁面のそれぞれの壁面に沿うことができるように延設されている。
【0012】
また、請求項6に記載の発明に係る屈曲経路形成装置は、請求項2または3に記載の屈曲経路形成部材と、スペーサとを備える。ここで、前記スペーサは、前記二つの当接部における一の当接部と、その当接部に対向する前記壁面との間に介在して、その壁面に対して、前記屈曲経路形成部材を嵩上げする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明に係る屈曲経路形成装置は、請求項6に記載の屈曲経路形成装置において、前記スペーサは、前記二つの当接部のそれぞれに対応するように、複数設けられ、それらスペーサは、同一形状のスペーサからなる。このとき、スペーサは、二つの当接部のそれぞれに対し、同じ向きで用いられたり、向きを変えて用いられたり、表裏を反転して用いられたりするが、それらスペーサが同一形状であることから、スペーサを複数種類用意する必要がなく、スペーサの管理が容易となる。
【0014】
また、請求項8に記載の発明に係る屈曲経路形成装置は、請求項6に記載の屈曲経路形成装置において、前記スペーサは、前記当接部と重ねられるスペーサ本体と、そのスペーサ本体から突出する係合部とを備える。ここで、前記係合部は、前記当接部と前記スペーサとが位置合わせされるように、前記当接部に設けられた被係合部に係合可能である。そして、前記係合部は、破断断可能な脆弱部を介して前記スペーサ本体と一体に形成されている。これにより、係合部を除去したい場合には、脆弱部を破断することで、その係合部を簡単に除去することができる。
【0015】
また、請求項9に記載の発明に係る入隅領域部経路形成部材は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の屈曲経路形成部材と、前記直線状の経路を覆う直線経路形成部材とからなる。前記直線経路形成部材は、前記直線状の経路を収容する直状収容空間を備える。そして、前記屈曲経路形成部材は、前記連通口側に、前記直線経路形成部材の端部が接続される接続口を備える。
【0016】
また、請求項10に記載の発明に係る屈曲経路形成装置の設置構造は、請求項6に記載の屈曲経路形成装置の設置構造である。ここで、前記スペーサは、そのスペーサの厚みの両面から突出する係合部を備える。そして、前記スペーサは、前記二つの当接部における一の当接部と、その当接部に対向する前記壁面との間に、一つ、または複数重ね合わされるようにして介在する。このとき、前記当接部とその当接部に当たる前記スペーサとが位置合わせされるように、そのスペーサの、前記当接部側の面から突出する前記係合部が、前記当接部に設けられた被係合部に係合する。そして、前記壁面に当たる前記スペーサの、前記壁面側の面から突出する前記係合部が、前記壁孔に入り込んでいる。壁孔のある壁面に当たるスペーサにおいて、壁面側の面から突出する係合部が、壁孔に入り込むことで、その係合部をスペーサから除去する必要がない。
【0017】
また、請求項11に記載の発明に係る屈曲経路形成装置の設置構造は、請求項6に記載の屈曲経路形成装置の設置構造である。ここで、前記スペーサは、そのスペーサの厚みの少なくとも一方の面から突出する係止部を備える。そして、前記スペーサは、前記二つの当接部における一の当接部と、その当接部に対向する前記壁面との間に、複数重ね合わされるようにして介在する。このとき、複数の前記スペーサは、互いに重なるスペーサどうしが位置合わせされるように、一側のスペーサの前記係止部が、他側のスペーサに設けられた被係止部に係合する。そして、前記壁面に当たる前記スペーサは、前記壁面側の面から突出する前記係止部を有し、その係止部が、前記壁孔に入り込んでいる。壁孔のある壁面に当たるスペーサにおいて、壁面側の面から突出する係止部が、壁孔に入り込むことで、その係止部をスペーサから除去する必要がない。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る屈曲経路形成部材、屈曲経路形成装置、入隅領域部経路形成部材、および屈曲経路形成装置の設置構造によれば、二つの当接部が二つの壁面に当接し、開口が二つの壁面のいずれの側にも開口することで、壁孔が入隅領域部の角に近い位置にあっても、屈曲経路形成部材や屈曲経路形成装置や入隅領域部経路形成部材を、容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の第一の実施の形態の、平面図である。
【
図2】同じく、屈曲経路形成部材部分を示す断面図である。
【
図3】同じく、屈曲経路形成部材部分を示す斜視図である。
【
図4】同じく、屈曲経路形成部材のカバー体を取り除いた斜視図である。
【
図5】同じく、屈曲経路形成部材の分解拡大側面図である。
【
図8】この発明の第二の実施の形態の、平面図である。
【
図9】同じく、屈曲経路形成部材部分を示す断面図である。
【
図10】同じく、屈曲経路形成部材部分を示す斜視図である。
【
図11】同じく、屈曲経路形成部材のカバー体を取り除いた斜視図である。
【
図12】同じく、屈曲経路形成部材を取り除いた斜視図である。
【
図13】同じく、スペーサを示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、正面図、(c)は、底面図である。
【
図14】同じく、スペーサを、一方の壁面(ひいては、一方の当接部)において二つ設けた
図9相当図である。
【
図15】同じく、スペーサを、二つの壁面(ひいては、二つの当接部)のそれぞれに一つずつ設けた
図11相当図である。
【
図17】同じく、スペーサを、二つの壁面(ひいては、二つの当接部)のそれぞれに二つずつ設けた
図11相当図である。
【
図19】スペーサの変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図20】従来の保護カバーを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1~
図7は、本発明の第一の実施の形態を示す。図中符号1は、入隅領域部を示し、この入隅領域部1は、建物における二つの壁面1a、1aによって形成される。2は、屈曲経路形成部材を示す。3は、直線経路形成部材を示す。4は、入隅領域部経路形成部材を示す。
【0022】
屈曲経路形成部材2は、入隅領域部1に沿うとともに屈曲して壁面1aに形成された壁孔1b内へと続く配線・配管材(配線材または配管材(図示せず))の配設路における、屈曲した経路を覆うものである。この屈曲経路形成部材2は、二つの壁面1a、1aのそれぞれに当接する二つの当接部2a、2aを備える。そして、屈曲経路形成部材2は、前記屈曲した経路を収容する収容空間2bと、その収容空間2bが前記配設路における入隅領域部1に沿う直線状の経路側と連通する連通口2cと、収容空間2bが壁孔1bと連通する開口2dとを備える。開口2dは、二つの壁面1a、1aのいずれの側にも開口するように設けられている。ここで、壁面1aは、立壁面、床壁面、天井壁面等からなり、入隅領域部1は、天井壁面と立壁面とが交差する部分の上方入隅領域部とか、立壁面と床壁面とが交差する部分の下方入隅領域部とか、立壁面どうしが交差する部分の縦方向入隅領域部とかからなる。
【0023】
詳細には、屈曲経路形成部材2は、互いに組み付けられて収容空間2bを内部に形成する、ベース体5とカバー体6とを備える。そこで、ベース体5に、前記二つの当接部2a、2aが設けられる。そして、前記開口2dは、ベース体5に設けられ、その開口2dは、二つの当接部2a、2aのそれぞれに形成される開口部5aを備える。また、ベース体5または/およびカバー体6(図示実施の形態においてはベース体5)は、二つの壁面1a、1aの少なくとも一方の壁面に沿うことができるように入隅領域部1から離れる側に延設されるフランジ部5bを有し、そのフランジ部5bにより、入隅領域部1から離れる側にずれて形成された壁孔1bの一部を覆うことが可能となっている。より詳細には、フランジ部5bは、二つ設けられ、それらフランジ部5b、5bは、二つの壁面1a、1aのそれぞれの壁面に沿うことができるように延設されている。
【0024】
入隅領域部経路形成部材4は、前記屈曲経路形成部材2と、前記直線状の経路を覆う直線経路形成部材3とからなる。ここで、直線経路形成部材3は、直線状の経路を収容する直状収容空間3aを備える。そして、屈曲経路形成部材2は、前記連通口2c側に、直線経路形成部材3の端部が接続される接続口2eを備える。詳細には、屈曲経路形成部材2は、前記連通口2cを一つ有し(つまり、前記連通口2cは、一つであり)、その連通口2c側にこの接続口2eが設けられる。
【0025】
具体的には、ベース体5は、板状に形成されており、前記二つの当接部2a、2aと、それら二つの当接部2a、2aを繋ぐ繋ぎ部5cとを有する。ここで、二つの当接部2a、2aは、当接する壁面1a、1aに沿うように設けられ、繋ぎ部5cは、二つの当接部2a、2a間を面取りするように、両当接部2a、2aに対して傾斜して形成される。詳細には、二つの当接部2a、2aは、それらの板面が互いに垂直となり、繋ぎ部5cは、当接部2a、2aに対して45°傾斜している。そこで、前記開口2dは、二つの当接部2a、2aと繋ぎ部5cとに渡るように設けられて、二つの当接部2a、2aに形成された両開口部5a、5aが互いに連通する。そして、それぞれの当接部2a、2aは、入隅領域部1から離れる側に延設されており、その延設部分が、前記フランジ部5bとなる。
【0026】
また、このベース体5は、直線経路形成部材3に係合する突出部5dが、入隅領域部1に沿う一方側に突出して(図示実施の形態においては、二つの当接部2a、2aと繋ぎ部5cとが繋がる2箇所の部位において突出して)形成されており、この係合により、屈曲経路形成部材2(詳しくは、ベース体5)と直線経路形成部材3とが互いに位置合わせされる。
【0027】
カバー体6は、板状であって、前記屈曲した経路(つまり、収容空間2b)を囲むように湾曲して形成される。そして、カバー体6は、内側に突出して形成された嵌合凸部6aを有している。対するベース体5は、嵌合凹部5eを有しており、嵌合凸部6aが嵌合凹部5eに嵌まることで、カバー体6が、ベース体5に組み付けられる。このとき、カバー体6がベース体5の全体を覆うことなく、ベース体5の一部(図示実施の形態においては、フランジ部5b)が、カバー体6から露出する。また、カバー体6は、入隅領域部1に沿う一方側が、前記接続口2eとなって、その接続口2eが、直線経路形成部材3の端部に被ることとなる。
【0028】
次に、この第一の実施の形態に示す屈曲経路形成部材2、および、その屈曲経路形成部材2を備えた入隅領域部経路形成部材4の作用効果について説明する。屈曲経路形成部材2は、二つの壁面1a、1aによって形成される入隅領域部1において、それら二つの壁面1a、1aのそれぞれに当接する二つの当接部2a、2aを備える。そして、屈曲経路形成部材2は、内側の収容空間2bが壁面1aに形成された壁孔1bと連通する開口2dを備えており、その開口2dが二つの壁面1a、1aのいずれの側にも開口することで、その開口2dによって、壁孔1bが二つの壁面1a、1aのいずれにあってもその壁孔1bと収容空間2bとを連通させることができ、壁孔1bが入隅領域部1の角に近い位置にあっても、その壁孔1bに対し、この屈曲経路形成部材2を容易に設置することができる。すなわち、二つの当接部2a、2aが二つの壁面1a、1aに当接し、開口2dが二つの壁面1a、1aのいずれの側にも開口することで、壁孔1bが入隅領域部1の角に近い位置にあっても、屈曲経路形成部材2を容易に設置することができる。
【0029】
また、屈曲経路形成部材2において、開口2dは、二つの当接部2a、2aのそれぞれに形成される開口部5a、5aを備えるとともに、それら開口部5a、5aが互いに連通して形成されているため、この開口2dによって、二つの壁面1a、1aにまたがるように形成された壁孔1bに対しても対応することができる。
【0030】
また、屈曲経路形成部材2は、直線経路形成部材3の端部が接続される接続口2eを備えており、入隅領域部経路形成部材4は、この屈曲経路形成部材2に直線経路形成部材3を加えた構成であり、屈曲経路形成部材2と同様に、入隅領域部経路形成部材4を容易に設置することができる。
【0031】
また、ベース体5または/およびカバー体6(図示実施の形態においては、ベース体5)は、フランジ部5bを備えており、壁孔1bが、入隅領域部1から離れる側にずれて形成された場合であっても、このフランジ部5bで壁孔1bの一部(つまり、壁孔1bにおける入隅領域部1から離れた側)を覆うことで、その壁孔1bの露出を防ぐことができる。
【0032】
また、一方の壁面1aに形成された壁孔1bから引き出された配線・配管材を、他方の壁面1aに沿わせる場合、従来では、一度一方の壁面1aに沿うように屈曲させ、さらに、入隅領域部1の角を越えるように屈曲させて他方の壁面1aへと配設する必要があり、保護カバーが過剰に必要となるとともに、見栄えが悪かった。しかし、前述した当接部2a、2aと開口2dとを備える屈曲経路形成部材2を用いることで、配線・配管材の屈曲の回数を減らして、見栄えをよくすることができる。
【0033】
図8~
図18は、本発明の第二の実施の形態を示す。この実施の形態は、第一の実施の形態の屈曲経路形成部材2にスペーサ7を加えた屈曲経路形成装置8、およびその屈曲経路形成装置8の設置構造に関するものであり、以下に、同様の部分には、同一の符号を付して、異なる部分を主に説明する。
【0034】
屈曲経路形成装置8は、屈曲経路形成部材2とスペーサ7とを備える。スペーサ7は、屈曲経路形成部材2の二つの当接部2a、2aにおける一の当接部2aと、その当接部2aに対向する壁面1aとの間に介在して、その壁面1aに対して、屈曲経路形成部材2を嵩上げする。
【0035】
図8~
図12に示す例においては、スペーサ7は、一方の壁面1a(ひいては、一方の当接部2a)のみに一つ設けられ、
図14においては、スペーサ7は、一方の壁面1a(ひいては、一方の当接部2a)のみに二つ設けられている。また、
図15~
図16および
図17~
図18においては、スペーサ7は、二つの壁面1a、1a(ひいては、二つの当接部2a、2a)のそれぞれに対応するように、複数(
図15~
図16に示す例では、一つずつ計二つ、
図17~
図18に示す例では、二つずつ計四つ)設けられ、それらスペーサ7、7は、同一形状のスペーサからなる。ここで、スペーサ7は、二つの壁面1a、1aのそれぞれに対し(つまりは、二つの当接部2a、2aのそれぞれに対し)、同じ向きで用いられたり、向きを変えて用いられたり、表裏を反転して用いられたりする(図示実施の形態においては、表裏を反転して用いられる)。
【0036】
ここで、スペーサ7は、屈曲経路形成部材2の当接部2aと重ねられるスペーサ本体7aと、そのスペーサ本体7aから突出する係合部7bとを備える。係合部7bは、当接部2aとスペーサ7とが位置合わせされるように、当接部2aに設けられた被係合部5fに係合可能である。図示実施の形態においては、係合部7bは、円柱状に形成され、被係合部5fは、その係合部7bが嵌まる穴からなる。
【0037】
また、スペーサ7は、そのスペーサ7の厚みの両面から突出する係合部7bを備える。そこで、屈曲経路形成装置8の設置構造にあっては、スペーサ7は、屈曲経路形成部材2の二つの当接部2a、2aにおける一の当接部2aと、その当接部2aに対向する壁面1aとの間に、一つ、または複数重ね合わされるようにして介在する。そこで、当接部2aとその当接部2aに当たるスペーサ7とが位置合わせされるように、そのスペーサ7の、当接部2a側の面から突出する係合部7bが、当接部2aに設けられた被係合部5fに係合する。そして、壁面1aに当たるスペーサ7の、壁面1a側の面から突出する係合部7bが、壁孔1bに入り込んでいる。
【0038】
また、スペーサ7は、そのスペーサ7の厚みの少なくとも一方の面(図示実施の形態においては、両面)から突出する係止部7cを備える。そこで、屈曲経路形成装置8の設置構造にあっては、スペーサ7は、屈曲経路形成部材2の二つの当接部2a、2aにおける一の当接部2aと、その当接部2aに対向する壁面1aとの間に、複数重ね合わされるようにして介在する。そこで、複数のスペーサ7、7は、互いに重なるスペーサ7、7どうしが位置合わせされるように、一側のスペーサ7の係止部7cが、他側のスペーサ7に設けられた被係止部7dに係合する。そして、壁面1aに当たるスペーサ7は、壁面1a側の面から突出する係止部7cを有し、その係止部7cが、壁孔1bに入り込んでいる。図示実施の形態においては、係止部7cは、円柱状に形成され、被係止部7dは、その係止部7cが嵌まる穴からなる。
【0039】
詳細には、スペーサ7は、平板状に形成され、ベース体5に設けられた開口2d(詳しくは、開口部5a)に合わせるように、略半円形の切欠き状の孔7eが設けられて、当接部2aの外形に沿う輪郭形状を有する。そして、スペーサ7は、そのスペーサ7の厚みの両面から突出する突部を備え、その突部が、前記係合部7bとなり、また、前記係止部7cともなっている。
【0040】
また、スペーサ7は、直線経路形成部材3と壁面1aとの間に介在する直状スペーサ9に係合する突出部7fが、入隅領域部1に沿う一方側に突出するように形成されており、この係合により、スペーサ7と直状スペーサ9とが互いに位置合わせされる。図示実施の形態においては、突出部7fは、直状スペーサ9の外側面に当接するように突出形成されるが、その当接する箇所は特に問わない。
【0041】
ところで、ベース体5は、その当接部2aを貫通して壁面1aにねじ込まれたり打ち込まれたりするビス等の固着具(図示せず)により、壁面1aに固定される(第一の実施の形態においても同様)。そして、当接部2aと壁面1aとの間にスペーサ7が介在する場合には、固着具は、当接部2aに加えてこのスペーサ7を貫通し、このスペーサ7も当接部2a(ひいては、ベース体5)と一緒に壁面1aに固定される。もっとも、先行してスペーサ7を壁面1aに固定した後に、ベース体5をスペーサ7に固定したり、ベース体5を、スペーサ7を貫通する固着具を用いて壁面1aに固定してもよい。また、固着具を用いることなく、ベース体5とかスペーサ7を接着とか粘着により固定するようにしてもよい。
【0042】
この第二の実施の形態における作用効果は、第一の実施の形態と同様であるが、スペーサ7を備えることから、さらに、以下に示す作用効果を奏する。
【0043】
屈曲経路形成装置8は、屈曲経路形成部材2にスペーサ7を加えた構成であり、屈曲経路形成部材2と同様に、屈曲経路形成装置8を容易に設置することができる。
【0044】
また、スペーサ7は、二つの壁面1a、1a、ひいては、屈曲経路形成部材2(詳しくは、ベース体5)における二つの当接部2a、2aのそれぞれに対応するように、複数設けられ、それらスペーサ7、7は、同一形状のスペーサからなる。このため、スペーサ7を複数種類用意する必要がなく、スペーサ7の管理が容易となる。
【0045】
また、壁孔1bのある壁面1aに当たるスペーサ7において、壁面1a側の面から突出する係合部7bとか係止部7cが、壁孔1bに入り込むことで、その係合部7bとか係止部7cをスペーサ7から除去する必要がない。もっとも、壁孔1bがない壁面1aに当たるスペーサ7においては、壁面1a側の面から突出する係合部7bとか係止部7cは、除去する必要がある。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、屈曲経路形成部材2は、ベース体5とカバー体6とからなるが、それらは、別体であって分離可能となっていなくても、ヒンジにより回動可能となっていてもよく、ベース体5を設けることなくカバー体6のみからなって、そのカバー体6が、当接部2a、2aや開口2d等を有し、また、そのカバー体6に、壁面1aへの固定手段を設けるようにしてもよい。
【0047】
また、壁孔1bは、図示実施の形態においては、二つの壁面1a、1aのうち片方の壁面のみに設けられているが、両方の壁面に設けられてもよい。
【0048】
また、第二の実施の形態の
図15~
図16および
図17~
図18に示す例においては、スペーサ7は、二つの壁面1a、1a(ひいては、二つの当接部2a、2a)のそれぞれに対応するように、複数設けられ、それらスペーサ7、7は、同一形状のスペーサからなり、二つの壁面1a、1aのそれぞれに対し(つまりは、二つの当接部2a、2aのそれぞれに対し)、表裏を反転して用いられるが、スペーサ7あるいはスペーサ本体7aが左右対称形状である場合は、反転することなく向きを変えて(詳しくは、壁面1aに直交する軸線回りに180°回転して)用いることができる。また、スペーサ7の形状がより単純な形状の場合は、壁面1aに対し(つまりは、当接部2aに対し)同じ向きのまま用いることもできる。
【0049】
また、
図19に示すように、スペーサ7における係合部7bとか係止部7cは、破断可能な脆弱部7gを介してスペーサ本体7aと一体に形成されてもよい。これにより、係合部7bとか係止部7cを除去したい場合には、脆弱部7gを破断することで、その係合部7bとか係止部7cを簡単に除去することができる。この図においては、係合部7bとか係止部7cは、脆弱部7gとなる薄肉部を介してスペーサ本体7aと繋がっている。そこで、この係合部7bとか係止部7cを除去するにあたっては、スペーサ7の、壁面1a側の面を、壁面1aに向けて押し付ける。これによって、係合部7bとか係止部7cが壁面1aに押されて、脆弱部7gが破断され、この係合部7bとか係止部7cがスペーサ本体7aから分離する。
【0050】
また、開口2dは、二つの壁面1a、1aのそれぞれの側に個別に(独立して)開口するものであってもよい(つまり、それらが互いに連通していなくてもよい)。
【0051】
また、開口2d自体は、全部または一部が開放可能に塞がれていてもよい。つまり、塞がれた箇所が、ノックアウト可能であったり、開口2dの全部または一部が、着脱可能な蓋で塞がれていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 入隅領域部
1a 壁面
1b 壁孔
2 屈曲経路形成部材
2a 当接部
2b 収容空間
2c 連通口
2d 開口
2e 接続口
3 直線経路形成部材
3a 直状収容空間
4 入隅領域部経路形成部材
5 ベース体
5a 開口部
5b フランジ部
5f 被係合部
6 カバー体
7 スペーサ
7a スペーサ本体
7b 係合部
7c 係止部
7d 被係止部
7g 脆弱部
8 屈曲経路形成装置