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特開2024-47230非水溶媒中の水分測定方法および水分測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047230
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】非水溶媒中の水分測定方法および水分測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/49 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
G01N21/49 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152747
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】菊地 紘平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 智子
(72)【発明者】
【氏名】森野 翔太
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059CC09
2G059EE02
2G059GG01
2G059HH02
2G059KK01
(57)【要約】
【課題】非水溶媒中の水分濃度をリアルタイムで高精度に測定する。
【解決手段】非水溶媒中の水分測定方法は、非水溶媒中の微粒子数と水分濃度との関係を予め取得する工程と、パーティクルカウンタを用いて非水溶媒の非水溶媒中の微粒子数を計測し、計測した微粒子数から、予め取得した関係を用いて、非水溶媒中の水分濃度を算出する工程と、を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒中の水分測定方法であって、
前記非水溶媒中の微粒子数と水分濃度との関係を予め取得する工程と、
パーティクルカウンタを用いて前記非水溶媒中の微粒子数を計測し、該計測した微粒子数から、予め取得した前記関係を用いて、前記非水溶媒中の水分濃度を算出する工程と、を含む水分測定方法。
【請求項2】
前記非水溶媒中の微粒子数を計測する前に、前記非水溶媒に含まれる微細気泡以外の微粒子を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の水分測定方法。
【請求項3】
前記微細気泡以外の微粒子を除去する工程が、前記パーティクルカウンタの最小可測粒径以下の孔径を有する多孔質膜を用いて、前記微細気泡以外の微粒子を除去することを含む、請求項2に記載の水分測定方法。
【請求項4】
前記非水溶媒中の水分濃度が0~10000ppmの範囲で測定される、請求項1から3のいずれか1項に記載の水分測定方法。
【請求項5】
前記関係を予め取得する工程が、
水分が除去された前記非水溶媒を標準液として用意し、前記標準液に水分を添加する工程と、
前記標準液への水分添加量を段階的に変化させながら前記標準液中の微粒子数を計測し、前記関係を作成する工程と、を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の水分測定方法。
【請求項6】
前記関係を予め取得する工程が、前記標準液中の微粒子数を計測する前に、前記標準液に含まれる微細気泡以外の微粒子を除去する工程をさらに含む、請求項5に記載の水分測定方法。
【請求項7】
前記微細気泡以外の微粒子を除去する工程が、前記パーティクルカウンタの最小可測粒径以下の孔径を有する多孔質膜を用いて、前記微細気泡以外の微粒子を除去することを含む、請求項6に記載の水分測定方法。
【請求項8】
前記関係は、前記非水溶媒中の水分濃度が0~10000ppmの範囲で作成される、請求項5に記載の水分測定方法。
【請求項9】
非水溶媒中の水分測定装置であって、
前記非水溶媒中の微粒子数を計測するパーティクルカウンタと、
前記パーティクルカウンタにより計測された微粒子数から、予め取得した前記非水溶媒中の微粒子数と水分濃度との関係を用いて、前記非水溶媒中の水分濃度を算出する演算手段と、を有する水分測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水溶媒中の水分測定方法および水分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやリチウムイオン電池の製造プロセスでは、高度に精製された非水溶媒が用いられている。非水溶媒の精製方法としては、精製対象の非水溶媒(被精製液)をイオン交換樹脂に通液し、被精製液中の不純物(金属イオンなどのイオン成分)をイオン交換樹脂により除去する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。ただし、この方法では、イオン交換樹脂に含まれる水分が被精製液に溶出するおそれがあり、それにより、近年の非水溶媒の高純度化の要求に応えられなくなるおそれがある。そのため、上述した方法を用いた非水溶媒の精製では、それに先立って、脱水処理用の非水溶媒(脱水処理液)をイオン交換樹脂に通液し、その含有水分を脱水処理液に溶出させて除去する脱水処理も行われている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
このように、高度に精製された非水溶媒では、イオン成分だけでなく水分も不純物となる。そのため、非水溶媒の精製過程においては、様々な場面で非水溶媒中の水分濃度を適切に管理することが求められており、そのためには、非水溶媒中の水分濃度を正確に把握することが重要となる。非水溶媒中の水分濃度を測定する方法としては、従来から、信頼性が高く、高精度に水分の定量分析が可能なカールフィッシャー(KF)法が広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015-521101号公報
【特許文献2】特開2021-109833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、KF法を用いて水分濃度を測定する方法では、測定対象の試料液をサンプリングし、その水分濃度をオフラインで測定するため、リアルタイムで水分濃度を把握することができないというデメリットがある。また、サンプリング時にコンタミネーションが発生したり、試料液中にKF反応(水とヨウ素との定量的な反応)を妨害する化学物質が含まれていたりすると、測定精度が大きく低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、非水溶媒中の水分濃度をリアルタイムで高精度に測定可能な水分測定方法および水分測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の非水溶媒中の水分測定方法は、非水溶媒中の微粒子数と水分濃度との関係を予め取得する工程と、パーティクルカウンタを用いて非水溶媒の非水溶媒中の微粒子数を計測し、計測した微粒子数から、予め取得した関係を用いて、非水溶媒中の水分濃度を算出する工程と、を含んでいる。
【0008】
また、本発明の非水溶媒中の水分測定装置は、非水溶媒中の微粒子数を計測するパーティクルカウンタと、パーティクルカウンタにより計測された微粒子数から、予め取得した非水溶媒中の微粒子数と水分濃度との関係を用いて、非水溶媒中の水分濃度を算出する演算手段と、を有している。
【0009】
このような非水溶媒中の水分測定方法および水分測定装置によれば、オンラインで測定可能な非水溶媒の微粒子数に着目し、それと水分濃度との相関関係を予め取得しておくことで、非水溶媒中の水分濃度をリアルタイムで高精度に測定することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によれば、非水溶媒中の水分濃度をリアルタイムで高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る液体精製装置の概略構成図である。
図2】脱水処理液中の微粒子数と水分濃度との相関関係を検証するために行った実験結果を示すグラフである。
図3】本発明の第2の実施形態に係る液体精製装置の概略構成図である。
図4】本発明の第3の実施形態に係る液体精製装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の各実施形態に共通の構成については、図面に同じ符号を付して重複する説明は適宜省略する。なお、本明細書では、非水溶媒の精製手段としてイオン交換体を例に挙げて説明するが、本発明の適用対象はこれに限定されず、各種フィルターや活性炭などの他の精製手段であってもよい。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る液体精製装置の概略構成図である。なお、図示した液体精製装置の構成は、単なる一例であり、例えば、バルブや計測器を追加するなど、必要に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0014】
液体精製装置10は、非水溶媒中の不純物(金属イオンなどのイオン成分)を除去することで非水溶媒を精製し、その非水溶媒をユースポイントに供給するものである。精製対象の非水溶媒としては、特に制限されないが、例えば、アルコール系(イソプロピルアルコール、メタノール、エタノールなど)、ケトン系(シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトンなど)、アルケン系(2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2-フェニル-1-プロペンなど)、エステル系(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸イソプロピルなど)、芳香族系、アミン系(N-メチルピロリドンなど)などの各種有機溶媒、および、それらの混合物が挙げられる。
【0015】
液体精製装置10は、非水溶媒の精製手段として機能するイオン交換体が充填された充填塔11を有している。充填塔11の入口と出口は、精製される非水溶媒(被精製液)を流通させる溶媒供給ラインL1と、精製された非水溶媒(精製液)を流通させる溶媒送液ラインL2とにそれぞれ接続されている。こうして、被精製液は、溶媒供給ラインL1を通じて充填塔11に供給され、充填塔11内のイオン交換体でイオン成分が除去された後、精製液として溶媒送液ラインL2を通じてユースポイントへと送られる。溶媒供給ラインL1には、後述する前処理工程および水分測定準備工程で使用される開閉弁V1が設けられ、溶媒送液ラインL2にも、同じく前処理工程および水分測定準備工程で使用される開閉弁V2が設けられている。
【0016】
充填塔11に充填されるイオン交換体としては、例えば、イオン交換樹脂やモノリス状有機多孔質イオン交換体が挙げられる。イオン交換樹脂としては、除去すべきイオン成分の種類に応じて、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の少なくとも一方を用いることができる。カチオン交換樹脂の種類としては、弱酸性カチオン交換樹脂、強酸性カチオン交換樹脂などが挙げられ、アニオン交換樹脂の種類としては、弱酸性アニオン交換樹脂、強酸性アニオン交換樹脂などが挙げられる。モノリス状有機多孔質イオン交換体は、モノリス状有機多孔質体の骨格中にイオン交換基が導入されたものであり、一般的な粒状のイオン交換樹脂と比べて、処理流量を大きくしても十分なイオン除去性能を有しており、それにより、装置の小型化も可能になる点で有利である。モノリス状有機多孔質イオン交換体としては、除去すべきイオン成分の種類に応じて、モノリス状有機多孔質カチオン交換体とモノリス状有機多孔質アニオン体の少なくとも一方を用いることができる。
【0017】
なお、被精製液の通液中には、イオン交換樹脂やモノリス状有機多孔質イオン交換体などのイオン交換体から微粒子が発生する可能性がある。そのため、そのようなイオン交換体由来の微粒子を除去するために、充填塔11のうちイオン交換体の下流側には、精密ろ過膜(MF膜)などの多孔質膜が収容されていてもよい。
【0018】
一方で、充填塔11への被精製液の通液中には、イオン交換樹脂やモノリス状有機多孔質イオン交換体などのイオン交換体に含まれる水分が被精製液に溶出し、それにより、高純度な精製液が得られなくなるおそれがある。そこで、液体精製装置10では、装置新設時やイオン交換体の交換時など、被精製液の精製(通常運転)を行う前の立ち上げ時に、イオン交換体の含有水分を予め除去する脱水処理(前処理)が行われる。具体的には、脱水処理用の非水溶媒(脱水処理液)を充填塔11に通液し、充填塔11内のイオン交換体の含有水分を脱水処理液に溶出させて除去する脱水処理が行われる。
【0019】
このような脱水処理を行うための構成(すなわち、脱水処理液の通液手段)として、液体精製装置10は、脱水処理液を充填塔11に供給する脱水処理液ラインL3と、充填塔11から流出した脱水処理液を外部に排出する排液ラインL4とを有している。脱水処理液ラインL3は、溶媒供給ラインL1(具体的には、開閉弁V1の下流側)に開閉弁V3を介して合流し、排液ラインL4は、溶媒送液ラインL2(具体的には、開閉弁V2の上流側)から開閉弁V4を介して分岐している。なお、開閉弁V1,V3の代わりに、溶媒供給ラインL1と脱水処理液ラインL3との合流点に三方弁が設けられていてもよく、開閉弁V2,V4の代わりに、溶媒送液ラインL2と排液ラインL4との分岐点に三方弁が設けられていてもよい。
【0020】
また、液体精製装置10では、上述のような観点から、通常運転中に精製液に含まれる水分の濃度管理が行うことが好ましく、そのための構成として、液体精製装置10は、液中パーティクルカウンタ(LPC)21と演算手段22とからなる水分測定装置20を有している。LPC21は、液体精製装置10の通常運転中には精製液を採取するためのサンプリングラインとして機能する排液ラインL4に設けられ、詳細は後述するが、精製液中に存在する微細気泡を含む微粒子数を計測するために用いられる。演算手段22は、精製対象の非水溶媒中の微粒子数と水分濃度との関係を示す情報(テーブルや関数など)を予め記憶し、LPC21により計測された微粒子数から、その情報を用いて精製液中の水分濃度を算出する機能を有している。なお、LPC21は、上述した用途以外に、イオン交換体の脱水処理を終了するタイミングを判定するためにも用いられる。以下、特に断らない限り、微細気泡とそれ以外の微粒子(例えば、金属微粒子)とを合わせて「微粒子」といい、微細気泡以外の微粒子を「他の微粒子」ともいう。したがって、「微粒子数」とは、微細気泡の数と他の微粒子の数の合計を意味する。
【0021】
なお、排液ラインL4に設けられたLPC21には、それが適正に作動するための流量(定格流量)が設定されているため、LPC21に供給される非水溶媒の流量は、そのような流量に調整されていることが好ましい。したがって、LPC21に供給される非水溶媒の流量を調整するために、排液ラインL4に流量調整弁が設けられていてもよく、あるいは、後述する溶媒流量計12がそのような流量調整機能を有していてもよい。
【0022】
さらに、液体精製装置10は、上述した関係を取得するための水分測定準備工程を実施するために、排液ラインL4を流れる非水溶媒に水分を添加することができ、かつその添加量を段階的に変化させながら非水溶媒の微粒子数を計測することができる構成を有している。すなわち、液体精製装置10は、上述したLPC21に加え、水分添加ラインL11と、排液ラインL4に設けられた溶媒流量計12と、水分添加ラインL11に設けられた流量調整弁V5および超純水流量計13とを有している。また、液体精製装置10は、排液ラインL4に設けられた撹拌手段14をさらに有している。
【0023】
水分添加ラインL11は、超純水を流通させる超純水ラインL5と排液ラインL4とを接続し、排液ラインL4を流れる非水溶媒に超純水(水分)を添加するために設けられている。流量調整弁V5は、水分添加ラインL11を流れる超純水の流量を調整し、排液ラインL4を流れる非水溶媒への水分添加量を調整する機能を有している。溶媒流量計12と超純水流量計13は、その水分添加量を算出するために用いられ、排液ラインL4を流れる非水溶媒の流量と水分添加ラインL11を流れる超純水の流量をそれぞれ測定する機能を有している。撹拌手段14は、添加された超純水を非水溶媒中で均一に分散させる機能を有している。撹拌手段14としては、特に限定されず、インラインミキサーなどの公知のものを用いることができる。
【0024】
ここで、液体精製装置10の運転方法について説明する。特に、通常運転に先立って実施される2つの工程、すなわち、前処理工程および水分測定準備工程と、通常運転時に実施される精製工程とについて説明する。
【0025】
[前処理工程]
前処理工程は、上述したように、装置新設時やイオン交換体の交換時など、液体精製装置10の立ち上げ運転として実施される工程であり、未使用または再生済みのイオン交換体に含まれる水分を予め除去する工程である。
【0026】
前処理工程が開始されると、脱水処理液ラインL3と排液ラインL4の開閉弁V3,V4が開放されるとともに、溶媒供給ラインL1と溶媒送液ラインL2の開閉弁V1,V2が閉鎖される。これにより、脱水処理液ラインL3を通じて充填塔11に脱水処理液が供給され、充填塔11内では、イオン交換体に含まれる水分が脱水処理液で置換される。こうして、イオン交換体の脱水処理が行われ、イオン交換体に含まれる水分が脱水処理液に溶出されて除去される。水分を取り込んだ脱水処理液は、排液ラインL4を通じて充填塔11から外部に排出される。
【0027】
前処理工程は、脱水処理液の使用量をできるだけ少なくするという観点から、充填塔11内のイオン交換体の含水量が十分に低減された時点で迅速に終了することが好ましい。脱水処理液の通液に伴ってイオン交換体の含水量が低減されると、脱水処理液に溶出する水分量も低減される。そのため、イオン交換体の含水量が十分に低減されたか否かは、充填塔11から流出した脱水処理液中の水分濃度が十分に低減されたか否かによって確認することができる。なお、脱水処理液中の水分濃度を測定するには、カールフィッシャー(KF)法を用いることも考えられるが、この方法では、オフラインでの測定しかできないため、脱水処理液中の水分濃度をリアルタイムで把握することができない。そのため、実際にイオン交換体の含水量が低減されてからそれを確認するまでの間にタイムラグが発生し、その間に脱水処理液の無駄な廃棄が発生してしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、前処理工程の終了時期を判断するにあたり、オンライン計測が可能な非水溶媒中の微粒子数に着目する。その理由は、以下の知見が本発明者らにより見出されたためである。その知見とは、非水溶媒に水を混合していくと非水溶媒に対する気体(空気)の溶解度が低下し、非水溶媒中の溶存気体が微細気泡として発生することが知られているが、そのような微細気泡を含む微粒子数が、非水溶媒と水との混合比、すなわち水分濃度と強い相関関係にあるというものである。以下、この知見を得るに至った実験結果について説明する。
【0029】
本発明者らは、本実施形態の前処理工程を模擬した通液試験を行い、通液後の脱水処理液中の微粒子数と水分濃度との関係を検証した。なお、LPCによる微粒子数の計測では、脱水処理液中の水分に由来する微細気泡と他の微粒子を区別することができないため、目的とする相関関係の有無を正確に判断するためには、通液後の脱水処理液に他の微粒子が含まれていないことが好ましい。そのため、他の微粒子を発生させる可能性があるイオン交換体の代わりに、微粒子除去フィルターを用いて通液試験を行い、通液後の脱水処理液中の微粒子数と水分濃度との関係を検証した。
【0030】
具体的には、湿潤状態で保管されていた未使用の微粒子除去フィルターに脱水処理液を通液し、通液後の脱水処理液中の微粒子数を、微粒子除去フィルターの下流側に設置したLPCによりオンラインで連続的に測定した。それと同時に、微粒子除去フィルターから流出した脱水処理液を経時的にサンプリングし、サンプリングした脱水処理液中の水分濃度をKF水分計によりオフラインで測定した。脱水処理液として、予め他の微粒子が除去され、水分濃度が25ppm以下に調整されたIPAを用いた。微粒子除去フィルターとして、超高分子量ポリエチレン(UPE)製で除粒子径が20nmのインテグリス社製のもの(商品名:Optimizer(登録商標) Dフィルター)を用い、微粒子除去フィルターに通液する際のIPAの流量を10mL/minとした。
【0031】
微粒子数の測定には、リオン株式会社製の液中パーティクルカウンタ(商品名:KS-18F)を用い、粒径区分ごとの微粒子数(個/mL)の合計を測定値とした。水分濃度の測定には、平沼産業株式会社製の微量水分測定装置(商品名:AQ-2200F)を用いた。なお、実際には、微粒子除去フィルターを設置する前に、試験系内の微粒子を除去してバックグラウンドノイズを低減するために、脱水処理液を通液して試験系内の洗浄を行った。そして、同時に行ったブランク測定により、液中パーティクルカウンタによる測定値が1個/mL以下の定常状態に達したこと、すなわち、バックグラウンドノイズが無視できる程度に小さいことを確認した後で、上記測定を行った。
【0032】
図2は、測定結果を示すグラフであり、総通液量に対する脱水処理液中の微粒子数と水分濃度の変化を示している。図2から、脱水処理液中の微粒子数と水分濃度との間には相関関係があり、脱水処理液中の微粒子数を計測することで水分濃度を推定できることが分かる。ただし、グラフ中に破線の楕円で示すように、脱水処理液中の水分濃度が10000ppmを超える高い領域では、微粒子数がこの相関関係から大きく外れている。これは、脱水処理液中の水分濃度が高すぎると、それに応じて大量に発生した微粒子(微細気泡)の一部が流路内に滞留し、LPCで計測されるまでに時間的な遅れが生じるためであると考えられる。そのため、微粒子数から水分濃度を推定する際にはこの点に注意が必要である。
【0033】
したがって、本実施形態では、前処理工程の実行中(脱水処理液の通液中)に、排液ラインL4に設けられたLPC21により、充填塔11から流出した脱水処理液中の微粒子数が計測される。そして、計測された微粒子数に基づいて、前処理工程(脱水処理液の通液)を終了するか否かが判定される。具体的には、そのときの計測値が、予め計測されるか、または(例えば、脱水処理液ラインL3に設けられたLPCにより)オンラインで計測された、充填塔11に供給される脱水処理液の微粒子数と比較される。そして、両者が所定の誤差範囲内で一致した場合に、充填塔11内のイオン交換体の含水量が十分に低減されたと判定され、前処理工程を終了すると判定される。あるいは、充填塔11に通液後の脱水処理液中の微粒子数が十分に低下して定常状態に達したか否かに基づいて、充填塔11内のイオン交換体の含水量が十分に低減されたか否かが判定されてもよい。充填塔11に通液後の脱水処理液中の微粒子数が定常状態に達したか否かは、例えば、微粒子数の時系列データのうち時間的に連続する2つのデータを比較し、それらが所定の誤差範囲内で一致したか否かによって判定することができる。
【0034】
こうして、脱水処理液中の微粒子数に着目することで、充填塔11内のイオン交換体から脱水処理液に溶出した水分量を間接的にリアルタイムで測定することができ、充填塔11内のイオン交換体の含水量が十分に低減されたか否かを迅速に把握することができる。その結果、前処理工程に要する時間(充填塔11内のイオン交換体において非水溶媒の精製が可能な状態になるまでの立ち上げ時間)をできるだけ短くすることができ、脱水処理液の使用量をできるだけ少なくすることができる。
【0035】
LPC21による微粒子数の計測は連続的に行われることが好ましく、それにより、安定した計測結果を得ることができる。また、計測開始後の一定期間、LPC21の計測値は安定しないことがあるため、前処理工程の終了時期を判断するためには使用されないことが好ましい。なお、湿潤状態で保管されていたイオン交換体の脱水処理(前処理)を行う場合、前処理工程の初期には、脱水処理液に溶出する水分量が非常に多く、したがって、脱水処理液中の微粒子数も非常に多い。そのため、このような大量の微粒子(微細気泡)によりLPC21が汚染されたり、その一部が排液ラインL4内に滞留したりすることで、LPC21による微粒子数の安定した計測が妨げられるおそれがある。このような理由から、前処理工程の初期には、脱水処理液をLPC21に通液しないことが好ましい。そのためには、LPC21をバイパスするバイパスラインを排液ラインL4に設けるか、あるいは、溶媒送液ラインL2に接続された排液ラインを別途設けることが好ましい。
【0036】
前処理工程に使用される脱水処理液としては、被精製液と異なる種類の非水溶媒を用いてもよいが、その場合、精製工程を行う前に、被精製液を充填塔11に通液して充填塔11内の脱水処理液を被精製液で置換する必要がある。したがって、脱水処理液としては、被精製液と同じ種類の非水溶媒を用いることが好ましい。すなわち、例えば、被精製液としてイソプロピルアルコール(IPA)の精製を行う場合には、脱水処理液としてIPAを用いることが好ましい。
【0037】
また、脱水処理液としての非水溶媒は、できるだけ純度の高いものであることが好ましい。すなわち、脱水処理液中の水分濃度はできるだけ低いことが好ましく、例えば、精製液に要求される水分濃度と同等以下であることが好ましい。これにより、イオン交換体の脱水処理に必要な脱水処理液の使用量を少なくすることができる。脱水処理液中の各イオン濃度もできるだけ低いことが好ましく、例えば、精製液に要求される各イオン濃度と同等以下であることが好ましい。これにより、前処理工程でイオン交換体のイオン交換容量が必要以上に消費されることがなくなり、イオン交換体の寿命が短くなるのを抑制することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、後述する水分測定準備工程で濃度関係情報を取得(作成)するための標準液として脱水処理液が用いられるため、脱水処理液としては、被精製液と同じ種類であって水分およびイオン成分が共に除去された高純度の非水溶媒が用いられる。ここでいう「除去」とは、完全に除去された状態だけでなく、実質的に除去された状態も含み、濃度関係情報の作成に大きな影響を与えない程度であれば、わずかな水分およびイオン成分が含まれていてもよいことを意味する。
【0039】
上述したように、LPC21による微粒子数の計測では微細気泡と他の微粒子を区別することができないため、脱水処理液中の水分に由来する微細気泡を正確に計測するためには、LPC21に供給される脱水処理液に他の微粒子が含まれていないことが好ましい。したがって、前処理工程に使用される脱水処理液は、水分濃度や各イオン濃度だけでなく、微粒子数もできるだけ少ないものが好ましい。また、充填塔11内のイオン交換体から発生する可能性がある他の微粒子を除去するために、MF膜などの多孔質膜が、上述したように充填塔11に収容されているか、あるいは、排液ラインL4のうちLPC21の上流側に微粒子除去フィルターとして設けられていてもよい。このとき、多孔質膜の孔径は、LPC21で計測され得る微粒子の通過を許容しないように、LPC21の最小可測粒径以下の孔径を有していることが好ましい。こうした微粒子除去フィルターの設置は、後述する水分測定準備工程および精製工程においても、LPC21に供給される非水溶媒中の他の微粒子を除去することで望ましい計測値を得るためには有効である。
【0040】
なお、上述した微粒子除去フィルターの設置位置は、LPC21の上流側であれば特に限定されないが、撹拌手段14の下流側であることが好ましい。また、このフィルターの数は、1つでもよいが、脱水処理液中の他の微粒子を順次除去するように複数であってもよい。この場合、下流側のフィルターは、上流側のフィルターよりも小さい孔径を有していることが好ましく、それとは異なる材質のものであることがより好ましい。各フィルターの孔径は特に限定されないが、少なくとも1つのフィルターが、上述したようにLPC21の最小可測粒径以下の孔径を有していることが好ましい。各フィルターの材質は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロンなどのポリアミド(PA)が挙げられる。
【0041】
[水分測定準備工程]
水分測定準備工程は、前処理工程の終了後、精製工程に移行する前に、精製液中の水分濃度を測定するための準備として、精製対象の非水溶媒中の微粒子数と水分濃度との関係を示す濃度関係情報を取得するために実施される。ただし、そのような濃度関係情報が別途取得され、水分測定装置20の演算手段22に予め記憶されていれば、水分測定準備工程は実施されなくてもよい。そして、そのための構成(水分添加ラインL11など)も液体精製装置10に設けられていなくてよい。また、濃度関係情報の取得は、精製対象の非水溶媒に対して一度行えば十分であるため、水分測定準備工程は、精製対象の非水溶媒の種類が変更されない限り、前処理工程の終了後に必ずしも実施する必要はない。
【0042】
上述したように、前処理工程において、充填塔11内のイオン交換体の含水量が十分に低減されたことが確認されると、そのまま水分測定準備工程が開始される。水分測定準備工程では、濃度関係情報を取得(作成)するための標準液として、排液ラインL4を流れる脱水処理液(本実施形態では、被精製液と同じ種類であって水分およびイオン成分が共に除去された高純度の非水溶媒)が用いられる。そして、必要に応じて他の微粒子が除去された後、この標準液に水分が段階的に添加される。具体的には、開閉弁V4の開度調整により排液ラインL4内の圧力が必要に応じて調整されつつ、水分添加ラインL11の流量調整弁V5が段階的に開放され、排液ラインL4を流れる標準液に超純水(水分)が段階的に添加される。このとき、それぞれの段階ごと、すなわち、標準液への水分添加量が段階的に増加するごとに、LPC21により標準液中の微粒子数が計測され、計測されたデータ(好ましくは、その移動平均値)は、そのときの水分添加量と共に演算手段22に取得される。そして、こうして取得されたデータに基づいて、演算手段22により、標準液中の微粒子数と水分濃度との関係を示す濃度関係情報(テーブルや関数など)が作成される。
【0043】
なお、標準液への水分添加量は、溶媒流量計12の測定値(好ましくは、その移動平均値)と超純水流量計13の測定値(好ましくは、その移動平均値)とから算出される。あるいは、排液ラインL4および水分添加ラインL11内の圧力が一定で、かつ超純水ラインL5内と排液ラインL4内との圧力差と標準液の粘度とが分かっていれば、標準液への水分添加量は、流量調整弁V5の開度から算出してもよい。その場合、流量計12,13は省略されてもよい。
【0044】
信頼性の高い濃度関係情報を得るためには、LPC21で安定した計測結果を得る必要があるが、そのためには、LPC21に供給される標準液の流量および圧力が一定の状態に維持されることが好ましい。したがって、水分添加ラインL11を通じて標準液に水分が添加される際には、例えば、開閉弁V4の開度調整により、排液ラインL4内の圧力が所定の設定圧力に調整されることが好ましい。なお、このような観点から、上述した前処理工程や後述する精製工程においても、LPC21に脱水処理液や被精製液のLPC21への供給は、水分測定準備工程と同様の条件で行われることが好ましい。また、LPC21は、周囲の環境の影響を受けやすいため、予め設定された使用温湿度範囲内の環境で使用されることが好ましい。例えば、環境温度は、5~50℃であることが好ましく、環境湿度は、相対湿度85%以下で結露しない湿度であることが好ましい。また、装置に振動が加わることで、気泡が発生したり、発生した気泡の流れが変わったりする可能性があることから、装置全体が振動などの外乱のない環境に設置されることが好ましく、温度や湿度の調整されたクリーンルームに設置されてもよい。
【0045】
また、図2に関連して述べたように、標準液中の水分濃度が10000ppmを超えるほどの高濃度の領域では、微粒子数との間に相関関係が成立していない可能性がある。そのため、上述した濃度関係情報の取得は、標準液中の水分濃度が0~10000ppmの範囲で行われることが好ましい。したがって、こうして取得した濃度関係情報を用いて非水溶媒中の水分濃度を算出する場合も、その算出範囲は0~10000ppmであることが好ましい。
【0046】
この工程では、撹拌手段14により、標準液中に水分すなわち微細気泡を均一に分散させることができ、それにより、LPC21の計測値を安定させることができる。ただし、水分の添加位置(排液ラインL4と水分添加ラインL11との接続位置)からLPC21までの配管距離が長い場合や、排液ラインL4内の標準液の流れが乱流になる場合には、撹拌手段14は省略することができる。また、溶媒流量計12は、LPC21の上流側に設けられていてもよいが、溶媒流量計12からの溶出物がLPC21の計測値に影響を与える可能性を考慮すると、図示したようにLPC21の下流側に設けられていることが好ましい。さらに、上述したように、排液ラインL4に流量調整弁が設けられている場合にも、その位置はLPC21の下流側であることが好ましい。
【0047】
[精製工程]
精製工程は、被精製液を充填塔10に通液し、被精製液に不純物として含まれるイオン成分を充填塔11内のイオン交換体により除去することで被精製液を精製する工程であり、液体精製装置10の通常運転時に実施される。
【0048】
標準液中の微粒子数と水分濃度との関係を示す濃度関係情報が作成されて取得されると、脱水処理液ラインL3の開閉弁V3と水分添加ラインL11の流量調整弁V5が閉鎖される。これにより、脱水処理液ラインL3から充填塔11を通じた排液ラインL4への標準液(脱水処理液)の供給が停止されるとともに、排液ラインL4への超純水の注入も停止される。そして、溶媒供給ラインL1と溶媒送液ラインL2の開閉弁V1,V2が開放されることで、充填塔11への被精製液の通液が開始され、精製工程が開始される。精製工程では、溶媒供給ラインL1を通じて被精製液が充填塔11に供給され、充填塔11内のイオン交換体で被精製液中のイオン成分が除去される。こうして得られた精製液が、溶媒送液ラインL2を通じてユースポイントへと送られる。
【0049】
また、この工程では、高純度の精製液をユースポイントに安定的に供給するための運転管理として、水分測定装置20による精製液中の水分濃度測定が継続的に実施される。すなわち、溶媒送液ラインL2を流れる精製液の一部がサンプリングライン(排液ライン)L4を通じて試料液として採取され、採取された試料液中の微粒子数がLPC21により計測され、好ましくは連続的に計測される。このとき、微粒子数が計測される前に、必要に応じて試料液中の他の微粒子が除去される。そして、計測された微粒子数から、演算手段22に記憶された濃度関係情報を用いて、試料液中の水分濃度が算出される。こうして、液体精製装置10で精製される精製液中の水分濃度がリアルタイムで高精度に測定される。
【0050】
なお、前処理工程や水分測定準備工程とは異なり、精製工程においてサンプリングラインL4を流れる試料液は、溶媒送液ラインL2を流れる精製液と同じ高純度の非水溶媒であるため、必ずしも外部に排出される必要はない。例えば、非水溶媒の廃棄量を少なくするという観点から、サンプリングラインL4を流れる試料液を溶媒送液ラインL2に還流させてもよい。ただし、LPC21や溶媒流量計12の圧力損失のために、サンプリングラインL4の下流側を単に溶媒送液ラインL2に接続しただけでは、サンプリングラインL4を流れる試料液を溶媒送液ラインL2に還流させることができない。そこで、サンプリングラインL4の下流側にポンプを設置することも考えられるが、ポンプからの溶出物の影響を考慮すると、溶媒送液ラインL2にオリフィスなどの圧力低下手段を設け、その下流側にサンプリングラインL4を接続することが好ましい。あるいは、開閉弁V2により溶媒送液ラインL2内の圧力が調整可能であれば、サンプリングラインL4をそのまま溶媒送液ラインL2に接続してもよい。
【0051】
上述した各工程において、開閉弁V1~V4の開閉や流量調整弁V5の開度調整は、別途設けられる制御手段により自動で行われてもよい。すなわち、液体精製装置10は、液体精製装置10の運転を制御するコントローラなどの制御手段を有していてもよく、開閉弁V1~V4と流量調整弁V5は、その制御手段により制御可能な自動弁であってもよい。また、その制御手段が、例えば、前処理工程を終了するか否かの判定を行ってもよく、水分測定装置20の演算手段22の機能を兼ねてもよい。
【0052】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る液体精製装置の概略構成図である。本実施形態は、脱水処理液を流通させるための配管構成が第1の実施形態と異なっている。以下、そのような相違点を中心に説明する。
【0053】
本実施形態では、脱水処理液ラインL3が溶媒供給ラインL1および溶媒送液ラインL2と並行して設けられている。これに伴い、第1の実施形態の排液ラインL4が省略され、撹拌手段14、水分測定装置20、および溶媒流量計12は、排液ラインL4にではなく脱水処理液ラインL3に設けられている。脱水処理液ラインL3は、合流ラインL12を介して溶媒供給ラインL1(具体的には、開閉弁V1の下流側)に接続され、開閉弁V3は、脱水処理液ラインL3にではなく合流ラインL12に設けられている。また、脱水処理液ラインL3は、分岐ラインL13を介して溶媒送液ラインL2(具体的には、開閉弁V2の上流側)に接続され、開閉弁V4は、排液ラインL4にではなく分岐ラインL13に設けられている。なお、撹拌手段14は、脱水処理液ラインL3と分岐ラインL13との接続位置の下流側に設けられている。加えて、脱水処理液ラインL3は、合流ラインL12との接続位置の下流側であって水分添加ラインL11との接続位置の上流側に、開閉弁V6を備えている。なお、開閉弁V6は、開閉弁V1~V4や流量調整弁V5の場合と同様に自動弁であってもよい。
【0054】
このような構成の変更に伴い、本実施形態における液体精製装置10の運転方法の各工程は、以下のような点で第1の実施形態と異なっている。
【0055】
すなわち、前処理工程では、合流ラインL12と分岐ラインL13の開閉弁V3,V4が開放されるとともに、溶媒供給ラインL1と溶媒送液ラインL2の開閉弁V1,V2に加え、脱水処理液ラインL3の開閉弁V6が閉鎖される。これにより、脱水処理液ラインL3から合流ラインL12を通じて充填塔11に脱水処理液が供給され、充填塔11から流出した脱水処理液は、分岐ラインL13から脱水処理液ラインL3を通じて外部に排出される。
【0056】
また、水分測定準備工程では、合流ラインL12と分岐ラインL13の開閉弁V3,V4が閉鎖されるとともに、脱水処理液ラインL3の開閉弁V6が開放される。これにより、濃度関係情報を取得(作成)するための標準液として、脱水処理液ラインL3に脱水処理液が供給され、濃度関係情報の作成が開始される。
【0057】
また、精製工程では、水分添加ラインL11の流量調整弁V5と脱水処理液ラインL3の開閉弁V6が閉鎖されるとともに、溶媒供給ラインL1と溶媒送液ラインL2の開閉弁V1,V2が開放される。こうして、充填塔11への被精製液の通液が開始される。なお、本実施形態では、前処理工程の終了後に溶媒供給ラインL1と溶媒送液ラインL2の開閉弁V1,V2を開放することで、水分測定準備工程の開始と同時に、充填塔11への被精製液の通液が開始されてもよい。
【0058】
なお、第1の実施形態と同様に、上述した各工程においてLPC21に供給される非水溶媒中の他の微粒子を除去するために、脱水処理液ラインL3のうちLPC21の上流側、好ましくは撹拌手段14とLPC21との間に、少なくとも1つの微粒子除去フィルターが設けられていてもよい。この微粒子除去フィルターの孔径や材質は、第1の実施形態で説明した通りである。
【0059】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態に係る液体精製装置の概略構成図である。上述した実施形態では、脱水処理液として高純度の非水溶媒が用いられるが、そのような高純度の非水溶媒を用意できない場合もある。本実施形態は、そういった場合に適用可能な変形例であり、脱水処理液として被精製液が用いられる点で上述した実施形態と異なっている。以下、この点に関し、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0060】
本実施形態では、第1の実施形態の脱水処理液ラインL3が省略され、排液ラインL4は、溶媒送液ラインL2からではなく溶媒供給ラインL1(具体的には、開閉弁V1の下流側)から分岐している。これに伴い、開閉弁V3は、脱水処理液ラインL3にではなく排液ラインL4に設けられている。また、排液ラインL4は、分岐ラインL13を介して溶媒送液ラインL2(具体的には、開閉弁V2)に接続され、開閉弁V4は、排液ラインL4にではなく分岐ラインL13に設けられている。なお、撹拌手段14は、排液ラインL4と分岐ラインL13との接続位置の下流側に設けられている。加えて、排液ラインL4のうち、水分添加ラインL11による水分の添加位置の上流側に、水分除去手段15とイオン除去手段16が設けられている。
【0061】
水分除去手段15とイオン除去手段16は、それぞれ水分測定準備工程で使用され、被精製液中の水分とイオン成分とを除去する機能を有している。水分除去手段15としては、特に限定されず、ゼオライトなどの公知のものを用いることができる。イオン除去手段16としては、充填塔11に充填されているのと同様に、脱水処理が施されたイオン交換体(イオン交換樹脂やモノリス状有機多孔質イオン交換体など)を用いることができる。また、このようなイオン交換体を用いる場合、そこから発生する他の微粒子を除去するために、イオン除去手段16の下流側、好ましくは撹拌手段14とLPC21との間に、微粒子除去手段が設けられていることが好ましい。この微粒子除去手段は、MF膜などの多孔質膜を少なくとも1つ含み、第1の実施形態の微粒子除去フィルターと同様の構成および機能を有している。
【0062】
このような構成の変更に伴い、本実施形態における液体精製装置10の運転方法の各工程は、以下のような点で第1の実施形態と異なっている。
【0063】
すなわち、前処理工程では、溶媒供給ラインL1と分岐ラインL13の開閉弁V1,V4が開放されるとともに、溶媒送液ラインL2と排液ラインL4の開閉弁V2,V3が閉鎖される。これにより、充填塔11には、脱水処理液として溶媒供給ラインL1から被精製液が供給され、充填塔11から流出した脱水処理液は、分岐ラインL13から排液ラインL4を通じて外部に排出される。なお、本実施形態では、前処理工程の終了時期を判断するために、通液後の脱水処理液の微粒子数は、精製液中の水分濃度の要求仕様に対応する微粒子数と比較されるが、この点を除いて、前処理工程の終了時期を判断する方法は第1の実施形態と同様である。
【0064】
また、水分測定準備工程では、排液ラインL4の開閉弁V3が開放されるとともに、溶媒送液ラインL2と分岐ラインL13の開閉弁V2,V4が閉鎖され、溶媒供給ラインL1から排液ラインL4に被精製液が供給される。そして、水分除去手段15で被精製液中の水分が除去され、イオン除去手段で被精製液中のイオン成分が除去されることで、高純度の非水溶媒である標準液が用意される。こうして得られた標準液に対して、水分添加ラインL11を通じて超純水(水分)を添加し、その添加量を段階的に変化させながらLPC21により標準液中の微粒子数を計測することで、濃度関係情報が作成されて取得される。このとき、標準液中の微粒子数を精度よく計測するには、LPC21に供給される標準液の流量が十分に確保されていることが好ましい。そのために、イオン除去手段16としては、大きな空間速度が得られるモノリス状有機多孔質イオン交換体を用いることが好ましい。
【0065】
また、精製工程では、排液ラインL4の開閉弁V3と水分添加ラインL11の流量調整弁V5が閉鎖されるとともに、溶媒送液ラインL2の開閉弁V2が開放されることで、充填塔11への被精製液の通液が開始される。なお、本実施形態では、前処理工程の終了後に溶媒送液ラインL2の開閉弁V2を閉鎖せずに開放したままにすることで、水分測定準備工程の開始と同時に、充填塔11への被精製液の通液が開始されてもよい。
【0066】
上述した実施形態では、非水溶媒中の微粒子数に着目した水分測定方法について、液体精製装置で精製された非水溶媒に適用した場合を例示したが、精製されていない一般的な非水溶媒に対しても適用可能である。ただし、そのような水分測定を行う前には、測定対象の非水溶媒に含まれる水分以外の不純物、特に、LPCによる計測において微細気泡と区別することができない他の微粒子を除去しておくことが好ましい。すなわち、例えば、MF膜などの多孔質膜からなる微粒子除去フィルターを用いて、測定対象の非水溶媒中の他の微粒子を除去しておくことが好ましい。
【0067】
また、上述した実施形態では、非水溶媒中の微粒子数に着目したもう一つの方法、すなわち、前処理工程の終了時期を判断する方法について、イオン交換体の脱水処理に適用した場合を例示したが、イオン交換体以外の他の精製手段の前処理に対しても適用可能である。すなわち、上述した実施形態では、非水溶媒の精製手段としてイオン交換体を例示したが、液体精製装置には、各種フィルターや活性炭などの他の精製手段が設けられていてもよい。こうした他の精製手段の中には、使用前に湿潤状態で保管されているものがあり、そのような精製手段に含まれる水分を非水溶媒に置換するために、前処理用の非水溶媒(前処理液)を通液する前処理が必要なものがある。このような精製手段に対しては、上述した実施形態で例示したように、非水溶媒中の微粒子数に基づいて前処理工程の終了時期を判断する方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 液体精製装置
11 充填塔
12 溶媒流量計
13 超純水流量計
14 撹拌手段
15 水分除去手段
16 イオン除去手段
20 水分測定装置
21 液中パーティクルカウンタ(LPC)
22 演算手段
L1 溶媒供給ライン
L2 溶媒送液ライン
L3 脱水処理液ライン
L4 排液ライン
L5 超純水ライン
L11 水分添加ライン
L12 合流ライン
L13 分岐ライン
V1~V4,V6 開閉弁
V5 流量調整弁
図1
図2
図3
図4