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特開2024-47236プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047236
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
G01R29/08 D
G01R29/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152756
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】緑 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】本谷 智宏
(72)【発明者】
【氏名】栗原 弘
(57)【要約】
【課題】より広い周波数帯に含まれる周波数を有する放射妨害波についての放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、供試体を囲む仮想的な面上における放射妨害波の電磁界強度の分布を精度よく推定することができるプログラムを提供する。
【解決手段】コンピュータに、放射妨害波を放射する供試体に応じた複数の電磁波源の位置と、前記放射妨害波を測定するアンテナと前記供試体との相対的な位置関係とに基づいて、前記アンテナによる前記放射妨害波の測定間隔の上限値を算出させる第1算出ステップ、を実行させるためのプログラム。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
放射妨害波を放射する供試体に応じた複数の電磁波源の位置と、前記放射妨害波を測定するアンテナと前記供試体との相対的な位置関係とに基づいて、前記アンテナによる前記放射妨害波の測定間隔の上限値を算出させる第1算出ステップ、
を実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記測定間隔は、前記アンテナによって前記放射妨害波を測定する複数の測定位置のうちの隣り合う測定位置同士の間隔のことである、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記複数の電磁波源の位置と、前記位置関係と、前記放射妨害波の波長と、サンプリング定理とに基づいて、前記測定間隔を算出させる第2算出ステップを実行させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記第2算出ステップにより算出された前記測定間隔の最大値が、前記第1算出ステップにより算出された前記上限値を超えている場合、前記放射妨害波を測定する放射妨害波試験に用いる前記測定間隔として前記上限値を選択させ、前記第2算出ステップにより算出された前記測定間隔の最大値が、前記第1算出ステップにより算出された前記上限値以下である場合、前記放射妨害波試験に用いる前記測定間隔として前記第2算出ステップにより算出された前記測定間隔を選択させる選択ステップを実行させる、
請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記第1算出ステップは、統計解析に基づいて前記上限値を算出させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記第1算出ステップにより算出された前記上限値に基づいて、前記放射妨害波の電界強度の分布と前記放射妨害波の磁界強度の分布との少なくとも一方の分布を算出する第3算出ステップを実行させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記少なくとも一方の分布をシミュレーション又は実測により取得する取得ステップと、
ローパスフィルタによって前記少なくとも一方の分布を補間する補間ステップと、
を実行させる請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
放射妨害波を放射する供試体に応じた複数の電磁波源の位置と、前記放射妨害波を測定するアンテナと前記供試体との相対的な位置関係とに基づいて、前記アンテナによる前記放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する第1算出ステップ、
を有する情報処理方法。
【請求項9】
前記測定間隔は、前記アンテナによって前記放射妨害波を測定する複数の測定位置のうちの隣り合う測定位置同士の間隔のことである、
請求項8に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記複数の電磁波源の位置と、前記位置関係と、前記放射妨害波の波長と、サンプリング定理とに基づいて、前記測定間隔を算出させる第2算出ステップを有する、
請求項8に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記第2算出ステップにより算出された前記測定間隔の最大値が、前記第1算出ステップにより算出された前記上限値を超えている場合、前記放射妨害波を測定する放射妨害波試験に用いる前記測定間隔として前記上限値を選択させ、前記第2算出ステップにより算出された前記測定間隔の最大値が、前記第1算出ステップにより算出された前記上限値以下である場合、前記放射妨害波試験に用いる前記測定間隔として前記第2算出ステップにより算出された前記測定間隔を選択させる選択ステップを有する、
請求項10に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記第1算出ステップは、統計解析に基づいて前記上限値を算出させる、
請求項8に記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記第1算出ステップにより算出された前記上限値に基づいて、前記放射妨害波の電界強度の分布と前記放射妨害波の磁界強度の分布との少なくとも一方の分布を算出する第3算出ステップを有する、
請求項8に記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記少なくとも一方の分布をシミュレーション又は実測により取得する取得ステップと、
ローパスフィルタによって前記少なくとも一方の分布を補間する補間ステップと、
を有する請求項13に記載の情報処理方法。
【請求項15】
放射妨害波を放射する供試体に応じた複数の電磁波源の位置と、前記放射妨害波を測定するアンテナと前記供試体との相対的な位置関係とに基づいて、前記アンテナによる前記放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する、
を備える情報処理装置。
【請求項16】
前記測定間隔は、前記アンテナによって前記放射妨害波を測定する複数の測定位置のうちの隣り合う測定位置同士の間隔のことである、
請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記複数の電磁波源の位置と、前記位置関係と、前記放射妨害波の波長と、サンプリング定理とに基づいて、前記測定間隔を算出する、
請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項18】
算出した前記測定間隔の最大値が、算出した前記上限値を超えている場合、前記放射妨害波を測定する放射妨害波試験に用いる前記測定間隔として前記上限値を選択し、算出した前記測定間隔の最大値が、算出した前記上限値以下である場合、前記放射妨害波試験に用いる前記測定間隔として、算出した前記測定間隔を選択する、
請求項17に記載の情報処理装置。
【請求項19】
前記複数の電磁波源の位置と、前記位置関係とに基づいて、前記放射妨害波の波長に対して前記測定間隔がサンプリング定理を満たすように、前記アンテナによって前記放射妨害波を測定する複数の測定位置を算出する、
請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項20】
統計解析に基づいて前記上限値を算出する、
請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項21】
算出した前記上限値に基づいて、前記放射妨害波の電界強度の分布と前記放射妨害波の磁界強度の分布との少なくとも一方の分布を算出する、
請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項22】
前記少なくとも一方の分布をシミュレーション又は実測により取得することと、ローパスフィルタによって前記少なくとも一方の分布を補間することとを行う、
請求項21に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射妨害波試験を行うために用いる技術についての研究、開発が行われている。ここで、放射妨害波試験は、供試体から放射妨害波として放射される電磁波の電界強度を測定対象電界強度とし、測定対象電界強度が、国際的に定められた規格の許容値以下であるか否かを確認する試験のことである。供試体は、放射妨害波試験を行う対象となる物体のことである。また、供試体は、放射妨害波を放射する電磁波源を含む物体のことである。例えば、供試体は、電子機器である。供試体が電子機器である場合、放射妨害波試験は、電子機器が市場へ出荷される前に行われることが多い。これは、電子機器から放射される放射妨害波が周囲の他の電子機器に影響を及ぼし、例えば、当該他の電子機器の誤動作を誘引することがあるためである。
【0003】
放射妨害波試験では、予め決められた測定面上における測定対象電界強度の分布が、測定対象電界強度分布として推定される。測定面は、供試体を囲む仮想的な面のことである。測定対象電界強度分布が推定された後、放射妨害波試験では、推定された測定対象電界強度分布に基づいて、測定対象電界強度が最大となる位置が、最大電界強度位置として特定される。最大電界強度位置が特定された後、放射妨害波試験では、特定された最大電界強度位置において、測定対象電界強度が所定時間測定される。そして、最大電界強度位置において測定対象電界強度が所定時間測定された後、放射妨害波試験では、最大電界強度位置において所定時間測定された測定対象電界強度の尖頭値、積分値、平均値等が、国際的に定められた規格の許容値以下であるか否かが確認される。
【0004】
ここで、放射妨害波試験では、測定対象電界強度分布を推定する際、測定面上に複数の測定点が設定される。そして、放射妨害波試験では、測定面上に設定された複数の測定点それぞれの位置を測定位置とし、各測定位置において、測定対象電界強度が測定される。そして、放射妨害波試験では、測定対象電界強度分布は、各測定位置において測定された測定対象電界強度に基づいて推定される。放射妨害波試験によって推定される測定対象電界強度分布の推定精度は、推定された測定対象電界強度分布における最大電界強度位置と、実際の測定対象電界強度分布における測定対象電界強度が最大となる実最大電界強度位置との一致度合いによって表される。このため、測定対象電界強度分布の推定精度の高さは、すなわち、最大電界強度位置の特定精度の高さを示す。
【0005】
このように、放射妨害波試験では、測定対象電界強度は、各測定位置において測定される。このため、放射妨害波試験では、測定対象電界強度分布の推定精度は、測定面上に設定される複数の測定点の数が多いほど、高くなる。しかしながら、測定対象電界強度分布の推定に要する時間は、測定面上に設定される測定点の数が多いほど、長くなる。
【0006】
例えば、情報通信機器の周波数帯域(すなわち、30MHz~40GHz)の放射妨害波についての放射妨害波試験では、測定面の形状は、円筒形状である。そして、当該放射妨害波試験では、測定面上に設定される複数の測定点は、基準となる平面からの高さが1m~4mの範囲において、円筒形状の測定面上の上下方向に1cm間隔で並ぶように設定される。また、当該放射妨害波試験では、測定面上に設定される複数の測定点は、円筒形状の測定面の中心軸周りの方位角が0度~360度の範囲において、円筒形状の測定面上の周方向に1°間隔で並ぶように設定される。このため、当該放射妨害波試験では、測定面上に設定される測定点の数は、約14万点にも及ぶ。その結果、当該放射妨害波試験には、例えば、1点の測定点毎に1分間の測定を行った場合であっても、14万分(約97日間)以上もの時間を要してしまう。
【0007】
また、放射妨害波試験では、測定対象電界強度分布の推定精度を高くするため、放射妨害波として測定する電磁波の周波数帯域を広くすることが求められる。このため、放射妨害波試験では、例えば、スーパーヘテロダイン方式のスペクトルアナライザ、FFT(Fast Fourier Transform)方式のスペクトルアナライザ等のスペクトルアナライザを用いることにより、当該電磁波のスペクトルの測定を行う。しかしながら、放射妨害波試験に要する時間は、当該電磁波の周波数帯域が広いほど、長くなることも知られている。
【0008】
このように、放射妨害波試験では、測定対象電界強度分布の推定精度を高くしようとする場合、放射妨害波試験に要する時間は、長くなってしまうことがある。
【0009】
ここで、このような放射妨害波試験に要する時間の増大の抑制を目的として、測定面上における複数の測定位置をサンプリング定理に基づいて算出する電磁波測定点算出装置を有し、電磁波測定点算出装置により算出された複数の測定位置に基づいて、放射妨害波試験を行う放射妨害波測定装置が知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2017-181104号公報
【特許文献2】特開2020-159905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1、2に記載されている放射妨害波測定装置は、ある測定位置Y1が与えられている場合において、測定位置Y1から次の測定位置Y2までの間隔を測定間隔とし、測定間隔をサンプリング定理に基づいて算出する。そして、当該放射妨害波測定装置は、算出した測定間隔と、測定位置Y1とに基づいて、測定位置Y2を算出する。当該放射妨害波測定装置は、このような測定位置の算出を各測定位置について1つずつ順に行い、算出した複数の測定位置に基づいて、測定面上における複数の測定位置の配置、すなわち、測定面上に設定される複数の測定点の配置を特定する。これにより、当該放射妨害波測定装置は、設定する測定点の数を不必要に増大させることなく、測定対象電界強度分布を精度よく推定することができる。
【0012】
しかしながら、特許文献1、2に記載されている放射妨害波測定装置では、供試体と測定点との間の距離と放射妨害波の波長とが近いほど、測定対象電界強度分布の測定精度が悪くなってしまうことがある。換言すると、当該放射妨害波測定装置では、放射妨害波の周波数が低いほど、当該測定精度が悪くなってしまうことがある。これは、当該放射妨害波測定装置が、放射妨害波の周波数が低いほど、測定間隔をサンプリング定理に基づいて増大させてしまうからである。また、特許文献1、2には、供試体と測定点との間の距離と放射妨害波の波長と、当該測定精度との関係が示されていない。これは、当該測定精度が悪くなってしまうことを抑制するため、当該放射妨害波測定装置によって算出された測定間隔よりも短い測定間隔を用いて測定対象電界強度分布を測定することに繋がるため、望ましくない。このような場合、当該放射妨害波測定装置のユーザは、測定対象電界強度分布の測定時間を不必要に増大させてしまうことになる。
【0013】
本開示は、このような事情を考慮してなされたもので、より広い周波数帯に含まれる周波数を有する放射妨害波についての放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、供試体を囲む仮想的な面上における放射妨害波の電磁界強度の分布を精度よく推定することができるプログラム、情報処理方法、及び情報処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一態様は、コンピュータに、放射妨害波を放射する供試体に応じた複数の電磁波源の位置と、前記放射妨害波を測定するアンテナと前記供試体との相対的な位置関係とに基づいて、前記アンテナによる前記放射妨害波の測定間隔の上限値を算出させる第1算出ステップ、を実行させるためのプログラムである。
【0015】
また、本開示の一態様は、放射妨害波を放射する供試体に応じた複数の電磁波源の位置と、前記放射妨害波を測定するアンテナと前記供試体との相対的な位置関係とに基づいて、前記アンテナによる前記放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する第1算出ステップ、を有する情報処理方法である。
【0016】
また、本開示の一態様は、放射妨害波を放射する供試体に応じた複数の電磁波源の位置と、前記放射妨害波を測定するアンテナと前記供試体との相対的な位置関係とに基づいて、前記アンテナによる前記放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する第1算出部、を備える情報処理装置である。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、より広い周波数帯に含まれる周波数を有する放射妨害波についての放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、供試体を囲む仮想的な面上における放射妨害波の電磁界強度の分布を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る放射妨害波測定装置100の構成の一例を示す図である。
図2】測定面上に複数の測定点が設定されている様子の一例を示すイメージ図である。
図3】放射妨害波測定装置100が設置された電波暗室内における供試体1とアンテナ2との位置関係の一例を示す図である。
図4】コンピュータ7の機能構成の一例を示す図である。
図5】コンピュータ7のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6】放射妨害波測定装置100が行う測定点配置特定処理の流れの一例を示す図である。
図7図6に示したステップS140の位置特定処理の流れの一例を示す図である。
図8】電磁波源領域内に位置する2つの電磁波源と、測定円の円周上に位置させた観測点との位置関係の一例を示す図である。
図9】放射妨害波の周波数がある周波数と一致している場合において対象推定方法により推定された複数の測定対象電界強度分布のそれぞれに応じた空間周波数スペクトルの一例を示す図である。
図10】放射妨害波の周波数毎の最大空間周波数に応じた放射妨害波の測定間隔と、放射妨害波の周波数との関係の一例を示す図である。
図11図10に示したグラフの横軸の値が0.001である場合の空間周波数スペクトルの値の、解析対象比を変化に応じた変化の一例を示す図である。
図12】放射妨害波測定装置100が放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する処理の流れの一例を示す図である。
図13】放射妨害波測定装置100が放射妨害波の測定間隔の上限値を用いて測定対象電界強度分布を推定する処理の流れの一例を示す図である。
図14】ある測定条件に基づいて図13に示したフローチャートの処理によって推定された測定対象電界強度分布と、当該測定条件と電磁気学とに基づくシミュレーション等によって推定された実際の測定対象電界強度分布とを比較するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
<放射妨害波測定装置の構成>
以下、図1を参照し、実施形態に係る放射妨害波測定装置100の構成について説明する。図1は、実施形態に係る放射妨害波測定装置100の構成の一例を示す図である。
【0021】
放射妨害波測定装置100は、放射妨害波試験を行う装置である。放射妨害波試験は、EMC(ElectroMagnetic Compatibility)規格に従って、供試体から放射される放射妨害波を測定する試験のことである。このため、放射妨害波試験の試験条件及び試験方法は、国際的に定められている。また、放射妨害波試験は、放射妨害波の電界強度と放射妨害波の磁界強度との少なくとも一方の測定を、放射妨害波の測定として行う試験である。以下では、一例として、放射妨害波試験が、放射妨害波の電界強度の測定を行う試験である場合について説明する。また、以下では、説明の便宜上、放射妨害波試験において放射妨害波測定装置100が測定する放射妨害波の電界強度を、測定対象電界強度と称して説明する。
【0022】
ここで、供試体は、放射妨害波を放射する電磁波源を含む物体のことである。また、供試体は、放射妨害波試験の対象となる物体(すなわち、放射妨害波試験の被験体)のことである。また、放射妨害波は、供試体から放射される電磁波のうち所定の周波数帯の電磁波のことである。以下では、一例として、このような供試体が、図1に示した供試体1である場合について説明する。この場合、放射妨害波測定装置100は、供試体1から放射される放射妨害波を測定する放射妨害波試験を行う。そこで、以下では、説明の便宜上、供試体1から放射される放射妨害波を、単に放射妨害波と称して説明する。また、当該例では、供試体1は、ノートPC(Personal Computer)である。なお、供試体1は、ノートPCに代えて、電磁波を放射する他の電子機器、通信機器等であってもよい。
【0023】
放射妨害波測定装置100は、グランドプレーンを形成している金属床面を備える電波暗室内に配置される。グランドプレーン上には、電波吸収体が設置されていなくてもよく、電波吸収体が設置されていてもよい。電波吸収体は、放射妨害波を吸収する材料であり、例えば、磁性材料、カーボン等を用いて作製される。なお、電波暗室の内壁のうち金属床面を除いた壁面にも、電波吸収体が貼り付けられていなくてもよく、電波吸収体が貼り付けられていてもよい。以下では、一例として、グランドプレーン上には、電波吸収体が設置されていない場合について説明する。また、以下では、一例として、当該壁面には、電波吸収体が貼り付けられていない場合について説明する。
【0024】
また、放射妨害波測定装置100は、アンテナ2と、アンテナマスト3と、ターンテーブル4と、受信器5と、コントローラ6と、コンピュータ7を備える。なお、放射妨害波測定装置100は、アンテナ2と、アンテナマスト3と、ターンテーブル4と、受信器5と、コントローラ6と、コンピュータ7とに加えて、他の装置、他の機器、他の部材等を備える構成であってもよい。また、放射妨害波測定装置100において、コンピュータ7は、受信器5とコントローラ6とのうちのいずれか一方又は両方と一体に構成されてもよい。
【0025】
アンテナ2は、電磁波の電界強度を検出可能なアンテナであれば、如何なるアンテナであってもよい。図1に示した例では、アンテナ2は、アンテナマスト3により支持されたハイブリッドアンテナである。アンテナ2は、検出した電界強度に応じた電圧を示す電気信号を、後述する受信器5に出力する。ここで、本実施形態では、一例として、アンテナ2の位置を、アンテナ2の先端の位置によって表す場合について説明する。なお、アンテナ2の位置は、当該先端の位置に代えて、アンテナ校正の基準点等のアンテナ2に応じた他の位置によって表される構成であってもよい。
【0026】
アンテナマスト3は、後述するコントローラ6による制御に応じて、アンテナ2を所望の方向に沿って移動させることが可能なアンテナマストであれば、如何なるアンテナマストであってもよい。図1に示した例では、アンテナマスト3は、アンテナ2を上下方向に沿って移動させることが可能なアンテナマストである。これにより、放射妨害波測定装置100は、アンテナ2の供試体1に対する相対的な位置を、上下方向に沿って移動させることができる。
【0027】
このようなアンテナマスト3により支持されているため、本実施形態では、アンテナ2の位置は、アンテナマスト3により上下方向に沿って変化し、上下方向と異なる方向に沿って変化しない。このため、本実施形態では、アンテナ2の位置は、アンテナ2の先端の上下方向における位置、すなわち、電波暗室における金属床面からのアンテナ2の先端の高さによって表される。ここで、実施形態において、上下方向は、重力方向と平行な2つの方向である。電波暗室の金属床面が重力方向と直交する場合、上下方向は、当該金属床面と直交する2つの方向であると換言することもできる。より具体的には、実施形態において、上方向は、重力方向と平行な2つの方向のうち、重力方向と逆の方向である。また、実施形態において、下方向は、重力方向と平行な2つの方向のうち、重力方向と一致する方向である。
【0028】
ターンテーブル4は、放射妨害波試験において供試体1が載置される台を含むテーブルである。ターンテーブル4は、後述するコントローラ6による制御に応じて、当該台に載置された供試体1を所定の回転軸周りに回転させることができる物体であれば、如何なる物体であってもよい。これにより、放射妨害波測定装置100は、ターンテーブル4の回転軸周りに、アンテナ2の位置を供試体1に対して相対的に回転させることができる。ここで、アンテナ2の位置が供試体1に対して相対的に回転することは、換言すると、アンテナの位置が、ターンテーブル4の回転軸周りの方位角方向に相対的に回転することである。なお、本実施形態では、一例として、図1に示すように、ターンテーブル4の回転軸が、上下方向と平行な軸である場合について説明する。なお、ターンテーブル4の回転軸は、上下方向と非平行な軸であってもよい。
【0029】
受信器5は、有線又は無線によってコンピュータ7と通信可能に接続されている。受信器5は、アンテナ2から出力された電気信号を、アンテナ2から取得する。受信器5は、取得した電気信号をコンピュータ7に出力する。
【0030】
コントローラ6は、アンテナマスト3によるアンテナ2の並進と、ターンテーブル4による供試体1の回転とのそれぞれを制御する制御装置である。コントローラ6は、例えば、有線によってアンテナマスト3、ターンテーブル4のそれぞれと通信可能に接続される。なお、コントローラ6は、コンピュータ7からの要求に応じてアンテナマスト3とターンテーブル4との少なくとも一方を制御してもよく、ユーザから受け付けた操作に基づいてアンテナマスト3とターンテーブル4との少なくとも一方を制御してもよい。以下では、コントローラ6が、コンピュータ7からの要求に応じてアンテナマスト3とターンテーブル4との両方を制御する場合について説明する。
【0031】
コンピュータ7は、例えば、ノートPCである。なお、コンピュータ7は、ノートPCに代えて、デスクトップPC、タブレットPC等の他の情報処理装置であってもよい。
【0032】
コンピュータ7は、コントローラ6及び受信器5を制御し、放射妨害波試験を行う。より具体的には、コンピュータ7は、予め決められた測定面上に2以上の測定点を設定する。測定面は、供試体1を囲む仮想的な面のことである。また、2以上の測定点のそれぞれは、測定面上において測定対象電界強度を測定する2以上の測定位置のそれぞれに設定される仮想的な点のことである。換言すると、2以上の測定点のそれぞれは、測定面上における測定位置のそれぞれを示す仮想的な点のことである。すなわち、測定面上に設定されたある測定点の位置は、当該測定点が示す測定位置のことである。測定面上に2以上の測定点を設定した後、コンピュータ7は、コントローラ6を制御し、予め決められた測定面上に設定される2以上の測定点それぞれの位置と、アンテナ2の位置とを順に一致させる。コンピュータ7は、測定面上に設定された2以上の測定点のそれぞれが示す測定位置にアンテナ2の位置を一致させる毎に、受信器5を制御し、受信器5から出力される電気信号を取得する。この電気信号は、アンテナ2が位置する測定位置においてアンテナ2により検出された電界強度に応じた電気信号である。また、コンピュータ7は、受信器5から電気信号を取得すると、取得した電気信号に応じた電界強度を、測定対象電界強度として算出する。例えば、コンピュータ7は、電気信号の大きさと電界強度の大きさとを対応付ける情報に基づいて、取得した電気信号に応じた電界強度を、測定対象電界強度として算出する。コンピュータ7は、放射妨害波試験において、このような処理により、測定面上に設定された2以上の測定点のそれぞれが示す測定位置における測定対象電界強度を算出する。本実施形態において、測定対象電界強度を測定することは、このように受信器5から取得した電気信号に基づいてコンピュータ7が測定対象電界強度を算出することを意味する。すなわち、コンピュータ7は、放射妨害波試験において、このような処理により、測定面上に設定された2以上の測定点のそれぞれが示す測定位置における測定対象電界強度を測定する。
【0033】
放射妨害波試験において、測定面上に設定された2以上の測定点のそれぞれが示す測定位置における測定対象電界強度を測定した後、コンピュータ7は、各測定位置において測定した測定対象電界強度に基づいて、測定面上における測定対象電界強度の分布を、測定対象電界強度分布として推定する。測定対象電界強度分布の推定方法については、ローパスフィルタを適用する方法等の既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。測定対象電界強度分布は、測定対象電界強度が最大となる位置を第1推定最大電界強度位置として示す分布である。このため、コンピュータ7によって推定される測定対象電界強度分布の推定精度は、推定された測定対象電界強度分布が示す第1推定最大電界強度位置と、実際の測定対象電界強度分布が示す実最大電界強度位置との一致度合いによって表される。このため、測定対象電界強度分布の推定精度の高さは、すなわち、第1推定最大電界強度位置の特定精度の高さを示す。
【0034】
放射妨害波試験において、測定対象電界強度分布を推定した後、コンピュータ7は、推定した測定対象電界強度分布に基づいて、第1推定最大電界強度位置を特定する。
【0035】
放射妨害波試験において、第1推定最大電界強度位置を特定した後、コンピュータ7は、特定した第1最大電界強度位置とアンテナ2の位置とを一致させ、所定の時間、測定対象電界強度を測定する。そして、コンピュータ7は、所定の時間測定した測定対象電界強度の尖頭値、積分値、平均値等が、国際的に定められた規格の許容値以下であるか否かを判定する。このようにして、放射妨害波測定装置100は、放射妨害波試験を行う。なお、コンピュータ7は、判定した結果を示す情報を図示しない表示部(例えば、ディスプレイ)に表示させる構成であってもよく、当該結果を示す情報を他の装置に出力する構成であってもよい。
【0036】
また、このような放射妨害波試験を行う前において、コンピュータ7は、以下において説明するように、放射妨害波試験において用いる2以上の測定点の配置、すなわち、測定面上における2以上の測定位置の配置を特定する。
【0037】
放射妨害波試験を行う前において、コンピュータ7は、ユーザから受け付けた操作に応じて、許容値を示す許容値情報を受け付ける。ここで、この許容値は、第2推定最大電界強度位置からのずれとして許容可能な大きさを示す。許容値は、例えば、距離の単位によって表された値であってもよく、デシベルによって表された値であってもよい。以下では、一例として、許容値が、デシベルによって表された値である場合について説明する。また、第2推定最大電界強度位置は、前述の実最大電界強度位置として、所定の推定方法によって推定された位置のことである。所定の推定方法は、例えば、電磁気学に基づく理論計算、数値シミュレーション、事前に行われる測定実験等であるが、これらに限られるわけではない。第2推定最大電界強度位置は、測定対象電界強度が最大となる位置についての理論値の一種であると捉えられてもよい。
【0038】
また、放射妨害波試験を行う前において、コンピュータ7は、ユーザから受け付けた操作に応じて、測定条件情報を受け付ける。ここで、測定条件情報は、放射妨害波試験における放射妨害波の測定についての測定条件を示す情報である。測定条件情報は、例えば、供試体1に関する供試体情報と、放射妨害波を測定する測定空間に関する測定空間情報と、放射妨害波に関する放射妨害波情報とを含む情報を、当該測定条件を示す情報として含む情報のことである。なお、測定条件情報には、これらの情報に加えて、他の情報が含まれる構成であってもよい。
【0039】
供試体情報は、例えば、ターンテーブル4上に配置された供試体1が有する部位のうちターンテーブル4の回転軸からターンテーブル4の径方向へ最も遠く離れた部位までの距離を半径とし、ターンテーブル4の回転軸を中心軸とする円筒形状の領域の高さ、当該円筒形状の領域の半径等を、供試体1のサイズとして示す情報を含む情報のことである。ここで、本実施形態では、ターンテーブル4の径方向は、水平方向と平行な方向である。そして、水平方向は、重力方向と直交する方向のことである。以下では、説明の便宜上、当該領域を、電磁波源領域と称して説明する。なお、供試体情報には、供試体1に関する他の情報が含まれる構成であってもよい。また、ターンテーブル4の径方向は、水平方向と異なる方向と平行な方向であってもよい。また、電磁波源領域の形状は、円筒形状に変えて、直方体形状等の他の形状であってもよい。
【0040】
測定空間情報は、例えば、アンテナ2の先端を上下方向に移動させる範囲を測定範囲として示す測定範囲情報を、当該測定空間に関する情報として含む情報である。なお、測定空間情報には、測定空間に関する他の情報が含まれる構成であってもよい。
【0041】
放射妨害波情報は、例えば、放射妨害波の波長を示す波長情報、放射妨害波の周波数を示す情報等を含む情報である。なお、放射妨害波情報には、放射妨害波に関する他の情報が含まれる構成であってもよい。
【0042】
また、コンピュータ7は、放射妨害波試験を行う前において、前述した通り、ユーザから受け付けた操作に応じて、測定面を設定する。本実施形態では、一例として、測定面が、電磁波源領域の中心軸を中心軸とし、電磁波源領域の全体を包含する円筒形状の仮想的な面である場合について説明する。このため、測定面は、ターンテーブル4の回転、アンテナ2の先端の上下移動等によって、アンテナ2の先端が位置することが可能な点(すなわち、アンテナ2の先端が位置することが可能な位置)の集合を示す面である。なお、測定面は、水平方向にアンテナ2の先端の位置を移動させることが可能な機構を放射妨害波測定装置100が備えている場合、アンテナ2の先端が位置することが可能な他の形状の仮想的な面であってもよい。
【0043】
許容値情報と測定条件情報とを受け付け、且つ、測定面を設定した後、コンピュータ7は、受け付けた許容値情報が示す許容値と、受け付けた測定条件情報とに基づいて、設定した測定面上に設定する2以上の測定点の配置、すなわち、2以上の測定位置の配置を特定する。ここで、当該配置は、放射妨害波の測定間隔によって決まる。このため、コンピュータ7は、より具体的には、当該許容値と、当該測定条件情報とに基づいて、放射妨害波の測定間隔を算出し、算出した放射妨害波の測定間隔に基づいて当該配置を特定する。ここで、放射妨害波の測定間隔は、2以上の測定点のうち隣り合う測定点同士の間隔のことである。換言すると、放射妨害波の測定間隔は、2以上の測定位置のうちの隣り合う測定位置同士の間隔のことである。コンピュータ7は、測定点配置特定処理を実行することにより、このような当該配置の特定を行う。測定点配置特定処理は、コンピュータ7が受け付けた測定条件情報と、許容値情報と、サンプリング定理とに基づいて、2以上の測定点の配置を特定する処理のことである。なお、測定点配置特定処理は、コンピュータ7が受け付けた測定条件情報と、サンプリング定理とに基づいて、2以上の測定点の配置を特定する処理のことであってもよい。また、測定点配置特定処理は、サンプリング定理に基づいて放射妨害波の測定間隔を算出可能な処理を含む処理であれば、如何なる処理であってもよい。以下では、一例として、測定点配置特定処理が、以下において説明する第1処理、第2処理、第3処理を含む処理である場合について説明する。
【0044】
第1処理は、放射妨害波の測定間隔を調整する測定間隔調整パラメータの値と、コンピュータ7が受け付けた測定条件情報とに基づいて、2以上の測定点の配置を特定する処理のことである。測定間隔調整パラメータは、後述する第3処理が実行される毎に値が小さくされるパラメータである。測定間隔調整パラメータの詳細については、後述する。
【0045】
ここで、第1処理において2以上の測定点の配置をコンピュータ7が特定する方法は、如何なる方法であってもよい。
【0046】
例えば、コンピュータ7は、以下において説明する方法により、第1処理において2以上の測定点の配置を特定する。この方法は、2以上の測定点の配置をコンピュータ7が特定可能な方法として知られている複数の方法のうちの1つである。
【0047】
まず、コンピュータ7は、予め設定した測定面上に複数の仮想的な点を設定し、設定した複数の仮想的な点と、予め受け付けた測定条件情報と、前述の測定間隔調整パラメータの値とに基づいて、測定面上に設定する複数の仮想的な点それぞれの位置を算出する。なお、以下では、説明の便宜上、測定面上における複数の仮想的な点のそれぞれを、単に仮想的な点と称して説明する。
【0048】
ここで、コンピュータ7による複数の仮想的な点それぞれの位置を算出する方法は、複数存在する。本実施形態では、一例として、コンピュータ7による複数の仮想的な点それぞれの位置を算出する方法が、測定面上に沿って所定の方向に伸びる互いに平行な複数の仮想的な直線を設定し、設定した複数の仮想的な直線毎に、仮想的な直線上に並べられる複数の仮想的な点それぞれの位置をコンピュータ7が算出する場合について説明する。また、本実施形態では、一例として、所定の方向が、上下方向と平行な場合について説明する。また、本実施形態では、一例として、複数の仮想的な直線は、測定面上において等間隔に並ぶ場合について説明する。すなわち、本実施形態では、一例として、複数の仮想的な直線が、円筒形状である測定面の中心軸と平行であり、且つ、円筒形状である測定面上において円筒の周方向に等間隔で並んでいる場合について説明する。なお、コンピュータ7による複数の仮想的な点それぞれの位置を算出する方法は、他の方法であってもよい。また、所定の方向は、上下方向に代えて、水平方向、測定面の周方向(すなわち、前述の方位角方向)等の他の方向と平行であってもよい。また、複数の仮想的な直線の一部又は全部は、測定面上において等間隔に並ばなくてもよい。
【0049】
なお、以下では、説明を簡略化するため、コンピュータ7が複数の仮想的な点それぞれの位置を算出する処理について、複数の仮想的な直線のうちのある1つの仮想的な直線上に並べられる複数の仮想的な点それぞれの位置を算出する処理を例に挙げて説明する。そこで、以下では、当該ある1つの仮想的な直線を、対象直線と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、対象直線上に並べられる複数の仮想的な点のそれぞれを、対象点と称して説明する。また、複数の対象点の位置は、供試体1が回転しない限り、上下方向の高さによって表すことができる。そこで、以下では、説明の便宜上、複数の対象点それぞれの上下方向における高さを、複数の対象点それぞれの位置と称して説明する。なお、測定間隔調整パラメータの値に基づいて複数の対象点それぞれの位置をコンピュータ7が算出する原理については、後述する。
【0050】
複数の対象点それぞれの位置を算出した後、コンピュータ7は、算出した複数の対象点それぞれの位置に基づいて、対象直線上に設定する2以上の測定点それぞれの位置、すなわち、対象直線上に設定する2以上の測定点のそれぞれが示す測定位置を、対象直線上に設定する2以上の測定点の配置として特定する。また、コンピュータ7は、測定面上に沿って所定の方向に伸びる互いに平行な複数の仮想的な直線のそれぞれを対象直線として選択する毎に、このような方法によって対象直線上に設定する2以上の測定点それぞれの位置を特定する。これにより、コンピュータ7は、放射妨害波を測定する位置を示すすべての測定点の配置を特定することができる。以下では、説明の便宜上、対象直線上に設定する2以上の測定点のそれぞれを、対象測定点と称して説明する。
【0051】
第1処理は、以上のような方法により、2以上の測定点の配置を特定する処理である。
【0052】
第2処理は、第1処理により2以上の測定点の配置が特定された場合、第1処理により特定された2以上の測定点の配置に基づいて、測定面上における測定対象電界強度分布を推定し、推定した測定対象電界強度分布に基づいて、前述の第1推定最大電界強度位置を算出する処理のことである。第1推定最大電界強度位置は、最大電界強度位置についての実験値の一種であると捉えられてもよい。すなわち、前述の許容値は、第1推定最大電界強度位置と、前述の第2推定最大電界強度位置とのずれとして許容可能な大きさを示す値であると換言することができる。
【0053】
第3処理は、第2処理により算出された第1推定最大電界強度位置と、第2推定最大電界強度位置とのずれが、コンピュータ7が受け付けた許容値情報が示す許容値を超える場合、測定間隔調整パラメータの値を小さくし、第1処理を再び実行する処理のことである。
【0054】
ここで、前述の複数の対象点のうち互いに隣接する対象点間それぞれの間隔は、測定間隔調整パラメータと関連づけられている。すなわち、複数の対象点のうち互いに隣接する対象点間それぞれの間隔は、測定間隔調整パラメータの値に応じて変化する。換言すると、複数の対象点のうち互いに隣接する対象点間それぞれの間隔を表す関数には、測定間隔調整パラメータが含まれている。このため、コンピュータ7は、第3処理において、測定間隔調整パラメータの値を小さくすることにより、複数の対象点のうち互いに隣接する対象点間それぞれの間隔を小さくすることができる。そして、複数の対象点のうち互いに隣接する対象点間それぞれの間隔が小さくなるほど、コンピュータ7によって第1処理により特定される2以上の対象測定点のうち互いに隣接する対象測定点間それぞれの間隔も小さくなる。すなわち、コンピュータ7は、第3処理において、測定間隔調整パラメータの値を小さくすることにより、特定する2以上の対象測定点のうち互いに隣接する対象測定点間それぞれの間隔を小さくすることができる。そして、コンピュータ7は、第3処理において、第2処理により算出された第1推定最大電界強度位置と第2推定最大電界強度位置とのずれが、コンピュータ7が受け付けた許容値情報が示す許容値以下である場合、第1処理によって特定された2以上の対象測定点それぞれの位置を、2以上の対象測定点の配置として特定する。これにより、コンピュータ7は、2以上の対象測定点のうち互いに隣接する対象測定点間それぞれの間隔を小さくし過ぎてしまうことを抑制することもできる。その結果、コンピュータ7は、放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、測定対象電界強度分布を精度よく推定することができる。
【0055】
以上のように、コンピュータ7は、測定点配置特定処理において、第1処理~第3処理を実行することにより、第1推定最大電界強度位置と第2推定最大電界強度位置とのずれが、コンピュータ7が受け付けた許容値情報が示す許容値以下となるまで、測定間隔調整パラメータの値を小さくしながら2以上の測定点の配置の特定を繰り返す。このため、測定間隔調整パラメータの初期値として与える値は、測定間隔調整パラメータの値として取り得る最大の値である。測定間隔調整パラメータが取り得る最大の値については、後述する。このように、測定間隔調整パラメータの値は、第3処理が行われる毎に、所定値ずつ小さくなる。従って、コンピュータ7は、第3処理が行われる回数が増えるほど、第1処理と第2処理とによって特定される2以上の測定点の配置における測定点間の距離は、短くなる。
【0056】
しかしながら、このような測定点配置特定処理によって特定された2以上の測定点の配置は、供試体1と測定点との間の距離(すなわち、供試体1とアンテナ2との間の距離)と放射妨害波の波長とが近いほど、測定対象電界強度分布の測定精度を悪くしてしまうことがある。換言すると、当該配置は、放射妨害波の周波数が低いほど、当該測定精度を悪くしてしまうことがある。これは、放射妨害波の周波数が低いほど、2以上の測定点のうちの隣り合う2つの測定点の間隔、すなわち、放射妨害波の測定間隔を、測定点配置特定処理がサンプリング定理に基づいて増大させてしまうからである。また、供試体1と測定点との間の距離と放射妨害波の波長と、当該測定精度との関係は、これまで明確に示されたことがない。これは、当該測定精度が悪くなってしまうことを抑制するため、測定点配置特定処理によって算出された当該間隔よりも短い間隔を放射妨害波の測定間隔として用いて測定対象電界強度分布を測定することに繋がるため、望ましくない。このような場合、放射妨害波測定装置100のユーザは、測定対象電界強度分布の測定時間を不必要に増大させてしまうことになる。
【0057】
そこで、コンピュータ7は、放射妨害波を放射する供試体1に応じた複数の電磁波源の位置と、放射妨害波を測定するアンテナ2と供試体1との相対的な位置関係とに基づいて、アンテナ2による放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する。これにより、コンピュータ7は、低周波数帯の放射妨害波の測定において、算出した上限値を放射妨害波の測定間隔として選択することができ、高周波数帯の放射妨害波の測定において、測定点配置特定処理によって算出された放射妨害波の測定間隔を、放射妨害波測定試験において実際に用いる放射妨害波の測定間隔として選択することができる。より具体的には、コンピュータ7は、測定点配置特定処理によって算出された放射妨害波の測定間隔の最大値が、算出した上限値を超えている場合、算出した上限値を放射妨害波の測定間隔として選択することができ、測定点配置特定処理によって算出された放射妨害波の測定間隔の最大値が、算出した上限値以下である場合、放射妨害波の測定間隔として、測定点配置特定処理によって算出された放射妨害波の測定間隔を選択することができる。その結果、コンピュータ7は、放射妨害波の周波数が低い場合において、サンプリング定理に基づいて放射妨害波の測定間隔を不必要に増大させてしまうことを抑制することができる。すなわち、コンピュータ7は、より広い周波数帯に含まれる周波数を有する放射妨害波についての放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、測定対象電界強度分布を精度よく推定することができる。
【0058】
このようにして放射妨害波の測定間隔を選択した後、コンピュータ7は、選択した放射妨害波の測定間隔に基づいて特定される2以上の測定点それぞれの位置に測定点を設定する。なお、測定面は、ターンテーブル4により回転する供試体1とともに回転するように供試体1に対して対応付けられる。このため、測定面上に設定された各測定点の供試体1に対する相対的な位置は、供試体1が回転した場合であっても変化しない。
【0059】
以下では、このようなコンピュータ7の機能構成、ハードウェア構成とともに、コンピュータ7が2以上の測定点それぞれの位置を特定する処理について詳しく説明する。
【0060】
なお、図2は、測定面上に複数の測定点が設定されている様子の一例を示すイメージ図である。図2に示した面17は、仮想的な面の一例を示す。また、図2に示した複数の「○」のそれぞれは、仮想的な面上に設定された複数の測定点のいずれかの一例を互いに重複せずに示している。また、図2に示した範囲18に含まれている複数の測定点は、複数の対象測定点の一例を示す。
【0061】
<放射妨害波測定装置が設置された電波暗室内における供試体とアンテナの位置関係>
以下、図3を参照し、放射妨害波測定装置100が設置された電波暗室内における供試体1とアンテナ2との位置関係について説明する。図3は、放射妨害波測定装置100が設置された電波暗室内における供試体1とアンテナ2との位置関係の一例を示す図である。なお、この位置関係は、ある対象直線上に設定された複数の対象点のそれぞれと供試体1との位置関係でもある。以降の説明では、説明を簡略化するため、供試体1の形状は、図3に示すように、円筒形状である場合について説明する。また、本実施形態では、高さは、電波暗室の金属床面を基準とした当該金属床面と直交する方向、すなわち、重力方向における長さのことを意味する。
【0062】
図3に示した例では、ある対象点MPの位置とアンテナ2の位置とが一致している。また、当該例では、放射妨害波試験においてコンピュータ7がアンテナ2の位置を上下方向に移動させる範囲は、1m~4mの高さの範囲である。以下では、説明の便宜上、放射妨害波試験においてコンピュータ7がアンテナ2の位置を上下方向に移動させる範囲のうちの下限の高さを、測定下限位置と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、この範囲のうちの上限の高さを、測定上限位置と称して説明する。当該例では、測定下限位置は、1mである。また、当該例では、測定上限位置は、4mである。前述の測定範囲は、このような測定下限位置から測定上限位置までの範囲のことである。すなわち、測定範囲は、放射妨害波試験においてアンテナマスト3がアンテナ2の位置を対象直線に沿って移動させる範囲のことである。
【0063】
ここで、前述した通り、2以上の対象測定点の配置は、複数の対象点それぞれの位置に基づいて特定される。より具体的には、複数の対象点のうちの一部又は全部が、2以上の対象測定点として特定される。すなわち、複数の対象点の全部が2以上の対象測定点として特定される場合、複数の対象点の配置は、2以上の対象測定点の配置と一致する。このような事情から、図3に示した対象点MPは、対象測定点の候補の1つである。
【0064】
また、図3に示すように、以下では、説明の便宜上、水平方向(電波暗室の金属床面に平行な方向)における距離のうち、アンテナ2の先端から供試体1までの最短距離を、dminによって示す。また、以下では、説明の便宜上、水平方向における距離のうち、アンテナ2の先端から供試体1までの最長距離を、dmaxによって示す。また、以下では、説明の便宜上、供試体1の下面の高さを、hminによって示す。また、以下では、説明の便宜上、供試体1の上面の高さを、hmaxによって示す。そして、以下では、説明の便宜上、アンテナ2の位置の高さを、hrxによって示す。
【0065】
<コンピュータ7の機能構成>
以下、図4を参照し、コンピュータ7の機能構成について説明する。図4は、コンピュータ7の機能構成の一例を示す図である。なお、図4には、コンピュータ7の構成とともに、アンテナ2、アンテナマスト3、ターンテーブル4、受信器5、コントローラ6のそれぞれについても示している。
【0066】
コンピュータ7は、制御部8と、演算処理部9を備える。なお、コンピュータ7は、他の機能構成を備える構成であってもよい。
【0067】
制御部8は、コンピュータ7の全体を制御する。また、例えば、制御部8は、コンピュータ7と通信可能に接続されているコントローラ6を制御する。また、例えば、コンピュータ7と通信可能に接続されている受信器5を制御する。
【0068】
演算処理部9は、放射妨害波測定装置100が行う放射妨害波試験における各種の算出を行う。例えば、演算処理部9は、受信器5から取得した電気信号に基づいて、測定対象電界強度を算出する。また、例えば、演算処理部9は、複数の対象点それぞれの位置を算出する。
【0069】
<コンピュータ7のハードウェア構成>
以下、図5を参照し、コンピュータ7のハードウェア構成について説明する。図5は、コンピュータ7のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0070】
コンピュータ7は、主制御部10と、入力装置11と、出力装置12と、記憶装置13と、これらを互いに接続するバス14を備える。なお、コンピュータ7は、これらに加えて、他のハードウェアを備える構成であってもよい。
【0071】
主制御部10は、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)を有する。主制御部10は、記憶装置13に記憶された各種のプログラムを実行し、前述の制御部8、演算処理部9等のコンピュータ7が備える各種の機能構成を実現する。
【0072】
入力装置11は、ユーザからの操作を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド等である。なお、入力装置11は、出力装置12と一体にタッチパネルを構成してもよい。
【0073】
出力装置12は、コンピュータ7が出力する各種の情報の表示等を行う装置である。例えば、出力装置12は、コンピュータ7の図示しない表示部(例えば、ディスプレイ)を含む。
【0074】
記憶装置13は、各種の情報、各種の画像、主制御部10が実行する各種のプログラム等を記憶する装置である。記憶装置13は、例えば、ハードディスク装置、光ディスク装置等であってもよく、フラッシュメモリ装置等であってもよい。記憶装置13は、各種の情報が書き込まれる記録媒体15を備える。記憶装置13は、主制御部10からの要求に応じて、各種の情報を記録媒体15に書き込む(記録する)。また、記憶装置13は、主制御部10からの要求に応じて、各種の情報を記録媒体15から読み出し、読み出した情報を主制御部10に出力する。例えば、記録媒体15は、制御部8、演算処理部9のそれぞれを実現するプログラムが記録されている。
【0075】
<複数の対象点それぞれの位置の算出原理>
以下、複数の対象点それぞれの位置の算出原理について説明する。なお、複数の対象点それぞれの位置の算出原理は、サンプリング定理に基づいた原理である。
【0076】
まず、供試体1から放射される放射妨害波は、供試体1を構成する物質のある1点のみから放射されるわけではない。そこで、以下では、供試体1が、放射妨害波として電磁波を放射するP個の点状の電磁波源の集まりであると仮定する。また、以下では、P個の電磁波源からは、互いに同じ周波数、同じ波長の電磁波が放射妨害波として放射されると仮定する。Pは、2以上の整数であれば、如何なる整数であってもよい。そして、P個の電磁波源のうちのp番目の電磁波源から、ある仮想的な点(例えば、対象点、対象測定点等)の位置までの距離を、rによって示す。pは、1~Pのうちのいずれかの整数である。また、以下では、説明の便宜上、当該仮想的な点を、観測点と称して説明する。
【0077】
p番目の電磁波源から放射される放射妨害波が電磁波源から距離r離れた位置において生じさせる電界強度は、以下の式(1)のように平面波によって表すことができる。
【0078】
【数1】
【0079】
ここで、式(1)に示したa、bのそれぞれは、p番目の電磁波源から放射される放射妨害波が当該電磁波源から距離r離れた位置において生じさせる電界強度を表す平面波の振幅を示す係数であり、実数である。また、式(1)に示したiは、虚数単位である。また、式(1)に示したkは、P個の電磁波源のそれぞれから放射される放射妨害波の波数を示す。当該放射妨害波の波数は、当該放射妨害波の1波長分を1つの波として数えた場合において、この1つの波が単位長さの中に含まれる数のことである。また、当該放射妨害波の波数は、当該放射妨害波の波長によって2πを除算して得られる値のことである。当該電界強度を式(1)のように表せるため、P個の電磁波源のそれぞれから放射された放射妨害波が観測点において生じさせる電界強度は、以下の式(2)のように、上記の式(1)に示した平面波の重ね合わせによって表される。
【0080】
【数2】
【0081】
従って、P個の電磁波源のそれぞれから放射された放射妨害波が観測点において生じさせる電界強度の二乗は、以下の式(3)のように算出される。
【0082】
【数3】
【0083】
ここで、式(3)に示したrは、P個の電磁波源のうちのq番目の電磁波源から、観測点の位置までの距離を示す。qは、1~Pのうちのいずれかの整数であり、pと同じ整数であってもよく、pと異なる整数であってもよい。式(3)の最下段の右辺を見ると分かる通り、P個の電磁波源のそれぞれから放射された放射妨害波が観測点において生じさせる電界強度の二乗は、(r-r)に対して振動する正弦波の和になっている。このことから、P個の電磁波源から放射される放射妨害波の電界強度の分布は、サンプリング定理に基づいて、以下の式(4)が示す条件を満たすことにより、完全に再現することができることが分かる。
【0084】
【数4】
【0085】
ここで、式(4)に示したλは、各電磁波源から放射妨害波として放射される電磁波の波長である。また、式(4)に示したΔ(r-r)は、(r-r)の微小変化量を示す。このように式(4)として得られた条件は、以下において説明する方法により、複数の対象点のうち隣接する2つの対象点間の間隔について満たされるべき条件に表し直すことができる。
【0086】
p番目の電磁波源の高さをhによって示し、水平方向における当該電磁波源から観測点までの距離をdによって示すと、距離rは、観測点の位置hrxを用いて、三平方の定理により以下の式(5)のように表すことができる。
【0087】
【数5】
【0088】
また、q番目の電磁波源の高さをhによって示し、水平方向における当該電磁波源から観測点までの距離をdによって示すと、距離rは、観測点の位置hrxを用いて、三平方の定理により以下の式(6)のように表すことができる。
【0089】
【数6】
【0090】
なお、P個の電磁波源のそれぞれから放射される放射妨害波の周波数の範囲が30MHz~1000MHzである場合、放射妨害波試験では、電波暗室の金属床面上において放射妨害波の測定を行うように規定されている。このため、当該場合、高さh及び高さhは、鏡像原理を考慮すると、正の値又は負の値を取る。また、以下では、一例として、高さhが、高さhよりも低い高さであると仮定する。
【0091】
ここで、上記の式(4)に示したΔ(r-r)は、式(5)及び式(6)に基づいて、以下の式(7)及び式(8)のように算出することができる。
【0092】
【数7】
【0093】
ここで、式(7)では、式(7)に示した偏微分係数を算出することによって得られる表式がKとして定義されている。以下では、説明の便宜上、Kを補正係数と称して説明する。補正係数Kの具体的な表式は、以下の式(8)に示した。
【0094】
【数8】
【0095】
この式(8)と、上記の式(4)とに基づいて、式(4)として得られた条件は、複数の対象点のうち隣接する2つの対象点間の間隔Δhrxについて満たされるべき条件として、以下の式(9)のように表し直すことができる。
【0096】
【数9】
【0097】
ここで、上記の式(8)に示した補正係数Kは、幾何学的な要請から、以下の式(10)~式(13)のそれぞれによって示す条件を満たさなければならない。
【0098】
【数10】
【0099】
【数11】
【0100】
【数12】
【0101】
【数13】
【0102】
上記の式(10)~式(13)の条件と、供試体1の寸法(この一例では、図3に示した円柱形状の供試体1の寸法)とに基づいて、グランドプレーン上に電波吸収体を設置している場合には、補正係数Kの絶対値が最大のKhmaxとなる条件として、以下の式(14)が得られる。また、上記の式(10)~式(13)の条件と、供試体1の寸法(この一例では、図3に示した円柱形状の供試体1の寸法)とに基づいて、グランドプレーン上に電波吸収体を設置していない場合には、式(14)のhminを-hmaxに置き換えた式となる。
【0103】
【数14】
【0104】
このようにして、ある対象点を第1対象点とし、第1対象点に隣接する他の対象点を第2対象点とし、第1対象点から第2対象点までの距離、すなわち、第1対象点と第2対象点との間隔は、上記の式(9)に示したKへ式(14)に示したKhmaxを代入することによって得られる値の最大値として算出することができる。その結果、コンピュータ7は、第1対象点の位置に、算出された当該間隔を加算することにより、第2対象点の位置を算出することができる。
【0105】
ここで、コンピュータ7は、上記の式(9)を更に拡張した式として、以下の式(15)を用いて、第1対象点と第2対象点との間隔を算出する。
【0106】
【数15】
【0107】
式(15)に示すSは、前述の測定間隔調整パラメータである。式(15)に示したように、Sは、放射妨害波の波長λに乗算されるパラメータである。このため、測定間隔調整パラメータSは、放射妨害波の波長λを仮想的に調整するパラメータであると換言することもできる。ここで、式(15)の右辺は、測定間隔調整パラメータSが最大の値を取る場合において、上記の式(9)の右辺と一致するべきである。これは、上記の式(9)が、サンプリング定理を満たす条件であるためである。このため、式(15)に示した測定間隔調整パラメータSの初期値は、0.50である。なお、当然ながら、式(15)においてλを(λ/2)に置き換えた場合、測定間隔調整パラメータの初期値は、1.00となる。コンピュータ7は、測定間隔調整パラメータSの値を、第3処理を実行する毎に小さくする。これにより、コンピュータ7は、式(15)によって算出されるΔhrxを、第3処理を実行する毎に小さくすることができる。すなわち、コンピュータ7は、測定間隔調整パラメータSを小さくすることにより、第1対象点と第2対象点との間隔を短くすることができる。すなわち、測定間隔調整パラメータSは、上記の式(9)の条件を満たす範囲内において、第1対象点と第2対象点との間隔を小さくすることができるように手で加えた任意のパラメータである。
【0108】
ここで、観測点の位置(すなわち、アンテナ2の位置)hrxは、複数の対象点それぞれの位置として捉えることができる。そこで、複数の対象点のうちのn番目の対象点の位置を、hrx,nによって示す。これにより、hrx,nと、上記の式(14)、式(15)を用いて、複数の対象点それぞれの位置は、以下の式(16)に示す逐次式によって算出することができる。なお、nは、1以上の整数である。
【0109】
【数16】
【0110】
式(16)に示したhrx_minは、複数の対象点のうち上下方向において最も下に位置する対象点の位置を示す。hrx_minは、手で与えられてもよく、測定下限位置と一致していてもよく、他の方法で決められてもよい。
【0111】
ここで、放射妨害波測定装置100と異なる放射妨害波測定装置(例えば、従来の放射妨害波測定装置)は、式(9)、式(14)、式(16)を用いて、複数の対象点それぞれの位置を算出し、算出した複数の対象点の位置に基づいて、2以上の対象測定点それぞれの位置を特定する。そして、当該放射妨害波測定装置は、特定した2以上の対象測定点に基づいて、測定対象電界強度分布を推定する。しかしながら、当該放射妨害波測定装置は、複数の対象点それぞれの位置を算出する際に行われるフィルタリング処理、当該複数の測定点の端における補外処理によって、測定対象電界強度分布を完全に再現することができないことがある。
【0112】
放射妨害波測定装置100は、上記の式(14)~式(16)を用いて、このような問題を解決することができる。すなわち、放射妨害波測定装置100は、上記の式(14)~式(16)を用いることにより、測定対象電界強度分布を、予め受け付けた許容値が示す推定精度、すなわち、ユーザが所望する精度で再現することができる。換言すると、放射妨害波測定装置100は、ユーザが所望するよりも高い精度、すなわち、過剰な精度で測定対象電界強度分布を再現してしまうことなく、ユーザが所望する精度で測定対象電界強度分布を再現することができる。その結果、放射妨害波測定装置100は、放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、測定対象電界強度分布を精度よく推定することができる。以下では、放射妨害波測定装置100が行う測定点配置特定処理について説明する。測定点配置特定処理は、具体的には、対象直線として選択される複数の直線のそれぞれ毎に、放射妨害波測定装置100が上記の式(14)~式(16)を用いて複数の対象点それぞれの位置を算出し、算出した位置に基づいて2以上の対象測定点のそれぞれが示す測定位置を、2以上の対象測定点の配置として特定する処理のことである。すなわち、測定点配置特定処理は、放射妨害波測定装置100が2以上の測定点の配置を特定する処理のことである。
【0113】
<放射妨害波測定装置が行う測定点配置特定処理>
以下、図6を参照し、放射妨害波測定装置100が行う測定点配置特定処理について説明する。図6は、放射妨害波測定装置100が行う測定点配置特定処理の流れの一例を示す図である。なお、以下では、一例として、図6に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、測定点配置特定処理をコンピュータ7に開始させる操作をコンピュータ7が受け付けている場合について説明する。すなわち、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、測定面をコンピュータ7が設定している場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、ユーザが所望する許容値を示す許容値情報をコンピュータ7が受け付け、且つ、コンピュータ7が受け付けた許容値情報が記憶装置13の記録媒体15に記憶されている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、測定条件情報をコンピュータ7が受け付け、且つ、コンピュータ7が受け付けた測定条件情報が記憶装置13の記録媒体15に記憶されている場合について説明する。測定条件情報には、上記のdmin、dmax、hmin、hmaxを示す情報を含む供試体情報と、測定上限位置、測定下限位置、hrx_minを示す測定空間情報と、上記のλを示す波長情報を含む放射妨害波情報とが少なくとも含まれている。ここで、hrx_minは、複数の対象点のうち最も下に位置する対象点の位置としてユーザが所望する位置のことである。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、前述の第2推定最大電界強度位置をコンピュータ7が受け付け、且つ、コンピュータ7が受け付けた第2推定最大電界強度位置を示す第2推定最大電界強度位置情報が記憶装置13の記録媒体15に記憶されている場合について説明する。
【0114】
測定点配置特定処理をコンピュータ7に開始させる操作をコンピュータ7が受け付けた後、演算処理部9は、記憶装置13の記録媒体15に予め記憶された許容値情報を、記憶装置13から読み出す(ステップS110)。
【0115】
次に、演算処理部9は、記憶装置13の記録媒体15に予め記憶された測定条件情報を、記憶装置13から読み出す(ステップS120)。
【0116】
次に、演算処理部9は、測定間隔調整パラメータSの初期化を行う(ステップS130)。具体的には、演算処理部9は、ステップS130において、測定間隔調整パラメータSの値を格納する変数を生成し、生成した当該変数の値を初期値に初期化する。前述した通り、測定間隔調整パラメータSの初期値は、0.50である。すなわち、ステップS130において、演算処理部9は、当該変数に0.50を格納する。なお、以下では、説明の便宜上、当該変数を、格納変数と称して説明する。なお、図6に示したフローチャートの処理において、ステップS110の処理、ステップS120の処理、ステップS130の処理は、異なる順で行われてもよく、並列に行われてもよい。
【0117】
次に、演算処理部9は、ステップS120において読み出した測定条件情報と、格納変数に格納された値とに基づいて、位置特定処理を行う(ステップS140)。位置特定処理は、ステップS120において読み出した測定条件情報と、格納変数に格納された値と、上記の式(14)~式(16)とを用いて、測定面上に設定した複数の仮想的な直線毎に複数の対象点それぞれの位置を算出し、当該直線毎に算出した位置に基づいて、当該直線毎の2以上の対象測定点それぞれの位置を特定する処理のことである。位置特定処理の詳細については、後述する。すなわち、位置特定処理は、測定面上に設定する2以上の測定点の配置を特定する処理である。
【0118】
次に、演算処理部9は、ステップS140において特定された2以上の測定点の配置に基づいて、測定対象電界強度分布を推定する。そして、演算処理部9は、推定した測定対象電界強度分布に基づいて、前述の第1推定最大電界強度位置を算出する(ステップS150)。ここで、ステップS140において特定された当該配置に基づいて測定対象電界強度分布を推定する方法は、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。また、推定した測定対象電界強度分布に基づいて第1推定最大電界強度位置を算出する方法は、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。
【0119】
次に、演算処理部9は、ステップS150において算出した第1推定最大電界強度位置に基づいて、所定の判定条件が満たされているか否かを判定する(ステップS160)。ここで、所定の判定条件は、記録媒体15に予め記憶された第2推定最大電界強度位置情報が示す第2推定最大電界強度位置と、当該第1推定最大電界強度位置とのずれ(すなわち、当該第1推定最大電界強度位置と当該第2推定最大電界強度位置とのずれは、当該第1推定最大電界強度位置と当該第2推定最大電界強度位置との差)が、ステップS110において読み出した許容値情報が示す許容値以下であること、である。すなわち、演算処理部9は、ステップS160において、当該ずれを、デシベルによって表される値として算出し、算出した当該値が、当該許容値以下である場合、所定の判定条件が満たされていると判定する。一方、演算処理部9は、算出した当該値が、当該許容値を超えている場合、所定の判定条件が満たされていないと判定する。
【0120】
演算処理部9は、所定の判定条件が満たされていないと判定した場合(ステップS160-NO)、格納変数に格納された測定間隔調整パラメータの値から所定値差し引いた値を、新たな測定間隔調整パラメータの値として格納変数に格納する。すなわち、演算処理部9は、当該場合、測定間隔調整パラメータを小さくする(ステップS170)。そして、ステップS170の処理が行われた後、演算処理部9は、ステップS140に遷移し、ステップS120において読み出した測定条件情報と、格納変数に格納された値とに基づいて、位置特定処理を再び行う。ここで、所定値は、例えば、0.05である。なお、所定値は、0.05より小さい値であってもよく、0.05より大きい値であってもよい。
【0121】
一方、演算処理部9は、所定の判定条件が満たされていると判定した場合(ステップS160-YES)、最後に実行されたステップS140の処理によって特定された2以上の測定点の配置を示す配置情報を生成し、生成した配置情報を記憶装置13の記録媒体15に記憶させる(ステップS180)。ステップS180の処理が行われた後、演算処理部9は、図6に示したフローチャートの処理を終了する。
【0122】
以上のような測定点配置特定処理により、コンピュータ7は、受け付けた許容値情報が示す許容値と、受け付けた測定条件情報とに基づいて、放射妨害波を測定する位置を示す2以上の測定点の配置を特定する。より具体的には、コンピュータ7は、2以上の測定点の配置における測定点間の距離を調整する測定間隔調整パラメータSの値と、受け付けた測定条件情報とに基づいて、放射妨害波を測定する位置を示す2以上の測定点の配置を特定する第1処理(すなわち、ステップS140の処理)と、第1処理により2以上の測定点の配置が特定された場合、第1処理により特定された2以上の測定点の配置に基づいて、放射妨害波の強度が最大になると推定される第1推定最大電界強度位置を算出する第2処理(すなわち、ステップS150の処理)と、第2処理により算出された第1推定最大電界強度位置と第2推定最大電界強度位置とのずれが当該許容値を超える場合、測定間隔調整パラメータSの値を小さくして、第1処理を実行する第3処理(すなわち、ステップS160、ステップS170、ステップS140の順に実行される処理)とを実行することにより、2以上の測定点の配置を特定する。
【0123】
<放射妨害波測定装置が行う位置特定処理>
以下、図7を参照し、図6に示したステップS140の位置特定処理について説明する。図7は、図6に示したステップS140の位置特定処理の流れの一例を示す図である。コンピュータ7は、測定面上に設定した複数の仮想的な直線毎に、ステップS210~ステップS270の処理を行うことにより、2以上の測定点の配置を特定する。
【0124】
演算処理部9は、複数の対象点それぞれの順番を示す変数として、nを生成する。そして、演算処理部9は、生成したnの値を初期値に初期化する。以下では、一例として、初期値が1である場合について説明する。なお、初期値は、1に代えて、2以上の整数であってもよく、0以下の整数であってもよい。演算処理部9は、nの値を初期化した後、1以上の整数(すなわち、初期値以上の整数)を1から順に(すなわち、初期値から順に)nの値として選択し、選択したnの値毎に、ステップS220~ステップS260の処理を繰り返し行う(ステップS210)。
【0125】
ステップS210においてnの値が選択された後、演算処理部9は、現在選択されているnの値に応じた対象点を、複数の対象点のうちの1つとして生成する。ここで、以下では、説明の便宜上、nの値に応じた対象点を、第1対象点と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、(n+1)の値に応じた対象点を、第2対象点と称して説明する。ただし、この段階において、演算処理部9は、第2対象点をまだ生成しない。演算処理部9は、第1対象点を生成した後、図6に示したステップS120において読み出した測定条件情報に含まれる情報が示すdmin、dmax、hmin、hmaxのそれぞれと、第1対象点の位置と、上記の式(14)と、サンプリング定理とに基づいて、Khmaxを第1対象点に応じた補正係数として算出する(ステップS220)。ここで、以下では、説明の便宜上、n=1の場合における第1対象点の位置をhrx,0によって示す。また、以下では、説明の便宜上、n≧2の場合における第1対象点の位置を、hrx,n-1によって示す。なお、1回目のステップS220の処理を行う場合、演算処理部9は、図6に示したステップS120において読み出した測定条件情報に基づいて、hrx,0を、複数の対象点のうち上下方向において最も下に位置する対象点の位置hrx_minに初期化する。また、m回目のステップS220の処理を行う場合、演算処理部9は、(m-1)回目のステップS240の処理において算出された第2対象点の位置を、m回目のステップS220の処理における第1対象点の位置として特定する。mは、2以上の整数である。
【0126】
例えば、演算処理部9は、n=1の場合、ステップS220の処理において、第1対象点に応じた補正係数として、Khmax(hrx_min)を算出する。この場合、演算処理部9は、ステップS220の処理において、測定条件情報に含まれる情報が示すhmin、hmax、dmin、dmaxのそれぞれと、hrx_minをhrxに代入した後の式(14)とに基づいて、Khmax(hrx_min)を第1対象点に応じた補正係数として算出する。また、例えば、演算処理部9は、n≧2の場合、ステップS220の処理において、第1対象点に応じた補正係数として、Khmax(hrx,n-1)を算出する。この場合、演算処理部9は、ステップS220の処理において、測定条件情報に含まれる情報が示すhmin、hmax、dmin、dmaxのそれぞれと、hrx,n-1をhrxに代入した後の式(14)とに基づいて、Khmax(hrx,n)を第1対象点に応じた補正係数として算出する。
【0127】
ステップS220の処理が行われた後、演算処理部9は、図6に示したステップS120において読み出した測定条件情報と、ステップS220において補正係数として算出したKhmaxと、上記の式(15)と、現在の格納変数に格納されている値(すなわち、現在の測定間隔調整パラメータSの値)に基づいて、第1対象点から第2対象点までの間隔を、第1対象点に応じた第1間隔として算出する(ステップS230)。例えば、演算処理部9は、n=1の場合、ステップS230の処理において、第1対象点に応じた第1間隔としてΔhrx(hrx_min)を算出する。この場合、演算処理部9は、ステップS230の処理において、格納変数に格納されている値と、第1対象点に応じた補正係数として算出されたKhmax(hrx_min)とに基づいて、第1対象点に応じた第1間隔としてΔhrx(hrx_min)を算出する。また、例えば、演算処理部9は、n≧2の場合、ステップS230の処理において、第1対象点に応じた第1間隔としてΔhrx(hrx,n-1)を算出する。この場合、演算処理部9は、ステップS230の処理において、格納変数に格納されている値と、第1対象点に応じた補正係数として算出されたKhmax(hrx,n-1)とに基づいて、第1対象点に応じた第1間隔としてΔhrx(hrx,n-1)を算出する。
【0128】
次に、演算処理部9は、ステップS230において算出された第1間隔に基づいて、第2対象点の位置を算出する(ステップS240)。例えば、演算処理部9は、n=1の場合、ステップS240において、上記の式(16)に基づいて、第1対象点に応じた第1間隔として算出されたΔhrx(hrx_min)をhrx_minに加算して得られるhrx,1を、第2対象点の位置として算出する。また、例えば、演算処理部9は、N≧2の場合、ステップS240において、上記の式(16)に基づいて、第1対象点に応じた第1間隔として算出されたΔhrx(hrx,n-1)をhrx,n-1に加算して得られるhrx,nを、第2対象点の位置として算出する。
【0129】
次に、演算処理部9は、所定の終了条件が満たされているか否かを判定する(ステップS250)。所定の終了条件は、この一例において、ステップS240において算出された第2対象点の位置が測定範囲外であること、である。この場合、演算処理部9は、ステップS250において、図6に示したステップS120において読み出した測定条件情報に基づいて、ステップS240において算出された第2対象点の位置が測定範囲外であるか否かを判定する。なお、所定の終了条件は、他の条件であってもよい。
【0130】
演算処理部9は、所定の終了条件が満たされていないと判定した場合(ステップS250-NO)、ステップS210に遷移し、次のnの値を選択する。
【0131】
一方、演算処理部9は、所定の終了条件が満たされていると判定した場合(ステップS250-YES)、すなわち、ステップS240において算出された第2対象点の位置が測定範囲外であると判定した場合、当該位置を消去する(ステップS260)。そして、演算処理部9は、ステップS210~ステップS260の繰り返し処理を終了し、ステップS270に遷移する。
【0132】
このようなステップS210~ステップS260の繰り返し処理により、演算処理部9は、ステップS220~ステップS260の処理が繰り返された数と同じ数の対象点それぞれの位置を算出する。これにより、コンピュータ7は、対象点の数を不必要に増大させてしまうことを抑制することができ、その結果、対象測定点の数の増大を抑制することができる。すなわち、コンピュータ7は、放射妨害波試験に要する時間の増大を抑制することができる。
【0133】
ステップS260の処理が行われた後、演算処理部9は、現在までに算出された複数の対象点それぞれの位置に基づいて、2以上の対象測定点それぞれの位置を特定する(ステップS270)。すなわち、演算処理部9は、ステップS270の処理により、2以上の対象測定点の配置を特定する。ここで、ステップS270の処理について説明する。
【0134】
例えば、演算処理部9は、現在までに算出された複数の対象点それぞれの位置の全部を、2以上の対象測定点それぞれの位置として特定する。なお、演算処理部9は、現在までに算出された複数の対象点それぞれの位置の一部を、2以上の対象測定点それぞれの位置として特定するとともに、現在までに算出された複数の対象点それぞれの位置の対象測定点として特定されていない対象点それぞれの位置を補間点の位置として特定する構成であってもよい。ここで、補間点は、放射妨害波の電界強度の分布を推定する際、ローパスフィルタの適用等によって電界強度が推定される位置を示す仮想的な点である。また、補間点は、複数の対象測定点のうち互いに隣接する2つの対象測定点間に位置する仮想的な点のことである。なお、演算処理部9が2以上の対象測定点間に補完点を設定する場合において、2以上の対象測定点間に位置させる補間点の位置を演算処理部9が特定する方法は、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。
【0135】
なお、ステップS270において、演算処理部9は、2以上の対象測定点それぞれの位置を、2以上の対象測定点の配置として特定した後、特定した2以上の対象測定点間に補完点を設定する構成であってもよく、特定した2以上の対象測定点間に補完点を設定しない構成であってもよい。
【0136】
ステップS270の処理が行われた後、演算処理部9は、図7に示したフローチャートの処理、すなわち、ステップS140の位置特定処理を終了する。
【0137】
このように、コンピュータ7は、複数の対象点それぞれの位置を算出し、算出した複数の対象点それぞれ位置に基づいて2以上の対象測定点それぞれの位置を特定する。
【0138】
<放射妨害波の測定間隔の上限値の算出方法>
以下、放射妨害波の測定間隔の上限値の算出方法について説明する。ここで、以下では、説明を簡略化するため、測定面の周方向における放射妨害波の測定間隔の上限値の算出方法について説明する。なお、測定面の周方向における放射妨害波の測定間隔の上限値の算出方法は、測定面の周方向の位置を示す方位角に代えて、ターンテーブル4の上面の位置のうちターンテーブル4の回転軸が通る位置からの天頂角により測定面の上下方向の位置を示すことにより、測定面の上下方向における放射妨害波の測定間隔の上限値の算出方法として適用することができる。
【0139】
まず、測定面の周方向における放射妨害波の測定間隔の上限値の算出方法を説明するため、微小電流波源Ilにより生じる電界強度及び磁界強度それぞれの示す式と、微小磁流波源ISにより生じる電界強度及び磁界強度のそれぞれを示す式とについて説明する。ただし、Iは、電流を示す。また、lは、微小電流波源の長さを示す。また、Sは、微小磁流波源の面積を示す。なお、以下では、説明の便宜上、測定面の周方向における放射妨害波の測定間隔を、単に放射妨害波の測定間隔と称して説明する。
【0140】
微小電流波源Ilにより生じる電界強度及び磁界強度のそれぞれを示す式は、電磁気学に基づいて、以下の式(17)のように導出することができる。また、微小磁流波源ISにより生じる電界強度及び磁界強度のそれぞれを示す式は、電磁気学に基づいて、以下の式(18)のように導出することができる。なお、式(17)は、三次元極座標系において、原点を通り、且つ、Z軸方向と平行に流れる微小電流波源Ilにより生じる電界強度及び磁界強度のそれぞれを示している。また、式(18)は、三次元極座標系において、原点を通り、且つ、Z軸方向と平行に流れる微小磁流波源ISにより生じる電界強度及び磁界強度のそれぞれを示している。
【0141】
【数17】
【0142】
【数18】
【0143】
ここで、上記の式(17)において、Eは、微小電流波源Ilから距離r離れた観測点において微小電流波源Ilが生じさせる電界強度を示す。また、式(17)において、Hは、微小電流波源Ilから距離r離れた観測点において微小電流波源Ilが生じさせる磁界強度を示す。また、式(18)において、Eは、微小磁流波源ISから距離r離れた観測点において微小磁流波源ISが生じさせる電界強度を示す。また、上記の式(18)において、Hは、微小磁流波源ISから距離r離れた観測点において微小磁流波源ISが生じさせる磁界強度を示す。このため、式(17)及び式(18)において、rは、三次元極座標系における原点から観測点までの距離を示す。また、式(17)及び式(18)において、φは、三次元極座標系における方位角を示す。また、式(17)及び式(18)において、θは、三次元極座標系における天頂角を示す。また、式(17)及び式(18)において、jは、虚数単位を示す。また、式(17)及び式(18)において、kは、微小電流波源Ilの波数を示す。このため、kは、微小電流波源Ilが生じさせる放射妨害波の波数を示す。また、式(17)において、εは、誘電率を示す。また、式(18)において、μは、透磁率を示す。
【0144】
なお、上記の式(17)及び式(18)の導出については、例えば、電子情報通信学会「知識の森」(http://www.ieice-hbkb.org/)の4群(モバイル・無線)-2編(アンテナ・伝搬)の2章(アンテナの基礎)等に詳しい記載があるため、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0145】
ここで、簡単のため、微小電流波源Il及び微小磁流波源ISのそれぞれと観測点との高さが同じである場合について考える。この場合、微小電流波源Il及び微小磁流波源ISのそれぞれと観測点との間の距離rと放射妨害波の波長との差は、rが長いほど大きくなる。そして、式(17)及び式(18)では、距離rが長いほど1/rの項が、1/rの項、1/rの項のそれぞれに対して大きくなる。これは、距離rが長いほど、距離rの変化に応じた変化が電界強度及び磁界強度に起こり難いことを示している。換言すると、距離rの変化に対する電界強度及び磁界強度の感度は、距離rが長いほど低くなる。一方、距離rと放射妨害波の波長との差は、距離rが短いほど小さくなる。そして、式(17)及び式(18)では、距離rが短いほど1/rの項が1/rの項に対して大きくなる。また、式(17)及び式(18)では、距離rが短いほど1/rの項が1/rの項に対して大きくなる。これは、距離rが短いほど、微小電流波源Ilとの間の距離rの変化に応じた電界強度及び磁界強度の変化が起こり易いことを示している。換言すると、距離rの変化に対する電界強度及び磁界強度の感度は、距離rが短いほど高くなる。
【0146】
このように、式(17)及び式(18)では、距離rの変化に対する電界強度及び磁界強度の感度が、距離rの長さによって変化する。しかしながら、上記の式(3)には、このような距離rの変化に対する電界強度及び磁界強度の感度の変化を反映させるパラメータが含まれていない。これは、式(3)に含まれているフーリエ係数(a+b)、(a-a)のそれぞれが、単なる定数として扱われていることに起因すると考えられる。何故なら、式(17)及び式(18)における正弦関数及び余弦関数それぞれの係数は、式(3)の最下段における正弦関数及び余弦関数それぞれの係数(すなわち、フーリエ係数である(a+b)、(a-a)のそれぞれ)に相当するからである。すなわち、式(3)の最下段における正弦関数及び余弦関数それぞれの係数を定数として扱うことは、距離rが短いほど、正当化されなくなると考えられる。なお、放射妨害波の波長は、放射妨害波の周波数が高くなるほど短くなり、放射妨害波の周波数が低いほど長くなる。すなわち、放射妨害波の周波数が高くなることは、放射妨害波の波長に対して相対的に距離rが長くなることを意味する。また、放射妨害波の周波数が低くなることは、放射妨害波の波長に対して相対的に距離rが短くなることを意味する。従って、式(3)の最下段における正弦関数及び余弦関数それぞれの係数を定数として扱うことは、放射妨害波の波長に対して相対的に距離rが短くなるほど、すなわち、放射妨害波の周波数が低くなるほど、正当化されなくなると考えられる。そこで、当該係数が電磁波源(すなわち、微小電流波源Il、微小磁流波源ISのそれぞれ)から観測点までの方位角φに対する周期関数であると仮定する。これにより、当該係数は、フーリエ級数として取り扱うことができる。以下の式(19)は、そのような取り扱いの結果として式(3)を変形することにより得られる式である。
【0147】
【数19】
【0148】
上記の式(19)におけるAnl、Aml、Bnl、Bmlのそれぞれは、フーリエ係数である。また、式(19)におけるknφ、kmφのそれぞれは、三次元極座標系における方位角φに対する空間波数であり、kφ=2πfφである。なお、fφは、当該方位角φに対する空間周波数である。式(19)を見ると、上記の式(3)の最下段における正弦関数及び余弦関数それぞれの係数をフーリエ級数として取り扱った場合であっても、電界強度の二乗を正弦波の足し合わせとして表すことが可能であることが分かる。そして、式(19)と式(3)を比較すると、式(3)において現れていなかったφnl、φmlに比例する項が、式(19)の正弦関数の位相内、及び式(19)の余弦関数の位相内に現れていることが分かる。
【0149】
式(19)は、φnlに対してkrn/krφが十分に大きい場合、式(3)に帰着する。これは、krn/krφが、放射妨害波の波長と放射妨害波の測定間隔との比に相当し、φnlに対してkrn/krφが大きくなることが、放射妨害波の周波数が高くなること、すなわち、放射妨害波の波長に対して相対的に距離rが長くなることを意味するからである。そして、これは、式(19)に示した電界強度の二乗について、k、kに基づく空間周波数についての帯域制限が掛かることを意味している。そして、図6に示したフローチャートの処理によって生成された配置情報が示す配置は、前述のサンプリング定理に基づいて、このような帯域制限が反映された配置として生成される。その結果、放射妨害波測定装置100は、この場合、図6に示したフローチャートの処理によって生成された配置情報が示す配置を用いて放射妨害波試験を行うことにより、放射妨害波試験における最大電界強度位置の推定精度が低下してしまうことを抑制しつつ、放射妨害波試験に要する時間の増大を抑制することができる。すなわち、この場合、当該処理によって生成された配置情報が示す配置における放射妨害波の測定間隔は、最大電界強度位置の推定精度として高い精度を担保することができる測定間隔であると言える。
【0150】
一方、式(19)は、φnlに対してkrn/krφが十分に小さい場合、φnl、φmlに比例する項を近似的に無視することができなくなり、式(3)に帰着しなくなる。これは、krn/krφが、放射妨害波の波長と放射妨害波の測定間隔との比に相当し、φnlに対してkrn/krφが小さくなることが、放射妨害波の周波数が低くなること、すなわち、放射妨害波の波長に対して相対的に距離rが短くなることを意味するからである。その結果、式(19)に示した電界強度の二乗には、knφ、kmφに基づく空間周波数についての帯域制限が掛かる。すなわち、放射妨害波測定装置100は、このような帯域制限下においてknφ、kmφが取り得る最大の値を得ることができれば、このような帯域制限が反映された配置として、2以上の測定点の配置を生成することができる。何故なら、当該最大の値の逆数は、測定面上における方位角方向についての放射妨害波の測定間隔として取り得る最大の間隔、すなわち、放射妨害波の測定間隔の上限値に相当するからである。換言すると、当該最大の値の逆数は、測定面上における方位角方向(すなわち、測定面上における周方向)についての放射妨害波の測定間隔として取り得る最大の間隔、すなわち、放射妨害波の測定間隔の上限値に変換可能だからである。なお、このような変換において、当該最大の値を求めることは、当該帯域制限下において方位角φに対する空間周波数が取り得る最大の値を求めることと等価である。以下では、説明の便宜上、方位角φに対する空間周波数を、単に空間周波数と称し、当該帯域制限下において空間周波数が取り得る最大の値を、最大空間周波数と称して説明する。
【0151】
最大空間周波数も、サンプリング定理を用いて算出することができる。しかしながら、このような算出は、極めて複雑であり、熟練者でなければ取り扱いが難しいことがある。そこで、本明細書では、サンプリング定理を用いた算出についての説明を省略し、一例として、より簡便に最大空間周波数を算出する方法について説明する。この方法は、サンプリング定理の代わりにモンテカルロ法を用いた統計解析により最大空間周波数を推定する方法である。すなわち、この方法は、サンプリング定理の代わりにモンテカルロ法を用いた統計解析により、放射妨害波の測定間隔の上限値を推定する方法である。以下では、説明の便宜上、この方法を、対象推定方法と称して説明する。
【0152】
なお、対象推定方法は、φnlに対するkrn/krφの大小と無関係に、最大空間周波数を推定することができる。このため、対象推定方法によって推定された最大空間周波数が妥当であるか否かは、φnlに対してkrn/krφが十分に小さい場合において対象推定方法により推定された最大空間周波数に応じた放射妨害波の測定間隔と、図6に示したフローチャートの処理によって算出された当該場合における放射妨害波の測定間隔の最大値とを比較することによって判断することができる。
【0153】
対象推定方法では、まず、2つの電磁波源が作る測定対象電界強度分布が推定される。これは、上記の式(19)が2つの電磁波源に基づいて算出されているためである。ここで、対象推定方法における測定対象電界強度分布の推定では、2つの電磁波源の位置は、前述の電磁波源領域内において、ランダムに与えられる。そして、対象推定方法では、2つの電磁波源の位置をランダムに与えることを予め決められた回数繰り返し、2つの電磁波源の位置をランダムに与えること毎に、与えられた2つの電磁波源の位置に基づいて測定対象電界強度分布を推定する。また、対象推定方法では、このような予め決められた回数の測定対象電界強度分布の推定を、2つの電磁波源から生じる放射妨害波の周波数を変化させながら、放射妨害波の周波数を変化させる毎に繰り返し行う。対象推定方法では、このようにして放射妨害波の周波数毎に推定された予め決められた回数分の測定対象電界強度分布に基づく統計解析によって、最大空間周波数を推定する。すなわち、対象推定方法では、このようにして放射妨害波の周波数毎に推定された予め決められた回数分の測定対象電界強度分布に基づく統計解析によって、放射妨害波の測定間隔の上限値を推定する。
【0154】
より具体的には、対象推定方法は、以下において説明するように、最大空間周波数を推定する。まず、対象推定方法では、2つの電磁波源が作る測定対象電界強度分布の推定は、上記の式(17)と式(18)との少なくとも一方を用いて行うことができる。しかしながら、式(17)において距離rの最大次数は、3である。また、式(17)において、1/rの項は、電界強度の式にのみ含まれている。また、式(18)においても、距離rの最大次数は、3である。また、式(18)において、1/rの項は、磁界強度の式にのみ含まれている。このため、2つの電磁波源が作る測定対象電界強度分布の推定は、式(17)を用いた電界強度の推定と、式(18)を用いた磁界強度の推定とのいずれか一方によって行うことにより、十分に精度よく行うことができる。そこで、以下では、一例として、対象推定方法において、2つの電磁波源が作る測定対象電界強度分布の推定が、式(17)を用いた電界強度の推定を行うことによって行われる場合について説明する。なお、通常の電磁波源は、微小電磁波源の足し合わせである。このため、微小電磁波源を通常の電磁波源のモデルとして使用することは、正当化されると考えられる。
【0155】
式(17)には、微小電磁波源を示すパラメータとして、電磁波源の位置、向き、振幅、位相、波数が含まれている。そこで、対象推定方法における2つの電磁波源が作る測定対象電界強度分布の推定では、モンテカルロ法を用いる際、2つの電磁波源の位置とともに、2つの電磁波源の向き、振幅、位相のそれぞれもランダムに与える。なお、前述した通り、対象推定方法では、電磁波源の波数、すなわち、放射妨害波の周波数は、2つの電磁波源の位置、向き、振幅、位相のそれぞれと別に与えられる。すなわち、対象推定方法では、電磁波源の波数を変化させる毎に、2つの電磁波源の位置、向き、振幅、位相のそれぞれをランダムに与えるモンテカルロ法によって、測定対象電界強度分布の推定を予め決められた回数行う。なお、予め決められた回数は、2回以上であれば、如何なる回数であってもよい。しかしながら、予め決められた回数が多いほど、対象推定方法における最大空間周波数の推定精度は、高くなる。
【0156】
なお、以下では、一例として、2つの電磁波源の位置、向き、振幅、位相をランダムに変化させるために用いる乱数が、一様分布の乱数である場合について説明する。また、2つの電磁波源の振幅については、2つの電磁波源の相対値が重要である。このため、当該乱数の上限値の設定は、重要ではない。そこで、以下では、一例として、当該上限値が1である場合について説明する。また、電磁波源の向き、位相のそれぞれは、周期的である。このため、電磁波源の向き、位相のそれぞれは、1回転を上限として設定する。また、この一例における対象推定方法は、方位角φに対する最大空間周波数を推定する。このため、対象推定方法では、測定面は、2つの電磁波源を囲む円周として取り扱ってもよい。これにより、コンピュータ7は、演算に要する負荷を低減することができる。そこで、以下では、一例として、2つの電磁波源を囲む円周として測定面を取り扱う場合について説明する。そして、以下では、説明の便宜上、このような円周を有する円を、測定円と称して説明する。測定円の円周は、例えば、測定面を水平面に沿って切断した断面の円の円周である。
【0157】
図8は、電磁波源領域内に位置する2つの電磁波源と、測定円の円周上に位置させた観測点との位置関係の一例を示す図である。また、図8は、重力方向に向かって見た電磁波源領域の一例を示す図である。図8においてハッチングされた領域R1は、電磁波源領域の一例を示す。また、図8に示した円周R2は、測定円の円周の一例を示す。また、図8に示した位置S1は、2つの電磁波源のうちの一方の位置の一例を示す。また、図8に示した位置S2は、2つの電磁波源のうちの他方の位置の一例を示す。すなわち、式(17)を用いたモンテカルロ法では、1回の電界強度の推定毎に、領域R1内における2つの電磁波源の位置、向き、振幅、位相をランダムに変化させる。また、図8に示したrnlは、位置S1に位置する電磁波源から観測点までの距離を示す。また、図8に示したrmlは、位置S1に位置する電磁波源から観測点までの距離を示す。
【0158】
対象推定方法では、以上のようなパラメータの与え方によるモンテカルロ法により、複数の測定対象電界強度分布が推定される。このようにして推定された測定対象電界強度分布は、空間周波数に対するスペクトルへとフーリエ変換により変換することができる。以下では、説明の便宜上、このようなスペクトルを、空間周波数スペクトルと称して説明する。図9は、放射妨害波の周波数がある周波数と一致している場合において対象推定方法により推定された複数の測定対象電界強度分布のそれぞれに応じた空間周波数スペクトルの一例を示す図である。ただし、図9に示したグラフの縦軸は、DC(Direct Current)成分に対する電界強度の大きさをdBによって示している。また、当該グラフの横軸は、360°(すなわち、2π[rad])によって規格化された空間周波数を示している。そして、当該グラフにプロットされた複数の曲線は、当該場合において対象推定方法により推定された複数の測定対象電界強度分布のそれぞれに応じた空間周波数スペクトルの一例を示す。
【0159】
対象推定方法では、図9に示したようなグラフにより、すべての空間周波数スペクトルにおいて、電界強度の大きさのうち予め決められた閾値と一致する場合における空間周波数が特定される。図9に示した例では、予め決められた閾値は、-40[dB]である。このため、当該例では、このようにして特定される空間周波数は、空間周波数X1~空間周波数X12の12個の空間周波数である。すなわち、図9に示した例では、前述の予め決められた回数は、12回である。なお、予め決められた閾値は、放射妨害波の電界強度の大きさのうち、放射妨害波試験において無視できる程度の大きさの最大値として決められる。このため、予め決められた閾値の決め方には、任意性が存在する。すなわち、予め決められた閾値は、-40[dB]より小さくてもよく、-40[dB]より大きくてもよい。また、予め決められた閾値は、事前の試験等により、最大電界強度位置の推定精度が高くなるように決められてもよい。
【0160】
その後、対象推定方法では、このようにして特定された12個の空間周波数の中心値μと分散σを算出する。中心値μは、これら12個の空間周波数の中央値であってもよく、これら12個の空間周波数の平均値であってもよい。そして、対象推定方法では、算出した中心値μから+3σずれた空間周波数を、最大空間周波数として推定する。これは、信頼区間を99.9%とするためである。
【0161】
対象推定方法では、放射妨害波の波数毎に、このような最大空間周波数の推定を行う。このため、対象推定方法では、図10に示したようなグラフを作成することができる。図10は、放射妨害波の周波数毎の最大空間周波数に応じた放射妨害波の測定間隔と、放射妨害波の周波数との関係の一例を示す図である。図10に示したグラフの縦軸は、対象推定方法によって推定された最大空間周波数の逆数に対して安全率4/5を乗算した値を、対象推定方法によって推定された最大空間周波数に応じて得られる放射妨害波の測定間隔として示す。このため、当該縦軸の値は、最大空間周波数が大きいほど(すなわち、放射妨害波の測定間隔が小さいほど)、0.1に近づき、最大空間周波数が小さいほど(すなわち、放射妨害波の測定間隔が大きいほど)、1000に近づく。また、当該グラフの横軸は、放射妨害波の周波数に応じて決まる放射妨害波の波長によって、ターンテーブル4の回転軸から観測点までの距離である測定距離を除した値を示す。このため、当該横軸の値は、放射妨害波の周波数が低いほど、0.001に近づき、放射妨害波の周波数が高いほど、100に近づく。以下では、説明の便宜上、当該横軸の値を、周波数相当値と称して説明する。なお、上記の安全率は、4/5に代えて、4/5より小さくてもよく、4/5より大きくてもよい。
【0162】
また、図10に示したグラフにプロットされた曲線F1は、周波数相当値の変化に対する、図6に示したフローチャートの処理によって算出された放射妨害波の測定間隔の最大値の変化の一例を示す。なお、曲線F1の上限値(すなわち、放射妨害波の測定間隔の上限値)は、最低でも測定点を1点設定する必要があるため、360°である(図10では、360[deg]によって示されている)。また、当該グラフにプロットされた曲線F2は、周波数相当値の変化に対する、対象推定方法によって推定された最大空間周波数の変化の一例を示す。図10に示したように、曲線F2は、周波数相当値が高い領域(すなわち、放射妨害波の周波数が高い領域)において、曲線F1に漸近する。ここで、周波数相当値が高い領域は、φnlに対してkrn/krφが十分に小さい領域として読み替えることができる。そして、この領域において曲線F2が曲線F1に漸近することは、放射妨害波の周波数が高い場合において、対象推定方法により推定された最大空間周波数に応じた放射妨害波の測定間隔と、図6に示したフローチャートの処理によって算出された当該場合における放射妨害波の測定間隔の最大値とが近づくことを意味する。これにより、対象推定方法による最大空間周波数の推定は、妥当であると考えることができる。しかしながら、曲線F2は、周波数相当値が低い領域(すなわち、放射妨害波の周波数が低い領域)において、曲線F1から大きく離間している。これはつまり、周波数相当値が低い領域では、図6に示したフローチャートの処理よりも、対象推定方法によって推定された最大空間周波数に基づいて放射妨害波の測定間隔を決めた方が、最大電界強度位置の推定精度が高くなることを意味している。なお、当該グラフにおいて、曲線F1は、全体として曲線F2よりも下側に位置している。このため、放射妨害波測定装置100は、放射妨害波の周波数と曲線F2とに基づいて、放射妨害波の測定間隔を決めることにより、より広い周波数帯に含まれる周波数を有する放射妨害波についての放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、測定対象電界強度分布を精度よく推定することができる。
【0163】
しかしながら、放射妨害波試験を行うたびに、放射妨害波の周波数と曲線F2とに基づいて、放射妨害波の測定間隔を決めることは、処理の煩雑さを増大させてしまいかねない。これは、曲線F2の形状が、2つ直線の組み合わせのような単純な形状をしていないためである。そこで、放射妨害波測定装置100は、以下において説明するように、曲線F2に基づいて、周波数相当値が低い領域において放射妨害波の測定間隔の上限値を示し、周波数相当値が高い領域において、曲線F1と一致する曲線F3を特定することができる。曲線F3は、換言すると、周波数相当値が高い領域において曲線F2に漸近し、且つ、周波数相当値が低い領域において曲線F1に漸近するような曲線のことである。図10には、このような曲線F3の一例がプロットされている。
【0164】
例えば、曲線F3を特定するため、放射妨害波測定装置100は、曲線F1が近似的にほぼ変化しない領域を特定し、特定した領域内における曲線F1上の最大空間周波数の値の平均値を算出する。曲線F3を利用して放射妨害波の測定間隔の上限値を特定する場合、当該値の平均値が、放射妨害波の測定間隔の上限値となる。当該値の平均値を算出した後、放射妨害波測定装置100は、算出した平均値を通る横軸と水平な直線を特定し、当該直線と曲線F1との交点を特定する。そして、放射妨害波測定装置100は、曲線F2が有する部分のうち特定した交点よりも高周波側の部分と当該直線とを繋いだ直線を、曲線F3として特定する。なお、曲線F3の特定方法は、これに代えて、他の方法であってもよい。また、曲線F3は、例えば、放射妨害波測定装置100のユーザによって、図10に示したようなグラフに基づいて手で決められてもよい。
【0165】
このようにして特定された曲線F3を用いることにより、放射妨害波測定装置100は、周波数相当値が低い領域において、放射線妨害波の測定間隔として曲線F3が示す放射妨害波の測定間隔の上限値を選択し、周波数相当値が高い領域において、曲線F3が示す放射妨害波の測定間隔、すなわち、曲線F1が示す放射線妨害波の測定間隔を選択することができる。その結果、放射妨害波測定装置100は、より広い周波数帯に含まれる周波数を有する放射妨害波についての放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、測定対象電界強度分布を精度よく推定することができる。
【0166】
なお、図10に示したグラフにプロットされた曲線F2は、ターンテーブル4の回転軸から観測点までの水平方向における距離である測定距離と電磁波源領域の半径との比によって変化する。以下では、説明の便宜上、当該比を解析対象比と称して説明する。図10に示した曲線F2は、解析対象比が2の場合において対象推定方法によって測定対象電界強度分布を推定した結果として得られた曲線である。図11は、図10に示したグラフの横軸の値が0.001である場合の空間周波数スペクトルの値の、解析対象比を変化に応じた変化の一例を示す図である。図11に示したグラフの縦軸は、図10に示したグラフの縦軸と同じであり、放射妨害波の測定間隔を示す。当該グラフの横軸は、解析対象比を示す。
【0167】
ここで、図11に示したグラフにプロットされた曲線F4は、周波数相当値が0.001である場合において対象推定方法によって推定された最大空間周波数に応じて決まる放射妨害波の測定間隔の、解析対象比の変化に応じた変化の一例を示す。曲線F4は、解析対象比が16まで、放射妨害波の測定間隔が略線形的に変化していることを示している。また、曲線F4は、16以上において放射妨害波の測定間隔が略一定値になることを示している。ここで、当該グラフにおいて曲線F4よりも全体として下側に位置する曲線上の点が示す放射妨害波の測定間隔はいずれも、周波数相当値が0.001である場合における最大電界強度位置を精度よく推定することが可能な測定間隔である。また、周波数相当値が0.001であることは、現段階の放射妨害波試験において測定可能な放射線妨害波の周波数として、最も低い周波数に近い。このため、曲線F4に漸近する曲線であり、且つ、当該グラフにおいて曲線F4よりも全体として下側に位置する曲線を当該グラフにプロットすることにより、放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、測定対象電界強度分布を精度よく推定することができる放射線妨害波の測定間隔の上限値と、解析対象比とを対応付ける対応情報を生成することができる。図11に示した曲線F5は、曲線F4に漸近する曲線であり、且つ、当該グラフにおいて曲線F4よりも全体として下側に位置する曲線の一例を示す。このような対応情報を用いることにより、放射妨害波測定装置100は、受け付けた解析対象比に応じた放射妨害波の測定間隔の上限値を容易に特定することができる。これは、上記の曲線F3を用いる方法よりも簡便な方法であり、放射妨害波試験において有用である。なお、放射妨害波測定装置100は、当該グラフにおける曲線F5のプロットを、例えば、ユーザから受け付けた操作に応じて行ってもよく、曲線F4に基づく各種の処理によって行ってもよい。当該各種の処理は、例えば、解析対象比1~16の範囲内において線形に変化し、その後、一定値を示す曲線を曲線F5としてプロットする処理であってもよい。この場合、曲線F5の線形変化部分の傾きは、例えば、解析対象比1~16の範囲内における曲線F4の傾きに所定割合を乗算した値であるが、これに代えて、他の方法により決められた値であってもよい。所定割合は、例えば、9割であるが、これに代えて、9割より小さい割合であってもよく、9割より大きい割合であってもよい。
【0168】
なお、上記において説明した対象推定方法では、モンテカルロ法を用いたが、これに代えて、例えば、実際に複数の互いに異なる供試体を用意し、用意した複数の供試体のそれぞれについて測定対象電界強度分布を測定することにより、複数の空間周波数スペクトルを算出する構成であってもよい。この場合であっても、放射妨害波測定装置100は、上記において説明した方法と同じ方法を用いて、すなわち、統計解析を用いて、曲線F3、曲線F5等の曲線を特定することができる。その結果、放射妨害波測定装置100は、放射妨害波の測定間隔の上限値を算出(特定)することができる。すなわち、この場合であっても、放射妨害波測定装置100は、より広い周波数帯に含まれる周波数を有する放射妨害波についての放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、測定対象電界強度分布を精度よく推定することができる。
【0169】
<放射妨害波測定が放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する処理>
以下、図12を参照し、放射妨害波測定装置100が放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する処理について説明する。図12は、放射妨害波測定装置100が放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する処理の流れの一例を示す図である。以下では、一例として、図12に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する処理を放射妨害波測定装置100に開始させる操作を放射妨害波測定装置100が受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、予め決められた複数の互いに異なる解析対象比のそれぞれを示す解析対象比情報が記憶装置13の記録媒体15に記憶されている場合について説明する。複数の互いに異なる解析対象比は、例えば、1~32の閉区間に含まれる個々の整数であるが、これに代えて、他の値であってもよい。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、複数の互いに異なる周波数のそれぞれを示す周波数情報が記憶装置13の記録媒体15に記憶されている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、前述の測定条件情報が記憶装置13の記録媒体15に記憶されている場合について説明する。
【0170】
演算処理部9は、記憶装置13の記録媒体15に予め記憶された解析対象比情報を記録媒体15から読み出し、読み出した解析対象比情報が示す複数の解析対象比のそれぞれ毎に、ステップS320~ステップS370の処理を繰り返し行う(ステップS310)。
【0171】
ステップS310において解析対象比が選択された後、演算処理部9は、記憶装置13の記録媒体15に予め記憶された測定条件情報を記録媒体15から読み出す(ステップS320)。
【0172】
次に、演算処理部9は、記憶装置13の記録媒体15に予め記憶された周波数情報を記録媒体15から読み出す。そして、演算処理部9は、読み出した周波数情報が示す複数の周波数のそれぞれを、放射線妨害波の周波数として特定し、特定した放射線妨害波の周波数毎に、ステップS340~ステップS350の処理を繰り返し行う(ステップS330)。
【0173】
ステップS330において放射線妨害波の周波数が選択された後、演算処理部9は、ステップS320において読み出した測定条件情報と、対象推定方法におけるモンテカルロ法とにより、測定対象電界強度分布の推定を予め決められた回数行い、当該回数個の測定対象電界強度分布の推定を行う(ステップS340)。その後、ステップS340において、演算処理部9は、推定した当該回数個の測定対象電界強度分布のそれぞれをフーリエ変換し、当該回数個の空間周波数スペクトルを算出する。なお、演算処理部9は、例えば、電磁波源領域のサイズ等を特定する場合、当該測定条件情報に基づいて算出、特定等を行う。
【0174】
次に、演算処理部9は、ステップS340において算出された予め決められた回数個の空間周波数スペクトルに基づいて、対象推定方法により、ステップS330において放射線妨害波の周波数に応じた最大空間周波数を特定する(ステップS350)。ステップS350において当該最大空間周波数を特定した後、演算処理部9は、ステップS330に遷移し、次の周波数を選択する。なお、ステップS330に遷移した後、演算処理部9は、ステップS330において未選択の周波数が存在しない場合、ステップS330~ステップS350の繰り返し処理を終了させ、ステップS360に遷移する。
【0175】
ステップS330~ステップS350の繰り返し処理を終了させた後、演算処理部9は、対象推定方法により、当該繰り返し処理によって複数の周波数毎に特定された最大空間周波数に基づいて放射線妨害波の測定間隔の上限値を算出する(ステップS360)。
【0176】
次に、演算処理部9は、ステップS360において算出された放射線妨害波の測定間隔の上限値を示す上限値情報を、ステップS310において選択された解析対象比に対応付けて、記憶装置13の記録媒体15に記憶させる(ステップS370)。ステップS370において上限値情報を記憶させた後、演算処理部9は、ステップS310に遷移し、次の解析対象比を選択する。なお、ステップS310に遷移した後、演算処理部9は、ステップS310において未選択の解析対象比が存在しない場合、ステップS310~ステップS370の繰り返し処理を終了させ、ステップS380に遷移する。
【0177】
ステップS310~ステップS370の繰り返し処理を終了させた後、演算処理部9は、当該繰り返し処理において記憶装置13の記録媒体15に記憶された複数の上限値情報に基づいて、前述の対応情報を生成する(ステップS380)。
【0178】
次に、演算処理部9は、ステップS380において生成した対応情報を記憶装置13の記録媒体15に記憶させ(ステップS390)、図12に示したフローチャートの処理を終了させる。
【0179】
以上のように、放射妨害波測定装置100は、対象推定方法に基づいて、放射妨害波を放射する供試体に応じた複数の電磁波源の位置と、放射妨害波を測定するアンテナ2と供試体との相対的な位置関係とに基づいて、アンテナ2による放射妨害波の測定間隔の上限値を算出させる。これにより、放射妨害波測定装置100は、より広い周波数帯に含まれる周波数を有する放射妨害波についての放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、測定対象電界強度分布を精度よく推定することができる。その結果、放射妨害波測定装置100は、より広い周波数帯に含まれる周波数を有する放射妨害波についての放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、最大電界強度位置を精度よく推定することができる。
【0180】
<放射妨害波測定が放射妨害波の測定間隔の上限値を用いて測定対象電界強度分布を推定する処理>
以下、図13を参照し、放射妨害波測定装置100が放射妨害波の測定間隔の上限値を用いて測定対象電界強度分布を推定する処理について説明する。図13は、放射妨害波測定装置100が放射妨害波の測定間隔の上限値を用いて測定対象電界強度分布を推定する処理の流れの一例を示す図である。以下では、一例として、図13に示したステップS410の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、放射妨害波の測定間隔の上限値を用いて測定対象電界強度分布を推定する処理を放射妨害波測定装置100に開始させる操作を放射妨害波測定装置100が受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、図12に示したフローチャートの処理が行われており、対応情報が記憶装置13の記録媒体15に記憶されている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、測定条件情報が記憶装置13の記録媒体15に記憶されている場合について説明する。
【0181】
演算処理部9は、記憶装置13の記録媒体15に予め記憶された測定条件情報を記録媒体15から読み出す(ステップS410)。
【0182】
次に、演算処理部9は、記憶装置13の記録媒体15に予め記憶された対応情報を記録媒体15から読み出す(ステップS420)。
【0183】
次に、演算処理部9は、ステップS410において読み出した測定条件情報に基づいて、解析対象比を算出する。そして、演算処理部9は、算出した解析対象比と、ステップS420において読み出した対応情報とに基づいて、当該解析対象比に対応付けられた放射妨害波の測定間隔の上限値を特定する(ステップS430)。
【0184】
次に、演算処理部9は、図6に示したフローチャートの処理によって、2以上の測定点の配置を算出する(ステップS440)。なお、演算処理部9は、ステップS410において測定条件情報を読み出し済みであるため、ステップS440の処理では、当該フローチャートにおけるステップS120の処理を省略してもよい。
【0185】
次に、演算処理部9は、ステップS440において算出された配置における放射妨害波の測定間隔の最大値が、ステップS430において特定した上限値を超えているか否かを判定する(ステップS450)。
【0186】
演算処理部9は、ステップS440において算出された配置における放射妨害波の測定間隔の最大値が、ステップS430において特定した上限値以下であると判定した場合(ステップS450-NO)、当該配置を測定面上に設定する2以上の測定点の配置として決定する。そして、演算処理部9は、決定した2以上の測定点の配置を用いてコントローラ6及び受信器5を制御し、当該配置が示す2以上の測定点それぞれが示す測定位置における測定対象電界強度の測定(すなわち、測定対象電界強度の実測)を行う(ステップS470)。なお、演算処理部9は、ステップS470において、電磁気学に基づくシミュレーションにより各測定位置における測定対象電界強度を算出する構成であってもよい。
【0187】
次に、演算処理部9は、ステップS470において測定したすべての測定対象電界強度に基づいて、測定対象電界強度分布を取得する(ステップS480)。換言すると、ステップS480において、演算処理部9は、ステップS470において測定したすべての測定対象電界強度に基づいて、測定対象電界強度分布を推定する。
【0188】
次に、演算処理部9は、ステップS480において取得した測定対象電界強度分布を補間する(ステップS490)。演算処理部9は、例えば、ステップS490において、ローパスフィルタを用いて、当該測定対象電界強度分布を補間する。また、ステップS490において、演算処理部9は、ローパスフィルタのカットオフ周波数として、例えば、放射妨害波の測定間隔の逆数を使用する。なお、演算処理部9は、ローパスフィルタを用いる方法以外の方法により、当該測定対象電界強度分布を補間する構成であってもよい。また、演算処理部9は、ステップS490の処理を省略し、当該測定対象電界強度分布を補間しない構成であってもよい。
【0189】
次に、演算処理部9は、ステップS490において補間した測定対象電界強度分布を示す測定対象電界強度分布情報を生成し、生成した測定対象電界強度分布情報を記憶装置13の記録媒体15に記憶させ(ステップS500)、図13に示したフローチャートの処理を終了させる。
【0190】
一方、演算処理部9は、ステップS440において算出された配置における放射妨害波の測定間隔の最大値が、ステップS430において特定した上限値を超えていると判定した場合(ステップS450-YES)、ステップS470に遷移し、当該上限値を放射線妨害波の測定間隔として採用し、採用した放射線妨害波の測定間隔に応じた2以上の測定点の配置を、測定面上に設定する2以上の測定点の配置として決定する。そして、演算処理部9は、決定した2以上の測定点の配置を用いてコントローラ6及び受信器5を制御し、当該配置が示す2以上の測定点それぞれが示す測定位置における測定対象電界強度の測定(すなわち、測定対象電界強度の実測)を行う。なお、演算処理部9は、前述した通り、ステップS470において、電磁気学に基づくシミュレーションにより各測定位置における測定対象電界強度を算出する構成であってもよい。
【0191】
以上のように、放射妨害波測定装置100は、ステップS440において算出した放射妨害波の測定間隔の最大値が、ステップS430において特定した上限値を超えている場合、放射妨害波を測定する放射妨害波試験に用いる測定間隔として当該上限値を選択し、ステップS440において算出した当該測定間隔の最大値が、算出した当該上限値以下である場合、放射妨害波試験に用いる測定間隔として、ステップS440において算出した測定間隔を選択する。すなわち、放射妨害波測定装置100は、ユーザからの操作を受け付けることなく、自動的に、このような放射妨害波の測定間隔の切り替えを行うことができる。その結果、放射妨害波測定装置100は、より広い周波数帯に含まれる周波数を有する放射妨害波についての放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、供試体を囲む仮想的な面上における放射妨害波の電磁界強度の分布を精度よく推定することができることに加えて、放射妨害波試験においてユーザが行う作業の増大を抑制することができる。
【0192】
ここで、図14は、ある測定条件に基づいて図13に示したフローチャートの処理によって推定された測定対象電界強度分布と、当該測定条件と電磁気学とに基づくシミュレーション等によって推定された実際の測定対象電界強度分布とを比較するための図である。なお、当該測定条件における放射妨害波の周波数は、前述の放射妨害波の周波数が低い領域に含まれる周波数の一例である100[kHz]である。図14に示したグラフの縦軸は、電界強度を示している。また、当該グラフの横軸は、円筒形状である測定面上における円筒の周方向の位置を、ターンテーブル4の回転軸周りの方位角によって示している。当該グラフにプロットされた曲線F6は、電磁気学に基づくシミュレーション等によって推定された実際の測定対象電界強度分布の一例を示す。また、当該グラフにプロットされた複数の点は、ある測定条件に基づいて図13に示したフローチャートの処理によって測定された複数の測定対象電界強度を示す。図13に示したように、これら複数の点は、曲線F6上に位置している。そして、これら複数の測定対象電界強度に基づいて、当該処理によって推定された測定対象電界強度分布は、当該グラフにおいて、曲線F7によって示されている。そして、図13に示したように、曲線F6が示す測定対象電界強度分布と、曲線F7が示す測定対象電界強度分布とは、略重なっている。より具体的には、曲線F6が示す測定対象電界強度分布の最大電界強度位置と、曲線F7が示す測定対象電界強度分布の最大電界強度位置とは、一致又は略一致している。従って、放射妨害波測定装置100は、図13に示したフローチャートの処理によって測定対象電界強度分布を推定することにより、放射妨害波の周波数が低い領域においても、測定対象電界強度分布を精度よく推定できる。すなわち、放射妨害波測定装置100は、より広い周波数帯に含まれる周波数を有する放射妨害波についての放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、測定対象電界強度分布を精度よく推定することができる。
【0193】
<他の変形例>
コンピュータ7は、上下方向ではなく、前述の方位角方向における2以上の測定点の配置を特定する場合、上記の式(15)に代えて、以下の式(20)を用いる。
【0194】
【数20】
【0195】
ここで、上記の式(20)のRmaxは、供試体1のサイズを示す情報として供試体情報に含まれている上下面の半径を示す。この上下面は、ターンテーブル4上に配置された供試体1の全体を含む仮想的な領域のうち最も小さな円筒形状の領域の上下面のことである。これにより、コンピュータ7は、方位角方向についても、2以上の測定点の配置を特定することができ、その結果、放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、測定対象電界強度分布を精度よく推定することができる。なお、当該配置は、重力方向と平行になるように予め決められた回転軸(すなわち、ターンテーブル4の回転軸)周りの方位角方向における配置である。
【0196】
以上のように、実施形態に係る放射妨害波測定装置100は、放射妨害波を放射する供試体に応じた複数の電磁波源の位置と、放射妨害波を測定するアンテナ2と供試体との相対的な位置関係とに基づいて、アンテナ2による放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する。これにより、放射妨害波測定装置100は、より広い周波数帯に含まれる周波数を有する放射妨害波についての放射妨害波試験に要する時間が増大してしまうことを抑制しつつ、測定対象電界強度分布を精度よく推定することができる。
なお、上記において説明した事項は、如何様に組み合わされてもよい。
【0197】
<付記>
[1]
コンピュータに、
放射妨害波を放射する供試体に応じた複数の電磁波源の位置と、前記放射妨害波を測定するアンテナと前記供試体との相対的な位置関係とに基づいて、前記アンテナによる前記放射妨害波の測定間隔の上限値を算出させる第1算出ステップ、
を実行させるためのプログラム。
[2]
前記測定間隔は、前記アンテナによって前記放射妨害波を測定する複数の測定位置のうちの隣り合う測定位置同士の間隔のことである、
[1]に記載のプログラム。
[3]
前記複数の電磁波源の位置と、前記位置関係と、前記放射妨害波の波長と、サンプリング定理とに基づいて、前記測定間隔を算出させる第2算出ステップを実行させる、
[1]又は[2]に記載のプログラム。
[4]
前記第2算出ステップにより算出された前記測定間隔の最大値が、前記第1算出ステップにより算出された前記上限値を超えている場合、前記放射妨害波を測定する放射妨害波試験に用いる前記測定間隔として前記上限値を選択させ、前記第2算出ステップにより算出された前記測定間隔の最大値が、前記第1算出ステップにより算出された前記上限値以下である場合、前記放射妨害波試験に用いる前記測定間隔として前記第2算出ステップにより算出された前記測定間隔を選択させる選択ステップを実行させる、
[3]に記載のプログラム。
[5]
前記第1算出ステップは、統計解析に基づいて前記上限値を算出させる、
[1]から[4]のうちいずれか一項に記載のプログラム。
[6]
前記第1算出ステップにより算出された前記上限値に基づいて、前記放射妨害波の電界強度の分布と前記放射妨害波の磁界強度の分布との少なくとも一方の分布を算出する第3算出ステップを実行させる、
[1]から[5]のうちいずれか一項に記載のプログラム。
[7]
前記少なくとも一方の分布をシミュレーション又は実測により取得する取得ステップと、
ローパスフィルタによって前記少なくとも一方の分布を補間する補間ステップと、
を実行させる[6]に記載のプログラム。
[8]
放射妨害波を放射する供試体に応じた複数の電磁波源の位置と、前記放射妨害波を測定するアンテナと前記供試体との相対的な位置関係とに基づいて、前記アンテナによる前記放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する第1算出ステップ、
を有する情報処理方法。
[9]
前記測定間隔は、前記アンテナによって前記放射妨害波を測定する複数の測定位置のうちの隣り合う測定位置同士の間隔のことである、
[8]に記載の情報処理方法。
[10]
前記複数の電磁波源の位置と、前記位置関係と、前記放射妨害波の波長と、サンプリング定理とに基づいて、前記測定間隔を算出させる第2算出ステップを有する、
[8]又は[9]に記載の情報処理方法。
[11]
前記第2算出ステップにより算出された前記測定間隔の最大値が、前記第1算出ステップにより算出された前記上限値を超えている場合、前記放射妨害波を測定する放射妨害波試験に用いる前記測定間隔として前記上限値を選択させ、前記第2算出ステップにより算出された前記測定間隔の最大値が、前記第1算出ステップにより算出された前記上限値以下である場合、前記放射妨害波試験に用いる前記測定間隔として前記第2算出ステップにより算出された前記測定間隔を選択させる選択ステップを有する、
[10]に記載の情報処理方法。
[12]
前記第1算出ステップは、統計解析に基づいて前記上限値を算出させる、
[8]から[11]のうちいずれか一項に記載の情報処理方法。
[13]
前記第1算出ステップにより算出された前記上限値に基づいて、前記放射妨害波の電界強度の分布と前記放射妨害波の磁界強度の分布との少なくとも一方の分布を算出する第3算出ステップを有する、
[8]から[12]のうちいずれか一項に記載の情報処理方法。
[14]
前記少なくとも一方の分布をシミュレーション又は実測により取得する取得ステップと、
ローパスフィルタによって前記少なくとも一方の分布を補間する補間ステップと、
を有する[13]に記載の情報処理方法。
[15]
放射妨害波を放射する供試体に応じた複数の電磁波源の位置と、前記放射妨害波を測定するアンテナと前記供試体との相対的な位置関係とに基づいて、前記アンテナによる前記放射妨害波の測定間隔の上限値を算出する、
を備える情報処理装置。
[16]
前記測定間隔は、前記アンテナによって前記放射妨害波を測定する複数の測定位置のうちの隣り合う測定位置同士の間隔のことである、
[15]に記載の情報処理装置。
[17]
前記複数の電磁波源の位置と、前記位置関係と、前記放射妨害波の波長と、サンプリング定理とに基づいて、前記測定間隔を算出する、
[15]又は[16]に記載の情報処理装置。
[18]
算出した前記測定間隔の最大値が、算出した前記上限値を超えている場合、前記放射妨害波を測定する放射妨害波試験に用いる前記測定間隔として前記上限値を選択し、算出した前記測定間隔の最大値が、算出した前記上限値以下である場合、前記放射妨害波試験に用いる前記測定間隔として、算出した前記測定間隔を選択する、
[17]に記載の情報処理装置。
[19]
前記複数の電磁波源の位置と、前記位置関係とに基づいて、前記放射妨害波の波長に対して前記測定間隔がサンプリング定理を満たすように、前記アンテナによって前記放射妨害波を測定する複数の測定位置を算出する、
[15]から[18]のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
[20]
統計解析に基づいて前記上限値を算出する、
[15]から[19]のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
[21]
算出した前記上限値に基づいて、前記放射妨害波の電界強度の分布と前記放射妨害波の磁界強度の分布との少なくとも一方の分布を算出する、
[15]から[20]のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
[22]
前記少なくとも一方の分布をシミュレーション又は実測により取得することと、ローパスフィルタによって前記少なくとも一方の分布を補間することとを行う、
[21]に記載の情報処理装置。
【0198】
以上、この開示の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この開示の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0199】
また、以上に説明した装置(例えば、放射妨害波測定装置100、コントローラ6、コンピュータ7等)における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリー(RAM(Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0200】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0201】
1…供試体、2…アンテナ、3…アンテナマスト、4…ターンテーブル、5…受信器、6…コントローラ、7…コンピュータ、8…制御部、9…演算処理部、10…主制御部、11…入力装置、12…出力装置、13…記憶装置、14…バス、15…記録媒体、100…放射妨害波測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14