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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047244
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/265 20180101AFI20240329BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20240329BHJP
   F21S 41/26 20180101ALI20240329BHJP
   F21S 41/32 20180101ALI20240329BHJP
   F21W 102/135 20180101ALN20240329BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240329BHJP
【FI】
F21S41/265
F21S41/148
F21S41/26
F21S41/32
F21W102:135
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152766
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三菅 大
(57)【要約】
【課題】優れた意匠性を持つ車両用前照灯を提供することにある。
【解決手段】この発明は、第2レンズ20の後側焦点距離は、第2レンズ20の縦断面において左右の縦断面ごとに異なっている。これにより、第2レンズ20は、出射面201の平面視形状を、ランプレンズ102の表面の平面視形状に沿った形状に、形成しても、ロービーム配光パターンの一部であるワイドのロービーム配光パターンWLPを車両Vの前方に照射することができる。この結果、この発明は、投影レンズの出射面の平面視形状が、透光カバーの平面視形状に、沿っていない特許文献1の車両用前照灯と比較して、優れた意匠性を持つ。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯室を形成するランプハウジングおよびランプレンズと、
前記灯室内に配置されている車両用ランプユニット装置と、
を備え、
前記ランプレンズは、車幅方向内側から車幅方向外側に向けて車両の前側から後側に傾斜した形状あるいは回り込んだ形状をなしていて、
前記車両用ランプユニット装置は、少なくとも、ロービーム配光パターンの一部を前記車両の前方に照射するランプユニットを、有し、
前記ランプユニットは、
光源と、
前記光源からの光の一部を反射光として反射させる反射面を有するリフレクタと、
前記反射光の一部を遮蔽するシェードと、
前記シェードで遮蔽されなかった前記反射光を前記ロービーム配光パターンの一部として前記車両の前方に照射するレンズと、
を有し、
前記レンズの後側焦点距離は、前記レンズの縦断面において、左右の前記縦断面ごとに異なっている、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記レンズの後側焦点は、前記シェードの縁に沿って後側焦線を形成し、
前記シェードの前記縁は、前記車両の左右方向に伸びる線に沿って形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記レンズは、非球面レンズであって、
前記レンズの縦断面の表面側と裏面側とは、共に凸曲線をなしていて、
前記表面側の前記凸曲線の頂点、前記裏面側の前記凸曲線の頂点は、前記車両の左右方向に伸びる前記表面側の稜線、前記裏面側の稜線を形成し、
前記表面側の前記稜線、前記裏面側の前記稜線、前記後側焦線および前記シェードの前記縁は、車両用前照灯の正面視において、一致する、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記反射面は、回転楕円面を基調とし、
前記反射面の第1焦点は、前記光源もしくは前記光源の近傍に位置し、
前記反射面の第2焦点は、前記後側焦線もしくは前記後側焦線の近傍に位置し、
前記反射面の回転軸を含む中央部分からの前記反射光は、前記後側焦線の前記反射面の前記回転軸を含む中央部分においてクロスして左右に広がって進み、
前記反射面の前記中央部分に対して左側部分からの前記反射光は、前記後側焦線の前記中央部分に対して左側部分を通過して右に広がって進み、
前記反射面の前記中央部分に対して右側部分からの前記反射光は、前記後側焦線の前記中央部分に対して右側部分を通過して左に広がって進み、
前記レンズの正面視形状は、前記レンズの左右方向の長さが前記レンズの上下方向の長さよりも長い横長形状をなしている、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記車両用ランプユニット装置は、
集光配光パターンを前記車両の前方に照射する第1ランプユニットと、
前記ロービーム配光パターンの一部であって、拡散配光パターンを前記車両の前方に照射する前記ランプユニットとしての第2ランプユニットと、
を有し、
前記第2ランプユニットは、前記第1ランプユニットに対して、前記車幅方向外側に配置されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用前照灯として、たとえば、特許文献1に示すものがある。以下、特許文献1の車両用前照灯について説明する。
【0003】
特許文献1の車両用前照灯は、ランプボディと透光カバーとで形成される灯室内に、灯具ユニットが収容されてなり、灯具ユニットが、投影レンズと、光源と、リフレクタと、を備えてなる。投影レンズが、光軸上の所定点を通る鉛直線を中心軸とする円弧状をなすトロイダルレンズとして構成されていて、投影レンズの入射面の鉛直断面形状が後傾直線で構成されるとともに、投影レンズの出射面の鉛直断面形状が凸曲線で構成されている。この結果、特許文献1の車両用前照灯は、透光カバーが車体形状に沿って上向きに傾斜した表面形状を有しているにもかかわらず、透光カバーに沿って投影レンズを配置することができる。
【0004】
特許文献1の車両用前照灯は、透光カバーを透して灯具ユニットを観察したとき、トロイダル面を有する投影レンズが透光カバーの表面形状に沿って配置された状態で見えるようにすることができ、これにより灯具意匠に斬新性を持たせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-49190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の車両用前照灯は、投影レンズの出射面の平面視形状が、光軸上の所定点を通る鉛直線を中心軸とする円弧形状をなしていて、一方、透光カバーの平面視形状が、車両前端部のコーナ部の車体形状に沿って、車幅方向内側から車幅方向外側へ向けて後方へ多少回り込む形状をなしている。この結果、特許文献1の車両用前照灯は、投影レンズの出射面の平面視形状が、透光カバーの平面視形状、すなわち、車両前端部のコーナ部の車体形状に、沿っていないので、優れた意匠性を持つとは言い難い。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、優れた意匠性を持つ車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車両用前照灯は、前記の課題を解決するため、灯室を形成するランプハウジングおよびランプレンズと、前記灯室内に配置されている車両用ランプユニット装置と、を備え、前記ランプレンズは、車幅方向内側から車幅方向外側に向けて車両の前側から後側に傾斜した形状あるいは回り込んだ形状をなしていて、前記車両用ランプユニット装置は、少なくとも、ロービーム配光パターンの一部を前記車両の前方に照射するランプユニットを、有し、前記ランプユニットは、光源と、前記光源からの光の一部を反射光として反射させる反射面を有するリフレクタと、前記反射光の一部を遮蔽するシェードと、前記シェードで遮蔽されなかった前記反射光を前記ロービーム配光パターンの一部として前記車両の前方に照射するレンズと、を有し、前記レンズの後側焦点距離は、前記レンズの縦断面において、左右の前記縦断面ごとに異なっている、ことを特徴とする。
【0009】
この発明の車両用前照灯において、前記レンズの後側焦点は、前記シェードの縁に沿って後側焦線を形成し、前記シェードの前記縁は、前記車両の左右方向に伸びる線に沿って形成されている、ことが好ましい。
【0010】
この発明の車両用前照灯において、前記レンズは、非球面レンズであって、前記レンズの縦断面の表面側と裏面側とは、共に凸曲線をなしていて、前記表面側の前記凸曲線の頂点、前記裏面側の前記凸曲線の頂点は、前記車両の左右方向に伸びる前記表面側の稜線、前記裏面側の稜線を形成し、前記表面側の前記稜線、前記裏面側の前記稜線、前記後側焦線および前記シェードの前記縁は、車両用前照灯の正面視において、一致する、ことが好ましい。
【0011】
この発明の車両用前照灯において、前記反射面は、回転楕円面を基調とし、前記反射面の第1焦点は、前記光源もしくは前記光源の近傍に位置し、前記反射面の第2焦点は、前記後側焦線もしくは前記後側焦線の近傍に位置し、前記反射面の回転軸を含む中央部分からの前記反射光は、前記後側焦線の前記反射面の前記回転軸を含む中央部分においてクロスして左右に広がって進み、前記反射面の前記中央部分に対して左側部分からの前記反射光は、前記後側焦線の前記中央部分に対して左側部分を通過して右に広がって進み、前記反射面の前記中央部分に対して右側部分からの前記反射光は、前記後側焦線の前記中央部分に対して右側部分を通過して左に広がって進み、前記レンズの正面視形状は、前記レンズの左右方向の長さが前記レンズの上下方向の長さよりも長い横長形状をなしている、ことが好ましい。
【0012】
この発明の車両用前照灯において、前記車両用ランプユニット装置は、集光配光パターンを前記車両の前方に照射する第1ランプユニットと、前記ロービーム配光パターンの一部であって、拡散配光パターンを前記車両の前方に照射する前記ランプユニットとしての第2ランプユニットと、を有し、前記第2ランプユニットは、前記第1ランプユニットに対して、前記車幅方向外側に配置されている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、優れた意匠性を持つ車両用前照灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態を示す使用状態(車両に装備した状態)の平面図(車両の上側から見た図)である。
図2図2は、右側の車両用前照灯を示す一部断面の平面図(図1におけるII部の拡大平面図)である。
図3図3は、右側の車両用ランプユニット装置を示す正面図(車両の前側から見た図であって、図2におけるIII矢視図)である。
図4図4は、第2ランプユニットを示す縦断面図(鉛直断面図であって、図3におけるIV-IV線断面図)である。
図5図5は、第2ランプユニットを示す横断面図(水平断面図であって、図3におけるV-V線断面図)である。
図6図6は、第2ランプユニットのレンズおよびシェードを示す一部縦断面図(一部鉛直断面図)である。
図7図7は、右側の第1ランプユニットから車両の前方に照射される集光配光パターンとしてのスポットのロービーム配光パターンを示す説明図である。
図8図8は、右側の第2ランプユニット灯から車両の前方に照射される拡散配光パターンとしてのワイドのロービーム配光パターンを示す説明図である。
図9図9は、図7に示すスポットのロービーム配光パターンと図8に示すワイドのロービーム配光パターンとを重畳したロービーム配光パターン(右側の車両用前照灯から照射されるロービーム配光パターン)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態(実施例)の1例を図面に基づいて説明する。この明細書、別紙特許請求の範囲において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用前照灯を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右である。また、この明細書、別紙特許請求の範囲において、平面視は、車両Vの上側から見た状態である。さらに、この明細書、別紙特許請求の範囲において、正面視は、車両Vの前側から見た状態である。
【0016】
図面において、符号「F」は「前」、「B」は「後」、「U」は上、「D」は「下」、「L」は「左」、「R」は「右」である。また、図面においては、概略図であるため、主要部品を図示し、主要部品以外の部品の図示を省略し、かつ、ハッチングの一部を省略する。さらに、図7から図9において、符号「VU-VD」は、スクリーンの上下垂直線を示す。符号「HL-HR」は、スクリーンの左右水平線を示す。
【0017】
(実施形態の構成の説明)
以下、この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rの構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、左側の車両用前照灯100Lは、車両Vの前部の左側に装備されていて、右側の車両用前照灯100Rは、車両Vの前部の右側に装備されている。左側の車両用前照灯100Lにおいて、車両Vの外側は、車両Vの左側であり、車両Vの内側は、車両Vの右側である。右側の車両用前照灯100Rにおいて、車両Vの外側は、車両Vの右側であり、車両Vの内側は、車両Vの左側である。
【0019】
左右両側の車両用前照灯100L、100Rは、図1および図2に示すように、それぞれ、ランプハウジング101と、ランプレンズ102と、左側の車両用ランプユニット装置10L、右側の車両用ランプユニット装置10Rと、を備える。
【0020】
ランプハウジング101は、光不透過性の樹脂部材から構成されている。ランプレンズ102は、光透過性の樹脂部材から構成されている。ランプレンズ102は、アウターレンズあるいはアウターカバーである。ランプレンズ102の表面(後記の灯室103側の面に対して反対側の面であって、出射面)の平面視形状は、図1および図2に示すように、車両Vの意匠面に沿って、車両Vの内側から外側に行くに従って、車両Vの前側から後側に徐々に後退した傾斜(スラント)形状、あるいは、回り込んだ形状をなしている。
【0021】
ランプハウジング101およびランプレンズ102により、灯室103が形成されている。灯室103内には、左側の車両用ランプユニット装置10L、右側の車両用ランプユニット装置10Rが、配置されている。
【0022】
(車両用ランプユニット装置10Rの説明)
以下、右側の車両用ランプユニット装置10Rについて、図2から図9を参照して説明する。なお、左側の車両用ランプユニット装置10Lは、右側の車両用ランプユニット装置10Rとほぼ同様の構成であって、左右を反転させた構成をなすものである。このため、左側の車両用ランプユニット装置10Lについての説明は、省略する。また、「左右両側」「左側」「右側」の文言を、適宜省略する。
【0023】
図6は、第2ランプユニット2の第2レンズ20および第2シェード23を示す一部縦断面図であって、(A)は、図5におけるA-A線断面図であり、(B)は、図5におけるB-B線断面図であり、(C)は、図5におけるC-C線断面図であり、(D)は、図5におけるD-D線断面図である。
【0024】
車両用ランプユニット装置10Rは、第1ランプユニット1と、第2ランプユニット2と、ヒートシンク3と、を備える。第1ランプユニット1と第2ランプユニット2は、ヒートシンク3に取り付けられている。ヒートシンク3は、取付部材としてのブラケット(図示せず)を介して、または、直接ランプハウジング101に取り付けられている。これにより、車両用ランプユニット装置10Rは、車両用前照灯100Rに装備される。なお、車両用ランプユニット装置10Rは、光軸調整装置を介して光軸調整可能に装備されている。
【0025】
(第1ランプユニット1、第2ランプユニット2の説明)
第1ランプユニット1と第2ランプユニット2とは、車両Vの左右方向に配置されている。第1ランプユニット1は、車両Vの内側に配置されている。第2ランプユニット2は、第1ランプユニット1に対して、車両Vの外側で、後側にかつ上側に、配置されている。すなわち、第1ランプユニット1と第2ランプユニット2とは、車両Vの前端部の左右コーナ部の車体形状に沿って、配置されている。
【0026】
第1ランプユニット1は、第1ランプ軸Z1を有する。第1ランプ軸Z1は、後記の第1レンズ10の光軸と一致する。第1ランプ軸Z1は、車両Vの前後方向の番線に対して平行である。第2ランプユニット2は、第2ランプ軸Z2を有する。第2ランプ軸Z2は、後記の第2リフレクタ22の回転楕円面の反射面220の回転軸と一致する。第2ランプ軸Z2は、第1ランプ軸Z1に対して車両Vの外側に向いている。
【0027】
(第1ランプユニット1の説明)
第1ランプユニット1は、図2および図3に示すように、第1レンズ10と、第1光源(図示せず)と、第1リフレクタ12と、第1シェード(図示せず)と、第1フレーム14と、を備える。なお、第1リフレクタ12と第1フレーム14とは、一体構造をなす場合がある。第1レンズ10は、第1フレーム14を介して、ヒートシンク3の第1ベース部31に取り付けられている。第1光源、第1リフレクタ12および第1シェードは、ヒートシンク3の第1ベース部31に取り付けられている。第1シェードは、第1レンズ10と第1光源との間に配置されている。
【0028】
第1ランプユニット1は、図7に示す集光配光パターンとしてのスポットのロービーム配光パターンSLPを、車両Vの前方に照射する。スポットのロービーム配光パターンSLPは、斜めカットオフラインCL11と、上水平カットオフラインCL12と、下水平カットオフラインCL13と、エルボー点Eと、を有する。
【0029】
(第2ランプユニット2の説明)
第2ランプユニット2は、図2から図6に示すように、第2レンズ20と、第2光源21と、第2リフレクタ22と、第2シェード23と、第2フレーム24と、を備える。なお、第2リフレクタ22と第2フレーム24とは、一体構造をなす場合がある。第2レンズ20は、第2フレーム24を介して、ヒートシンク3の第2ベース部32に取り付けられている。第2光源21、第2リフレクタ22および第2シェード23は、ヒートシンク3の第2ベース部32に取り付けられている。第2シェード23は、第2レンズ20と第2光源21との間であって、第2レンズ20の後記の後側焦線FLよりも第2レンズ20側に配置されている。
【0030】
第2ランプユニット2は、図8に示す拡散配光パターンとしてのワイドのロービーム配光パターンWLPを、車両Vの前方に照射する。ワイドのロービーム配光パターンWLPは、水平カットオフラインCL20を有する。このワイドのロービーム配光パターンWLPの水平カットオフラインCL20は、前記のスポットのロービーム配光パターンSLPの下水平カットオフラインCL13と、ほぼ合致する。
【0031】
(第2光源21の説明)
第2光源21は、この例では、LEDである。第2光源21は、図4に示すように、側面から見て第2ランプ軸Z2に対して下側に配置されている。また、第2光源21は、図5に示すように、上側から見て第2ランプ軸Z2と上下に重なって配置されている。第2光源21は、光L1を出射させる。
【0032】
(第2リフレクタ22、反射面220の説明)
第2リフレクタ22は、図4および図5に示すように、第2光源21からの光L1の一部を反射光L2として第2レンズ20側に反射させる反射面220を有する。反射面220は、この例では、回転楕円面を基調とする。前記の通り、回転楕円面の反射面220の回転軸は、第2ランプ軸Z2と一致する。反射面220の第1焦点は、第2光源21もしくは第2光源21の近傍に位置する。反射面220の第2焦点は、後側焦線FLもしくは後側焦線FLの近傍に位置する。
【0033】
図5に示すように、反射面220の回転軸(第2ランプ軸Z2)を含む中央部分で反射した反射光L2は、後側焦線FLの反射面220の回転軸(第2ランプ軸Z2)を含む中央部分においてクロスして左右に広がって進む。反射面220の中央部分に対して左側部分で反射した反射光L2は、後側焦線FLの中央部分に対して左側部分を通過して右に広がって進む。反射面220の中央部分に対して右側部分で反射した反射光L2は、後側焦線FLの中央部分に対して右側部分を通過して左に広がって進む。
【0034】
(第2シェード23)の説明
第2シェード23は、反射面220からの反射光L2の一部を遮蔽する。第2シェード23で遮蔽されなかった反射光L2は、第2レンズ20側に進む。第2シェード23の縁、この例では、上縁230は、図3および図5に示すように、車両Vの左右方向に伸びる直線に沿って、形成されている。第2シェード23の上縁230と後側焦線FLとは、図5に示すように、上から見て、平行であり、かつ、第2ランプ軸Z2に対して、垂直である。
【0035】
(第2レンズ20の説明)
第2レンズ20は、第2シェード23で遮蔽されなかった反射光L2をワイドのロービーム配光パターンWLPとして車両Vの前方に照射する。第2レンズ20は、裏面としての入射面200と、表面としての出射面201と、後側焦線FL(後側焦点)と、を有する。入射面200は、反射光L2を入射光L3として入射させる。出射面201は、入射光L3を出射光L4として出射させる。
【0036】
図2図5に示すように、第2レンズ20の出射面201の平面視形状は、ランプレンズ102の表面の平面視形状、すなわち、車両前端部のコーナ部の傾斜(スラント)形状、あるいは、回り込んだ形状に沿った形状、この例では、なだらかなS字形状に形成されている。また、第2レンズ20の入射面200の平面視形状も、同様に、なだらかなS字形状に形成されている。
【0037】
第2レンズ20の入射面200は、図8に示すワイドのロービーム配光パターンWLPに基づいて、設計されて形成されている。このため、第2レンズ20の入射面200は、縦断面ごとに焦点距離が異なっている。すなわち、第2レンズ20の後側焦点距離は、図6(A)、(B)、(C)、(D)に示すように、第2レンズ20の縦断面において、左右の縦断面ごとに異なっている。この例において、第2レンズ20の後側焦点距離は、車両Vの内側から外側に行くに従って、徐々に、短くなっている。
【0038】
これにより、第2レンズ20の入射面200は、車両Vの内側から外側に行くに従って、徐々に、第2レンズ20の後側焦線FLおよび第2シェード23の上縁230に近づいている。また、第2レンズ20の縦断面における肉厚、すなわち、第2レンズ20の入射面200の頂点(後記の稜線202)と出射面201の頂点(後記の稜線203)との間の寸法は、左右の縦断面ごとに異なっている。
【0039】
第2レンズ20の後側焦点は、図5の平面視および図3の正面視に示すように、第2シェード23の上縁230に沿って、後側焦線FLを形成する。また、第2レンズ20の後側焦点は、図4および図6の縦断面に示すように、一点に配置されている。
【0040】
第2レンズ20は、非球面レンズであってかつ投影レンズである。図4図6に示すように、第2レンズ20の縦断面形状は、入射面200と出射面201とが共に凸曲線である形状をなしている。すなわち、入射面200と出射面201とは、車両の前後方向に凸湾曲している。入射面200の曲率半径は、出射面201の曲率よりも大きい。
【0041】
図3および図5に示すように、入射面200側の凸曲線の頂点は、車両Vの左右方向に伸びる入射面200側の稜線202を形成する。また、出射面201側の凸曲線の頂点は、車両Vの左右方向に伸びる出射面201側の稜線203を形成する。
【0042】
入射面200側の稜線202、出射面201側の稜線203、後側焦線FLおよびシェード23の上縁230は、図3に示すように、車両用前照灯100Rの正面視において、車両Vの左右方向の水平直線に一致する。かかる第2レンズ20の入射面200の稜線202、出射面201の稜線203、後側焦線FLおよびシェード23の上縁230の上下両側の部分は、ワイドのロービーム配光パターンWLPの照射に寄与している。
【0043】
第2レンズ20の正面視形状は、図3に示すように、左右方向の長さが上下方向の長さよりも長い横長形状をなしている。また、第2レンズ20の上下両側の縁は、同じく、図3に示すように、前記の車両Vの左右方向の水平直線に対して、車両Vの内側から外側に行くに従って車両Vの下側から上側に傾斜している。このため、第2レンズ20のワイドのロービーム配光パターンWLPの照射に寄与している部分も、同様に、前記の車両Vの左右方向の水平直線に対して、車両Vの内側から外側に行くに従って車両Vの下側から上側に変位している。
【0044】
(ヒートシンク3の説明)
ヒートシンク3は、熱伝導率が高い部材、この例では、アルミダイカスト製の部材から構成されていて、板状のベース部31、32と、フィン部33とから構成されている。ベース部31、32は、車両Vの内側の第1ベース部31と、車両Vの外側の第2ベース部32と、からなる。第1ベース部31と第2ベース部32とは、前記の車両Vの内側と外側に、配置されている。フィン部33は、ベース部31、32の下面に一体に設けられている。第1ベース部31の上面には、第1ランプユニット1が取り付けられている。第2ベース部32の上面には、第2ランプユニット2が取り付けられている。
【0045】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0046】
第1ランプユニット1の第1光源が、点灯される。すると、第1ランプユニット1の第1レンズ10から、図7に示す集光配光パターンとしてのスポットのロービーム配光パターンSLPが、車両Vの前方に照射される。
【0047】
一方、第2ランプユニット2の第2光源21が、点灯される。すると、第2ランプユニット2の第2光源21からの光L1の一部は、第2リフレクタ22の反射面220で、反射光L2として、第2シェード23および第2レンズ20側に反射される。その反射光L2の一部は、第2シェード23で遮蔽され、第2シェード23で遮蔽されなかった反射光L2は、第2レンズ20を透過して、図8に示す拡散配光パターンとしてのワイドのロービーム配光パターンWLPとして、車両Vの前方に照射される。ここで、第2ランプユニット2の第2ランプ軸Z2は、第1ランプユニット1の第1ランプ軸Z1、すなわち、車両Vの前後方向の番線に対して車両Vの外側に向いている。この結果、図8に示すワイドのロービーム配光パターンWLPにおいて、右端が右側約49°に位置し、左端が左側約38°に位置し、全体が右側に変位している。なお、左側の車両用前照灯100Lから照射されるワイドのロービーム配光パターンは、左側に変位している。
【0048】
そして、このワイドのロービーム配光パターンWLPと前記のスポットのロービーム配光パターンSLPとは、重畳されて、図9に示す所定のロービーム配光パターンLPが形成される。ワイドのロービーム配光パターンWLPとスポットのロービーム配光パターンSLPとは、ロービーム配光パターンLPの一部である。
【0049】
なお、図7から図9に示すロービーム配光パターンSLP、WLP、LPは、右側の車両用前照灯100Rから照射されるロービーム配光パターンである。左側の車両用前照灯100Lから照射されるロービーム配光パターンは、図7から図9に示すロービーム配光パターンSLP、WLP、LPを、左右反転させたロービーム配光パターンである。そして、左側の車両用前照灯100Lから照射されるロービーム配光パターンと、右側の車両用前照灯100Rから照射されるロービーム配光パターンLPとが重畳されて、全体のロービーム配光パターンが形成される。
【0050】
第1光源と第2光源21の点灯時において、第1フレーム14、第2フレーム24は、第1光源、第2光源21からの光L1、および、第1リフレクタ12、第2リフレクタ22からの反射光L2が第1レンズ10、第2レンズ20に入射するまでの間において、外部に漏れるのを防ぐ。
【0051】
第1光源、第2光源21の点灯に伴って、第1光源、第2光源21において発生する熱は、ヒートシンク3の第1ベース部31、第2ベース部32、フィン部33から外部に放出される。
【0052】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rは、以上のごとき構成、作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0053】
この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rは、ランプハウジング101およびランプレンズ102により形成されている灯室103内に、少なくとも第2ランプユニット2が、配置されている、ものである。第2ランプユニット2は、第2光源21と、第2リフレクタ22と、第2シェード23と、第2レンズ20と、を有する。第2レンズ20の後側焦点距離は、第2レンズ20の縦断面において左右の縦断面ごとに異なっている。これにより、第2レンズ20は、出射面201の平面視形状を、ランプレンズ102の表面の平面視形状(車両前端部のコーナ部の傾斜(スラント)形状あるいは回り込んだ形状)に沿った形状に、形成しても、ロービーム配光パターンの一部であるワイドのロービーム配光パターンWLPを車両Vの前方に照射することができる。この結果、この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rは、第2レンズ20の出射面201の平面視形状がランプレンズ102の表面の平面視形状に沿うものであるから、投影レンズの出射面の平面視形状が透光カバーの平面視形状に沿っていない特許文献1の車両用前照灯と比較して、優れた意匠性を持つ。
【0054】
この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rにおいて、第2レンズ20の後側焦点は、第2シェード23の上縁230に沿って後側焦線FLを形成し、第2シェード23の上縁230は、車両Vの左右方向に伸びる直線に沿って形成されている。この結果、この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rは、第2レンズ20の後側焦線FLと第2シェード23の上縁230とにより、ロービーム配光パターンの一部であるワイドのロービーム配光パターンWLPの設計や制御を容易にかつ高精度に行うことができる。
【0055】
このように、この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rは、優れた意匠性を持つと共に、ワイドのロービーム配光パターンWLPの設計や制御を容易にかつ高精度に行うことができる。
【0056】
この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rにおいて、第2レンズ20は、非球面レンズである。第2レンズ20の縦断面の入射面200側と出射面201側とは、共に凸曲線をなしている。入射面200側の凸曲線の頂点、出射面201側の凸曲線の頂点は、車両Vの左右方向に伸びる入射面200側の稜線202、出射面201側の稜線203を形成する。入射面200側の稜線202、出射面201側の稜線203、後側焦線FLおよび第2シェード23の上縁230は、車両用前照灯100Rの正面視において、一致する。この結果、この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rは、前記の構成からなる第2レンズ20と第2シェード23により、ワイドのロービーム配光パターンWLPの設計や制御を高精度にかつ容易に行うことができる。
【0057】
この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rにおいて、反射面220は、回転楕円面を基調とする。反射面220の回転軸(第2ランプ軸Z2)を含む中央部分からの反射光L2は、後側焦線FLの反射面220の回転軸を含む中央部分においてクロスして左右に広がって進む。反射面220の中央部分に対して左側部分からの反射光L2は、後側焦線FLの中央部分に対して左側部分を通過して右に広がって進む。反射面220の中央部分に対して右側部分からの反射光L2は、後側焦線FLの中央部分に対して左側部分を通過して左に広がって進む。この結果、この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rは、前記の構成からなる第2リフレクタ22により、左右方向に広がるワイドのロービーム配光パターンWLPを照射するのに最適である。
【0058】
また、この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rにおいて、第2レンズ20の正面視形状は、左右方向の長さが上下方向の長さよりも長い横長形状をなしている。この結果、この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rは、後側焦線FLの中央においてクロスして左右に広がって進む反射光L2、および、後側焦線FLの左、右を通過して右、左に広がって進む反射光L2を、横長形状の第2レンズ20の入射面200に、入射させることができ、第2レンズ20を透過せずに外部に出射する迷光を防ぐことができる。
【0059】
この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rにおいて、車両用ランプユニット装置10L、10Rは、集光配光パターンとしてのスポットのロービーム配光パターンSLPを照射する第1ランプユニット1と、拡散配光パターンとしてのワイドのロービーム配光パターンWLPを照射する第2ランプユニット2と、を有する。第2ランプユニット2は、第1ランプユニット1に対して、車幅方向外側に配置されている。この結果、この実施形態にかかる車両用前照灯100L、100Rは、車幅方向外側に配置されている第2ランプユニット2により、ワイドのロービーム配光パターンWLPを照射するのに最適であり、一方、車幅方向内側に配置されている第1ランプユニット1により、スポットのロービーム配光パターンSLPを照射するのに最適である。
【0060】
(実施形態以外の例の説明)
なお、前記の実施形態において、第2レンズ20の出射面201の平面視形状は、ランプレンズ102の表面の平面視形状に沿った形状をなしていて、この例では、なだらかなS字形状をなしている。しかしながら、この発明においては、第2レンズ20の出射面201の平面視形状を、前記のなだらかなS字形状のみに限定されない。たとえば、曲線、直線、曲線と直線との組み合わせた線形状であっても良い。
【0061】
この発明は、前記の実施形態により限定されるものではない。
【符号の説明】
【0062】
1 第1ランプユニット
10 第1レンズ
12 第1リフレクタ
14 第1フレーム
2 第2ランプユニット
20 第2レンズ
200 入射面
201 出射面
202 稜線
203 稜線
21 第2光源
22 第2リフレクタ
220 反射面
23 第2シェード
230 上縁
24 第2フレーム
3 ヒートシンク
31 第1ベース部
32 第2ベース部
33 フィン部
10L、10R 車両用ランプユニット装置
100L、100R 車両用前照灯
101 ランプハウジング
102 ランプレンズ
103 灯室
B 後
CL11 斜めカットオフライン
CL12 上水平カットオフライン
CL13 下水平カットオフライン
CL20 水平カットオフライン
D 下
E エルボー点
F 前
FL 後側焦線
HL-HR 左右水平線
L 左
L1 光
L2 反射光
L3 入射光
L4 出射光
LP ロービーム配光パターン
R 右
SLP スポットのロービーム配光パターン
U 上
V 車両
VU-VD 上下垂直線
WLP ワイドのロービーム配光パターン
Z1 第1ランプ軸
Z2 第2ランプ軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9