(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047250
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 3/00 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
B62D3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152772
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祥史
(72)【発明者】
【氏名】ルンワシラア キッティポン
(72)【発明者】
【氏名】今関 太一
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フレーム座面に対するマウント座面の保持力を確保しやすいステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリング装置のハウジング2は、直動シャフト12の収容部15と、収容部15において、いずれか一方のタイロッド10に近い部分に固定されるマウント部16とを有する。マウント部16は、ボルトの軸部が挿通されるボルト孔26と、ボルトの軸力によってフレームのフレーム座面に押し付けられるマウント座面とを有する。マウント座面は、ボルト孔26の軸方向に凹んだ凹溝31を有する。凹溝31は、その幅方向両側の開口縁部に溝エッジ部32を有する。凹溝31は、ボルト孔26の軸方向から見て、前記一方のタイロッド10の伸長方向に対して非平行に配置される部分を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフレームに支持されるハウジングを備え、
前記ハウジングは、軸方向両側の端部に1対のタイロッドが揺動可能に連結される直動シャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、前記収容部において、前記1対のタイロッドを構成するそれぞれのタイロッドのうち、いずれか一方のタイロッドに近い部分に固定され、かつ、ボルトを用いて前記フレームに結合されるマウント部とを有し、
前記マウント部は、前記ボルトの軸部が挿通されるボルト孔と、該ボルト孔の前記フレームに近い側の開口部の周囲に存在し、前記ボルトの軸力によって前記フレームに備えられたフレーム座面に押し付けられるマウント座面とを有し、
前記マウント座面は、前記ボルト孔の軸方向に凹んだ凹溝を有し、
前記凹溝は、その幅方向両側の開口縁部に溝エッジ部を有しており、
前記凹溝は、前記ボルト孔の軸方向から見て、前記一方のタイロッドの伸長方向に対して非平行に配置される部分を有する、
ステアリング装置。
【請求項2】
前記凹溝は、前記マウント部の内周面および外周面のうちの少なくともいずれか一方に開口している、請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記凹溝は、前記マウント部の内周面および外周面のうちのいずれにも開口していない、請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記凹溝は、前記ボルト孔の中心軸を中心とする環状に構成されている、請求項3に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記凹溝のうち、前記ボルト孔の軸方向から見て、前記一方のタイロッドの伸長方向に対して非平行に配置される部分は、直線部分を含む、請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記直線部分は、前記ボルト孔の軸方向から見て、車両の直進状態での前記一方のタイロッドの伸長方向に対して直交する方向に配置されている、請求項5に記載のステアリング装置。
【請求項7】
前記マウント部は、複数備えられており、
該複数のマウント部のうちの少なくとも2つのマウント部に関して、前記マウント座面の形状がそれぞれ等しく、かつ、前記ボルト孔の中心軸を中心とする前記マウント座面の回転方向の配置の位相がそれぞれ異なっている、
請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項8】
前記マウント部は、複数備えられており、
該複数のマウント部のうちの少なくとも2つのマウント部に関して、前記マウント座面の形状がそれぞれ異なっている、
請求項1に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、操舵輪に舵角を付与するステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリング装置は、運転者が操作するステアリングホイールの回転運動を、ステアリングシャフト、中間シャフトなどを介して、ステアリングギヤユニットのピニオンシャフトに伝達し、さらに、ピニオンシャフトの回転運動を、ステアリングギヤユニットのラックシャフトの直線運動に変換することに基づいて、左右の操舵輪に舵角を付与するように構成されている。
【0003】
すなわち、ラックシャフトの軸方向両側の端部に、1対のタイロッドの基端部が揺動可能に連結されており、1対のタイロッドの先端部に、左右の操舵輪が組み付けられるナックルが揺動可能に連結されている。これにより、ラックシャフトが直線運動することに伴い、1対のタイロッドが押し引きされることで、左右の操舵輪に舵角が付与される。
【0004】
ステアリングギヤユニットは、ハウジングを備える。該ハウジングは、直動シャフトであるラックシャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、該収容部に固定され、かつ、ボルトを用いて車両のフレームに結合される少なくとも1つのマウント部とを備える。すなわち、ステアリングギヤユニットは、ボルトを用いてマウント部を前記車両のフレームに結合することにより、該フレームに支持される。
【0005】
マウント部は、ボルトの軸部が挿通されるボルト孔と、該ボルト孔のフレームに近い側の開口部の周囲に存在し、ボルトの軸力によってフレームに備えられたフレーム座面に押し付けられるマウント座面とを有する。なお、ボルトの軸力とは、ボルトを雌ねじ孔に螺合すること、あるいは、ボルトにナットを螺合することにより、軸方向に関して弾性的に伸びたボルトの軸部が元に戻ろうとする力をいう。
【0006】
フレームに対するマウント部の結合作業を容易にする観点から、マウント部のボルト孔の内径は、ボルトの軸部の外径よりも大きく設定されている。このため、ボルト孔の内周面とボルトの軸部の外周面との間には隙間が存在する。したがって、該隙間の存在に基づいて、マウント部がフレームに対してボルトの中心軸に直交する方向に移動することが可能となり、フレームに対するマウント部のがたつきの発生の原因となる。しかしながら、このようなフレームに対するマウント部の移動は、フレーム座面とマウント座面との間に作用する摩擦力によって抑制される。
【0007】
特開2021-185069号公報には、フレーム座面とマウント座面との間に作用する摩擦力を増大させるために、マウント座面の全面に微細な凹凸形状を形成した構造が記載されている。この構造では、凹凸形状を構成する突条、突部などの微細な凸部を、フレーム座面に施された皮膜に食い込ませている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開2021-185069号公報に記載された従来構造では、マウント座面に設けられた微細な凹凸形状は、加工により形成されており、かつ、該凹凸形状を含むマウント座面の表面粗さ(算術平均粗さRa)が製品仕様として要求される表面粗さとなるように設定されており、かつ、該凹凸形状を構成する凸部をフレーム座面の皮膜に食い込ませている。このため、前記凸部の幅や高さは、数μmから数十μm程度であると考えられる。
【0010】
この従来構造では、凹凸形状が小さいため、摩擦力を増大させる効果はあるものの、ステアリング装置の製造過程における、その管理を適切に行うことは困難である。通常、マウント部を含むハウジングは、軽量化のためにアルミニウム合金などの軽合金製であるのに対し、車両のフレームは、十分な強度および剛性を確保するために鋼製である。かかる場合、微細な凹凸形状は、締結時にボルトの軸力により潰れる可能性が高いと考えられる。このように、微細な凹凸形状が潰れて、マウント座面の全体が平滑な平坦面に変化することによって、フレーム座面に対するマウント座面の保持力を十分に確保できないと考えられる。
【0011】
本開示は、フレーム座面に対するマウント座面の保持力を確保しやすいステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様のステアリング装置は、車両のフレームに支持されるハウジングを備える。前記ハウジングは、軸方向両側の端部に1対のタイロッドが揺動可能に連結される直動シャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、前記収容部において、前記1対のタイロッドを構成するそれぞれのタイロッドのうち、いずれか一方のタイロッドに近い部分に固定され、かつ、ボルトを用いて前記フレームに結合されるマウント部とを有する。
【0013】
前記マウント部は、前記ボルトの軸部が挿通されるボルト孔と、該ボルト孔の前記フレームに近い側の開口部の周囲に存在し、前記ボルトの軸力によって前記フレームに備えられたフレーム座面に押し付けられるマウント座面とを有する。
【0014】
前記マウント座面は、前記ボルト孔の軸方向に凹んだ凹溝を有する。前記凹溝は、その幅方向両側の開口縁部に溝エッジ部を有する。前記凹溝は、前記ボルト孔の軸方向から見て、前記一方のタイロッドの伸長方向に対して非平行に配置される部分を有する。
【0015】
本開示の一態様のステアリング装置では、前記凹溝は、前記マウント部の内周面および外周面のうちの少なくともいずれか一方に開口している。
【0016】
本開示の一態様のステアリング装置では、前記凹溝は、前記マウント部の内周面および外周面のうちのいずれにも開口していない。
【0017】
この場合には、たとえば、前記凹溝を、前記ボルト孔の中心軸を中心とする環状に構成することができる。
【0018】
本開示の一態様のステアリング装置では、前記凹溝のうち、前記ボルト孔の軸方向から見て、前記一方のタイロッドの伸長方向に対して非平行に配置される部分は、直線部分を含む。
【0019】
この場合には、たとえば、前記直線部分を、前記ボルト孔の軸方向から見て、車両の直進状態での前記一方のタイロッドの伸長方向に対して直交する方向に配置することができる。
【0020】
本開示の一態様のステアリング装置では、前記マウント部は、複数備えられており、該複数のマウント部のうちの少なくとも2つのマウント部に関して、前記マウント座面の形状がそれぞれ等しく、かつ、前記ボルト孔の中心軸を中心とする前記マウント座面の回転方向の配置の位相がそれぞれ異なっている。
【0021】
本開示の一態様のステアリング装置では、前記マウント部は、複数備えられており、該複数のマウント部のうちの少なくとも2つのマウント部に関して、前記マウント座面の形状がそれぞれ異なっている。
【0022】
本開示のステアリング装置は、上述した各態様の構成を、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の一態様のステアリング装置によれば、凹溝の溝エッジ部によりエッジロードを確実に発生させることで、フレーム座面に対するマウント座面の保持力を確保しやすく、フレームに対してマウント部が移動することを抑制しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態の第1例のステアリング装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1例のステアリング装置を構成するハウジングおよびその周辺部分を上方から見た平面図である。
【
図5】
図5(a)は、第1例におけるマウント部の側面図であり、
図5(b)は、
図5(a)の下方から見た図である。
【
図6】
図6は、比較例についての
図5(b)に相当する図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、第1例におけるマウント部のマウント座面を形成する際に適用可能な形成方法を工程順に示す部分断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態の第2例についての
図2に相当する図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、本開示の実施の形態の第3例についての
図5(a)および
図5(b)に相当する図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態の第4例についての
図5(b)に相当する図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施の形態の第5例についての
図5(b)に相当する図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施の形態の第6例についての
図5(b)に相当する図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施の形態の第7例についての
図5(b)に相当する図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施の形態の第8例についての
図5(b)に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1例]
本開示の実施の形態の第1例のステアリング装置について、
図1~
図5を用いて説明する。
【0026】
本開示のステアリング装置は、各種方式のステアリング装置に適用可能であるが、本例では、操舵力伝達経路の全体が機械的につながっているマニュアル式のステアリング装置に、本開示のステアリング装置を適用する場合について説明する。
【0027】
本例のステアリング装置1(
図1参照)は、車体のフレーム3(
図4参照)に支持されるハウジング2を備える。
【0028】
本例では、ハウジング2は、直動装置であるステアリングギヤユニット4(
図1~
図3参照)を構成する部材である。
【0029】
本例では、ステアリング装置1は、ハウジング2を含んで構成されるステアリングギヤユニット4のほか、ステアリングホイール5と、ステアリングシャフト6と、ステアリングコラム7と、1対の自在継手8a、8bと、中間シャフト9と、1対のタイロッド10とを備える。なお、以下の説明中、ステアリング装置1において、前後方向は、車両の前後方向を意味する。
図2では、下側が前側であり、上側が後側である。
【0030】
ステアリングホイール5は、ステアリングシャフト6の後端部に取り付けられている。ステアリングシャフト6は、車体に支持されたステアリングコラム7の内側に、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト6の前端部は、自在継手8a、中間シャフト9、および別の自在継手8bを介して、ステアリングギヤユニット4を構成するピニオンシャフト11に接続されている。ピニオンシャフト11は、ステアリングギヤユニット4を構成する直動シャフトであるラックシャフト12に噛合している。1対のタイロッド10を構成するそれぞれのタイロッド10の基端部は、ラックシャフト12の軸方向両側の端部に、ボールジョイント13を介して揺動可能に連結されている。該タイロッド10の先端部は、左右の操舵輪が組み付けられるナックルに揺動可能に連結される。
【0031】
運転者がステアリングホイール5を回転操作すると、ステアリングホイール5の回転は、ステアリングシャフト6と、自在継手8aと、中間シャフト9と、自在継手8bとを介して、ピニオンシャフト11に伝達される。そして、ピニオンシャフト11の回転が、ラックシャフト12の直線運動に変換されることにより、1対のタイロッド10が押し引きされることで、左右の操舵輪に舵角が付与される。
【0032】
本例のステアリング装置1は、電動パワーステアリング装置であり、運転者がステアリングホイール5を操作するのに要する力を軽減するための電動アシスト装置14をさらに備える。本例では、電動アシスト装置14は、ステアリングシャフト6に補助動力を付与する。ただし、電動アシスト装置により、ステアリングギヤユニットを構成するピニオンシャフトやラックシャフトに補助動力を付与することもできる。
【0033】
本開示のステアリング装置は、運転者が操作する上流側操舵部と操舵輪に舵角を付与する下流側操舵部とが機械的に切り離されて電気的に接続されたステアバイワイヤ式のステアリング装置に適用することもできる。この場合、ハウジングおよび直動シャフトを備えた直動装置は、前記下流側操舵部に組み込まれる。
【0034】
ハウジング2は、収容部15と、少なくとも1つ(本例では2つ)のマウント部16とを備える。収容部15は、ラックシャフト12を軸方向の移動可能に収容する部分である。マウント部16は、収容部15において、いずれか一方のタイロッド10に近い部分に固定され、かつ、ボルト17(
図4参照)を用いて車両のフレーム3に結合される部分である。すなわち、ステアリングギヤユニット4は、ボルト17を用いてマウント部16をフレーム3に結合することにより、該フレーム3に支持される。
【0035】
本開示のステアリング装置を実施する場合には、ハウジング2に必要とされる強度および剛性を確保できる限り、ハウジング2の材質として、各種金属を採用可能である。本例では、軽量化の観点から、ハウジング2の材質として、アルミニウム合金などの軽合金を採用している。より具体的には、本例では、ハウジング2は、アルミニウム合金などの軽合金をダイキャスト成形することにより一体的に造られている。
【0036】
本例では、収容部15は、ラック収容部18と、ピニオン収容部19と、ガイド収容部20とを備える。
【0037】
ラック収容部18は、円筒形状を有しており、その内側にラックシャフト12の軸方向中間部を収容する。ラック収容部18は、車両の幅方向に伸長するように配置される。ラックシャフト12は、ラック収容部18に対し、軸方向に離隔して配置されたラックガイド21(
図3参照)およびラックブッシュ22により、径方向のがたつきを防止された状態で軸方向の移動可能に支持されている。
【0038】
ピニオン収容部19は、上端部が開口した有底円筒形状を有しており、その内側にピニオンシャフト11の先半部を収容する。ピニオン収容部19は、ラック収容部18の前側かつ上側で、ラック収容部18の軸方向一方側(
図2の左側)に寄った位置に配置されている。ピニオン収容部19の中心軸は、ラック収容部18の中心軸に対して、ねじれの位置に配置されている。ピニオンシャフト11は、ピニオン収容部19に対し、軸方向に離隔して配置された1対の軸受23a、23bにより、回転可能に支持されている。
【0039】
ガイド収容部20は、円筒形状を有しており、その内側にラックガイド21を収容する。ガイド収容部20は、ラック収容部18のうち、ピニオン収容部19に対して径方向反対側に位置する箇所に配置されている。ガイド収容部20の中心軸は、ラック収容部18の中心軸に対して直交している。ラックガイド21は、ラックシャフト12の外周面のうち、ピニオンシャフト11が噛合した部分に対して径方向反対側に位置する部分を、ピニオンシャフト11に向けて押圧する。これにより、ピニオンシャフト11とラックシャフト12との噛合状態が適正に維持される。
【0040】
本開示のステアリング装置を、直動シャフトに補助動力を付与する電動パワーステアリング装置に適用する場合には、ハウジングの収容部に、直動シャフトに対して補助動力を付与する機構を収容する部分を設けることができる。本開示のステアリング装置を、ステアバイワイヤ式のステアリング装置に適用する場合には、ハウジングの収容部に、直動シャフトに対して動力を付与する機構を収容する部分を設けることができる。
【0041】
本例では、マウント部16は、ラック収容部18の軸方向両側の端部に1つずつ固定されている。具体的には、それぞれのマウント部16は、ラック収容部18の軸方向両側の端部の前側部に、連結部24を介して固定されている。なお、本開示のステアリング装置を実施する場合、マウント部の個数、および、収容部に対するマウント部の固定箇所は、任意に設定することができる。
【0042】
マウント部16は、ボルト孔26と、マウント座面28とを有する。ボルト孔26は、ボルト17(
図4参照)の軸部25が挿通される部分である。マウント座面28は、ボルト孔26のフレーム3に近い側の開口部の周囲に存在し、ボルト17の軸力によってフレーム3に備えられたフレーム座面27に押し付けられる部分である。
【0043】
本例では、マウント部16は、円筒形状を有し、かつ、その中心軸が上下方向に伸長するように配置されている。本例では、ボルト孔26は、マウント部16の径方向中央部を軸方向に貫通する中心孔により構成されている。本例では、マウント座面28は、マウント部16の下端面により構成されており、円輪形状を有する。
【0044】
マウント部16は、内周面および外周面を有する。したがって、マウント座面28の内周縁部には、マウント部16がフレーム3に結合された状態でフレーム座面27と係合する内周エッジ部33が存在し、かつ、マウント座面28の外周縁部には、マウント部16がフレーム3に結合された状態でフレーム座面27と係合する外周エッジ部34が存在する。これらの内周エッジ部33および外周エッジ部34は、フレーム座面27と係合することにより、エッジロードを発生させる。
【0045】
マウント座面28は、ボルト孔26の軸方向に凹んだ凹溝31を有する。マウント座面28のうち、凹溝31から外れた部分は、ボルト孔26の中心軸に対して直交する仮想平面内に存在する平坦面部35により構成されている。本例では、
図5(b)に示すように、マウント座面28をボルト孔26の軸方向から見た場合に、平坦面部35が存在する部分の面積は、凹溝31が存在する部分の面積よりも広い。
【0046】
凹溝31は、その幅方向両側の開口縁部に溝エッジ部32を有する。溝エッジ部32は、マウント部16がフレーム3に結合された状態でフレーム座面27と係合することにより、エッジロードを発生させて、その分、フレーム座面27に対するマウント座面28の保持力、すなわちフレーム3に対してマウント部16を固定する力を向上させて、フレーム3に対するマウント部16のがたつきを抑制する機能を発揮する。なお、溝エッジ部32は、ピン角、すなわち先がとがった角部により構成されていることが好ましい。溝エッジ部32には、意図的なR面取りは付されていない。溝エッジ部32は、作り方によっては、多少のバリが残ったり、意図的でないが多少の面取りが付されたり、使用に伴って変形したりすることがあるかもしれない。いずれにしても、溝エッジ部32は、フレーム座面27との接触部にエッジロードを発生させるエッジ形状を有していればよい。
【0047】
本例の構造を実施する場合には、凹溝31の形状管理ができ、かつ、上述のエッジロードの発生の効果を得られる限り、凹溝31の深さDg(
図5(a)参照)は、特に限定されることはないが、たとえば、0.5mm以上とすることができ、好ましくは2mm以上とすることができ、より好ましくは5mm以上とすることができる。
【0048】
本例では、マウント座面28は、凹溝31を2つ備える。2つの凹溝31は、マウント座面28の径方向反対側となる2箇所に配置されている。
【0049】
それぞれの凹溝31は、マウント座面28の中心軸を中心とする放射方向に伸長している。したがって、本例では、それぞれの凹溝31の溝エッジ部32は、該凹溝31の伸長方向に伸長する直線形状を有する。
【0050】
さらに、本例では、それぞれの凹溝31の伸長方向の両側の端部は、マウント部16の内周面および外周面に開口している。したがって、それぞれの凹溝31の溝エッジ部32は、マウント座面28の内周エッジ部33と外周エッジ部34とに、それぞれ接続されるように配置されている。
【0051】
なお、本開示のステアリング装置を実施する場合には、たとえば凹溝の伸長方向の端部を、マウント部の内周面と外周面とのいずれか一方にのみ開口させること、すなわち、溝エッジ部を、内周エッジ部と外周エッジ部とのうちのいずれか一方にのみ接続させることもできる。
【0052】
マウント部16のそれぞれの溝エッジ部32は、
図2に示すように、ボルト孔26の軸方向から見て、該マウント部16に近い側のタイロッド10の伸長方向に対して非平行に配置される部分を有する。なお、マウント部16に近い側のタイロッド10とは、
図1および
図2において、左側のマウント部16に対する左側のタイロッド10であり、右側のマウント部16に対する右側のタイロッド10である。
【0053】
ここで、それぞれのタイロッド10の伸長方向は、ラックシャフト12の伸長方向に対して傾斜している。また、ステアリング装置1の操舵操作に伴い、それぞれのタイロッド10は、ラックシャフト12に対して揺動する。このため、それぞれのタイロッド10の伸長方向は、該揺動に伴って変化する。本例では、マウント部16のそれぞれの凹溝31は、ボルト孔26の軸方向から見て、該マウント部16に近い側のタイロッド10の伸長方向の揺動変化に関わらず、常に、該伸長方向に対して非平行となるように配置されている。
【0054】
このために、本例では、マウント部16のそれぞれの凹溝31は、ボルト孔26の軸方向から見て、該マウント部16に近い側のタイロッド10の伸長方向のうち、車両の直進状態での伸長方向Dtに対して直交する方向に配置されている。
【0055】
すなわち、本例では、2つのマウント部16に関して、マウント座面28の形状が互いに等しく、かつ、ボルト孔26の中心軸を中心とするマウント座面28の回転方向の配置の位相が互いに異なっている。
【0056】
本例では、フレーム3は、鋼製である。フレーム3は、それぞれのマウント部16を結合する部分の上面に、平坦面により構成されたフレーム座面27を有する。本例では、フレーム座面27に皮膜が施されていない。すなわち、フレーム座面27は、フレーム3の材質である鋼の表面により構成されている。ただし、本開示のステアリング装置を実施する場合には、フレーム座面に、カチオン電着塗装などによる皮膜を施すこともできる。フレーム3は、上下方向に伸長し、かつ、上端部がフレーム座面27に開口したボルト孔29を有する。本例では、ボルト孔29は、ボルト17の軸部25を螺合させる雌ねじ孔により構成されている。
【0057】
本例では、マウント部16は、
図4に示すようにフレーム3に結合される。マウント部16をフレーム3に結合する際には、マウント部16のマウント座面28を、フレーム3のフレーム座面27に接触させた状態で、ボルト17の軸部25を、マウント部16のボルト孔26に上方から挿通し、かつ、フレーム3のボルト孔29に螺合して、ボルト17の頭部30を、マウント部16の上端面に接触させる。そして、ボルト17を締め付けることにより、ボルト17の軸力を発生させることで、マウント部16をフレーム3に結合する。この状態で、マウント座面28がフレーム座面27に強く押し付けられることにより、平坦面部35、それぞれの溝エッジ部32、内周エッジ部33、および外周エッジ部34が、フレーム座面27に強く接触する。
【0058】
ステアリング装置1の操舵操作を行う際に、それぞれのマウント部16には、該マウント部16に近い側のタイロッド10から、該タイロッド10の伸長方向に沿う方向の反力が作用する。したがって、このような反力に起因して、該マウント部16がフレーム3に対して、ボルト孔26の軸方向から見て、該タイロッド10の伸長方向に沿う方向へ移動しようとする。一方、フレーム3に対するマウント部16の結合作業を容易にする観点から、該マウント部16のボルト孔26の内径は、ボルト17の軸部25の外径よりも大きく設定されている。このため、ボルト孔26の内周面と軸部25の外周面との間には隙間が存在する。したがって、該隙間の存在に基づいて、該マウント部16がフレーム3に対して、ボルト孔26の軸方向から見て、該タイロッド10の伸長方向に沿った方向へ移動する可能性がある。
【0059】
この点に関して、本例の構造では、フレーム座面27とマウント座面28との接触部において、溝エッジ部32により確実にエッジロードを発生させるとともに、その分だけエッジロードを増大させている。また、凹溝31および溝エッジ部32を明確に構成していることから、ステアリング装置の製造工程におけるエッジロードの管理を適切に行うことが可能である。よって、フレーム座面27に対するマウント座面28の保持力を確保しやすく、フレーム3に対してマウント部16が移動してがたつくことを抑制しやすい。
【0060】
すなわち、フレーム座面27とマウント座面28との接触部において、ボルト孔26の軸方向から見て、タイロッド10の伸長方向に沿う方向の反力を効率良く受けることができる箇所は、マウント座面28のエッジ部が存在する箇所となる。この理由は、フレーム座面27とマウント座面28との接触部において、エッジ部が存在する箇所では、エッジロードが作用することにより、該箇所の摩擦力が他の箇所に比べて大きくなるためである。また、タイロッド10の伸長方向に対して非平行に配置されたエッジ部が存在する箇所では、より効率良く反力を受けることができる。特に、タイロッド10の伸長方向に対する傾斜角度が直角に近いエッジ部が存在する箇所では、さらに効率良く反力を受けることができる。
【0061】
本例では、フレーム座面27とマウント座面28との接触部において、ボルト孔26の軸方向から見て、タイロッド10の伸長方向に沿う方向の反力を効率良く受けることができる箇所は、内周エッジ部33、外周エッジ部34、およびそれぞれの溝エッジ部32が存在する箇所となる。
【0062】
内周エッジ部33および外周エッジ部34では、ボルト孔26の軸方向から見て、タイロッド10の伸長方向の両側に位置する部分、たとえば
図5(b)において破線を添えて示した部分が、該タイロッド10の伸長方向(
図5(b)における白抜き矢印の方向)に対する傾斜角度が直角に近い部分となる。したがって、該部分が存在する箇所で、特に効率良く反力を受けることができる。
【0063】
本例では、それぞれの凹溝31、および、該凹溝31のそれぞれの溝エッジ部32は、ボルト孔26の軸方向から見て、該マウント部16に近い側のタイロッド10の伸長方向のうち、車両の直進状態での伸長方向Dtに対して直交する方向に配置されている。このため、本例では、操舵操作に伴って該タイロッド10の伸長方向が揺動変位する場合でも、該タイロッド10の伸長方向に対するそれぞれの溝エッジ部32の全体の傾斜角度を、直角に近づけて大きくすることができる。したがって、本例では、それぞれの溝エッジ部32のうち、
図5(b)において破線を添えて示した部分、すなわち、それぞれの溝エッジ部32の全体が存在する箇所で、特に効率良く反力を受けることができる。
【0064】
本例の構造では、
図6に示すような、マウント部16zのマウント座面28zに凹溝を有しておらず、該マウント座面28zに溝エッジ部が存在しない比較例の構造に比べて、溝エッジ部32が存在する分、マウント部16がフレーム3に対して、ボルト孔26の軸方向から見て、タイロッド10の伸長方向に沿った方向へ移動することを抑制しやすい。
【0065】
本例の構造では、フレーム座面27に皮膜が施されていないが、フレーム座面に皮膜が施されている場合でも、本例と同様の作用により、フレーム座面に対するマウント座面28の保持力を確保しやすい。
【0066】
本例の構造では、マウント座面28をボルト孔26の軸方向から見た場合に、平坦面部35が存在する部分の面積を、凹溝31が存在する部分の面積よりも広くしている。このため、マウント座面28のうち平坦面部35が存在する部分が、フレーム座面27に強く押し付けられることによって押し潰されることを防止しやすい。
【0067】
本例の構造では、マウント座面28に設けられた凹溝31の深さDg(
図5(a)参照)を、少なくとも0.5mm以上確保している。このため、仮に、マウント座面28のうち凹溝31から外れた部分に位置する平坦面部35が、フレーム座面27との擦れ合いにより摩耗したとしても、凹溝31が消失すること、すなわち溝エッジ部32が消失することを有効に防止できる。したがって、フレーム座面27に対するマウント座面28の保持力を長期にわたり大きく維持することができる。
【0068】
なお、本例のステアリング装置1を車両に組み付ける場合には、フレーム3のボルト孔29を、ボルト17の軸部25を挿通するための挿通孔とすることもできる。この場合には、ボルト17の軸部25を、それぞれのボルト孔26、29に上側または下側から挿通し、かつ、これらのボルト孔26、29から突出した軸部25の先端部にナットを螺合し、さらに締め付けることによって、マウント部16をフレーム3に結合することができる。
【0069】
本例では、ハウジング2を製造する際に、ダイキャスト成形のみによって、凹溝31を有するマウント座面28を完成させる。このため、ハウジング2の製造コストを抑えることができる。
【0070】
なお、本例のように、ダイキャスト成形のみによって、凹溝31を有するマウント座面28を完成させる場合には、
図7(a)に誇張して示すように、凹溝31の幅方向両側の開口縁部に存在する溝エッジ部32が、シャープなエッジ形状ではなく、R形状になりやすい。一方、溝エッジ部32は、シャープなエッジ形状を有していた方が、フレーム座面27との接触部に作用するエッジロードが大きくなりやすく、該接触部においてタイロッド10からの反力を受けやすい。
【0071】
そこで、本開示のステアリング装置を実施する場合には、次のようにして、マウント座面を形成することもできる。まず、第1例と同様、ダイキャスト成形によって、
図7(a)に示すように、凹溝31を有するマウント座面28を形成する。次いで、
図7(b)から
図7(c)の順に示すように、マウント座面28の表層部、具体的には
図7(b)の破線よりも上側に位置する部分であって、
図7(a)の溝エッジ部32を含む部分を切削により除去する。これにより、
図7(c)に示すように、シャープなエッジ形状を有する溝エッジ部32を備えたマウント座面28を完成させることができる。ただし、本開示の構造を実施する場合、溝エッジ部の形成方法は、これに限定されることはない。
【0072】
[第2例]
本開示の実施の形態の第2例のステアリング装置について、
図8を用いて説明する。
【0073】
本例のハウジング2aでは、ボルト17を用いてフレーム3に結合されるマウント部16(
図4参照)が、ラック収容部18の軸方向両側の端部に2つずつ固定されている。
【0074】
具体的には、本例では、第1例との比較で、ラック収容部18の軸方向両側の端部のうち、前側部(
図8の下側部)だけでなく、後側部(
図8の上側部)にも、それぞれ連結部24を介してマウント部16が固定されている。
【0075】
本例では、ラック収容部18の軸方向一方側(
図8の左側)の端部において、後側に配置されたマウント部16のマウント座面28は、その形状、および、ボルト孔26の中心軸を中心とする回転方向の配置の位相が、前側に配置されたマウント部16のマウント座面28と等しくなっている。
【0076】
本例では、ラック収容部18の軸方向他方側(
図8の右側)の端部において、後側に配置されたマウント部16のマウント座面28は、その形状、および、ボルト孔26の中心軸を中心とする回転方向の配置の位相が、前側に配置されたマウント部16のマウント座面28と等しくなっている。
【0077】
本例では、ハウジング2aに備えられたマウント部16の個数が増えた分、操舵操作時にタイロッド10(
図2参照)からそれぞれのマウント部16に作用する反力を小さく抑えられる。このため、フレーム3に対するそれぞれのマウント部16のがたつきを、より抑制しやすい。本例についてのその他の構成および作用は、第1例と同様である。
【0078】
[第3例]
本開示の実施の形態の第3例のステアリング装置について、
図9(a)および
図9(b)を用いて説明する。
【0079】
本例のハウジングは、第1例のハウジング2、または、第2例のハウジング2aにおいて、複数のマウント部16のうちの少なくとも1つのマウント部16を、
図9(a)および
図9(b)に示すマウント部16aに置換した構造を有する。
【0080】
本例のマウント部16aのマウント座面28aは、第1例および第2例のマウント部16のマウント座面28との比較で、それぞれがマウント部16aの内周面および外周面の双方に開口した2つの凹溝31に追加して、該凹溝31に対して平行に配置された2つの凹溝31aを有する。追加された2つの凹溝31aは、マウント座面28aのうち、ボルト孔26を挟んだ両側部分に配置されており、それぞれの伸長方向両側の端部が、マウント部16aの外周面に開口している。
【0081】
本例では、マウント座面28aに備えられた凹溝31、31aの数、すなわち溝エッジ部32、32aの数が増えた分、フレーム座面27(
図4参照)に対するマウント座面28aの保持力を、より大きくすることができる。なお、本開示のステアリング装置を実施する場合、マウント座面に形成する互いに平行な凹溝の数は、本例よりも多く、または、少なくすることもできる。本例についてのその他の構成および作用は、第1例および第2例と同様である。
【0082】
[第4例]
本開示の実施の形態の第4例のステアリング装置について、
図10を用いて説明する。
【0083】
本例のハウジングは、第1例のハウジング2、または、第2例のハウジング2aにおいて、複数のマウント部16のうちの少なくとも1つのマウント部16を、
図10に示すマウント部16bに置換した構造を有する。
【0084】
本例のマウント部16bのマウント座面28bは、凹溝31を4つ備える。4つの凹溝31は、マウント座面28bの円周方向に間隔をあけて配置されており、図示の例では円周方向に等間隔に配置されている。それぞれの凹溝31は、マウント座面28の中心軸を中心とする放射方向に伸長しており、かつ、伸長方向の両側の端部がマウント部16bの内周面および外周面に開口している。
【0085】
本例では、マウント部16bのそれぞれの凹溝31、すなわち、それぞれの溝エッジ部32は、ボルト孔26の軸方向から見て、該マウント部16bに近い側のタイロッド10(
図2および
図8参照)の伸長方向のうち、車両の直進状態での伸長方向Dtに対して45゜傾斜した方向に配置されている。本例では、マウント部16bのそれぞれの凹溝31のうち、該タイロッド10に近い側(たとえば
図10の左側)に配置された2つの凹溝31の間の開き角αは、操舵操作に伴う該タイロッド10の揺動角度βよりも大きい(α>β)。
【0086】
このため、本例では、操舵操作に伴って該タイロッド10の伸長方向が揺動変位する場合でも、ボルト孔26の軸方向から見て、それぞれの溝エッジ部32が、該タイロッド10の伸長方向に対して常に非平行となる。このため、本例では、フレーム座面27(
図4参照)とマウント座面28bとの接触部のうち、それぞれの溝エッジ部32が存在する部分において、該タイロッド10から作用する反力を効率良く受けることができる。本例についてのその他の構成および作用は、第1例および第2例と同様である。
【0087】
[第5例]
本開示の実施の形態の第5例のステアリング装置について、
図11を用いて説明する。
【0088】
本例のハウジングは、第1例のハウジング2、または、第2例のハウジング2aにおいて、複数のマウント部16のうちの少なくとも1つのマウント部16を、
図11に示すマウント部16cに置換した構造を有する。
【0089】
本例のマウント部16cのマウント座面28cは、凹溝31bを1つ備える。凹溝31bは、ボルト孔26の中心軸を中心とする環状に構成されており、具体的には円環状に構成されている。したがって、本例では、凹溝31bの溝エッジ部32bは、ボルト孔26の中心軸を中心とする円形状を有する。
【0090】
本例では、凹溝31bは、マウント部16cの内周面および外周面に開口していない。したがって、それぞれの溝エッジ部32bは、内周エッジ部33および外周エッジ部34のそれぞれに対して接続されずに配置されている。
【0091】
本例では、それぞれの溝エッジ部32bは、ボルト孔26の軸方向から見て、タイロッド10(
図2および
図8参照)の伸長方向の両側に位置する部分、たとえば
図11において破線を添えて示した部分が、該タイロッド10の伸長方向に対する傾斜角度が直角に近い部分となる。したがって、フレーム座面27(
図4参照)とマウント座面28cとの接触部のうち、該部分が存在する箇所で、特に効率良く反力を受けることができる。本例についてのその他の構成および作用は、第1例および第2例と同様である。
【0092】
[第6例]
本開示の実施の形態の第5例のステアリング装置について、
図12を用いて説明する。
【0093】
本例のハウジングは、第1例のハウジング2、または、第2例のハウジング2aにおいて、複数のマウント部16のうちの少なくとも1つのマウント部16を、
図11に示すマウント部16dに置換した構造を有する。
【0094】
本例のマウント部16dのマウント座面28dは、それぞれがボルト孔26の中心軸を中心として同心に配置された、直径が異なる複数(図示の例では2つ)の円環状の凹溝31bを有する。このような本例の構造によれば、マウント座面28dが備える凹溝31bの数、すなわち溝エッジ部32bの数が増えた分、フレーム座面27(
図4参照)に対するマウント座面28dの保持力を、より大きくすることができる。本例についてのその他の構成および作用は、第1例、第2例、および第5例と同様である。
【0095】
[第7例]
本開示の実施の形態の第7例のステアリング装置について、
図13を用いて説明する。
【0096】
本例のハウジングは、第1例のハウジング2、または、第2例のハウジング2aにおいて、複数のマウント部16のうちの少なくとも1つのマウント部16を、
図13に示すマウント部16eに置換した構造を有する。
【0097】
本例のマウント部16eのマウント座面28eも、第5例と同様、ボルト孔26の中心軸を中心とする環状の凹溝31cを備える。具体的には、本例では、凹溝31cは、星形の正多角環状(図示の例では、星形の正八角環状)に構成されている。したがって、凹溝31cの溝エッジ部32cは、星形の正多角形状(図示の例では、星形の正八角形状)を有する。
【0098】
本例では、マウント部16eの凹溝31cのうち、タイロッド10に近い側(たとえば
図13の左側)に配置された、円周方向に隣り合う2つの直線部分の間の開き角αは、操舵操作に伴う該タイロッド10の揺動角度βよりも大きい(α>β)。
【0099】
本例では、操舵操作に伴って該タイロッド10の伸長方向が揺動変位する場合でも、ボルト孔26の軸方向から見て、凹溝31cのうちの少なくとも一部分が、該タイロッド10の伸長方向に対して非平行となる。このため、フレーム座面27(
図4参照)とマウント座面28eとの接触部のうち、凹溝31cの前記非平行となる部分、具体的には該部分の溝エッジ部32cが存在する部分において、該タイロッド10から作用する反力を効率良く受けることができる。本例についてのその他の構成および作用は、第1例および第2例と同様である。
【0100】
[第8例]
本開示の実施の形態の第8例のステアリング装置について、
図14を用いて説明する。
【0101】
本例のハウジングは、第1例のハウジング2、または、第2例のハウジング2aにおいて、複数のマウント部16のうちの少なくとも1つのマウント部16を、
図14に示すマウント部16fに置換した構造を有する。
【0102】
本例のマウント部16fのマウント座面28fは、凹溝31dを複数(本例では8つ)備える。それぞれの凹溝31dは、マウント座面28fの円周方向に間隔をあけて配置されており、図示の例では円周方向に等間隔に配置されている。それぞれの凹溝31dは、ボルト孔26の軸方向から見て、正四角形の開口形状を有する。したがって、本例では、凹溝31dは、互いに直交する2つの幅方向を有する。それぞれの幅方向に関する凹溝31dの幅寸法は、互いに等しい。このような凹溝31dの溝エッジ部32dは、正四角形状を有する。
【0103】
本例では、マウント部16fのそれぞれの溝エッジ部32dを構成する4つの直線状の辺は、ボルト孔26の軸方向から見て、該マウント部16fに近い側のタイロッド10(
図2および
図8参照)の伸長方向のうち、車両の直進状態での伸長方向Dtに対して45゜傾斜した方向に配置されている。本例では、操舵操作に伴う該タイロッド10の揺動角度βは、45゜よりも小さい(β<45゜)。
【0104】
このため、本例では、操舵操作に伴って該タイロッド10の伸長方向が揺動変位する場合でも、ボルト孔26の軸方向から見て、それぞれの溝エッジ部32dを構成する4つの直線状の辺が、該タイロッド10の伸長方向に対して常に非平行となる。このため、本例では、フレーム座面27(
図4参照)とマウント座面28fとの接触部のうち、それぞれの溝エッジ部32dが存在する部分において、該タイロッド10から作用する反力を効率良く受けることができる。本例についてのその他の構成および作用は、第1例および第2例と同様である。
【0105】
本開示のステアリング装置は、上述した各実施の形態の構成を、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【0106】
本開示のステアリング装置を実施する場合、ハウジングが備えるマウント部の個数は、特に限定されない。本開示の特徴となるマウント部の形状は、全体の剛性バランスを考えて、少なくとも1個のマウント部に適用されればよく、必ずしもすべてのマウント部に適用される必要はない。
【符号の説明】
【0107】
1 ステアリング装置
2、2a ハウジング
3 フレーム
4 ステアリングギヤユニット
5 ステアリングホイール
6 ステアリングシャフト
7 ステアリングコラム
8a、8b 自在継手
9 中間シャフト
10 タイロッド
11 ピニオンシャフト
12 ラックシャフト
13 ボールジョイント
14 電動アシスト装置
15 収容部
16、16a、16b、16c、16d、16e、16f、16z マウント部
17 ボルト
18 ラック収容部
19 ピニオン収容部
20 ガイド収容部
21 ラックガイド
22 ラックブッシュ
23a、23b 軸受
24 連結部
25 軸部
26 ボルト孔
27 フレーム座面
28、28a、28b、28c、28d、28e、28f、28z マウント座面
29 ボルト孔
30 頭部
31、31a、31b、31c、31d 凹溝
32、32a、32b、32c、32d 溝エッジ部
33 内周エッジ部
34 外周エッジ部
35 平坦面部