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特開2024-47251ステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047251
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/00 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
B62D3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152773
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祥史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フレーム座面に対するマウント座面の保持力を確保しやすいステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造を提供する。
【解決手段】ステアリング装置のハウジングは、収容部と、ボルト4を用いてフレーム3に結合されるマウント部17とを有する。マウント部17は、ボルト4の軸力によってフレーム3に備えられたフレーム座面35に押し付けられるマウント座面25、および、該マウント座面25に開口しかつボルト4の軸部37が挿通されるマウント側ボルト孔26を有する。マウント座面25は、フレーム座面35と対向する縁部27、28を有する。マウント座面25において、縁部27、28は、周囲の部分よりもマウント側ボルト孔26の軸線方向に張り出している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフレームに支持されるハウジングを備え、
前記ハウジングは、軸方向両側の端部に1対のタイロッドが揺動可能に連結される直動シャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、前記収容部に固定され、かつ、ボルトを用いて前記フレームに結合されるマウント部とを有し、
前記マウント部は、前記ボルトの軸力によって前記フレームに備えられたフレーム座面に押し付けられるマウント座面、および、該マウント座面に開口しかつ前記ボルトの軸部が挿通されるマウント側ボルト孔を有し、
前記マウント座面は、前記フレーム座面と対向する縁部を有し、
前記マウント座面において、前記縁部は、周囲の部分よりも前記マウント側ボルト孔の軸線方向に張り出している、
ステアリング装置。
【請求項2】
前記縁部は、該縁部の幅方向外端縁に向かうにしたがって前記マウント側ボルト孔の軸線方向の張出量が増加するように傾斜した傾斜面部により構成されている、請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記縁部は、前記マウント座面の内周縁部と外周縁部とのうちの少なくとも一方である、請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記マウント部は、前記縁部を有する径方向端部に、径方向中間部よりも前記マウント側ボルト孔の軸線方向に関する肉厚が小さい低剛性部を備える、請求項3に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記マウント座面は、前記マウント側ボルト孔の軸線方向に凹んだ凹溝を有し、前記縁部は、前記凹溝に隣接する溝縁部である、請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項6】
ステアリング装置のハウジングと、車両のフレームと、前記ハウジングと前記フレームとを結合するためのボルトとを備え、
前記ハウジングは、軸方向両側の端部に1対のタイロッドが揺動可能に連結される直動シャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、マウント座面および該マウント座面に開口するマウント側ボルト孔を有し、前記収容部に固定されたマウント部とを備え、
前記フレームは、台座部を備え、該台座部は、フレーム座面および該フレーム座面に開口する台座側ボルト孔を有し、
前記ボルトは、前記フレーム座面と前記マウント座面とを接触させた状態で前記マウント側ボルト孔および前記台座側ボルト孔に挿通または螺合される軸部を有し、かつ、自身の軸力によって前記マウント座面を前記フレーム座面に押し付けており、
前記マウント座面と前記フレーム座面とのうちのいずれか一方の座面は、前記マウント座面と前記フレーム座面とのうちの他方の座面に対向する縁部を有し、
前記一方の座面において、前記縁部は、自由状態で周囲の部分よりも前記ボルトの軸線方向に張り出している、
ハウジングとフレームとの結合構造。
【請求項7】
前記一方の座面のうち、前記縁部のみが前記他方の座面に接触している、請求項6に記載のハウジングとフレームとの結合構造。
【請求項8】
前記一方の座面のうち、前記縁部だけでなく該縁部以外の部分も前記他方の座面に接触している、請求項6に記載のハウジングとフレームとの結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリング装置、および、ステアリング装置のハウジングと車両のフレームとの結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリング装置は、運転者が操作するステアリングホイールの回転運動を、ステアリングシャフト、中間シャフトなどを介して、ステアリングギヤユニットのピニオンシャフトに伝達し、さらに、ピニオンシャフトの回転運動を、ステアリングギヤユニットのラックシャフトの直線運動に変換することに基づいて、左右の操舵輪に舵角を付与するように構成されている。
【0003】
すなわち、ラックシャフトの軸方向両側の端部に、1対のタイロッドの基端部が揺動可能に連結されており、1対のタイロッドの先端部に、左右の操舵輪が組み付けられるナックルが揺動可能に連結されている。これにより、ラックシャフトが直線運動することに伴い、1対のタイロッドが押し引きされることで、左右の操舵輪に舵角が付与される。
【0004】
ステアリングギヤユニットは、ハウジングを備える。該ハウジングは、直動シャフトであるラックシャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、該収容部に固定され、かつ、ボルトを用いて車両のフレームに結合されるマウント部とを備える。すなわち、ステアリングギヤユニットは、ボルトを用いてマウント部を車両のフレームに結合することにより、該フレームに支持される。
【0005】
マウント部は、ボルトの軸部が挿通されるボルト孔と、該ボルト孔の端部が開口し、かつ、ボルトの軸力によってフレームに備えられたフレーム座面に押し付けられるマウント座面とを有する。なお、ボルトの軸力とは、ボルトを雌ねじ孔に螺合すること、あるいは、ボルトにナットを螺合することにより、軸方向に関して弾性的に伸びたボルトの軸部が元に戻ろうとする力をいう。
【0006】
フレームに対するマウント部の結合作業を容易にする観点から、マウント部のボルト孔の内径は、ボルトの軸部の外径よりも大きく設定されている。このため、ボルト孔の内周面とボルトの軸部の外周面との間には隙間が存在する。したがって、該隙間の存在に基づいて、マウント部がフレームに対してボルトの中心軸に直交する方向に移動することが可能となり、フレームに対するマウント部のがたつきの発生の原因となる。しかしながら、このようなフレームに対するマウント部の移動は、フレーム座面とマウント座面との間に作用する摩擦力によって抑制される。
【0007】
特開2021-185069号公報には、フレーム座面とマウント座面との間に作用する摩擦力を増大させるために、マウント座面の全面に微細な凹凸形状を形成した構造が記載されている。この構造では、凹凸形状を構成する突条、突部などの微細な凸部を、フレーム座面に施された皮膜に食い込ませている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-185069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開2021-185069号公報に記載された従来構造では、マウント座面に設けられた微細な凹凸形状は、加工により形成されており、かつ、該凹凸形状を含むマウント座面の表面粗さ(算術平均粗さRa)が製品仕様として要求される表面粗さとなるように設定されており、かつ、該凹凸形状を構成する凸部をフレーム座面の皮膜に食い込ませている。このため、前記凸部の幅や高さは、数μmから数十μm程度であると考えられる。
【0010】
この従来構造では、凹凸形状が小さいため、摩擦力を増大させる効果はあるものの、ステアリング装置の製造過程における、その管理を適切に行うことは困難である。通常、マウント部を含むハウジングは、軽量化のためにアルミニウム合金などの軽合金製であるのに対し、車両のフレームは、十分な強度および剛性を確保するために鋼製である。かかる場合、微細な凹凸形状は、締結時にボルトの軸力により潰れる可能性が高いと考えられる。このように、微細な凹凸形状が潰れて、マウント座面の全体が平滑な平坦面に変化することによって、フレーム座面に対するマウント座面の保持力を十分に確保できないと考えられる。
【0011】
本開示は、フレーム座面に対するマウント座面の保持力を確保しやすいステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様のステアリング装置は、車両のフレームに支持されるハウジングを備える。前記ハウジングは、軸方向両側の端部に1対のタイロッドが揺動可能に連結される直動シャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、前記収容部に固定され、かつ、ボルトを用いて前記フレームに結合されるマウント部とを有する。
【0013】
前記マウント部は、前記ボルトの軸力によって前記フレームに備えられたフレーム座面に押し付けられるマウント座面、および、該マウント座面に開口しかつ前記ボルトの軸部が挿通されるマウント側ボルト孔を有する。
【0014】
前記マウント座面は、前記フレーム座面と対向する縁部を有する。前記マウント座面において、前記縁部は、周囲の部分よりも前記マウント側ボルト孔の軸線方向に張り出している。
【0015】
本開示の一態様のステアリング装置では、前記縁部は、該縁部の幅方向外端縁に向かうにしたがって前記マウント側ボルト孔の軸線方向の張出量が増加するように傾斜した傾斜面部により構成されている。なお、前記縁部の幅方向外端縁とは、たとえば、前記縁部が前記マウント座面の外周縁部である場合には、該マウント座面の径方向外端縁であり、前記縁部が前記マウント座面の内周縁部である場合には、該マウント座面の径方向内端縁であり、前記縁部が前記マウント座面に備えられた凹溝に隣接する溝縁部である場合には、該凹溝に近い側の端縁である。
【0016】
本開示の一態様のステアリング装置では、前記縁部は、前記マウント座面の内周縁部と外周縁部とのうちの少なくとも一方である。
【0017】
この場合には、前記マウント部は、前記縁部を有する径方向端部に、径方向中間部よりも前記マウント側ボルト孔の軸線方向に関する肉厚が小さい低剛性部を備えることができる。
【0018】
本開示の一態様のステアリング装置では、前記マウント座面は、前記マウント側ボルト孔の軸線方向に凹んだ凹溝を有し、前記縁部は、前記凹溝に隣接する溝縁部である。
【0019】
本開示の一態様のハウジングとフレームとの結合構造は、ステアリング装置のハウジングと、車両のフレームと、前記ハウジングと前記フレームとを結合するためのボルトとを備える。
【0020】
前記ハウジングは、軸方向両側の端部に1対のタイロッドが揺動可能に連結される直動シャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、マウント座面および該マウント座面に開口するマウント側ボルト孔を有し、前記収容部に固定されたマウント部とを備える。
【0021】
前記フレームは、台座部を備える。該台座部は、フレーム座面および該フレーム座面に開口する台座側ボルト孔を有する。
【0022】
前記ボルトは、前記フレーム座面と前記マウント座面とを接触させた状態で前記マウント側ボルト孔および前記台座側ボルト孔に挿通または螺合される軸部を有し、かつ、自身の軸力によって前記マウント座面を前記フレーム座面に押し付けている。
【0023】
前記マウント座面と前記フレーム座面とのうちのいずれか一方の座面は、前記マウント座面と前記フレーム座面とのうちの他方の座面に対向する縁部を有する。前記一方の座面において、前記縁部は、自由状態で周囲の部分よりも前記ボルトの軸線方向に張り出している。
【0024】
本開示の一態様のハウジングとフレームとの結合構造では、前記一方の座面のうち、前記縁部のみが前記他方の座面に接触している。
【0025】
本開示の一態様のハウジングとフレームとの結合構造では、前記一方の座面のうち、前記縁部だけでなく該縁部以外の部分も前記他方の座面に接触している。
【0026】
本開示のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造は、上述した各態様の構成を、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示の一態様のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造によれば、フレーム座面に対するマウント座面の保持力を確保しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本開示の実施の形態の第1例におけるステアリング装置の斜視図である。
図2図2は、第1例におけるステアリング装置を構成するハウジングおよびその周辺部分を上方から見た平面図である。
図3図3は、図2のA-A断面図である。
図4図4は、第1例のハウジングとフレームとの接続部についての図2のB-B断面に相当する図である。
図5図5は、図4のC部拡大図である。
図6図6(a)は、第1例におけるマウント部の断面図であり、図6(b)は、図6(a)の下方から見た図である。
図7図7は、第1例におけるマウント部に外力が加わった状態での図5に相当する図である。
図8図8(a)は、図7のD部拡大図であり、図8(b)は、図7のE部拡大図である。
図9図9は、本開示の実施の形態の第2例についての図5の左下部に相当する図である。
図10図10は、第2例についての図8に相当する図である。
図11図11は、本開示の実施の形態の第3例についての図6(b)に相当する図である。
図12図12は、図11のF-F断面図である。
図13図13は、図11のG-G断面図である。
図14図14は、本開示の実施の形態の第4例についての図13に相当する図である。
図15図15は、本開示の実施の形態の第5例についての図6(b)に相当する図である。
図16図16は、図15のH-H断面図である。
図17図17は、本開示の実施の形態の第6例についての図6(b)に相当する図である。
図18図18は、本開示の実施の形態の第7例についての図6(b)に相当する図である。
図19図19(a)および図19(b)は、本開示の実施の形態の第8例についての図6(a)および図6(b)に相当する図である。
図20図20は、本開示の実施の形態の第9例についての図4に相当する図である。
図21図21は、図20のI部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1例]
本開示の実施の形態の第1例のハウジングとフレームとの結合構造について、図1図8を用いて説明する。
【0030】
本開示のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造(以下、単に「結合構造」という場合がある)は、各種方式のステアリング装置に適用可能であるが、本例では、操舵力伝達経路の全体が機械的につながっているマニュアル式のステアリング装置に、本開示のステアリング装置および結合構造を適用する場合について説明する。
【0031】
本例のハウジングとフレームとの結合構造は、ステアリング装置1(図1参照)のハウジング2と、車両のフレーム3(図4参照)と、ハウジング2とフレーム3とを結合するためのボルト4(図4参照)とを備える。
【0032】
本例では、ステアリング装置1が備えるハウジング2は、直動装置であるステアリングギヤユニット5(図1図3参照)を構成する部材である。
【0033】
本例では、ステアリング装置1は、ハウジング2を含んで構成されるステアリングギヤユニット5のほか、ステアリングホイール6と、ステアリングシャフト7と、ステアリングコラム8と、1対の自在継手9a、9bと、中間シャフト10と、1対のタイロッド11とを備える。なお、以下の説明中、ステアリング装置1において、前後方向は、車両の前後方向を意味する。図2では、下側が前側であり、上側が後側である。
【0034】
ステアリングホイール6は、ステアリングシャフト7の後端部に取り付けられている。ステアリングシャフト7は、車体に支持されたステアリングコラム8の内側に、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト7の前端部は、自在継手9a、中間シャフト10、および別の自在継手9bを介して、ステアリングギヤユニット5を構成するピニオンシャフト12に接続されている。ピニオンシャフト12は、ステアリングギヤユニット5を構成する直動シャフトであるラックシャフト13に噛合している。1対のタイロッド11を構成するそれぞれのタイロッド11の基端部は、ラックシャフト13の軸方向両側の端部に、ボールジョイント14を介して揺動可能に連結されている。該タイロッド11の先端部は、左右の操舵輪が組み付けられるナックルに揺動可能に連結される。
【0035】
運転者がステアリングホイール6を回転操作すると、ステアリングホイール6の回転は、ステアリングシャフト7と、自在継手9aと、中間シャフト10と、自在継手9bとを介して、ピニオンシャフト12に伝達される。そして、ピニオンシャフト12の回転が、ラックシャフト13の直線運動に変換されることにより、1対のタイロッド11が押し引きされることで、左右の操舵輪に舵角が付与される。
【0036】
本例のステアリング装置1は、電動パワーステアリング装置であり、運転者がステアリングホイール6を操作するのに要する力を軽減するための電動アシスト装置15をさらに備える。本例では、電動アシスト装置15は、ステアリングシャフト7に補助動力を付与する。ただし、電動アシスト装置により、ステアリングギヤユニットを構成するピニオンシャフトやラックシャフトに補助動力を付与することもできる。
【0037】
本開示のステアリング装置および結合構造は、運転者が操作する上流側操舵部と操舵輪に舵角を付与する下流側操舵部とが機械的に切り離されて電気的に接続されたステアバイワイヤ式のステアリング装置に適用することもできる。この場合、ハウジングおよび直動シャフトを備えた直動装置は、前記下流側操舵部に組み込まれる。
【0038】
ハウジング2は、収容部16と、少なくとも1つ(本例では2つ)のマウント部17とを備える。収容部16は、ラックシャフト13を軸方向の移動可能に収容する部分である。マウント部17は、収容部16に固定され、かつ、ボルト4(図4参照)を用いて車両のフレーム3に結合される部分である。すなわち、ステアリングギヤユニット5は、ボルト4を用いてマウント部17をフレーム3に結合することにより、該フレーム3に支持される。
【0039】
本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、ハウジング2に必要とされる強度および剛性を確保できる限り、ハウジング2の材質として、各種金属を採用可能である。本例では、軽量化の観点から、ハウジング2の材質として、アルミニウム合金などの軽合金を採用している。より具体的には、本例では、ハウジング2は、アルミニウム合金などの軽合金をダイキャスト成形することにより一体的に造られている。
【0040】
本例では、収容部16は、ラック収容部18と、ピニオン収容部19と、ガイド収容部20とを備える。
【0041】
ラック収容部18は、円筒形状を有しており、その内側にラックシャフト13の軸方向中間部を収容する。ラック収容部18は、車両の幅方向に伸長するように配置される。ラックシャフト13は、ラック収容部18に対し、軸方向に離隔して配置されたラックガイド21(図3参照)およびラックブッシュ22により、径方向のがたつきを防止された状態で軸方向の移動可能に支持されている。
【0042】
ピニオン収容部19は、上端部が開口した有底円筒形状を有しており、その内側にピニオンシャフト12の先半部を収容する。ピニオン収容部19は、ラック収容部18の前側かつ上側で、ラック収容部18の軸方向一方側(図2の左側)に寄った位置に配置されている。ピニオン収容部19の中心軸は、ラック収容部18の中心軸に対して、ねじれの位置に配置されている。ピニオンシャフト12は、ピニオン収容部19に対し、軸方向に離隔して配置された1対の軸受23a、23bにより、回転可能に支持されている。
【0043】
ガイド収容部20は、円筒形状を有しており、その内側にラックガイド21を収容する。ガイド収容部20は、ラック収容部18のうち、ピニオン収容部19に対して径方向反対側に位置する箇所に配置されている。ガイド収容部20の中心軸は、ラック収容部18の中心軸に対して直交している。ラックガイド21は、ラックシャフト13の外周面のうち、ピニオンシャフト12が噛合した部分に対して径方向反対側に位置する部分を、ピニオンシャフト12に向けて押圧する。これにより、ピニオンシャフト12とラックシャフト13との噛合状態が適正に維持される。
【0044】
本開示のステアリング装置および結合構造を、直動シャフトに補助動力を付与する電動パワーステアリング装置に適用する場合には、ハウジングの収容部に、直動シャフトに対して補助動力を付与する機構を収容する部分を設けることができる。本開示のステアリング装置および結合構造を、ステアバイワイヤ式のステアリング装置に適用する場合には、ハウジングの収容部に、直動シャフトに対して動力を付与する機構を収容する部分を設けることができる。
【0045】
本例では、マウント部17は、ラック収容部18の軸方向両側の端部に1つずつ固定されている。具体的には、それぞれのマウント部17は、ラック収容部18の軸方向両側の端部の前側部に、連結部24を介して固定されている。なお、本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合、マウント部の個数、および、収容部に対するマウント部の固定箇所は、任意に設定することができる。
【0046】
マウント部17は、ボルト4の軸力によってフレーム3に備えられたフレーム座面35に押し付けられる一方の座面であるマウント座面25、および、該マウント座面25に開口しかつボルト4の軸部37が挿通されるマウント側ボルト孔26を有する。
【0047】
本例では、マウント部17は、円筒形状を有し、かつ、その中心軸が上下方向に伸長するように配置されている。本例では、マウント座面25は、マウント部17の下端面により構成されており、円輪形状を有する。本例では、マウント側ボルト孔26は、マウント部17の径方向中央部を軸方向に貫通する円孔により構成されている。
【0048】
マウント座面25は、マウント部17がフレーム3に結合された状態でフレーム座面35と対向する、内周縁部27および外周縁部28を有する。
【0049】
マウント座面25において、それぞれが所定の径方向幅を有する内周縁部27および外周縁部28は、自由状態で周囲の部分よりもマウント側ボルト孔26の軸線方向、すなわちボルト4(図4参照)の軸線方向に張り出している。
【0050】
具体的には、本例では、マウント座面25の径方向中間部は、マウント側ボルト孔26の軸線方向に対して直交する仮想平面内に存在する平面部31により構成されている。マウント座面25のうち、平面部31よりも径方向内側に位置する径方向内端部は、内周縁部27により構成されている。本例では、内周縁部27は、該内周縁部27の幅方向外端縁である径方向内端縁29に向かうにしたがって、マウント側ボルト孔26の軸線方向の張り出し量が増加するように曲線的または直線的(図示の例では曲線的)に傾斜した、内側傾斜面部32により構成されている。マウント座面25のうち、平面部31よりも径方向外側に位置する径方向外端部は、外周縁部28により構成されている。本例では、外周縁部28は、該外周縁部28の幅方向外端縁である径方向外端縁30に向かうにしたがって、マウント側ボルト孔26の軸線方向の張り出し量が増加するように曲線的または直線的(図示の例では曲線的)に傾斜した外側傾斜面部33により構成されている。
【0051】
本例では、内周縁部27の径方向幅Wiと外周縁部28の径方向幅Wоとを互いに等しくしている(Wi=Wо、図6(a)参照)。本例では、内周縁部27の径方向内端縁29と外周縁部28の径方向外端縁30とは、マウント側ボルト孔26の軸線方向に関して互いに同じ位置に存在している。すなわち、平面部31に対する径方向内端縁29の軸方向の張出量δiと、平面部31に対する径方向外端縁30の軸方向の張出量δоとを互いに等しくしている(δi=δо、図6(a)参照)。
【0052】
本例の構造を実施する場合には、それぞれの部位の形状管理ができ、かつ、後述するエッジロードの発生の効果を得られる限り、径方向幅Wi、Wоや、張出量δi、δоの大きさは、特に限定されない。たとえば、径方向幅Wi、Wоを、0.05mm以上とすることができ、好ましくは0.5mm以上とすることができる。また、張出量δi、δоを、0.01mm以上とすることができ、好ましくは0.1mm以上とすることができる。
【0053】
本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、一方の座面(本例ではマウント座面)の内周縁部と外周縁部とのうちのいずれか一方のみを、他の部分に比べて軸方向に張り出させることもできる。
【0054】
フレーム3は、台座部34を備える。台座部34の数は任意であるが、本例では、台座部34の数は、マウント部17と同数の2つである。本例では、それぞれの台座部34は、それぞれのマウント部17を結合する箇所に配置されている。本例では、フレーム3は、鋼製である。
【0055】
台座部34は、他方の座面であるフレーム座面35、および、該フレーム座面35に開口する台座側ボルト孔36を有する。
【0056】
本例では、台座部34は、円筒形状を有し、かつ、その中心軸が上下方向に伸長するように配置されている。本例では、フレーム座面35は、台座部34の上端面により構成されており、円輪形状を有する。本例では、台座側ボルト孔36は、台座部34の径方向中央部を軸方向に貫通する雌ねじ孔により構成されている。
【0057】
本例では、フレーム座面35は、台座側ボルト孔36の軸線方向、すなわちボルト4(図4参照)の軸線方向に対して直交する平面により構成されている。本例では、フレーム座面35の内径は、マウント座面25の内径よりも小さく、フレーム座面35の外径は、マウント座面25の外径よりも大きい。すなわち、フレーム座面35は、マウント座面25の内周縁部27および外周縁部28のそれぞれと対向可能な径方向幅を有する。
【0058】
本例では、フレーム座面35に皮膜が施されていない。すなわち、フレーム座面35は、フレーム3の材質である鋼の表面により構成されている。ただし、本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、フレーム座面に、カチオン電着塗装などによる皮膜を施すこともできる。
【0059】
ボルト4の数は任意であるが、本例では、ボルト4の数は、マウント部17と同数の2本である。ボルト4は、図4に示すように、フレーム座面35とマウント座面25とを接触させた状態で、マウント側ボルト孔26および台座側ボルト孔36に挿通または螺合される軸部37を有し、かつ、自身の軸力によってマウント座面25をフレーム座面35に押し付けている。
【0060】
具体的には、本例では、マウント部17を台座部34に結合する際には、マウント部17のマウント座面25を、台座部34のフレーム座面35に接触させた状態で、ボルト4の軸部37を、マウント部17のマウント側ボルト孔26に上方から挿通し、かつ、台座部34の台座側ボルト孔36に螺合して、ボルト4の頭部38を、マウント部17の上端面に接触させる。そして、ボルト4を締め付けることにより、ボルト4の軸力を発生させることで、フレーム座面35とマウント座面25との接触圧を増大させて、マウント部17を台座部34に結合する。この状態で、本例では、図5に示すように、マウント座面25のうち、内周縁部27の径方向内端縁29、および、外周縁部28の径方向外端縁30のみが、フレーム座面35と接触することにより、エッジロードを発生させる。
【0061】
ステアリング装置1の操舵操作を行う際に、それぞれのマウント部17には、該マウント部17に近い側のタイロッド11から、該タイロッド11の伸長方向に沿う方向の反力が作用する。したがって、このような反力に起因して、該マウント部17が台座部34に対して、マウント側ボルト孔26の軸線方向から見て、該タイロッド11の伸長方向に沿う方向へ移動しようとする。なお、マウント部17に近い側のタイロッド11とは、図1および図2において、左側のマウント部17に対する左側のタイロッド11であり、右側のマウント部17に対する右側のタイロッド11である。一方、台座部34に対するマウント部17の結合作業を容易にする観点から、該マウント部17のマウント側ボルト孔26の内径は、ボルト4の軸部37の外径よりも大きく設定されている。このため、マウント側ボルト孔26の内周面と軸部37の外周面との間には隙間が存在する。したがって、該隙間の存在に基づいて、該マウント部17が台座部34に対して、マウント側ボルト孔26の軸線方向から見て、該タイロッド11の伸長方向に沿った方向へ移動する可能性がある。
【0062】
この点に関して、本例の構造では、フレーム座面35とマウント座面25との接触部において、内周縁部27の径方向内端縁29、および、外周縁部28の径方向外端縁30により確実にエッジロードを発生させている。また、内周縁部27の径方向内端縁29、および、外周縁部28の径方向外端縁30を明確に構成していることから、エッジロードの管理を適切に行うことが可能である。よって、フレーム座面35に対するマウント座面25の保持力を確保しやすく、フレーム3に対してマウント部17が移動してがたつくことを抑制しやすい。
【0063】
なお、フレーム座面35とマウント座面25との接触部を、マウント側ボルト孔26の軸線方向から見た場合に、マウント座面25の内周縁部27および外周縁部28のうち、タイロッド11の伸長方向に対して非平行に配置された箇所では、タイロッド11の伸長方向に沿う方向の反力を、効率良く受けることができる。特に、内周縁部27および外周縁部28のうち、タイロッド11の伸長方向に対する傾斜角度が直角に近い部分、たとえば図6(b)において破線を添えて示した部分が存在する箇所では、タイロッド11の伸長方向に沿う方向(図6(b)における白抜き矢印の方向)の反力を、より効率良く受けることができる。
【0064】
本例では、マウント部17に前記反力などの外力が加わることにより、フレーム座面35に対するマウント座面25の押し付け力が増大すると、マウント座面25の全体が平面に近づくように弾性変形する。具体的には、マウント部17のうち、マウント座面25の内周縁部27である内側傾斜面部32およびその周辺部(図8(b)のα部)が、図8(b)の二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に近づくように弾性変形する。すなわち、該周辺部(α部)が径方向内側に膨らみ、かつ、内側傾斜面部32が平面部31と同じ仮想平面上に配置される平面に近づくように弾性変形する。また、マウント部17のうち、マウント座面25の外周縁部28である外側傾斜面部33およびその周辺部(図8(a)のβ部)が、図8(a)の二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に近づくように弾性変形する。すなわち、該周辺部(β部)が径方向外側に膨らみ、かつ、外側傾斜面部33が平面部31と同じ仮想平面上に配置される平面に近づくように弾性変形する。
【0065】
本例では、自動車の運転時に、マウント部17に前記反力などの外力が加わることにより、フレーム座面35に対するマウント座面25の押し付け力が増大した場合に、図5から図7に示すように、マウント座面25の全体がフレーム座面35に押し付けられるようにしている。具体的には、内周縁部27および外周縁部28の径方向幅Wi、Wо、張出量δi、δо、およびボルト4の軸力を調整することにより、前記押し付け力が増大した場合に、マウント座面25の全体がフレーム座面35に押し付けられるようにしている。これにより、フレーム座面35に対するマウント座面25の保持力を向上させて、フレーム3に対してマウント部17が移動してがたつくことを、より抑制しやすくしている。
【0066】
マウント座面25の全体がフレーム座面35に押し付けられた状態で、マウント座面25とフレーム座面35との接触圧は、図7にその分布を示すように、内周縁部27の径方向内端縁29、および、外周縁部28の径方向外端縁30が位置する部分でピーク値(エッジロード)となる。
【0067】
本例では、マウント座面25の内周縁部27が内側傾斜面部32により構成されているため、フレーム座面35に対するマウント座面25の押し付け力が増大する場合に、マウント部17のうち、内周縁部27およびその周辺部(α部)は、径方向外側ではなく、径方向内側に膨らむ。このため、内周縁部27の径方向内端縁29が位置する部分で、安定したエッジロードを発生させることができる。本例では、マウント座面25の外周縁部28が外側傾斜面部33により構成されているため、フレーム座面35に対するマウント座面25の押し付け力が増大する場合に、マウント部17のうち、外周縁部28およびその周辺部(β部)は、径方向内側ではなく、径方向外側に膨らむ。このため、外周縁部28の径方向外端縁30が位置する部分で、安定してエッジロードを発生させることができる。
【0068】
本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、内周縁部27および外周縁部28の径方向幅Wi、Wо、張出量δi、δо、およびボルト4の軸力を調整すること、具体的には、たとえば、張出量δi、δоを本例よりも大きくすることにより、フレーム座面35に対するマウント座面25の押し付け力が増大した場合でも、図5に示すように、マウント座面25のうち内周縁部27の径方向内端縁29、および、外周縁部28の径方向外端縁30のみがフレーム座面35に接触した状態が維持されるようにすることもできる。
【0069】
本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、操舵操作に伴う反力などの外力がマウント部17に作用していない状態、すなわち、図4に示すようにボルト4を用いてマウント部17を台座部34に結合しただけの状態で、図7に示すように、マウント座面25の全体がフレーム座面35に押し付けられるようにすることもできる。このために、内周縁部27および外周縁部28の径方向幅Wi、Wо、張出量δi、δо、およびボルト4の軸力を調整すること、具体的には、たとえば、張出量δi、δоを本例よりも小さくすることができる。このような構成を採用すれば、マウント部17に前記外力が作用していない状態においても、マウント座面25の全体がフレーム座面35に押し付けられているため、フレーム座面35に対するマウント座面25の保持力を確保しやすい。
【0070】
本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、フレーム3の台座側ボルト孔36を、ボルト4の軸部37を挿通するための通孔とすることもできる。この場合には、ボルト4の軸部37を、マウント側ボルト孔26および台座側ボルト孔36に上側または下側から挿通し、かつ、マウント側ボルト孔26および台座側ボルト孔36から突出した軸部37の先端部にナットを螺合し、さらに締め付けることによって、マウント部17を台座部34に結合することができる。
【0071】
本例では、ハウジング2を製造する際に、ダイキャスト成形のみによって、マウント座面25を完成させる。このため、ハウジング2の製造コストを抑えることができる。
【0072】
なお、本例のように、ダイキャスト成形のみによってマウント座面25を完成させる場合には、内周縁部27の径方向内端縁29、および、外周縁部28の径方向外端縁30が、シャープなエッジ形状ではなく、R形状になりやすい。一方、内周縁部27の径方向内端縁29、および、外周縁部28の径方向外端縁30は、シャープなエッジ形状を有していた方が、フレーム座面35との接触部に作用するエッジロードが大きくなりやすく、該接触部においてタイロッド11からの反力を受けやすい。そこで、本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、ダイキャスト成形後のマウント座面25の表層部を切削により除去することによって、シャープなエッジ形状を有する径方向内端縁29および径方向外端縁30を備えたマウント座面25を完成させることもできる。
【0073】
[第2例]
本開示の実施の形態の第2例のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造について、図9および図10を用いて説明する。
【0074】
本例のハウジングとフレームとの結合構造では、マウント部17aのマウント座面25aの外周縁部28および内周縁部(図示省略)のうち、外周縁部28のみが平面部31に対して軸方向に張り出しており、外側傾斜面部33により構成されている。すなわち、本例では、マウント座面25aのうち、外側傾斜面部33よりも径方向内側に位置する部分の全体が、平面部31により構成されている。
【0075】
本例では、マウント部17aは、外周縁部28を有する径方向外端部に、径方向中間部よりもマウント側ボルト孔26(図4参照)の軸線方向(図9および図10の上下方向)に関する肉厚が小さい低剛性部39を備える。本例では、外周縁部28である外側傾斜面部33は、低剛性部39の下面に備えられている。
【0076】
本例の構造を実施する場合には、低剛性部39の前記軸線方向の肉厚は、特に限定されることはないが、たとえば、2mm以上とすることができる。
【0077】
本例においても、マウント部17aにボルト4の軸力や操舵操作に伴う反力などの外力が加わることにより、フレーム座面35に対するマウント座面25aの押し付け力が増大すると、マウント部17aのうち、マウント座面25aの外周縁部28およびその周辺部(図10のβ部)が、図10の二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に近づくように弾性変形する。すなわち、外周縁部28が平面部31と同じ仮想平面上に配置される平面に近づくように弾性変形する。本例では、該β部が低剛性部39により構成されているため、該β部の弾性変形量を大きくすることができ、外周縁部28が存在する箇所のエッジロードを安定的に発生させ続けることができる。本例についてのその他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0078】
本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、マウント座面の内周縁部を軸方向に張り出させ、かつ、マウント部のうち該内周縁部を有する径方向内端部に、低剛性部を設けることもできる。また、マウント座面の外周縁部と内周縁部とのそれぞれを軸方向に張り出させ、かつ、マウント部の径方向外端部と径方向内端部とのそれぞれに、低剛性部を設けることもできる。
【0079】
[第3例]
本開示の実施の形態の第3例のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造について、図11~13を用いて説明する。
【0080】
本例では、マウント部17bのマウント座面25bは、マウント側ボルト孔26の軸線方向に凹んだ凹溝40を有し、かつ、凹溝40の幅方向両側に隣接する溝縁部41を有する。それぞれの溝縁部41は、凹溝40の幅方向(図11の左右方向)に関する、所定の幅を有する。それぞれの溝縁部41は、自由状態で周囲の部分である平面部31よりもマウント側ボルト孔26の軸線方向に張り出している。
【0081】
具体的には、本例では、それぞれの溝縁部41は、該溝縁部41の幅方向外端縁である凹溝40に近い側の端縁42に向かうにしたがって、マウント側ボルト孔26の軸線方向の張り出し量が増加するように曲線的または直線的(図示の例では曲線的)に傾斜した、中間傾斜面部43により構成されている。
【0082】
それぞれの溝縁部41の幅は、たとえば内周縁部27および外周縁部28の径方向幅と同程度の範囲に設定することができ、本例では内周縁部27および外周縁部28の径方向幅と等しい。それぞれの溝縁部41の平面部31からの軸方向の張出量は、たとえば内周縁部27および外周縁部28の平面部31からの軸方向の張出量と同程度の範囲に設定することができ、本例では内周縁部27および外周縁部28の平面部31からの軸方向の張出量と等しい。
【0083】
マウント部17bが台座部34(図4参照)に結合された状態で、溝縁部41の端縁42は、フレーム座面35(図4参照)と接触することにより、エッジロードを発生させる。
【0084】
本例では、マウント座面25bは、凹溝40を4つ備える。4つの凹溝40は、マウント側ボルト孔26の軸線方向から見て、それぞれ同じ方向(図11の上下方向)に伸長している。本例では、4つの凹溝40は、マウント座面25bの中で、対称に配置されている。
【0085】
具体的には、4つの凹溝40のうちの2つの凹溝40(A)は、マウント座面25bのうち、それぞれの凹溝40の伸長方向(図11の上下方向)に関してマウント側ボルト孔26を両側から挟んだ2箇所に配置されている。該2つの凹溝40(A)の伸長方向の両側の端部は、マウント部17bの内周面および外周面に開口している。4つの凹溝40のうちの残りの2つの凹溝40(B)は、マウント座面25bのうち、それぞれの凹溝40の幅方向(図11の左右方向)に関してマウント側ボルト孔26を両側から挟んだ2箇所に配置されている。該2つの凹溝40(B)の伸長方向の両側の端部は、マウント部17bの外周面に開口している。
【0086】
本例では、フレーム座面35との接触部にエッジロードを発生させる部分として、溝縁部41の端縁42が追加された分、フレーム座面35に対するマウント座面25bの保持力を、より大きくすることができる。なお、本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合、マウント座面に形成する凹溝の数は、本例よりも多く、または、少なくすることもできる。
【0087】
ところで、図2に示したように、タイロッド11の伸長方向は、ラックシャフト13の伸長方向に対して傾斜している。また、ステアリング装置1の操舵操作に伴い、それぞれのタイロッド11は、ラックシャフト13に対して揺動する。このため、それぞれのタイロッド11の伸長方向は、該タイロッド11の揺動に伴って変化する。
【0088】
本例では、マウント部17bのそれぞれの凹溝40および溝縁部41は、マウント側ボルト孔26の軸線方向から見て、該マウント部17bに近い側のタイロッド11の伸長方向のうち、車両の直進状態での伸長方向Dtに対して直交する方向に配置されている。このため、本例では、操舵操作に伴って該タイロッド11の伸長方向が揺動変位する場合でも、該タイロッド11の伸長方向に対するそれぞれの溝縁部41の傾斜角度を、直角に近づけて大きくすることができる。したがって、本例では、それぞれの溝縁部41が存在する箇所で、タイロッド11からの反力を効率良く受けることができる。本例についてのその他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0089】
[第4例]
本開示の実施の形態の第4例のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造について、図14を用いて説明する。
【0090】
図14は、本例についての、図13に相当する図である。本例では、マウント部17cのマウント座面25cにおいて、内周縁部27の径方向内端縁29および外周縁部28の径方向外端縁30の平面部31からの軸方向(図14の上下方向)の張出量δi、δоと、それぞれの溝縁部41の端縁42の平面部31からの軸方向の張出量δnとを、互いに異ならせている。図示の例では、張出量δi、δоを張出量δnよりも大きくしている。
【0091】
本例では、張出量δ1と張出量δ2とを互いに異ならせているため、マウント部17cが台座部34(図4参照)に結合された状態で、内周縁部27および外周縁部28が存在する箇所で発生するエッジロードの大きさと、それぞれの溝縁部41が存在する箇所で発生するエッジロードの大きさとを、互いに異ならせることができる。これにより、フレーム座面35(図4参照)に対するマウント座面25cの保持力を、必要に応じた大きさにコントロールすることが容易となる。なお、本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、本例の構造に限らず、マウント座面に備えられた複数の縁部の張出量を適宜異ならせることができる。本例についてのその他の構成および作用効果は、第1例および第2例と同様である。
【0092】
[第5例]
本開示の実施の形態の第5例のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造について、図15および図16を用いて説明する。
【0093】
本例では、マウント部17dのマウント座面25dに備えられた複数の凹溝40は、マウント座面25dの中で、非対称に配置されている。具体的には、本例では、第3例との比較で、図11の右端に位置する凹溝40(B)が省略されている。
【0094】
さらに、本例のマウント座面25dは、2つの凹溝40(A)の幅方向一方側(図15および図16の左方)に隣接する部分にのみ、中間傾斜面部43により構成された溝縁部41を有し、2つの凹溝40(A)の幅方向他方側(図15および図16の右方)に隣接する部分には、中間傾斜面部により構成された溝縁部を有しない。
【0095】
本例では、マウント座面25dの中で、複数の凹溝40および溝縁部41を非対称に配置している。このため、フレーム座面35(図4参照)に対するマウント座面25dの保持力を、必要に応じた大きさにコントロールすることが容易となる。本例についてのその他の構成および作用効果は、第3例と同様である。
【0096】
[第6例]
本開示の実施の形態の第6例のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造について、図17を用いて説明する。
【0097】
本例では、マウント部17eのマウント座面25eの外周縁部28aの軸方向から見た形状を、円形ではなく、異形(図示の例では、星形の多角形)としている。これにより、外周縁部28aの全長を増大させることで、フレーム座面35(図4参照)に対するマウント座面25eの保持力を確保しやすくしている。本例についてのその他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0098】
[第7例]
本開示の実施の形態の第7例のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造について、図18を用いて説明する。
【0099】
本例では、マウント部17fのマウント座面25fの内周縁部27aの軸方向から見た形状を、円形ではなく、異形(図示の例では、略星形の多角形)としている。これにより、内周縁部27aの全長を増大させることで、フレーム座面35(図4参照)に対するマウント座面25eの保持力を確保しやすくしている。本例についてのその他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0100】
[第8例]
本開示の実施の形態の第8例のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造について、図19を用いて説明する。
【0101】
本例では、マウント部17gのマウント座面25gは、該マウント部17gに近い側のタイロッド11(図2参照)の伸長方向のうち、車両の直進状態での伸長方向Dtに関する両側の端部にのみ、平面部31から軸方向に張り出した外周縁部28bを有する。本例では、外周縁部28bは、平面部31と平行な平面、すなわち、マウント側ボルト孔26の軸線方向に対して直交する仮想平面内に存在する平面により構成されている。マウント座面25gのうち、外周縁部28bから外れた部分は、平面部31により構成されている。
【0102】
本例では、平面部31から軸方向に張り出した外周縁部28bが円周方向の2箇所にしか設けられていないため、それぞれの外周縁部28bが存在する部分の接触面圧を大きくして、フレーム座面35(図4参照)に対するマウント座面25gの保持力を確保しやすい。
【0103】
本例のマウント座面25gは、ダイキャスト成形により完成させることができるほか、ダイキャスト成形により全体を平面に形成した後、該平面に切削加工を施すことにより平面部31を形成すること、すなわち2つの外周縁部28bの部分を残すことによって完成させることができる。本例についてのその他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0104】
[第9例]
本開示の実施の形態の第9例のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造について、図20および図21を用いて説明する。
【0105】
本例では、台座部34aの上面に備えられた一方の座面であるフレーム座面35aの外径は、マウント部17hの下面に備えられた他方の座面であるマウント座面25hの外径よりも小さい。
【0106】
本例では、マウント座面25hは、円輪状の平面により構成されている。
【0107】
本例では、フレーム座面35aは、マウント座面25hに対向する、所定の径方向幅を有する外周縁部28cを全周にわたり有する。具体的には、本例では、フレーム座面35aのうち外周縁部28cよりも径方向内側に位置する部分は、台座側ボルト孔36の軸線方向に対して直交する仮想平面内に存在する平面部31aにより構成されている。外周縁部28cは、自由状態で、該外周縁部28cの幅方向外端縁である径方向外端縁30aに向かうにしたがって、台座側ボルト孔36の軸線方向の張り出し量が増加するように曲線的または直線的に傾斜した外側傾斜面部33aにより構成されている。
【0108】
本例では、マウント部17hが台座部34aに結合された状態で、マウント座面25hの外周縁部28cの径方向外端縁30aが、フレーム座面35aに接触してエッジロードを発生させる。本例についてのその他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0109】
本開示のステアリング装置および結合構造は、上述した各実施の形態の構成を、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【0110】
本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合、ハウジングが備えるマウント部の個数は、2個に限らず、3個以上とすることもできる。本開示の特徴となる形状は、全体の剛性バランスを考えて、少なくとも1個のマウント部とフレームとの結合部に適用されればよく、必ずしもすべてのマウント部とフレームとの結合部に適用される必要はない。
【符号の説明】
【0111】
1 ステアリング装置
2 ハウジング
3 フレーム
4 ボルト
5 ステアリングギヤユニット
6 ステアリングホイール
7 ステアリングシャフト
8 ステアリングコラム
9a、9b 自在継手
10 中間シャフト
11 タイロッド
12 ピニオンシャフト
13 ラックシャフト
14 ボールジョイント
15 電動アシスト装置
16 収容部
17、17a、17b、17c、17d、17e、17f、17g、17h マウント部
18 ラック収容部
19 ピニオン収容部
20 ガイド収容部
21 ラックガイド
22 ラックブッシュ
23a、23b 軸受
24 連結部
25、25a、25b、25c、25d、25e、25f、25g、25h マウント座面
26 マウント側ボルト孔
27、27a 内周縁部
28、28a、28b、28c 外周縁部
29 径方向内端縁
30、30a 径方向外端縁
31、31a 平面部
32 内側傾斜面部
33、33a 外側傾斜面部
34、34a 台座部
35、35a フレーム座面
36 台座側ボルト孔
37 軸部
38 頭部
39 低剛性部
40 凹溝
41 溝縁部
42 端縁
43 中間傾斜面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21