(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047255
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240329BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240329BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20240329BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240329BHJP
H01L 21/8249 20060101ALI20240329BHJP
H01L 21/8238 20060101ALI20240329BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H01L29/78 656D
H01L29/78 652T
H01L29/78 652Q
H01L29/78 657G
H01L29/78 652R
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652H
H01L29/78 301D
H01L29/78 301V
H01L29/78 301S
H01L29/78 301B
H01L27/06 321A
H01L27/092 A
H01L27/088 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152779
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 慎一郎
【テーマコード(参考)】
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F048AA01
5F048AB10
5F048AC03
5F048AC06
5F048BA01
5F048BA14
5F048BB05
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC12
5F048BD07
5F048CB07
5F140AA39
5F140AB01
5F140AB03
5F140AC23
5F140BA02
5F140BB04
5F140BB06
5F140BC15
5F140BF04
5F140BF43
5F140BH05
5F140BH25
5F140BH30
5F140BH47
5F140CD02
(57)【要約】
【課題】制御回路部の面積を小さくできる半導体装置を提供する。
【解決手段】炭化珪素を含む半導体基板と、1つ以上の制御素子を含む制御回路部とを備え、前記制御素子は、前記半導体基板の上面に設けられた制御ソース領域と、前記半導体基板の前記上面に設けられ、前記制御ソース領域と同一の導電型の制御ドレイン領域と、前記制御ソース領域と接して設けられ、前記制御ソース領域と異なる導電型の制御ベース領域と、前記半導体基板の前記上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、前記制御ベース領域と接する制御ゲートトレンチ部とを備える半導体装置を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有し、炭化珪素を含む半導体基板と、
前記半導体基板に形成され、1つ以上の制御素子を含む制御回路部と
を備え、
前記制御素子は、
前記半導体基板の前記上面に設けられた制御ソース領域と、
前記半導体基板の前記上面に設けられ、前記制御ソース領域と同一の導電型の制御ドレイン領域と、
前記制御ソース領域と接して設けられ、前記制御ソース領域と異なる導電型の制御ベース領域と、
前記半導体基板の前記上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、前記制御ベース領域と接する制御ゲートトレンチ部と
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板に形成され、前記半導体基板の前記上面と前記下面との間で電流を流すか否かを制御するパワー素子部を更に備え、
前記パワー素子部は、
前記半導体基板の前記上面に設けられたパワーソース領域と、
前記半導体基板の前記下面に設けられ、前記パワーソース領域と同一の導電型のパワードレイン領域と、
前記パワーソース領域の下方に設けられ、前記パワーソース領域と異なる導電型のパワーベース領域と、
前記パワーベース領域と前記パワードレイン領域との間に設けられ、前記パワーソース領域と同一の導電型のパワードリフト領域と、
前記半導体基板の前記上面から前記パワードリフト領域に達する深さまで設けられ、前記パワーベース領域と接するパワーゲートトレンチ部とを有し、
前記制御回路部は、前記パワー素子部の動作を制御する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記1つ以上の制御素子は、第1制御素子を含み、
前記第1制御素子において、
前記制御ソース領域および前記制御ドレイン領域はN型の領域であり、
前記制御ベース領域は前記制御ソース領域の下方に設けられたP型の領域であり、
前記制御ベース領域と前記制御ドレイン領域とを接続するN型の制御ドリフト領域が設けられ、
前記制御ゲートトレンチ部は、前記制御ソース領域と前記制御ベース領域との境界から、前記制御ドリフト領域と前記制御ベース領域との境界まで、前記制御ベース領域と接している
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記1つ以上の制御素子は、第2制御素子を含み、
前記第2制御素子において、
前記制御ソース領域および前記制御ドレイン領域はP型の領域であり、
前記制御ゲートトレンチ部は、前記制御ソース領域と前記制御ドレイン領域との間に配置され、
前記制御ベース領域は、前記制御ソース領域から前記制御ドレイン領域まで、前記制御ゲートトレンチ部に沿った部分を有するN型の領域である
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記1つ以上の制御素子を前記半導体基板の上面視において囲んでいるP型の分離領域を更に備える
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記1つ以上の制御素子と前記パワー素子部との間にP型の分離領域を更に備える
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板の深さ方向において、前記制御ゲートトレンチ部の下端と向かい合って配置されたP型の制御高濃度領域を更に備える
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記制御高濃度領域は、前記制御ゲートトレンチ部の前記下端と接している
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記深さ方向において、前記パワーゲートトレンチ部の下端と向かい合って配置されたP型のパワー高濃度領域を更に備える
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記制御高濃度領域と、前記パワー高濃度領域とが、前記深さ方向において同じ位置に設けられている
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記制御ソース領域および前記制御ドレイン領域はP型の領域であり、
前記制御ゲートトレンチ部は、前記制御ソース領域と前記制御ドレイン領域との間に配置され、前記深さ方向において前記パワーゲートトレンチ部よりも短く、且つ、前記制御高濃度領域とは離れて配置されている
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記パワー高濃度領域は、前記パワーゲートトレンチ部と離れて配置されている
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記制御ゲートトレンチ部の下端に接して設けられ、前記制御ベース領域よりも高濃度のN型の反転抑止領域を更に有する
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記1つ以上の制御素子は、第1制御素子および第2制御素子を含み、
前記第1制御素子において、
前記制御ソース領域および前記制御ドレイン領域はN型の領域であり、
前記制御ベース領域は前記制御ソース領域の下方に設けられたP型の領域であり、
前記制御ベース領域と前記制御ドレイン領域とを接続するN型の制御ドリフト領域が設けられ、
前記制御ゲートトレンチ部は、前記制御ソース領域と前記制御ベース領域との境界から、前記制御ドリフト領域と前記制御ベース領域との境界まで、前記制御ベース領域と接しており、
前記第2制御素子において、
前記制御ソース領域および前記制御ドレイン領域はP型の領域であり、
前記制御ゲートトレンチ部は、前記制御ソース領域と前記制御ドレイン領域との間に配置され、
前記制御ベース領域は、前記制御ソース領域から前記制御ドレイン領域まで、前記制御ゲートトレンチ部に沿った部分を有するN型の領域である
請求項1または2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化珪素の半導体基板に形成されたパワーICにおいて、CMOSゲートバッファと、縦型MOSFETとが設けられた構成が知られている(例えば非特許文献1参照)。
非特許文献1 Mitsuo Okamoto、他3名、「First Demonstration of a Monolithic SiC Power IC Integrating a Vertical MOSFET with a CMOS Gate Buffer」、2021 33rd International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs (ISPSD)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置では、CMOSゲートバッファ等の制御回路の面積を小さくできることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様においては、半導体装置を提供する。半導体装置は、上面および下面を有し、炭化珪素を含む半導体基板を備えてよい。半導体装置は、前記半導体基板に形成され、1つ以上の制御素子を含む制御回路部を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記制御素子は、前記半導体基板の前記上面に設けられた制御ソース領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記制御素子は、前記半導体基板の前記上面に設けられ、前記制御ソース領域と同一の導電型の制御ドレイン領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記制御素子は、前記制御ソース領域と接して設けられ、前記制御ソース領域と異なる導電型の制御ベース領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記半導体基板の前記上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、前記制御ベース領域と接する制御ゲートトレンチ部を有してよい。
【0005】
上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板に形成され、前記半導体基板の前記上面と前記下面との間で電流を流すか否かを制御するパワー素子部を備えてよい。
【0006】
上記何れかの半導体装置において、前記パワー素子部は、前記半導体基板の前記上面に設けられたパワーソース領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記パワー素子部は、前記半導体基板の前記下面に設けられ、前記パワーソース領域と同一の導電型のパワードレイン領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記パワー素子部は、前記パワーソース領域の下方に設けられ、前記パワーソース領域と異なる導電型のパワーベース領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記パワー素子部は、前記パワーベース領域と前記パワードレイン領域との間に設けられ、前記パワーソース領域と同一の導電型のパワードリフト領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記パワー素子部は、前記半導体基板の前記上面から前記パワードリフト領域に達する深さまで設けられ、前記パワーベース領域と接するパワーゲートトレンチ部を有してよい。
【0007】
上記何れかの半導体装置において、前記制御回路部は、前記パワー素子部の動作を制御してよい。
【0008】
上記何れかの半導体装置において、前記1つ以上の制御素子は、第1制御素子を含んでよい。上記何れかの半導体装置の前記第1制御素子において、前記制御ソース領域および前記制御ドレイン領域はN型の領域であってよい。上記何れかの半導体装置の前記第1制御素子において、前記制御ベース領域は前記制御ソース領域の下方に設けられたP型の領域であってよい。上記何れかの半導体装置の前記第1制御素子において、前記制御ベース領域と前記制御ドレイン領域とを接続するN型の制御ドリフト領域が設けられてよい。上記何れかの半導体装置の前記第1制御素子において、前記制御ゲートトレンチ部は、前記制御ソース領域と前記制御ベース領域との境界から、前記制御ドリフト領域と前記制御ベース領域との境界まで、前記制御ベース領域と接していてよい。
【0009】
上記何れかの半導体装置において、前記1つ以上の制御素子は、第2制御素子を含んでよい。上記何れかの半導体装置の前記第2制御素子において、前記制御ソース領域および前記制御ドレイン領域はP型の領域であってよい。上記何れかの半導体装置の前記第2制御素子において、前記制御ゲートトレンチ部は、前記制御ソース領域と前記制御ドレイン領域との間に配置されてよい。上記何れかの半導体装置の前記第2制御素子において、前記制御ベース領域は、前記制御ソース領域から前記制御ドレイン領域まで、前記制御ゲートトレンチ部に沿った部分を有するN型の領域であってよい。
【0010】
上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板の深さ方向において、前記制御ゲートトレンチ部の下端と向かい合って配置されたP型の制御高濃度領域を備えてよい。
【0011】
上記何れかの半導体装置において、前記制御高濃度領域は、前記制御ゲートトレンチ部の前記下端と接していてよい。
【0012】
上記何れかの半導体装置は、前記深さ方向において、前記パワーゲートトレンチ部の下端と向かい合って配置されたP型のパワー高濃度領域を備えてよい。
【0013】
上記何れかの半導体装置において、前記制御高濃度領域と、前記パワー高濃度領域とが、前記深さ方向において同じ位置に設けられていてよい。
【0014】
上記何れかの半導体装置において、前記制御ソース領域および前記制御ドレイン領域はP型の領域であってよい。上記何れかの半導体装置において、前記制御ゲートトレンチ部は、前記制御ソース領域と前記制御ドレイン領域との間に配置され、前記深さ方向において前記パワーゲートトレンチ部よりも短く、且つ、前記制御高濃度領域とは離れて配置されていてよい。
【0015】
上記何れかの半導体装置において、前記パワー高濃度領域は、前記パワーゲートトレンチ部と離れて配置されていてよい。
【0016】
上記何れかの半導体装置は、前記制御ゲートトレンチ部の下端に接して設けられ、前記ベース領域よりも高濃度のN型の反転抑止領域を有してよい。
【0017】
上記何れかの半導体装置において、前記1つ以上の制御素子は、第1制御素子および第2制御素子を含んでよい。上記何れかの半導体装置の前記第1制御素子において、前記制御ソース領域および前記制御ドレイン領域はN型の領域であってよい。上記何れかの半導体装置の前記第1制御素子において、前記制御ベース領域は前記制御ソース領域の下方に設けられたP型の領域であってよい。上記何れかの半導体装置の前記第1制御素子において、前記制御ベース領域と前記制御ドレイン領域とを接続するN型の制御ドリフト領域が設けられてよい。上記何れかの半導体装置の前記第1制御素子において、前記制御ゲートトレンチ部は、前記制御ソース領域と前記制御ベース領域との境界から、前記制御ドリフト領域と前記制御ベース領域との境界まで、前記制御ベース領域と接していてよい。上記何れかの半導体装置の前記第2制御素子において、前記制御ソース領域および前記制御ドレイン領域はP型の領域であってよい。上記何れかの半導体装置の前記第2制御素子において、前記制御ゲートトレンチ部は、前記制御ソース領域と前記制御ドレイン領域との間に配置されてよい。上記何れかの半導体装置の前記第2制御素子において、前記制御ベース領域は、前記制御ソース領域から前記制御ドレイン領域まで、前記制御ゲートトレンチ部に沿った部分を有するN型の領域であってよい。
【0018】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。
【
図2】半導体装置100の等価回路の一例を示す図である。
【
図3】制御回路部200に設けられる制御素子の一例を示す断面図である。
【
図4】制御回路部200に設けられる制御素子の他の例を示す断面図である。
【
図5】制御回路部200に設けられる制御素子の他の例を示す断面図である。
【
図6】パワー素子部10の一例を示す断面図である。
【
図7】パワー素子部10の他の例を示す断面図である。
【
図8】MOSFET202の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
本明細書の単位系は、特に断りがなければSI単位系である。長さの単位をcmで表示することがあるが、諸計算はメートル(m)に換算してから行ってよい。本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0022】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0023】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。本明細書において半導体基板の上面側と称した場合、半導体基板の深さ方向における中央から上面までの領域を指す。半導体基板の下面側と称した場合、半導体基板の深さ方向における中央から下面までの領域を指す。
【0024】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。本明細書において、「垂直」、「平行」または「沿って」のように方向を説明した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば5度以内である。
【0025】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。N型は第1導電型の一例であり、P型は第2導電型の一例である。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。本明細書においては、N-型、N型、N+型のように、濃度の異なる領域をN型と総称する場合があり、P-型、P型、P+型のように、濃度の異なる領域をP型と総称する場合がある。
【0026】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。半導体装置100は、MOSFET等のトランジスタ素子が形成された半導体チップである。半導体装置100は、トランジスタ素子が形成された半導体基板110を備える。本例の半導体基板110は炭化珪素(SiC)を含む基板である。一例として半導体基板110は、微量の不純物を除き、全体が炭化珪素で形成された炭化珪素基板である。
図1においては、半導体基板110の上面の一部の領域を示している。
図1においては、半導体基板110の上面に、半導体装置100の一部の部材の位置を投影している。本明細書では、半導体基板110の上面と平行な面に、各部材の位置を投影して観察することを上面視と称する場合がある。
【0027】
半導体装置100は、半導体基板110に形成された制御回路部200を備える。制御回路部200は、1つ以上の制御素子を含む。制御回路部200には複数の制御素子が含まれてよい。少なくとも1つの制御素子は、半導体基板110の上面に形成された横型のMOSFETである。横型のMOSFETにおいては、ソース領域およびドレイン領域が、半導体基板110の同一の面(例えば上面)に配置されている。制御回路部200は、制御素子としてPチャネルのMOSFETを含んでよく、NチャネルのMOSFETを含んでよく、CMOSFETを含んでもよい。
【0028】
半導体装置100は、制御回路部200に接続される複数のパッドを備えてよい。各パッドは、アルミニウム等の金属材料で形成されてよい。本例の半導体装置100は、半導体基板110の上方に配置されたVDDパッド122、VSSパッド124および信号パッド126を備える。VDDパッド122には、電源電圧VDDが印加される。VSSパッド124には、基準電圧VSSが印加される。基準電圧VSSは接地電位であってよく、他の電位であってもよい。信号パッド126には、入力信号Vinが印加される。例えば入力信号Vinは、制御回路部200に含まれるMOSFETのゲート端子に印加される信号である。
【0029】
半導体装置100は、半導体基板110に形成されたパワー素子部10を更に備えてよい。パワー素子部10は縦型のMOSFETを含んでよい。縦型のMOSFETにおいては、ソース領域およびドレイン領域が、半導体基板110の異なる面(本例では上面および下面)に配置されている。パワー素子部10は、半導体基板110の上面と下面との間に電流を流すか否かを制御する。本例のパワー素子部10の上方にはソースパッド52が配置されている。
【0030】
本例の制御回路部200は、パワー素子部10の動作を制御する。制御回路部200は、パワー素子部10に設けられた縦型のMOSFETをオンするか、または、オフするかを制御してよい。本例の制御回路部200は、入力信号Vinに応じて、パワー素子部10を制御するための出力信号を出力する。
【0031】
図2は、半導体装置100の等価回路の一例を示す図である。本例のパワー素子部10は、縦型のMOSFETである。
図2においては1つの縦型MOSFETを示しているが、パワー素子部10には、複数の縦型MOSFETが設けられてよい。縦型のMOSFETは、ドレインパッド24とソースパッド52との間に接続されている。
【0032】
本例の制御回路部200は、1つ以上のCMOSFETを含む。
図2においては1つのCMOSFETを示しているが、制御回路部200には、複数のCMOSFETが設けられてよい。CMOSFETは、PチャネルのMOSFET202と、NチャネルのMOSFET204とを含む。
【0033】
MOSFET202は、VDDパッド122と、出力端子206との間に接続されている。出力端子206は、出力電圧Voutを、パワー素子部10のMOSFETのゲート端子に印加する。
【0034】
MOSFET204は、出力端子206と、VSSパッド124との間に接続されている。MOSFET202およびMOSFET204には、同一の入力信号Vinが印加される。これによりMOSFET202およびMOSFET204は互いに相補的に動作し、入力信号Vinに応じた出力信号Voutを出力する。
【0035】
制御回路部200が出力する駆動電流により、パワー素子部10のゲート容量が充電される。このため制御回路部200は、パワー素子部10のゲート容量を十分高速に充電できるだけの駆動電流を出力することが好ましい。しかし、制御回路部200が出力する駆動電流を大きくしようとすると、半導体基板110において制御回路部200が占める面積が大きくなってしまう。制御回路部200のMOSFET202およびMOSFET204がプレーナ型のゲートを有する場合、制御回路部200の面積を小さくすることが困難である。
【0036】
図3は、制御回路部200に設けられる制御素子の一例を示す断面図である。当該断面は、半導体基板110の上面21と垂直なYZ面である。
図3においては、制御素子として、PチャネルのMOSFET202を示している。MOSFET202は、第2制御素子の一例である。
【0037】
MOSFET202は、P+型のソース領域218、P+型のドレイン領域220、N-型のベース領域222および、ゲートトレンチ部210を有する。MOSFET202は、N+型のソース領域216、P型の高濃度領域224およびN-型のドリフト領域226のうちの少なくとも一つを更に有してよい。
【0038】
ソース領域218は、制御ソース領域の一例である。ソース領域218は、半導体基板110の上面21に露出して設けられる。ソース領域218には、VDDパッド122から電源電圧VDDが印加される。
【0039】
ドレイン領域220は、半導体基板110の上面21に露出して設けられている。ドレイン領域220は、制御ソース領域(本例ではソース領域218)と同一の導電型の制御ドレイン領域の一例である。ドレイン領域220は、出力端子206に出力信号Voutを出力する。
【0040】
ベース領域222は、制御ソース領域(本例ではソース領域218)と異なる導電型の制御ベース領域の一例である。ベース領域222は、ソース領域218と接して設けられる。ベース領域222は、ソース領域216を介してVDDパッド122に接続されてよい。
【0041】
ソース領域216は、半導体基板110の上面21に露出して設けられた、ベース領域222よりもドーピング濃度の高いN+型の領域である。ソース領域216は、ベース領域222に電源電圧VDDを印加してよい。
【0042】
ゲートトレンチ部210は、制御ゲートトレンチ部の一例である。ゲートトレンチ部210は、半導体基板110の上面21から半導体基板110の内部まで設けられ、ベース領域222と接する。ゲートトレンチ部210は、ゲート絶縁膜212およびゲート電極214を有する。ゲート絶縁膜212は、溝状のゲートトレンチ部210の内壁を覆っている。ゲート絶縁膜212は、例えばゲートトレンチ部210の内壁を酸化または窒化して形成した膜である。
【0043】
ゲート電極214は、ゲート絶縁膜212に囲まれている。ゲート絶縁膜212は、ゲート電極214と半導体基板110とを電気的に絶縁する。ゲート電極214には、信号パッド126から入力信号Vinが印加される。ゲート電極214は、例えば不純物が添加されたポリシリコンを、ゲート絶縁膜212により囲まれた領域に堆積して形成される。
【0044】
各図のYZ断面に示した各部材は、X軸方向に延伸して設けられてよい。例えばゲートトレンチ部210は、X軸方向に延伸して設けられている。本例のゲートトレンチ部210は、X軸方向においてソース領域218とドレイン領域220との間に配置されている。ゲートトレンチ部210は、ソース領域218およびドレイン領域220と接していてよく、接していなくてもよい。ソース領域218およびドレイン領域220も、ゲートトレンチ部210に沿って、X軸方向に延伸して設けられていてよい。
【0045】
ベース領域222は、ソース領域218からドレイン領域220まで、ゲートトレンチ部210に沿った部分を有する。本例のベース領域222は、部分221、部分223、部分225を有する。部分221は、ソース領域218と接する位置からゲートトレンチ部210の下端まで、ゲートトレンチ部210の側壁に接して設けられた部分である。部分223は、ドレイン領域220と接する位置からゲートトレンチ部210の下端まで、ゲートトレンチ部210の側壁に接して設けられた部分である。部分225は、部分221から部分223まで、ゲートトレンチ部210の下面に接して設けられた部分である。
【0046】
ゲート電極214に所定のオン電圧が印加されると、部分221、部分223および部分225においてゲートトレンチ部210と接する表層に、P型のチャネルが形成される。これにより、ソース領域218とドレイン領域220とが導通する。ゲートトレンチ部210の側面に接する半導体基板110の面は、m面であってよい。つまり、半導体基板110のXZ断面がm面であってよい。これにより、部分221および部分223におけるキャリアの移動度を向上できる。
【0047】
半導体基板110の上面21と、ゲートトレンチ部210の下端とのZ軸方向の距離をZ1とする。半導体基板110の上面21と、ソース領域218の下端とのZ軸方向の距離をZ2とする。半導体基板110の上面21と、ドレイン領域220の下端とのZ軸方向の距離をZ2としてもよい。距離Z1は、距離Z2よりも大きい。距離Z2は、距離Z1の半分以上であってもよい。距離Z2を大きくすることで、部分221および部分223のZ軸方向の長さを小さくできる。これにより、チャネルを短くできる。距離Z2は、距離Z1の3/4以上であってもよい。
【0048】
高濃度領域224は、半導体基板110の深さ方向(Z軸方向)において、ゲートトレンチ部210の下端と向かい合って配置されている。高濃度領域224は、制御高濃度領域の一例である。本例の高濃度領域224は、ゲートトレンチ部210とは離れて配置されている。高濃度領域224は、ソース領域218、ドレイン領域220、ベース領域222およびゲートトレンチ部210の下方に設けられてよい。高濃度領域224は、
図3に示したMOSFET202の全体と重なるように配置されてよい。高濃度領域224を設けることで、MOSFET202をドリフト領域226から分離できる。パワー素子部10にも、制御回路部200と共通のドリフト領域226が設けられている。このため、高濃度領域224を設けることで、MOSFET202とパワー素子部10とを分離できる。
【0049】
ドリフト領域226は、高濃度領域224と、半導体基板110の下面との間に設けられる。半導体基板110は、ソース領域218等の局所的なドーピング領域を形成する前は、全体がN-型の基板であってよい。ドリフト領域226は、局所的なドーピング領域が形成されずに残存した領域であってよい。ベース領域222は、ドリフト領域226であってよく、局所的に形成したドーピング領域であってもよい。つまりベース領域222は、ドリフト領域226と同一のドーピング濃度を有してよく、異なるドーピング濃度を有してもよい。
【0050】
図3に示すように、ゲートトレンチ部210を設けることで、制御回路部200において、半導体基板110の深さ方向にチャネルを形成できる。このため、制御回路部200の上面視において多くのチャネルを形成でき、上面視におけるチャネル幅およびチャネル密度を容易に向上できる。従って、制御回路部200が出力する駆動電流を容易に増大できる。
【0051】
図4は、制御回路部200に設けられる制御素子の他の例を示す断面図である。当該断面は、半導体基板110の上面21と垂直なYZ面である。
図4においては、制御素子として、NチャネルのMOSFET204を示している。MOSFET204は、第1制御素子の一例である。
【0052】
MOSFET204は、N+型のソース領域232、N+型のドレイン領域228、P型のベース領域234および、ゲートトレンチ部210を有する。MOSFET204は、P+型のソース領域230、P型の高濃度領域224、N-型のベース領域222、N型の抵抗低減領域236およびN-型のドリフト領域226のうちの少なくとも一つを更に有してよい。
【0053】
ソース領域232は、半導体基板110の上面21に露出して設けられた制御ソース領域の一例である。ソース領域232には、VSSパッド124から基準電圧VSSが印加される。
【0054】
ドレイン領域228は、半導体基板110の上面21に露出して設けられている。ドレイン領域228は、制御ソース領域(本例ではソース領域232)と同一の導電型の制御ドレイン領域の一例である。ドレイン領域228は、出力端子206に出力信号Voutを出力する。ドレイン領域228は、MOSFET202のドレイン領域220と接続されてよい。
【0055】
ベース領域234は、制御ソース領域(本例ではソース領域232)と異なる導電型の制御ベース領域の一例である。ベース領域234は、ソース領域232と接して設けられる。ベース領域234は、ソース領域230を介してVSSパッド124に接続されてよい。
【0056】
ソース領域230は、半導体基板110の上面21に露出して設けられてよい。ソース領域230は、ベース領域234に基準電圧VSSを印加してよい。
【0057】
ゲートトレンチ部210は、制御ベース領域(本例ではベース領域234)と接する制御ゲートトレンチ部の一例である。ゲートトレンチ部210は、半導体基板110の上面21から半導体基板110の内部まで設けられる。ゲートトレンチ部210は、
図3に示したゲートトレンチ部210と同一の構造を有してよい。
【0058】
半導体基板110には、ベース領域234とドレイン領域228とを接続する、N型の制御ドリフト領域が設けられる。本例では、抵抗低減領域236およびベース領域222が、制御ドリフト領域の一例である。ベース領域222は、ドレイン領域228に接続されている。ベース領域222のドーピング濃度は、
図3に示したベース領域222のドーピング濃度と同一であってよい。
【0059】
抵抗低減領域236は、ベース領域234とベース領域222とを接続する。抵抗低減領域236は、ベース領域222よりもドーピング濃度の高いN型の領域である。抵抗低減領域236を設けることで、ベース領域234からドレイン領域228までの電流経路における電気抵抗を低減できる。他の例では、抵抗低減領域236が設けられておらず、ベース領域222がベース領域234に接続されていてもよい。
【0060】
本例のゲートトレンチ部210は、ソース領域232とベース領域234との境界から、抵抗低減領域236とベース領域234との境界まで、ベース領域234と接している。ゲート電極214に所定のオン電圧が印加されると、ベース領域234においてゲートトレンチ部210と接する表層に、N型のチャネルが形成される。これにより、ソース領域232と抵抗低減領域236とが導通し、ソース領域232とドレイン領域228とが導通する。
【0061】
抵抗低減領域236は、ベース領域234の下端と接する位置から、ゲートトレンチ部210と離れる方向(Y軸方向)に延伸して設けられてよい。抵抗低減領域236は、ベース領域234の下方から、ドレイン領域228の下方まで延伸していてよい。抵抗低減領域236は、ソース領域230の下方を通過して、Y軸方向に延伸してよい。ソース領域230は、抵抗低減領域236と接していてよく、接していなくてもよい。ソース領域230と抵抗低減領域236との間には、ベース領域234が配置されていてもよい。ベース領域222は、Z軸方向において、ドレイン領域228と抵抗低減領域236との間に配置されてよい。
【0062】
MOSFET204においても、高濃度領域224は、半導体基板110の深さ方向(Z軸方向)において、ゲートトレンチ部210の下端と向かい合って配置されている。MOSFET204において、高濃度領域224は、ゲートトレンチ部210の下端と接していてよく、ゲートトレンチ部210とは離れて配置されていてもよい。高濃度領域224は、ソース領域232、ドレイン領域228、ベース領域234およびゲートトレンチ部210の下方に設けられてよい。高濃度領域224は、
図4に示したMOSFET204の全体と重なるように配置されてよい。高濃度領域224を設けることで、MOSFET204とパワー素子部10とを分離できる。ドリフト領域226は、高濃度領域224と、半導体基板110の下面との間に設けられている。
【0063】
図4に示すように、ゲートトレンチ部210を設けることで、制御回路部200において、半導体基板110の深さ方向にチャネルを形成できる。このため、制御回路部200におけるチャネル幅およびチャネル密度を容易に向上でき、制御回路部200が出力する駆動電流を容易に増大できる。
【0064】
図5は、制御回路部200に設けられる制御素子の他の例を示す断面図である。本例の制御回路部200は、MOSFET202およびMOSFET204を有する。MOSFET204の構造は、
図3に示したMOSFET204と同様である。MOSFET202の構造は、
図4に示したMOSFET202と同様である。
【0065】
本例の制御回路部200は、分離領域240を有する。分離領域240は、MOSFET202を他の素子から分離し、また、MOSFET204を他の素子から分離する。分離領域240は、P型の領域である。分離領域240のドーピング濃度は、高濃度領域224と同一であってよく、異なっていてもよい。分離領域240のドーピング濃度は、ソース領域218、ドレイン領域220、または、ソース領域230のいずれかと同一であってもよい。
【0066】
分離領域240は、半導体基板110の上面21から、高濃度領域224まで設けられてよい。分離領域240は、MOSFET202およびMOSFET204の間に配置されてよい。本例の分離領域240は、上面視においてMOSFET202およびMOSFET204のそれぞれを囲んでいる。分離領域240を設けることで、MOSFET202およびMOSFET204のそれぞれを、他の素子から分離できる。分離領域240には、基準電圧VSSが印加されてよい。
【0067】
本例では、MOSFET202の高濃度領域224と、MOSFET204の高濃度領域224とが同一の深さ位置に設けられている。また、MOSFET202のゲートトレンチ部210と、MOSFET204のゲートトレンチ部210は、同一の深さまで設けられている。これにより、簡易な製造工程で制御回路部200を形成できる。MOSFET202においては、ゲートトレンチ部210と高濃度領域224とが離れて配置される。このため、本例のMOSFET204では、ゲートトレンチ部210と高濃度領域224とが離れて配置されている。
【0068】
図6は、パワー素子部10の一例を示す断面図である。当該断面は、半導体基板110の上面21と垂直なYZ面である。本例のパワー素子部10は、半導体基板110の上面21および下面23の間に配置されたN-型のドリフト領域226を有する。パワー素子部10のドリフト領域226は、制御回路部200のドリフト領域226とつながっている。パワー素子部10と制御回路部200との間は、P型の分離領域240を有してよい。P型の分離領域240は、高濃度領域224と接してよい。
【0069】
パワー素子部10は、ドリフト領域226の上方に配置され、ドリフト領域226よりもドーピング濃度の高い抵抗低減領域236を有してもよい。ドリフト領域226および抵抗低減領域236は、パワードリフト領域の一例である。抵抗低減領域236は、制御回路部200における抵抗低減領域236と同一のドーピング濃度であってよく、異なるドーピング濃度であってもよい。
【0070】
パワー素子部10には、ドリフト領域226よりもドーピング濃度の高いN+型のソース領域12が、ドリフト領域226と半導体基板110の上面21との間に設けられている。ソース領域12は、半導体基板110の上面21に設けられたパワーソース領域の一例である。ソース領域12は、ソースパッド52と接続され、ソース電圧Vsが印加される。
【0071】
ソース領域12とドリフト領域226との間には、P型のベース領域14が設けられている。ベース領域14は、パワーソース領域(本例ではソース領域12)と異なる導電型のパワーベース領域の一例である。ベース領域14は、ソース領域12の下方に設けられる。
【0072】
ベース領域14とドリフト領域226との間には、抵抗低減領域236が設けられてよい。抵抗低減領域236を設けることで、主電流が流れる経路の抵抗を低減できる。
【0073】
ドリフト領域226と下面23との間には、ドリフト領域226よりもドーピング濃度の高いN型のドレイン領域22が設けられてよい。ドレイン領域22は、パワーソース領域(ソース領域12)と同一の導電型のパワードレイン領域の一例である。ドレイン領域22は、半導体基板110の下面23に設けられる。ドレイン領域22は、ドレインパッド24に接続され、ドレイン電圧Vdが印加される。ドリフト領域226は、パワーソース領域(ソース領域12)と同一の導電型のパワードリフト領域の一例である。ドリフト領域226は、ベース領域14とドレイン領域22との間に設けられる。ドレイン領域22は、ドレインパッド24と接続している。他の例では、半導体基板110にドレイン領域22が設けられずに、ドリフト領域226の下端を含む領域がドレイン領域22として機能してもよい。
【0074】
半導体基板110の上面21には、複数のゲートトレンチ部41が設けられている。それぞれのゲートトレンチ部41は、半導体基板110の上面21から、ベース領域14よりも下方まで設けられ、パワードリフト領域まで達している。本例のゲートトレンチ部41は、抵抗低減領域236に達する深さまで設けられている。抵抗低減領域236が設けられない場合、ゲートトレンチ部41は、ドリフト領域226に達する深さまで設けられてよい。ゲートトレンチ部41は、パワーベース領域(ベース領域14)と接するパワーゲートトレンチ部の一例である。
【0075】
ゲートトレンチ部41は、YZ断面において、制御回路部200のゲートトレンチ部210と同一の構造を有してよい。ゲートトレンチ部41の深さ方向における長さZ3は、ゲートトレンチ部210の深さ方向における長さZ1と同一であってよく、異なっていてもよい。
【0076】
ゲートトレンチ部41は、ゲート絶縁膜43およびゲート電極44を有する。ゲート絶縁膜43は、溝状のゲートトレンチ部41の内壁を覆っている。ゲート絶縁膜43は、例えばゲートトレンチ部41の内壁を酸化または窒化して形成した膜である。ゲート絶縁膜43は、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜を堆積した膜でもよい。
【0077】
ゲート電極44は、ゲート絶縁膜43に囲まれている。ゲート絶縁膜43は、ゲート電極44と半導体基板110とを電気的に絶縁する。ゲート電極44には、制御回路部200の出力端子206から出力信号Voutが印加される。ゲート電極44は、例えば不純物が添加されたポリシリコンを、ゲート絶縁膜43により囲まれた領域に堆積して形成される。
【0078】
ゲート電極44に所定のオン電圧が印加されると、ベース領域14においてゲートトレンチ部41と接する表層に、N型のチャネルが形成される。これにより、ソース領域12とドレイン領域22とが導通する。
【0079】
半導体基板110には、Z軸方向においてゲートトレンチ部41の下端と向かい合って配置されたP型の高濃度領域20が設けられてよい。高濃度領域20は、パワー高濃度領域の一例である。
【0080】
本例の高濃度領域20は、ゲートトレンチ部41の下端と接している。高濃度領域20は、ベース領域14の下方の少なくとも一部の領域には設けられていない。高濃度領域20は抵抗低減領域236の下端よりも浅い範囲に設けられてよく、ドリフト領域226と接していてもよい。高濃度領域20を設けることで、ゲートトレンチ部41の下端近傍における電界集中を緩和して、パワー素子部10の耐圧を向上できる。
【0081】
高濃度領域20は、制御回路部200の高濃度領域224と、深さ方向において同じ位置に配置されてよい。高濃度領域20は、高濃度領域224と同一のドーピング濃度を有してよい。これにより、高濃度領域20と高濃度領域224とを同一の製造工程で形成できる。他の例では、高濃度領域20は、高濃度領域224と異なる深さ位置に設けられてよい。高濃度領域20は、高濃度領域224とは異なるドーピング濃度を有してもよい。
【0082】
図7は、パワー素子部10の他の例を示す断面図である。本例のパワー素子部10は、高濃度領域20が、ゲートトレンチ部41の下端と離れている点で、
図6の例と相違する。他の構造は、
図6の例と同様である。
【0083】
本例では、パワー素子部10のゲートトレンチ部41の長さZ3と、制御回路部200のゲートトレンチ部210の長さZ1とが同一である。また、パワー素子部10の高濃度領域20の深さ位置と、制御回路部200の高濃度領域224の深さ位置とが同一である。このような構造により、パワー素子部10の製造工程と、制御回路部200の製造工程とを共通化できる。
【0084】
上述したように、MOSFET202の高濃度領域224は、ゲートトレンチ部210の下端から離れて配置される。このため、MOSFET204においても、高濃度領域224はゲートトレンチ部210の下端から離れて配置される。同様に、パワー素子部10の高濃度領域20は、ゲートトレンチ部41の下端から離れて配置されている。このような構造でも、ゲートトレンチ部41の下端の近傍に高濃度領域20を配置することで、ゲートトレンチ部41の下端近傍における電界集中を緩和できる。高濃度領域20は、抵抗低減領域236の下端よりも上方に配置されていてよい。
【0085】
他の例では、
図6に示すように、高濃度領域20がゲートトレンチ部41の下端と接しており、且つ、MOSFET202の高濃度領域224は、ゲートトレンチ部210の下端から離れて配置されていてもよい。これにより、ゲートトレンチ部41の下端近傍の電界集中をより緩和できる。MOSFET204の高濃度領域224は、ゲートトレンチ部210の下端に接していてよく、離れていてもよい。
【0086】
この場合、MOSFET202のゲートトレンチ部210の長さZ1は、パワー素子部10のゲートトレンチ部41の長さZ3よりも短くてよい。MOSFET204のゲートトレンチ部210の長さは、パワー素子部10のゲートトレンチ部41の長さZ3と同一であってよい。高濃度領域20および高濃度領域224は同一の深さ位置に形成されてよい。これにより、高濃度領域20をゲートトレンチ部41の下端に接して配置し、且つ、MOSFET202の高濃度領域224をゲートトレンチ部210の下端から離れて配置できる。また、MOSFET204の高濃度領域224を、ゲートトレンチ部210の下端に接して配置できる。他の例では、ゲートトレンチ部210とゲートトレンチ部41の長さを同一にして、高濃度領域20および高濃度領域224の深さ位置を異ならせてもよい。
【0087】
図8は、MOSFET202の他の例を示す断面図である。本例のMOSFET202は、反転抑止領域252を有する点で、
図3から
図7において説明した例と相違する。他の構造は、
図3から
図7において説明したいずれかの例と同様である。
【0088】
反転抑止領域252は、ゲートトレンチ部210の下端に接して設けられ、ベース領域222よりも高濃度のN型の領域である。反転抑止領域252は、ゲートトレンチ部210の下面の全体を覆ってよい。このような構造により、ゲートトレンチ部210の下端に接する領域が、P型に反転するのを抑止できる。このため、ソース領域218およびドレイン領域220の間に、意図せずにチャネルが形成されるのを抑制できる。また、反転抑止領域252を設けることで、MOSFET202の閾値電圧を調整できる。
【0089】
図1から
図8において説明した例において、パワー素子部10のゲートトレンチ部41と、制御回路部200のゲートトレンチ部210とは、ともにX軸方向に延伸して設けられている。他の例では、上面視においてパワー素子部10のゲートトレンチ部41が延伸する方向と、制御回路部200のゲートトレンチ部210が延伸する方向とは異なっていてもよい。
【0090】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0091】
10・・・パワー素子部、12・・・ソース領域、14・・・ベース領域、20・・・高濃度領域、21・・・上面、22・・・ドレイン領域、23・・・下面、24・・・ドレインパッド、41・・・ゲートトレンチ部、43・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート電極、52・・・ソースパッド、100・・・半導体装置、110・・・半導体基板、122・・・VDDパッド、124・・・VSSパッド、126・・・信号パッド、200・・・制御回路部、202・・・MOSFET、204・・・MOSFET、206・・・出力端子、210・・・ゲートトレンチ部、212・・・ゲート絶縁膜、214・・・ゲート電極、216・・・ソース領域、218・・・ソース領域、220・・・ドレイン領域、221、223、225・・・部分、222・・・ベース領域、224・・・高濃度領域、226・・・ドリフト領域、228・・・ドレイン領域、230・・・ソース領域、232・・・ソース領域、234・・・ベース領域、236・・・抵抗低減領域、240・・・分離領域、252・・・反転抑止領域