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特開2024-47271処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法
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  • 特開-処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法 図1
  • 特開-処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法 図2
  • 特開-処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法 図3
  • 特開-処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法 図4
  • 特開-処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法 図5
  • 特開-処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法 図6
  • 特開-処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法 図7
  • 特開-処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法 図8
  • 特開-処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法 図9
  • 特開-処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法 図10
  • 特開-処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法 図11
  • 特開-処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047271
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/08 20230101AFI20240329BHJP
【FI】
C02F3/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152799
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 錦陽
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】小原 卓巳
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 建至
(72)【発明者】
【氏名】大月 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】川田 滋久
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA09
4D003AB15
4D003DA21
4D003DA29
4D003DB01
4D003DB05
4D003FA05
(57)【要約】
【課題】 水処理性能を維持し易い水処理装置のための処理システムを提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、水処理装置のための処理システムは、収集部と、プロセッサとを有する。収集部は、原水を浄化する微生物がそれぞれ付着し、それぞれの一部が原水に浸漬し、それぞれの残りが原水の水面から露出して一緒に回転する円板状の複数の平板にそれぞれ付着する微生物の量に関する情報を収集する。プロセッサは、情報に基づいて複数の平板にそれぞれ付着する微生物の量をそれぞれ推定し、推定した微生物の量に基づいて複数の平板にそれぞれ付着する微生物の量を調整する調整機構の状態を出力する。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を浄化する微生物がそれぞれ付着し、それぞれの一部が原水に浸漬し、それぞれの残りが前記原水の水面から露出して一緒に回転する円板状の複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量に関する情報に基づいて前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量を前記複数の平板ごとにそれぞれ推定し、推定した前記微生物の量に基づいて前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量を調整する調整機構の状態を出力する、プロセッサを有する、水処理装置のための処理システム。
【請求項2】
原水を浄化する微生物がそれぞれ付着し、それぞれの一部が原水に浸漬し、それぞれの残りが前記原水の水面から露出して一緒に回転する円板状の複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量に関する情報に基づいて前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量を前記複数の平板ごとにそれぞれ推定し、推定した前記微生物の量に基づいて前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量を一定範囲に保つように前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量を調整する調整機構を制御する、プロセッサを有する、水処理装置のための処理システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記情報に基づいて前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量を前記複数の平板ごとに推定し、前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量が、前記複数の平板の少なくとも1つで、目標値と一定以上の差異が生じると、前記調整機構にメンテナンスが必要であると出力する、請求項1又は請求項2に記載の処理システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の処理システムと、
前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量に関する情報を収集する収集部と
を有する、水処理装置。
【請求項5】
前記収集部は、前記複数の平板をそれぞれ又は一緒に撮像して1又は複数の画像データを取得する撮像部であり、
前記プロセッサは、前記撮像部で撮像した前記画像データに基づいて、前記複数の平板に付着する前記微生物の量を推定する、請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記原水を浄化する前記微生物がそれぞれ付着し、それぞれの一部が前記原水に浸漬し、それぞれの残りが前記原水の水面から露出して一緒に回転する、円板状の複数の平板と、
前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量を調整する調整機構と、
をさらに有する、請求項4に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサに制御され、前記調整機構に付着する物質を除去する洗浄部を有し、
前記プロセッサが前記調整機構のメンテナンスが必要であると出力したとき、前記プロセッサは、前記調整機構で前記複数の平板に付着する前記微生物の量を調整する機能を保つように前記洗浄部を動作させる、請求項6に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記洗浄部は、前記調整機構に付着する物質を除去するときに、純水を用いる、請求項7に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記調整機構は、前記複数の平板に対してそれぞれ物理的作用を加える、請求項6に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記調整機構は、前記原水の水面下に配置され、前記複数の平板の浸漬した部分に気泡を衝突させて前記複数の平板に付着する前記微生物の量を調整する、請求項9に記載の水処理装置。
【請求項11】
原水を浄化する微生物がそれぞれ付着し、それぞれの一部が原水に浸漬し、それぞれの残りが前記原水の水面から露出し、回転する円板状の複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量に関する第1の情報を収集し、前記第1の情報に基づいて前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量をそれぞれ推定すること、
前記複数の平板の少なくとも1つに付着する前記微生物の量が目標値から外れているときに、前記第1の情報に基づいて前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量を前記目標値の範囲内となるように調整機構を用いて調整すること、
前記調整機構を前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量を用いて調整した後、前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量に関する第2の情報を収集し、前記第2の情報に基づいて前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量について前記目標値からの乖離をそれぞれ推定し、前記乖離に基づいて前記調整機構の状態を出力すること
を含む、水処理装置における調整機構の状態推定方法。
【請求項12】
原水を浄化する微生物がそれぞれ付着し、それぞれの一部が原水に浸漬し、それぞれの残りが前記原水の水面から露出し、回転する円板状の複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量に関する情報を収集すること、
前記情報に基づいて前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量をそれぞれ推定し、推定した前記微生物の量に基づいて前記複数の平板にそれぞれ付着する前記微生物の量を調整するように調整機構を動作させること、
を含む、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、処理システム、水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下水、農業排水、および工場排水等の有機物を含んだ有機排水を浄化する水処理装置では、一般に、微生物による生物処理(以後、「微生物処理」と称する)が用いられている。この種の微生物処理を活用した水処理方法の一つとして、回転する円板状の平板に微生物を付着させて用いる回転円板法がある。回転円板法を用いることで、水処理過程で発生する余剰の汚泥量を削減できること、臭気の発生を抑制できること、良好な有機物ならびに窒素除去性能が得られること、また、後段に活性汚泥法の生物反応槽を配置した場合、生物反応槽の負荷を低減できることから、生物反応槽のブロワの消費電力を大幅に低減できるなどの効果が得られることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2020/241382
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、水処理性能を維持し易い処理システム、水処理性能を維持し易い水処理装置、水処理装置における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、水処理装置のための処理システムは、プロセッサを有する。プロセッサは、原水を浄化する微生物がそれぞれ付着し、それぞれの一部が原水に浸漬し、それぞれの残りが原水の水面から露出して一緒に回転する円板状の複数の平板にそれぞれ付着する微生物の量に関する情報に基づいて複数の平板にそれぞれ付着する微生物の量を複数の平板ごとにそれぞれ推定する。また、プロセッサは、推定した微生物の量に基づいて複数の平板にそれぞれ付着する微生物の量を調整する調整機構の状態を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る水処理装置の概略図。
図2図1に示す水処理装置の水処理タンクを上から見た図。
図3】各平板に付着する微生物の量のレベル1~4の一例を示す写真。
図4図1に示す水処理装置のコントローラの概略的なブロック図。
図5図1に示す水処理装置の調整機構の散気管の穴と複数の平板との位置関係を示す概略図。
図6】各平板に対する目標の微生物の量のレベルに対する、各平板に対する微生物の量のレベルの推定結果を示す表の一例。
図7】各平板に対する目標の微生物の量のレベルに対する、各平板に対する微生物の量のレベルの推定結果を示す、図6とは異なる表の一例。
図8図1及び図4に示すコントローラによる水処理装置の複数の平板に対する微生物の付着量の調整方法の一例。
図9】各平板に対する微生物の量のレベルのうち、標準レベルであるレベル3に対する各レベルでの洗浄力の大きさの例を示す表。
図10図1及び図4に示すコントローラによる水処理装置における調整機構の状態推定方法の一例。
図11】第2実施形態に係る水処理装置の概略図。
図12図11に示す水処理装置の水処理タンクを上から見た図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、いくつかの実施形態について説明する。
【0008】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る水処理装置100について、図1から図10を用いて説明する。
【0009】
図1は、第1実施形態に係る水処理装置100を原水(被処理水)wの導入側から見た構成を示す図である。図2は、第1実施形態に係る水処理装置100を上側から見た構成を示す図である。
【0010】
水処理装置100は、水処理タンク10と、複数の平板20と、回転軸30と、モータ40と、調整機構50と、汚泥引抜配管60と、汚泥引抜弁70と、を備える。水処理装置100は、情報収集部80と、水処理装置100における処理システム110を備える。処理システム110は、コントローラ(コンピュータ)90を備える。処理システム110は、水処理装置100の調整機構50の状態推定、及び、水処理装置100の複数の平板20に対する微生物の付着量の調整を行い得る。なお、原水w(処理する排水)に応じて、形成される微生物膜は異なる。このため、水処理装置100は、それぞれの微生物膜に合わせた微生物の付着量の調整が必要である。
【0011】
図1に示すように、水処理タンク10は、導入した原水wを貯め、原水wを浄化した処理水xを排出する容器である。ここでいう「原水w」は、水処理装置100の処理対象となる水のことであり、水処理装置100が処理中のものも含む。また、「処理水x」は、水処理装置100により処理された水のことである。水処理タンク10は、原水wを流入させる流入口(図示せず)、及び、処理水xを排出する排出口(図示せず)を備える。
【0012】
図1及び図2に示すように、複数の平板20は例えば同じ径、同じ厚さの円板状に形成されている。各平板20は、円の中心に回転軸30を貫通させるための貫通孔が設けられている。回転軸30は、各平板20の円の中心の貫通孔に挿入され、各平板20に固定される。各平板20は、回転軸30の長軸方向に沿って、一定の間隔Lを保ってそれぞれ平行に配置される。すなわち、複数の平板20は、適宜の大きさの水処理タンク10の中に一定の間隔Lだけ間を空けて平行に複数配置される。複数の平板20は、モータ40の回転軸に接続される共通の回転軸30の軸回りを一緒に回転する。
【0013】
複数の平板20の表面(両側)には、適宜に微生物が付着している。複数の平板20は、少なくとも下部(一部)が水に浸漬し、少なくとも上部(残り)が水面よりも上側に露出するように配置されている。すなわち、各平板20は、全体が原水に浸漬されるのではなく、下側の一部が原水wに浸漬され、原水wによって浸漬されている部分よりも上側は気相中にあるように水処理タンク10内に設置される。なお、原水wの水面は、複数の平板20の回転軸30の近辺にあることが好適である。これによって、各平板20は、上側が空気に接し、下側が原水wに浸漬される。このような構成は、例えば、回転軸30を、水処理タンク10の上縁高さとほぼ同じ高さに、水平に配置することによって達成される。これによって、水処理タンク10が原水wによって満水になっても、平板20は、例えば下側半分しか原水wによって浸漬されないので、少なくとも上側半分は、空気に接することになる。各平板20の表面には、バチルス菌のような微生物を、優占的に付着し易くするための接触体20aが配置されている。接触体20aは、微生物を保持することができる。接触体20aの構成は、例えば繊維状のものを使用することができるが、具体的な構成については特に限定されない。また、平板20は、多くの微生物を有することができるように多孔性であってもよい。
【0014】
図3には、それぞれ両側に接触体20aを含む複数の平板20、及び、複数の平板20(の接触体20a)に付着する微生物を示す。平板20に付着する微生物の量は、平板20に付着する微生物の厚さに対応すると想定される。このため、微生物の量が多くなるにつれて、平板20に付着する微生物の厚さが厚くなり、微生物の量が少なくなるにつれて、平板20に付着する微生物の厚さは薄くなる。図3では、微生物の量が少ないレベル1から、徐々に多くなったレベル4までを示す。なお、レベル4よりもさらに微生物の量が多く、平板20の接触体20aが見えないような状態をレベル5とする。すなわち、本実施形態では、平板20に付着する微生物の量を、少ない状態から多い順に、レベル1からレベル5とする。
【0015】
図2に示すモータ40は、駆動力によって回転軸30を回転させる。これによって、各平板20は、図1に示す矢印Rに示すように、回転軸30を中心として回転する。回転軸30及び各平板20の回転速度は、水処理装置100の通常運転時において、例えば10rpmなど、任意に設定される。このように、各平板20が、回転軸30の回転とともに図1に示す矢印Rに示すように適宜の回転速度で回転することによって、接触体20aに付着する微生物は、空気中の酸素を取り込み、原水w中の有機物成分を酸化分解する。原水w中の窒素成分も同時に酸化され、NOxに変換した後、各平板20の内部に住み着いている嫌気性微生物の働きで脱窒反応が起こり、窒素成分が除去される。これによって、原水wから有機物や窒素成分を除去した処理水xが、水処理タンク10から排出される。
【0016】
なお、図3に示すように、回転軸30に加えて、支持部30aにより、各平板20が支持されている。例えば複数の支持部30aは例えば回転軸30と同程度の長さのシャフトとして形成され、各平板20を貫通するように、平板20の周方向に適宜の間隔に設けられる。このため、支持部30aは、回転軸30の回転に伴う複数の平板20の一緒の回転を補助することができる。
【0017】
水処理装置100での浄化運転の継続に伴い、すなわち、複数の平板20の下部が原水wに浸漬しながら回転し続けると、接触体20a、つまり複数の平板20の表面に付着する微生物が増殖する。平板20に付着する微生物が過剰に増殖すると、平板20に付着する微生物に十分な酸素が行き渡らなくなり、浄化性能が低下する可能性がある。さらには、微生物への酸素の供給が不十分となることにより、各平板20の嫌気化の進行により臭気が増加したり、処理水xの透視度が低下したりするといった悪影響が生じる場合もある。したがって、平板20に微生物が過剰に付着する場合に、微生物の一部を除去するなどし、余剰に付着する微生物の量を減少させる必要がある。例えば水処理を予定する原水wの状態や含有物等に応じて適宜に設定可能であるが、本実施形態の場合、図3に示すレベル3程度の微生物の量が適切であると想定する。すなわち、水処理装置100を運転する際に、各平板20の目標微生物の量のレベルをコントローラ90の入力部96を介して入力し、微生物の量目標レベルを例えばレベル3と設定する。
【0018】
図1及び図2に示す調整機構50は、平板20に付着する微生物の付着量が、適切な範囲内に保たれるように、平板20に付着する微生物の量を調整する。平板20に付着する微生物の付着量は、一般に、時間の経過とともに多くなる。このため、調整機構50は、通常、平板20に付着する微生物の一部を除去する。本実施形態に係る調整機構50は、平板20に物理的な作用を加えて、微生物の一部を除去する。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、調整機構50は、複数の平板20に付着する微生物の一部を物理的作用により除去する除去部(洗浄機構)51と、除去部51の後述する散気管53を洗浄するための洗浄部55とを有する。
【0020】
上述したように、平板20に微生物が例えば過剰に付着すると、平板20に付着する微生物のうち、内側の微生物に酸素を十分に供給できなくなるとともに、原水wと平板20に付着する微生物のうち、内側の微生物との接触が妨げられる。このため、平板20に付着させた微生物を用いる水浄化性能が低下する。このため、平板20に付着する微生物を剥離等により除去するための手段として、除去部51が必要となる。原水wが有機物豊富な排水の場合、平板20に付着する微生物が増え続ける傾向があり、適切な微生物の量を保つために、除去部51は、常時運転する必要があると想定される。
【0021】
本実施形態では、除去部51は、原水w中での散気、すなわち、気泡ABによって平板20に付着する微生物の一部を除去する例について説明する。除去部51は、送風機(ブロワ)52と、散気管53と、開閉弁54とを備える。送風機52は、水処理タンク10の外部に配置される。散気管53は、開閉弁54を介して送風機52に接続され、送風機52に対して離れた離間部が水処理タンク10内に配置される。散気管53の離間部は、回転軸30の軸方向に例えば平行に延び、平板20の下方に配置される。散気管53の離間部の表面には、多数の小さな穴(吐出部)53aが設けられている。散気管53は、水処理タンク10内における複数の平板20の下方に設置されている。各平板20の下方には、好ましくは複数の穴53aが形成される。開閉弁54が解放された状態で、送風機52から散気管53に供給された空気は、散気管53のこれらの穴53aを通過する際に気泡ABとなり、原水w中を上昇する。気泡ABが散気管53の上方にそれぞれ位置する平板20に衝突すると、それぞれの平板20に付着する微生物に物理的な作用を加える。平板20に付着する微生物の一部は、下方からの気泡ABの衝突、又は気泡ABにより発生した上昇流によって平板20から剥離されるなど除去される。このため、調整機構50の除去部51の動作により、平板20に付着する微生物の量(微生物の厚さ)が調整される。したがって、本実施形態では、調整機構50の除去部51は、原水wの水面下に配置され、複数の平板20の浸漬した部分に気泡ABを衝突させて複数の平板20に付着する微生物の量を調整する。
【0022】
調整機構50の除去部51は、常時運転される。除去部51は物理的な方法で微生物を落とすことが多く、例えば散気による洗浄方法では、長期間の運転中に散気管53などの配管や穴(噴出口)53aに夾雑物による閉塞(詰まりC)が起きることがあり、閉塞が発生した個所付近での平板20の洗浄機能が低下し、結果、水処理性能に影響を及ぼし得る。
【0023】
調整機構50の洗浄部55は、例えば夾雑物による散気管53の閉塞を解消するために用いられる。調整機構50の洗浄部55は、洗浄水タンク56と、散気管53に接続されるポンプ57とを有する。開閉弁54を閉じた後、ポンプ57で洗浄水タンク56内の洗浄水を散気管53に送り込むと、散気管53の穴53aの詰まりCを解消する。このときの洗浄水の散気管53への圧力は、送風機52から散気管53に供給される空気の圧力よりも大きくなり得る。
【0024】
なお、洗浄水タンク56内の洗浄水として、種々のものを用いることができる。洗浄水として、例えばアルカリ性薬品又は酸性薬品等の薬品を添加した溶液、オゾンを水に溶融させたオゾン水、被処理水x、原水w等を用いることができる。また、散気管53の穴53aに対して、超音波出力を付加し、詰まりC(閉塞)を解消するようにしてもよい。
【0025】
薬品やオゾン水等を利用すると、原水w、水処理タンク10、散気管53、平板20に付着する微生物等に影響を与える可能性が生じ得る。このため、本実施形態において、洗浄水として、夾雑物がほとんど含まれない水、いわゆる純水を用いることが好適である。以下、洗浄水として純水を用いるものとして説明する。
【0026】
汚泥引抜配管60は、例えば水処理タンク10の例えば底面に接続される。汚泥引抜弁70は、汚泥引抜配管60に設けられている。汚泥引抜弁70の開操作により、水処理タンク10の底に溜まった微生物が、汚泥引抜配管60を介して、水処理タンク10から排出される。汚泥引抜弁70の開操作は、水処理タンク10への原水wの導入を停止して行う。余剰な微生物を水処理タンク10から排出した後は、汚泥引抜弁70の閉操作を行い、水処理タンク10への原水wの導入を再開する。
【0027】
情報収集部(収集部)80は、例えば水処理タンク10に対して固定され、複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量に関する情報を収集する。本実施形態では、情報収集部80は、複数の平板20をそれぞれ又は一緒に撮像して1又は複数の画像データを取得する撮像部を有する。撮像部は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge Coupled Devices)等の撮像素子を含むカメラである。撮像部は、1つ又は複数を並設して、全ての平板20の画像データを撮像可能である。情報収集部80は、コントローラ90に接続され、情報収集部80で取得した画像データ等の情報は、コントローラ90で取得される。情報収集部80の撮像部での撮像は、コントローラ90により、適宜の時間間隔ごとに行うように制御される。
【0028】
情報収集部80は、撮像部を用いるほか、例えばレーザ測距計を用いることができる。また、情報収集部80は、光電式測距センサなどの適宜のセンサを用い得る。この場合のセンサは、複数を組み合わせて1つの平板20の情報を取得するようにしてもよい。また、1つのセンサで、複数の平板20の情報を取得してもよい。
【0029】
なお、情報収集部80は、各平板20との距離等の位置関係を維持できれば、水処理タンク10に対して可動式に設けられ、各平板20の情報を順に取得するように形成されていてもよい。
【0030】
図4は、実施形態に係るコントローラ90を含む処理システム110の構成の一例を示すブロック図である。コントローラ90は、例えば、プロセッサ91(制御部)と、ROM92と、RAM93と、補助記憶デバイス94(記憶部)と、通信インタフェース95(通信部)と、を備える。
【0031】
プロセッサ91は、コントローラ90の処理に必要な演算及び制御などの処理を行うコンピュータの中枢部分に相当し、コントローラ90全体を統合的に制御する。プロセッサ91は、ROM92又は補助記憶デバイス94などに記憶されたシステムソフトウェア、アプリケーションソフトウェア又はファームウェアなどのプログラムに基づいて、コントローラ90の各種の機能を実現するべく制御を実行する。プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含む。あるいは、プロセッサ91は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。コントローラ90に設けられるプロセッサ91は、1つであってもよく、複数であってもよい。
【0032】
ROM92は、プロセッサ91を中枢とするコンピュータの主記憶装置に相当する。ROM92は、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリである。ROM92は、上記のプログラムを記憶する。また、ROM92は、プロセッサ91が各種の処理を行う上で使用するデータ又は各種の設定値などを記憶する。
【0033】
RAM93は、プロセッサ91を中枢とするコンピュータの主記憶装置に相当する。RAM93は、データの読み書きに用いられるメモリである。RAM93は、プロセッサ91が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶しておく、いわゆるワークエリアなどとして利用される。
【0034】
補助記憶デバイス94は、プロセッサ91を中枢とするコンピュータの補助記憶装置に相当する。補助記憶デバイス94は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)(登録商標)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などである。補助記憶デバイス94は、上記のプログラムを記憶する場合もある。また、補助記憶デバイス94は、プロセッサ91が各種の処理を行う上で使用するデータ、プロセッサ91での処理によって生成されたデータ又は各種の設定値などを保存する。
【0035】
ROM92又は補助記憶デバイス94に記憶されるプログラムは、コントローラ90を制御するためのプログラムを含む。一例として、コントローラ90は、当該プログラムがROM92又は補助記憶デバイス94に記憶された状態でコントローラ90の管理者などへと譲渡される。しかしながら、コントローラ90は、当該プログラムがROM92又は補助記憶デバイス94に記憶されない状態で当該管理者などに譲渡されても良い。そして、当該プログラムが別途に当該管理者などへと譲渡され、当該管理者又はサービスマンなどによる操作の下に補助記憶デバイス94へ書き込まれても良い。このときのプログラムの譲渡は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク又は半導体メモリなどのようなリムーバブルな記憶媒体に記録して、あるいはネットワークなどを介したダウンロードにより実現できる。
【0036】
通信インタフェース95は、ネットワークなどを介して他の装置と有線又は無線で通信し、他の装置から送信される各種情報を受信し、また、他の装置に各種情報を送信するためのインタフェースである。コントローラ90は、通信インタフェース95を介して収集部80で取得した、それぞれ両側に微生物が付着する複数の平板20の像を取得する。
【0037】
コントローラ90は、例えば目標レベルを入力するためのキーボード等の入力部96を備えることが好適である。入力部96は、通信インタフェース95を介して無線で各種の情報をプロセッサ91に対して入力可能としてもよい。
【0038】
コントローラ90は、ROM92及び/又は補助記憶デバイス94等に記憶されるプログラム等をプロセッサ91に実行させることにより、各種の機能を発揮させる処理を実行する。なお、コントローラ90の制御プログラムは、コントローラ90のROM92及び/又は補助記憶デバイス94に記憶されておらず、適宜のサーバー上やクラウド上に置かれていることも好適である。この場合、制御プログラムは、通信インタフェース95を介して例えば水処理装置100が有するプロセッサ91と通信しながら実行される。すなわち、本実施形態に係るコントローラ90は、水処理装置100が有していてもよく、水処理装置100から離れた、水処理装置100のサーバーやクラウド上にあってもよい。
【0039】
プロセッサ91は、モータ40の回転軸の回転速度、調整機構50の送風機52及びポンプ57の動作、汚泥引抜弁70の開閉タイミング、情報収集部80のデータ(画像データ)の取得タイミング等を制御する。
【0040】
コントローラ90は、モータ40を制御し、同じ大きさの複数の平板20を共通の回転軸30の軸周りに例えば同一の回転速度で回転させながら、水処理タンク10に流入する原水w(例えば都市下水等の有機排水)と複数の平板20の表面上にそれぞれ付着する微生物を接触させて、水処理を行う。上述したように、複数の平板20の下部が水に浸漬し、上部が水面よりも上側に露出することで、平板20を回転させるときに、平板20に付着する微生物は水面上で空気中の酸素を取り込み、原水w中の有機物や窒素成分を酸化分解する。このようにして、原水wが浄化される。
なお、モータ40を回転させて水処理を開始する前には、例えば入力部96により、平板20の両側に付着する微生物の量の目標レベルは入力されている。
【0041】
複数の平板20の回転を継続し、すなわち、水処理を継続していくと水処理タンク10内の微生物が増殖することがあり得る。このとき、各平板20に付着する微生物が増殖する。微生物が過剰に増殖すると、平板20に付着する微生物に十分な酸素が行き渡らなくなるとともに、原水wが平板20の内部の微生物と接触することができず、微生物が付着する平板20を用いる水処理機能が低下し得る。また、汚泥の嫌気化により、臭気や処理水の透視度の低下などの問題が生じ得る。
【0042】
通常、各平板20の表面に付着する微生物の量を適正に保つことで各平板20の水処理性能を最大化または安定化できる。各平板20の表面に付着する微生物の量を適切に保つために、水処理装置100は、平板20に付着する微生物のうち、余剰の微生物を剥離させる調整機構50の除去部51を動作させる。
【0043】
次に、コントローラ90により制御される調整機構50の除去部51の動作について説明する。
【0044】
調整機構50の除去部51の送風機52及び開閉弁54は、コントローラ90により制御されながら動作する。コントローラ90は、開閉弁54を開けた状態で、調整機構50の送風機52を動作させる。すなわち、送風機52は、コントローラ90で平板20を洗浄する指令を受信することによって動作する。そして、送風機52から散気管53に適宜の圧力の空気を供給する。後述するが、送風機52は、単位時間あたり所定量(一定量)の空気を散気管53に導入し、散気管53の穴53aから原水w内に吐出させることが好適である。送風機52から散気管53に供給された空気は、図5に示すように、各平板20の下方の散気管53の穴53aを通過する際に気泡ABとなって原水w中を上昇し、散気管53の穴53aの上方に位置する平板20にそれぞれ衝突する。このため、それぞれの平板20に付着する微生物には、気泡ABの衝突により物理的な作用が付加される。平板20に付着する微生物の一部は、下方からの気泡ABの衝突、又は気泡ABにより発生した上昇流によって平板20から剥離されるなど除去される。このため、調整機構50の除去部51(送風機52)が動作することにより、散気管53の穴53aから気泡ABが発生し、平板20に付着する微生物を適切に除去し、平板20に付着する微生物の量をコントロールする。すなわち、調整機構50は、原水wの水面下で、複数の平板20の浸漬した部分に気泡ABを衝突させて複数の平板20に付着する微生物の量(微生物の厚さ)を調整する。
【0045】
気泡ABによる複数の平板20の洗浄(微生物の量の調整)は、例えば、連続的に実施されることが好適である。また、微生物の量の調整は複数の平板20を回転させた状態で行う。微生物の量の調整時の複数の平板20の単位時間当たりの回転数(回転速度)は一定であり、上述した例えば10rpmなど、任意に設定される。
【0046】
調整機構50の除去部51によって複数の平板20から剥離された微生物は水処理タンク10内で回収される。複数の平板20から剥離された微生物は、コントローラ90からの指令に基づいて汚泥引抜弁70を開くことにより、汚泥引抜配管60から排出する。また、調整機構50によって複数の平板20から剥離された微生物が水処理タンク10内でそのまま加水分解される場合、余剰な汚泥が発生しない。このため、その微生物を汚泥引抜配管60で排出しなくてもよい場合もあり得る。
【0047】
本実施形態に係る水処理装置100は、複数の平板20に付着する微生物の一部を除去することができ、複数の平板20に付着する微生物の量を調整することで、水処理性能の安定化(処理水質の悪化の防止)を図ることが可能となる。
【0048】
有機物が豊富な排水である原水wを処理する場合、各平板20の両側にそれぞれ付着する微生物の量は増え続ける傾向があり、平板20に付着する適切な微生物の量を保つために、調整機構50の除去部51を常に作動させる。一方で、調整機構50の除去部51を長期運転させることで、調整機構50の除去部51に異常が発生する可能性が高くなり、結果、複数(全て)の平板20の少なくとも1つを上手く洗浄できず、水処理装置100全体の性能に影響を及ぼしてしまう可能性がある。
【0049】
コントローラ90は、送風機52を停止させ、開閉弁54を閉じた状態で、調整機構50の洗浄部55のポンプ57を作動させることにより、洗浄水タンク56内の洗浄水を散気管53の穴53aが形成された離間部に送り込むことが可能である。このとき、洗浄水タンク56内の洗浄水の水流や水圧等により、散気管53の穴53aの詰まりCを解消する。このときの洗浄水の散気管53への圧力は、送風機52から散気管53に供給される空気の圧力よりも大きくなり得る。
【0050】
洗浄水として、純水を散気管53内に流すことにより、散気管53内の閉塞を例えば緩やかに解消できる。このとき、洗浄水は、原水w、被処理水xや水処理装置100の配管(散気管53等)に影響を与えることがない。
【0051】
なお、散気管53の穴53aから気泡ABを吐出させて平板20に付着する微生物の一部を除去し、平板20を空気洗浄する場合、散気管53内や散気管53の穴(噴出口)53aに、閉塞を生じさせる夾雑物として、例えば塩分の結晶、活性汚泥の塊、鉄錆などが付着する可能性がある。塩分の結晶、活性汚泥の塊、鉄錆などが付着すると、非常に取り除きにくい。純水は夾雑物を非常に溶かしやすい性質を持つ。このため、純水を洗浄水として用いると、不純物が含まれていないため、夾雑物を緩やかに溶かし、原水w、処理水x、微生物、水処理装置100の水処理タンク10、散気管53等の配管に影響を与えることなく、散気管53内、又は散気管53の穴53aの閉塞の原因物質を除去することが可能である。
【0052】
コントローラ90は、少なくとも定期的に情報収集部80を動作させて、複数(ここでは全て)の平板20の情報を取得させる。ここでは、情報収集部80を動作させて各平板20を撮影させる。コントローラ90は、情報収集部80で撮像した画像データを情報収集部80から取得し、その取得した画像データに基づいて、微生物を含む複数の平板20ごとの厚さを出力する。コントローラ90は、例えば画像処理により、各平板20について、微生物を含む複数の平板20ごとの厚さを出力する。または、コントローラ90は、複数の平板20の基準時に対する、微生物の厚さの増減量を出力する。すなわち、コントローラ90は、各平板20ごとの微生物の付着量(付着厚さ)を推定し、微生物の量のレベルを判定する。
【0053】
プロセッサ91は、通信インタフェース95を介して収集部80により取得した画像データに基づいて、複数の平板20の接触体20aへの微生物の付着状態を、例えば3段階以上の複数レベルで判定する。本実施形態では5段階のレベルで判定するものとする。例えば、平板20の接触体20aへの微生物の付着レベルが図3中のレベル3である状態を、適正な微生物の量(適正な厚さ)とする基準状態(目標値)とする。すなわち、ここでは、各平板20の両側に付着する微生物の量の目標値(レベル)をレベル3とする。したがって、本実施形態では、全ての平板20に付着する微生物の量をレベル3とすることを目標とするものとする。そして、基準状態のレベル3に対して、レベル2、レベル1となるにしたがって、微生物の量(微生物の厚さ)が基準状態(レベル3)に対して減少する。また、基準状態のレベル3に対して、レベル4、レベル5となるにしたがって、微生物の量(微生物の厚さ)が基準状態(レベル3)に対して増加する。なお、レベル1~5は、例えば、平板20の厚さ及び微生物の付着厚さの合計値(総厚さ)に基づいて設定される。また、その他、レベル1~5は、平板20の厚さを考慮せず、レベル3の微生物の厚さを設定し、レベル3に対する微生物の厚さの増減により設定されてもよい。これら、レベル1~5の状態(厚さ範囲)は、例えばROM92又は補助記憶デバイス94に記憶される。なお、レベル5の厚さ範囲の上限はないものとしてもよい。
【0054】
プロセッサ91は、収集部80により取得される画像から抽出される全ての平板20の厚さに対する微生物の付着厚さと、ROM92又は補助記憶デバイス94に記憶される平板20の厚さに対する各レベルにおける微生物の付着厚さとを比較し、図6及び図7に示すように、各平板20ごとに、平板20への微生物の付着レベルを出力する。すなわち、プロセッサ91は、収集部80により取得される全ての平板20の画像に基づいて、全ての平板20での微生物の付着レベル3(基準状態)に対するズレをそれぞれ判定する。
なお、図2中では、8つの平板20を図示し、図6及び図7中では5つの平板20(平板1-平板5)について図示した。これら平板20の数は、本来は同じとすることが好適である。
【0055】
したがって、コントローラ90は、情報収集部80で撮像した画像データに基づいて、微生物を含む複数の平板20ごとの厚さの推定値を出力する。または、複数の平板20の基準時に対する、微生物の厚さの増加量の推定値を出力する。そして、コントローラ90は、各平板20ごとの微生物の付着量(付着厚さ)を推定し、微生物の量のレベルを判定する。
【0056】
例えば前回の情報収集部80で取得した画像データに基づくレベル判定において、複数の平板20の全てに対して、レベル3の状態に微生物が付着していたとする。そして、その後、調整機構50の送風機52の単位時間あたりの送風量が、所定量を維持する、標準運転を行い続けている、とする。そして、前回の情報収集部80で取得した画像データ(第1の情報)に基づくレベル判定から所定時間(適宜の時間)の経過後、再度情報収集部80で取得した画像データ(第2の情報)に基づくレベル判定により、図6に示すように、コントローラ90が全ての平板20に付着する微生物の量がレベル3である、と出力したとする。このとき、コントローラ90は、全ての平板20に付着する微生物の量(厚さ)が目標値又はそれに近い状態を維持していると判断する。したがって、調整機構50の送風機52は、コントローラ90により、その標準運転を続けるように制御される。
【0057】
このため、図8に示すように、コントローラ90は、情報収集部80で取得した画像データに基づいて、平板20ごとの微生物の付着量を推定し、平板20ごとに付着する微生物の量のレベル判定を行う。そして、コントローラ90が、各平板20に付着する微生物の量がレベル3を維持していると判定した場合、図9に示すように、調整機構50の送風機52の単位時間あたりの送風量を変更せず、すなわち、平板20に対する気泡ABによる洗浄力(単位時間当たりの洗浄量(微生物の除去量))を不変とする制御を行う。
【0058】
例えば前回の情報収集部80で取得した画像データに基づくレベル判定において、複数の平板20の全てに対して、レベル3の状態に微生物が付着していたとする。その後、標準運転、すなわち調整機構50の送風機52の単位時間あたりの送風量を所定量で維持する運転を続けたとする。そして、前回の情報収集部80で取得した画像データに基づくレベル判定から所定時間(適宜の時間)の経過後、再度情報収集部80で取得した画像データに基づくレベル判定により、図7に示すように、コントローラ90が全ての平板20のうち、1つ又は複数に付着する微生物の量がレベル4に達したと出力したとする。このとき、コントローラ90は、複数の平板20に付着する微生物の量(厚さ)が増加傾向であり、及び/又は、調整機構50の散気管53を通して吐出する気泡ABによる衝突の勢いが減少傾向にあると判断する。例えば、レベル4と判定された平板20付近の散気管53の穴53aの一部は閉塞又は閉塞傾向にあり、気泡ABがうまく散気管53の穴53aから放出されていないと推定される。したがって、調整機構50の送風機52は、コントローラ90により、単位時間当たりの送風量を増加させ、平板20への洗浄力を増大させるように制御される。
【0059】
すなわち、図8に示すように、コントローラ90は、情報収集部80で取得した画像データに基づいて、平板20ごとの微生物の付着量を推定し、平板20ごとに付着する微生物の量のレベル判定を行う。そして、コントローラ90が、複数の平板20の例えば1つに付着する微生物の量がレベル4となったと判定した場合、図9に示すように、その平板20に対する洗浄力が例えば10%程度など、低下していると推定する。このため、コントローラ90は、調整機構50の送風機52の単位時間あたりの送風量を増加させ、平板20に対する気泡ABによる洗浄力を上昇させる制御を行う。なお、散気管53の穴53aを閉塞する物質又は閉塞しようとする物質の一部は、送風機52の単位時間あたりの送風量の増加にともなって除去され得る。
【0060】
なお、コントローラ90が、複数の平板20に対する微生物の付着レベルがレベル3であった複数の平板20の例えば1つに付着する微生物の量が、所定時間など、適宜の時間経過後、レベル5となったと判定した場合、図9に示すように、その平板20に対する洗浄力が例えば20%程度など、低下していると推定する。このため、コントローラ90は、調整機構50の送風機52の単位時間あたりの送風量をレベル4の場合に比べてさらに増加させ、すなわち、平板20に対する気泡ABによる洗浄力を上昇させる制御を行う。
【0061】
情報収集部80で取得する複数(全て)の平板20の情報を用いることにより、調整機構50の除去部51の散気管53の穴53aの閉塞状態を判定でき、さらに散気管53の穴のうちの閉塞箇所も確認可能となる。
【0062】
一方、コントローラ90が、複数の平板20に対する微生物の付着レベルがレベル3であった複数の平板20の例えば1つに付着する微生物の量が、所定時間など、適宜の時間経過後、レベル2となったと判定した場合、図9に示すように、その平板20に対する洗浄力が、目標状態に比べて例えば10%程度など、高すぎると推定する。このため、コントローラ90は、調整機構50の送風機52の単位時間あたりの送風量をレベル3の場合に比べてさらに減少させ、すなわち、平板20に対する気泡ABによる洗浄力を低下させる制御を行う。
【0063】
同様に、コントローラ90が、複数の平板20に対する微生物の付着レベルがレベル3であった複数の平板20の例えば1つに付着する微生物の量が、所定時間など、適宜の時間経過後、レベル1となったと判定した場合、図9に示すように、その平板20に対する洗浄力が、目標状態に比べて例えば20%程度など、高すぎると推定する。このため、コントローラ90は、調整機構50の送風機52の単位時間あたりの送風量をレベル2の場合に比べてさらに減少させ、すなわち、平板20に対する気泡ABによる洗浄力をさらに低下させる制御を行う。
【0064】
その後、コントローラ90は、適宜の時間の経過後、全ての平板20の接触体20aに付着する微生物のレベルを判定する。コントローラ90が全ての平板20に付着する微生物の量をレベル3と判定した場合、送風機52からの単位時間あたりの送風量が適切であると判断し、送風量をそのまま維持する。コントローラ90は、更に適宜の時間の経過後、全ての平板20の接触体20aに付着する微生物のレベルを判定する。コントローラ90は、全ての平板20のうち少なくとも1つの平板20に付着する微生物の量がレベル3からずれていると判定した場合、全ての平板20に付着する微生物の量がレベル3となるように送風機52からの単位時間あたりの送風量送風量を調整する。
【0065】
なお、コントローラ90は、例えば、全ての平板20の少なくとも1つに対する微生物の付着量がレベル1、2、4、5のいずれかであった場合、レベル3のときに比べて、情報収集部80からの情報の取得頻度を多くしてもよい。このため、コントローラ90は、全ての平板20に対する微生物の付着量をレベル3に制御しやすくなる。
【0066】
本実施形態に係る水処理装置100は、コントローラ90を用いて図8に示す制御を行った後、図10に示す制御を行う例について説明する。
【0067】
例えば前回の情報収集部80で取得した画像データに基づいて、各平板20に対して微生物の量の付着レベルの判定を行っていたとする。コントローラ90は、適宜の時間の経過後に、全ての平板20に付着する微生物の量のレベルを再び判定する。このとき、図10に示すように、各平板20の接触体20aに付着する微生物のレベルがレベル1-3となっている場合、そのまま、コントローラ90は、モータ40の回転軸の回転、調整機構50の除去部51の運転を続ける。全ての平板20のうち、少なくとも1つへの微生物の付着量がレベル4又はレベル5を維持し、又は、改善傾向(微生物の量の減少傾向)が見られない場合、コントローラ90は、調整機構50の除去部51へのメンテナンスが必要と判定し、モータ40の回転軸の回転を停止させ、平板20の回転を停止させるとともに、調整機構50の送風機52を停止させ、開閉弁54を閉じた後、調整機構50の洗浄部55を用いて散気管53を洗浄する。
【0068】
すなわち、図10に示すように、コントローラ90は、情報収集部80で取得した画像データに基づいて、平板20ごとの微生物の付着量を推定し、平板20ごとに付着する微生物の量のレベル判定を行う。そして、コントローラ90が、各平板20に付着する微生物の量が例えばレベル1~3であると判定した場合、調整機構50の送風機52を用いて、微生物を適宜に除去する制御を行う。一方、コントローラ90が、各平板20に付着する微生物の量がレベル4又はレベル5であると判定した場合、調整機構50の除去部51の送風機52の動作を停止させ、除去部51のメンテナンスを行う。除去部51のメンテナンスには、送風機52のメンテナンス、散気管53の詰まりCの除去がある。また、送風機52、散気管53の交換もあり得る。
【0069】
ここでは、散気管53の詰まりCの除去を行う場合について説明する。コントローラ90は、調整機構50の洗浄部55のポンプ57を作動させ、洗浄水タンク56内の洗浄水(例えば純水)を散気管53に送り込む。このため、散気管53の穴53aの詰まりCが解消し得る。このように、散気管53すなわち除去部51のメンテナンスは、原水wの水面下で行うことができるため、調整機構50の除去部51のメンテナンス時間を最小限に抑制することができる。
【0070】
なお、開閉弁54が閉じている状態で、調整機構50の洗浄部55のポンプ57が作動されるので、送風機52に原水wや洗浄水が入り込むことが防止される。
【0071】
コントローラ90は、調整機構50の洗浄水を用いた洗浄の終了後、洗浄部55のポンプ57の作動を停止させる。その後、コントローラ90は、再び、モータ40の回転軸を回転させるとともに、調整機構50の除去部51の開閉弁54を開け、送風機52を動作させ、散気管53の穴53aから気泡ABを吐出させて平板20を洗浄する。そして、モータ40の回転軸を再び回転させてから適宜の時間の経過後、情報収集部80で取得する全ての平板20の画像データに基づいて、各平板20への微生物の量のレベルを推定する。レベルがレベル3であれば、コントローラ90は、送風機52をそのままの出力で運転を続け、レベル3から外れていれば、送風機52の出力を増減させる。
【0072】
洗浄部55を用いた洗浄運転を完了させた後、水処理装置100は、モータ40の回転及び除去部51の送風機52の運転の再開と同時に平板20の情報の収集を開始する。このような運転の再開から一定時間経過した後、コントローラ90は、各平板90への微生物の付着量のレベルを判断する。各平板90への微生物の付着量のレベルがレベル3と判断された場合、この状態での運転を継続する。反対に、各平板90への微生物の付着量のレベルがレベル3から外れた場合、モータ40の回転及び除去部51の送風機52の運転を停止し、洗浄部55の洗浄運転を再開する。
図10に示す制御を行う場合、複数の平板20のうち、少なくとも1つの平板20に付着する微生物の量のレベルがレベル3以外で、レベル2と判定される平板20及びレベル4と判定される平板20が生じるなど、バラツキが生じる場合も、調整機構50の除去部51にメンテナンスが必要と判断してもよい。
【0073】
本実施形態に係るコントローラ90は、図8に示す制御を行った後、図10に示す制御を行ってもよく、図8に示す制御を行わずに、図10に示す制御を行うようにしてもよい。
【0074】
散気管53の穴53aの閉塞の要因の殆どは、夾雑物が例えば穴53aを通して散気管53内に入り込むことである。夾雑物による散気管53の閉塞が急激に発生することはまれにあるが、多くの場合、小さなつまりCの発生により、徐々に流路が狭くなり、さらにつまりCが発生しやすい環境となることが予想される。例えば、多数の穴53aは、位置等によって閉塞量が異なることが想定され、この場合、各平板20に対する気泡ABの吐出量に差が生じる。したがって、各平板20に付着する微生物の量は、上述したレベル3に対して差が生じやすくなる。そして、散気管53内または穴53aなどの流路が最終的に完全に塞がれ、閉塞が発生すると、各平板20に対する気泡ABの吐出量に大きな差が生じ、また、メンテナンスに時間がかかる。本実施形態では、コントローラ90は、全ての平板20に対して、レベル3を維持するように制御する。各平板20に付着する微生物の量のレベルが、レベル3でなく、レベル4又はレベル5と判定された後、コントローラ90は、散気管53の穴53aから吐出する単位時間あたりの気泡ABの量を増加させる制御を行う。そして、この制御の後、コントローラ90は、適宜の時間の経過後、情報収集部80で取得したデータに基づいて、各平板20に付着する微生物の量のレベルを再度判定することにより、そのまま除去部51の運転を続けるか、除去部51のメンテナンスを行うか、判定することができる。
【0075】
したがって、本実施形態に係る水処理装置100は、より早期に調整機構50の状態を把握し、調整機構50の除去部51のメンテナンスの要否について、より早期に対処することができる。このため、除去部51のメンテナンスをより短時間で行うことができ、水処理の停止時間を抑制することができる。
【0076】
プロセッサ91(コントローラ90)は、情報収集部80で取得する情報に基づいて複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量を複数の平板20ごとにそれぞれ推定し、推定した微生物の量に基づいて調整機構50の状態を出力することができる。このため、本実施形態に係る処理システム110、及び、その処理システム110を有する水処理装置100によれば、コントローラ90は各平板20の情報に基づいて、調整機構50の除去部51の状態(例えば散気管53の穴53aの詰まり具合)を認識できる。すなわち、情報収集部80で取得する複数(全て)の平板20の情報を用いることにより、調整機構50の除去部51の散気管53の穴53aの状態(閉塞状態)を判定でき、さらに散気管53の穴53aのうち、いずれの穴53aが閉塞又は閉塞に近いかなど散気機能が低下している穴53aを特定可能となる。したがって、本実施形態に係る処理システム110、及び、水処理装置100によれば、調整機構50の除去部51のトラブルを早期に回避することが可能である。したがって、本実施形態に係る処理システム110、及び、水処理装置100によれば、調整機構50の状態を良好な状態に維持しやすい。
例えば、コントローラ90で情報収集部80を自動的に制御して、自動的に情報収集部80で平板20に付着する微生物の量を推定し、推定した情報から調整機構の状態を出力し、必要に応じて洗浄部55を用いてメンテナンスを自動的に行い得る、水処理装置100が提供される。
このため、本実施形態によれば、水処理性能を維持し易い、処理システム110及び水処理装置100が提供される。
【0077】
本実施形態に係る水処理装置100を用い、平板20に付着する微生物の量を調整機構50を用いて調整することができる。このとき、コントローラ90は、例えば適宜の時間間隔で、全ての平板20の情報を取得することで、調整機構50の状態を出力することができる。このとき、調整機構50の出力を上げ、平板20への洗浄機能を向上させ、又は、調整機構の出力を下げ、平板20への洗浄機能を向上させて、平板20への微生物の付着量を調整することができる。また、コントローラ90は、適宜の時間間隔で、全ての平板20の情報を取得し、以前の平板20の状態と比較することで、調整機構50の除去部51の散気管53をメンテナンスした方がよいか否かを出力することができる。
【0078】
このように、本実施形態によれば、複数の平板20に付着する微生物の量の調整機構50の状態を検知可能な水処理装置100、及び、水処理装置100における調整機構50の状態推定方法を提供することができる。そして、コントローラ90は、調整機構50の状態を検知することにより、調整機構50の異常(詰まりCの発生)等をより早期に出力することができる。したがって、例えば水処理装置100の管理者等は、調整機構50のメンテナンスを早期に対処することができる。したがって、本実施形態に係る水処理装置100を用いることによって、各平板20の水処理性能を高いレベルで維持し易くすることができる。
【0079】
なお、プロセッサ91(コントローラ90)は、例えば、情報収集部80の撮像部で撮像した画像データに基づいて、複数の平板20に付着する微生物の量を推定することができる。
【0080】
また、プロセッサ91(コントローラ90)は、情報収集部80で取得する情報に基づいて複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量を複数の平板20ごとにそれぞれ推定し、推定した微生物の量に基づいて複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量を一定範囲に保つように調整機構50を制御することができる。このため、本実施形態に係る処理システム110、及び、その処理システム110を有する水処理装置100によれば、コントローラ90は各平板20の情報に基づいて、調整機構50の除去部51を制御して、例えば気泡ABの量を適宜に増減させることができる。したがって、本実施形態に係る処理システム110、及び、水処理装置100によれば、調整機構50の除去部51の制御によって、複数の平板20を良好な状態に維持しやすい。
例えば、コントローラ90で情報収集部80を自動的に制御して、自動的に情報収集部80で平板20に付着する微生物の量を推定し、推定した情報から平板20に付着する微生物量のレベルを調整するために調整機構50の除去部51の出力の増減を自動的に行いうことができる水処理装置100が提供される。この水処理装置100を用いることで、複数の平板20に付着する微生物の量が目標レベルに自動的に近づけられる。
このため、本実施形態によれば、水処理性能を維持し易い、処理システム110及び水処理装置100が提供される。
【0081】
このとき、調整機構50は、複数の平板20に対してそれぞれ物理的作用を加えることができる。より具体的には、調整機構50は、原水wの水面下に配置され、複数の平板20の浸漬した部分に気泡ABを衝突させて複数の平板20に付着する微生物の量を調整することができる。
【0082】
そして、プロセッサ91(コントローラ90)は、情報収集部80で取得する情報に基づいて複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量を複数の平板20ごとに推定し、複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量が、複数の平板20の少なくとも1つで、目標値(例えばレベル3)と一定以上の差異が生じると、調整機構50にメンテナンスが必要であると出力することができる。
また、プロセッサ91(コントローラ90)は、調整機構50のメンテナンスが必要であると出力したとき、調整機構50で複数の平板20に付着する微生物の量を調整する機能を保つように、調整機構50に付着する物質を除去する洗浄部55を動作させることができる。
【0083】
また、洗浄部55は、調整機構50に付着する物質を除去するときに、純水を用いることができる。このため、調整機構50の部分、例えば除去部51の散気管53の一部に付着する夾雑物を効果的に除去することができる。
【0084】
水処理装置100における調整機構50の状態推定方法は、まず、回転する円板状の複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量に関する第1の情報を収集し、第1の情報に基づいて複数の平板にそれぞれ付着する微生物の量をそれぞれ推定する。次に、複数の平板20の少なくとも1つに付着する微生物の量が目標値(例えばレベル3)から外れているときに、第1の情報に基づいて複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量を目標値の範囲内となるように調整機構を用いて調整する。そして、調整機構50を複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量を用いて調整した後、複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量に関する第2の情報を収集し、第2の情報に基づいて複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量について目標値からの乖離をそれぞれ推定する。この乖離に基づいて調整機構50の状態を出力する。調整機構50の調整後、調整機構50は、微生物の量を目標値(例えばレベル3)としようとする。乖離が0で、調整機構50の調整後、目標値からレベルがレベル3からレベル2又はレベル4等にずれていた平板20に付着する微生物の量をレベル3とすることができた場合、調整機構50の状態は良好と推定できる。乖離があり、調整機構50の調整後、目標値からレベルがレベル3からレベル4等にずれていた平板20に付着する微生物の量が再びレベル4又はレベル5と判定された場合、調整機構50の状態は、メンテナンスが必要な状態となっている、と推定できる。
前記で述べたように、原水wとして、有機物が豊富な排水を処理する場合、複数の平板20に付着する微生物が増え続ける傾向があり、適切な微生物の量を保つために、調整機構50を常時運転させる必要がある。例えば、水処理タンク10の水面下に配置する散気管53を用いる場合、水処理装置100の長期間の運転による除去部51の散気管53の配管や穴(噴出口)53aに夾雑物による閉塞が起きる場合がある。閉塞が発生すると、その閉塞の発生個所付近の平板20がうまく洗浄されず、その結果、複数の平板20だけでなく、水処理装置100全体の水処理性能に影響してしまう可能性がある。また、閉塞は局部的に発生する場合が多く、散気管53のような水処理タンク10内に沈めるタイプを用いる場合、閉塞箇所を発見しにくい。上述した方法により、複数の平板20ごとの微生物の量の情報を用いて、散気管53の穴53aの詰まりC(閉塞)、すなわち、調整機構50の状態を出力する手法を利用することで、簡単に閉塞箇所を突き止めることが可能となる。したがって、上述した方法を用いることで、水処理性能を維持しやすくすることができる。
【0085】
水処理装置100の複数の平板20に対する微生物の付着量の調整方法は、まず、回転する複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量に関する情報を収集する。次に、その情報に基づいて複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量をそれぞれ推定し、推定した微生物の量に基づいて複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量を調整するように調整機構50を動作させる。例えば、ある平板20に付着する微生物の量のレベルが目標値であるレベル3からレベル2にずれている場合、調整機構50の除去部51の送風機52の出力を低下させる。例えば、ある平板20に付着する微生物の量のレベルが目標値であるレベル3からレベル4にずれている場合、調整機構50の除去部51の送風機52の出力を上昇させる。
複数の平板20のそれぞれの両側に付着させる目標微生物の量のレベルをコントローラ90の入力部96を用いて入力し、例えば、微生物量の目標レベルを3と設定した場合、情報収集部80が複数の平板20ごとの情報(画像データ)を収集し、プロセッサ91で各平板20の微生物量を推定する。各平板20の微生物量が目標レベルと一致した場合、洗浄力を変化させる必要がないと判断することができる。複数の平板20のうちの少なくとも1つの微生物量の推定レベルが設定した目標レベル(レベル3)と異なる場合、調整機構50の除去部51を用いた平板20への洗浄力が過大また不足している可能性がある。例えば、現状は、例えば図9のようにレベル1又はレベル2であれば、必要な洗浄力が10%から20%程度高すぎると推定して洗浄力を減少させ、レベル4又はレベル5であれば、必要な洗浄力が10%から20%程度低すぎると推定して洗浄力を増大させる。例えば、全ての平板20について、設定した微生物量レベル(レベル3)に達した時点で、洗浄力(例えば単位時間あたりの気泡ABの量)を固定させる。この動作を繰り返して、目標微生物レベル(レベル3)を維持するよう、制御を行うことができる。したがって、上述した方法を用いることで、水処理性能を維持しやすくすることができる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、水処理性能を維持し易い、処理システム110及び水処理装置100、水処理装置100における調整機構の状態推定方法、及び、水処理装置100の複数の平板20に対する微生物の付着量の調整方法が提供される。
【0087】
(変形例)
コントローラ90を用いて、複数の平板20のそれぞれに対する微生物の付着量の推定方法の変形例について簡単に説明する。
【0088】
情報収集部80の撮像部で得られた画像データに基づいて、プロセッサ91(コントローラ90)は、平板20ごとの微生物の量を推定し、調整機構50の除去部51の状態推定の判定に用いる。画像データを数値化する方法は特に限定しない。例としてCNN(Convolutional Neural Network)をベースとした深層学習のアルゴリズム等がある。
【0089】
例えば、平板20への微生物の量が、図3に示すレベル1~レベル4、図示しないがレベル5の画像を準備し、これらを教師データとする。多くの学習用画像データを入力データとして用いた教師あり学習により、CNNの深層学習が実現される。
【0090】
本変形例による深層学習によって、情報収集部80で取得する、微生物が両側に付着する各平板20の画像データに基づいて、全ての平板20への微生物の付着量のレベルをコントローラ90が出力することができる。したがって、本変形例に係るアルゴリズムを用いる処理システム110及び水処理装置100、並びに、上述した方法を用いることによって、水処理性能を高いレベルで維持し易くすることができる。
【0091】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る水処理装置100について、図11及び図12を用いて説明する。本実施形態は第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0092】
本実施形態に係る調整機構50は、除去部(洗浄機構)151を有する。本実施形態に係る除去部151は、第1実施形態で説明した除去部51と同様に、平板20に付着する微生物が増え続ける傾向があり、適切な微生物の量を保つために、除去部151を常時運転させる必要があると想定される。
【0093】
除去部151は、例えば水処理タンク10に貯められた原水wの水面に対して上方に配置されることが好適である。
【0094】
除去部151は、図示しない水源から供給される液体を通す水路152と、複数の吐出部(ノズル)153とを有する。各吐出部153は、複数の平板20のうち、微生物が付着する面に向けられることが好適である。各平板20の両側に散水するため、各平板20に対して、複数の吐出部153が用いられることが好適である。
【0095】
本実施形態において、複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量を調整するために散水する液体として水道水を用いることが好適である。複数の吐出部153から吐出する液体により、第1実施形態で説明した、複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量を調整するための散気による気泡ABと同様に、全ての平板20の両側に付着する微生物の量を調整することができる。例えば、吐出部153から液体を吐出し、平板20に当て、液体を平板20の側面に流すことによる物理的な作用を加えることで、平板20に付着する微生物を調整することができる。
【0096】
また、吐出部153の配置によって、吐出部153から吐出する液体を例えば、集中的に小さい角度で直接的に微生物に当てて、微生物を剥がすことができる。また、吐出部153から吐出する液体の単位時間あたりの吐出量(流速)は、例えば図示しないポンプの出力等によって調整することが可能である。このため、本実施形態に係る調整機構50の除去部151を用いる場合、例えば第1実施形態で説明した気泡(空気洗浄)ABを用いて剥離させることが困難な微生物、例えばSphaerotilus natansが形成する水綿のような生物膜を剥離させることができる。
【0097】
また、平板20の側面の面積が適宜の大きさである場合、吐出部153が固定されていると、洗浄の不均一化が生じる可能性がある。このため、平板20の側面を満遍なく洗浄するために、吐出部153を可動式または複数か所に設置することが望ましい。
【0098】
なお、本実施形態に係る調整機構50は、吐出部153に対して、散水用の水道水の供給と、吐出部153の洗浄用の純水の供給とを切り替える図示しない弁を水路152に配置することが好適である。
【0099】
本実施形態においても、コントローラ90は、図8に示す制御を行って、各平板20に付着する微生物のレベルを判定し、判定に基づいて吐出部153からの水の吐出量を必要に応じて調整する。全ての平板20に対して微生物の付着量がレベル3の判定であれば、コントローラ90は、単位時間あたりに吐出部153から吐出する水量を不変とし、すなわち、洗浄力を不変とする。全ての平板20のうち、少なくとも1つの平板20に対して微生物の付着量がレベル3以外の判定であれば、レベルに応じて、コントローラ90は、単位時間あたりに吐出部153から吐出する水量を増減し、すなわち、平板20に対する洗浄力を調整する。
【0100】
本実施形態に係る水処理装置100は、コントローラ90を用いて、図8に示す制御を行った後、又は、図8に示す制御を行わずに図10に示す制御を行うことができる。
【0101】
例えば前回の情報収集部80で取得した画像データに基づいて、各平板20に対して微生物の量の付着レベルの判定を行っていたとする。コントローラ90は、適宜の時間の経過後に、全ての平板20に付着する微生物の量のレベルを再び判定する。このとき、図10に示すように、各平板20の接触体20aに付着する微生物のレベルがレベル1-3となっている場合、そのまま、コントローラ90は、モータ40の回転軸の回転、調整機構50の除去部151の運転を続ける。全ての平板20のうち、少なくとも1つへの微生物の付着量がレベル4又はレベル5を維持し、又は、改善傾向(微生物の量の減少傾向)が見られない場合、コントローラ90は、調整機構50の除去部151へのメンテナンスが必要と判定し、モータ40の回転軸の回転を停止させ、平板20の回転を停止させるとともに、調整機構50の水源からの水道水の供給を停止させる。
【0102】
このため、図10に示すように、コントローラ90は、情報収集部80で取得した画像データに基づいて、平板20ごとの微生物の付着量を推定し、平板20ごとに付着する微生物の量のレベル判定を行う。そして、コントローラ90が、各平板20に付着する微生物の量が例えばレベル1~3であると判定した場合、調整機構50の除去部151を用いて、微生物を適宜に除去する制御を行う。一方、コントローラ90が、各平板20に付着する微生物の量がレベル4又はレベル5であると判定した場合、調整機構50の除去部151に供給される水源からの水の供給を停止させ、除去部151のメンテナンスを行う。除去部151のメンテナンスには、吐出部153のメンテナンス、吐出部153の吐出口の詰まりの除去がある。また、吐出部153の交換もあり得る。
【0103】
仮に、吐出部153の閉塞を解消するメンテナンスを行う場合、閉塞を解消する方法として、薬品投入、オゾン注入、超音波、被処理水、処理水投入、空気量、散水量の一時的な増量等様々な方法が考えられる。吐出部153の下には、水処理タンク10が配置され、吐出部153に流した薬品等は、原水w及び処理水xに混合される。薬品やオゾン投入は有機排水処理に寄与する微生物に大きな影響を与える可能性がある。また、処理水xに薬品が混入されると、処理水xの水質にも問題が生じる可能性がある。吐出部153の閉塞が酷いとき、オゾン注入、散水量の一時的な増量も効果が限定的な場合がある。原水w、処理水x自身にも多くの夾雑物を含んでおり、閉塞をさらに悪化させる可能性がある。
【0104】
吐出部153のメンテナンスを行う場合、本実施形態では、夾雑物がほとんど含まれない水、いわゆる純水を水路152の管路内に流す。純水を水路152の管路内に流し、吐出部153から吐出させることで、吐出部153の閉塞を緩やかに解消でき、処理水xや水処理装置100の配管に影響を与えない。
【0105】
なお、水道水を用いて、吐出部153から平板20に散水し、微生物の量を調整する場合、吐出部153の噴出口等の閉塞起因夾雑物として炭酸カルシウムの結晶、シリカの結晶、マグネシウムの結晶など水道水に含まれる成分の結晶物質が考えられる。純水は前記成分を含んでおらず、このような成分の夾雑物を溶かしやすい性質を持つ。純水を水路152を通して吐出部153内に流すことで、夾雑物を緩やかに溶かし、処理水x、微生物、水処理装置100に影響を与えることなく、閉塞原因物質を除去することが可能である。
【0106】
プロセッサ91(コントローラ90)は、情報収集部80で取得する情報に基づいて複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量を複数の平板20ごとにそれぞれ推定し、推定した微生物の量に基づいて調整機構50の状態を出力することができる。このため、本実施形態に係る処理システム110、及び、その処理システム110を有する水処理装置100によれば、コントローラ90は各平板20の情報に基づいて、調整機構50の除去部151の状態(例えば吐出部153の穴の詰まり具合)を認識できる。すなわち、情報収集部80で取得する複数(全て)の平板20の情報を用いることにより、調整機構50の除去部151の吐出部153の状態(閉塞状態)を判定でき、さらに複数の吐出部153のうち、いずれの吐出部153が閉塞又は閉塞に近いかなど散水機能が低下している吐出部153を特定可能となる。したがって、本実施形態に係る処理システム110、及び、水処理装置100によれば、調整機構50の除去部151のトラブルを早期に回避することが可能である。したがって、本実施形態に係る処理システム110、及び、水処理装置100によれば、調整機構50の状態を良好な状態に維持しやすい。
例えば、コントローラ90で情報収集部80を自動的に制御して、自動的に情報収集部80で平板20に付着する微生物の量を推定し、推定した情報から調整機構の状態を出力し、必要に応じて純水等の洗浄水を用いてメンテナンスを自動的に行い得る、水処理装置100が提供される。
このため、本実施形態によれば、水処理性能を維持し易い、処理システム110及び水処理装置100が提供される。
【0107】
また、プロセッサ91(コントローラ90)は、情報収集部80で取得する情報に基づいて複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量を複数の平板20ごとにそれぞれ推定し、推定した微生物の量に基づいて複数の平板20にそれぞれ付着する微生物の量を一定範囲に保つように調整機構50を制御することができる。このため、本実施形態に係る処理システム110、及び、その処理システム110を有する水処理装置100によれば、コントローラ90は各平板20の情報に基づいて、調整機構50の除去部151を制御して、例えば散水量を適宜に増減させることができる。したがって、本実施形態に係る処理システム110、及び、水処理装置100によれば、調整機構50の除去部151の制御によって、複数の平板20を良好な状態に維持しやすい。
例えば、コントローラ90で情報収集部80を自動的に制御して、自動的に情報収集部80で平板20に付着する微生物の量を推定し、推定した情報から平板20に付着する微生物量のレベルを調整するために調整機構50の除去部151の出力の増減を自動的に行いうことができる水処理装置100が提供される。この水処理装置100を用いることで、複数の平板20に付着する微生物の量が目標レベルに自動的に近づけられる。
このため、本実施形態によれば、水処理性能を維持し易い、処理システム110及び水処理装置100が提供される。
【0108】
第1実施形態で説明した散気、第2実施形態で説明した散水による物理作用による平板20の微生物の量の調整は一例であり、それ以外の調整手段を用いてもよい。例えば、水面よりも上側で、平板20の表面に対し、所定距離に配置するバー状のものによって、増殖する微生物の一部を剥離させるようにしてもよい。
【0109】
以上述べた少なくともひとつの実施形態によれば、水処理性能を維持し易い処理装置110、水処理装置100、水処理装置100における調整機構50の状態推定方法、及び、水処理装置100の複数の平板20に対する微生物の付着量の調整方法を提供することができる。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
10…水処理タンク、20…平板、20a…接触体、30…回転軸、30a…支持部、40…モータ、50…調整機構、51…除去部、52…送風機、53…散気管、53a…穴、54…開閉弁、55…洗浄部、56…洗浄水タンク、57…ポンプ、60…汚泥引抜配管、70…汚泥引抜弁、80…情報収集部、90…コントローラ、91…プロセッサ、92…ROM、93…RAM、94…補助記憶デバイス、95…通信インタフェース、100…水処理装置。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12