(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047273
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】給排水システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/30 20060101AFI20240329BHJP
E03D 5/10 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
E03C1/30
E03D5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152802
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 浩和
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康宏
(72)【発明者】
【氏名】小澤 慶記
(72)【発明者】
【氏名】木全 淳
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
(72)【発明者】
【氏名】松本 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】木原 由起子
【テーマコード(参考)】
2D039
2D061
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC03
2D039CB02
2D039EA01
2D039FA03
2D039FA08
2D039FC09
2D039FC10
2D061AA01
2D061AA02
2D061AA03
2D061AA10
2D061AB10
2D061AE03
(57)【要約】
【課題】 複数の水洗式便器の排水が排水管に流れる構成において、排水管の搬送能力を向上させる技術を提供する。
【解決手段】 給排水システムは、管理領域において互いに間隔を有して並ぶ複数の水洗式便器と、前記複数の水洗式便器の並び方向に延びており、前記複数の水洗式便器のそれぞれに連通する枝排水管と、前記枝排水管の下流端に連通する主排水管と、前記複数の水洗式便器に洗浄水を供給する供給部であって、前記複数の水洗式便器のそれぞれの前記主排水管に対する位置に応じた洗浄水を供給する前記供給部と、前記複数の水洗式便器のそれぞれの前記主排水管に対する位置に応じて前記複数の水洗式便器の使用頻度を制御する頻度制御部と、のうち、少なくとも一方を有する制御装置と、を備えていてもよい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給排水システムであって、
管理領域において互いに間隔を有して並ぶ複数の水洗式便器と、
前記複数の水洗式便器の並び方向に延びており、前記複数の水洗式便器のそれぞれに連通する枝排水管と、
前記枝排水管の下流端に連通する主排水管と、
前記複数の水洗式便器に洗浄水を供給する供給部であって、前記複数の水洗式便器のそれぞれの前記主排水管に対する位置に応じた洗浄水を供給する前記供給部と、前記複数の水洗式便器のそれぞれの前記主排水管に対する位置に応じて前記複数の水洗式便器の使用頻度を制御する頻度制御部と、のうち、少なくとも一方を有する制御装置と、を備える、給排水システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記供給部を備え、
前記供給部は、前記複数の水洗式便器のうちの前記枝排水管の最も下流に連通する第1水洗式便器において洗浄水を供給すべきであることを示す第1条件が達成される場合、前記第1水洗式便器の便鉢に第1水量の洗浄水を供給し、前記第1水洗式便器よりも前記枝排水管の上流側に位置する第2水洗式便器において前記第1条件が達成される場合、前記第2水洗式便器の便鉢に、前記第1水量よりも多い第2水量の洗浄水を供給する、請求項1に記載の給排水システム。
【請求項3】
前記供給部は、前記第1水洗式便器において前記第1条件が達成される場合であって、かつ、前記枝排水管に供給される水量に関する第2条件が達成されない場合に、前記第1水量の洗浄水を供給する、請求項2に記載の給排水システム。
【請求項4】
前記供給部は、前記第1水洗式便器において前記第1条件が達成される場合であって、さらに、前記第2条件が達成される場合に、前記第2水量の洗浄水を供給する、請求項3に記載の給排水システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記頻度制御部を備え、
前記頻度制御部は、前記複数の水洗式便器のうち、前記枝排水管の上流側に位置する水洗式便器ほど使用頻度を低くする、請求項1から4のいずれか一項に記載の給排水システム。
【請求項6】
前記頻度制御部は、前記枝排水管の最上流側に位置する水洗式便器の使用を禁止する、請求項5に記載の給排水システム。
【請求項7】
前記第1水洗式便器は、
前記枝排水管まで延びる第1便器側排水管と、
前記第1便器側排水管に配置される第1検出部であって、前記第1便器側排水管と前記枝排水管との接続部分における前記枝排水管の液面を検出する前記第1検出部と、を備え、
前記第2水洗式便器は、
前記枝排水管まで延びる第2便器側排水管と、
前記第2便器側排水管に配置される第2検出部であって、前記第2便器側排水管と前記枝排水管との接続部分における前記枝排水管の液面を検出する前記第2検出部と、を備え、
前記供給部は、
前記第1検出部によって検出される前記液面を用いて、前記第1水洗式便器の前記枝排水管の上下流方向における位置を特定し、
前記第2検出部によって検出される前記液面を用いて、前記第2水洗式便器の前記枝排水管の上下流方向における位置を特定する、請求項2から4のいずれか一項に記載の給排水システム。
【請求項8】
前記管理領域は、下側フロアと、前記下側フロアよりも上階の上側フロアと、を備え、
前記下側フロアは、
互いに間隔を有して並ぶ複数の第3水洗式便器と、
前記複数の第3水洗式便器の並び方向に延びており、前記複数の第3水洗式便器のそれぞれに連通する第1枝排水管と、を備え、
前記上側フロアは、
互いに間隔を有して並ぶ複数の第4水洗式便器と、
前記複数の第4水洗式便器の並び方向に延びており、前記複数の第4水洗式便器のそれぞれに連通する第2枝排水管と、を備え、
前記給排水システムは、さらに、前記第1枝排水管と前記第2枝排水管とのそれぞれの流動性に関する指標を取得する取得部と、
前記供給部は、取得済みの指標を用いて、前記第1枝排水管と前記第2枝排水管とのうち、流動性が高い特定枝排水管を特定し、前記特定枝排水管から前記第1枝排水管と前記第2枝排水管とのうち、前記特定枝排水管と異なる枝排水管に水を供給する、請求項2から4のいずれか一項に記載の給排水システム。
【請求項9】
前記供給部は、前記第1枝排水管と前記第2枝排水管とのうち、前記第2枝排水管の流動性が高いと特定される場合に、前記第2枝排水管から前記第1枝排水管に水を供給する、請求項8に記載の給排水システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記複数の水洗式便器に供給される複数回の洗浄水の所定期間における平均水量が所定水量以下となるように洗浄水を供給する、請求項1から4のいずれか一項に記載の給排水システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記頻度制御部を備え、
前記頻度制御部は、前記複数の水洗式便器に供給される複数回の洗浄水の所定期間における平均水量が所定水量以下となるように、前記複数の水洗式便器の使用頻度を制御する、請求項10に記載の給排水システム。
【請求項12】
前記供給部は、前記第1水洗式便器の洗浄指示が取得される前記第1条件が達成される場合、前記第1水洗式便器の便鉢に第1水量の洗浄水を供給し、前記第2水洗式便器の洗浄指示が取得される前記第1条件が達成される場合、前記第2水洗式便器の便鉢に、前記第1水量よりも多い第2水量の洗浄水を供給する、請求項2から4のいずれか一項に記載の給排水システム。
【請求項13】
前記第2条件は、前記枝排水管に前記第1水量の洗浄水が供給される回数が、特定回数に亘って継続されることを含む、請求項3及び4のいずれか一項に記載の給排水システム。
【請求項14】
給排水システムを制御する制御方法であって、
給排水システムは、
管理領域において互いに間隔を有して並ぶ複数の水洗式便器と、
前記複数の水洗式便器の並び方向に延びており、前記複数の水洗式便器のそれぞれに連通する枝排水管と、
前記枝排水管の下流端に連通する主排水管と、を備え、
前記制御方法は、
前記複数の水洗式便器のそれぞれの前記主排水管に対する位置に応じた洗浄水を供給することと、前記複数の水洗式便器のそれぞれの前記主排水管に対する位置に応じて前記複数の水洗式便器の使用頻度を制御することの少なくとも一方を実行する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、給排水システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ボウルに供給された洗浄水が建物の排水管に排出される大便器が開示されている。排水配管に汚物が停滞すると、排水管が満水となり、サイホン現象が発生する。大便器では、サイホン現象を検出することによって、排水管に停滞汚物が存在することを推定する。サイホン現象が検出されると、大便器は、洗浄水量を増加させることによって、排水管の搬送能力を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、1個の大便器の排水が流れる排水管の搬送能力向上のために、1個の大便器で使用される水量が調整される。本明細書では、複数の水洗式便器の排水が排水管に流れる構成において、排水管の搬送能力を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示の技術の第1の態様では、給排水システである。給排水システムは、管理領域において互いに間隔を有して並ぶ複数の水洗式便器と、前記複数の水洗式便器の並び方向に延びており、前記複数の水洗式便器のそれぞれに連通する枝排水管と、前記枝排水管の下流端に連通する主排水管と、前記複数の水洗式便器に洗浄水を供給する供給部であって、前記複数の水洗式便器のそれぞれの前記主排水管に対する位置に応じた洗浄水を供給する前記供給部と、前記複数の水洗式便器のそれぞれの前記主排水管に対する位置に応じて前記複数の水洗式便器の使用頻度を制御する頻度制御部と、のうち、少なくとも一方を有する制御装置と、を備えていてもよい。
【0006】
第2の態様では、上記第1の態様において、前記制御装置は、前記供給部を備え、前記供給部は、前記複数の水洗式便器のうちの前記枝排水管の最も下流に連通する第1水洗式便器において洗浄水を供給すべきであることを示す第1条件が達成される場合、前記第1水洗式便器の便鉢に第1水量の洗浄水を供給し、前記第1水洗式便器よりも前記枝排水管の上流側に位置する第2水洗式便器において前記第1条件が達成される場合、前記第2水洗式便器の便鉢に、前記第1水量よりも多い第2水量の洗浄水を供給してもよい。
【0007】
第3の態様では、上記第2の態様において、前記供給部は、前記第1水洗式便器において前記第1条件が達成される場合であって、かつ、前記枝排水管に供給される水量に関する第2条件が達成されない場合に、前記第1水量の洗浄水を供給してもよい。
【0008】
第4の態様では、上記第3の態様において、前記供給部は、前記第1水洗式便器において前記第1条件が達成される場合であって、さらに、前記第2条件が達成される場合に、前記第2水量の洗浄水を供給してもよい。
【0009】
第5の態様では、上記第1から第4の態様のいずれか一つにおいて、前記制御装置は、前記頻度制御部を備え、前記頻度制御部は、前記複数の水洗式便器のうち、前記枝排水管の上流側に位置する水洗式便器ほど使用頻度を低くしてもよい。
【0010】
第6の態様では、上記第5の態様において、前記頻度制御部は、前記枝排水管の最上流側に位置する水洗式便器の使用を禁止してもよい。
【0011】
第7の態様では、上記第1から第6の態様のいずれか一つにおいて、前記第1水洗式便器は、前記枝排水管まで延びる第1便器側排水管と、前記第1便器側排水管に配置される第1検出部であって、前記第1便器側排水管と前記枝排水管との接続部分における前記枝排水管の液面を検出する前記第1検出部と、を備え、前記第2水洗式便器は、前記枝排水管まで延びる第2便器側排水管と、前記第2便器側排水管に配置される第2検出部であって、前記第2便器側排水管と前記枝排水管との接続部分における前記枝排水管の液面を検出する前記第2検出部と、を備え、前記供給部は、前記第1検出部によって検出される前記液面を用いて、前記第1水洗式便器の前記枝排水管の上下流方向における位置を特定し、前記第2検出部によって検出される前記液面を用いて、前記第2水洗式便器の前記枝排水管の上下流方向における位置を特定してもよい。
【0012】
第8の態様では、上記第1から第7の態様のいずれか一つにおいて、前記管理領域は、下側フロアと、前記下側フロアよりも上階の上側フロアと、を備え、前記下側フロアは、互いに間隔を有して並ぶ複数の第3水洗式便器と、前記複数の第3水洗式便器の並び方向に延びており、前記複数の第3水洗式便器のそれぞれに連通する第1枝排水管と、を備え、前記上側フロアは、互いに間隔を有して並ぶ複数の第4水洗式便器と、前記複数の第4水洗式便器の並び方向に延びており、前記複数の第4水洗式便器のそれぞれに連通する第2枝排水管と、を備え、前記給排水システムは、さらに、前記第1枝排水管と前記第2枝排水管とのそれぞれの流動性に関する指標を取得する取得部と、前記供給部は、取得済みの指標を用いて、前記第1枝排水管と前記第2枝排水管とのうち、流動性が高い特定枝排水管を特定し、前記特定枝排水管から前記第1枝排水管と前記第2枝排水管とのうち、前記特定枝排水管と異なる枝排水管に水を供給してもよい。
【0013】
第9の態様では、上記第8の態様において、前記供給部は、前記第1枝排水管と前記第2枝排水管とのうち、前記第2枝排水管の流動性が高いと特定される場合に、前記第2枝排水管から前記第1枝排水管に水を供給してもよい。
【0014】
第10の態様では、上記第1から第9の態様のいずれか一つにおいて、前記制御装置は、前記複数の水洗式便器に供給される複数回の洗浄水の所定期間における平均水量が所定水量以下となるように洗浄水を供給してもよい。
【0015】
第11の態様では、上記第10の態様において、前記制御装置は、前記頻度制御部を備え、前記頻度制御部は、前記複数の水洗式便器に供給される複数回の洗浄水の所定期間における平均水量が所定水量以下となるように、前記複数の水洗式便器の使用頻度を制御してもよい。
【0016】
第12の態様では、上記第2から第4の態様のいずれか一つにおいて、前記供給部は、前記第1水洗式便器の洗浄指示が取得される前記第1条件が達成される場合、前記第1水洗式便器の便鉢に第1水量の洗浄水を供給し、前記第2水洗式便器の洗浄指示が取得される前記第1条件が達成される場合、前記第2水洗式便器の便鉢に、前記第1水量よりも多い第2水量の洗浄水を供給してもよい。
【0017】
第13の態様では、上記第3から第4の態様のいずれか一つにおいて、記第2条件は、前記枝排水管に前記第1水量の洗浄水が供給される回数が、特定回数に亘って継続されることであってもよい。
【0018】
第14の態様では、給排水システムを制御する制御方法であって、給排水システムは、管理領域において互いに間隔を有して並ぶ複数の水洗式便器と、前記複数の水洗式便器の並び方向に延びており、前記複数の水洗式便器のそれぞれに連通する枝排水管と、前記枝排水管の下流端に連通する主排水管と、を備え、前記制御方法は、前記複数の水洗式便器のそれぞれの前記主排水管に対する位置に応じた洗浄水を供給することと、前記複数の水洗式便器のそれぞれの前記主排水管に対する位置に応じて前記複数の水洗式便器の使用頻度を制御することの少なくとも一方を実行してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】建物内の水洗式便器の配管構造の概要図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(給排水システムの構成)
図1には、管理領域1内に設置される複数の水洗式便器100、200を備える給排水システム2が示されている。管理領域1は、1個のビル、家屋、商業施設等の建物、1個の野外管理領域、1個の街区、及び、1個の町の少なくとも1個の領域のように、特に制限は無い。1個の街区及び町には、1個以上の建物及び1個以上の野外管理領域の少なくともいずれかが含まれている。管理領域1は、第1フロア9bと、第1フロア9bよりも上階の第2フロア9aと、を含む複数のフロアを有する建物を有する。
【0021】
図1では、第2フロア9aに6個の水洗式便器100a~100fと、第1フロア9bに6個の水洗式便器200a~200fと、が表されている。以下、「水洗式便器」を単に「便器」と呼ぶ。管理領域1内のフロア数及び複数の便器の個数には制限は無い。なお、管理領域1は、1個のビル、家屋、商業施設等の建物、1個の野外管理領域、1個の街区、及び、1個の町の少なくとも1個の領域のように、特に制限は無い。管理領域1では、管理領域1内の複数の便器100、200の排水が管理領域1内の排水系統5によって、処理される。排水系統5は、複数の枝排水管6A、6Bと、主排水管8と、を備える。枝排水管6Aは、複数の便器100が並ぶ方向に延びている。複数の便器100の排水は、1本の枝排水管6Aに合流して、管理領域1内の主排水管8に連通している。枝排水管6Bは、複数の便器200が並ぶ方向に延びている。複数の便器200の排水は、1本の枝排水管6Bに合流して、管理領域1内の主排水管8に連通している。主排水管8は、複数のフロア9a、9bに共通する。複数の便器100が直線状に並んでいない場合、枝排水管6Aは中間位置において曲がっていてもよい。複数の便器200が直線状に並んでいない場合、枝排水管6Bは中間位置において曲がっていてもよい。
【0022】
管理領域1では、例えば1か月等の特定期間において使用される目標の水量が予め設定されている。管理領域1では、使用する水量が一括管理されている。複数の便器100、200のそれぞれで使用される水量のみならず、管理領域1に配置される複数の便器100、200で使用される合計の水量を低減することによって、管理領域1で使用される水量を抑制し得る。
【0023】
複数の便器100のそれぞれには、管理領域1の外側に設置されている上水管3に連通する給水管4Aから水が供給される。複数の便器100のそれぞれは、給水管4から分岐する複数の分岐管4aのそれぞれに接続されている。複数の便器100のそれぞれは、複数の分岐管6aのそれぞれに接続されている。複数の便器100のそれぞれで使用された水は、分岐管6aのそれぞれを介して枝排水管6Aに流れる。枝排水管6Aには、さらに、複数の便器100のそれぞれによって受け止められた排泄物及びトイレットペーパーが、分岐管6aのそれぞれを介して流れ込む。
【0024】
同様に、複数の便器200のそれぞれには、管理領域1の外側に設置されている上水管3に連通する給水管4Bから水が供給される。複数の便器200のそれぞれは、給水管4Bから分岐する複数の分岐管4bのそれぞれに接続されている。複数の便器200のそれぞれは、分岐管6bに接続されている。複数の便器200のそれぞれで使用された水は、分岐管6bのそれぞれを介して枝排水管6Bに流れる。枝排水管6Bには、さらに、複数の便器100のそれぞれによって受け止められた排泄物及びトイレットペーパーが、分岐管6bのそれぞれを介して流れ込む。枝排水管6A、6Bの水及び排泄物は、枝排水管6A、6Bを流れて主排水管8に到達する。主排水管8に到達した水及び排泄物は、主排水管8を通過して、下水管に流れる。
【0025】
枝排水管6Aと枝排水管6Bとは、それぞれの上流端において、連結管7によって互いに連通されている。連結管7には、ポンプ150が配置されている。
【0026】
(便器の構成)
図2に示すように、便器100aは、便座102と、便鉢104と、排水管106と、図示省略された便蓋及びタンクと、を備える。便器100aでは、タンクに貯留される洗浄水が、排泄物を受け入れる便鉢104に供給されることによって、便鉢104が洗浄される。タンクは、給水管4から供給される水を貯留する。便鉢104に供給された洗浄水は、排水管106から分岐管6aを通って、枝排水管6Aに流れる。洗浄水は、枝排水管6Aを、
図2の矢印の方向に、上流から下流に向かって流れる。変形例では、便器100aは、便蓋及びタンクの少なくとも一方を備えていなくてもよい。タンクが配置されていない便器100aでは、給水管4から分岐管4aを介して、便鉢104に洗浄水が供給されてもよい。
【0027】
排水管106は、便鉢104から上方に向かって延びて、変曲位置106aを頂点として、下方に湾曲して、分岐管6aまで延びている。便器100aが設置される地面Xから上方には、便器100aが備える排水管106が配置され、地面Xよりも下方には、管理領域1側の分岐管6aが配置される。変曲位置106aから下方に向くと、分岐管6aに通じて枝排水管6A内の一部が露出している。便器100b~100fを含む複数の便器100及び複数の便器200のそれぞれは、便器100aと同様の構成を有する。
【0028】
(管理システムの構成)
給排水システム2は、複数の便器100、200と排水系統5の他に、
図3に示す管理システム10を備える。管理システム10は、複数の便器100、200を制御する。管理システム10は、制御ユニット11と、複数のセンサ110、120と、を備える。制御ユニット11は、主制御装置12と、複数の個別制御装置20a、220aと、を備える。主制御装置12は、複数の便器100、200を管理する。主制御装置12は、CPU14と、メモリ16と、通信モジュール18と、を備える。
【0029】
CPU14とメモリ16と通信モジュール18とは、図示省略したバスバーによって通信可能に接続されている。主制御装置12は、メモリ16に格納されるコンピュータプログラムに従った処理をCPU14が実行することによって、複数の便器100、200を制御する。
【0030】
メモリ16は、例えばハードディスク、ROM及びRAMの少なくとも1種類のメモリを有する。メモリ16は、主制御装置12のためのコンピュータプログラム及び主制御装置12の処理に必要なデータを格納する。メモリ16には、複数の便器100のそれぞれに固有に付与される識別情報と、便器が設置されているフロアの階数を表す階数情報と、の組み合わせが予め格納されている。メモリ16には、さらに、識別情報と、識別情報によって識別される便器の現在の洗浄水量と、の組み合わせが格納される。
【0031】
通信モジュール18は、主制御装置12と他の装置とを通信可能に接続するためのインターフェイスを備える。例えば、通信モジュール18は、LAN(Local Area Networkの略)と通信するためのインターフェイス及び無線通信を実行するためのインターフェイスの少なくとも一方を備えていてもよい。主制御装置12は、通信モジュール18を介して、複数の個別制御装置20a、220aのそれぞれ及びポンプ150と通信可能に接続されている。
【0032】
複数の個別制御装置20aのそれぞれは、複数の便器100のそれぞれに配置されている。複数の個別制御装置220aのそれぞれは、複数の便器200のそれぞれに配置されている。例えば、1個の個別制御装置20aが、便器100aに配置されている。個別制御装置20aは、制御部22aと、表示部27と、通信モジュール28と、操作部29と、を備える。制御部22aは、CPU24と、メモリ26と、を備える。
【0033】
CPU24とメモリ26と通信モジュール28と操作部29とは、図示省略したバスバーによって通信可能に接続されている。制御部22aは、メモリ26に格納されるコンピュータプログラムに従った処理をCPU24が実行することによって、複数の便器100を制御する。
【0034】
メモリ26は、例えばハードディスク、ROM及びRAMの少なくとも1種類のメモリを有する。メモリ26は、制御部22aのためのコンピュータプログラム及び制御部22aの処理に必要なデータを格納する。メモリ26には、便器100aの識別情報が予め格納されている。制御部22aは、タンクに配置される弁を制御することによって、タンクから便鉢104に洗浄水を供給する。制御部22aは、弁を制御することによって、タンクから便鉢104に供給される洗浄水量を調整することができる。
【0035】
表示部27は、液晶ディスプレイ、LED等を備える。表示部27は、制御部22aによる制御によって表示態様を変化する。表示部27は、制御部22aによる制御によって、使用者に便器100aの使用が禁止されていることを表す表示を実行する。例えば、表示部27は、液晶ディスプレイに、便器100aの使用が禁止であることを示す文字列を表す。例えば、表示部27は、LEDを点灯することによって、便器100aの使用が禁止であることを表す。
【0036】
通信モジュール28は、制御部22aと他の装置とを通信可能に接続するためのインターフェイスを備える。例えば、通信モジュール28は、通信モジュール18と同様の構成を有する。制御部22aは、通信モジュール28を介して、主制御装置12と、複数のセンサ110、120と、のそれぞれと通信可能に接続されている。操作部29は、便器100aの使用者が、便器100aの便鉢104に洗浄水を供給させるための洗浄ボタンを備える。
【0037】
複数の便器100b~100fのそれぞれには、個別制御装置20aと同様の構成を有する個別制御装置が配置されている。便器200aは、個別制御装置20aと同様の構成を有する個別制御装置220aを備える。複数の便器200b~200fのそれぞれには、個別制御装置220aと同様の構成を有する個別制御装置が配置されている。
【0038】
複数のセンサ110、120は、便器100aに配置されている。
図2に示すように、センサ110は、便座102の下面に配置される。センサ110は、センサ110から下方に延びる破線で示すように、超音波及び電波の少なくとも一方を、便鉢104に向けて下方に発信して、便鉢104内の洗浄水での液面WF1を受信することによって、便鉢104内の洗浄水の液面WF1の位置を検出する。センサ120は、排水管106の変曲位置106aに配置されている。センサ120は、センサ110と同様に、センサ120から下方に延びる破線で示すように、超音波及び電波の少なくとも一方を、変曲位置106aに露出されている枝排水管6Aに向けて下方に発信する。センサ120は、枝排水管6A内の排泄物等の異物及び液面WF2の少なくとも一方での反射波を受信することによって、枝排水管6A内の異物及び液面WF2の少なくとも一方の位置を検出する。以下では、異物及び液面WF2の少なくとも一方の位置を、単に「液面の位置」と呼ぶ。複数の便器100のそれぞれには、複数のセンサ110、120と同様のセンサが配置されている。
【0039】
複数の便器200のそれぞれには、複数のセンサ110、120のそれぞれと同様のセンサ210、220が配置されている。
【0040】
(便器に洗浄水を供給するための供給処理)
主制御装置12及び複数の個別制御装置20a、220aは、複数の便器100a~100f、200a~200fに供給する洗浄水量を供給するための供給処理を実行する。供給処理では、まず、各便器に供給する洗浄水量を決定する処理を含む位置特定処理が実行される。
【0041】
(位置特定処理)
主制御装置12には、デフォルトの状態で、複数の便器100、200の識別情報と組み合わせて、初期洗浄水量が格納されている。初期洗浄水量は、複数の便器100、200で同一である。主制御装置12は、管理領域1に設置されると位置特定処理を実行する。
図4に示すように、S102において、管理領域1に給排水システム2が設置されると、主制御装置12は、複数の便器100、200の個別制御装置に、センサ120によって検出される検出結果である枝排水管6A、6Bの液面の位置を繰り返し取得させて、主制御装置12に送信させる。複数の個別制御装置20aのそれぞれは、センサ120から取得済みの検出結果を、便器の識別情報と組み合わせて、主制御装置12に送信する。複数の個別制御装置220aのそれぞれは、センサ220から取得済みの検出結果を、便器の識別情報と組み合わせて、主制御装置12に送信する。
【0042】
S102では、主制御装置12は、検出結果を複数の便器100、200の個別制御装置20a、220aのそれぞれから受信する。S104では、主制御装置12は、S102で受信済みの検出結果と識別情報とを組み合わせてメモリ16に格納する。S106では、主制御装置12は、S102において検出結果を最初に取得してから、特定期間が経過したか否かを判断する。特定期間は、予め設定されており、例えば、1日である。特定期間が経過していない場合(S106でNO)、S102に戻る。
【0043】
特定期間が経過している場合(S106でYES)、S108において、主制御装置12は、複数の便器100、200の位置を特定する。具体的には、主制御装置12は、複数の便器100、200のそれぞれを、上流側と下流側の2種類の位置に区別する。主制御装置12は、複数の便器100、200のそれぞれについて、メモリ16に格納されている特定期間における検出結果を用いて、特定期間において、枝排水管6A、6Bの液面に位置が所定回数(例えば10回)以上変化しているか否かを判断する。枝排水管6A、6Bの液面の位置の変化が検出される場合とは、液面の変化が検出された位置よりも上流側の便器に洗浄水が供給され、枝排水管6A、6Bに流れた場合である。枝排水管6A、6Bの液面の位置の変化が多いほど、枝排水管6A、6Bの下流側に配置されている。所定回数は、給排水システム2の管理者等によって予め特定され、メモリ16に格納されている。所定回数は、複数の便器100、200の個数及び使用頻度等を考慮して、適宜決定される。
【0044】
S110では、主制御装置12は、S108において特定期間に枝排水管6Aの液面に位置が所定回数以上変化していると判断される便器の識別情報と組み合わせて、洗浄水の水量として第1水量をメモリ16に格納する。主制御装置12は、S108において特定期間に枝排水管6Aの液面に位置の変化が所定回数未満であると判断される便器の識別情報と組み合わせて、洗浄水の水量として、第1水量と第2水量とをメモリ16に格納する。第2水量は、第1水量よりも多い。例えば、第2水量は4.0Lであり、第1水量は2.5Lである。この結果、枝排水管6Aの比較的に上流側に配置される便器には、第2水量の洗浄水が供給される。枝排水管6Aの比較的に下流側に配置される便器には、第1水量の洗浄水が供給される。枝排水管6Bに配置される便器でも同様である。
【0045】
S112では、主制御装置12は、各フロアにおいて最も上流に配置される便器の識別情報を、最上流を表す情報と組み合わせて、メモリ16に格納する。具体的には、主制御装置12は、メモリ16に格納されている階数情報を用いて、第1フロア9bに配置される複数の便器100のうち、枝排水管6Aの液面に位置の変化の回数が最も少なかった便器100aの識別情報を特定する。主制御装置12は、特定済みの識別情報と、最上流を表す情報と、を組み合わせてメモリ16に格納する。第1フロア9b以外のフロアも同様に、例えば、第2フロア9aについても同様に、枝排水管6Bの液面に位置の変化の回数が最も少なかった便器200aの識別情報を特定し、最上流を表す情報と、を組み合わせてメモリ16に格納して、位置特定処理を終了する。
【0046】
位置特定処理と並行して、複数の個別制御装置20a、220aでは洗浄処理が実行され、主制御装置12では洗浄水制御処理が実行される。以下では、代表して制御部22aが実行する処理を説明するが、個別制御装置220aの制御部222aでも同様である。
【0047】
(洗浄処理)
制御部22aは、洗浄処理を継続的に実行している。
図5に示すように、洗浄処理では、S12において、制御部22aは、洗浄指示を取得することを監視している。洗浄指示は、便器100aの使用者が操作部29の洗浄ボタンを操作すると、操作部29から制御部22aに送信される。変形例では、制御部22aは、便器100aに配置される着座センサにおいて使用者が着座したことを表す信号を取得した後に脱座したことを表す信号を取得することによって、洗浄指示を取得したと判断してもよい。変形例では、便器100aに配置される便蓋の開閉を検知するセンサにおいて便蓋が閉じられたことを表す信号、及び便器100aに配置される人感センサにおいて使用者が便器100aから離れたことを表す信号の少なくとも一方を取得することによって、洗浄指示を取得したと判断してもよい。洗浄指示が取得されると(S12でYES)、S13に進む。制御部22aは、洗浄指示によらず、定期的及び不定期の少なくとも一方で洗浄水を供給させてもよい。この場合、洗浄水を供給すべきタイミングで、S12でYESと判断されてもよい。洗浄指示が取得されない場合(S12でNO)、S32に進む。
【0048】
S14では、制御部22aは、センサ120から枝排水管6Aの液面の位置の検出結果を取得する。S16では、制御部22aは、センサ110から便鉢104の液面の位置の検出結果を取得する。S18では、S14及びS16で取得済みの検出結果を、洗浄指示が取得されたことを示す洗浄指示情報及び便器100aの識別情報と組み合わせて、主制御装置12に送信する。
【0049】
S20では、制御部22aは、主制御装置12から便鉢104に供給すべき洗浄水量を受信する。S22では、制御部22aは、便鉢104への洗浄水の供給を開始させる。S24では、制御部22aは、洗浄水の供給を開始してから所定期間が経過することを監視している。所定期間は、予め制御部22aに格納されている。所定期間は、枝排水管6Aの流動性が正常である場合に、洗浄水の供給後、便鉢104内の液面が水平に落ち着くまでの期間(例えば7秒)以上の期間である。
【0050】
S26とS28のそれぞれは、S14、S16のそれぞれと同様である。S30では、制御部22aは、S26及びS28で取得済みの検出結果を便器100aの識別情報と組み合わせて、主制御装置12に送信する。S32では、制御部22aは、主制御装置12から追加洗浄水供給指示が受信されることを監視している。S30において検出結果を送信する場合、検出結果の送信後、予め制御部22aに設定された期間(例えば1秒)が経過するまで、追加洗浄水供給指示が受信されるか否かを判断する。追加洗浄水供給指示が受信されない場合(S32でNO)、S12に戻る。追加洗浄水供給指示が受信される場合(S32でYES)、S34において、制御部22aは、追加洗浄水供給指示に含まれる洗浄水量の洗浄水を、便鉢104に供給させて、S12に戻る。
【0051】
(洗浄水制御処理)
主制御装置12は、洗浄水制御処理を継続的に実行している。洗浄水制御処理では、
図6に示すように、S52において、主制御装置12は、複数の制御部22a、220aのいずれかの制御部から検出結果が受信されることを監視している。検出結果が受信されると(S52でYES)、S54において、主制御装置12は、使用制限処理を実行する。
【0052】
(使用制限処理)
図7に示すように、洗浄水決定処理では、S72において、主制御装置12は、S52で取得される便器の識別情報を用いて、洗浄指示が取得された便器が、1個のフロアの最上流の便器であるか否かを判断する。主制御装置12は、メモリ16に、便器の識別情報が、最上流を表す情報と組み合わせて格納されている場合に、便器が最上流の便器であると判断する(S72でYES)。主制御装置12は、メモリ16に、便器の識別情報が最上流を表す情報と組み合わせて格納されていない場合に、便器が最上流の便器でないと判断し(S72でNO)、使用制限処理を終了する。
【0053】
S72でYESの場合、S74において、主制御装置12は、便器での洗浄回数が制限回数と等しいか否かを判断する。具体的には、主制御装置12は、S52において洗浄指示情報が受信される毎に、便器の識別情報と組み合わせて、洗浄回数をカウントしてメモリ16に格納する。主制御装置12は、メモリ16の洗浄回数が予めメモリ16に設定された制限回数と等しくなったかを判断する。主制御装置12は、洗浄回数が制限回数よりも小さい場合(S74でNO)、使用制限処理を終了する。主制御装置12は、洗浄回数が制限回数と等しい場合(S74でYES)、S76において、主制御装置12は、S52で検出結果を送信した便器の個別制御装置20aに、使用禁止指示を送信して、使用制限処理を終了する。
【0054】
主制御装置12から使用禁止指示が受信された個別制御装置20aは、表示部27に、便器の使用が禁止されている旨の表示を実行する。例えば、個別制御装置20aは、表示部27に、便器の使用が禁止されていることを表す文字列を表示させる。例えば、個別制御装置20aは、表示部27に、便器の使用が禁止されていることを表す色彩のLEDを点灯する。これにより、使用者は、便器の使用が禁止されていることを認識することができる。
【0055】
図6に戻って、使用制限処理が終了すると、S56において、主制御装置12は、S52で受信された識別情報に組み合わせてメモリ16に格納されている洗浄水量を、個別制御装置20aに送信する。洗浄水量して、第1水量と第2水量との両者が格納されている場合、主制御装置12は、S52で受信された識別情報の便器100の個別制御装置20aに洗浄水量を送信するたびに、送信回数を累積してカウントする。主制御装置12は、カウント値をS52で受信された識別情報と組み合わせて格納する。送信回数のカウント値が「4」の倍数である場合に、主制御装置12は、第2水量を洗浄水量として、個別制御装置20aに送信する。送信回数のカウント値が「4」の倍数以外である場合に、主制御装置12は、第1水量を洗浄水量として、個別制御装置20aに送信する。主制御装置12は、4回に1回の頻度で、比較的に水量が多い第2水量を洗浄水量として送信する。第2水量を送信する頻度及びタイミングの少なくとも一方は、給排水システム2の管理者によって適宜設定されてもよい。S58では、主制御装置12は、個別制御装置20aから、S26及びS28の検出結果を取得することを待機している。検出結果が取得される(S58でYES)、S59において、主制御装置12は、枝排水管6Aの流動性が低下しているか否かを判断する。
【0056】
具体的には、主制御装置12は、枝排水管6Aの液面の位置が、第3基準値よりも高い場合に流動性が低下していると判断する。第1基準値は、枝排水管6Aに異物が存在していない状態で、便器100aから枝排水管6Aに洗浄水が流れた場合の枝排水管6Aの液面の位置に基づいて決定される。例えば、第1基準値は、S14で検出済みの枝排水管6Aの液面+H1(例えば30mm)である。主制御装置12は、便鉢104の液面の位置が、第2基準値よりも高い場合に流動性が低下していると判断する。枝排水管6Aの流動性が低下していない場合、洗浄水の供給を開始してから所定期間が経過すると、便鉢104の溜水の水面は、想定された水位で安定している。第2基準値は、便鉢104の溜水の水面が安定しないことを判断することが可能な値に設定される。第2基準値は、例えば、便器100aに想定されている溜水の液面の位置+H2(例えば10mm)である。
【0057】
主制御装置12は、枝排水管6Aの液面の位置が第1基準値以下の場合であり、かつ、便鉢104の液面の位置が第2基準値以下の場合に、流動性が低下していないと判断する。流動性が低下していると判断される場合(S59でYES)、S60において、主制御装置12は、便器100aよりも上階のフロアの枝排水管の流動性が高いか否かを判断する。具体的には、主制御装置12は、上階のフロアに配置されている複数の便器に対する洗浄水制御処理のうち、直前の予め決められた回数に亘って、S59において流動性が低下していると判断されていない場合、上階のフロアの枝排水管の流動性が高いと判断する(S60でYES)。主制御装置12は、上階のフロアに配置されている複数の便器に対する洗浄水制御処理のうち、直前の予め決められた回数のうち、S59において流動性が低下していると判断されている場合、上階のフロアの枝排水管の流動性が高いと判断しない(S60でNO)。
【0058】
S60でNOの場合、S61において、主制御装置12は、追加洗浄水量を決定する。枝排水管6Aの流動性が低下していると判断される場合、枝排水管6Aの流動性低下の原因である枝排水管6A内の排泄物及びトイレットペーパーのような異物D1を主排水管8に流すために、洗浄指示によって供給される洗浄水に加えて、追加の洗浄水を枝排水管6Aに供給する。追加洗浄水量(例えば1.0L)は、予め設定されてメモリ16に格納されている。変形例では、主制御装置12は、追加洗浄水量を、流動性に応じて決定してよい。例えば、主制御装置12は、流動性の程度、即ち、枝排水管6A及び便鉢104の液面の位置の少なくとも一方に基づいて、3種類の水量(例えば、0.5L、1.0L、1.5L)のいずれかを追加洗浄水量として決定してもよい。主制御装置12は、流動性の程度は、S26で検出済みの枝排水管6Aの液面が高いほど、流動性が低いと決定してもよい。
【0059】
S62では、主制御装置12は、複数の便器100の中から、追加洗浄水を供給する便器を決定する。主制御装置12は、メモリ16に格納されている複数の便器100の識別情報と位置情報との組み合わせを用いて、便器100aの上流側に隣り合う便器を、追加洗浄水を供給する便器として決定する。例えば、便器100bの上流側に隣り合う便器は、便器100aである。検出結果の送信元の便器が、最も上流側に位置する場合、主制御装置12は、追加洗浄水を供給する便器として、最も上流側に位置する便器を決定する。この場合、洗浄水と追加洗浄水とが供給される便器は同一である。変形例では、主制御装置12は、複数の便器100のうち、便器100aの上流側の1個以上の便器を、追加洗浄水を供給する便器として決定してもよい。
【0060】
S64では、S60で決定済みの追加洗浄水量を、S62で決定済みの便器の個別制御装置に送信して、S52に戻る。
【0061】
S60でYESの場合、S66において、主制御装置12は、上階のフロアに配置されている枝排水管から、排水を枝排水管6Aに供給する。理解のために上階の枝排水管6A内の排水を、枝排水管6Bに供給する場合について説明する。主制御装置12は、枝排水管6Aの排水を、ポンプ150を駆動させて、連結管7に向かって流す。これにより、枝排水管6Aの排水が、連結管7を介して、枝排水管6Bに流れる。S68では、主制御装置12は、ポンプ150を始動してから所定期間の経過後に、ポンプ150を停止して、排水の供給を停止して、S52に戻る。変形例では、連結管7は、枝排水管6A以外の配管、例えば、中水道管等に連結されていてもよい。主制御装置12は、ポンプ150を駆動させて、枝排水管6A以外の配管の水を連結管7に向かって流してもよい。これにより、枝排水管6A以外の配管の水が、連結管7を介して、枝排水管6Bに流れてもよい。
【0062】
主制御装置12は、供給処理と並行して、所定のタイミング(例えば6時間毎)で、平均水量管理処理を実行する。主制御装置12は、複数の便器100、200のそれぞれについて、所定期間(例えば1日)における洗浄水の1回当たりの平均水量を算出する。平均水量が所定水量(例えば3L)を越える便器が存在する場合、平均水量が所定水量を越える便器の現在水量を、下限水量に設定する。これにより、複数の便器100、200のそれぞれで使用される洗浄水の平均水量を予め設定された水量に制御することができる。管理領域1内の洗浄水の水量を調整することができる。
【0063】
枝排水管は、枝排水管に存在する異物の影響を受け、主排水管から遠い上流側ほど流動性が低下し、搬送能力が低下する傾向がある。給排水システム2では、比較的に枝排水管6Aの下流側に位置する便器100には、比較的に少ない第1水量の洗浄水が供給される。比較的に枝排水管6Aの上流側に位置する便器100には、洗浄指示が取得され、かつ、4回に1回の頻度において、第1水量よりも多い第2水量の洗浄水が供給される。上流側の便器100に水量が多い洗浄水を流すことによって、上流側の便器100よりも下流側の枝排水管6Aに存在する異物D1を、主排水管8に流すことを促進することができる。この結果、下流側の便器100の洗浄水量を抑制しても、枝排水管6Aが異物D1によって詰まることを抑制することができる。複数の便器200と枝排水管6Bとの関係も同様である。給排水システム2によれば、複数の便器100、200の洗浄水量を調整することによって、枝排水管6A、6Bの搬送能力が低下することを抑制することができるとともに、給排水システム2で使用される洗浄水量の総量を抑制することができる。
【0064】
比較的に枝排水管6Aの上流側に位置する便器100では、4回に1回の頻度において、第1水量よりも多い第2水量の洗浄水が供給される。水量が多い第2水量の洗浄水量が供給される頻度を抑制することによって、使用水量を抑制することができる。変形例では、比較的に枝排水管6Aの上流側に位置する便器100では、洗浄回数に関わらず、第2水量の洗浄水が供給されてもよい。複数の便器200でも同様であってもよい。
【0065】
給排水システム2によると、枝排水管6A、6Bの流動性が低下していると判断される場合、上流側から洗浄水を追加で枝排水管6A、6Bに供給することによって、流動性低下の原因である異物を枝排水管6A、6Bにから主排水管8に流すことができる。枝排水管6の流動性の低下を解消することにより、枝排水管6A、6Bの搬送能力を向上することができる。枝排水管6A、6Bの流動性低下の有無を特定することができるため、通常の洗浄水量を抑えて、枝排水管6A、6Bの流動性の低下が特定される場合に洗浄水量を増加させる処理をすることができる。当該処理によって、枝排水管6A、6Bの搬送能力が低下することを抑制することができるとともに、複数の便器100において使用される洗浄水量を抑制することができる。
【0066】
枝排水管6A、6Bの流動性低下の有無を特定するために、センサ110、120の検出結果が用いられる。センサ110を用いて便鉢104の液面の位置を検出することによって、枝排水管6A、6Bの流動性が低下していること推定することができる。せンサ120を用いて枝排水管6A、6Bの液面の位置を検出することによって、枝排水管6の流動性が低下していることを推定することができる。センサ110、120は、複数の便器100に取り付けられる。枝排水管6A、6Bに枝排水管6A、6Bの流動性低下の有無を特定するための検出装置を配置せずに済む。
【0067】
主制御装置12は、流動性低下の有無を特定するために、枝排水管6A、6Bの液面の高さ及び便鉢104の液面の高さの2種類の指標を用いる。主制御装置12は、より高精度に、流動性低下の有無を特定することができる。
【0068】
複数の便器100のうち、枝排水管6Aの最上流に位置する便器100は、使用回数に応じて使用が制限される。比較的に多い水量の洗浄水が使用される便器100の使用を制限することによって、給排水システム2での使用水量を抑制することができる。変形例では、複数の便器100のうち、上流側に位置する2個以上の便器100の使用を制限してもよい。複数の便器200でも同様であってもよい。枝排水管は、主排水管から遠い上流側ほど流動性が低下し、搬送能力が低下する傾向がある。枝排水管の搬送能力を向上するために上流側に位置する便器100の使用を制限することで、搬送能力を向上するために使用水量を増やすことを抑制することができる。便器100、200の使用を禁止する方法は、使用の禁止を示す音声の出力、便器100、200の入口の扉の施錠等、表示部への表示に限られない。
【0069】
給排水システム2では、位置特定処理によって、複数の便器100、200の中から、上流側に位置する便器100、200と、下流側に位置する便器100、200と、を特定する。これにより、予め、複数の便器100、200の位置を特定せずに済む。変形例では、位置特定処理によって、複数の便器100、200を上流側から下流側に向かって順序を特定してもよい。例えば、S108において、枝排水管6Aの液面に位置の変化の回数が少ない順に、上流側から下流側に向かって順序を特定してもよい。この場合、S110において、主制御装置12は、上流側から下流側に向かって洗浄水が少なくなるように、洗浄水量を決定してもよい。
【0070】
給排水システム2では、上階の枝排水管6Aの流動性が高い場合、下階の枝排水管6Bに、枝排水管6Aから水を供給する。これにより、便器100、200に追加の洗浄水を供給せずに、枝排水管6Bの流動性を向上させることができる。
【0071】
(対応関係)
洗浄指示の取得が「第1条件」の一例である。第1水量を洗浄水量として送信した送信回数のカウント値が「4」の倍数である場合が「第2条件」の一例である。言い換えると、第1水量の洗浄水が便鉢104、即ち枝排水管6A、6Bに第1水量の洗浄水が供給される回数が、特定回数に亘って継続された場合が「第2条件」の一例である。主制御装置12が「供給部」及び「頻度制御部」の一例である。
【0072】
具体的な実施形態を詳細に説明した。これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上述の実施形態の変形例を以下に列挙する。
【0073】
(1)上述した実施形態では、枝排水管6A、6Bに水を流す機器は、複数の便器100、200以外に、洗面台、シンク、浴室、食器洗浄機、洗濯機のように給水管4を介して上水管3から供給される水を使用する衛生設備機器を含んでいてもよい。例えば、主制御装置12は、洗浄水制御処理のS62において、便器以外の衛生設備機器を、追加洗浄水を供給する機器として決定してもよい。衛生設備機器の排水管にセンサ120と同様のセンサを配置してもよい。
【0074】
(2)センサ110に替えて、便鉢104内の洗浄水を撮像するカメラが配置されていてもよい。主制御装置12は、カメラによって撮像される洗浄水の画像を用いて、便鉢104内の洗浄水の水位及び洗浄水の流れ方に応じて、枝排水管6A、6Bの流動性の低下を推定してもよい。
【0075】
(3)センサ110は配置されていなくてもよい。枝排水管6A、6Bの流動性の低下を、センサ120の検出結果を用いて推定してもよい。
【0076】
(4)制御ユニット11の構成は、上記の各実施形態の構成に限定されない。例えば、主制御装置12は、配置されていなくてもよい。この場合、複数の個別制御装置20a、200aのいずれかの個別制御装置が、主制御装置12に替わって、位置特定処理と洗浄水制御処理とを実行してもよい。例えば、複数の個別制御装置20a、200aは、配置されていなくてもよい。この場合、主制御装置12が、複数の個別制御装置20a、200aに替わって、洗浄処理を実行してもよい。
【0077】
(5)洗浄水制御処理において、主制御装置12は、S62の処理を実行しなくてもよい。この場合、S64では、主制御装置12は、追加洗浄水量を、S56で洗浄水量が送信された便器、即ち、洗浄指示が取得された便器に送信してもよい。主制御装置12は、S62の処理を実行してもよい。S64では、主制御装置12は、S62で決定済みの便器と、S56で洗浄水量が送信された便器と、のそれぞれに、追加洗浄水量を送信してもよい。
【0078】
(6)複数の便器100、200の全てに、センサ110、120は配置されていない。センサ110、120は、複数の便器100のうち、2個おきに配置されていてもよい。供給処理では、センサ110、120が配置されている便器(例えば便器100a)の個別制御装置と主制御装置12とは、第1実施形態と同様の処理を実行してもよい。
【0079】
(7)洗浄水制御処理では、S60において、主制御装置12は、上階の枝排水管以外の枝排水管の流動性が高いか否かを判断してもよい。S60において、流動性が高いと判断される枝排水管が存在する場合(S60でYES)に、主制御装置12は、流動性が高いと判断される枝排水管(例えば下階の枝排水管)から、排水を供給してもよい。
【0080】
(8)位置特定処理は実行されなくてもよい。メモリ16又はメモリ26に、複数の便器100、200の位置を表す情報が予め格納されていてもよい。例えば、建物に複数の便器100、200を設置する際に、それぞれの便器を設置した位置を表す情報を予めメモリに格納してもよい。
【0081】
(9)上記の実施形態では、供給処理において、主制御装置12が位置特定処理と洗浄水制御処理とを実行し、複数の個別制御装置20a、220aのそれぞれが、洗浄処理を実行している。変形例では、位置特定処理と洗浄水制御処理との少なくとも一部の処理を、複数の個別制御装置20a、220aのそれぞれが実行してもよい。洗浄処理の少なくとも一部の処理を、主制御装置12が実行してもよい。主制御装置12は、現在洗浄水量等のデータの格納を実行し、それ以外の処理を複数の個別制御装置20a、220aのそれぞれが実行してもよい。
【0082】
(10)上記の実施形態では、複数の便器100のうち、枝排水管6Aの最上流に位置する便器100は、使用回数に応じて使用が制限される。変形例では、主制御装置12は、複数の便器100のうち、枝排水管6Aの上流側に位置する便器ほど使用頻度が低くなるように、使用を制限してもよい。例えば、使用が禁止される使用回数が、枝排水管6Aの上流側に位置する便器ほど小さく設定されてもよい。枝排水管6Aの上流側から下流側に向かって、複数の便器100を2個以上のグループに区分し、グループごとに使用が禁止される使用回数が設定されてもよい。複数の便器200も同様である。
【0083】
本明細書及び図面の少なくとも一方に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。本明細書及び図面の少なくとも一方に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0084】
1:管理領域、2:給排水システム、3:上水管、4A、4B:給水管、5:排水系統、6A、6B:枝排水管、7:連結管、8:主排水管、9a:第2フロア、9b:第1フロア、10:管理システム、11:制御ユニット、12:主制御装置、20a、220a:個別制御装置、100、200:複数の水洗式便器、110、120、210、220:センサ、150:ポンプ