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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047279
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】開閉体装置及び開閉体制御方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/84 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
E06B9/84 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152809
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114166
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 浩三
(72)【発明者】
【氏名】佐野 敬大
【テーマコード(参考)】
2E042
【Fターム(参考)】
2E042AA01
2E042BA00
2E042CA01
2E042CB01
2E042CB02
2E042CB05
2E042CB07
2E042CC10
2E042DA01
(57)【要約】
【課題】負荷感知方式の障害物感知装置を搭載した場合の負荷感知による障害物への接触被害及びシャッターへの接触被害を抑制する。
【解決手段】障害物検出部21によって障害物が接触したことを感知してシャッターカーテン12が停止した時、その停止位置を記憶しておき、次回閉操作時に記憶しておいた停止位置又はその直前で一度停止するようにしたものである。これによって障害物を移動せず、再度シャッターカーテン12を操作してしまった時にシャッターカーテンが障害物に接触する被害を抑制する。シャッターカーテンが停止位置又はその直前で停止した後に再度閉信号が入力された場合、障害物が移動してあればそのまま閉動作を継続し、障害物が移動されていない時は再度障害物が感知されるのでシャッターカーテンは反転上昇して所定の位置で停止する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉するように動作する開閉手段と、
開閉停の各信号の入力に応じてモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御する制御手段と、
前記開閉手段の閉動作時におけるモータ電流の変化に基づいて前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する障害物感知手段とを備えた開閉体装置において、
前記制御手段は、前記障害物感知手段によって障害物が接触したことを感知した場合は、前記開閉手段を停止し、その停止位置を記憶すると共に前記開閉手段を反転上昇させて所定の位置で停止し、その後に閉信号が入力したときに前記開閉手段の閉動作時に前記停止位置又はその直前で一度停止するように制御することを特徴とする開閉体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉体装置において、
前記制御手段は、前記停止位置又はその直前で一度停止した後に再度閉信号が入力した場合は前記開閉手段の閉動作を実行し、前記障害物感知手段によって障害物が接触したことを感知しないときは、記憶していた前記停止位置をリセットし、前記障害物感知手段によって障害物が接触したことを再度感知したときは、前記開閉手段を反転上昇させて所定の位置で停止することを特徴とする開閉体装置。
【請求項3】
開口部を開閉するように動作する開閉手段と、
開閉停の各信号の入力に応じてモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御する制御手段と、
前記開閉手段の閉動作時におけるモータ電流の変化に基づいて前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する障害物感知手段とを備えた開閉体装置の開閉体制御方法において、
前記障害物感知手段によって障害物が接触したことを感知した場合は、前記開閉手段を停止し、その停止位置を記憶すると共に前記開閉手段を反転上昇させて所定の位置で停止し、その後に閉信号が入力したときに前記開閉手段の閉動作時に前記停止位置又はその直前で一度停止することを特徴とする開閉体制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の開閉体制御方法において、
前記停止位置又はその直前で一度停止した後に再度閉信号が入力した場合は前記開閉手段の閉動作を実行し、前記障害物感知手段によって障害物が接触したことを感知しないときは、記憶していた前記停止位置をリセットし、前記障害物感知手段によって障害物が接触したことを再度感知したときは、前記開閉手段を反転上昇させて所定の位置で停止することを特徴とする開閉体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、工場、倉庫などの建物を含む構造物躯体の開口部などをシャッターなどの開閉体を用いて仕切るように構成された開閉体装置及び開閉体制御方法に係り、特に負荷感知方式にて障害物を感知する開閉体装置及び開閉体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッターカーテンなどのような開閉体装置は、住宅、ビル、工場、倉庫、車庫などの建物を含む構造物躯体の開口部や窓部あるいは内部の通路や空間などの開口部に設置され、その開閉体を移動させることによってその開口部を開放、閉鎖するものである。この開閉体装置は、多数の短冊状のスラット材からなるスラットカーテン、多数のパイプ材をリンク材などで連結させてなるパイプグリルカーテン、一枚状あるいは多数連結されたパネル材からなるパネルカーテン、ネット材からなるネットカーテン、合成樹脂あるいは布繊維製のシート材からなるシートカーテン、あるいはこれらの複合部材などからなる複合カーテンなどの開閉体を、開口部の上部から繰り出し降下させて開口部全体を閉鎖するように構成されている。このような開閉体装置は、開閉体の開閉動作を電動で行なう場合が多い。電動の開閉体装置としては、電動シャッター装置、電動ドア装置、電動オーニング装置などがある。
【0003】
このような電動の開閉体装置の中には、軽量シャッター装置と呼ばれる建築物の外壁開口部等に防犯を主目的に設置されるシャッターと、ビル、工場、倉庫等の管理、防火、防煙目的として使用される重量シャッター装置とがある。軽量シャッター装置は、鉄製のスラット(カーテン部)の板厚が1.0[mm]以下で、スプリングで上下のバランスをとり手動で開閉させることのできるものである。一方、重量シャッター装置は、スラット(カーテン)の板厚が1.2[mm]以上のものとパイプ(グリルシャッター)で組み合わされたもので構成されており、主に電動で開閉制御されるものである。
【0004】
重量シャッター装置には、無線信号装置と座板スイッチで構成された障害物感知装置が設けられている。障害物感知装置は、シャッターの降下中に座板が障害物に接触した場合、座板に取り付けられた送信機が発信し、それを受光部が受信することによって、障害物を感知し、降下中のシャッターを停止させるように動作する。また、障害物感知装置の中には、無線信号装置を用いる代わりに有線方式にて座板スイッチのオン/オフを送信するものもある。
【0005】
さらに、障害物感知装置には、光電センサを用いたものもある。これは、シャッター停止中、光路上に障害物がある場合、押しボタンスイッチを押してもシャッターが動かないように動作すると共にシャッターが上昇中または降下中に人や車の出入りを感知してシャッターを停止させるように動作するものである。
【0006】
特許文献1には、シャッターの開閉機に加わった負荷を感知する障害物感知装置として、従来技術の欄に開閉機の電流値を感知する方式や、タコジェネレータあるいはエンコーダを用いて回転量を検出して、この回転量の低下からシャッターを安全方向、即ち、停止あるいは反転上昇させるようにしたものが記載してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-300916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の従来技術の負荷感知方式の障害物感知装置は、軽量シャッター装置のように負荷感知力が比較的小さな軽量シャッター装置で採用されているが、障害物に接触した時に所定の負荷感知力を検知する必要があり、負荷感知後に障害物を移動(除去)することなく再度シャッターを操作してしまった場合、同じ位置で障害物に接触し、負荷感知するということを繰り返すため障害物への被害、シャッター自体に対する被害が発生する可能性があり、好ましくなかった。
【0009】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、負荷感知方式の障害物感知装置を搭載した場合の負荷感知による障害物への接触被害及びシャッターへの接触被害を抑制することのできる開閉体装置及び開閉体制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の開閉体装置の第1の特徴は、開口部を開閉するように動作する開閉手段と、開閉停の各信号の入力に応じてモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御する制御手段と、前記開閉手段の閉動作時におけるモータ電流の変化に基づいて前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する障害物感知手段とを備えた開閉体装置において、前記制御手段は、前記障害物感知手段によって障害物が接触したことを感知した場合は、前記開閉手段を停止し、その停止位置を記憶すると共に前記開閉手段を反転上昇させて所定の位置で停止し、その後に閉信号が入力したときに前記開閉手段の閉動作時に前記停止位置又はその直前で一度停止するように制御することにある。
これは、障害物感知手段によって障害物が接触したことを感知して開閉手段が停止した時、その停止位置を記憶しておき、次回閉操作時に記憶しておいた停止位置又はその直前で一度停止するようにしたものである。これによって障害物を移動せず、再度シャッターを操作してしまった時に開閉手段が障害物に接触する被害を抑制することができる。
【0011】
本発明の開閉体装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置において、前記制御手段は、前記停止位置又はその直前で一度停止した後に再度閉信号が入力した場合は前記開閉手段の閉動作を実行し、前記障害物感知手段によって障害物が接触したことを感知しないときは、記憶していた前記停止位置をリセットし、前記障害物感知手段によって障害物が接触したことを再度感知したときは、前記開閉手段を反転上昇させて所定の位置で停止することにある。
これは、開閉手段が停止位置又はその直前で停止した後に再度閉信号が入力した場合、障害物が移動してあればそのまま閉動作を継続し、障害物が移動されていない時は再度障害物感知によって開閉手段を反転上昇させて所定の位置で停止するようにしたものである。開閉手段は停止位置又はその直前で停止しており、そこから閉動作を開始しているので、障害物に接触した時の被害を最小限に抑制することができる。
【0012】
本発明の開閉体制御方法の第1の特徴は、開口部を開閉するように動作する開閉手段と、開閉停の各信号の入力に応じてモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御する制御手段と、前記開閉手段の閉動作時におけるモータ電流の変化に基づいて前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する障害物感知手段とを備えた開閉体装置の開閉体制御方法において、前記障害物感知手段によって障害物が接触したことを感知した場合は、前記開閉手段を停止し、その停止位置を記憶すると共に前記開閉手段を反転上昇させて所定の位置で停止し、その後に閉信号が入力したときに前記開閉手段の閉動作時に前記停止位置又はその直前で一度停止することにある。
これは、前記第1の特徴に記載の開閉体装置に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0013】
本発明の開閉体制御方法の第2特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体制御方法において、前記停止位置又はその直前で一度停止した後に再度閉信号が入力した場合は前記開閉手段の閉動作を実行し、前記障害物感知手段によって障害物が接触したことを感知しないときは、記憶していた前記停止位置をリセットし、前記障害物感知手段によって障害物が接触したことを再度感知したときは、前記開閉手段を反転上昇させて所定の位置で停止することにある。
これは、前記第2の特徴に記載の開閉体装置に対応した開閉体制御方法の発明である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、負荷感知方式の障害物感知装置を搭載した場合の負荷感知による障害物への被害及びシャッターへの被害を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るシャッター装置の概略構成を示す図である。
図2】実施の形態に係る開閉体装置の制御装置の概略構成を示す図である。
図3】シャッターの降下動作時(ベクトル制御時)におけるモータ電流値(トルク)の変化に基づいて障害物を感知するモータ負荷感知方式の障害物検出部の一例を示す図である。
図4図3のモータ電流値(トルク)の波形によって障害物を感知するモータ負荷感知方式の障害物検出部の変形例を示す図である。
図5】降下中に図3の障害物検出方法によって障害物を感知した場合の処理の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面に従って本発明に係る開閉体装置の好ましい実施の形態について説明する。この実施の形態では開閉手段として上下に開閉動作されるシャッター装置を例に説明する。図1は、本発明に係るシャッター装置の概略構成を示す図である。図1において、開閉体装置10は出入口の開口部を上下方向に移動することによって開閉するシャッター装置である。
【0017】
開閉体装置10は、建物の開口部に設けられるものであり、基本的にシャッターケース11、シャッターカーテン12、ガイドレール13,14、巻取シャフト15、三相交流モータ17、制御装置18、操作スイッチ19及びリミットスイッチ20などを含んで構成される。この開閉体装置10は、通常時には、操作スイッチ19の操作に応じて、開閉機である三相交流モータ17を駆動して開閉制御するようになっている。さらに、この開閉体装置10では、シャッターカーテン12が巻取シャフト15に巻き取られている開放状態を機械的な保持機構(図示せず)によって保持しており、この開放状態で外部から火災の発生などを示す非常信号BSなどが制御装置18に入力された場合には、その保持機構による開放状態の保持が解除されて、シャッターカーテン12は、その自重で自然降下して開口部を自動閉鎖する機能を備えていてもよい。
【0018】
ガイドレール13,14は、シャッターカーテン12の両端部に接するように建物の開口部の両端側に設けられ、まぐさ部から床面まで掛け渡された断面形状がコの字型の案内溝を有する金属製部材又はこれと同等の部材で構成されている。シャッターカーテン12は、このガイドレール13,14の各案内溝に沿って上昇降下し、開口部の開閉動作を行う。
【0019】
巻取シャフト15は、シャッターケース11の両端側に回動可能に設けられ、シャッターカーテン12を巻き取ったり巻き戻したりする。
開閉機を構成するブレーキ16と三相交流モータ17が巻取シャフト15にそれぞれ設けてある。三相交流モータ17は、巻取シャフト15をダイレクトドライブ駆動(ギアレス)方式にて回転駆動するように構成された三相交流モータである。制御装置18は、ブレーキ16及び三相交流モータ17の動作を制御するものであり、ブレーキ16又は三相交流モータ17のいずれか一方の収納ケース内に設けられる。
【0020】
三相交流モータ17には、その回転位置すなわちシャッターカーテン12の開閉位置と開閉状態を検出するための位置検出装置(図示せず)が設けられている。この位置検出装置は、パルス発生型のロータリーエンコーダ等で構成される。三相交流モータ17の回転に応じたパルス信号が制御装置18に出力されるので、三相交流モータ17の回転位置やシャッターカーテン12の閉鎖側先端部の開口部における位置などは、このパルスの発生状況に基づいて制御装置18が演算にて求めることになる。
【0021】
制御装置18は、マイクロコンピューター構成になっており、電源ラインから三相交流電圧200[V]の電力が三相交流モータ17に供給されている。制御装置18は、操作スイッチ19上の各操作スイッチの操作状態に対応した制御信号や三相交流モータ17に設けられた位置検出装置からの信号やプロテクタからの信号などに基づいて三相交流モータ17の回転を制御する。
【0022】
操作スイッチ19は、開閉停の各動作に対応した制御スイッチとして、上昇(開)ボタン19A、停止(停)ボタン19B、降下(閉)ボタン19Cをそれぞれ有し、これら各ボタンの操作状態に応じた制御信号を制御装置18に出力する。
【0023】
図2は、実施の形態に係る開閉体装置の制御装置の概略構成を示す図である。制御装置18は、マイクロコンピューターを備えて構成されている。なお、図示していないが、制御装置18は、三相交流モータ17を駆動制御するモータドライブ回路や操作者に異常を報知するLED・ブザーなどを備えている。
【0024】
制御装置18は、操作スイッチ19上の各操作ボタンの操作状態に対応した制御信号、上限リミットスイッチ20A及び下限リミットスイッチ20Bからの接点信号に基づいて、開閉機を構成する三相交流モータ17にモータ運転指令信号を出力し、ブレーキ16にブレーキ作動指令信号を出力し、三相交流モータ17の回転を制御する。三相交流モータ17には、過熱保護装置のひとつであるサーマルプロテクタ(図示せず)が接続されている。モータ運転指令信号は、三相交流モータ17に供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら制御するベクトル制御信号である。
【0025】
操作スイッチ19は、開閉停の各動作に対応した制御スイッチとして機能する開ボタン19A、停止ボタン19B及び閉ボタン19Cを備えている。操作スイッチ19は、各ボタンの操作状態に応じた制御信号を制御装置18に出力する。図2の実施の形態では、開ボタン19A及び閉ボタン19Cは手動操作自動復帰型のa接点で構成されており、通常はオフ状態にある。停止ボタン19Bは、手動操作残留型スイッチのb接点で構成され、通常はオン状態にある。
【0026】
上限リミットスイッチ20A及び下限リミットスイッチ20Bは、三相交流モータ17の回転位置に応じてオン・オフ状態を維持するものであり、シャッターカーテン12が上限又は下限位置に達すると、上限リミットスイッチ20A又は下限リミットスイッチ20Bの接点が開いて、シャッターカーテン12がこの上限位置又は下限位置に達したことを制御装置18に通知する。制御装置18は、シャッターカーテン12が上限又は下限位置に達すると、シャッターカーテン12を上限又は下限位置で停止させる。
【0027】
図3は、シャッターの降下動作時(ベクトル制御時)におけるモータ電流値(トルク)の変化に基づいて障害物を感知するモータ負荷感知方式の障害物検出部の一例を示す図である。障害物検出部21は、ベクトル制御時におけるモータ負荷すなわちモータ電流値(トルク)を検出しながら、そのモータ電流値の変化に基づいて、シャッターカーテン12の先端部に障害物が接触したことを感知するものである。
【0028】
図3において、縦軸は制御装置18が三相交流モータ17に出力するモータ運転指令信号すなわちベクトル制御時のモータ電流値(トルク)を示し、横軸はベクトル制御時の時間経過を示す。シャッターカーテン12の降下時に、モータ電流値(トルク)は、図3に示すように、一定間隔で脈動しながら右肩上がりの曲線に沿って徐々に大きくなるという波形w1を示す。モータ電流値(トルク)の波形w1が脈動しているのは、巻取シャフト15に巻き取られていたシャッターカーテン12が巻き戻される際のスラットの形状に依存するからである。また、モータ電流値(トルク)の波形w1が徐々に大きくなるのは、シャッターカーテン12が巻き戻されることによって、巻取シャフト15に架かるスラットの重量が徐々に増加するためである。
【0029】
図3に示すように、脈動しながら徐々に大きくなる波形w1のピーク値から次のピーク値までの時間t0の間において、底値までの時間t1,t2に置ける変化量Δi1,Δi2を検出し、変化量Δi1,Δi2が通常の変化の割合(これをしきい値Δithとする)を超えた場合に、障害物検出部21は、シャッターカーテン12に障害物が接触したことを検出する。また、脈動しながら徐々に大きくなる波形w1のピーク値から次のピーク値までの時間t0の間において、底値までの時間t1,t2はほぼ同じ値を示すので、時間t1,t2を経過しても底値に到達しない場合に、障害物検出部21は、シャッターカーテン12に障害物が接触したことを検出する。すなわち、障害物検出部21は、図3に示すように制御装置18が三相交流モータ17に出力するモータ運転指令信号すなわちベクトル制御時のモータ電流値(トルク)の変化量Δiを常時検出し、変化量Δiが通常の変化の割合Δith(しきい値)を超えた場合、又は所定時間t1,t2を経過しても底値に到達しなかった場合に、シャッターカーテン12に障害物が接触したと判断している。
【0030】
図3において、ピーク値から時間t1を経過するまでにモータ電流値(トルク)は、変化量Δi1だけ低下しているが、これは通常のトルク変動の範囲内であり、この場合は障害物に接触したとは判定されない。次の時間t2の間にもモータ電流値(トルク)は、変化量Δi2だけ低下しているが、これも同じく通常のトルク変動の範囲内であり、障害物に接触したとは判定されない。一方、時間t3aでモータ電流値(トルク)は、しきい値であるΔith以上の変化を示すので、この時点t3aでシャッターカーテン12に障害物が接触したと判断する。
【0031】
一方、時間t1,t2と同じ時間t3bを経過しても波形w1のモータ電流値(トルク)低下し続けているので、この時点t3bでシャッターカーテン12に障害物が接触したと判断する。すなわち、障害物がシャッターカーテン12の先端部に接触すると、シャッターカーテン12の移動が停止する。重量シャッター装置のスラットは、その剛性が非常に高いので、接触した瞬間にその接触力が巻取シャフト15側を介して三相交流モータ17側に伝達するので、モータ電流値(トルク)は時間t3bでしきい値であるΔith以上の低下を示すことになると共に時間t3bを経過しても経過し続けることになる。これによって、モータ電流値(トルク)の変化に基づいて、シャッターカーテン12の先端部が障害物に接触したことを感知することができる。
【0032】
図4は、図3のモータ電流値(トルク)の波形によって障害物を感知するモータ負荷感知方式の障害物検出部の変形例を示す図である。ベクトル制御時におけるモータ電流値(トルク)は図3に示した波形w1のように変化する。図4の障害物検出方法では、シャッターカーテン12の開閉動作を繰り返し実行し、図3のように変化する波形を複数サンプリングし、そのサンプリングした波形の平均値を算出し、図4に示すような平均波形w2を生成する。この平均波形w2に±1.1~±1.3を乗じてしきい値波形w3,w4を生成する。すなわち、このしきい値波形w3,w4は、Δi0の所定巾を持った波形となる。なお、平均波形w2に乗じる数値は、±αのように同じ値αを乗じてもいいし、+α,-βのようにそれぞれ異なる値α,βを乗じるようにしてもよい。
【0033】
このしきい値波形w3,w4の内側を図4の波形w1が変化している場合は、正常な動作であると判断する。一方、波形w1が障害物に接触した場合は、時刻T0で波形w1がしきい値波形w3,w4の所定巾の内側からはみ出し、しきい値波形w3の下側に突出する。この時刻T0でシャッターカーテン12に障害物が接触したと判断する。なお、平均波形w2は、開口部の大きさ(高さ、巾)、シャッターカーテン12の形状、重さなどに依存し、個々の開閉体装置で異なるものとなる。従って、シャッターカーテン12の開閉動作を繰り返し実行し、開閉体装置固有の波形を学習し取得することが重要となる。シャッター設置後に複数回(例えば、10~100回)の開閉動作時の波形の平均を平均波形w2とし、それ以降はこの平均波形w2を基準として、しきい値波形w3,w4を生成する。正常に動作していても長年の使用によって、波形w1がしきい値波形w3,w4の所定巾の内側からはみ出したりする場合には、経年劣化によるものと判断し、メンテナンスの実行を促す表示やアナウンスを行うようにしてもよい。
【0034】
図5は、降下中に図3の障害物検出方法によって障害物を感知した場合の処理の一例を示すフローチャート図である。
ステップS50では、シャッターカーテン12が降下中に図3及び/又は図4の荷感知方式にて障害物を感知した(負荷感知ON)か否かの判定を行い、感知した(yes)場合は次のステップS52に進み、感知しない(no)の場合はステップS51に進む。
ステップS51では、シャッター降下中に障害物を感知していないので、そのままシャッターカーテン12の降下を許可し、ステップS50にリターンし、通常速度での降下動作を継続する。
【0035】
ステップS52では、負荷感知によってシャッターカーテン12に障害物が接触したので、降下中のシャッターカーテン12を直ちに停止し、反転上昇させる。このとき、負荷感知で停止したときのシャッターカーテン12の位置情報すなわち三相交流モータ17に設けられた位置検出装置からの信号に基づいた位置情報を記憶(学習)する。なお、反転上昇の高さは、シャッターカーテン12を全開するように上昇してもよいし、障害物を感知した高さから所定の高さ(30~100[cm])だけ上昇させるようにしてもよい。
【0036】
ステップS53では、ステップS52の処理によってシャッターカーテン12は反転上昇して停止中なので、この状態で閉ボタン19Cが操作されたか否か、すなわちシャッター閉信号がON(yes)になったか否かの判定を行い、ON(yes)の場合は次のステップS54に進み、ONでない(no)場合はステップS56に進む。
【0037】
ステップS54では、閉ボタン19Cが操作されたので、通常速度での降下を開始し、ステップS52で記憶(学習)した負荷感知位置又はその直前で一時停止する。なお、負荷感知位置よりも若干上側の直前位置で停止することが好ましい。これによって、シャッターカーテン12が障害物へ接触することがなくなるので、接触による被害を最小限に抑制することができる。
【0038】
ステップS55では、負荷感知位置又はその直前位置で一時停止中なので、この状態で閉ボタン19Cが再び操作されたか否か、すなわちシャッター閉信号がON(yes)になったか否かの判定を行い、ON(yes)の場合は次のステップS57に進み、ONでない(no)場合はステップS56に進む。
ステップS56では、閉ボタン19Cが再び操作されていないので、そのままシャッターカーテン12の停止状態を維持する。
【0039】
ステップS57では、負荷感知位置で停止中のシャッターカーテン12を再降下する。
ステップS58では、シャッターカーテン12が再降下中に図3及び/又は図4の負荷感知方式にて障害物を感知したか否かの判定を行い、感知した(yes)場合はステップS52にリターンし、感知しない(no)場合はステップS59に進む。再降下中に障害物を感知したということは、障害物が移動されていないことを意味するので、シャッターカーテン12を反転上昇させて所定の位置で停止する。
ステップS59では、負荷感知方式にて障害物を感知しなかったので、ステップS52で学習した負荷感知位置をリセットして、シャッター降下を継続し、ステップS50にリターンする。
【0040】
上述の実施の形態では、モータ電流値(トルク)の変化の異常によって障害物を感知する障害物感知装置を例に説明したが、負荷感知方式の障害物感知装置と共に光電センサなどを別途設けて人や物体(自動車)を感知してもよい。また、従来から使用されている座板スイッチの移動によって障害物を感知する障害物感知装置を備えてもよい。
【0041】
上述の実施の形態では、上下昇降方式で繰り出されるシャッターカーテンを例に説明したが、シャッター状の開閉部材が横引き方式で繰り出されたり、あるいは水平方式で繰り出されたりするものであっても同様に適用することができる。また、開閉体装置としては、例えば、シャッター装置、窓シャッター装置、ブラインド装置、ロールスクリーン装置、垂れ幕装置、引戸装置、移動間仕切装置、オーニング装置、防水板装置などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…開閉体装置
11…シャッターケース
12…シャッターカーテン
13,14…ガイドレール
15…巻取シャフト
16…ブレーキ
17…三相交流モータ
18…制御装置
19…操作スイッチ
19A…開ボタン
19B…停ボタン
19C…閉ボタン
20…リミットスイッチ
21…障害物検出部
図1
図2
図3
図4
図5