(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047288
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】鉄鉱石ペレットの製造方法及び鉄鉱石ペレット
(51)【国際特許分類】
C22B 1/14 20060101AFI20240329BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C22B1/14
C21B5/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152829
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】森岡 耕一
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 裕太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 嗣憲
(72)【発明者】
【氏名】梶山 雄貴
【テーマコード(参考)】
4K001
4K012
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA18
4K001CA19
4K001CA20
4K001CA22
4K001GA12
4K012BA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、高温における被還元性に優れ、かつ高炉の上部通気抵抗が低減できる鉄鉱石ペレットの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る鉄鉱石ペレットの製造方法は、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットの製造方法であって、CaO/SiO
2質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO
2質量比が0.4以上となるように、CaO及びMgOを含む副原料を鉱石原料に配合する原料配合工程と、上記原料配合工程で得られた混合原料から気孔率が15%以上22%以下の生ペレットを造粒する造粒工程と、上記生ペレットを1200℃以上1300℃以下の温度で焼成する焼成工程とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットの製造方法であって、
CaO/SiO2質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO2質量比が0.4以上となるように、CaO及びMgOを含む副原料を鉱石原料に配合する原料配合工程と、
上記原料配合工程で得られた混合原料から気孔率が15%以上22%以下の生ペレットを造粒する造粒工程と、
上記生ペレットを1200℃以上1300℃以下の温度で焼成する焼成工程と
を備える鉄鉱石ペレットの製造方法。
【請求項2】
上記造粒工程で転動造粒機が用いられ、
上記原料配合工程における原料粒度及び上記造粒工程における転動時間により上記気孔率を制御する請求項1に記載の鉄鉱石ペレットの製造方法。
【請求項3】
上記焼成工程後の粒径が4mm以上20mm以下となるように、上記造粒工程で生ペレットの粒度範囲を調整する請求項1又は請求項2に記載の鉄鉱石ペレットの製造方法。
【請求項4】
上記生ペレットの粒度範囲の調整に、予め決められた篩目に調整されたオーバーサイズスクリーン及びシードスクリーンを有する篩群による分級を用いる請求項3に記載の鉄鉱石ペレットの製造方法。
【請求項5】
高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットであって、
CaO/SiO2質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO2質量比が0.4以上であり、
平均圧壊強度が270kg/p以上である鉄鉱石ペレット。
【請求項6】
圧壊強度が100kg/p以下の質量比率が10%以下である請求項5に記載の鉄鉱石ペレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石ペレットの製造方法及び鉄鉱石ペレットに関する。
【背景技術】
【0002】
高炉操業として、高炉の上部から酸化鉄類を含む鉄鉱石や焼成鉱及び炭素源のコークスを装入し、下部の羽口から空気や酸素を送風して炉内にて一酸化炭素の発生や酸化鉄から酸素を除去する還元反応を進行させ炉下部から銑鉄を取り出す方法が公知である。
【0003】
その連続操業を円滑に進行させるためには、送風を円滑に行うことが重要である。そのためには送風圧力が低く安定していること、つまり通気性が良いことが望ましい。この送風圧力は、装入物の性状に依存する。装入物の中でも鉄鉱石、焼結鉱、鉄鉱石ペレット類は、高温かつ還元雰囲気に晒されて還元反応を受けて金属鉄と酸化物の混合体となる。同時に高炉内の荷重を受けて軟化し変形する。この軟化変形により装入物粒子間の空隙を埋めて炉内の通気性が妨げられる。この現象が主たる原因となる事象を炉下部圧損と呼び、これを低減することが志向されている。
【0004】
この炉下部圧損を低減できる鉄鉱石ペレットとして、CaO/SiO2質量比が0.8以上、MgO/SiO2質量比が0.4以上であって、所定の粒径分布を有する自溶性ペレットが公知である(特開2008-280556号公報参照)。
【0005】
上記鉄鉱石ペレットでは、CaO/SiO2質量比を0.8以上、MgO/SiO2質量比を0.4以上とすることで高温における被還元性を高め、粒径分布を制御することで通気性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の鉄鉱石ペレットでは、通気性が確保できるようになるものの、その効果は比較的限定的であり、シャフト炉上部の比較的低温な領域における通気抵抗(上部圧損)が悪化し易い。また、最近では微粉炭を高炉の羽口から吹き込み、高価なコークス使用量を減らす操業が増えている。その結果、微粉炭吹込み量の増加に伴い、高炉内の通気性を支持してきたコークス量が減少し通気抵抗が全体に増大する傾向にある。このため、特に高炉の上部通気抵抗を低減することが求められている。
【0008】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、高温における被還元性に優れ、かつ高炉の上部通気抵抗が低減できる鉄鉱石ペレットの製造方法及び鉄鉱石ペレットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る鉄鉱石ペレットの製造方法は、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットの製造方法であって、CaO/SiO2質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO2質量比が0.4以上となるように、CaO及びMgOを含む副原料を鉱石原料に配合する原料配合工程と、上記原料配合工程で得られた混合原料から気孔率が15%以上22%以下の生ペレットを造粒する造粒工程と、上記生ペレットを1200℃以上1300℃以下の温度で焼成する焼成工程とを備える。
【0010】
本発明の別の一態様に係る鉄鉱石ペレットは、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットであって、CaO/SiO2質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO2質量比が0.4以上であり、平均圧壊強度が270kg/p以上である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の鉄鉱石ペレットの製造方法は、高温における被還元性に優れ、かつ高炉の上部通気抵抗が低減できる鉄鉱石ペレットを製造できる。また、本発明の鉄鉱石ペレットは、高温における被還元性に優れ、かつ高炉の上部通気抵抗が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る鉄鉱石ペレットの製造方法を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、
図1の鉄鉱石ペレットの製造方法で使用する製造装置の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、鉄鉱石ペレットの運搬により生じる5mm以下粉率と平均圧壊強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
本発明者らが、高炉の上部通気抵抗について鋭意検討したところ、ペレット製造時には圧損の悪化につながる小粒径の鉄鉱石ペレットの割合を抑制しても、以降の運搬や高炉挿入工程において破壊されて粉が発生してしまうことが避けられないことが分かった。そして、運搬や高炉内衝撃により鉄鉱石ペレットから発生する粉を減らすと高炉の上部通気抵抗が低減することを知得した。さらに、本発明者らは、粉を減らすためには、平均圧壊強度を270kg/pまで高めるとよいことを突きとめた。
【0014】
ところが、高炉操業で鉄鉱石ペレットに要求される被還元性を高めたCaO/SiO2質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO2質量比が0.4以上の鉄鉱石ペレットでは、これまで平均圧壊強度270kg/p以上のものは得られていなかった。これは、CaO、MgO、SiO2及びFe2O3の化合物の粗大結晶粒が焼成中に生成し、強度を低下させるためであると考えられる。つまり、結晶粒が大きいと転位が移動しやすいスベリ面の方向が揃いやすく、転位が低い応力により動き破壊され易い。
【0015】
本発明者らは、さらに検討を重ね、上記粗大結晶粒が生成する時は焼成温度が高いことを見出した。鉱物組織の結晶は拡散により生成し拡大する。固相および液相におけるFe、Ca、Si、Mg、Alなどの拡散係数は高温であるほど大きくなる。すなわち焼成温度が高温であるほど拡散し結晶粒が大きくなり、粗大結晶粒が生成する。そこで、本発明者らは、焼成温度を低下させることで、粗大結晶粒の生成を抑制できると考えた。
【0016】
一方、焼成温度が低いとペレットが焼き締まらないという問題が生じる。すなわち、鉱石粒子間の距離が広がり、粒子間の接点が少なくなる等、ペレット強度を構成する力が弱くなり、圧壊強度を低下させてしまう傾向を生じる。このため、焼成温度を低下させ粗大結晶粒の生成を抑制しても、十分に圧壊強度が高まらない結果となる。
【0017】
ここで、本発明者らは、焼成温度が低くペレットが焼き締まらないと気孔率が低下しなくなることに着目した。気孔率低下は、鉄鉱石粒子の表面エネルギーを低下させるため、表面積を小さくするように拡散現象により鉱石粒子同士が接近・合体することにより生じる。このため、高気孔率ペレット内においては、鉱石粒子間の距離が広がったままであり、粒子間の接点が少なくなる等、ペレット強度を構成する力が弱くなるものと考えられる。そこで、本発明者らは、焼成温度とは独立して気孔率を制御することができれば、圧壊強度を十分に高められると考えた。そして、従来は行われてこなかった生ペレット段階での気孔率を制御することで、圧壊強度を十分に高められることを突きとめ、本発明を完成させた。
【0018】
すなわち、本発明の一態様に係る鉄鉱石ペレットの製造方法は、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットの製造方法であって、CaO/SiO2質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO2質量比が0.4以上となるように、CaO及びMgOを含む副原料を鉱石原料に配合する原料配合工程と、上記原料配合工程で得られた混合原料から気孔率が15%以上22%以下の生ペレットを造粒する造粒工程と、上記生ペレットを1200℃以上1300℃以下の温度で焼成する焼成工程とを備える。
【0019】
当該鉄鉱石ペレットの製造方法により製造される鉄鉱石ペレットは、自溶性でCaO/SiO2質量比が上記下限以上で、かつMgO/SiO2質量比が上記下限以上であるので、被還元性が高い。また、生ペレット段階での気孔率を上記範囲内としたうえで、焼成工程で上記生ペレットを上記範囲内の温度で焼成するので、製造された鉄鉱石ペレットの圧壊強度を十分に高めることができる。従って、当該鉄鉱石ペレットの製造方法を用いることで、高温における被還元性に優れ、かつ高炉の上部通気抵抗が低減できる鉄鉱石ペレットを製造することができる。
【0020】
上記造粒工程で転動造粒機が用いられ、上記原料配合工程における原料粒度及び上記造粒工程における転動時間により上記気孔率を制御するとよい。このように気孔率を制御することで、気孔率を所望の値に制御し易く、より確実に圧壊強度を高めることができる。
【0021】
上記焼成工程後の粒径が4mm以上20mm以下となるように、上記造粒工程で生ペレットの粒度範囲を調整するとよい。このように上記焼成工程後の粒径を上記範囲内とすることで、高温における被還元性を維持しつつ、高炉の上部通気抵抗が低下することを抑止できる。
【0022】
上記生ペレットの粒度範囲の調整に、予め決められた篩目に調整されたオーバーサイズスクリーン及びシードスクリーンを有する篩群による分級を用いるとよい。このように上記生ペレットの粒度範囲の調整を分級により行うことで、容易かつ確実に上記焼成工程後の粒径を調整できる。
【0023】
本発明の別の一態様に係る鉄鉱石ペレットは、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットであって、CaO/SiO2質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO2質量比が0.4以上であり、平均圧壊強度が270kg/p以上である。
【0024】
当該鉄鉱石ペレットは、自溶性でCaO/SiO2質量比を上記下限以上とし、かつMgO/SiO2質量比を上記下限以上とするので、被還元性が高い。また、当該鉄鉱石ペレットは、平均圧壊強度を上記下限以上とするので、運搬や高炉内衝撃により鉄鉱石ペレットから発生する粉を減らし、高炉の上部通気抵抗を低減することができる。
【0025】
圧壊強度が100kg/p以下の質量比率が10%以下であるとよい。このように圧壊強度が100kg/p以下の質量比率を上記上限以下とすることで、鉄鉱石ペレットから発生する粉をさらに減らし、高炉の上部通気抵抗をより低減することができる。
【0026】
ここで、「圧壊強度」とは、JIS-M8718:2017で規定される強度であり、「平均圧壊強度」は、任意の少なくとも10個の鉄鉱石ペレットの圧壊強度の平均値を指す。
【0027】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る鉄鉱石ペレットの製造方法及び鉄鉱石ペレットについて、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0028】
〔鉄鉱石ペレットの製造方法〕
図1に示す鉄鉱石ペレットの製造方法は、原料配合工程S1と、造粒工程S2と、焼成工程S3と、冷却工程S4とを備える。当該鉄鉱石ペレットの製造方法は、
図2に示すように、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレット1を、グレートキルン方式の製造装置(以下、単に「製造装置2」ともいう)を用いて製造することができる。製造装置2は、パンペレタイザ3と、グレート炉4と、キルン5と、アニュラクーラ6とを備える。
【0029】
<原料配合工程>
原料配合工程S1では、CaO/SiO2質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO2質量比が0.4以上となるように、CaO及びMgOを含む副原料を鉱石原料に配合する。
【0030】
具体的には、原料配合工程S1では、上記鉱石原料である鉄鉱石(ペレットフィード)の鉄品位に応じて、上記副原料としてCaO源となる石灰石と、MgO源となるドロマイトとを配合する。
【0031】
上記鉱石原料及び上記副原料は、必要に応じて、事前に又は配合後にボールミル等で粉砕して、上記鉱石原料及び上記副原料が混合された混合原料の粒度を調整するとよい。本発明者らは、生ペレットPの気孔率が原料粒度指数と比例関係にあることを知得している。つまり、原料粒度指数を適切に制御すれば、生ペレットPの気孔率が制御され、この生ペレットPの気孔率により鉄鉱石ペレット1の強度が制御できる。
【0032】
ここで、「原料粒度指数」は、以下の方法により特定できる。まず、混合原料の粒度分布を測定する。この測定には、JIS-A-1204:2010、JIS-A-8815:1994、JIS-Z-8825:2022のうちの1つを用いることができる。次に、各粒度範囲Pi(代表値)における質量比率もしくは体積比率miを用い、3μmから1000μmの範囲までの総和Σ3/Pi・miを計算し、これを原料粒度指数とする。
【0033】
この原料粒度指数と生ペレットPの気孔率との関係は、同一銘柄の鉄鉱石と副原料とを同一比率で配合した混合原料において成立するが、例えば鉄鉱石の銘柄が異なると、表面形状や濡れ性等の影響により、その比例係数は変化し得る。従って、原料粒度指数の好適値は以下の方法により特定できる。まず、特定の混合比率の混合原料において少なくとも2種類の原料粒度指数の原料を準備し、生ペレットPを作製し気孔率を測定する。この結果から、原料粒度指数と気孔率との関係を算出できる。後述するように気孔率と鉄鉱石ペレット1との強度にも比例関係があるから、鉄鉱石ペレット1に必要な強度から必要な気孔率を算出することができる。そうすると、必要な気孔率となる原料粒度指数を決定することができるから、この原料粒度指数となるように原料の粒度を調整する。なお、粒度の調整には、そのような粒度を有する原料を購入することも含まれる。
【0034】
また、上記混合原料には、製造工程内の搬送で必要な生ペレットPの強度を得るために適宜ベンナイト等のバインダーを配合してもよい。
【0035】
<造粒工程>
造粒工程S2では、原料配合工程S1で得られた混合原料から気孔率が15%以上22%以下の生ペレットPを造粒する。生ペレットPの造粒には、転動造粒機が用いることができる。上記転動造粒機としては、
図2に示すパンペレタイザ3やドラムペレタイザなどを用いることができる。
【0036】
具体的には、造粒工程S2では、上記混合原料に水分(造粒水)を添加した後、この造粒水含有混合物(造粒水を含有した上記混合原料)をパンペレタイザ3に投入及び転動させて、泥団子状の生ペレットPを製造する。
【0037】
当該鉄鉱石ペレットの製造方法では、上述のように生ペレットPの気孔率を制御する。上記気孔率の下限としては、15%であり、17%がより好ましい。一方、上記気孔率の上限としては、22%であり、20%がより好ましい。上記気孔率が上記下限未満であると、焼成工程S3において水蒸気爆発(バースティング現象)を引き起こすおそれがある。逆に、上記気孔率が上記上限を超えると、鉄鉱石ペレット1の圧潰強度が低下するおそれがある。
【0038】
上記気孔率は、原料配合工程S1における原料粒度及び造粒工程S2における転動時間により制御するとよい。このように気孔率を制御することで、気孔率を所望の値に制御し易く、より確実に圧壊強度を高めることができる。
【0039】
また、焼成工程S3後の粒径が4mm以上20mm以下、より好ましくは6mm以上15mm以下となるように、造粒工程S2で生ペレットPの粒度範囲を調整するとよい。このように焼成工程S3後の粒径を上記範囲内とすることで、高温における被還元性を維持しつつ、高炉の上部通気抵抗が低下することを抑止できる。
【0040】
生ペレットPの粒度範囲の調整に、予め決められた篩目に調整されたオーバーサイズスクリーン(上限篩)及びシードスクリーン(下限篩)を有する篩群による分級を用いるとよい。このように生ペレットPの粒度範囲の調整を分級により行うことで、容易かつ確実に焼成工程S3後の粒径を調整できる。なお、分級操作において外れた規格外品は解砕されて再度、混合原料として用いられることが好ましい。
【0041】
<焼成工程>
焼成工程S3では、生ペレットPを1200℃以上1300℃以下の温度で焼成する。
図2に示す製造装置2では、焼成工程S3に、グレート炉4及びキルン5が用いられている。
【0042】
(グレート炉)
グレート炉4は、
図2に示すように、トラベリンググレート41と、乾燥室42と、離水室43と、予熱室44とを備える。
【0043】
トラベリンググレート41は、無端状に構成され、このトラベリンググレート41上に載置された生ペレットPを、乾燥室42、離水室43及び予熱室44の順に移動させることができる。
【0044】
乾燥室42、離水室43及び予熱室44では、加熱用ガスG1によって生ペレットPを乾燥、離水及び予熱し、キルン5での転動に耐えうる強度を生ペレットPに付与した予熱ペレットHを得る。
【0045】
具体的には以下の手順による。まず、乾燥室42で、生ペレットPを250℃程度の雰囲気温度で乾燥させる。次に、離水室43で、乾燥後の生ペレットPを450℃程度に昇温し、主に鉄鉱石中の結晶水を分解除去する。さらに、予熱室44で、生ペレットPを1100℃程度まで昇温し、石灰石、ドロマイト等に含まれる炭酸塩を分解し二酸化炭素を除去するとともに、鉄鉱石中のマグネタイトを酸化させる。これにより予熱ペレットHが得られる。
【0046】
図2に示すように、乾燥室42の加熱用ガスG1としては、離水室43で使用された加熱用ガスG1が流用される。同様に離水室43の加熱用ガスG1には予熱室44の加熱用ガスG1が流用され、予熱室44の加熱用ガスG1には、キルン5で使用された燃焼排ガスG2が流用される。このように下流側の高温の加熱用ガスG1又は燃焼排ガスG2を流用することで、加熱用ガスG1の加熱コストを削減できる。なお、各室にはバーナ45を設け、加熱用ガスG1の温度を制御してもよい。
図2では、離水室43及び予熱室44にバーナ45が設けられている。また、乾燥室42で使用された加熱用ガスG1は、最終的には煙突Cから排出される。
【0047】
(キルン)
キルン5は、グレート炉4に直結されており、勾配をつけた円筒状の回転炉である。キルン5は、グレート炉4の予熱室44から排出される予熱ペレットHを焼成する。具体的には出口側に配設されたキルンバーナ(不図示)による燃焼により予熱ペレットHを焼成する。これにより高温の鉄鉱石ペレット1が得られる。
【0048】
予熱ペレットHを焼成する焼成温度の下限としては、1200℃であり、1220℃がより好ましい。一方、上記焼成温度の上限としては、1300℃であり、1280℃がより好ましい。本発明者らは、焼成温度が上記範囲内である場合に、生ペレットPの気孔率と鉄鉱石ペレット1の強度とが比例関係にあることを見出している。つまり、上記焼成温度が上記下限未満であると、ペレットが焼き締まらないため、また上記焼成温度が上記上限を超えると、粗大結晶粒が生成し易くなるため、鉄鉱石ペレット1の圧潰強度が低下するおそれがある。逆に、所望の強度が決まれば、その比例関係から生ペレットPの気孔率を決めることができる。
【0049】
キルン5では、燃焼用空気としては、アニュラクーラ6で使用された冷却ガスG3である大気が用いられる。また、予熱ペレットHの焼成用に使用された高温の燃焼排ガスG2は、加熱用ガスG1として予熱室44へ送り込まれる。
【0050】
<冷却工程>
冷却工程S4では、焼成工程S3で得られる高温の鉄鉱石ペレット1を冷却する。冷却工程S4では、アニュラクーラ6が用いられる。冷却工程S4で冷却された鉄鉱石ペレット1は集積され、高炉操業に用いられる。
【0051】
アニュラクーラ6では、キルン5から排出された高温の鉄鉱石ペレット1を移動させながら、冷却ガスG3である大気を通風装置61により通風することで鉄鉱石ペレット1を冷却することができる。
【0052】
なお、アニュラクーラ6で使用され温度が上昇した冷却ガスG3は、キルン5へ送り込まれ、燃焼用空気として使用される。
【0053】
<利点>
当該鉄鉱石ペレットの製造方法により製造される鉄鉱石ペレット1は、自溶性でCaO/SiO2質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO2質量比が0.4以上であるので、被還元性が高い。また、生ペレットPの段階での気孔率を15%以上22%以下としたうえで、焼成工程S3で生ペレットPを1200℃以上1300℃以下の温度で焼成するので、製造された鉄鉱石ペレット1の圧壊強度を十分に高めることができる。従って、当該鉄鉱石ペレットの製造方法を用いることで、高温における被還元性に優れ、かつ高炉の上部通気抵抗が低減できる鉄鉱石ペレット1を製造することができる。
【0054】
〔鉄鉱石ペレット〕
本発明の別の一態様に係る鉄鉱石ペレット1は、高炉操業に用いられる自溶性の鉄鉱石ペレットである。当該鉄鉱石ペレット1は、微粉鉱石を造粒し、焼成して強度の高い塊成鉱としたものであり、例えば上述の鉄鉱石ペレットの製造方法により製造することができる。
【0055】
鉄鉱石ペレット1の製造において、鉱石原料に石灰石などのCaO含有化合物を添加し、鉄鉱石ペレット1のCaO/SiO2質量比を高めると、鉄鉱石ペレット1の被還元性が向上することが知られている。この知見に基づき、当該鉄鉱石ペレット1のCaO/SiO2質量比は0.8以上である。
【0056】
原料が鉄鉱石(酸化鉄)と石灰石(CaO含有化合物)である場合、焼成過程において、熱分解によって生成したCaOと酸化鉄との固相反応によって、カルシウムフェライト系化合物が生成され、同時にその接点で固相拡散接合によって結合していく。この結合は局所的なものであり、焼成前に存在していた微細気孔が焼成後も維持され、鉄鉱石ペレット1は、微細気孔が比較的均一に存在する多孔質体となる。
【0057】
高炉操業時には、この微細気孔に還元ガスが拡散侵入していくことで、鉄鉱石ペレット1の外表面から内部へと還元反応が進行していく。還元反応により酸化鉄から酸素が除去されることによって、既存の微細気孔の拡大と新規微細気孔の生成が進行すると同時に金属鉄が生成する。この金属鉄の凝集によって鉄鉱石ペレット1の外形が収縮していく過程において微細気孔は減少に転じる。その結果、鉄鉱石ペレット1の内部への還元ガスの拡散が抑制され、還元が停滞し易くなる。
【0058】
この還元停滞を抑制するには、金属鉄の凝集過程で微細気孔消失を抑制する高融点成分の添加が有効である。特に高融点成分であるMgO源としてドロマイトを添加し、鉄鉱石ペレット1のMgO/SiO2質量比を高めると、高い還元停滞抑制効果が得られることが知られている。この知見に基づき、当該鉄鉱石ペレット1のMgO/SiO2質量比は0.4以上である。
【0059】
当該鉄鉱石ペレット1は、自溶性である。このように当該鉄鉱石ペレット1を自溶性とすることで、還元された鉄の溶け落ちが促進され易い。なお、鉄鉱石ペレット1の自溶性は、副原料等により決まる。
【0060】
当該鉄鉱石ペレット1の平均圧壊強度の下限としては、270kg/pであり、300kg/pがより好ましい。上述したように、運搬や高炉内衝撃により鉄鉱石ペレット1から発生する粉を減らすと高炉の上部通気抵抗が低減するという知見のもと、本発明者らが鋭意検討した結果、上記粉の量は平均圧壊強度により制御できるとの結論に至った。
図3は、鉄鉱石ペレット1の運搬により生じる粒径5mm以下の粉の質量分率(5mm以下粉率)と平均圧壊強度との関係を示している。この結果は、搬送経路に沿い実証的に検証した結果に基づくものである。
図3には、CaO/SiO
2質量比が0.8未満のものやMgO/SiO
2質量比が0.4未満のものも含まれるが、これらの性状に関わりなく、平均圧壊強度が上記下限以上の鉄鉱石ペレット1において、5mm以下粉率が安定的に低いことが分かる。なお、本発明において、当該鉄鉱石ペレット1の平均圧壊強度の上限は、特に限定されないが、現実的には、例えばその上限は500kg/pである。
【0061】
当該鉄鉱石ペレット1において、圧壊強度が100kg/p以下の質量比率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。当該鉄鉱石ペレット1の平均圧壊強度が高い場合であっても、個体ごとの強度ばらつきが大きい場合、粉化する鉄鉱石ペレット1の絶対量が多くなることも考えられる。この点、圧壊強度が100kg/p以下の質量比率を上記上限以下とすることで、鉄鉱石ペレット1から発生する粉をさらに減らし、高炉の上部通気抵抗をより低減することができる。
【0062】
<利点>
当該鉄鉱石ペレット1は、自溶性でCaO/SiO2質量比を0.8以上とし、かつMgO/SiO2質量比を0.4以上とするので、被還元性が高い。また、当該鉄鉱石ペレット1は、平均圧壊強度を270kg/p以上とするので、運搬や高炉内衝撃により鉄鉱石ペレット1から発生する粉を減らし、高炉の上部通気抵抗を低減することができる。
【0063】
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0064】
上記実施形態では、鉄鉱石ペレットをグレートキルン方式の製造装置を用いて製造する方法を説明したが、ストレートグレート方式の製造装置を用いて製造することもできる。ストレートグレート方式の製造装置では、グレート炉は、トラベリンググレートと、乾燥室と、離水室と、予熱室と、焼成室とを備え、グレート炉のみで焼成工程が完了する。具体的には、乾燥室、離水室及び予熱室で、加熱用ガスによって生ペレットを乾燥、離水及び予熱し、焼成室で最後の焼成に至る。
【実施例0065】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
[No.1]
鉱石原料としての鉄鉱石と、副原料としての石灰石、ドロマイト及びベンナイトを準備した。CaO/SiO2質量比が1.2で、かつMgO/SiO2質量比が0.4となるように、上記副原料を上記鉱石原料に配合し、混合原料を得た。
【0067】
上記混合原料を用いて、ディスクペレンタイザを用いて生ペレットを造粒し、固定式グレート炉及びキルン炉から構成される焼成装置を用いて1260℃で焼成し、No.1の鉄鉱石ペレットを得た。No.1の鉄鉱石ペレットに対して、原料粒度指数、生ペレットの気孔率及び鉄鉱石ペレットの平均圧壊強度を表1に示す。
【0068】
[No.2]
上記混合原料をボールミルにて30分間粉砕した以外は、No.1と同様にして、No.2の鉄鉱石ペレットを得た。No.2の鉄鉱石ペレットに対して、原料粒度指数、生ペレットの気孔率及び鉄鉱石ペレットの平均圧壊強度を表1に示す。
【0069】
[No.3~No.5]
No.1及びNo.2の原料粒度指数と得られた鉄鉱石ペレットに対して、平均圧壊強度が270kg/p以上となるように、原料粒度指数をNo.1の原料粒度指数を基準として、1.8倍、2.0倍、2.2倍となるようにした以外は、No.1と同様にして、No.3~No.5の鉄鉱石ペレットを得た。No.3~No.5の鉄鉱石ペレットに対して、原料粒度指数、生ペレットの気孔率及び鉄鉱石ペレットの平均圧壊強度を表1に示す。
【0070】
【0071】
表1の結果から、CaO/SiO2質量比が0.8以上で、かつMgO/SiO2質量比が0.4以上である鉄鉱石ペレットにおいても、生ペレットの気孔率を15%以上22%以下とし、1200℃以上1300℃以下の温度で焼成することで、平均圧壊強度が270kg/p以上の鉄鉱石ペレットが得られることが分かる。
本発明の鉄鉱石ペレットの製造方法は、高温における被還元性に優れ、かつ高炉の上部通気抵抗が低減できる鉄鉱石ペレットを製造できる。また、本発明の鉄鉱石ペレットは、高温における被還元性に優れ、かつ高炉の上部通気抵抗が低減できる。