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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047301
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】液体燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   B67D 7/54 20100101AFI20240329BHJP
【FI】
B67D7/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152846
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂内 聡
【テーマコード(参考)】
3E083
【Fターム(参考)】
3E083AA02
3E083AE01
3E083AE11
3E083AG08
3E083AH12
3E083AH13
3E083AH14
(57)【要約】
【課題】回収容器内のベーパーを含む気体がそのまま外部へ放出されることを抑制できる液体燃料供給装置を提供する。
【解決手段】計量機1は、ノズル8と、給油ポンプ14と、吸引圧縮ポンプ12と、回収容器21と、を備えている。吸引圧縮ポンプ12は、ノズル8を通じて液体燃料を車両100の燃料タンク101に供給するときに、燃料タンク101の給油口102から放出されるベーパーを吸引する。吸引圧縮ポンプ12により吸引されたベーパーは、回収容器21内に貯留された液体燃料中に流入され、この液体燃料中に溶解、液化される。回収容器21には、回収容器21内の気体を大気に放出させる圧力逃がし機構35が接続されている。圧力逃がし機構35は、回収容器21内の気体中に含まれるベーパーを分離する分離膜39Aを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を吐出させるノズルと、
前記液体燃料が貯留された貯留タンクから前記ノズルに向けて前記液体燃料を供給する供給ポンプと、
前記ノズルを通じて前記液体燃料を燃料供給対象に供給するときに、前記燃料供給対象の供給口から放出されるベーパーを吸引する吸引ポンプと、
前記貯留タンクとは別に設けられ、前記貯留タンクに貯留された前記液体燃料と同一種類の液体燃料が貯留された回収容器と、を備え、
前記吸引ポンプにより吸引されたベーパーを、前記回収容器内に貯留された前記液体燃料中に流入させることにより、前記ベーパーを前記回収容器内に回収する液体燃料供給装置において、
前記回収容器には、前記回収容器内の気体を大気に放出させる圧力逃がし機構が接続されており、
前記圧力逃がし機構は、前記回収容器内の気体中に含まれるベーパーを分離する分離膜を備えていることを特徴とする液体燃料供給装置。
【請求項2】
前記圧力逃がし機構は、前記回収容器内と大気とを連通する流路と、前記分離膜よりも前記気体の流通方向の上流側の前記流路に位置する第1逃がし弁と、前記分離膜よりも前記気体の流通方向の下流側の前記流路に位置する第2逃がし弁と、を備え、
前記第1逃がし弁は、前記回収容器側と前記分離膜側との間の前記流路内の圧力の差を第1所定圧力差に維持する差圧弁であり、
前記第2逃がし弁は、前記分離膜側の前記流路内と大気側との間の圧力の差を第2所定圧力差に維持する差圧弁であり、
前記第1逃がし弁と前記第2逃がし弁は、前記回収容器内の圧力をベーパーの回収に適した所定圧力に維持でき、かつ、前記分離膜に加わる圧力が前記分離膜の許容圧力を超えないように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の液体燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばガソリン、軽油、灯油等の液体燃料を燃料供給対象(燃料被供給体)となる燃料タンクに供給する液体燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両の燃料タンクに液体燃料を供給するときに発生するベーパー(燃料蒸気)を回収可能とした液体燃料供給装置が記載されている。この特許文献1の液体燃料供給装置は、液体燃料の供給時に発生するベーパーを、回収容器内に収容された液体燃料中に吐出し、この液体燃料中にベーパーを溶解させることにより、ベーパーの回収を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-50378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ベーパーを液体燃料中に溶解して回収するためには、回収容器内を高い圧力に保持する必要がある。この場合に、回収容器内に吐出されるベーパー量が多いと、回収容器内がさらに高い圧力になる可能性がある。このため、特許文献1の技術によれば、回収容器(21)内の圧力が所定圧力以上となった場合に、ベーパー排出弁(27)により回収容器(21)内の圧力を外部へ逃がしている。しかし、単にベーパー排出弁(27)により圧力を外部へ逃してしまうと、回収容器(21)内のベーパーを含む気体がそのまま外部へ放出されてしまう。
【0005】
本発明の目的の一つは、回収容器内のベーパーを含む気体がそのまま外部へ放出されることを抑制できる液体燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、好ましくは、液体燃料を吐出させるノズルと、前記液体燃料が貯留された貯留タンクから前記ノズルに向けて前記液体燃料を供給する供給ポンプと、前記ノズルを通じて前記液体燃料を燃料供給対象に供給するときに、前記燃料供給対象の供給口から放出されるベーパーを吸引する吸引ポンプと、前記貯留タンクとは別に設けられ、前記貯留タンクに貯留された前記液体燃料と同一種類の液体燃料が貯留された回収容器と、を備え、前記吸引ポンプにより吸引されたベーパーを、前記回収容器内に貯留された前記液体燃料中に流入させることにより、前記ベーパーを前記回収容器内に回収する液体燃料供給装置において、前記回収容器には、前記回収容器内の気体を大気に放出させる圧力逃がし機構が接続されており、前記圧力逃がし機構は、前記回収容器内の気体中に含まれるベーパーを分離する分離膜を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回収容器内のベーパーを含む気体がそのまま外部へ放出されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態による液体燃料供給装置を自動車に給油中の状態で示す一部破断の構成図である。
図2】回収容器内の液体燃料にベーパーを液化(溶解)させている状態を模式的に示す液体燃料供給装置の内部構成図である。
図3】液体燃料供給装置のブロック図である。
図4】分離膜を備えた分離膜ユニットを示す斜視図である。
図5】第1変形例による液体燃料供給装置を示すブロック図である。
図6】第2変形例による液体燃料供給装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態による液体燃料供給装置として、ガソリン、軽油等の液体燃料を自動車等の車両に供給する計量機を例に挙げ、添付図面に従って説明する。
【0010】
図1ないし図4は、実施形態を示している。図1において、液体燃料供給装置としての計量機1は、例えばレギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油等の液体燃料(油液)を車両100に供給(給油)する燃料供給所としての給油所(ガソリンスタンド、サービスステーション)に設置されている。給油機または給油装置とも呼ばれる計量機1は、略四角形状をなす筐体2を有している。筐体2の正面側には、表示器17および設定装置18が配設されている。筐体2内には、送液管路5、供給ポンプとしての給油ポンプ14、流量計15、制御弁16、ベーパー液化回収装置20等が設けられている。
【0011】
給油所の地下には、燃料(例えば、レギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油等)を貯留する貯留タンク3が埋設されている。貯留タンク3は、通常は複数個に分離または分画して設けられており、夫々のタンク毎に液種の異なる液体燃料(例えば、レギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油)が貯留される。貯留タンク3内の液面4は、例えば専用の液面検出器(図示せず)を用いて検出され、これにより、貯留タンク3内の液体残量が監視されている。
【0012】
なお、図1ないし図3では、計量機1の外殻を構成する筐体2の内部構造(即ち、送液管路5、給油ポンプ14、流量計15、制御弁16等の配管構造)を、簡略化して示している。実際には、筐体2の左側面と右側面、または、正面と背面に、それぞれ1または複数のホース7が設けられる。しかし、図1ないし図3では、1つのホース7のみを示し、他のホースは説明の簡略化のために省略している。
【0013】
送液管路5は、供給ホースまたは給油ホースとも呼ばれるホース7と共に、燃料供給経路を構成している。送液管路5は、筐体2内から下向きに延びる一端(下端)側が吸上げ管5Aとなって貯留タンク3に接続されている。送液管路5の他端(先端)側は、例えば継手6を介して可撓性を有するホース7に接続されている。図1に示すように、ホース7は、例えば内部にベーパー吸引チューブ10が挿通された二重管構造となっている。なお、ホース7とベーパー吸引チューブ10とは、必ずしも二重管構造とする必要はない。
【0014】
ホース7の先端側には、燃料供給対象(例えば、燃料タンク101)に液体燃料を供給するノズル8が設けられている。供給ノズルまたは給油ノズルとも呼ばれるノズル8は、給油作業の待機時にノズル掛け13に掛止されている。ノズル8は、車両100の燃料タンク101に給油を行うときに、給油を行う給油者(セルフの給油者を含む)によってノズル掛け13から外される。
【0015】
図1に示すように、車両100には、燃料タンク101に燃料を給油(補充)するための給油口102(供給口)が設けられている。ノズル8には、ノズル先端部としての吐出パイプ8Aが設けられている。吐出パイプ8Aは、給油口102内に挿入された状態で、燃料タンク101への給油を行う。図2に示すように、ノズル8は、手動操作されるノズルレバー8Bと、内蔵の弁8Cと、を有している。ノズル8に内蔵された弁8Cは、ノズルレバー8Bの操作位置によって弁開度が調整される。
【0016】
図1に示すように、ノズル8には、吐出パイプ8Aの付け根部分にベーパー回収用ノズルカバー9(以下、回収カバー9という)が追加して設けられている。回収カバー9は、ゴム等の弾性材料から蛇腹状をなす可撓性の筒体として形成されている。回収カバー9は、吐出パイプ8Aの外周側を取囲むように覆っている。車両100の燃料タンク101にノズル8を用いて給油を行うときに、回収カバー9は、車両100の給油口102の周囲に押付けられる。このとき、回収カバー9は、燃料タンク101内の気化燃料(即ち、燃料蒸気としてのベーパー)が燃料タンク101の外部に漏れ出すのを防ぐように、給油口102の周囲を封止状態で覆う。
【0017】
回収カバー9内は、ノズル8内に設けたベーパー回収弁8D(図2)を介してベーパー吸引チューブ10に連通している。ベーパー吸引チューブ10は、ホース7の内側に挿入されて二重管構造をなし、計量機1の筐体2内を継手6の位置まで延びている。計量機1の筐体2内には、継手6等を介してベーパー吸引チューブ10に接続されたベーパー導管11、吸引圧縮ポンプ12、回収容器21(回収塔)等が設けられている。なお、ベーパー吸引チューブ10とホース7とは、必ずしも二重管構造に形成する必要はない。
【0018】
ベーパー導管11は、一方の端部がベーパー吸引チューブ10に接続され、他方の端部は、回収容器21に接続されるベーパーの放出部22となっている。ベーパー導管11の途中には、吸引ポンプおよび圧縮ポンプとしての吸引圧縮ポンプ12、ベーパー冷却部23およびチェック弁24(逆止弁)が設けられている。吸引圧縮ポンプ12は、ノズル8を用いた燃料の給油時に、燃料タンク101の給油口102から放出されるベーパーを吸引し、吸引したベーパーを圧縮するポンプである。吸引圧縮ポンプ12は、制御装置34により駆動制御される。燃料タンク101内のベーパーは、吸引圧縮ポンプ12の駆動により回収カバー9からベーパー回収弁8Dおよびベーパー吸引チューブ10を介してベーパー導管11内に吸引される。ベーパー導管11内に吸引されたベーパーは、吸引圧縮ポンプ12で圧縮され、ベーパー導管11の放出部22から回収容器21内へと噴射(即ち、放出)される。これにより、吸引圧縮ポンプ12は、燃料タンク101内の気化燃料(ベーパー)が給油口102の周囲から外部に漏れ出ないようにしている。
【0019】
図2に示すように、ノズル8の弁8Cは、ノズルレバー8Bの手動操作により閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換えられる。ベーパー回収弁8Dは、回収カバー9が車両100の給油口102の周囲に押付けられると、このときの押動力により閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換えられる。ノズル8を通じて燃料タンク101への給油が開始されると、流量計15の流量パルス発信器15Aから流量パルスが制御装置34に出力される。なお、ノズル8は、燃料タンク101内の液面を検知して自動閉弁動作する構成であってもよく、自動閉弁機構を有していない汎用ノズルであってもよい。ノズル8と一緒に回収カバー9が車両100の給油口102から離間すると、ベーパー回収弁8Dは開弁位置(b)から閉弁位置(a)に自動的に復帰する。
【0020】
なお、ベーパー回収弁8Dの開閉タイミングは、ノズル8を用いた燃料タンク101への給油が開始されたときに閉弁位置(a)から開弁位置(b)となり、給油が終了したときに開弁位置(b)から閉弁位置(a)となるように構成すればよい。この場合、例えば、制御装置34によりベーパー回収弁8Dを切換える構成としてもよい。例えば、流量計15の流量パルス発信器15Aから流量パルスが出力されると、制御装置34により閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換え、流量パルスの出力が停止すると、制御装置34により開弁位置(b)から閉弁位置(a)に切換えてもよい。また、例えば、ノズル掛け13にノズル8の有無を検出するノズルスイッチ13Aが設けられている場合は、ノズルスイッチ13Aの検出結果(ON信号、OFF信号)に基づいて制御装置34によりベーパー回収弁8Dの開閉を切換えてもよい。
【0021】
図1に示すように、筐体2の側面には、ノズル8が着脱可能に掛止めされるノズル収納部としてのノズル掛け13が設けられている。ノズル8は、給油時以外、ノズル掛け13に収納されている。例えば、顧客の車両100が給油所に到着すると、給油を行う給油者によりノズル8がノズル掛け13から外されて、ノズル8が車両100の燃料タンク101の給油口102内に挿入される。ノズル掛け13には、ノズルスイッチ13Aが設けられている。ノズルスイッチ13Aは、ノズル8がノズル掛け13に掛止されているか否かを検出し、その検出信号を制御装置34に出力する。ノズル8がノズル掛け13に掛止されている間は、例えばノズルスイッチ13Aから制御装置34にOFF信号が出力される。ノズル8がノズル掛け13から外されている間は、ノズルスイッチ13Aから制御装置34にON信号が出力される。
【0022】
送液管路5の途中には、筐体2内に位置して給油ポンプ14(供給ポンプ)、流量計15、制御弁16が配設されている。給油ポンプ14により吸上げ管5Aから吸上げられた貯留タンク3内の液体燃料(例えば、ガソリン)は、送液管路5内を流通するときに、流量計15により流量が計測される。給油ポンプ14は、貯留タンク3内の燃料をノズル8側に供給するため、ポンプモータ14Aにより回転駆動される。
【0023】
流量計15は、給油ポンプ14によりノズル8に供給された液体燃料の給油量を、ノズル8毎に個別に計測する流量検出装置である。流量計15には、流量パルス発信器15Aが設けられている。流量パルス発信器15Aは、送液管路5内を流れる液体燃料の流量に応じた流量パルス信号を制御装置34に出力する。制御弁16は、その弁開度が可変に制御される電磁式流量制御弁により構成されている。制御弁16は、送液管路5からホース7を介してノズル8へと供給される液体燃料(例えば、ガソリン等の油液)の流量を調整する。制御弁16の弁開度は、制御装置34から出力される制御信号の周波数およびデューティ比に応じて可変に制御される。
【0024】
筐体2の正面側には、計量機1による燃料の給油量を表示する表示手段としての表示器17が設けられている。また、筐体2の正面側には、給油所の作業者(操作者)が手動操作することにより給油量に関する設定が行われる設定手段としての設定装置18が設けられている。給油者は、設定装置18の各スイッチを操作することにより、例えば満タン給油の選択、任意のプリセット給油量の設定を行うことができる。
【0025】
排気口19は、筐体2の外部に回収容器21内の気体を排出するための排気口である。即ち、ノズル8を通じて車両100の燃料タンク101に液体燃料が供給されているときに、当該燃料タンク101内からノズル8の回収カバー9内にベーパー(燃料蒸気)が放出される。図2に示すように、ベーパーは、回収カバー9、ベーパー回収弁8D、ベーパー吸引チューブ10およびベーパー導管11を介して吸引圧縮ポンプ12で吸引、圧縮され、かつ、ベーパー冷却部23で冷却された状態で、回収容器21内に放出される。回収容器21内に放出されたベーパーは、回収容器21内の液体燃料中に液化(溶解)される。排気口19からは、回収容器21の上部空間21Bに溜まった気体が後述の圧力逃がし機構35を介して筐体2の外部に排出される。
【0026】
ベーパー液化回収装置20は、筐体2内に設けられている。ベーパー液化回収装置20は、例えば、吸引圧縮ポンプ12と、回収容器21と、圧力逃がし機構35と、を含んで構成されている。回収容器21は、液体燃料が貯留された貯留タンク3とは別に小型に形成された容器である。回収容器21は、例えば5~8L(リットル)程度の内容積を有している。回収容器21の側面には、ベーパー導管11の先端側(即ち、ベーパーの放出部22)が回収容器21内に通じるように接続されている。回収容器21内には、貯留タンク3の液体燃料と同一種類の液体燃料が貯留されている。吸引圧縮ポンプ12により吸引、圧縮されたベーパーは、回収容器21内に貯留された液体燃料中に流入して回収容器21内に回収される。
【0027】
回収容器21内には、吸引圧縮ポンプ12により加圧(圧縮)されたベーパーが液体燃料と一緒に収容されている。この場合、回収容器21内でベーパーの液化を促進するためには、回収容器21内に規定量(例えば、図2に二点鎖線で示す低位の液面レベルSL)以上の液体燃料を収容しておくことが好ましい。即ち、回収容器21内の液体燃料の液面Sは、ベーパー導管11の放出部22先端(開口端)よりも高い液面レベルSL,SHの範囲(図2に示す液面差ΔH)内となるように、回収容器21内における液体燃料の貯留量は制御されることが好ましい。回収容器21内に収容した液体燃料の液面Sが、例えば低位の液面レベルSLよりも低い下限液面まで下がると、回収容器21内でベーパーが液化する効率が低下し、ベーパーの液化を促進することが難しくなる。このため、回収容器21内の液体燃料の液面Sが低位の液面レベルSLよりも低くなると、補充管路30および油液補充弁31(ガソリン補充弁)を介して液体燃料が補充される。これにより、回収容器21内の液体貯留量は、低位の液面レベルSLまで増液される。
【0028】
ベーパーの放出部22は、ベーパー導管11の先端(下流端)側に設けられている。ベーパーの放出部22は、回収容器21の側面のうち、予め決められた高さ位置(即ち、回収容器21の底部21Aよりも上方で、下限液面よりも低い位置)に取付けられている。放出部22は、ベーパー導管11のうち吸引圧縮ポンプ12の流出側(2次側)でベーパー冷却部23の下流側に配設されている。放出部22は、吸引圧縮ポンプ12により燃料タンク101からベーパー導管11内へと吸引され、圧縮されたベーパーを、ベーパー冷却部23により冷却させた状態で回収容器21内へと噴射するように放出(流入)させる。なお、図3のブロック図では、ベーパー冷却部23を省略して示している。ベーパー冷却部23は、必要に応じて設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0029】
吸引圧縮ポンプ12の2次側(ベーパー導管11の途中)には、ベーパー冷却部23が設けられている。ベーパー冷却部23は、吸引圧縮ポンプ12とチェック弁24との間に配置されている。ベーパー冷却部23は、十分な放熱面積を有した屈曲管等を含んで構成され、内部を流通するベーパーを自然冷却または強制冷却等の熱交換手段(図示せず)を用いて冷却する。即ち、吸引圧縮ポンプ12で圧縮されたベーパーは、ベーパー冷却部23で冷却されることにより、回収容器21内での液体燃料中への溶解が促進される。チェック弁24は、ベーパー導管11の下流側に設けられている。チェック弁24は、ベーパー導管11の放出部22とベーパー冷却部23との間に配置されている。チェック弁24は、ベーパー導管11内のベーパーが吸引圧縮ポンプ12から回収容器21に向けて放出部22側へと流通するのを許し、逆向きの流れを阻止する。吸引圧縮ポンプ12とチェック弁24とにより、回収容器21内はベーパー導管11の上流側よりも高い圧力状態(即ち、ベーパーが圧縮された状態)に保持される。
【0030】
回収容器21内は、吸引圧縮ポンプ12で圧送されたベーパーの圧力により容器内圧力が所定の圧力に維持されている。また、回収容器21内に放出部22から噴射されたベーパーは、当該回収容器21内で液体燃料中に放出されることで、ベーパーの一部は液体燃料中に吸収(溶解)される。即ち、回収容器21内に導入されたベーパーは、液体燃料中に吸収(溶解)され、液化した再生燃料として回収容器21内に貯留される。回収容器21内に貯留された液体燃料は、例えば低位の液面レベルSL以上となった状態(少なくとも液体燃料の液面Sの高さ位置が放出部22よりも高く、液面検出器28の位置となった状態)で、ベーパーの液体燃料中への溶解を促進することができる。ベーパー導管11の放出部22から回収容器21内に放出されたベーパーは、回収容器21内の液中で気泡が細分化され、回収容器21内の液体燃料との接触面積を増やすことができる。
【0031】
回収容器21内の液体燃料中にベーパーが溶解された後の気体(主に燃料蒸気中に含まれた空気)は、回収容器21内を上方へと浮遊しつつ、回収容器21の上部空間21B内に滞留する。回収容器21の上端側には、回収容器21内の圧力を検出する圧力センサ25が設けられている。また、回収容器21の上端側には、回収容器21と排気口19とを接続する圧力逃がし機構35が設けられている。後述するように、圧力逃がし機構35は、第1逃がし弁37、第2逃がし弁38、分離膜ユニット39、脱圧弁45等を備えている。回収容器21の上部空間21Bに滞留した気体(例えば、ガス濃度が低下した状態の空気)は、圧力逃がし機構35を通じて排気口19から筐体2の外部へと排出される。
【0032】
回収容器21内の圧力は、回収容器21内に収容する液体燃料中に放出部22からベーパーが放出されるのに伴って上昇する。回収容器21内の圧力が大気圧よりも高い圧力である所定圧力(所定圧値Pa)を超えた場合には、回収容器21内の圧力(過剰圧)を下げるように圧力逃がし機構35を通じて回収容器21内の気体を排出する。これにより、回収容器21内の圧力は所定圧力(所定圧値Paよりも低く、かつ、所定圧値Pb以上の圧力)に保持される。また、回収容器21内に収容する液体燃料(再生燃料を含む)が漸次増加し、その液面Sが高位の液面レベルSHに達すると、回収容器21内には液体燃料が満杯状態となる。このような場合には、還流制御弁33(回収液排出弁)を開弁させ、内部の液体燃料を回収容器21外に排出すると共に、これを再生燃料として車両100の燃料タンク101に給油する再利用処理(即ち、還流制御)を行う。
【0033】
回収容器21には、例えば光学式の液面センサからなる第1液面検出器28および第2液面検出器29が設けられている。液面検出器28,29は、回収容器21内に貯留される液体燃料の貯留量を検出する貯留量検出手段を構成している。即ち、貯留量検出手段は、第1液面検出器28と第2液面検出器29とを含んで構成されている。第1液面検出器28は、回収容器21内に補充された液体燃料の液面Sが、低位の液面レベルSLに達したか否かを検出する。第2液面検出器29は、回収容器21内に補充された液体燃料の液面Sが、高位の液面レベルSHに達したか否かを検出する。回収容器21内の液面Sは、低位の液面レベルSLよりも高く、高位の液面レベルSHよりも低い液面となるように制御される。
【0034】
回収容器21内に所定量以上の液体燃料が貯留されているときに、回収容器21内の液面Sは、高位の液面レベルSHとなる。一方、低位の液面レベルSLは、回収容器21内に貯留された液体燃料の貯留量が高位の液面レベルSHよりも予め定められた貯留量分だけ減少したときの液面レベルである。回収容器21内の液体燃料の液面Sは、低位の液面レベルSLと高位の液面レベルSHとの間で液面差ΔHとなっている。液面差ΔHは、予め定められた貯留量分に該当し、低位の液面レベルSLと高位の液面レベルSHとの液面差に対応する。
【0035】
回収容器21には、液体燃料の補充管路30が設けられている。補充管路30の途中には、油液補充弁31およびチェック弁26(逆止弁)が設けられている。補充管路30は、その基端側が給油ポンプ14と流量計15との間で送液管路5から分岐している。補充管路30の先端側は、回収容器21内で液体燃料中に浸漬状態で配置されている。チェック弁26は、油液補充弁31よりも下流側に配置されている。チェック弁26は、補充管路30内の液体燃料が回収容器21に向けて流通するのを許し、これとは逆向きの流れを阻止する。給油ポンプ14を駆動している状態で、圧力逃がし機構35の脱圧弁45を開弁させ、油液補充弁31を開弁すると、補充管路30の先端側から回収容器21内に液体燃料が補充される。これにより、回収容器21内の液面Sは上昇する。一方、給油ポンプ14を停止させ、圧力逃がし機構35の脱圧弁45を閉弁させ、油液補充弁31を閉弁すると、回収容器21内への液体燃料の補充は停止される。
【0036】
回収容器21の底部21A側には、液体燃料の還流管路32が設けられている。還流管路32の途中には、還流制御弁33が設けられている。還流管路32は、その基端側が回収容器21の底部21A側で液体燃料中に浸漬状態で配置され、還流管路32の先端側は、給油ポンプ14と地下の貯留タンク3との間で送液管路5の吸上げ管5Aに接続されている。このため、貯留タンク3から吸上げ管5Aを介して液体燃料(給油ガソリン)を給油ポンプ14で吸上げるときに、還流制御弁33を開弁すると、回収容器21内の液体燃料は還流管路32を介して給油ポンプ14へ供給される。これにより、回収容器21内の液面Sは漸次低下する。一方、還流制御弁33を閉弁すると、回収容器21内から給油ポンプ14への液体燃料の還流(供給)は停止される。これにより、回収容器21内の液面Sが、これ以上に低下することが抑えられる。
【0037】
補充管路30と還流管路32は、燃料供給系統(送液管路5)とベーパー液化回収装置20(回収容器21)との間に接続された補充・還流経路を構成している。補充・還流経路(補充管路30と還流管路32)は、ベーパー液化回収装置20(回収容器21)への液体燃料の補充と、ベーパー液化回収装置20(回収容器21)から燃料供給系統(送液管路5)への液体燃料の還流とを行うものである。制御手段としての制御装置34は、補充・還流経路による液体燃料の補充と還流とを切り換え制御する機能を有している。
【0038】
計量機1の筐体2内には、制御装置34が設けられている。制御装置34は、設定装置18により設定された給油量に基づいて給油に関する制御を行う制御手段に対応する。制御装置34は、ノズル8による燃料の給油時に、流量計15により計測された給油量を表示器17に表示する表示制御手段にも対応する。また、制御装置34は、燃料タンク101内のベーパーを回収すると共に、回収したベーパーを液化(液体燃料に溶解)させて液体燃料に戻すベーパー回収・再生制御処理を行う機能を有している。
【0039】
図1に示すように、制御装置34の入力側には、ノズル掛け13のノズルスイッチ13A、流量計15の流量パルス発信器15A、設定装置18等が接続されている。制御装置34の出力側には、給油ポンプ14のポンプモータ14A、制御弁16、表示器17等が接続されている。制御装置34は、ノズル8がノズル掛け13から外されてノズルスイッチ13AからのON信号が入力されると、給油ポンプ14のポンプモータ14Aを起動する。このとき、給油ポンプ14は、制御装置34からの駆動信号により貯留タンク3内の燃料を送液管路5内に吸上げる。また、制御弁16は、制御装置34から所定周波数の駆動信号が出力されると共に、当該駆動信号のデューティ比を変更することにより、所定の弁開度を保つように制御される。
【0040】
この状態で、ノズル8のノズルレバー8Bが操作されると、燃料タンク101への給油が開始され、流量計15の流量パルス発信器15Aから流量パルスが制御装置34に出力される。制御装置34は、流量パルス発信器15Aから出力された流量パルスを積算して給油量を求め、この求めた給油量を表示器17に表示させる。また、制御装置34は、例えば満タン給油制御、プリセット給油制御等を設定装置18の操作に基づいて行う機能も有している。さらに、図2に示すように、制御装置34の入力側は、流量計15、圧力センサ25、第1液面検出器28、第2液面検出器29等に接続されている。制御装置34の出力側は、吸引圧縮ポンプ12、給油ポンプ14、油液補充弁31、還流制御弁33、第1逃がし弁37、第2逃がし弁38、脱圧弁45等に接続されている。制御装置34は、吸引圧縮ポンプ12、給油ポンプ14を制御(駆動・停止制御)する。制御装置34は、油液補充弁31、還流制御弁33、第1逃がし弁37、第2逃がし弁38、脱圧弁45を制御(開弁・閉弁制御)する。
【0041】
制御装置34には、例えばROM,RAMおよび/または不揮発性メモリ等からなるメモリ34Aが設けられている。メモリ34A内には、ベーパー回収・再生制御処理用のプログラム、回収容器21内の液面Sを検出し監視するプログラム、回収容器21内の圧力Pを監視するプログラム等が格納されている。制御装置34は、例えば、回収容器21内の圧力Pが、所定の範囲(高い所定圧値Paよりも低く、かつ、低い所定圧値Pbよりも高い圧力)となるように、圧力センサ25の検出圧力をフィードバック制御する。これにより、回収容器21内のベーパー(燃料蒸気)を液体燃料中に効率的に溶解または液化させ、液体燃料の再生効率を高めることができる。
【0042】
次に、ベーパー液化回収装置20のベーパー回収動作およびベーパーを液化させる再生処理について説明する。
【0043】
ベーパーの液化回収は、例えば、給油中に行われる。即ち、ノズル8がノズル掛け13から外されると、または、給油ポンプ14が駆動しノズル8を通じた給油が開始されると、吸引圧縮ポンプ12が駆動する。これにより、燃料タンク101の給油口102および吐出パイプ8Aの周囲のベーパーが吸引圧縮ポンプ12により吸引される。吸引圧縮ポンプ12によりベーパー導管11内へと吸引されたベーパーは、吸引圧縮ポンプ12で圧縮されると共に、ベーパー冷却部23を通過し、ベーパー導管11の放出部22から回収容器21の液体燃料中に噴射するように導入される。回収容器21内の液体燃料中にベーパーを放出すると、蒸気と空気の混合ガスは泡となって回収容器21内の液体燃料中に放出される。このとき、蒸気(燃料蒸気)と空気の泡は周囲の液体燃料を撹拌する。そして、泡の中のベーパー(ガソリン蒸気)は、液化するように液体燃料中へ吸収され、泡の中のガソリン蒸気(ベーパー)の量が減少する。
【0044】
また、回収容器21内の泡内のベーパーは、液体燃料の中を浮上する過程において当該液体中に溶解し、残った気体は、回収容器21の上部空間21B内に滞留することになる。これらの現象が連続的に発生することで、回収容器21内の圧力は上昇する。回収容器21内の飽和蒸気量は、この空間の温度に依存するため、温度を一定にすれば飽和蒸気量を超える蒸気は液化し、その温度での飽和蒸気量の蒸気と圧縮により押し込まれた空気が残る。この結果、回収容器21の上部空間21Bは空気が支配的となる。回収容器21の圧力がある一定範囲に維持されるように、給油中に圧力逃がし機構35の第1逃がし弁37および第2逃がし弁38を開弁して回収容器21の上部空間21Bの気体を排出する。また、回収容器21内でベーパーから液化された液体燃料は、回収容器21内の液体燃料に混ざり、給油中の還流制御(還流制御弁33の開弁制御)により貯留タンク3からの給油燃料と共に車両100の燃料タンク101に給油される。
【0045】
ところで、ベーパーを回収する方法としては、吸引したベーパーを容器内で圧縮すると共に、その容器の外面を冷凍機の冷媒で冷却することにより、ベーパーを液化することが考えられる。しかし、冷凍機は、OFFにすると、立ち上げに2時間程度の時間を要するため、実際に運用する場合には、24時間常に冷凍機に通電し、冷凍機を低温に保つ必要がある。このため、消費電力が大きくランニングコストが増大する可能性がある。また、冷凍機は、電気機器であるため、故障のリスクもあり、冷凍機の故障時は、修理が高額になる可能性がある。このため、この面からも、冷凍機を用いる構成の場合は、費用的に大きな負担となる。これに対して、特許文献1には、給油時に発生するベーパーを、回収容器内に収容された液体燃料中に吐出し、この液体燃料中にベーパーを溶解させることにより、ベーパーの回収を行う液体燃料供給装置が記載されている。この構成によれば、冷凍機を用いることによる費用的な負担を低減できる。しかし、回収容器内からベーパーを含む気体をそのまま外部へ放出することは、ベーパーの回収率を低下させるため、好ましくない。
【0046】
そこで、実施形態では、冷凍機等の電気機器を用いずに、ベーパーの回収率を向上できるように構成している。即ち、実施形態では、ベーパーを吸引圧縮ポンプ12で吸引・圧縮すると共にこの圧縮されたベーパーを回収容器21の液体燃料中に発泡、溶解させることにより液化する液化回収方式を採用している。この場合に、吸引圧縮ポンプ12によるベーパーの圧縮圧力を昇圧している。これに加えて、回収容器21と排気口19とを接続する圧力逃がし機構35は、分離膜39Aを含んで構成される分離膜ユニット39を備えている。これにより、回収容器21内のベーパーを含む気体がそのまま外部(外気)へ放出されることを抑制し、ベーパーの回収率を向上している。以下、これらの点について詳しく説明する。
【0047】
図2および図3に示すように、回収容器21の出口側には、圧力逃がし機構35が設けられている。圧力逃がし機構35は、「回収塔となる回収容器21」と「外気への開口となる排気口19」との間に設けられている。圧力逃がし機構35は、第1排気通路36と、第1逃がし弁37と、第2逃がし弁38と、分離膜ユニット39と、戻り通路40と、第2排気通路41と、真空エジェクタ42と、排気盤43と、脱圧通路44と、脱圧弁45と、を備えている。
【0048】
第1排気通路36は、回収容器21と分離膜ユニット39とを接続している。第1排気通路36の途中、即ち、回収容器21と分離膜ユニット39との間には、第1逃がし弁37が設けられている。第1逃がし弁37は、回収容器21内でのベーパーの溶解を促進させるために、回収容器21内を所定の圧力に維持する差圧弁である。即ち、第1逃がし弁37は、吸引圧縮ポンプ12が駆動すると開弁する。このとき、第1逃がし弁37は、上流側となる回収容器21側の圧力と下流側となる分離膜ユニット39側の圧力との圧力差を、例えば0.5MPaで保持する。即ち、第1逃がし弁37は、制御装置34からの開弁信号により開弁すると、回収容器21の圧力と分離膜ユニット39の圧力との圧力差を所定の圧力差で保持しつつ、回収容器21の上部空間21Bに溜まった気体を分離膜ユニット39側に流通させる。
【0049】
分離膜ユニット39の入口側は、第1排気通路36を介して第1逃がし弁37と接続されている。分離膜ユニット39の第1出口となる透過側は、戻り通路40を介してベーパー導管11と接続されている。また、分離膜ユニット39の第2出口となる非透過側は、第2排気通路41を介して第2逃がし弁38と接続されている。分離膜ユニット39は、分離膜39Aを含んで構成されている。即ち、分離膜ユニット39は、筒状のケース39Bと、ケース39B内に収納された分離膜39Aと、を備えている。分離膜39Aは、ベーパーを含む気体(空気)からベーパーを透過させる。これにより、分離膜39Aは、「ベーパーを含む空気(気体)」を「ベーパー(濃縮ベーパー)」と「空気(ベーパーが希釈された空気)」とに分離する。分離膜39Aは、例えばシリコン中空紙糸ガス分離膜等のガス透過膜により構成されている。分離膜39Aは、分離膜ユニット39のケース39B内に流入した気体、即ち、回収容器21の上部空間21Bに溜まった気体(ベーパーを含む空気)を、「ベーパー(濃縮ベーパー)」と「空気(ベーパーが希釈された空気)」とに分離する。
【0050】
戻り通路40は、分離膜ユニット39の透過側とベーパー導管11との間を接続している。分離膜39Aを透過したベーパー(濃縮ベーパー)は、戻り通路40を通じてベーパー導管11に流通する。これにより、回収容器21の上部空間21Bに溜まった気体から分離膜39Aによって分離されたベーパー(濃縮ベーパー)は、回収容器21内の液体燃料中に再び溶解させることができる。一方、第2排気通路41は、分離膜ユニット39の非透過側と排気口19との間を接続している。分離膜39Aによってベーパーが希釈された空気は、第2排気通路41を通じて排気口19に流通する。第2排気通路41の途中、即ち、分離膜ユニット39と排気口19との間には、分離膜ユニット39側(上流側)から順に、第2逃がし弁38、真空エジェクタ42、排気盤43が設けられている。
【0051】
第2逃がし弁38は、回収容器21の上部空間21Bに溜まった気体(ベーパーを含む空気)を分離膜39Aにて「ベーパー(濃縮ベーパー)」と「空気(ベーパーが希釈された空気)」とに分離するために、分離膜ユニット39内を所定の圧力に維持する差圧弁である。即ち、第2逃がし弁38も、第1逃がし弁37と同様に、吸引圧縮ポンプ12が駆動すると開弁する。このとき、第2逃がし弁38は、上流側となる分離膜ユニット39側の圧力と下流側となる排気口19側の圧力との圧力差を、例えば0.2MPaで保持する。即ち、第2逃がし弁38は、制御装置34からの開弁信号により開弁すると、分離膜ユニット39の圧力と大気側の圧力との圧力差を所定の圧力で保持しつつ、分離膜ユニット39の非透過側の空気(ベーパーが希釈された空気)を第2逃がし弁38の下流側(排気口19側)に流通させる。
【0052】
これにより、第1逃がし弁37の上流側と下流側との間で第1所定圧力差(例えば、0.5MPa)を保持することができ、かつ、第2逃がし弁38の上流側と下流側との間で第2所定圧力差(例えば、0.2MPa)を保持することができる。即ち、回収容器21内の圧力と分離膜39Aとの圧力差は、第1所定圧力差(例えば、0.5MPa)となり、分離膜39Aと排気口19との間の圧力差は、第2所定圧力差(例えば、0.2MPa)となり、回収容器21内の圧力と排気口19との間の圧力差は、第1所定圧力差と第2所定圧力差との和(例えば、0.7MPa)となる。ゲージ圧(大気圧との差)で考えると、回収容器21内の圧力を第1所定圧力差と第2所定圧力差との和(例えば、0.5MPa+0.2MPa=0.7MPa)に保持することができ、分離膜39Aの圧力を第2所定圧力差(例えば、0.2MPa)に保持できる。このように、第1逃がし弁37と第2逃がし弁38は、分離膜39Aを挟んで並列に配置されている。これにより、回収容器21でベーパーの溶解を促進させるために必要な圧力(例えば、0.7MPa)を確保でき、かつ、分離膜ユニット39(分離膜39A)でベーパーと空気とを分離させるために必要な圧力(例えば、0.2MPa)を確保できる。
【0053】
真空エジェクタ42は、第2逃がし弁38の下流側に設けられている。真空エジェクタ42は、第2逃がし弁38の下流側に流通する気体(ベーパーが希釈された空気)に外気を導入する。即ち、真空エジェクタ42では、ベーパーが希釈された空気と外気とを混合すると共に、この混合した気体を昇圧させることにより、真空エジェクタ42内に流入する気体からベーパーの濃度をさらに希釈させる。排気盤43は、真空エジェクタ42の下流側に設けられている。排気盤43は、例えば、箱状容器に多数の小さな穴を形成することにより構成されている。真空エジェクタ42から排気盤43に流入した気体は、排気盤43を通過することにより、真空エジェクタ42で希釈された残ガス濃度をさらに拡散させて外気へ排出させることができる。このように、真空エジェクタ42および排気盤43は、排気口19を通じて外部に排出される気体のベーパー濃度をさらに低下させる。
【0054】
脱圧通路44は、回収容器21と第2排気通路41とを接続している。この場合、脱圧通路44の下流側は、分離膜ユニット39と真空エジェクタ42との間で第2排気通路41に接続されている。脱圧通路44の途中、即ち、回収容器21と第2排気通路41との間には、脱圧弁45が設けられている。脱圧弁45は、回収容器21内に、給油ポンプ14を通じて液体燃料を補充する前工程で、回収容器21内の圧力を大気圧まで減圧する。即ち、回収容器21内の圧力が高いと、回収容器21内に液体燃料を補充できない。このため、給油ポンプ14により貯留タンク3の液体燃料を回収容器21内に補充するときに、脱圧弁45は、制御装置34によって開弁される。また、脱圧弁45は、安全弁の機能も有している。即ち、脱圧弁45は、例えば吸引圧縮ポンプ12の異常による吸引流量の増大、第1排気通路36の閉塞等により、圧力センサ25により検出される回収容器21内の圧力が過大(例えば0.8MPa)になったときに、開弁する。
【0055】
このように、実施形態では、液体燃料供給装置としての計量機1は、ノズル8と、供給ポンプとしての給油ポンプ14と、吸引ポンプとしての吸引圧縮ポンプ12と、回収容器21と、を備えている。ノズル8は、液体燃料を燃料供給対象となる車両100の燃料タンク101に吐出する。給油ポンプ14は、液体燃料が貯留された貯留タンク3からノズル8に向けて液体燃料を供給(給油)する。吸引圧縮ポンプ12は、ノズル8を通じて液体燃料を燃料供給対象となる車両100の燃料タンク101に供給するときに、燃料タンク101の供給口となる給油口102から放出されるベーパーを吸引する。吸引圧縮ポンプ12は、給油中に駆動される。即ち、吸引圧縮ポンプ12は、ノズル8を通じた給油が開始されると駆動する。吸引圧縮ポンプ12は、給油が終了すると、または、給油が終了してから所定時間経過すると、停止する。給油が終了してから吸引圧縮ポンプ12を停止するまでの所定時間は、例えば、給油直後に吸引しきれていないベーパーを吸引できる時間として設定することができる。
【0056】
回収容器21は、貯留タンク3とは別に設けられている。回収容器21は、貯留タンク3に貯留された液体燃料と同一種類の液体燃料が貯留されている。吸引圧縮ポンプ12と回収容器21は、ベーパー液化回収装置20を構成している。ベーパー液化回収装置20は、吸引圧縮ポンプ12により吸引されたベーパーを、回収容器21内に貯留された液体燃料中に流入させることにより、ベーパーを回収容器21内に回収する。この上で、実施形態では、回収容器21には、回収容器21内の気体を大気に放出させる圧力逃がし機構35が接続されている。圧力逃がし機構35は、回収容器21内の気体中に含まれるベーパーを分離する分離膜39Aを備えている。
【0057】
また、圧力逃がし機構35は、回収容器21内と大気とを連通する流路としての第1排気通路36および第2排気通路41と、分離膜39Aよりも気体の流通方向の上流側の第1排気通路36に位置する第1逃がし弁37と、分離膜39Aよりも気体の流通方向の下流側となる非透過側の第2排気通路41に位置する第2逃がし弁38と、を備えている。第1逃がし弁37および第2逃がし弁38は、例えば、制御装置34からの開弁信号により、上流側(入口側)と下流側(出口側)とで所定の差圧が保持されるように開弁する。第1逃がし弁37は、開弁したときに、回収容器21側と分離膜39A側との間の第1排気通路36内の圧力の差を第1所定圧力差(例えば、0.5MPa)に維持する差圧弁(第1差圧弁)である。第2逃がし弁38は、開弁したときに、分離膜39A側の第2排気通路41内と大気側(真空エジェクタ42側、排気口19側)との間の圧力の差を第2所定圧力差(例えば、0.2MPa)に維持する差圧弁(第2差圧弁)である。そして、第1逃がし弁37(第1所定圧力差)と第2逃がし弁38(第2所定圧力差)は、回収容器21内の圧力をベーパーの回収に適した所定圧力(例えば、0.7MPa)に維持でき、かつ、分離膜39Aに加わる圧力が分離膜39Aの許容圧力(例えば、0.3MPa)を超えないように設定されている。
【0058】
また、実施形態では、吸引圧縮ポンプ12によるベーパーの圧縮圧力を昇圧している。例えば、吸引圧縮ポンプ12は、吸引したベーパーを、ガソリンベーパー中の最も高いプロパンの蒸気圧0.7~0.8MPa程度にまで圧縮し、この高圧に圧縮したベーパーを、回収容器21内の液体燃料(例えば、ガソリン)に溶け込ませて液化する。このため、冷凍機等の電気機器を用いなくても、ベーパーの回収率を確保できる。また、冷凍機等の電気機器を用いないことにより、消費電力および故障リスクを低減することができ、ランニングコスト(費用的な負担)を抑制できる。
【0059】
しかも、実施形態では、回収容器21の出口側(2次側)にガソリン成分を透過、濃縮、分離する分離膜39Aを設けている。このため、「ベーパーの圧縮圧力を昇圧すること」と「分離膜39Aによる濃縮、分離」とにより、高い液化回収率を得ることができる。ここで、分離膜39Aは、分離膜ユニット39内に収容されている。このため、例えば、分離膜ユニット39を、分離膜39Aを備えていないベーパー液化回収装置に対して後付けすることができる。即ち、分離膜39Aを備えているベーパー液化回収装置20と分離膜を備えていないベーパー液化回収装置とで、分離膜ユニット39以外の構成を共通化することができる。これにより、コストの低減、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0060】
また、図4に示すように、分離膜39Aを含む分離膜ユニット39は、縦に配置している。即ち、分離膜ユニット39は、分離膜39Aへの気体の入口側を下方とし、分離膜39Aからの非透過の気体の出口側を上方とすることにより、上下方向に配置している。このため、分離膜39Aに液体(液体燃料、ガソリン)が流入、停滞することを抑制できる。また、図示は省略するが、分離膜の入口側には、異物の流入を抑制するストレーナ(分離膜の保護のためのフィルタ)を設けることができる。これにより、分離膜の損傷を抑制し、分離膜の耐久性を向上できる。また、分離膜ユニット39の透過側の出口と非透過側の出口とに、それぞれ圧力センサを設けることもできる。この場合には、分離膜の状況を圧力センサにより監視できる。いずれの場合も、分離膜39Aを透過した気体(濃縮ベーパー)は、吸引圧縮ポンプ12により吸引される。
【0061】
さらに、実施形態では、分離膜39Aの透過差圧を維持するために、分離膜39Aの非透過側に差圧弁となる第2逃がし弁38を設けている。また、分離膜39Aの入口側と回収容器21の出口側との間には、第1逃がし弁37を設けている。そして、第2逃がし弁38による差圧と第1逃がし弁37による差圧との和が回収容器21の設定圧力になるようにしている。このため、「ベーパーを回収するときの回収容器21の圧力を高く維持すること」と「分離膜39Aに必要な圧力(即ち、分離膜39Aに過剰な圧力が加わらず、かつ、ベーパーを効率よく透過できる圧力)を確保すること」とを両立できる。
【0062】
また、圧力逃がし機構35は、液化回収後の気体(残留ガス)と外気とを混合させる真空エジェクタ42、および、残留ガスと外気とが混合した気体を分散、拡散して排出する排気盤43を備えている。この場合、真空エジェクタ42と排気盤43とを分離膜39Aの2次側(流出側、出口側)に設けている。このため、仮に分離膜39Aでベーパーの分離を十分に行うことができなくなったとき(分離膜39Aが故障したとき)に、真空エジェクタ42と排気盤43とにより排気口19から排出される気体の濃度を非防爆閾値未満(爆発下限値未満)に維持できる。
【0063】
以上のように、実施形態によれば、回収容器21に接続された圧力逃がし機構35は、回収容器21内の気体中に含まれるベーパーを分離する分離膜39Aを備えている。このため、回収容器21内の気体を放出するときに、分離膜39Aにより、回収容器21内のベーパーを含む気体がそのまま外部へ放出されることを抑制できる。
【0064】
実施形態によれば、第1逃がし弁37は、回収容器21側と分離膜39A側との間の圧力の差を第1所定圧力差に維持し、第2逃がし弁38は、分離膜39A側と大気側との間の圧力の差を第2所定圧力差に維持する。そして、第1逃がし弁37と第2逃がし弁38は、回収容器21内の圧力をベーパーの回収に適した所定圧力に維持でき、かつ、分離膜39Aに加わる圧力が分離膜39Aの許容圧力を超えないように設定されている。例えば、第1逃がし弁37の開弁設定圧力は0.5MPaに設定されており、第2逃がし弁38の開弁設定圧力は0.2MPaに設定されている。このため、回収容器21内の圧力をベーパーの回収に適した高圧(例えば、0.7MPa)に維持すること、分離膜39Aの透過性能を確保すること、および、分離膜39Aに許容圧力(例えば、0.3MPa)以上の圧力が加わることを抑制できる。
【0065】
なお、実施形態では、計量機1の筐体2内にベーパー液化回収装置20を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。また、実施形態では、計量機1に1つのノズル8を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図5に示す第1変形例のように、計量機1の筐体2の外側にベーパー液化回収装置20を設けてもよい。また、計量機1に複数(2つまたはそれ以上)のノズル8を設けてもよい。即ち、計量機1は、複数の燃料供給系統を備える構成とすることができる。
【0066】
実施形態では、ベーパーの吸引と圧縮との両方を行う吸引圧縮ポンプ12を備える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図6に示す第2変形例のように、ベーパーの吸引を行う吸引ポンプ51,51と吸引されたベーパーの圧縮を行う圧縮ポンプ52とを別々に設ける構成としてもよい。図6に示す第2変形例では、それぞれのノズル8に対応して吸引ポンプ51,51を設けている。即ち、第2変形例では、燃料供給系統ごとに吸引ポンプ51,51が設けられている。そして、戻り通路40の下流側は、吸引ポンプ51,51と圧縮ポンプ52との間に接続されている。即ち、分離膜ユニット39の透過側は、戻り通路40を介して圧縮ポンプ52に接続されている。
【0067】
図5に示す第1変形例では、複数(2つ)の燃料供給系統に対して1つの吸引圧縮ポンプ12を備える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、吸引圧縮ポンプは、燃料供給系統ごとに設けてもよい。即ち、吸引ポンプ、圧縮ポンプは、燃料供給系統ごとに設けてもよいし、複数の燃料供給系統に対して、1つの吸引圧縮ポンプ、または、1つの吸引ポンプおよび1つの圧縮ポンプを設けてもよい。
【0068】
実施形態および変形例では、計量機1として、地上設置型の給油装置(液体燃料供給装置)を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ノズルを昇降させる懸垂式の給油装置(液体燃料供給装置)を用いてもよい。
【0069】
実施形態および変形例では、液体燃料供給装置(計量機1)により燃料が供給される燃料供給対象(燃料被供給体)として、車両100の燃料タンク101を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、液体燃料供給装置(計量機1)は、例えば、ガソリン携行缶、ポリタンク等、車両の燃料タンク以外の燃料供給対象に燃料を供給してもよい。
【0070】
実施形態および変形例では、液体燃料供給装置が設置される給油所(燃料供給所)として、車両の給油を行うガソリンスタンド(サービスステーション)を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、液体燃料供給装置は、例えば、工場、商店、ホームセンター等、ガソリンスタンド(サービスステーション)以外の給油所(燃料供給所)に設置してもよい。
【0071】
実施形態および変形例では、ベーパーを回収する液体燃料としてガソリンを用いることを例に挙げて説明した。しかし、液体燃料は、ガソリンに限らず、例えば、回収するベーパーがガソリン以外の種類(例えば、軽油、重油、ジェット燃料、アルコール燃料)のベーパーである場合には、その種類と同じ種類のものを用いるようにしてもよい。
【0072】
さらに、実施形態および変形例は例示であり、異なる実施形態および変形例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0073】
以上説明した実施形態および/または変形例(以下、単に「実施形態」という)によれば、回収容器に接続された圧力逃がし機構は、回収容器内の気体中に含まれるベーパーを分離する分離膜を備えている。このため、回収容器内の気体を放出するときに、分離膜により、回収容器内のベーパーを含む気体がそのまま外部へ放出されることを抑制できる。
【0074】
実施形態によれば、第1逃がし弁は、回収容器側と分離膜側との間の圧力の差を第1所定圧力差に維持し、第2逃がし弁は、分離膜側と大気側との間の圧力の差を第2所定圧力差に維持する。そして、第1逃がし弁と第2逃がし弁は、回収容器内の圧力をベーパーの回収に適した所定圧力に維持でき、かつ、分離膜に加わる圧力が分離膜の許容圧力を超えないように設定されている。このため、回収容器内の圧力をベーパーの回収に適した高圧に維持すること、分離膜の透過性能を確保すること、および、分離膜に許容圧力以上の圧力が加わることを抑制できる。
【符号の説明】
【0075】
1 計量機(液体燃料供給装置)
3 貯留タンク
8 ノズル
12 吸引圧縮ポンプ(吸引ポンプ)
14 給油ポンプ(供給ポンプ)
21 回収容器
35 圧力逃がし機構
37 第1逃がし弁
38 第2逃がし弁
39A 分離膜
101 燃料タンク(燃料供給対象)
102 給油口(供給口)
図1
図2
図3
図4
図5
図6