(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047311
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】拡径リーマおよび敷設管設置方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20240329BHJP
E21D 9/08 20060101ALI20240329BHJP
F16L 1/028 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
E21D9/06 311B
E21D9/08 R
F16L1/028 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152859
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(71)【出願人】
【識別番号】506343704
【氏名又は名称】株式会社トーメック
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】三角 久
(72)【発明者】
【氏名】内田 みつる
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊久
(72)【発明者】
【氏名】植野 進一
(72)【発明者】
【氏名】壁内 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健太
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AA05
2D054AA10
2D054AB01
2D054BA18
(57)【要約】
【課題】地表面に隆起を生じにくい拡径リーマ等を提供すること。
【解決手段】拡径リーマ10は、第1端から挿入されたヘッドを保持するヘッド保持筒71と、前記ヘッド保持筒71の外周面の、前記ヘッド保持筒71の軸を挟む2か所から突出する拡径部72と、前記ヘッド保持筒71の第2端に取り付けられた牽引板15と、前記牽引板15に設けられた2つの管接続部とを備え、それぞれの前記拡径部72は、柱状のブレードを複数有し、それぞれの前記ブレードは、前記ヘッド保持筒71と平行に配置されている。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端から挿入されたヘッドを保持するヘッド保持筒と、
前記ヘッド保持筒の外周面の、前記ヘッド保持筒の軸を挟む2か所から突出する拡径部と、
前記ヘッド保持筒の第2端に取り付けられた牽引板と、
前記牽引板に設けられた2つの管接続部とを備え、
それぞれの前記拡径部は、
柱状のブレードを複数有し、
それぞれの前記ブレードは、前記ヘッド保持筒と平行に配置されている
拡径リーマ。
【請求項2】
前記ブレードは、円柱の一部を該円柱の軸に対して斜めに交差する平面部で切り落とした形状であり、
前記ブレードは、前記平面部を前記ヘッド保持筒から遠い側に向けて、前記ヘッド保持筒に固定されている
請求項1に記載の拡径リーマ。
【請求項3】
それぞれの前記拡径部が有する前記ブレードは、
第1ブレードと、
前記第1ブレードより細い第2ブレードとを含む
請求項1に記載の拡径リーマ。
【請求項4】
それぞれの前記拡径部は、
1本の前記第1ブレードと、
前記第1ブレードを挟んで配置された2本の前記第2ブレードとを含む
請求項3に記載の拡径リーマ。
【請求項5】
前記第1ブレードは、円柱の一部を該円柱の軸に対して斜めに交差する平面部で切り落とした形状であり、
前記第2ブレードは、前記第1ブレードよりも細い円柱の一部を該円柱の軸に対して斜めに交差する平面部で切り落とした形状であり、
前記第1ブレードおよび前記第2ブレードは、それぞれ前記平面部を前記ヘッド保持筒から遠い側に向けて、前記ヘッド保持筒に固定されている
請求項4に記載の拡径リーマ。
【請求項6】
前記ヘッド保持筒と、前記管接続部とは、前記ヘッド保持筒の軸に垂直に配置された回動軸を介して回動可能に接続されている
請求項1に記載の拡径リーマ。
【請求項7】
前記回動軸は、前記ヘッド保持筒の軸に対して回動可能である
請求項6に記載の拡径リーマ。
【請求項8】
前記牽引板は、長円形板である
請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の拡径リーマ。
【請求項9】
前記牽引板は、瓢箪形板である
請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の拡径リーマ。
【請求項10】
発進部から到達部まで掘進を行ない、
前記到達部に到達したヘッドに、第1端から挿入された前記ヘッドを保持するヘッド保持筒と、前記ヘッド保持筒の外周面の、前記ヘッド保持筒の軸を挟む2か所から突出する拡径部と、前記ヘッド保持筒の第2端に取り付けられた牽引板と、前記牽引板に設けられた2つの管接続部とを備え、それぞれの前記拡径部は、柱状のブレードを複数有し、それぞれの前記ブレードは、前記ヘッド保持筒と平行に配置されている拡径リーマを固定し、
前記ヘッドを前記発進部まで引き込む
敷設管設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡径リーマおよび敷設管設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
推進工法により地上到達部まで推進したヘッドに、拡径リーマと配管部材とを接続して引き戻すことにより、配管部材を地中に設置する配管の設置方法が利用されている。拡径リーマに複数の配管部材を接続して、一括して引き戻すことにより、複数の配管部材を同時に設置する配管の設置方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の拡径リーマを使用する場合には、拡径リーマにより形成される孔の高さの10倍程度の土被り高さを確保することが望ましい。土被り高さを十分に確保できない場合には、地表面に隆起が生じる可能性があるためである。
【0005】
しかしながら、各種インフラ供給管が設置された共同溝は、比較的浅い場所に設置されている場合が多い。そのため、共同溝から需要者の敷地までの間に配管を設置する工事では、十分な土被り高さを確保することが難しい。
【0006】
一つの側面では、地表面に隆起を生じにくい拡径リーマ等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
拡径リーマは、第1端から挿入されたヘッドを保持するヘッド保持筒と、前記ヘッド保持筒の外周面の、前記ヘッド保持筒の軸を挟む2か所から突出する拡径部と、前記ヘッド保持筒の第2端に取り付けられた牽引板と、前記牽引板に設けられた2つの管接続部とを備え、それぞれの前記拡径部は、柱状のブレードを複数有し、それぞれの前記ブレードは、前記ヘッド保持筒と平行に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面では、地表面に隆起を生じにくい拡径リーマ等を提供できる
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図18】拡径部が固定されたヘッド保持筒の正面図である。
【
図20】拡径部を構成するブレードの正面図である。
【
図22】拡径リーマと配管との接続部の模式図である。
【
図23】
図22におけるXXIII-XXIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1は、配管工事の手順を説明する説明図である。地面に発進部58および到達部59が掘削される。発進部58の底に、推進装置55が設置される。推進工法により、推進装置55のヘッド51およびヘッド51の背後に配置された推進管53が、到達部59に向けて推進される。
図1は、ヘッド51が到達部59に到達した状態を示す。
【0011】
なお、推進装置55は配管を通す穴を掘進する装置の例示である。推進装置55の代わりに、たとえば誘導式水平ドリル工法用の掘削機が使用されてもよい。誘導式水平ドリル工法を使用する場合には、発進部58は作製されず、掘削機は地上に配置される。
【0012】
図2は、
図1におけるII-II断面図である。
図2においては、推進管53の内部に配置されたヘッド51制御用のケーブル、センサ、およびチューブ等の図示を省略する。ヘッド51の進行に伴い、地中に掘削孔61が形成される。掘削孔61よりも少し細い推進管53が、ヘッド51を推進する。推進管53と掘削孔61との間の隙間により両者の間の摩擦が低減する。
【0013】
図3は、配管工事の手順を説明する説明図である。
図3においては、ヘッド51に拡径リーマ10が取り付けられている。拡径リーマ10には注入管22と、2本の敷設管21とが接続されている。敷設管21は、たとえば電源ケーブルまたは通信ケーブル等が収容されるチューブ状の配管部材である。敷設管21は、ガス管または水道管に使用されるチューブ状の配管部材であってもよい。敷設管21は、直接埋設式用のケーブルであってもよい。拡径リーマ10の構成については後述する。
【0014】
図4は、配管工事の手順を説明する説明図である。
図4においては、ヘッド51が発進部58まで引き戻されている。ヘッド51に取り付けられた拡径リーマ10が発進部58に引き込まれ、掘削孔61内部に敷設管21および注入管22が留置されている。注入管22の到達部59側の端部に、裏込材67(
図10参照)注入用の注入ポンプ23が接続されている。裏込材67については、後述する。
【0015】
図5は、
図4におけるV-V断面図である。
図5は、拡径リーマ10が通過した直後における状態を示す。拡径リーマ10により、掘削孔61の断面形状は水平方向に拡げられている。拡径リーマ10の形状の詳細については後述する。掘削孔61の内部に、2本の敷設管21が水平に配置されている。敷設管21と掘削孔61の上面との隙間に、注入管22が配置されている。
【0016】
図6は、配管工事の手順を説明する説明図である。拡径リーマ10が、ヘッド51、敷設管21および注入管22から取り外されている。なお、
図6の段階で、発進部58から推進装置55が撤去されていてもよい。発進部58内部の作業空間を広く確保できる。
【0017】
図7は、
図6におけるVII-VII断面図である。
図7、および、
図7と同じ断面を示す以後の図面においては説明の便宜上、敷設管21および注入管22は断面にせず、同一面上に並べて模式的に図示する。すなわち、
図7は略水平方向の断面を模式的に示す。
【0018】
図8は、配管工事の手順を説明する説明図である。
図8は、
図7と同じ断面を示す。
図9は、
図8におけるIX矢視図である。すなわち、
図8は略水平方向の断面を模式的に示し、
図9は発進部58の内壁面の外観を模式的に示す。
【0019】
なお、拡径リーマ10を引き込んだ直後には、
図9に示す掘削孔61の内面形状は
図5に示す掘削孔61の内面形状と同様である。その後、時間の経過と共に地盤の圧力および重力等により掘削孔61の内面が徐々に崩れて、
図9に示すように略長円形状に変化する。
【0020】
図8および
図9においては、注入管22が到達部59側に引き戻されている。注入管22の引き戻し量は、掘削孔61の水平方向の内径と同程度である。掘削孔61の発進部58側の開口部にエアパイプ29が挿入されている。エアパイプ29の位置は、敷設管21と掘削孔61の上面との隙間である。すなわち、
図5において注入管22が突出していた場所とほぼ同じ場所に、エアパイプ29が配置されている。
【0021】
敷設管21およびエアパイプ29と、掘削孔61の内面との間の隙間に、閉塞材65が充填されている。閉塞材65は、たとえば粘土状である。発進部58の内部から掘削孔61に閉塞材65を充填する作業は、従来から一般的に行なわれているため、詳細については説明を省略する。
【0022】
図10は、配管工事の手順を説明する説明図である。注入管22から裏込材67が注入されている。裏込材67は、エアパイプ29にも入り込み、エアパイプ29の先端まで到達している。作業担当者は、たとえばエアパイプ29の先端から裏込材67が流出するまで裏込材67の注入作業を行なう。なお、裏込材67の注入を円滑に進めるために、掘削孔61は発進部58側が低くなるような傾斜を有することが望ましい。同様に、注入管22の先端およびエアパイプ29は敷設管21および敷設管21に比べて高い位置に配置されていることが望ましい。
【0023】
裏込材67は、注入される時点では流動性を有し、時間の経過とともに硬化する材料である。裏込材67には、たとえばセメント系材料、または発泡ウレタン系の材料が使用される。裏込材67には、土に水と固化材とを加えて混錬した流動化処理土が使用されてもよい。
【0024】
図8に示す、注入管22の先端とエアパイプ29との間の隙間について説明する。この隙間が設けられていることにより、注入管22から注入された裏込材67は、エアパイプ29に直接流入することなく、閉塞材65の内側に充填される。
【0025】
図11は、配管工事の手順を説明する説明図である。エアパイプ29の先端に、閉塞材65が詰め込まれている。なお、閉塞材65の代わりにたとえば硬化時間の短い接着剤、または、ゴム栓等により、エアパイプ29の先端が閉塞されてもよい。エアパイプ29を閉塞した後、注入管22を到達部59側に引き戻しながら掘削孔61の内部に裏込材67が充填される。
【0026】
図12は、配管工事の手順を説明する説明図である。発進部58から推進装置55が撤去されている。到達部59近傍から、注入ポンプ23が撤去されている。発進部58と到達部59との間に2本の敷設管21が設置されている。敷設管21の周囲に裏込材67が充填されている。
【0027】
図13および
図14は、拡径リーマ10の写真である。
図13および
図14は、拡径リーマ10をヘッド51に接続される部分と、敷設管21に接続される部分との二つに分離させた状態を示す。
図13においては、手前側がヘッド51に接続される部分であり、奥側が敷設管21に接続される部分である。
図14においては、手前側が敷設管21に接続される部分であり、奥側がヘッド51に接続される部分である。
【0028】
【0029】
拡径リーマ10は、ヘッド保持筒71、保持筒軸11、Y字柱17および回動軸18を備える。ヘッド保持筒71は一方の端に内向きに突出する軸保持部716を備える略円筒形状である。ヘッド保持筒71の外周面の二か所から拡径部72が突出している。ヘッド保持筒71の外周面の端に拡径部72を支持する支持板725が配置されている。ヘッド保持筒71の構造の詳細については後述する。
【0030】
保持筒軸11は、一段の段付き円柱の細径側の端面から板状の軸板部115が突出した形状を有する。軸板部115には、厚さ方向に貫通する丸孔が設けられている。段付き円柱の細径部のうち、太径部から遠い部分の外周には、細目ネジの雄ネジが設けられている。
【0031】
保持筒軸11は、太径部をヘッド保持筒71の内側にして、軸板部115がヘッド保持筒71から突出するように配置されている。軸保持部716と細径部との間には、摺動軸受けの機能を果たす2個の鍔付ブッシュ12が配置されている。
【0032】
内径に雌ねじを有する円環状の抜止輪13が、細径部の雄ネジに螺合している。抜止輪13は、側面から貫通するネジ孔を複数備えており、それぞれのネジ孔にイモネジ131が取り付けられている。抜止輪13の側面には、一組のカニメ穴135が設けられている。ユーザは、カニメ穴135を使用して抜止輪13を保持筒軸11に取り付ける。抜止輪13は、保持筒軸11がヘッド保持筒71から抜け出すことを防止する抜け止めの機能を果たす。
【0033】
牽引板15は長円形板であり、中央に柱固定孔152(
図21参照)が設けられている。牽引板15の形状の詳細については後述する。Y字柱17は、一段の段付き円柱の太径部分が、略U字形状の切り欠きにより二又に分かれた形状を有する。Y字柱17の細径部分には、柱固定孔152に対応する雄ネジが設けられている。Y字柱17の二又に分かれた部分には、両方を一直線上に貫通する丸穴が設けられている。
【0034】
Y字柱17の二又に分かれた部分の間に、軸板部115が配置されている。Y字柱17に設けられた丸穴および軸板部115に設けられた丸穴を、回動軸18が貫通している。回動軸18は、一端にY字柱17および軸板部115に設けられた丸穴よりも太い太径部を有し、他端に雄ネジを有する。雄ネジには、六角ナットが取り付けられている。回動軸18の両端には、貫通孔が設けられている。保持筒軸11とY字柱17とは、回動軸18を軸にして互いに回動可能である。
【0035】
図18は、拡径部72が固定されたヘッド保持筒71の正面図である。
図19は、
図18におけるXIX矢視図である。
図20は、拡径部72を構成するブレードの正面図である。
図13から
図20を使用して、ヘッド保持筒71および拡径部72の構成を説明する。
【0036】
以後の説明では、
図18に示すようにヘッド保持筒71の一方の端面を第1端711、他方の端面を第2端712と記載する。前述の保持筒軸11は、第2端712側から突出している。第1端711側の外面は、先細りのテーパ状に形成されている。
【0037】
図13に示すように、ヘッド保持筒71の側面に、第1端711側に開口するU字溝718が設けられている。U字溝718の内側に、ヘッド保持棒78が取り付けられている。ヘッド保持棒78は丸棒である。
【0038】
ヘッド保持筒71の側面に、保持棒孔751が設けられている。保持棒孔751は、U字溝718の両側に配置されており、
図13および
図17に示すようにヘッド保持棒78が挿入される。
【0039】
U字溝718からみて、保持棒孔751の奥に2つの蓋ネジ穴752が設けられている。2つの蓋ネジ穴752は、ヘッド保持筒71の中心軸に平行に配置されている。
図17に示すように、曲板形状の抜止板781がボルトによりヘッド保持筒71の側面に取り付けられる。抜止板781は、ヘッド保持棒78の端面の約半分を覆い、ヘッド保持棒78をヘッド保持筒71に固定する。
【0040】
図18および
図19に戻って説明を続ける。
図18は、U字溝718を図の下側に向けた状態のヘッド保持筒71を示す。支持板725は、三日月形の板状である。
図19に示すように、同一形状を有する2枚の支持板725が、ヘッド保持筒71を挟んで対称に配置されている。2枚の支持板725とU字溝718の縁との距離は、同一である。すなわち、ヘッド保持筒71の中心軸を基準にして、U字溝718の中心軸とそれぞれの支持板725の中央部とは約90度の角度をなしている。
図18に示すように支持板725は、一方の面が第2端712と同一面になるように配置されている。
【0041】
一つの拡径部72は、1本の第1ブレード721と、その両脇に配置された2本の第2ブレード722との、合計3本の略柱状のブレードを含む。
図20を使用して第1ブレード721および第2ブレード722の形状を説明する。以下の説明では、第1ブレード721と第2ブレード722とを区別せずに記載する。
【0042】
ブレードは、円柱形状の母材738を、第1平面部731と第2平面部732との2つの平面部73で切り落とした形状を有する。第1平面部731および第2平面部732は、母材738の中心軸に対して斜めに交差する平面である。
図20においては、母材738を二点鎖線で示す。
図20の紙面は、母材738の中心軸を含む平面である。
【0043】
第1平面部731および第2平面部732は紙面に垂直である。したがって、第1平面部731と第2平面部732との交線も紙面に垂直である。母材738の中心軸と第1平面部731とがなす角度θ1は、母材738の中心軸と第2平面部732とがなす角度θ2よりも大きい。
【0044】
以下の説明では、母材738の側面を円柱面部735、
図20における左側の底面を第1底面733、反対側の底面を第2底面734、円柱面部735と第1平面部731との交線の頂点を点P1、第1平面部731と第2平面部732との交線と紙面との交点をP2、第2平面部732と第2底面734との交線と紙面との交点をP3と記載する。
【0045】
母材738の直径をD、母材738の長さをL1、第1底面733とP1との間の距離をL2、第1底面733とP2との間の距離をL3、
図20における円柱面部735の下端とP2との距離をH1、同じく円柱面部735の下端とP3との間の距離をH2と記載する。ヘッド保持筒71の外径が90ミリメートルである場合の、第1ブレード721および第2ブレード722の寸法を表1に示す。単位はミリメートルである。
【0046】
【0047】
表1に示すように、本実施の形態においては、第1ブレード721、第2ブレード722ともにD=2×H1であり、第1平面部731と第2平面部732との交線は、母材738の中心を通る。第2ブレード722は第1ブレード721よりも細い。
【0048】
なお、表1に示す寸法は例示であり、第1ブレード721および第2ブレード722の寸法は表1に限定されない。ヘッド保持筒71の外径も90ミリメートルに限定されない。第1ブレード721および第2ブレード722の母材738は、角柱形状であってもよい。それぞれの拡径部72は、2本以下、または4本以上のブレードを有してもよい。
【0049】
図18および
図19に戻って説明を続ける。第1ブレード721および第2ブレード722は、第1底面733と支持板725とが当接し、平面部73を外側に向けた状態に配置されている。ヘッド保持筒71の中心軸と、第1ブレード721および第2ブレード722の中心軸とは平行である。第1ブレード721は、2本の第2ブレード722の間に配置されている。ヘッド保持筒71、支持板725、第1ブレード721および第2ブレード722は鋼製であり、互いに溶接により接合されている。
【0050】
図21は、牽引板15の正面図である。前述の通り、牽引板15は長円形板である。牽引板15の中央部に、柱固定孔152が設けられている。柱固定孔152はネジ穴である。牽引板15の長軸に沿って柱固定孔152の両側に、管接続孔151が設けられている。管接続孔151は、敷設管21を接続する管接続部の例示である。
【0051】
牽引板15の側面から柱固定孔152に向けて貫通する固定ネジ孔153が設けられている。牽引板15の長軸方向の端部は斜めに切り落とされて、牽引板15全体がテーパ形状になっている。
【0052】
柱固定孔152に、Y字柱17の雌ネジが結合される。その後、固定ネジ孔153にイモネジが挿入される。イモネジにより、Y字柱17に対して回転方向の外力が加わった場合であっても、Y字柱17は牽引板15から外れない。
図22は、拡径リーマ10と配管との接続部の模式図である。
図23は、
図22におけるXXIII-XXIII断面図である。
図24は、
図22におけるXXIV-XXIV断面図である。なお、
図22から
図24においては、拡径リーマ10を簡略化して模式的に図示する。
【0053】
さらに、
図22においては、保持筒軸11とY字柱17との接続構造の変形例を図示する。本変形例においては、保持筒軸11の先端が二又に分かれている。Y字柱17の代わりに先端が板状になった柱を使用し、板状部分が保持筒軸11の二又部の間に挿入されている。両者が回動軸18により回動可能に連結されている。回動軸18は、保持筒軸11から突出しない長さである。
【0054】
【0055】
図15および
図17に二点鎖線で示すように、ヘッド保持筒71に、ヘッド51が挿入される。ヘッド51の端面に設けられた溝と、ヘッド保持棒78とが係合する。
図22から
図23に示すように、牽引板15に敷設管接続具31を介して2本の敷設管21が接続される。敷設管接続具31は、従来から使用されているため、詳細については説明を省略する。
【0056】
一方の敷設管21に、バインド線25を用いて注入管22が固定されている。注入管22の先端は、牽引板15から離れている。
図24に示すように、注入管22は2本の敷設管21の間に形成される谷部に保持される。
図23から
図24に示すように、敷設管21および注入管22は、二点鎖線で示すヘッド保持筒71の外径の延長よりも内側に配置されている。
【0057】
図1から
図24を使用して、拡径リーマ10の使用方法および機能を説明する。到達部59の近傍で、拡径リーマ10に敷設管21および注入管22が取り付けられる。
図3を使用して説明したように、到達部59に到達したヘッド51に、拡径リーマ10が取り付けられる。発進部58に向けて、ヘッド51が引き込まれる。
【0058】
図5を使用して説明したように、拡径リーマ10が掘削孔61の内面を水平方向に拡げる。
図5に示す拡径リーマ10が通過した直後の掘削孔61の内面形状は、
図19を使用して説明した拡径リーマ10の軸方向からの矢視形状、すなわちヘッド保持筒71の太径部および2枚の支持板725とを合わせた外形形状と、ほぼ同一である。
【0059】
前述の通り、ヘッド51の端面に設けられた溝と、ヘッド保持棒78とが係合しているため、ヘッド51とヘッド保持筒71とは相対的に回転しない。ヘッド保持筒71と保持筒軸11とは、相対的に回転する。鍔付ブッシュ12は、ヘッド保持筒71と保持筒軸11との間の摩擦を低減する。抜止輪13、Y字柱17および回動軸18は、保持筒軸11と共に回転する。
【0060】
牽引板15は、ヘッド保持筒71側が細くなったテーパ状であるため、拡径部72により拡げられた孔にスムーズに入り込む。回動軸18を軸として保持筒軸11、Y字柱17および牽引板15が相対的に回転する。したがって、牽引板15は、拡径部72により拡げられた孔の形状にならって回転しながら、発進部58に向けて進む。
【0061】
なお、推進装置55は、ヘッド51の向きを回動させる機能を有する。ユーザは、2本の敷設管21が略水平になるようにヘッド51の向きを調整しながら、発進部58に引き込む。したがって、長軸方向が略水平方向の長孔の中に、2本の敷設管21が収容される。すなわち、鉛直方向の内径が、水平方向の内径に比べて小さい孔に、敷設管21が収容される。
【0062】
本実施の形態によると、長軸が水平方向を向いた長円形断面の掘削孔61の内部に、2本の敷設管21を水平に配置することにより、地表面への隆起の発生を防止した敷設管設置方法を提供できる。
【0063】
本実施の形態によると、掘削孔61の内面と敷設管21の外面との間の空隙部の体積が小さいため、裏込材67の使用量を低減できる。裏込材67の使用量が少ないことにより、工事コストおよび環境負荷の少ない敷設管設置方法を提供できる。
【0064】
仮に、裏込材67が十分に充填されない部分が発生した場合であっても、もともとの空隙部の体積が小さいため地盤沈下の可能性が少ない敷設管設置方法を提供できる。地中に作製する掘削孔61の断面積が小さいため、庭木および生垣等に与えるダメージの少ない敷設管設置方法を提供できる。
【0065】
なお、本実施の形態で説明した拡径リーマ10は例示である。拡径リーマ10は、円筒形のヘッド保持筒71の外面に複数のブレードを含む拡径部72を備える代わりに、全体が楕円錘形状であってもよい。工事を行なう地盤の形状に応じた形状の拡径リーマ10を使用できる。
【0066】
拡径リーマ10は、120度振り分けで3個の拡径部72と、3個の管接続孔151とを備えてもよい。3本の敷設管21を敷設する際に、裏込材67の使用量が少ない拡径リーマ10を提供できる。
【0067】
[実施の形態2]
本実施の形態は、地表面が隆起する可能性をさらに低減する拡径リーマ10に関する実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0068】
図25は、実施の形態2の牽引板15の正面図である。本実施の形態の牽引板15は、中央部がくびれた瓢箪形板である。
【0069】
本実施の形態によると、拡径部72により除去された土の一部が、牽引板15のくびれた部分を介して注入管22同士の隙間に入り込みやすい拡径リーマ10を提供できる。したがって、地表面が隆起する可能性、裏込材67の使用量、および、地盤沈下の可能性をいずれも低減できる。
【0070】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0071】
特許請求の範囲に記載した独立請求項および従属請求項は、引用形式に関わらずあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0072】
10 拡径リーマ
11 保持筒軸
115 軸板部
12 鍔付ブッシュ
13 抜止輪
131 イモネジ
135 カニメ穴
15 牽引板
151 管接続孔(管接続部)
152 柱固定孔
153 固定ネジ孔
17 Y字柱
18 回動軸
21 敷設管
22 注入管
23 注入ポンプ
25 バインド線
29 エアパイプ
31 敷設管接続具
51 ヘッド
53 推進管
55 推進装置
58 発進部
59 到達部
61 掘削孔
65 閉塞材
67 裏込材
71 ヘッド保持筒
711 第1端
712 第2端
716 軸保持部
718 U字溝
72 拡径部
721 第1ブレード(ブレード)
722 第2ブレード(ブレード)
725 支持板
73 平面部
731 第1平面部
732 第2平面部
733 第1底面
734 第2底面
735 円柱面部
738 母材
751 保持棒孔
752 蓋ネジ穴
78 ヘッド保持棒
781 抜止板